(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019604
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】回転可能なノズルを有する粘性接着剤用塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/00 20060101AFI20220120BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220120BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20220120BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220120BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20220120BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220120BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C5/00 101
B05C5/02
B05D7/24 301P
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021113332
(22)【出願日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 119 027.1
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507086871
【氏名又は名称】エクセル インダストリーズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】EXEL INDUSTRIES Societe Anonyme
【住所又は居所原語表記】54 rue Marcel Paul,51200 Epernay,France
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュミッツ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
4J040
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC84
4D075AC88
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA31
4D075EA35
4D075EB38
4F041AA07
4F041AB02
4F041BA01
4F041BA15
4F042AA09
4F042AB00
4F042CB18
4F042DH10
4J040EF001
4J040JB01
4J040JB04
4J040LA06
4J040MA05
4J040NA16
4J040PB03
(57)【要約】
【課題】湿気が塗布装置内に浸入するのを単純な手段でもって確実に防止する粘性接着剤用塗布装置を特定する。
【解決手段】塗布装置1により、ポリウレタンベースの接着剤を表面に塗布することが可能になる。分離剤が貯蔵されている分離剤チャンバ11と第1動的シール12との相互作用により、接着剤がノズル開口14から排出される前に湿気が接着剤内に取り込まれることが効果的に防止される。第1動的シール12及び分離剤チャンバ11を形成すれば、このために必要な機器への出費を抑えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性接着剤用塗布装置(1)であって、
粘性接着剤用の第1供給部(5)を有する基体(2)と、
ノズル本体(4)であって、
前記基体(2)に対して軸(3)の周りで回転可能であり、且つ、
前記基体(2)の一部を、前記軸(3)に対して径方向外側で取り囲む、ノズル本体(4)と
を備え、
前記ノズル本体(4)は、ノズルチャネル(13)を有し、
前記ノズルチャネル(13)は、
前記塗布装置(1)から前記接着剤を排出するためのノズル開口(14)を、第1端(31)に有し、且つ、
流入口(19)を、第2端(32)に有し、
前記ノズル本体(4)と前記基体(2)は、前記第1供給部の開口(18)を介して前記ノズルチャネル(13)の前記流入口(19)に接着剤を輸送できるように位置合わせされており、
第1動的シール(12)は、前記基体(2)を覆っており、
前記第1動的シールは、
内側(20)では、前記基体(2)の外壁(15、21)に寄り掛かり、且つ
外側(22)では、前記ノズル本体(4)の内壁(23)に寄り掛かり、
周方向において前記基体(2)を取り囲む分離剤チャンバ(11)が形成されており、
前記分離剤チャンバ(11)は、
径方向内側においては、前記基体(2)の前記外壁(15、21)により画定されており、且つ
径方向外側においては、前記ノズル本体(4)の前記内壁(23)により画定されており、
前記基体(2)に、分離剤用の第2供給部(6)が形成されており、
前記第2供給部は、分離剤を供給するために、前記分離剤チャンバ(11)に流体接続されており、
前記第1動的シール(12)は、前記軸(3)の方向において、前記分離剤チャンバ(11)と前記ノズル本体(4)の前記ノズルチャネル(13)の前記流入口(19)との間に形成されており、
前記基体(2)に、前記分離剤チャンバ(11)と流体連通している排出管(7)が形成されている
塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置(1)であって、
前記排出管(7)は、前記軸(3)と平行に延在している
塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗布装置(1)であって、
a)前記第1供給部(5)と、b)前記第2供給部(6)とのうちの少なくとも1つは、前記軸(3)と平行に延在している
塗布装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗布装置(1)であって、
第2動的シール(29)は、前記分離剤チャンバ(11)の一方側に形成されており、
前記分離剤チャンバ(11)の前記一方側は、前記第1動的シール(12)に面している側と反対側である
塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗布装置(1)を使用することであって、
接着剤(26)を、接着対象の表面(30)に塗布するための使用。
【請求項6】
請求項5に記載の使用であって、
前記接着剤(26)は、ポリウレタンベースの接着剤を含む
使用。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗布装置(1)を用いて接着剤(26)をペイン、特にフロントガラス(27)に塗布するための方法であって、
前記接着剤(26)は、前記第1供給部(5)を介して前記ノズルチャネル(13)に供給されて、前記ノズルチャネル(13)からノズル開口(14)を通って前記ガラス(27)上に輸送され、
前記接着剤(26)のビードが、前記塗布装置(1)を前記ガラス(27)に対して移動方向(28)に移動させることにより、前記ガラス(27)上に生成され、
前記ノズル本体(4)は、前記ノズル開口(14)が前記移動方向(28)とは反対側を向くように、前記塗布装置(1)の前記基体(2)に対して回転する
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記接着剤(26)は、ポリウレタンベースの接着剤を含む
方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法であって、
前記接着剤として、チキソトロピー性の水硬化性接着剤が使用される
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能なノズルを有する粘性接着剤用塗布装置と、これに対応する塗布装置を接着剤の塗布に使用することと、これに対応する、粘性接着剤の塗布方法とに関する。本発明は、好ましくは、ポリウレタンベースの接着剤を、ペイン、特にフロントガラスに塗布するのに使用される。
【背景技術】
【0002】
接着は、多数の応用例において、材料接合方法として使用されている。例えば、自動車の製造においてはますます使用されており、例えば、ボデー部材と、フロントガラス等のペインの両方が、他の部材に接着される。この場合、ポリウレタンベースの接着剤等、水と反応して硬化する接着剤が使用されることが多い。望ましくない箇所で接着剤が硬化してしまうことを防止するには、湿気としての水が周囲空気と共に侵入するのをできる限り防止する等、設備に関して多大な手間をかけなければならない場合がしばしばある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それを推し進めて、先行技術から公知である欠点を少なくとも部分的に克服するという目的、特に、湿気が塗布装置内に浸入するのを単純な手段でもって確実に防止する粘性接着剤用塗布装置を特定するという目的に、本発明は基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
独立請求項の特徴により、この目的は達成される。従属請求項は、いずれも、有利な発展を意図したものである。
【0005】
本発明による粘性接着剤用塗布装置は、粘性接着剤用の第1供給部を有する基体と、基体に対して軸の周りで回転可能であり、且つ、基体の一部を軸に対して径方向外側で取り囲むノズル本体とを備える。ノズル本体はノズルチャネルを有し、ノズルチャネルは、塗布装置から接着剤を排出するためのノズル開口を第1端に有し、且つ、流入口を第2端に有する。第2端とは、ノズルチャネルの、ノズル開口に対する他方の端である。ノズル本体と基体は、第1供給部の開口を介してノズルチャネルの流入口に、即ちノズルチャネル内に、接着剤を輸送できるように位置合わせされている。第1動的シールは基体を覆っており、この第1動的シールは、内側では基体の外壁に寄り掛かり、外側ではノズル本体の内壁に寄り掛かる。
【0006】
周方向において基体を取り囲む分離剤チャンバが形成されており、この分離剤チャンバは、径方向内側においては基体の外壁により画定されており、且つ、径方向外側においてはノズル本体の内壁により画定されている。基体に、分離剤用の第2供給部が形成されており、この第2供給部は、分離剤を供給するために、分離剤チャンバに流体接続されている。第1動的シールは、軸の方向において、分離剤チャンバとノズル本体のノズルチャネルの流入口との間に形成されている。
【0007】
径方向外面というのは、分離剤チャンバの領域における、供給部延長部の外面又は基体の外面であり、この外面は、周方向に延在しており、好ましくは、径方向に見て外側に在る円筒形表面を意味するものと理解される。ノズル本体の径方向内面とは、軸に関して周方向に延在している表面であり、好ましくは径方向に見て内側に在る円筒形表面を意味するものと理解される。分離剤としては、疎水性の物質、好ましくは粘性の物質が使用される。分離剤として、グリース又は油脂又はその両方が使用されるのが好ましい。このグリース又は油脂又はその両方は、分離層を形成し、従って水に対する障壁を形成する。これにより、分離剤チャンバ内の分離剤は、湿気をもつ空気が第1動的シールの封止点を通って侵入するのを、防止するか又は少なくとも著しく遅らせる。分離剤として、潤滑グリースが使用されるのが好ましい。潤滑グリースは、特に、少なくとも1つのパラフィンと、少なくとも1つのオレフィンと、少なくとも1つの飽和ナフテンと、少なくとも1つの部分不飽和ナフテンと、少なくとも1つの芳香族化合物とのうち少なくとも1つを含む。これの代わりに又はこれに加えて、分離剤として、フェニルアルカンスルホン酸塩、特に(C10‐C21)アルカンスルホン酸フェニルエステルが使用される。
【0008】
接着剤は、21℃の温度の水よりも粘性の高い粘稠液である。接着剤として、親水性接着剤、特にポリウレタンベースの接着剤が使用されるのが好ましい。塗布装置は、水分硬化性の一成分ポリウレタン接着剤を塗布するために使用されることが特に好ましく、特に、非収縮ペインと構造物(また、ブースター部分等のさらなる部分の少なくとも1つ)との接着用に使用される。接着剤は、好ましくはチキソトロピー性であり、そのため、接着剤は、塗布後初めは形状安定性であるが、接着対象の部材が押圧されると変形し、その後、接着剤が硬化するまでその形状を再び保持する。このことは、特に自動車製造において、ガラス製又はプラスチック製又はその両方のペイン等の脆弱な部材を接着する際に特に有利である。
【0009】
実施形態の一つにおいては、供給部延長部を形成可能であり、この供給部延長部は、基体の端領域を形成し且つ第1供給部のみを含み、第2供給部又は排出管は含まれない。第1供給部は、第2供給部及び排出管を越えて突出している。本例では、第1供給部の開口は、供給部延長部の領域内に形成されている。従って、第2供給部を通して供給される分離剤は、分離剤チャンバ内に導入することが可能である。この結果、分離剤チャンバ内の分離剤は、相応の大気湿気をもつ空気の浸入から接着剤を効果的に保護する。動作中、ノズル本体は、基体に対して回転する。接着剤は、基体の第1供給部を介して、ノズル本体内に、特にノズル本体のノズルチャネル内に輸送される。このノズルチャネルからノズル内に向けられ、ノズル開口を通って再び排出される。従って、基体に対するノズル本体の回転設計に起因して、接着剤に空気を供給してしまう唯一のインタフェースを封止するには、唯一の動的シールとして第1動的シールを形成すれば十分である。これにより、機器設計の観点においては単純な態様に塗布装置を設計する一方で、同時に、接着剤の不用な硬化に対する高水準の工程信頼性を提供することが可能になる。
【0010】
ノズル本体が基体に対して回転可能であるので、接着剤の排出を適合させることができ、特に排出する方向を適合させることができる。例えば、特定の接続領域内で第1部材が第2部材に接続することになっている場合、接着剤は、一方の部材のある領域に提供されなければならないことが多い。この場合、第1部材と第2部材との間の材料接続が接着剤によりなされるように第1部材と第2部材とを接触させるが、これらの部材のうち、接触がその上で行われる方の部材の接続領域内に、接着剤が塗布されるべきである。このため、通常は、接続領域内の表面上に接着剤のビードを提供する必要である。このビードを形成するためには、塗布装置を部材に対して移動させねばならない。接着剤のビードを定めたとおりに形成できるようにするために、ノズル開口をそれぞれ特定の向きに向けることが必要である。特に、ノズル本体のノズル開口は、塗布装置が部材に対して移動する方向とは反対側を向くようにしなければならない。このことは、ノズル本体が基体に対して回転可能であることにより可能になる。
【0011】
塗布装置は台に固定することができ、部材は台に対して移動可能であり、従って塗布装置に対して移動可能である。塗布装置は、この塗布装置を部材に対して移動させることができるマニピュレータ又はロボットアーム上に装着することもできる。ノズル本体の、基体に対する回転は、相応の駆動装置により確実になる。複雑な幾何学形状をした部材等に接着剤を提供しなければならないので、この駆動装置により例えば最大360°の、特に最大450°の広い角度範囲内での回転が可能であると有利である。
【0012】
有利なことに、基体に、分離剤チャンバと流体連通している排出管が形成されている。従って、排出管によって、分離剤チャンバから分離剤を排出可能である。これは連続的に行うこともでき不連続的に行うこともできる。そのため、新たな分離剤を用いて分離剤チャンバを連続的に洗い流すことが可能になる一方で、分離剤チャンバ内に分離剤が特定時間あった場合などには分離剤チャンバ内の分離剤を不連続的に交換することも可能になる。このようにして、分離剤中の汚染物の蓄積を回避することができる。
【0013】
排出管は、好ましくは軸と平行に延在している。これにより、排出管を有する基体をコンパクトに製造することが可能になる。a)第1供給部と、b)第2供給部とのうちの少なくとも1つは、軸と平行に延在していることも好適である。このことも、基体をコンパクトに製造することを可能にする。基体がコンパクトに設計されると、塗布装置の軽量化設計が可能になる。これにより、マニピュレータ又はロボットアーム等塗布装置を移動させる仕組みへの要求は少なくなる。
【0014】
好ましくは、第2動的シールは、分離剤チャンバの一方側に形成されており、この分離剤チャンバの一方側は、第1動的シールに面している側と反対側である。第2動的シールは、分離剤チャンバから分離剤が漏れ出るのを防止する。
【0015】
Oリングとして又は好ましくは回転シールとして設計されているa)第1動的シールとb)第2動的シールとのうち少なくとも1つを有することが好適である。回転シールとは、シールであって、特に、回転する部材(本例のノズル本体等)を、回転しない又は異なる回転周波数で回転する別の部材(本例の基体等)から当該シールを通して狙い通りに封止することのできるシールを意味するものと理解される。回転シールとしては、特に、ラジアルシャフトシール、アキシャルシャフトシール、メカニカルシール、保護接触シールが挙げられ、例えばフェルトリング、シーリングワッシャ、ピストンリング、Vリング、ロッドシール、ピストンシール、ワイパーが挙げられる。
【0016】
例示した動的シールのうちの少なくとも1つが、カラーを備えたVリングとして設計されることが特に好ましい。このVリングはそのカラーを緊締することにより、ノズル本体と同じ態様で回転せねばならないように固定可能である。これにより、基体とシールとの間に唯一の封止点ができる。通常、封止点の領域内に高圧は生じない。この場合、Vリングは、それ自体の予圧(通常は金属ばねにより加えられる)により封止する。ノズルが詰まった場合に圧力が増加することがあるが、シールはこれに対処することができる。それは、待機中の接着剤圧により、外部の部材上へのシールの接触圧も増加するからである。
【0017】
さらに、接着対象の表面に接着剤を塗布するために、本発明による塗布装置を使用することを提案する。接着剤は、好ましくはポリウレタンベースの接着剤を含む。
【0018】
さらに、本発明による塗布装置を用いて接着剤をペイン、特にフロントガラスに塗布するための方法を提案する。本方法では、接着剤は、第1供給部を介してノズルチャネルに供給されて、このノズルチャネルからノズル開口を通ってガラス上に輸送され、接着剤のビードが、塗布装置をガラスに対して移動方向に移動させることにより、ガラス上に生成され、ノズル本体は、ノズル開口が移動方向と反対側を向くように、塗布装置の基体に対して回転する。
【0019】
接着剤は、好ましくはポリウレタンベースの接着剤を含む。特に、接着剤は、空気の湿気又はブースター成分の助けを借りて硬化するチキソトロピー性の接着剤である。ペインは、好ましくは、自動車製造において、特にウィンドウのペインとして使用するペインである。ペインとは、好ましくは、フロントガラス、サイドウィンドウのペイン、又は自動車のリヤガラスである。
【0020】
本発明による方法によって、接着剤を、一層複雑な幾何学形状をしたペインに定めたとおりに塗布することが実現可能になる。特に、ペインの縁領域において、ボデー部材等の他の部材に接着することができる。従って、定めた通りに材料を他の部材と接続することが実現可能になる。
【0021】
以下で、図を参照して、本発明及び技術的環境をより詳細に説明する。本発明が、図示する例示的実施形態により限定されるべきでないことに留意すべきである。特段の記載のない限り、特に、図で説明する技術内容の部分的特徴を抽出し、それらを他の構成要素及び本明細書や図からの知見と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】接着剤をフロントガラスへ塗布する例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、粘性接着剤用塗布装置1の一例の第1の断面図である。塗布装置1は、基体2と、基体2に対して軸3の周りで回転可能なノズル本体4とを備える。基体2は、塗布装置1を動作させるのに必要な媒体の供給部全てを有する。本例では、一成分接着剤、特にポリウレタンベースの接着剤が使用される。この接着剤は、第1供給部5を通って基体2を通過し、ノズル本体4に供給される。二成分接着剤の場合、基体2は、第1供給部5を2つ(ここでは図示せず)有し、これらの第1供給部が、接着剤の個々の成分をノズル本体4に案内する。本例では、第1供給部5は、基体2内中央を軸3の方向に延在しており、ノズル本体4と位置合わせされている。基体2は第2供給部6も有し、この第2供給部6も、軸3の方向に延在しており、よって、第1供給部5と平行に延びている。この第2供給部6を介して、分離剤、特にグリースが供給される。使用済みの分離剤は、排出管7を通って排出される。排出管7は、軸3と平行に位置合わせされている。
【0024】
ノズル本体4は、交換可能なノズル8を有する。このノズル8は、用途に適合させることができ、且つ、容易に交換できる。ノズル8とノズル本体4の残余の部分との間のインタフェースは、静的に封止されており、また、ノズルチャネル13に外気が進入し得ないような態様で設計されている。ノズル本体4は、ノズルチャネル13を有し、このノズルチャネル13も、ノズル8内へ延びており、ノズル8を通って延在している。ノズルチャネル13を介して、接着剤は、ノズル8のノズル開口14に案内され、このノズル開口14を通して排出される。ノズル本体4は、基体2の一部に亘って軸3の方向に延在しており、この部分を同心円状に取り囲む。ノズル本体4は、駆動装置10の一部であるギヤ9に接続されており、このギヤによって、ノズル本体4は基体2に対して軸3の周りで回転することができる。
【0025】
ノズル本体4は、ノズル本体4と共に回転可能な分離剤チャンバ11を有する。動作中は、分離剤チャンバ11には、分離剤が充填されている。このため、第2供給部6が分離剤チャンバ11に連通している。使用済みの分離剤は、分離剤チャンバ11に接続されている排出管7を介して排出できる。この場合、塗布装置1の動作開始前に分離剤チャンバ11を充填しておき、分離剤チャンバ11の充填を不連続的に再開することが可能である。その際、新たな分離剤が第2供給部6を通して分離剤チャンバ11に押し込まれ、これにより、使用済みの分離剤が分離剤チャンバ11から排出管7に供給される。別のやり方としては、塗布装置1の動作中に、分離剤を、第2供給部6を介して、分離剤チャンバ11に連続的に供給して、この分離剤チャンバから排出管7に連続的に供給することもできる。この場合、排出管7は、使用済み分離剤用の容器(ここでは図示せず)に接続されている。分離剤チャンバ11の充填工程が連続的又は不連続的のいずれで行われるかについては、特に、接着剤及び用途の要件に応じて決まる。
【0026】
ノズル本体4は、基体2から、第1動的シール12により封止される。第1動的シール12は、特に回転シールとして設計されている。第1動的シール12は、本例では、供給部延長部17の領域内で基体2を取り囲む。供給部延長部は、第1供給部5の一部を含む。ノズルチャネル13は、塗布装置1から接着剤を排出するためのノズル開口14を第1端31に有するとともに、第1端31と反対にある第2端32に流入口19を有する。ノズル本体4と基体2は、本例では、第1供給部5の開口18を介してノズルチャネル13の流入口19に接着剤を輸送できるように位置合わせされている。第1供給部5の開口18は、供給部延長部17に設けられている。好ましくは及び本例においては、第1供給部5の開口18とノズルチャネル13の流入口19とは、軸3に対して垂直な平面内で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に重なっている。第1動的シール12は、供給部延長部17の領域内において、内側20では基体2の外面21に寄り掛かり、外側22ではノズル本体4の内壁23に寄り掛かる(詳細は
図3を参照)。動作中、接着剤は、供給部延長部17にある第1供給部5を通してつまり開口18を通して、流入口19内に輸送され、従ってノズルチャネル13内に輸送される。
【0027】
第1動的シール12は、システムの設計上の理由により、完全に気密ではないので、相応の湿気をもつ空気が第1動的シール12を通ってノズル本体4のノズルチャネル13内に侵入するのを許してしまう。その結果、接着剤との望ましくない反応が起こり得る。特に、ポリウレタンベースの接着剤は、吸湿性があり、水との反応中に硬化する。
【0028】
ノズル開口14を通して排出された接着剤が硬化することを制限するため、且つ、望ましくない硬化を防止するために、第2供給部6は分離剤チャンバ11に連通しており、これにより、分離剤を、この第2供給部6を介して分離剤チャンバ11に供給することができる。第1動的シール12は、軸3の方向において、分離剤チャンバ11とノズル本体4のノズルチャネル13の間に形成されている。従って、分離剤チャンバ11は、空気が第1供給部5からノズルチャネル13にそれを介して移行するに至ることのできる唯一の領域内にある。
【0029】
分離剤チャンバ11は、軸3の周方向において基体2を完全に取り囲んでいる。分離剤チャンバ11は、径方向内側においては、基体2の外壁15により画定されており、径方向外側においては、ノズル本体4の内壁23により画定されており、基体2の外壁15には分離剤が接している。これにより、空気が第1動的シール12の方へ侵入することが防止され、よって、空気がノズルチャネル13内に侵入することが防止される。このようにして、ノズルチャネル13内での接着剤の望ましくない硬化を防止することができる。この場合、第1動的シール12は、空気がノズルチャネル13内に侵入するのを防止する唯一のシールである。分離剤チャンバ11は、ノズル本体4と共に基体2の周りを回転する。
【0030】
供給部延長部17内にある第1供給部5の開口18と、ノズルチャネル13の回転可能な流入口19との間には、インタフェースが位置している。空気が、ノズル開口14から排出される前に接着剤に到達するのは、このインタフェースを通った場合のみである(
図3の細部図面も参照)。第1動的シール12は、軸3の方向に関しては、ノズルチャネル13への流入口19と分離剤チャンバ11との間に形成される。これにより、動的シール12は、分離剤チャンバ11と協働して、ノズル本体4の内部で接着剤に空気が接触しないことを確実となる。
【0031】
ノズル本体4は、軸受スリーブ16に、回転しないよう固定された態様で取付けられている。軸受スリーブ16は、基体2の一部を同心円状に取り囲んでおり、基体2に玉軸受17を介して装着されている。軸受スリーブ16には、ギヤ9が回転不能に固定されている。ギヤ9と噛み合うさらなるギヤや駆動装置10の一部としての鋸歯状ラック等によってギヤ9を作動させることにより、軸受スリーブ16が、基体2に対して回転し、これによりノズル本体4が回転し、ノズル開口14が回転する。これにより、接着剤をフロントガラスに塗布するときなどに、ノズル開口14がフロントガラス上で接着剤の塗布方向に最適に位置合わせされるように、ノズル本体4を回転させることが可能になる。
【0032】
塗布装置1は、三脚や、マニピュレータ、ロボットアームに接続することができる。
【0033】
さらに、第2動的シール29が、分離剤チャンバ11の一方側に形成されており、この分離剤チャンバ11の一方側は、第1動的シール12面する側とは反対側である。第2動的シール29は、分離剤が分離剤チャンバ11から漏れ出るのを防止し、分離剤チャンバ11が分離剤で汚れるのを少なくとも抑える。これにより、分離剤チャンバ11内で分離剤を使用する期間を長くすることができる。さらに、分離剤チャンバ11内の分離剤に空気が浸入するのを防止することにより、分離剤中の水分の蓄積が抑えられるか又は低減される。
【0034】
図2は、塗布装置1の一例の第2の断面図である。繰り返しを回避するために、ここでは
図1の第1断面図の記載を参照し、さらなる詳細のみを説明する。
図2は、接着剤用送り管24を示しており、この接着剤用送り管24により、接着剤を弁25を介して第1供給部5に供給できる。ノズル開口14は三角形の断面を有しており、そのため、断面が三角形である接着剤のビードを塗布装置1によって塗布することができる。
【0035】
図3は、供給部延長部17を取り囲む第1動的シール12を備えた塗布装置1の細部拡大図である。第1動的シール12は、内側20では供給部延長部17の外面21に寄り掛かり、外側22ではノズル本体4の内壁23に寄り掛かる。
【0036】
図4は、塗布装置1によって接着剤26をフロントガラス27の表面30に塗布する例を非常に概略的に示したものである。この場合、塗布装置1は、フロントガラス27に対して移動方向28に移動する。ノズル本体4は、ノズル開口14(ここでは図示せず)が移動方向28とは反対側を向くように、基体2に対して回転する。さらに、ノズル本体4が基体2に対して回転可能であることにより、継ぎ目を閉じることが実現可能になる。例えば、フロントガラス27に外縁全体にわたって接着剤26を付ける場合に、接着剤26のビードの端部が、対応するビードの先頭に接続されるように実現可能である。
【0037】
塗布装置1により、ポリウレタンベースの接着剤を表面に塗布することが可能になる。分離剤が貯蔵されている分離剤チャンバ11と第1動的シール12との相互作用により、接着剤がノズル開口14から排出される前に湿気が接着剤内に取り込まれることが効果的に防止される。第1動的シール12及び分離剤チャンバ11を形成すれば、このために必要な機器への出費を抑えられる。
【符号の説明】
【0038】
1 塗布装置、2 基体、3 軸、4 ノズル本体、5 第1供給部、6 第2供給部
7 排出管、8 ノズル、9 ギヤ、10 駆動装置、11 分離剤チャンバ、12 第1動的シール
13 ノズルチャネル、14 ノズル開口、15 外壁、16 軸受スリーブ、
17 供給部延長部、玉軸受
18 開口、19 流入口、20 内側、21 外面、22 外側、23 内壁、24 送り管、25 弁
26 接着剤、27 フロントガラス、28 移動方向、29 第2動的シール、30 表面
31 第1端、32 第2端、
【外国語明細書】