(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019610
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】熱可塑性物品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20220120BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220120BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220120BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08L23/04
C08L23/08
C08K3/34
A41D19/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113994
(22)【出願日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】PI2020003648
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(71)【出願人】
【識別番号】517390959
【氏名又は名称】トップ グローブ インターナショナル センディリアン ベルハッド
【氏名又は名称原語表記】TOP GLOVE INTERNATIONAL SDN BHD
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】ウォン チョン パン
(72)【発明者】
【氏名】フー コン ファー
(72)【発明者】
【氏名】ウン トン アウン
(72)【発明者】
【氏名】タン ヨーク メン
(72)【発明者】
【氏名】リム シー ティエン
(72)【発明者】
【氏名】ケセヴァーン エー/エル モーガン
【テーマコード(参考)】
3B033
4J002
【Fターム(参考)】
3B033AC01
4J002BB031
4J002BB032
4J002BB042
4J002BB052
4J002CP033
4J002DE266
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EG046
4J002EP016
4J002EP026
4J002FD173
4J002FD176
4J002FD203
4J002FD206
4J002GB00
4J002GC00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】熱可塑性物品を提供する。
【解決手段】本発明は、植物由来ポリエチレンと、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、又はこれらの組合せからなる群から選択される化石資源由来ポリエチレンのブレンドと、アンチブロッキング剤と、を含む熱可塑性材料のフィルムの1つ又は複数の層から構成される、熱可塑性物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来ポリエチレンと、
低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、又はこれらの組合せからなる群から選択される化石資源由来ポリエチレンのブレンドと、
アンチブロッキング剤と、
を含む熱可塑性材料のフィルムの1つ又は複数の層から構成される、熱可塑性物品。
【請求項2】
前記植物由来ポリエチレンは、糖類に富む植物材料、デンプンに富む植物材料、及びリグノセルロース系植物材料からなる群から選択されるバイオマスを原料とする、請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項3】
前記植物由来ポリエチレンは、5重量%~50重量%の範囲の量で存在する、請求項1又は2に記載の熱可塑性物品。
【請求項4】
前記化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される前記低密度ポリエチレンは、20重量%~40重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項5】
前記化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される前記線状低密度ポリエチレンは、20重量%~50重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項6】
前記化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される前記エチレン共重合体は、5重量%~20重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項7】
前記エチレン共重合体は、共重合したエチレン及びオクテン単位を含む、請求項6に記載の熱可塑性物品。
【請求項8】
使用される前記アンチブロッキング剤は、0.1重量%~3.0重量%の範囲の量で存在する、有機アンチブロッキング剤、無機アンチブロッキング剤、又はこれらの組合せである、請求項1に記載の熱可塑性物品。
【請求項9】
前記有機アンチブロッキング剤は、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、及びシリコーンからなる群から選択される、請求項8に記載の熱可塑性物品。
【請求項10】
前記無機アンチブロッキング剤は、ケイ酸アルミニウム、天然シリカ、合成シリカ、炭酸カルシウム、タルク、カオリン又はクレー、雲母、及びセラミック球からなる群から選択される、請求項8に記載の熱可塑性物品。
【請求項11】
使い捨て手袋である、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石資源由来ポリエチレンと植物由来ポリエチレンのブレンドとを含む熱可塑性材料のフィルムの1つ又は複数の層から構成される熱可塑性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨て手袋は、医療業界、科学業界、及び飲食料品又は化粧品産業等の産業界において、その着用者を、化学物質への曝露、生物災害汚染、及び環境危険有害性から保護することを目的として広く使用されている。飲食料品産業においては、作業者は、飲食料品に素手で触ることを防ぎ、調理中の食品の交差汚染を防ぐと共に、衛生基準も維持するために、使い捨て手袋を着用することが求められている。
【0003】
当該技術分野において知られているが、使い捨て手袋は、薄く、可撓性があり、通常は様々な高分子材料又は樹脂から製造されている。この種の材料の例として、これらに限定されるものではないが、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー(TPE)、及びポリエチレン(PE)を挙げることができる。他の例として、従来の使い捨て手袋は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレン等のポリマーの混合物からも製造されており、その理由は、これらの高分子材料が低コストであること、この高分子材料が不活性であること、及びこの使い捨て手袋が幅広い温度で可撓性を示すことにある。使い捨て手袋は、その用途の種類に関わらず、1度使用したら廃棄されるのが通常であるため、上記手袋は最終的には大量の廃棄物を生み出す一因となる。
【0004】
使い捨て手袋の製造に使用されているポリマーの殆どは、非再生可能な化石資源に由来する。その結果として、非再生可能プラスチックの廃棄物が環境に与える影響が地球規模の緊急事態を招いており、代替品が検討されている。再生可能ポリマーは何年も前から市販されている。これらのポリマーの中でも、再生可能ポリエチレン又はバイオポリエチレンは、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンの品目(portfolio)の一部であり、硬及び軟包装、容器、閉鎖具(closure)、袋等のプラスチック製品の製造に広く利用されている。当業者に知られているように、植物由来ポリエチレンは従来の化石資源由来ポリエチレンの物理的及び機械的性質を忠実に再現している。したがって植物由来ポリエチレンは、従来の化石資源由来ポリエチレンに関し確立されている用途があり、同じ経路でリサイクル可能であるという点で極めて汎用性が高い。
【0005】
再生可能資源から使い捨て手袋を製造するために確立された技術は少ない。例えば、(特許文献1(米国特許第9131737B2号明細書))には、第1メタロセン-線状低密度ポリエチレンと、第2メタロセン-線状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、線状低密度ポリエチレン、及びこれらの組合せからなる群から選択される様々なエチレン系ポリマーとを含む多層のフィルムを備え、各フィルム層の組成が異なる使い捨て手袋が開示されている。手袋の着用容易性が実質的に向上していることに加えて、把持力も改善されているものの、使用されているエチレン系ポリマーは非再生可能であり、石油資源由来であり、したがって、カーボンフットプリントを削減するという目標にそぐわない。それとは別に、(特許文献2(韓国公開特許第20150128158A号明細書))には、サトウキビの廃糖蜜から抽出されたエタノールを30重量%と、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンから選択することができるポリエチレンを70重量%とのバイオペレットを含むビニル材料を含む衛生用手袋が開示されている。再生可能な植物由来ポリマーを組み込むことにより使い捨て手袋を製造するための他の信頼できそうな技術が(特許文献3(米国特許出願公開第20150208743A1号明細書))に開示されている。当該特許文献においては、使い捨て手袋等の薄肉の物品を形成するための、可塑剤中に分散させたポリ乳酸重合体を含むポリ乳酸重合体分散体が提供されている。当該文献には、ジャガイモの皮、トウモロコシ、コムギ、及び乳製品の廃棄物を原料とする糖類を微生物発酵させることによりポリ乳酸重合体を製造することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、非再生可能な化石資源由来ポリエチレンの使用を削減及び/又は代替するために、再生可能な植物由来ポリエチレンを組み込んだ熱可塑性物品が必要とされている。植物由来ポリエチレンは、熱可塑性物品の製造において主要な加工助剤として作用し、その場合、植物由来ポリエチレンは従来の化石資源由来ポリエチレンの物理的及び機械的性質を忠実に再現することができ、それにより同一経路でリサイクルすることができる。本発明は、そのような解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、植物由来ポリエチレン、化石資源由来ポリエチレンのブレンド、及びアンチブロッキング剤を含む熱可塑性材料を提供することにある。有利には、植物由来ポリエチレンは、従来の化石資源由来ポリエチレンの物理的及び機械的性質を忠実に再現している。
【0008】
本発明の他の態様は、植物由来ポリエチレン、化石資源由来ポリエチレンのブレンド、及びアンチブロッキング剤を含む熱可塑性材料から作製されたフィルムを提供することにある。
【0009】
本発明の更なる一態様は、植物由来ポリエチレン、化石資源由来ポリエチレンのブレンド、及びアンチブロッキング剤を含む熱可塑性材料のフィルムの1つ又は複数の層から構成される熱可塑性物品を提供することにある。特に、この熱可塑性物品は、引張強さ、破断伸度、シール強度、及び摩擦係数の低減という観点で従来のポリエチレン手袋に匹敵する機械的性質を有する使い捨て手袋である。
【0010】
上述の少なくとも1つの目的の全部又は一部は、植物由来ポリエチレンと、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、又はこれらの組合せからなる群から選択される化石資源由来ポリエチレンのブレンドと、アンチブロッキング剤と、を含む熱可塑性材料のフィルムの1つ又は複数の層から構成される熱可塑性物品について記載する本発明の実施形態によって満たされる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、糖類に富む植物材料、デンプンに富む植物材料、及びリグノセルロース系植物材料からなる群から選択されるバイオマスを原料とする植物由来ポリエチレンを開示する。
【0012】
本発明の他の好ましい実施形態においては、5重量%~50重量%の範囲の量で存在する植物由来ポリエチレンを開示する。
【0013】
好ましくは、化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される低密度ポリエチレンは、20重量%~40重量%の範囲の量で存在する。
【0014】
好ましくは、化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される線状低密度ポリエチレンは、20重量%~50重量%の範囲の量で存在する。
【0015】
好ましくは、化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用されるエチレン共重合体は、5重量%~20重量%の範囲の量で存在する。
【0016】
より好ましくは、エチレン共重合体は、共重合したエチレン及びオクテン単位を含む。
【0017】
好ましくは、使用されるアンチブロッキング剤は、有機アンチブロッキング剤、無機アンチブロッキング剤、又はこれらの組合せであり、これらは0.1重量%~3.0重量%の範囲の量で存在する。
【0018】
より好ましくは、有機アンチブロッキング剤は、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、及びシリコーンからなる群から選択される。
【0019】
より好ましくは、無機アンチブロッキング剤は、ケイ酸アルミニウム、天然シリカ、合成シリカ、タルク、カオリン又はクレー、雲母、及びセラミック球からなる群から選択される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、熱可塑性物品は使い捨て手袋である。
【0021】
当業者であれば、本発明が、その目的を遂行するため、並びに言及されている成果及び利点に加えてそこに本来備わっているものを得るために充分に適合されていることを容易に理解するであろう。本明細書に記載する実施形態は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の明細書及び図面を参照ながら、本発明の好ましい実施形態に従い本発明を説明することとする。但し、本発明の好ましい実施形態の記載を限定することは単に本発明の検討を容易にすることを目的としており、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な修正を考案できることが想定されていることを理解されたい。
【0023】
本発明は、植物由来ポリエチレン、化石資源由来ポリエチレンのブレンド、及びアンチブロッキング剤を含む熱可塑性材料に関する。熱可塑性材料は、好ましくは、フィルムの層に形成される。本発明によれば、熱可塑性物品は、上に述べたフィルムの1つ又は複数の層から構成される。使い捨て手袋は、引張強さ、破断伸度、シール強度、及び摩擦係数に関し要求される機械的性質を満足するように製造される。本発明の使い捨て手袋の産業用途としては、これらに限定されるものではないが、飲食料品産業を挙げることができる。
【0024】
上に述べたように、フィルムの層の熱可塑性材料は、植物由来ポリエチレンと、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される化石資源由来ポリエチレンのブレンドと、アンチブロッキング剤とを含む。本発明に用いられる植物由来ポリエチレンは、糖類に富む植物材料、デンプンに富む植物材料、及びリグノセルロース系植物材料からなる群から選択されるバイオマスを原料とする。例えば、糖類に富む植物材料はサトウキビ及びテンサイであり、デンプンに富む植物材料はコムギ穀粒及びトウモロコシ穀粒であり、リグノセルロース系植物材料は木質系廃棄物である。本発明の好ましい実施形態によれば、植物由来ポリエチレンは、5重量%~50重量%の範囲の量で存在する。有利には、本発明に用いられる植物由来ポリエチレンは、低密度ポリエチレンや線状低密度ポリエチレン等の従来の化石資源由来ポリエチレンの物理的及び機械的性質を忠実に再現している。したがって、フィルムを形成するために本発明を具現化する場合のように、植物由来ポリエチレンに従来の化石資源由来ポリエチレンを組み込んでも、それを用いて製造した使い捨て手袋等の熱可塑性物品の物理的及び機械的性質は変化しないと思われる。
【0025】
本発明に記載する熱可塑性物品を製造するために必要とされる熱可塑性材料のフィルムを得るためには、化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される低密度ポリエチレンは、20重量%~40重量%の範囲の量で存在する。更に、化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用される線状低密度ポリエチレンは、20重量%~50重量%の範囲の量で存在する。化石資源由来ポリエチレンのブレンドにおいて、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンを組み合わせることにより、熱可塑性材料のフィルムの引張強さ及び伸びを大幅に向上することができる。更に、化石資源由来ポリエチレンのブレンドに使用されるエチレン共重合体は、5重量%~20重量%の範囲の量で存在する。本発明の好ましい実施形態によれば、エチレン系ポリマーのブレンドのエチレン共重合体は、共重合したエチレン及びオクテン単位から構成される。換言すれば、本明細書において使用されるエチレン共重合体は、基本的にエチレン-1-オクテン共重合体である。有利には、エチレン-1-オクテン共重合体は、熱可塑性材料に更に引張強さ及び易シール性を付与する。
【0026】
上に述べたように、熱可塑性材料のフィルムは、植物由来ポリエチレン及び化石資源由来ポリエチレンのブレンドと共に、その中に組み込まれたアンチブロッキング剤を更に含む。アンチブロッキング剤とは、概して、キャスティングロールに巻き取る際やフィルムを積み重ねる工程等において隣接する2つのフィルムの層が互いに押し付けられてくっつき合うことにより発生するブロッキングを防ぐように機能するプラスチック改質剤である。概して、アンチブロッキング剤は、フィルム表面同士の接触を最小限に抑えることを目的として、フィルム表面に微小突起を形成するように混ぜ込まれる。アンチブロッキング剤としては、ケイ酸アルミニウム、天然シリカ、合成シリカ、炭酸カルシウム、タルク、カオリン又はクレー、雲母、及びセラミック球等の無機材料が挙げられる。それ以外の有機アンチブロッキング剤の例としては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、及びシリコーンが挙げられる。好ましくは、本発明におけるアンチブロッキング剤は、0.1重量%~3.0重量%の範囲の量で存在するケイ酸アルミニウムである。熱可塑性材料のフィルムから構成される本発明の熱可塑性物品は、上に述べたようにケイ酸アルミニウムが混ぜ込まれていることから、アンチブロッキング性を本来備えたものとなり、したがって、熱可塑性物品の作製に用いた場合に、熱可塑性材料の層の間の摩擦接触がより低くなる。
【0027】
特に、植物由来ポリエチレンと、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン共重合体、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される化石資源由来ポリエチレンのブレンドとを含み、アンチブロッキング剤が混ぜ込まれた熱可塑性材料は、従来のポリエチレン手袋が持つ物理的及び機械的性質を保持している。本発明に関連する熱可塑性材料は、植物由来ポリエチレンと、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、及びエチレン共重合体から構成される化石資源由来ポリエチレンの充分に混合されたブレンドと、を含む2種以上のエチレン系ポリマーを含む。熱可塑性材料の成分を混合した後、熱可塑性材料のフィルムを溶融押出法及び押出ブロー成形法により製造することができる。
【0028】
本発明によれば、熱可塑性物品は使い捨て手袋である。使い捨て手袋の製造方法は当該技術分野において知られている。したがって、本発明の使い捨て手袋の製造方法は詳細に説明しないこととする。本発明を理解するために、本明細書における使い捨て手袋の製造方法は、当該技術分野においてよく知られている溶融押出法から開始する。それにより、上に述べた熱可塑性材料を従来の押出機内で溶融し、流延してロールに巻き取ることによりフィルムの層を形成した後、加熱された金型を用いてヒートシールすることにより、完成した使い捨て手袋となる。特に、本発明の使い捨て手袋は、熱可塑性材料のフィルムの少なくとも2つの層をヒートシールした後、充分にヒートシールされたフィルムの2つの層から、熱可塑性物品、例えば、使い捨て手袋を形成することができるように、手袋以外の残余部分を除去するように引き裂く処理を行うことにより製造される。一例として、使い捨て手袋は、少なくとも2つの熱可塑性材料のフィルムの層から構成され、典型的には、所要の使い捨て手袋に必要な手の外形に一致する溶着ラインに沿って互いに接着されている。したがって、本発明の使い捨て手袋は、着用者の手をその中に受容するように適合されている。
【0029】
上に述べた方法により製造される本発明の使い捨て手袋は、従来のポリエチレン手袋と実質的に同等の機械的性質を提供する。特に、本発明の好ましい実施形態において、本発明の使い捨て手袋は、試験方法ASTM D412に準拠して測定された引張強さが少なくとも22MPaであり、破断伸度が少なくとも558%であり、シール強度が少なくとも1.60Nである。有利には、本発明の使い捨て手袋は、空気送入試験(air pump test)により測定されたシール強度が少なくとも3kPaに実質的に相当し、且つ社内基準に適合する摩擦係数を有することを特徴とする。本発明の好ましい実施形態によれば、使い捨て手袋は、試験方法ASTM D1894に準拠して測定された摩擦係数が0.3以下である。更に本発明の使い捨て手袋は、厚みが0.005mm~0.050mmの範囲にある。
【0030】
本開示には、添付の特許請求の範囲に含まれるもの及び上述の記載に含まれるものが包含される。本発明を、ある程度具体的なその好ましい形態により説明してきたが、好ましい形態の本開示は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲から逸脱することなく構成の詳細並びに部品の組合せ及び配置に関し多くの変更を行うことが可能であることが理解される。
【実施例0031】
本発明の好ましい実施例を例示するために以下に示す非限定的な実施例を実施した。
【0032】
実施例1:使い捨て手袋を構成するための熱可塑性材料のフィルム
以下に示す成分を含む本発明による熱可塑性材料のフィルムを作製した。組成を次の表1に重量%で示す。
【0033】
【0034】
上述の成分を混合し、フィルムとして押出し及び流延し、ヒートシールすることにより使い捨て手袋を形成した。
【0035】
上述の組合せを用いて製造した使い捨て手袋を、試験方法ASTM D412、ASTM D1894、及び空気送入試験に供した。アンチブロッキング剤であるケイ酸アルミニウム含む又は含まない上に述べたポリエチレン手袋を製造し、従来の化石資源由来ポリエチレンから作製した従来のポリエチレン手袋と比較する。結果を次の表2に示す。
【0036】
【0037】
これらの試験の結果を上の表2に示したが、ケイ酸アルミニウムを含む本発明の使い捨て手袋は引張強さ及び破断伸度に関し従来のポリエチレン手袋と同等の性能を示した。更に、ケイ酸アルミニウムを含まない及び含む本発明の使い捨て手袋の異なる部分(指先部分、指股部分、及び裾部分)で試験したシール強度は、従来のポリエチレン手袋に匹敵する結果を示した。更に、ケイ酸アルミニウムを含まない及び含む本発明の使い捨て手袋は、空気送入試験によるシール強度の結果からも同等であると結論付けられた。ケイ酸アルミニウムを含まない及び含む本発明の使い捨て手袋の摩擦係数も、従来のポリエチレン手袋と同等である。ケイ酸アルミニウムを含まない及び含む本発明の使い捨て手袋の厚みは、厚みが0.005mm~0.050mmの範囲にある従来のポリエチレン手袋と同程度であった。