(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019626
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/52 20060101AFI20220120BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20220120BHJP
A61B 8/08 20060101ALI20220120BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G01N33/52 A
G01N21/78 A
A61B8/08
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021115491
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】20305804
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16/929,749
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FIREWIRE
2.BLUETOOTH
3.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】520180611
【氏名又は名称】エコセンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・サンドラン
(72)【発明者】
【氏名】ベロニク・ミエット
(72)【発明者】
【氏名】マリー・デストロ
(72)【発明者】
【氏名】エスピール・カハット
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・コステレスキ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G054
4B063
4C601
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CB26
2G045DA20
2G045FB01
2G045FB19
2G045JA03
2G054AA07
2G054AB02
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2G054BB07
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2G054JA01
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2G054JA05
2G054JA08
2G054JA09
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ26
4B063QS39
4C601DD19
4C601DD23
4C601EE09
4C601EE12
4C601EE14
(57)【要約】
【課題】被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】このシステム(1)は、エラストグラフィデバイス(2)と、血液検査読み取り機(3)と、関連する血液検査ディスポーザブル(10)とを含み、ディスポーザブルは、被験者から毛細血管血液試料を採取するための毛細管を含み、血液試料中の少なくとも1つの肝酵素を検出するのに適した試薬を含み、血液検査読み取り機は、エラストグラフィデバイスに動作可能に接続され、制御および処理システム(4)は、エラストグラフィデバイスと血液検査読み取り機とを制御しエラストグラフィデバイスによって測定された少なくとも1つの機械的パラメータの値と少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の前記健康状態に関係するパラメータを決定するように構成される。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステム(1;1’;1”)であって、
- 肝臓における剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成されたエラストグラフィデバイス(2;2’;2”)と、
- 血液検査読み取り機(3)、および血液検査読み取り機(3)と関連付けられた血液検査ディスポーザブル(10)であって、血液検査ディスポーザブルは毛細血管血液試料を受け取り、血液検査読み取り機(3)に挿入されるように構成され、血液検査読み取り機は前記血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するように構成される、血液検査読み取り機および血液検査ディスポーザブルと
- 少なくともプロセッサとメモリとを含む制御および処理システム(4;4’;4”)と
を含み、
- 血液検査ディスポーザブル(10)は、
- 前記指から前記血液試料を採取するための毛細管(13)と、
- 前記血液試料中の前記少なくとも1つの肝酵素を検出するのに適した試薬と
を含み、
- 血液検査読み取り機(3)は、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)に動作可能に接続されており、
制御および処理システムは、以下のステップ、
- S1 - エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)によって測定された前記少なくとも1つの機械的パラメータの値を取得することと、
- S2 - 血液検査読み取り機(3)によって測定された、被験者から採取された血液試料中の前記少なくとも1つの肝酵素の濃度の値を取得することと、
- S3 - 前記少なくとも1つの機械的パラメータの値と前記少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、被験者の肝臓の健康状態に関係する前記パラメータを表すデータを出力することと
を実行するようにプログラミングされ、
健康状態に関係する前記パラメータは、所与の健康状態分類の様々なステージ(F1、F2、F3、F4)のうちで識別された健康ステージまたは病気ステージであるか、または前記少なくとも1つの機械的パラメータの値と前記少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れたベンチマークパラメータであるか、または前記健康ステージもしくは病気ステージと前記ベンチマークパラメータの前記値との両方によって表され、
制御および処理システム(4;4’;4”)は、前記少なくとも1つの機械的パラメータの測定および前記濃度の値の測定が、事前定義された時間シーケンスにしたがって、または事前定義された条件付きの測定手順にしたがって行われるように、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)および血液検査読み取り機(3)を制御するように構成される、システム(1;1’;1”)。
【請求項2】
制御および処理システム(4;4’;4”)が、単一のタイムフレーム内で、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)と血液検査読み取り機(3)とが、それぞれエラストグラフィ測定処理と前記血液試料の採取および分析を含む血液検査処理とを開始するように、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)と血液検査読み取り機(3)とを制御するようにプログラミングされる、請求項1に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項3】
制御および処理システム(4;4’;4”)が、前記タイムフレームが最大でも30分の持続期間(TS;TS’)を有するようにプログラミングされる、請求項2に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項4】
血液検査ディスポーザブル(10)が、前記毛細管(13)を用いて採取された前記血液試料が最大でも60マイクロリットルの量を有するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項5】
制御および処理システム(4;4’;4”)が、以下のステップ、
- S10 - エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)がエラストグラフィ測定処理を開始するようにエラストグラフィデバイスを制御することと、その後
- 前記ステップS1と、その後
- ステップS1で取得された前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が所与の基準を満たす場合、
- S3’ - 被験者の血液中の前記少なくとも1つの肝酵素の濃度にかかわらず、前記少なくとも1つの機械的パラメータの値を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、前記パラメータを表すデータを出力することと、一方、
- 前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が前記基準を満たさない場合、
- S20 - 被験者の肝臓健康評価のために血液検査が推奨されることを明示した情報、および/または操作者(100)に対して被験者から毛細血管血液試料を採取し、この血液試料の分析を始めることを促す情報を操作者インタフェース(5;5’)が送信するように、前記操作者インタフェース(5;5’)を制御することと、その後
- 前記ステップS2と、その後
- 前記ステップS3と
を実行するようにプログラミングされる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項6】
制御および処理システム(4;4’;4”)が、平均して肝臓が健康障害を患っていない値と、肝臓が健康障害を患っている可能性があるという値との間の境界に対応する閾値を前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が超えたとき、前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が前記基準を満たしていないと決定するようにプログラミングされる、請求項5に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項7】
制御および処理システム(4;4’;4”)が、以下のステップ、
- S20’ - 被験者から毛細血管血液試料を採取し、その後、血液検査ディスポーザブル(10)が血液検査読み取り機(3)に挿入されたら、この血液試料の分析を始めることを、操作者(100)に促す情報を操作者インタフェース(5;5’)が送信するように前記操作者インタフェース(5;5’)を制御することと、
- S10 - エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)がエラストグラフィ測定処理を開始するようにエラストグラフィデバイス(2;2’;2”)を制御することと、その後
- 前記ステップS1およびS2と、その後、
- 前記ステップS3と
を実行するようにプログラミングされる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項8】
- 制御および処理システム(4;4’;4”)のメモリにおいて、様々な計算式が前記少なくとも1つの機械的パラメータの値の様々な範囲と関連付けられ、各計算式が肝臓健康評価のための所与のベンチマークパラメータに対応し、各計算式が、前記少なくとも1つの機械的パラメータと前記血液試料中の前記少なくとも1つの肝酵素の濃度とから、対応するベンチマークパラメータを計算することを可能とし、
- 制御および処理システム(4;4’;4”)が、被験者の肝臓に関して前もって測定された前記少なくとも1つの機械的パラメータの値を、それらの様々なベンチマークパラメータにそれぞれ関連付けられた値の範囲と比較することによって、それらのベンチマークパラメータのうちの1つを選択するようにプログラミングされ、
- 制御および処理システム(4;4’;4”)が、ステップS3において、前もって選択されたベンチマークパラメータの値を、このベンチマークパラメータに関連付けられた式にしたがって計算するようにプログラミングされる、
請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項9】
毛細管(13)が、前記ディスポーザブル(10)の一部(12)に対して固定される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項10】
血液検査ディスポーザブル(10)が、
- 前記試薬を含むカートリッジ(11)と、
- 取り外し可能なプラグ(12)とを含み、
毛細管(13)が取り外し可能なプラグ(12)またはカートリッジに固定されており、プラグ(12)およびカートリッジ(11)が、
- プラグ(12)がカートリッジ(11)から取り外されることが可能であり、その後、カートリッジに再度差し込まれることが可能なように、および
- プラグ(12)がカートリッジ(11)に差し込まれると、毛細管(13)がディスポーザブル(10)の内部で収容され、毛細管によって採取された血液試料が前記試薬と接触するように
構成される、請求項9に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの肝酵素が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下「AST」)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(以下「ALT」)、γグルタミルトランスフェラーゼ(以下「GGT」)のうちの1つであり、
前記試薬が、前記少なくとも1つの肝酵素を光学的に検出するのに適しており、
血液試料の少なくとも一部が第1の反応ゾーン(Z1)において前記試薬と混合するように、血液検査ディスポーザブル(10)が構成され、
血液検査読み取り機(3)が、第1の反応ゾーン(Z1)において光の反射率および/または透過率測定を用いて、前記血液試料中の前記少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するために、少なくとも、光源と、光センサとを含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項12】
血液検査ディスポーザブル(10)が、血漿試料を得るために被験者から採取された血液試料から赤血球を濾過するように構成された濾過膜(110)を含み、前記血漿試料の少なくとも一部を前記試薬と接触させるように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項13】
- 前記少なくとも1つの肝酵素が、ASTまたはALTであり、
- 前記試薬が、それぞれ、α-ケトグルタル酸と、L-アスパラギン酸またはL-アラニンを含み、
- 血液検査ディスポーザブル(10)が、以下の触媒、ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを含み、前記少なくとも1つの肝酵素が前記試薬と混合されたときに生じる反応のセットの生成物と反応したときに着色される指示薬を含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項14】
- 血液検査ディスポーザブル(10)が、前記触媒の活性のオンボードコントロール(119)を含み、前記オンボードコントロール(119)が、
- オキサロ酢酸を含む乾燥コントロール基板(116)と、
- コントロール基板(116)とは別個である、前記触媒と前記指示薬とを含む乾燥コントロールパッド(117)とを含み、、
- 血液検査ディスポーザブル(10)が血液検査読み取り機(3)に挿入されたときに、または前記血液試料が血液検査ディスポーザブル(10)において受け取られたときに、液体がコントロール基板(116)およびコントロールパッド(117)に浸透するように、血液検査ディスポーザブル(10)が構成される、
請求項13に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項15】
前記液体が、血液検査ディスポーザブル(10)が血液検査読み取り機(3)に挿入されると壊れるように構成された壊すことができるブリスタ(114)に含まれる緩衝液である、請求項14に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項16】
前記血液試料または被験者から採取された別の血液試料中の血小板数を決定可能なようにさらに構成され、制御および処理システム(4;4’;4”)が、前記血小板数も考慮に入れて、ステップS3において、被験者の肝臓の健康状態に関係する前記パラメータを決定するようにプログラミングされる、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム(1;1’;1”)。
【請求項17】
システム(1;1’;1”)を用いて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法であって、システム(1;1’;1”)は、
- 肝臓における剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成されたエラストグラフィデバイス(2;2’;2”)と、
- 血液検査読み取り機(3)、および血液検査読み取り機(3)と関連付けられた血液検査ディスポーザブル(10)であって、血液検査ディスポーザブルは毛細血管血液試料を受け取り、血液検査読み取り機(3)に挿入されるように構成され、血液検査読み取り機は前記血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するように構成される、血液検査読み取り機(3)および血液検査ディスポーザブル(10)と、
- 少なくともプロセッサとメモリとを含む制御および処理システム(4;4’;4”)と
を含み、
- 血液検査ディスポーザブル(10)は、
- 前記指から前記血液試料を採取するための毛細管(13)と、
- 前記血液試料中の前記少なくとも1つの肝酵素を検出するのに適した試薬と
を含み、
- 血液検査読み取り機(3)は、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)に動作可能に接続されており、
方法は、以下のステップ、
- S100 - 試験対象の被験者の肝臓に対して、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)を使用して前記機械的パラメータの値を測定することと、
- S1 - 制御および処理システム(4;4’;4”)によって、エラストグラフィデバイスによって測定された前記少なくとも1つの機械的パラメータの値を取得することと、
- S200 - 前記毛細管(13)を用いて被験者から毛細血管血液試料を採取し、その後、血液検査ディスポーザブル(10)を血液検査読み取り機(3)に導入することと、
- S2 - 制御および処理システム(4;4’;4”)によって、血液検査読み取り機(3)によって測定された、被験者から採取された血液試料中の前記少なくとも1つの肝酵素の濃度の値を取得することと、
- S3 - 制御および処理システムによって、前記少なくとも1つの機械的パラメータの値と前記少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、被験者の肝臓の健康状態に関係する前記パラメータを表すデータを出力することと
を含み、
前記パラメータは、所与の健康状態分類の様々なステージ(F1、F2、F3、F4)のうちで識別された健康ステージまたは病気ステージであるか、または前記少なくとも1つの機械的パラメータの値と前記少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れたベンチマークパラメータであるか、または前記健康ステージもしくは病気ステージと前記ベンチマークパラメータの前記値との両方によって表され、
制御および処理システム(4;4’;4”)は、前記少なくとも1つの機械的パラメータの測定および前記濃度の値の測定が、事前定義された時間シーケンスにしたがって、または事前定義された条件付きの測定手順にしたがって行われるように、エラストグラフィデバイス(2;2’;2”)および血液検査読み取り機(3)を制御する、方法。
【請求項18】
ステップS100およびS200が、最大のプリセットの持続期間(Tm;Tm’)を有する単一のタイムフレーム内で実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップS100およびS200が最大のプリセットの持続期間(Tm;Tm’)を有する単一のタイムフレーム内で実行されないときに、制御および処理システムがエラーメッセージを出力する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップS100およびS1が最初に実行され、その後、以下のステップ、
- ステップS1で取得された前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が所与の基準を満たす場合、
- S3’ - 制御および処理システム(4;4’;4”)が、被験者の血液中の前記少なくとも1つの肝酵素の濃度にかかわらず、前記少なくとも1つの機械的パラメータの値を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、健康状態に関係する前記パラメータを表すデータを出力することと、一方、
- 前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が前記基準を満たさない場合、
- S20 - 制御および処理システム(4;4’;4”)は、被験者の肝臓健康評価のために肝酵素濃度測定が推奨されることを明示した情報、および/または操作者(100)に対して被験者から毛細血管血液試料を採取し、この血液試料の分析を始めることを促す情報を操作者インタフェース(5;5’)が送信するように、前記操作者インタフェース(5;5’)を制御することと、その後
- 前記ステップS200および前記ステップS2と、その後
- 前記ステップS3と
を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
制御および処理システム(4;4’4”)が、前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が、平均して肝臓が健康障害を患っていない値と肝臓が健康障害を患っている可能性がある値との間の境界に対応する閾値を超えたときに、前記少なくとも1つの機械的パラメータの値が前記基準を満たしていないと決定する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、特に肝硬度(liver stiffness)測定と被験者の血液中の肝酵素濃度との両方に基づいて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動制御トランジェントエラストグラフィによって測定される肝硬度は、繊維症などの慢性の肝臓病を診断するのに効率的なツールであると示されてきた。例えば、「Transient elastography:a new noninvasive method for assessment of hepatic fibrosis」、Ultrasound in Medicine and Biology、Volume 29、Number 12、2003年、L.Sandrin等著の論文は、肝硬度が肝繊維症と非常に相関することを示している。しかしながら、肝硬度は、炎症や鬱血などの他の要因による影響を受ける。
【0003】
興味深いことに、肝炎は、血液中の1つ以上の肝酵素の濃度を測定することによって評価されることが可能である(肝炎は、通常、それらの酵素の高いレベルにつながるため)。したがって、「Liver stiffness: a novel parameter for the diagnosis of liver disease」、Hepatic Medicine: Evidence and Research、vol.2、49-67頁、2010年、S.MullerおよびL.Sandrin著による論文に示されるように、血液中の1つ以上の肝酵素の濃度を知ることは、肝硬度の測定値のより良好な解釈を可能とし、潜在的な炎症/鬱血と潜在的な繊維症/肝硬変との両方に関する確実な情報を得ることができるようにする。
【0004】
被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定する際にこれらの2つのパラメータ(血清学的および機械的)を考慮に入れて収集するためには、肝硬度と肝酵素の濃度との両方に依存し、被験者の肝臓の様々な健康状態(または病状)の識別を可能にするように特に設計されたベンチマークパラメータの値を計算してもよい。そのようなベンチマークパラメータは、医学著作物において「スコア」として示される場合がある。例えば、「FibroScan-AST(FAST) score for the non-invasive identification of patients with non-alcoholic steatohepatitis with significant activity and fibrosis: a prospective derivation and global validation study」、The Lancet, Gastroenterology and Hepatology、Volume 5、issue 4、362-373頁、2020年4月1日、P.Newsome等著の論文は、肝硬度「LSM」、「CAP」(Controlled Attenuation Parameter)と呼ばれる超音波減衰量パラメータ、および血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の濃度を考慮に入れた「FAST」と呼ばれるベンチマークパラメータを示す。このベンチマークパラメータは、以下の式F1によって計算される(ここでASTは、IU/Lで表される):
【0005】
【0006】
いずれにしても、肝硬度と1つ以上の肝酵素の濃度との両方を考慮に入れることによって被験者の潜在的な肝臓病を検出する、および特徴づけるためには、まずそれらの2つの量を測定しなければならない。
【0007】
肝硬度は、通常、振動制御トランジェントエラストグラフィによって測定される。そのような測定は完全に非侵襲的なものであり、通常、医療イメージングラボ環境で行われる。さらに、被験者の血液中の1つ以上の肝酵素の濃度を決定するために、生物試料を採取する訓練を受けた医療専門家がシリンジを用いて静脈血の試料を採取し、この血液試料が分析される生物医学的分析研究所にその試料を送る。肝硬度と肝酵素濃度の値の両方が利用可能になると、例えば上記で示したようなベンチマークパラメータを計算することによって、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータが評価されることが可能である。
【0008】
しかしながら、この処理方法はいくつかの欠点がある。
【0009】
まず、試験スタッフおよび環境に関して、そのような静脈血に基づく血清学的分析と肝硬度測定とに対する要件が大幅に異なる。したがって、それらの2つの試験は、一般に、異なる場所または環境で(したがって異なるときに)行われ、それが全体的な手順を複雑にし、より費用がかかり、試験の部分的な結果を転送する際にエラーが生じる可能性を増加させる。
【0010】
さらに、この手順において、血液分析結果は即座に利用可能とはならず、完全な診断は事後的(a posteriori)にのみ実現され得る。したがって、組み合わされた試験結果(物理的および血清学的の両方)が例えばFASTパラメータの異常に高い値に対応して最終的に潜在的な肝臓病を示したときは、医療専門家は、診断を確認するためのこれらの試験の一方または両方を反復するポジションにはもはやおらず、それが偽陽性検出率を増加させる場合がある。
【0011】
また、硬度および/または超音波減衰測定に関する血液分析のこの種の独立性が被験者の血液の系統的分析につながる一方、そのような血液検査はいくつかのシチュエーションにおいては無駄になってしまう。例えば、肝硬度の陰性適中率(negative predictive value:NPV)が優良であった場合に、通常6-7kPa未満の非常に低い肝硬度は、被験者の血液中の肝酵素の濃度にかかわらず(上記で参照したMullerおよびSandrinによる論文で説明されたように)試験対象の被験者が何らかの繊維症を患っている可能性はないことを示す。したがって、そのようなシチュエーションでは、通常なされるような被験者の血液を検査することは、リソースの無駄な消費である。
【0012】
静脈血を採取することが、非常に大量の血液を自由に使用可能とさせ、それによって精密で正確な血液分析を可能とする。しかしながら、その代わりとして、血液資料採取とその分析との間での遅延(さらにはおそらくは移動時間)を増加させる。また、この遅延は病院または医療検査センター間で、さらには同一の病院または医療検査センターでも日毎に顕著に異なることとなる。また、血液試料中の肝酵素の化学的活性は、試料が採取されると、時間の経過とともに顕著に減少する。したがって、所与の血液試料において、実際に測定された所与の肝酵素の濃度(すなわち、この酵素の明らかな濃度)は、採取と分析との間の遅延によって強く変化する。そのため、採取から分析への遅延の変動性は肝酵素自体の変動性につながり、これは、実測値とともに正常値のインディケーションの理由の1つである。
【0013】
さらに、この測定処理において、血液試料採取と肝硬度測定とは大幅に異なる時点で行われ得る。サーカディアンのおよび他のばらつきに起因して被験者の血液中の肝酵素の濃度が時間の経過とともに変化するため、この調整がないことも最終的な診断の再現性に影響を及ぼす場合がある。
【0014】
これに関連して、血液試料をその場(in-situ)で分析することができ、この試料を検査のために中央検査場に送って運ぶ必要がない臨床現場即時(Point of Care:POC)デバイスと呼ばれる血液検査デバイスが知られている。AbaxisによるPiccolo Xpressモデル(Piccolo Xpressは登録商標)などのそれらのPOCデバイスのいくつかは、さらなるベンチマークおよびスコア計算のために十分正確な結果を提供する。このデバイスを使用した場合、被験者の血液を検査するために、約100マイクロリットルの血液試料が被験者から採取された後、マイクロピペットを使用して円盤状のディスポーザブルに注入される。その後、このディスポーザブルは血液検査読み取り機に挿入され、そこで血液の細胞成分を他の血液成分から分離するために血液試料を遠心分離するように、ディスポーザブルが回転される。その後、試料は、ディスポーザブルに含まれて肝酵素などの様々な血液成分を光学的に検出するのに適した試薬に反応する。
【0015】
検査のために血液試料を中央検査場に送る代わりにPOCデバイスを使用することが、上述した処理を改善することを可能にする。
【0016】
しかしながら、このPOCデバイスは、かなり大量の血液(~0.1mL)を必要とする。したがって、そのような血液試料の採取に伴う問題は静脈血の採取に関する問題と全く同一であり、この採取は、医療専門家の介入を必要とする場合が多い(特に、採取した血液試料をディスポーザブルに注入することは非常に難しい)。
【0017】
いずれにしても、被験者の血液中の肝酵素の濃度の測定がそのPOCデバイスで行われた場合でも、血清学的測定と硬度測定とは互いに分離したままであり、したがって、この処理の結果は依然として上述したばらつきおよび変動を被る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「Transient elastography:a new noninvasive method for assessment of hepatic fibrosis」、Ultrasound in Medicine and Biology、Volume 29、Number 12、2003年、L.Sandrin等著
【非特許文献2】「Liver stiffness: a novel parameter for the diagnosis of liver disease」、Hepatic Medicine: Evidence and Research、vol.2、49-67頁、2010年、S.MullerおよびL.sandrin著
【非特許文献3】「FibroScan-AST(FAST) score for the non-invasive identification of patients with non-alcoholic steatohepatitis with significant activity and fibrosis: a prospective derivation and global validation study」、The Lancet, Gastroenterology and Hepatology、Volume 5、issue 4、362-373頁、2020年4月1日、P.Newsome等著
【非特許文献4】「Development of a simple noninvasive index to predict significant fibrosis patients with HIV/HCV co-infection」、Sterling R.K.等著、Hepatology 2006、vol.43、1317-1325頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、血清学的測定および硬度測定の両方に基づいて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための処理をさらに改善することが望ましい。特に、さらに試験条件および処理のより良い制御を可能にして、それらを単純化して関連費用を低減するために、その再現性をさらに改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した問題を少なくとも部分的に解決するために、本開示の技術は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムおよび方法であって、
- 本方法およびシステムにおいて、血液検査読み取り機はエラストグラフィデバイスに動作可能に接続され、例えばそれらのデバイスの協調した動作、例えば同時動作を可能とし、
- 本方法およびシステムにおいて、血液検査読み取り機に関連付けられた血液検査ディスポーザブルは、専門家ではない個人でも毛細血管血液試料を便利で容易な採取を可能とするように構成される。
【0021】
具体的には、本開示の技術は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムであって:
- 肝臓における剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成されたエラストグラフィデバイスと、
- 血液検査読み取り機、および血液検査読み取り機と関連付けられた血液検査ディスポーザブルであって、血液検査ディスポーザブルは毛細血管血液試料を受け取り、血液検査読み取り機に挿入されるように構成され、血液検査読み取り機は血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するように構成される、血液検査読み取り機および血液検査ディスポーザブルと
- 少なくともプロセッサとメモリとを含む制御および処理システムと
を含み、
- 血液検査ディスポーザブルは、
- 指から血液試料を採取するための毛細管と、
- 血液試料中の少なくとも1つの肝酵素を検出するのに適した試薬と
を含み、
- 血液検査読み取り機は、エラストグラフィデバイスに動作可能に接続されており、
制御および処理システムは、以下のステップ:
- S1 - エラストグラフィデバイスによって測定された少なくとも1つの機械的パラメータの値を取得することと、
- S2 - 血液検査読み取り機によって測定された、被験者から採取された血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度の値を取得することと、
- S3 - 少なくとも1つの機械的パラメータの値と少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、健康状態に関係するパラメータを表すデータを出力することと
を実行するようにプログラミングされ、
健康状態に関係するパラメータは、所与の健康状態分類の様々なステージのうちで識別された健康ステージまたは病気ステージであるか、または少なくとも1つの機械的パラメータの値と少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れたベンチマークパラメータであるか、または健康ステージまたは病気ステージとベンチマークパラメータの値との両方によって表される、システムに関する。
【0022】
制御および処理システムは、エラストグラフィデバイスおよび血液検査読み取り機を制御するように構成される。特に、それは、前記少なくとも1つの機械的パラメータの測定および前記濃度の値の測定が事前定義された時間シーケンスにしたがって(例えば所与のタイムフレーム内で)、および/または事前定義された条件付きの測定手順(
図11から
図15に示すような手順)にしたがって行われるように、エラストグラフィデバイスおよび血液検査読み取り機を制御するように構成されてもよい。
【0023】
毛細管を用いた血液試料、特に少量の毛細血管血液試料を採取することが、容易に、生体試料を採取するように訓練された医療専門家ではない個人でも実現可能である。さらに、毛細管がディスポーザブルに一体化されているため、上述した従来技術の円盤状のディスポーザブルへの採取血液試料の慎重を要する注入が回避される。
【0024】
上述の血液検査ディスポーザブルの特定の構造のおかげで、生体試料を採取するように特別に訓練された医療専門家および生体試料採取に適した環境はもはや必要なくなる。したがって、この特定のディスポーザブル(さらには関連付けられた読み取り機)のおかげで、かくして、試験手順全体が、医用画像試験の訓練を受けた医療専門家(異なる専門を有する2人の異なる医療専門家ではなく)によって、または試験対象の被験者自身などの単一の操作者によってさえ、単一の試験環境内で(従来の生体試料採取のための環境よりも厳しくない衛生上の制約の下で)実現されることが可能である。これは手順全体を単純化し、より重要なことには、肝硬度と肝酵素レベルの同時測定を実現する上で非常に役立ち、上記で詳細に説明したように、手順の再現性および確実性を顕著に改善する。
【0025】
特にベンチマークパラメータを計算することによって、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定することを考慮して、肝酵素の濃度を測定するために少量の毛細血管血液を採取することはかなり普通でないアプローチであることを、出願人は強調する。
【0026】
実際、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、ベンチマークパラメータを計算することは、そのような濃度の正確な測定を必要とするが、これは血液中のそのような酵素の非常に低い濃度により困難とされる。これは、広範囲にわたる血液分析を可能とする静脈血試料が、通常、そのような決定のために採取され使用される理由である。
【0027】
しかしながら、驚くことに、肝酵素濃度は限られた量の毛細血管血液試料から非常に正確に決定されることができ、そのようにして得られた結果の精度は、実際、そのような肝臓診断のためには適切であるということがわかっている。実際、そのような採取方法を使用することが、採取直後に血液分析を始めることを可能とし、それによって普通の静脈血分析方法における採取と分析との間に生じる肝酵素化学的活性の減少(明らかな濃度の減少)を回避する。したがって、毛細血管血液試料を使用する場合に測定の相対精度が静脈血試料を用いた場合よりも低くなる場合があるが、酵素活性はより高くなり、最終的に被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するために適切な測定精度につながる。
【0028】
なお、「肝酵素濃度」という表現は、所与の検出反応または反応のセットを用いて決定されるようなこの酵素の明らかな濃度、または問題としている肝酵素の化学的活性を示す場合があるがあることを了解するであろう。本文書において、「酵素濃度」、「酵素化学的活性」、または「酵素活性」という表現は区別なく使用される。
【0029】
少量の毛細血管血液からの1つ以上の肝酵素活性の正確な決定を可能とするために、発明者は特別に設計された血液検査ディスポーザブルおよび読み取り機を開発した。特に、この分析を行うために必要な血液量を低減するために、(多くの種類の酵素または血液成分を検出するように構成された汎用血液検査ディスポーザブルの代わりに)肝酵素活性のみの決定を可能とするように構成された特定の血液検査ディスポーザブルが開発された。この特定の血液検査ディスポーザブルは、特に、ASTおよび/またはALT活性のみの決定を可能とするように構成されてもよい。
【0030】
さらに、上述したように、血液検査読み取り機およびエラストグラフィデバイスが互いに動作可能に接続されているという事実が、それらの2つのデバイスの協調した動作、特に同時動作を可能とする(より一般的には、事前定義された時間シーケンスまたは事前定義された条件付きの測定手順にしたがって実現される、それら2つのデバイスの動作が可能となる)。また、同時または所与の限られたタイムフレーム内でエラストグラフィ測定および対応する血液検査を実現することは、上記で詳細に説明したように、健康に関係するパラメータまたは最終的に得られる他の結果の再現性および確実性を顕著に改善する。いくつかの実施形態では、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータは、この健康状態自体でもよい(何らかの基準に関して、肝臓が健康であると考えられるか否かを直接示してもよい)。また、それは、肝臓の状態を特徴づけるために被験者の肝臓の健康状態に関する、または被験者自身に関する他の情報と組み合わされる中間パラメータでもよい。
【0031】
上記の接続のおかげで、制御および処理システムが、特に、単一のタイムフレーム内で、エラストグラフィデバイスと血液検査読み取り機とが、それぞれエラストグラフィ測定処理と血液試料の採取および分析を含む血液検査処理とを開始するように、エラストグラフィデバイスと血液検査読み取り機とを制御することによって、同時発生の測定(すなわち、同時またはほぼ同時の測定)を得ることに寄与する。制御および処理システムが、特に、タイムフレームが最大でも30分の持続期間を有するようにプログラミングされてもよい。
【0032】
一実施形態において、エラストグラフィデバイスは、例えば、問題としている測定処理を開始するときに、操作者に対して、機械的パラメータのエラストグラフィ測定を実現することを促すように構成されてもよい。また、血液検査読み取り機は、制御および処理システムによってトリガされる測定処理を開始するときに、操作者に対して、被験者から毛細血管血液試料を採取することを促すように構成されてもよい。この促しは、様々な方法、例えば、画面上に情報を表示する、インディケータライトをオン状態とする、または血液検査ディスポーザブルのディスペンサーを開けることによって、操作者に伝え得る。
【0033】
また、制御および処理システムは、問題としている測定処理が開始したときに、被験者から毛細血管血液試料を採取することと、所与の時間内にエラストグラフィ測定を実現することとの両方を、操作者に対して促す情報を伝えるようにプログラミングされ得る(そのような促しは、例えばタイマーまたはタイムバーを表示することによって実現され得る)。
【0034】
また、制御および処理システムは、エラストグラフィ測定および肝酵素測定が完了されたら、それらが同時であったかをチェックするようにプログラミングされてもよい。この目的のためには、少なくとも1つの機械的パラメータの測定時と血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度の測定時との間のタイムギャップが所与の持続期間閾値を超えるかを検査するように制御ユニットがプログラミングされてもよい。さらに、制御および処理システムは、上記の2つの測定が同時でないときに、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータの決定が失敗したことを明示するエラーメッセージ、または被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータが確実なものでない可能性があるということを明示するエラーメッセージを出力するようにプログラミングされてもよい。
【0035】
さらに、(互いに独立して動作する代わりに)血液検査読み取り機とエラストグラフィデバイスとが互いに動作可能に接続されているため、本システムを用いることによって、測定結果に応じて動的に手順を適合させるように2つのデバイスが互いに相互作用する診断手順およびワークフローを実施することが可能である。
【0036】
例えば、一実施形態において、制御および処理システムが、以下のステップ:
- S10 - エラストグラフィデバイスがエラストグラフィ測定処理を開始するようにエラストグラフィデバイスを制御することと、その後
- S1と、その後
- ステップS1で取得された少なくとも1つの機械的パラメータの値が所与の基準を満たす場合:
- S3’ - 被験者の血液中の少なくとも1つの肝酵素の濃度にかかわらず、少なくとも1つの機械的パラメータの値を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、前記パラメータを表すデータを出力することと、一方、
- 少なくとも1つの機械的パラメータの値が基準を満たさない場合:
- S20 - 被験者の肝臓健康評価のために血液検査が推奨されることを明示した情報、および/または操作者に対して被験者から毛細血管血液試料を採取し、この血液試料の分析を始めることを促す情報を操作者インタフェースが送信するように、操作者インタフェースを制御することと、その後
- ステップS2と、その後
- ステップS3と
を実行するようにプログラミングされ得る。
【0037】
これらの特徴のおかげで、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータの決定を顕著に改善することが予想されるときのみ血液検査が行われ、それによって時間とリソースを節約する。
【0038】
特に、制御および処理システムは、被験者の肝硬度が所与の閾値を上回る、例えば5-6kPaを上回ることを、ステップS1で取得した少なくとも1つ機械的パラメータの値が示した場合のみ、血液検査を開始するように血液検査読み取り機を制御するようにプログラミングされ得る。
【0039】
より一般には、制御および処理システムが、平均して肝臓が健康障害を患っていない値と、肝臓が健康障害を患っている可能性があるという値との間の境界に対応する閾値を少なくとも1つの機械的パラメータの値を超えたときに、少なくとも1つの機械的パラメータの値が基準を満たしていない(したがって血液検査が推奨される)と決定するようにプログラミングされ得る。
【0040】
他の実施形態において、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムは、まず肝酵素測定処理を開始し、その後、(肝酵素測定が有用となるか否かを決定するために、エラストグラフィ測定を開始する代わりに)エラストグラフィ測定処理を開始するように構成されてもよい。
【0041】
肝酵素の濃度の迅速な決定を可能にするために最適化された血液検査ディスポーザブルおよび血液検査読み取り機を使用した場合でも、その決定は即座ではなく、通常、数分かかる(この持続期間は、検出試薬が肝酵素と反応するために必要である)。したがって、まず、可能な限り早く肝酵素測定処理を開始し、エラストグラフィ測定を行うために血液試料分析のために必要とされる時間を使用することは有益である。実際に、この順序で処理を進めることは、試験手順全体を実現するのに必要な時間を低減する。
【0042】
この最後の実施形態において、制御および処理システムが、特に、以下のステップ:
- S20’ - 被験者から毛細血管血液試料を採取し、その後、血液検査ディスポーザブルが血液検査読み取り機に挿入されたら、この血液試料の分析を始めることを、操作者に促す情報を操作者インタフェースが送信するように操作者インタフェースを制御することと、
- S10 - エラストグラフィデバイスがエラストグラフィ測定処理を開始するようにエラストグラフィデバイスを制御することと、その後
- ステップS1およびS2と、その後、
- ステップS3と
を実行するようにプログラミングされてもよい。
【0043】
さらに、いくつかの実施形態では、
- 制御および処理システムのメモリにおいて、様々な計算式が少なくとも1つの機械的パラメータの値の様々な範囲と関連付けられ、各計算式が肝臓健康評価のための所与のベンチマークパラメータに対応し、各計算式が、少なくとも1つの機械的パラメータと血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度とから、対応するベンチマークパラメータを計算することを可能とし、
- 制御および処理システムが、被験者の肝臓に関して前もって測定された少なくとも1つの機械的パラメータの値を、それらの様々なベンチマークパラメータにそれぞれ関連付けられた値の範囲と比較することによって、それらのベンチマークパラメータのうちの1つを選択するようにプログラミングされ、
- 制御および処理システムが、ステップS3において、前もって選択されたベンチマークパラメータの値を、このベンチマークパラメータに関連付けられた式にしたがって計算するようにプログラミングされる。
【0044】
次に、血液検査ディスポーザブルおよび関連する血液検査読み取り機に関して、一実施形態において、血液検査ディスポーザブルが、毛細管を用いて採取された血液試料が最大でも60マイクロリットル、または最大でも40または30マイクロリットルの量でさえ有するように構成される。
【0045】
1回の指の突き刺しで採取され得る毛細血管血液の量は、通常、10から20マイクロリットルである。したがって、上述の血液試料は、限られた回数の指の突き刺しを、または1回の指の突き刺しでさえも、実現することによって採取され得る。したがって、被験者にとって不便なことは限られている(特に被験者の指をすべて刺すことを回避する)。また、肝酵素測定が再度なされなければならないとわかった場合、この種類の別の血液試料が再度採取可能である。
【0046】
いくつかの実施形態において、毛細管が、ディスポーザブルの一部に対して、例えば除去不能に固定されるなど、固定される。
【0047】
特に、血液検査ディスポーザブルが:
- 試薬を含むカートリッジと、
- 取り外し可能なプラグと
を含んでもよく、
毛細管が取り外し可能なプラグまたはカートリッジに固定されており、プラグおよびカートリッジが、
- プラグがカートリッジから取り外されることが可能であり、その後、カートリッジに再度差し込まれることが可能なように、および
- プラグがカートリッジに差し込まれると、毛細管がディスポーザブルの内部に収容され、毛細管によって採取された血液試料が試薬と接触するように
構成される。
【0048】
したがって、血液試料を採取するために、操作者(試験対象の被験者自身でもよい)が、例えばランセットを使用して、被験者の少なくとも1本の指の皮膚を刺す。また、操作者は、カートリッジからプラグを取り外し、その後、毛細管を使用してそのようにして得られた毛細血管血液の小滴を採取する。その後、操作者はカートリッジにプラグを再度差し込む。したがって、毛細管は大部分の時間ディスポーザブルの内部に収容されたままであり、これが毛細管の可能性のある汚染、または血液試料を採取した後の毛細管の可能性のある汚染を防ぐ。さらに、この構造のおかげで、採取された血液試料は、再現可能な方法で、一貫して容易に試薬と混合され、従来技術のディスポーザブルへの慎重を要する注入が回避される。
【0049】
上述したシステムの任意選択の特徴によれば、カートリッジにプラグを差し込むことが、毛細管を用いて採取された血液試料を流体回路に押し出す圧力を増加させるように、プラグは構成される。さらに、カートリッジは、血液試料の少なくとも一部を試薬と接触させるように構成された流体回路を含んでもよい。また、プラグがカートリッジに差し込まれたときに、毛細管がこの流体回路と流体接続するように、プラグは構成されてもよい。
【0050】
上述したシステムの一実施形態において:
- 少なくとも1つの肝酵素が:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下「AST」)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(以下「ALT」)、γグルタミルトランスフェラーゼ(以下「GGT」)のうちの1つであり、
- 試薬が、少なくとも1つの肝酵素を光学的に検出するのに適しており、
- 血液試料の少なくとも一部が第1の反応ゾーンにおいて試薬と混合するように、血液検査ディスポーザブルが構成され、
- 血液検査読み取り機が、第1の反応ゾーンにおいて光の反射率および/または透過率測定を用いて、血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するために、少なくとも光源と、光センサとを含む。
【0051】
血液検査ディスポーザブルが、血漿試料を得るために被験者から採取された血液試料から赤血球(blood red cell)を濾過するように構成された濾過膜を含んでもよく、血漿試料の少なくとも一部を試薬と接触させるように構成される。
【0052】
この膜を用いた濾過のこの方法は、他の濾過方法(遠心分離など)ほど完全でなくてもよく、血清試料ではなく血漿試料を作り出すが、この濾過は後続の肝酵素検出に十分なほど効率的であり、より高速であり、以前の方法と比べて少量の損失を生じさせ(この容積損失は、通常、採取された血液試料の当初の量の60%未満)、ここでは、採取された毛細血管血液試料の量は少量であるため、さらに本開示の技術の目的が被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するために必要な時間を低減させることであるため、有益である。
【0053】
上述したシステムの一実施形態において:
- 少なくとも1つの肝酵素がASTまたはALTであり、
- 試薬が、それぞれ、α-ケトグルタル酸と、L-アスパラギン酸またはL-アラニンを含み、
- 血液検査ディスポーザブルが、以下の触媒:ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを含み、少なくとも1つの肝酵素が試薬と混合されたときに生じる反応のセットの生成物と反応したときに着色される指示薬を含む。
【0054】
特に、指示薬はMAOS Trinder試薬を含んでもよく、血液検査ディスポーザブルは緩衝液(liquid buffer)を含んでもよく、血液検査ディスポーザブルが血液検査読み取り機に挿入されると緩衝剤が試薬と混合するように構成されてもよく、この緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以下、TRIS)を含む水溶液である。
【0055】
緩衝剤中のTRISの濃度は、特に0.05から1モル/リットルでよく、または0.1から0.5モル/リットルであってさえよい。
【0056】
この指示薬と緩衝剤とを用いることが、採取された血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度の迅速および正確な決定を可能とする。実際には、このシステムを使用した場合、血液試料採取後、通常、10分以下(通常は5分)で測定結果が得られ、測定精度は、20%よりも良好であり、通常は約10%、または約10%未満でさえある。
【0057】
MAOS Trinder試薬は、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリンナトリウム塩を示す。また、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)は、2-アミノ-2-ヒドロキシメチルプロパン-1,3-ジオールを示す。
【0058】
一実施形態において、上述した試薬は、乾燥検出パッドに含まれる一方、触媒および指示薬は、そのパッドとは別個である乾燥検出基板に含まれ、基板およびパッドが上述した第1の反応ゾーンに構成されることによって、緩衝剤と混合されている可能性のある血漿試料の少なくとも一部が検出パッドおよび基板パッドに浸透し、それによって肝酵素検出を可能とする。
【0059】
上述した緩衝液は、リン酸塩も含んでもよく、および/または6.5と8との間のpHを有してもよく、これは上述した肝酵素の検出には好適である。
【0060】
一実施形態において:
- 血液検査ディスポーザブルが、触媒の活性のオンボードコントロールを含み、オンボードコントロールが、
- オキサロ酢酸を含む乾燥コントロール基板と、
- 触媒と指示薬とを含む乾燥コントロールパッドとを含み、コントロールパッドがコントロール基板とは別個であり、
- 血液検査ディスポーザブルが血液検査読み取り機に挿入されたときに、または血液試料が血液検査ディスポーザブルにおいて受け取られたときに、液体がコントロール基板およびコントロールパッドに浸透するように、血液検査ディスポーザブルが構成される。
【0061】
ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼが存在する場合、オキサロ酢酸は反応して、特に過酸化水素を作り出す。その後、過酸化水素によってMAOSが酸化され、それによって着色され、それが血液検査読み取り機によって光学的に検出され、それによって触媒(ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼ)の完全性と活性を確認する。したがって、このオンボードコントロールは、システムの確実性を改善する(特に、低肝酵素濃度が測定されたときに、この結果が触媒の欠陥に起因したものではないことを、このコントロールが確認する)。
【0062】
ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼは、ASTまたはALTのいずれの検出も可能にする(それぞれ、α-ケトグルタル酸と、L-アスパラギン酸またはL-アラニンと組み合わされたとき)ことに注意するのがよい。したがって、(2つの別個のコントロールを必要とするのではなく)上述したもののような単一のオンボードコントロールを使用して、かなり完全な方法でAST(第1の反応ゾーンにおいて)とALT(第2の反応ゾーンにおいて)の両方を検出するように構成されたディスポーザブルの完全性が評価可能であり、これは、ディスポーザブルの構造と、その動作に必要な液体量とを単純化する。
【0063】
血液検査ディスポーザブルが血液検査読み取り機に挿入されたときにコントロール基板とコントロールパッドに浸透する上述の液体は、壊すことができるブリスタに含まれる緩衝液でもよい。このブリスタは、血液検査ディスポーザブルが血液検査読み取り機に挿入されたときに、壊れて緩衝剤をコントロールパッドおよび基板に注入するように構成されてもよい。採取された血液試料から抽出された血漿試料を用いる代わりに、この完全性コントロールを実現するためにこのような緩衝剤を用いることが、肝酵素測定に必要な血液量を低減することを可能にし、非常に有益である。
【0064】
いくつかの実施形態において、システムが、その血液試料または被験者から採取された別の血液試料中の血小板数を決定可能なようにさらに構成され、制御および処理システムが、血小板数も考慮に入れて、ステップS3において、健康状態に関係するパラメータを決定するようにプログラミングされる。
【0065】
システムのいくつかの実施形態において:
- エラストグラフィデバイスが、肝臓における超音波減衰量パラメータの測定も行うように構成され、
- 制御および処理システムが:
- ステップS1において、エラストグラフィデバイスによって測定された超音波減衰量パラメータの値を取得し、
- ステップS3において、超音波減衰量パラメータの値も考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定する
ように、さらにプログラミングされる。
【0066】
特に、制御および処理システムは、ステップS3において、少なくとも1つの機械的パラメータの値、超音波減衰量パラメータの値、および少なくとも1つの肝酵素の濃度の値を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態を表すベンチマークパラメータを計算するようにプログラミングされてもよい。
【0067】
肝臓における剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータは肝硬度でもよく、超音波減衰量パラメータは単位長あたりの超音波減衰係数でもよく、少なくとも1つの肝酵素はASTでもよい。また、制御および処理システムは、ベンチマークパラメータを、Xの指数関数を1+Xの指数関数で割ったものに等しいまたは比例しているとして計算するようにプログラミングされてもよく、Xは、肝硬度の対数と超音波減衰係数の3乗の一次結合から、ASTの濃度よりも高いものはすべて小さいという補正項を引いたものである。この補正項は、例えばAST分の1の濃度と比例していてもよい。特に、ベンチマークパラメータは、式F1(X=-1.65+1.07×ln[LSM]+2.66×10-8×CAP3-63.3/ASTに対応する)にしたがって計算された上述のFASTパラメータにもなり得る。
【0068】
特にAST濃度測定および肝酵素測定が同時であるときにそのようなベンチマークパラメータを用いることが、被験者の肝臓の健康状態と不良/病的状態とを非常に確実に判別することを可能とする。
【0069】
本開示の技術によれば、上述した様々な実施形態は、すべての技術的に可能な組み合わせにしたがって組み合わされることが可能であることが了解される。
【0070】
また、本開示の技術は、システムを用いて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法を提供し、システムは:
- 肝臓における剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成されたエラストグラフィデバイスと、
- 血液検査読み取り機、および血液検査読み取り機と関連付けられた血液検査ディスポーザブルであって、血液検査ディスポーザブルは毛細血管血液試料を受け取り、血液検査読み取り機に挿入されるように構成され、血液検査読み取り機は血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するように構成される、血液検査読み取り機および血液検査ディスポーザブルと、
- 少なくともプロセッサとメモリとを含む制御および処理システムと
を含み、
- 血液検査ディスポーザブルは、
- 指から血液試料を採取するための毛細管と、
- 血液試料中の少なくとも1つの肝酵素を検出するのに適した試薬と
を含み、
- 血液検査読み取り機は、エラストグラフィデバイスに動作可能に接続されており、
方法は、以下のステップ:
- S100 - 試験対象の被験者の肝臓に対して、エラストグラフィデバイスを使用して機械的パラメータの値が測定され、
- S1 - 制御および処理システムは、エラストグラフィデバイスによって測定された少なくとも1つの機械的パラメータの値を取得し、
- S200 - 毛細管を用いて被験者から毛細血管血液試料が採取され、その後、血液検査ディスポーザブルが血液検査読み取り機に導入され、
- S2 - 制御および処理システムは、血液検査読み取り機によって測定された、被験者から採取された血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度の値を取得し、
- S3 - 制御および処理システムは、少なくとも1つの機械的パラメータの値と少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定し、健康状態に関係するパラメータを表すデータを出力する、
を含み、
健康状態に関係するパラメータは、所与の健康状態分類の様々なステージのうちで識別された健康ステージまたは病気ステージであるか、または少なくとも1つの機械的パラメータの値と少なくとも1つの肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れたベンチマークパラメータであるか、または健康ステージまたは病気ステージとベンチマークパラメータの値との両方によって表される
。
【0071】
この方法において、制御および処理システムは、エラストグラフィデバイスおよび血液検査読み取り機を制御する。特に、それは、前記少なくとも1つの機械的パラメータの測定および前記濃度の値の測定が、事前定義された時間シーケンスにしたがって(例えば所与のタイムフレーム内で)、および/または事前定義された条件付きの測定手順(
図11から
図15に示すような手順)にしたがって行われるように、エラストグラフィデバイスおよび血液検査読み取り機を制御してもよい。
【0072】
ステップS100およびS200が、特に、最大のプリセットの持続期間を有する単一のタイムフレーム内で実行されてもよい。この最大の持続期間は、30分でもよく、または15分または10分であってさえよい。
【0073】
上述した方法において、ステップS100およびS200が最大の持続期間を有する単一のタイムフレーム内で実行されないときに、制御および処理システムがエラーメッセージを出力してもよい。
【0074】
上述したシステムの様々な実施形態の特徴は、まさに提示された被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法にも適用されてもよい。
【0075】
本開示の技術の他の特性および利点は、図面を参照して、例示的および非限定的に以下に与えられる説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1A】本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムの第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムの第2の実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステムの第3の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4】
図1Aから
図3のいずれかのシステムを備えてもよい血液検査ディスポーザブルの概略斜視図である。
【
図5】
図5と
図6は
図4の血液検査ディスポーザブルの概略的な下面および上面図である。
【
図6】
図5と
図6は
図4の血液検査ディスポーザブルの概略的な下面および上面図である。
【
図7】
図4の血液検査ディスポーザブルの検出パッドの概略側面図である。
【
図8】
図4の血液検査ディスポーザブルのオンボードコントロールの概略側面図である。
【
図9】
図4の血液検査ディスポーザブルにおいて実施された肝酵素検出に伴う化学反応を示す図である。
【
図10】上記の肝酵素検出の様々なステップを示すフローチャートである。
【
図11】
図1Aから
図3のいずれかのシステムを用いて実現可能な、本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法の第1の実施形態のステップを示す図である。
【
図12】
図1Aから
図3のいずれかのシステムを用いて実現可能な、本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法の第1の実施形態のステップを示す図である。
【
図13】
図11の方法において、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するために、どのように様々なベンチマークパラメータが選択され、その後に計算されるかを概略的に示す図である。
【
図14】
図11の方法の実現の一例において実行される計算および検査シーケンスをより詳細に示す図である。
【
図15】
図1Aから
図3のいずれかのシステムを用いて実現可能な、本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法の第2の実施形態のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1A、
図2および
図3は、それぞれ、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するためのシステム1;1’;1”の第1、第2、および第3の実施形態を示す。
【0078】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、システム1;1’;1”は:
- 肝硬度など、肝臓における剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成されたエラストグラフィデバイス2;2’;2”と、
- 試験対象の被験者から採取された血液試料における少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定するための、血液検査読み取り機3、および血液検査読み取り機3と関連付けられた血液検査ディスポーザブル10と
を含む。
【0079】
システム1;1’;1”は、さらに、例えば
図11または
図15に示す試験処理にしたがって、被験者を試験する際にエラストグラフィデバイス2;2’;2”および血液検査読み取り機3を制御する制御および処理システム4;4’;4”を含む。
【0080】
少なくともプロセッサおよびメモリを含む制御および処理システム4;4’;4”は:
- 被験者の試験中にエラストグラフィデバイス2’;2”;2”によって測定された、少なくとも1つの機械的パラメータの値と、
- この試験中に血液検査読み取り機3によって測定された、少なくとも1つの肝酵素の濃度の値と
の両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するようにプログラミングされる。
【0081】
システム1;1’および1”(それぞれ
図1A、
図2および
図3に示す)の3つの実施形態間の主な違いは、制御および処理システム4;4’;4”がシステム1;1’;1”内で分散される方法に関する。例えば、
図1Aの場合、制御および処理システム4は、エラストグラフィデバイス2と同一のケーシング6に収容され、事実上、エラストグラフィデバイス2の制御ユニットの形態で実現される。一方、
図2の場合、制御および処理システム4’は、エラストグラフィデバイス2’のケーシング6’および対応する血液検査読み取り機3のケーシングの両方の外部の、別個の電子デバイスである。また、
図3において、制御および処理システム4”の一部は非ローカルで遠隔の計算リソース7(「クラウド」など)を用いて実現される。
【0082】
いずれの場合でも、システム1;1’;1”のこれら3つの実施形態は共通の特徴を数多く有する。したがって、それらの異なる実施形態の同一または対応する要素は一度のみ説明される場合があり、同一の参照記号/番号によって識別される場合がある。
【0083】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、血液検査読み取り機3はエラストグラフィデバイス2;2’;2”と動作可能に接続されている。この接続は、中間システムなしで、直接実現可能である。また、エラストグラフィデバイス2’が制御および処理システム4’を介して血液検査読み取り機3に動作可能に接続される
図2の場合のように、中間デバイスを介しても実現され得る。
【0084】
いずれの場合でも、エラストグラフィデバイス2;2’;2”と血液検査読み取り機3との間の接続9は、それら2つのデバイス間の協調した動作、例えば同時動作を可能とする。
【0085】
接続9は、例えば、エラストグラフィデバイス2から血液検査読み取り機3へコマンドまたは実行要求を送信するために用いられてもよい。この場合、エラストグラフィデバイス2および血液検査読み取り機3は、マスター-スレーブモデルにしたがって動作するようにプログラミングされてもよく、エラストグラフィデバイス2はマスターとなり血液検査読み取り機3へ指令を与え、血液検査読み取り機3はそれらを実行し、応答して、肯定応答データ、測定結果、肝酵素測定処理に関するデータ、および/または血液検査読み取り機3のステータスを表すデータを送る。
【0086】
また、エラストグラフィデバイス2’と血液検査読み取り機3との間の接続は、エラストグラフィデバイス2’によって直接決定されないがエラストグラフィデバイス2’によって送信されたデータ(肝硬度測定結果またはステータスデータなど)に基づいて決定されるコマンドまたは実行要求を血液検査読み取り機へ送信することを可能としてもよい。特に、それらのコマンドまたは要求は、エラストグラフィデバイス2’から受信したデータに基づいて制御および処理システム4’によって決定されてもよく、それによって制御および処理システム4’は、エラストグラフィデバイス2’を血液検査読み取り機3と接続する上で積極的役割を果たす(したがって、この接続は何らかの複合的で積極的な接続である)。逆に、エラストグラフィデバイス2’は、検査読み取り機3から受信したデータに基づいて(制御および処理システム4’によって)決定されたコマンドまたは実行要求を受信し得る。
【0087】
エラストグラフィデバイス2;2’;2”と血液検査読み取り機3との間の接続9は、USB、Firewire、Bluetooth、6LoWPAN、ZigBee、Z-Wave、Sigfox、または別のプロトコルにしたがって、有線または無線リンクを用いて実現されてもよい。
【0088】
上述したように、エラストグラフィデバイス2;2’;2”と血液検査読み取り機3との間の接続9は、それら2つのデバイスの協調した動作、例えば同時動作を可能とする。さらに、制御および処理システム4;4’;4”は、同様に、それぞれがエラストグラフィ測定処理と肝酵素測定処理とを、協調して、特に同時に実行する(上述の接続によって可能となる)ように、エラストグラフィデバイスと血液検査読み取り機とを制御するようにプログラミングされてもよい。
【0089】
上記の概要の項で述べたように、肝硬度などの機械的パラメータと少なくとも1つの肝酵素の濃度の同時測定を実現することが、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータの決定を、より一層確実で再現可能なものとする。
【0090】
被験者の血液中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を測定するために用いられる特定の血液検査ディスポーザブル10と読み取り機3とは、この改善に参画する。これらは、実際、正確に、迅速に、その場で(in situ)、被験者から採取された非常に限られた量の毛細血管血液から、被験者の血液中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定することを可能とする。これらの特徴、特に、採取される必要がある血液量が微量であるという事実は、手順全体を単純化し、肝硬度および肝酵素レベルの同時測定を実現する上で非常に役立つ。
【0091】
以下において、
図1Aから
図3を参照して、システム1;1’;1”の全体的な構造がより詳細に示される。
図4から
図10を参照してこのシステム1;1’;1”において用いられる特定の血液検査ディスポーザブル10および読み取り機3がさらに提示される。また、その後、それぞれ
図11および
図15を参照して、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法の2つの実施形態が提示される。それらの2つの方法のそれぞれは、上述したシステム1;1’;1”の3つの実施形態のいずれかを用いて実現可能である。また、それらのシステム1;1’;1”のいずれかの制御および処理システム4;4’;4”は、それらの方法の一方または他方を実行するようにプログラミングされてもよい。
【0092】
図1Aおよび
図1Bのシステム1において、制御および処理システム4は、エラストグラフィデバイス2の一部であり、エラストグラフィデバイス2の制御ユニットの役割を果たす(加えて、血液検査読み取り機3を制御する)。
【0093】
上述したように、エラストグラフィデバイス2は、肝臓中の剪断波の伝搬に関連する少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成される。ここで、この機械的パラメータは、剪断波の伝搬速度Vs、肝組織の剪断弾性係数またはそのヤング率Eなど、肝硬度に関係する量である。このパラメータは、ここでは、肝硬度またはLSM(Liver Stiffness Measurement)として示される。ただし、他の実施形態において、上述した機械的パラメータは、粘度など、組織中の低周波(例えば500Hz未満)剪断波減衰に関係した量でもあり得る。
【0094】
エラストグラフィデバイス2は、例えば、トランジェントエラストグラフィによって少なくとも1つの機械的パラメータを測定するように構成されてもよい。
【0095】
ここで、エラストグラフィデバイス2は、さらに、肝臓中の超音波減衰量パラメータ、より厳密には、制御減衰量パラメータまたはCAPと呼ばれる、単位長あたりの超音波減衰係数を測定するように構成される。この超音波減衰係数は、試験対象の器官における高周波超音波の減衰を表す(これらの超音波は、通常、数MHz、例えば2から5MHzの中心周波数を有する)。
【0096】
エラストグラフィデバイス2は、プローブ22を駆動してプローブ22によって取得された信号を受信するために構成されたエラストグラフィモジュール21を含む。
【0097】
プローブ22は、少なくとも、剪断波を生成するための振動子と、振動子によって生成された剪断波によって被験者の肝臓がどのように動かされるかを追跡するために、超音波ショットを送信し、対応するエコー信号を受信するための超音波トランスデューサとを含む。プローブ22は、肝硬度測定中に、被験者の皮膚に当てて保持される。
【0098】
エラストグラフィモジュール21は、送信される超音波信号を生成し、プローブ22の超音波トランスデューサによって受信した超音波エコー信号を取得して前処理するための電子モジュールを含む超音波フロントエンドを含む。エラストグラフィモジュール21は、さらに、プローブ22の振動子を駆動するためのモーションアクチュエータサーボコントローラを含む。
【0099】
エラストグラフィモジュール21は、また、測定される機械的パラメータ(例えば肝硬度)の値を導出するために、取得されたエコー信号を処理するための専用論理回路(例えばFPGA、ASIC(特定用途向け集積回路)、または他の種類のプログラマブル超小型回路)を含んでもよい。また、この専用論理回路は、エラストグラフィモジュール21に含まれる代わりに、制御および処理システム4にも含まれ得る。
【0100】
制御および処理システム4は、エラストグラフィモジュール21と、例えば表示画面などの操作者インタフェース5とに接続される。上述した機械的パラメータの測定中、エラストグラフィモジュール21および操作者インタフェース5は、制御および処理システム4によって制御される。例えば、制御および処理システム4は、操作者が被験者の肝臓の前にプローブを位置付けるのを助ける案内情報を表示し、取得された測定結果(最終的に得られたエラストグラムおよび硬度値など)を表示するように、操作者インタフェース5を制御する。
【0101】
既に述べたように、制御および処理システム4は、少なくとも、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリとを含む。より一般には、データを処理するため、およびデータを送受信するための電気回路を含む。メモリは、制御および処理システム4の機能を実行するためにプロセッサによって実行されるマシン実行可能命令を記憶するための物理的な非一時的(不揮発性)メモリモジュールを含む。また、それは、システム動作中に信号データおよび命令を記憶するためのRAMメモリを含んでもよい。
【0102】
図1Aのシステム1において、制御および処理システム4およびエラストグラフィモジュール21は、ともに、エラストグラフィデバイス2のケーシング6に収容されている。操作者インタフェース5は、このケーシング6に一体化されることが可能であるか、または別個のリモートデバイスの形態で実現されることが可能である。エラストグラフィデバイス2および血液検査読み取り機3は、移動時間またはエラーを回避するために、ある場所から別の場所へ被験者または血液試料を移動させることを回避するために、同室内に配置されてもよく、または15メートル未満で互いに分離されてもよい。
【0103】
既に述べたように、制御および処理システム4は、上述の接続9を通して血液検査読み取り機3にも動作可能に接続されている。また、制御および処理システム4は、エラストグラフィデバイス2による、上述の機械的パラメータの測定処理の実行を管理するようにプログラミングされているだけではない。それは、機械的パラメータ測定と協調して、例えば同時に肝酵素測定処理をトリガするために血液検査読み取り機3を制御するようにもプログラミングされている。例えば、制御および処理システム4は、最初に得られた肝硬度値に応じて肝酵素測定処理を始めるようにプログラミングされてもよい(肝酵素測定処理はこの硬度値が得られた直後またはほぼ直後に始められる)。また、肝酵素測定処理と機械的パラメータ測定処理を、ほぼ並列に、それぞれの開始の間で短い遅延(例えば5分未満または15分未満)のみを有して始めるようにプログラミングされてもよい。
【0104】
また、制御および処理システム4は、事後的に、それらの測定処理が完了したら、上述の機械的パラメータの測定時と被験者の試料中の1つ以上の肝酵素の濃度の測定時との間のタイムギャップが所与の持続期間閾値未満であることをチェックするようにプログラミングされてもよい。このタイムギャップがこの持続期間閾値を上回っている場合、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータの決定が失敗した、またはこのパラメータが確実ではない可能性がある、および/またはこの健康状態の決定または送信をスキップしてもよい可能性があることを明示するすエラーメッセージを出力してもよい。
【0105】
いずれの場合でも、既に述べたように、制御および処理システム4は、エラストグラフィデバイス2によって測定された上述の機械的パラメータの値と血液検査読み取り機3によって測定された1つ以上の肝酵素の濃度の値との両方を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するようにプログラミングされる(例えば事前の硬度測定の結果に基づいて、何らかの条件に応じて、この決定が行われる場合でも、行われない場合でも同様である)。
【0106】
図11および
図15の方法を説明する際に、これらの2つの測定から、さらにおそらく他の測定からも被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための様々な方法が示される。
【0107】
図1Aのシステム1の制御および処理システム4は、
図11の方法にしたがって、または
図15の方法にしたがって、血液検査読み取り機3とエラストグラフィデバイス2とを制御するように特にプログラミングされてもよい。特に、制御および処理システム4は、
図11の方法のステップS10、S1、S20、S2、その後S3(もしくはS3’)を実行するようにプログラミングされてもよい。または、
図15の方法のステップS20、S10、S1、S2、その後S3を実行するようにプログラミングされてもよい。
【0108】
図2のシステム1’は
図1Aのものと類似しているが、本第2の実施形態では、制御および処理システム4’は、エラストグラフィデバイス2’とは別個である。
【0109】
エラストグラフィデバイス2’は、上述したエラストグラフィモジュール21と、プローブ22とを含む。エラストグラフィモジュール21は、それが接続されている制御および処理システム4’のケーシング41’とは別個のケーシング6’に収容される。上述した操作者インタフェース5と同様の操作者インタフェース5’は、制御および処理システム4’に接続される。
【0110】
本第2の実施形態において、制御および処理システム4’は、エラストグラフィデバイス2’および血液検査読み取り機3の両方に動作可能に接続された、ノートブックまたはタブレットコンピュータなどのパーソナルコンピュータまたはスマートフォンの電子論理回路またはシステム(1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のメモリを有する)でもよい。
【0111】
血液検査読み取り機3およびディスポーザブル10は
図1Aのシステム1のものと同一であり、血液検査読み取り機3は、
図1Aのシステム1中と同様に制御および処理システム4’に接続される。
【0112】
また、さらなる任意選択の接続(
図2に示されない)は、エラストグラフィデバイス2’(具体的には、そのエラストグラフィモジュール21)を直接(制御および処理システム4’を通過せずに)血液検査読み取り機3にリンクすることも可能である。
【0113】
図3のシステム1”は
図1Aのものと類似するが、本第3の実施形態において、制御および処理システム4”の一部は、非ローカルの遠隔の計算リソース7(「クラウド」など)を用いて実現される。
【0114】
本第3の実施形態において、制御および処理システム4”は:
- エラストグラフィデバイス2”および血液検査読み取り機3を制御するように、および測定処理を管理するように構成された第1の部分41と、
- 特にベンチマークパラメータ(スコア)を計算することによって、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するように構成された第2の部分42と
を含む。
【0115】
第1の部分41はローカルに実現されてもよい。具体的には、それらは、エラストグラフィデバイス2”に一体化されて、エラストグラフィデバイス2”のケーシング6に収容される。一方、制御および処理システムの第2の部分42、例えば非ローカルの計算サービスおよびデータベースは、リモートであり、遠隔の、おそらく分散している計算リソース7を用いて実現される(遠隔のとは、これらのリソースの少なくとも一部が少なくとも1キロメートルだけエラストグラフィデバイスから離れていることを意味する)。
【0116】
制御および処理システム4”の第1の部分41および第2の部分42は互いに動作可能に接続され、したがって、データおよび命令を交換可能である。また、血液検査読み取り機3は、(エラストグラフィデバイスに収容された)第1の部分41を通過せずに、制御および処理システム4”の第2のリモートの部分42と直接接続されてもよく、それが、肝酵素測定結果を、データ処理および演算に特により特化した制御および処理システム4”の第2の部分42に直接転送することを可能とする。
【0117】
制御および処理システム4”の第2の部分42は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを表すデータを決定した後に、このデータを:
- このパラメータが操作者インタフェース5を用いて操作者に送信されることが可能となるように、制御および処理システム4”の第1の部分41へ、および/または
- パーソナルコンピュータまたはスマートフォンなどのリモートデバイス8へ、および/または
- 格納のために、リモートデータベースへ
送信するようにプログラミングされることが可能である。
【0118】
上述した違いを除いて、システム1”の第3の実施形態は第1の実施形態と同一、または少なくとも類似している。特に、エラストグラフィデバイス2”は、同一のケーシング6において、エラストグラフィモジュール21(プローブ22に接続されている)と、制御および処理システム4”の第1の部分41(制御部)とを含む。制御および処理システム4”のこの第1の部分41は、接続9によって、血液検査読み取り機3(
図1Aおよび
図2のものと同一でもよい)に接続される。
【0119】
次に、
図4から
図10を参照して、
図1Aのシステム1の血液検査ディスポーザブル10が詳細に示される。上述のように、この血液検査ディスポーザブル10は、上述したシステム1;1’;1”の3つの実施形態のいずれかにおいて区別なく用いられ得る。
【0120】
血液検査ディスポーザブル10は、被験者から血液試料を採取するために毛細管13を含む。この目的のため、被験者の指の皮膚、またはおそらくは2または3本の指の皮膚は、例えばランセットを用いて刺される。その後、そのようにして得られた毛細血管血液の小滴が毛細管を用いて採取される。ここで、毛細管13は、血液検査ディスポーザブルの一部(除去可能で交換可能な部品ではない)に固定、より厳密には除去不能に固定される。
【0121】
図5に示すように、血液検査ディスポーザブル10は、2つの別個の部分、すなわち:
- 少なくとも1つの肝酵素を検出するのに適した試薬を含むカートリッジ11と、
- 取り外し可能なプラグ12(
図5では、プラグ12はカートリッジ11から取り外された状態で示されている)と
を含む。
【0122】
毛細管13は、取り外し可能なプラグ12に固定されている。しかしながら、他の示されていない実施形態において、毛細管は、プラグに固定される代わりに、カートリッジに固定されることも可能である。
【0123】
プラグ12がカートリッジ11から取り外された後にカートリッジ11に再度差し込まれることが可能なように、プラグ12およびカートリッジ11は構成される。
【0124】
この目的のために、プラグ12とカートリッジ11とは、それぞれ、相補的な形状を有するリブ(プラグ側)と溝(カートリッジ側)など、または弾性的な歯またはクリップと対応するくぼみまたは穴など、オスとメスの固定要素(または、逆にメスとオスの要素)を有して提供されてもよい。
【0125】
ここで、プラグ12は、カートリッジの端面121、すなわちその後面(カートリッジの前面は、ディスポーザブル10が読み取り機3に導入されたときに、最初に読み取り機3に導入される前面である)に除去可能に固定される一種のキャップである。
【0126】
毛細管13は、被験者から血液を採取するのを可能にするために、プラグ12から突出している。それはまた、例えば25+/-10マイクロリットルなど、20マイクロリットルと50マイクロリットルとの間の血液試料を受けいれるのに十分な大きさの受けいれ容積を提供するように、プラグ12の内部で延在している。
【0127】
(
図6のように)プラグ12がカートリッジ11に差し込まれると、毛細管13の外側部分130、すなわちプラグ12から突出した毛細管13の一部は、カートリッジ11の中に入る。したがって、毛細管13は、血液検査ディスポーザブル10の内部に全体的に延在する(すなわち、したがって、毛細管13は血液検査ディスポーザブル10内部に全体的に収容される)。
【0128】
血液試料を採取するために、操作者(試験対象の被験者自身でもあり得る)は、例えばランセットで被験者の少なくとも1本の指の皮膚を刺す。また、操作者は、カートリッジ11からプラグ12を取り外した後、毛細管13の端部131を使用して、そのようにして得られた毛細血管血液の小滴を採取する。その後、毛細管13(さらに、おそらくは補助リザーバ)が毛細血管血液によって満たされると、操作者はカートリッジ11にプラグ12を再度差し込む。適切な血液量を採取するために、すなわち、ここでは、毛細管13を満たすために、操作者は、例えば2または3本の指など、被験者の1つ以上の指を刺す場合もある。
【0129】
血液検査ディスポーザブル10は、こののようにして毛細管13を用いて採取された血液試料がカートリッジ11に含まれた試薬と接触するように構成される。
【0130】
図示した実施形態において、毛細管13を用いて採取された血液試料は、血液試料を採取するために用いられたものと同一の管の端部131によってこの管から出る(カートリッジに流れ込んで試薬と混合するため)。さらに、ここで、プラグ12は、カートリッジ11に差し込まれることが、カートリッジ11内部で、毛細管に含まれた血液試料をカートリッジ11に向かって押す圧力を増加させるように構成される。この目的のため、プラグ12は、例えばカートリッジに差し込むために操作者がプラグ12を押したときに押し込まれる変形体を有してもよい。
【0131】
毛細管13を出ると、血液試料は上述した試薬と接触するようにされてもよく、より一般的には、1つ以上のパイプおよび/または接合部を含む流体回路(マイクロ流体回路など)を用いて、酵素検出およびコントロールのために用いられるカートリッジの様々な部分を広く経由させてもよい。また、それは、これらの試薬に直接到達してもよく、または(パイプまたは他の回路を経由することなく)1つ以上の膜または基板に浸透して、横切ることによって到達してもよい。
【0132】
図6に示すように、プラグ12がカートリッジ11に差し込まれると、毛細管13の出力端131は濾過膜110の真上に配置される。この濾過膜110は、血漿試料を得るために、血液試料から赤血球を濾過するのに適する。
【0133】
カートリッジ11は、また、(毛細管出力131とは異なる膜の他方側の)濾過膜110の下方に配置された第1の反応ゾーンZ1において、乾燥した形状で、上述した試薬(1つ以上の肝酵素を光学的に検出するのに適する)を含む第1の検出パッド111を含む(
図5および
図7)。ここでは、第1の検出パッド111は、特に、ASTを検出するのに適した試薬を含む。また、カートリッジ11は、濾過膜110の下方に配置された第2の反応ゾーンZ2において、別の肝酵素、すなわちALTを検出するのに適した試薬を含む第2の検出パッド112を含む。第1の検出パッド111および第2の検出パッド112は、例えば2つの別個の試薬点(reagents dot)の形状で、濾過膜110の下方に並んで配置される(
図5)。
【0134】
したがって、濾過膜110を通過後、濾過に起因して血漿試料に事実上なっている血液試料の一部が第1の検出パッド111に到達して浸透する。濾過された血液試料の別の一部は、第2の検出パッド112に到達して浸透する。
【0135】
ASTに接触すると、第1の検出パッド111に含まれた試薬は、1つ以上の化学反応の結果として、指示薬(ここでは、MAOS Trinder試薬)と反応する生成物(ここでは過酸化水素)を作り出し、この指示薬はこの生成物が存在する場合に着色される。したがって、ASTが存在する場合のこの反応またはこれらの反応のおかげで、この指示薬は着色され、肝酵素検出を可能とする。
【0136】
指示薬の色変化は、第1の反応ゾーンZ1における光反射率、具体的には拡散光反射率を測定するように構成された血液検査読み取り機3によって光学的に検出される。この目的のため、血液検査読み取り機3は、光源および光検出器を備える。ここで、例えば発光ダイオードなどの光源は、血液検査ディスポーザブル10の第1の反応ゾーンZ1によって反射された光のスペクトルフィルタリングがなくてさえも、指示薬の色変化を検出するのに適した発光スペクトルを有する。例えば、着色した形態での指示薬が黄色光を選択的に吸収する場合、光源は主に黄色光を発してもよい(すなわち、光源の発光スペクトルは、着色した形態の指示薬の吸収スペクトルと少なくとも部分的に一致する場合がある)。
【0137】
「光反射率」という表現は、物体または面が照らされるパワーまたは強度またはスペクトル強度と比べて、この物体または面によって反射される光の強度またはスペクトル強度またはパワーを表す任意の量を示すことに注意するのがよい。特に、「光反射率」という表現は、スペクトルが所与の限定された波長範囲に主に含まれる光の反射率、反射係数、スペクトル反射率、または入射対反射光度比率を示してもよい。また、反応ゾーンZ1の光反射率は、この反応ゾーンによって反射された光の光度を、別の参照ゾーン(「ブランク」として用いられる)によって反射された光の光度と比較することによって測定または推定されてもよい。
【0138】
血液検査読み取り機3は、上述の光反射率測定より、被験者から採取された血液試料中のAST濃度を決定するように較正およびプログラミングされる。
【0139】
同様に、ALTと接触したときに、第2の検出パッド112に含まれる試薬は、1つ以上の化学反応の結果として、指示薬(やはり、MAOS Trinder試薬)と反応する生成物(やはり、過酸化水素)を作り出し、この指示薬はこの生成物が存在する場合に着色される。
【0140】
血液検査読み取り機3は、また、(例えば第1の反応ゾーンZ1における光反射率の測定と同様の方法で)第2の反応ゾーンZ2における光反射率を測定し、この測定から血液試料中のALT濃度を決定するように構成される。
【0141】
ここで、試薬の種類と、この酵素検出に伴う化学反応とが、
図9を参照して詳細に示される。
【0142】
第1の検出パッド111(AST検出用)は、L-アスパラギン酸と、α-ケトグルタル酸とを含む。ASTを含む濾過された血液試料の一部がこのパッドと接触すると、L-アスパラギン酸とα-ケトグルタル酸とがともに反応し、ASTは触媒の役割を果たす(
図9)。この第1の反応R1は、オキサロ酢酸を作り出し、このオキサロ酢酸は、その後、反応R2においてピルビン酸および二酸化炭素に分解する。
【0143】
第1の検出パッド111は、さらに、触媒、すなわちピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを含む。反応R2によって作り出されたピルビン酸は濾過された血液試料(緩衝剤と混合されている可能性がある試料)に含まれるリン酸塩、酸素および水と反応して、R3と呼ばれる反応中にアセチルリン酸、二酸化炭素および過酸化水素を作り出す。反応R3は、ピルビン酸オキシダーゼにより触媒される。
【0144】
ここで、第1の検出パッド111に含まれる指示薬は、酸化すると着色される。したがって、反応R3によって作り出された過酸化水素が存在すると、指示薬は、反応R4中に酸化して着色される。反応R4は、ペルオキシダーゼにより触媒される。この指示薬は、例えばMAOS Trinder試薬(詳細な式は上述)でもよい。実際、この指示薬は、センシティブで確実な酵素濃度測定を可能とすることがわかっている。この場合、MAOS状態変化を検出するために用いられる光源の発光スペクトルは、主にオレンジ色光を含んでもよく(このスペクトルは、主に610ナノメートルの波長のまわりに広がる)、濾過されてもよく、それによって、例えば主に550ナノメートルと650ナノメートルとの間に含まれる主に610ナノメートルの波長のまわりに広がる波長範囲において反射率測定が行われる。
【0145】
ここで、第1の検出パッド111は、2つの別個のサブパッド、すなわち試薬(L-アスパラギン酸およびα-ケトグルタル酸)を含む上部パッドと、触媒(ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼ)を含む下部パッドとを含む。下部パッドは、上部パッドの下方に配置される。濾過された血液試料(すなわち血漿試料)は、まず上部試薬パッドに到達した後ピルビン酸が作り出されると、下部触媒および指示薬パッドに到達するように流れる、もしくは移動する。上部パッドは、下部パッド上を延在する(下部パッドのエリアよりも広いエリアを覆う)基板の形状で実現されてもよい。ただし、いくつかの実施形態において、試薬、触媒および指示薬は、(より良好な保存のために)互いに分離するのではなく単一の乾燥検出パッドにおいて混合されることも可能であり、または上述した方法とは異なる方法で異なるパッドに分散されることも可能である。
【0146】
第2の検出パッド112(ALT検出用)は、(L-アスパラギン酸の代わりに)L-アラニンおよびα-ケトグルタル酸を含む。また、第1の検出パッド111と同一の触媒および指示薬、すなわちピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼとMAOS Trinder試薬を含む。ここで、第2の検出パッド112は、第1の検出パッド111と同様に、試薬(L-アラニンおよびα-ケトグルタル酸)を含む上部パッドと、触媒(ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼ)および指示薬(MAOS)を含む下部パッドとを含む。
【0147】
濾過された血液試料の一部が第2の検出パッド112に浸透したときに、第2の検出パッド112で生じる反応は以下の通りである。まず、L-アラニンとα-ケトグルタル酸とがともに反応し、ALTが触媒の役割を果たす(反応R5)。この反応R5は、ピルビン酸塩とグルタミン酸塩とを作り出す。その後、ピルビン酸塩は、濾過された血液試料に含まれた(緩衝剤と混合されている可能性がある)リン酸塩、酸素および水と反応し、上述した(ASTの検出に伴う)反応R3と同一の反応中に、アセチルリン酸、二酸化炭素および過酸化水素を作り出す。その後、反応R3によって作り出された過酸化水素は、上述した反応R4と同一の反応中に、指示薬を酸化し、その指示薬は着色される。
【0148】
任意選択として、血液検査ディスポーザブル10は、また、
図10に概略的に示すように、濾過膜と第1の反応ゾーンとの間で、濾過された血液試料が後に続くパスに沿って配置される溶血チェック光学ポートを含んでもよい(
図10においてこの任意選択の要素は参照番号122で識別される)。この光学ポートは、後ろの濾過された血液試料のための通路を有する窓の形状で実現されてもよい。血液試料が顕著に溶血しているか否かをチェックするために、血液検査読み取り機は、したがって、ヘモグロビンを検出するのに適した波長範囲における光反射率および/または透過率を測定するように構成される場合もある(ここでは溶血チェック光学ポートにおける光反射率)。例えば、この光反射率は、例えば主に390ナノメートルと430ナノメートルとの間に含まれる主に410ナノメートルのまわりに広がる波長範囲において測定されてもよい。この光反射率測定は、青色光を発する発光ダイオードを用いて、フォトダイオードなどの光検出器を用いて実現されてもよい。
【0149】
血液検査読み取り機3は、前記反射率および/または透過率測定より、例えば溶血チェック光学ポートにおける光反射率が所与の閾値を超えたかを検査することによって、濾過された血液試料が上述した波長範囲の光を顕著に吸収するか(顕著に溶血しているかを示す)を検査するようにプログラミングされてもよい。また、それが閾値を超えたときに、血液検査読み取り機は、肝酵素濃度測定が失敗したことを明示するエラーメッセージを発してもよい。このエラーメッセージは、例えば、可聴のビープ音を発する、特定の光インディケータを点灯する、または血液検査読み取り機の表示画面上にエラーメッセージを表示するなどによって血液検査読み取り機によって送信されてもよく、それによって操作者はこの失敗を直接認識できる。血液検査読み取り機は、また、制御および処理システム4に上記のエラーメッセージを送信するように構成されてもよい。いずれの場合でも、濾過された血液試料が上述の波長範囲の光を顕著に吸収すると血液検査読み取り機3が決定したとき、それは肝酵素濃度測定結果の送信を禁止する(それらの測定の結果を送信しない、もしくは出力する)。実際、上述した波長範囲における高い吸収は、血液試料が顕著に溶血して、その色をほぼ変化させ、かくして、肝酵素測定エラーを引き起こす可能性があることを示す(肝酵素は着色された指示薬を用いて検出されるため)。それによって、血液検査ディスポーザブル10の溶血チェックポートと、血液検査読み取り機3の関連検出システムのおかげで、肝酵素測定の確実性は改善される。
【0150】
血液検査ディスポーザブル10は、また、上述した触媒の活性のオンボードコントロール119(
図5および
図8)を含む。この活性コントロールは、肝酵素検出、すなわち上述した反応R3およびR4に関して同一の比色検出スキームに基づく。それらの検出反応に伴う触媒および指示薬の活性および完全性をチェックするため、オンボードコントロール119は、それらの触媒および指示薬(反応R2からR4を参照)によって検出されると予測されるオキサロ酢酸を含む。
【0151】
より具体的に、オンボードコントロール119は:
- オキサロ酢酸を含む乾燥コントロール基板116と、
- 上述した触媒(すなわちピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼ)および指示薬(ここではMAOS)を含む乾燥コントロールパッド117と
を含む。
【0152】
コントロール基板116およびコントロールパッド117はそれぞれ別個であるため、ディスポーザブル10の格納中にオキサロ酢酸と触媒/指示薬とが互いに混合しない(そうであるから互いに反応しない)。ここでは、コントロールパッド117は、コントロール基板116の下方に配置される。
【0153】
カートリッジ11は、さらに、血液検査ディスポーザブル10が血液検査読み取り機3に挿入されると壊れるように構成された、壊すことができるブリスタ114を含む。ブリスタ114は、ここでは供給管115を用いて、オンボードコントロール119と流体接続している。供給管115は、ブリスタ114から、(コントロールパッド117とは異なるコントロール基板の他の側において)コントロール基板116の真上に配置された管の出力端まで延在する。ディスポーザブル10の読み取り機3への挿入に起因してブリスタ114が壊れると、緩衝剤が供給管115に流入してオンボードコントロールに到達し、そこでコントロール基板116、その後コントロールパッド117に浸透し、それによってコントロール基板116のオキサロ酢酸をコントロールパッド117の触媒および指示薬と混合する。その後、触媒または指示薬に欠陥がある場合を除いて、反応R2からR4が生じ、指示薬の色が変化する。この色変化は、血液検査読み取り機3によって光学的に検出される。
【0154】
この色変化のより確実でセンシティブな検出のため、オンボードコントロール119は、オキサロ酢酸の存外下では色を変化させず光反射率の参照値である「ブランク」を記録するために使用される参照パッド118を含む。参照パッド118の光反射特性は、指示薬の色がまだ変化しないときでは、コントロールパッド117のものと近く、例えば20%以内で同一であり、さらに10%以内でも同一である(少なくとも可視範囲において、または可視範囲の一部において)。例えば、参照パッド118は、上述した触媒(ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼ)および/または指示薬を欠いていることを除いて、コントロールパッド117と同一でもよい。
【0155】
緩衝液(最初はブリスタ114に含まれる)は、リン酸塩を含む水溶液である。それは、6と8の間、またはさらに6.5と7.5の間に含まれるpHを有してもよい。それは、TRISを含んでもよく、TRISの濃度は、0.05モル/リットルと1モル/リットルの間であり、またはさらに0.1モル/リットルと0.5モル/リットルとの間である。
【0156】
カートリッジ11は、ブリスタが壊れたら、緩衝剤がコントロール基板116を通って流れるだけでなく、血漿試料が試薬および触媒と混合する検出エリアに到達した後、緩衝剤が血漿試料と混合するように構成されてもよい。これは、血漿試料と混合されたときに、上述した種類の緩衝剤(上述した濃度とpHを有するTRIS緩衝剤)がASTおよびALTの高速で正確な検出に寄与するため、有益である。特に、カートリッジは:
- ブリスタ114とオンボードコントロール119とを含むカートリッジの前部を、
- 検出パッド111および112を含み、プラグ12がカートリッジ11に差し込まれると毛細管13が進入する、カートリッジの後部から
分離する透過膜123を含んでもよい。
【0157】
図10は、フローチャートとして、肝酵素の検出、および触媒ならびに指示薬の活性のコントロールに伴う様々なステップの概要を述べる。
【0158】
上述した血液検査ディスポーザブル10と関連の読み取り機3は、特にASTおよびALTを検出するように構成される。
【0159】
同様に、他の実施形態(図に示されない)において、血液検査ディスポーザブルおよび読み取り機は、それらの2つの酵素のうちの一方のみ(両方ではなく)、例えばASTのみの化学的活性を測定するように構成され得る。あるいは、それらはGGTのような別の肝酵素の化学的活性を測定する、またはASTおよびGGT、またはAST、ALTおよびGGTの化学的活性を測定するように構成され得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、血液検査ディスポーザブルおよび読み取り機は、AST(およびALT)の化学的活性に加えて、採取された血液試料における血小板数も測定するように構成され得る。血小板数を測定するために、毛細管によって採取された血液試料の一部は濾過されないままであってもよく、より長いカートリッジが使用されて、血小板測定要素のために、毛細管出力部と濾過膜との間に場所を空けておくことも可能である。
【0161】
いくつかの実施形態において、血液検査読み取り機3および関連のディスポーザブル10(被験者の血液中のAST/ALT濃度を決定するように構成される)に加えて、システムは、また、被験者から採取された血液試料中の血小板濃度を決定するように構成された別の臨床現場即時デバイスを含み得る。
【0162】
図11は、フローチャートとして、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法の第1の実施形態を示す。
図12は、
図11と同一の方法を、単純化しているが、いくらかはより具象的および例示的に示す。
【0163】
この方法において、制御および処理システム4は、機械的パラメータが最初に(ステップS10からS1)測定されるように、エラストグラフィデバイス2および血液検査読み取り機3を制御する。その後、そのようにして測定された機械的パラメータの値に応じて、被験者から血液試料が採取され、肝酵素濃度が測定される(ステップS20からS2)か、またはされない。この第1の実施形態において、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータの決定を改善すると予想されるときのみ、血液検査が行われる。
【0164】
図11において、この方法の様々なステップが時間tに対して示される。この図において、時間tが経過する方向は、垂直下方向に対応する。問題としているステップは、考慮されるステップを実行するエンティティとそれぞれ垂直に整列される。例えば、ステップS1は制御および処理システム4によって実行され、その間に、ステップS100は操作者100によって実行される。
【0165】
方法は、ステップS10から開始する。ステップS10において、制御および処理システム4は、エラストグラフィ測定処理を開始するように、エラストグラフィデバイス2、特にエラストグラフィモジュール21を制御する。
【0166】
それに応答して、ステップS11において、操作者100を案内して被験者の肝臓の前にプローブ22に置くのを助けるために、エラストグラフィモジュール21はプローブ22が置かれた被験者の体の一部を探査するのに適した信号(特に超音波信号)を生成する。操作者インタフェース5は、ステップS12において、Aモード超音波画像およびエラストグラフィ測定に有用な他の情報(例えばプローブ22の先端に作用した接触力)など、そのようにして得られた案内情報を(ここでは表示することによって)操作者100に対して伝える。ステップS12において、操作者インタフェース5は、操作者に、エラストグラフィ測定を行うことを促してもよい。
【0167】
その後、ステップS100において、操作者100は、エラストグラフィ測定、ここではトランジェントエラストグラフィ測定をトリガする。より厳密には、彼は、低周波の過渡的な弾性波(例えば剪断波)と、被験者の組織がその弾性波によってどのように動かされるかを追跡するように送信される超音波ショットとの放射をトリガする。エラストグラフィモジュール21は、ステップS13において、それに応答して受信した信号を取得し処理して、上述した機械的パラメータ(例えば肝硬度)の値を決定する。このトランジェントエラストグラフィ測定は、数回にわたって反復され得る。さらに、ステップS13において、(トランジェントエラストグラフィ測定中に得られた超音波エコー信号に基づいて、および/または例えば2回の連続したトランジェントエラストグラフィ測定間の区間において得られた他の超音波エコー信号に基づいて、のいずれかで)CAP値が決定される。
【0168】
機械的パラメータの値と、そのようにして測定されたCAP値とは、その後、制御および処理システム4に送られ、制御および処理システム4はステップS1においてそれらを取得する。
【0169】
その後、ステップSTにおいて、制御および処理システム4は、機械的パラメータの値が所与の基準を満たすか否かを試験する。
【0170】
ここで、制御および処理システム4は、ステップS1において取得された機械的パラメータ(例えば肝硬度)の値が、平均して肝臓が健康障害を患っていない値と肝臓が健康障害を患っている可能性がある値との間の境界に対応する閾値を超えたときに、その値が基準を満たしていないと決定する。
【0171】
機械的パラメータがヤング率Eのとき、この閾値は、例えば6-7kPaの範囲に存在してもよい。実際、ヤング率として6-7kPa未満の値は、試験対象の被験者が、被験者の血液中の肝酵素の濃度にかかわらず、肝繊維症を患っていないようであるということを示す。
【0172】
上述した基準が満たされたとき、制御および処理システム4はS3’を実行する。ステップS3’において、制御および処理システム4は、被験者の血液中の肝酵素(すなわちAST、ALTまたはGGT)の濃度にかかわらず、少なくとも1つの機械的パラメータの値を考慮に入れて、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定する。また、この基準が満たされたとき、被験者から血液試料は採取されず、分析もされない。
【0173】
逆に、上述した基準が満たされない場合、ステップST後、ステップS20において、制御および処理システム4は肝酵素測定処理を始める。特に、ステップS20において、制御および処理システム4は、操作者インタフェース5を制御して、肝酵素濃度測定が推奨されることを明示する情報および/または被験者から毛細血管血液試料を採取し、この血液試料の分析を始めることを操作者100に促す情報を伝える。
【0174】
その後、ステップS200において、操作者100は、血液検査ディスポーザブル10に固定された毛細管13を直接使用して、被験者から毛細血管血液試料を採取する。その後、操作者は、この血液試料が充填された血液検査ディスポーザブル10を血液検査読み取り機3に導入する。
【0175】
ステップS23において、血液検査読み取り機3は、この血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度を決定する。ここで、血液検査読み取り機3は、具体的に、血液検査ディスポーザブル10において実施された上述の比色検出方法を使用してASTおよびALTの濃度を決定する。
【0176】
その後、血液検査ディスポーザブル3は、ステップS23において測定された肝酵素濃度の1つ以上の値を制御および処理システム4に送信し、制御および処理システム4は、ステップS2においてそれまたはそれらを取得する。
【0177】
その後、ステップS3において、制御および処理システム4は、少なくともステップS1で取得された機械的パラメータの値と、ステップS2で取得された肝酵素濃度の値のうちの少なくとも1つを考慮に入れて、被験者の健康状態に関係するパラメータを決定する。その後、制御および処理システム4は、このようにして決定されたパラメータを表すデータを出力する。これらのデータは、例えば操作者インタフェース5によって操作者100に対して送信されてもよい。また、それらは(この超小型回路カードに上記のデータを格納するための)個人電子健康カード、または非ローカル/分散健康データストレージシステムのようなストレージデバイスまたはシステムに送られてもよい。
【0178】
図11の方法において、エラストグラフィデバイス2の動作、および血液検査デバイス3の動作は、明らかに互いに協調している(機械的パラメータ値に応じて、機械的パラメータ測定後に肝酵素測定が始められるため)。また、エラストグラフィデバイス2の動作と血液検査デバイス3の動作とは同時であり、すなわち、所与の限定されたタイムフレーム中にそれらの動作は生じる。
【0179】
より具体的には、
図11の方法において、ステップS10の開始とステップS20の開始との間のスタートアップタイムラグT
Sは限定されている(制御および処理システムがプログラミングされている方法に起因する)ことが明らかである。実際には、この持続期間の主要部分は、操作者が被験者の肝臓の硬度を探査するために必要な操作(プローブの位置付け、測定トリガリング、エラストグラフィ測定の可能性のある反復)を実行する測定ステップS100に相当する。実際には、T
Sは、通常、2分と5分の間であり、一般に10分より短い(または少なくとも20分より短い)。
【0180】
さらに、
図11の方法において、(ステップS100における)機械的パラメータの測定時と、(ステップS23の終了時における)肝酵素の濃度の測定時との間のタイムラグTmも限定されている。実際には、この持続期間の主要部分は:
- 操作者100によって行われる操作(毛細血管血液採取、血液検査読み取り機への血液検査ディスポーザブル10の挿入、これは通常1-3分かかる)と、
- ここでは、上述した血液検査ディスポーザブル10の特定の特徴のおかげで、通常5分未満(または少なくとも10分未満)である、化学反応検出の完了に必要な時間と
に対応する。
【0181】
したがって、実際には、Tmは、通常、6分と15分の間である(さらに、一般に30分未満である)。
【0182】
したがって、
図11の方法全体を実行するのに必要な合計時間T
Tは、通常、7分と30分との間であり、10分と20分との間である場合が多い(いずれにしても1時間未満である)。
【0183】
以下において、ステップS3において行われる健康状態に関係するパラメータの決定が詳細に示される。
【0184】
ステップS3において決定された健康状態に関係するパラメータは、被験者の肝臓が健康であると考えられる、または逆に繊維症または脂肪症のような所与の病気または炎症を患っていると考えられるかを明示する情報の形態をしていてもよい。
【0185】
また、ステップS3で決定された健康状態に関係するパラメータは、例えば病気ステージの形態で、被験者の肝臓が健康であると考えられるか否かをより段階的に明示してもよい。例えば、この病気ステージは、広く使用されている繊維症ステージF0からF4(F0:繊維症なし;F1:最小限の繊維症;F2:中程度の繊維症;F3:深刻な繊維症;F4:最も深刻な繊維症/肝硬変)でもあり得る。
【0186】
ステップS3で決定された健康状態に関係するパラメータは繊維症に関係してもよいが、脂肪症(CAP値が非常に有用なことがわかっている)および/または肝炎(この点に関して、肝酵素の濃度の値は非常に有用な情報を供給する)に関係してもよい。
【0187】
ステップS3において、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータは:
- 少なくとも機械的パラメータと、上述した肝酵素の濃度とに依存したベンチマークパラメータ(スコア)の値を計算し、その後
- そのようにして得られたベンチマークパラメータの値を、1つ以上の閾値(例えば陰性適中率、および陽性適中率)と比較し、
- 問題としている1つ以上の比較の結果から被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定する
ことによって決定されてもよい。
【0188】
また、いくつかの実施形態において、様々な病気ステージが上述したベンチマークパラメータの様々な値範囲とそれぞれ関連付けられることも可能である。
【0189】
また、ステップS3において決定された健康状態に関係するこのパラメータは、少なくとも機械的パラメータと上述した肝酵素の濃度とに依存し、被験者の肝臓がある程度健康であるという事実を表すベンチマークパラメータの値の形態もとり得る。
【0190】
換言すれば、健康状態に関係するパラメータは、最終的な診断自体に対応するのではなく、医療専門家が被験者の肝臓に関する診断を行う上で有用な中間ベンチマークパラメータ値でもあり得る。
【0191】
上述したベンチマークパラメータは、例えば、上記式F1にしたがって計算される上述の「FAST」パラメータでもあり得る。上述したように、このベンチマークパラメータは、肝硬度LSM(すなわちヤング率E)、CAP、および被験者の血液中のASTの濃度に依存する。
【0192】
ベンチマークパラメータ、またはより一般的には被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータは、被験者の血液中のALTの濃度も考慮に入れて決定され得る。したがって、問題としているベンチマークパラメータは、肝硬度LSM、任意選択でCAP、被験者の血液中のASTの濃度、および被験者の血液中のALTの濃度に依存し得る。
【0193】
また、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定する際に、血小板の濃度など、被験者の血液の他の特性も考慮され得る。
【0194】
また、上述したベンチマークパラメータ(スコア)を計算する際に、年齢および性別など、被験者に関する他の臨床的パラメータも考慮され得る(スコア計算式は、そのような追加の臨床的パラメータを含んでもよい)。
【0195】
例えば、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータは:被験者の血液中のASTの濃度、ALTの濃度および血小板の濃度、被験者の年齢、および肝硬度LSMを考慮に入れて決定され得る。
【0196】
この目的のため、一実施形態において、制御および処理システム4は:
- 「FIB-4」ベンチマークパラメータの値を計算し、その後
- このFIB-4値とステップS1において取得されたLSM値とに基づいて被験者の健康状態に関係するパラメータを決定する
ことができる。
【0197】
FIB-4ベンチマークパラメータは、以下の論文の要約に定義されている:「Development of a simple noninvasive index to predict significant fibrosis patients with HIV/HCV co-infection」、Sterling R.K.等著、Hepatology 2006、vol.43、1317-1325頁。
【0198】
そのような実施形態において、FIB-4値は、例えば、LSM値に基づいて最初に識別された健康状態を確認、または逆に無効にするために用いらてもよい。
【0199】
また、FIB-4値は、LSM値に基づく事前の健康状態識別を改良するために用いられてもよく、特に、LSM値が陰性適中率と陽性適中率との間のLSM「グレー範囲」に含まれる場合に、健康状態同士を区別して判断する上で役立つ。
【0200】
また、FIB-4値は、FIB-4値とLSM値の両方に応じて、総合スコアを計算することによって考慮に入れられてもよい。
【0201】
ステップS3において、様々なベンチマークパラメータ(様々なスコア)は、
図13に示すように、被験者の健康状態に関係するパラメータの決定に使用され得る。これは、識別される健康状態に応じて、被験者の肝臓の健康状態に関係する妥当な情報を推測するために、所与のベンチマークパラメータが他のものよりも適切な場合があるため、有益である。
【0202】
例えば、ロジスティック回帰に基づくベンチマークパラメータが用いられた場合、それらのベンチマークパラメータのそれぞれが二分決定を行うことを可能とする。例えば、被験者の肝臓がF4繊維症を患っているか否かを、第1のベンチマークパラメータで決定可能とする場合がある一方、被験者の繊維症ステージがF0-F1以上であるかを、第2のベンチマークパラメータで決定可能とする。それによって、識別される健康状態に応じて、および/または被験者の肝臓の状態のそのような事前特性評価に応じて、様々なベンチマークパラメータのうちから選択されたベンチマークパラメータを使用することによって、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータのより詳細またはより完全な決定が実現され得る。被験者の健康状態または体調は事前に知られていないため、より適切なベンチマークパラメータの選択は、機械的パラメータ(例えば肝硬度)の値および/またはステップS1において取得された超音波減衰量パラメータの値からなる予備段階の結果に基づくことが可能である。
【0203】
この目的のため、いくつかの実施形態において:
- 制御および処理システム4のメモリにおいて、様々な計算式が少なくとも1つの機械的パラメータの値の様々な範囲と関連付けられ、各計算式は肝臓健康評価のための所与のベンチマークパラメータに対応し、各計算式は、少なくとも1つの機械的パラメータから、および血液試料中の少なくとも1つの肝酵素の濃度から、対応するベンチマークパラメータを計算可能とし、
- 制御および処理システム4は、被験者の肝臓に関して前もって測定された少なくとも1つの機械的パラメータの値を、これらの様々なベンチマークパラメータにそれぞれ関連付けられた値の範囲と比較することによって、上記のベンチマークパラメータのうちの1つを選択するようにプログラミングされ、
- 制御および処理システム4は、ステップS3において、このベンチマークパラメータと関連付けられた式にしたがって、前もって選択されたベンチマークパラメータの値を計算するようにプログラミングされる。
【0204】
被験者の健康状態に関係するパラメータを決定するこの方法を、
図13にて例として示す。
【0205】
この例において、被験者の肝臓のヤング率Eがここでは6.1kPaに等しい所与の閾値未満であるとき、スコアaと呼ばれる第1のベンチマークパラメータが選択される。その後、Eの値と被験者の血液中のASTおよびALTの濃度の値とを考慮に入れてスコアaの値が計算される。スコアaの値が第1の閾値t1未満であるとき、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の繊維症ステージがF0またはF1であると決定する。また、スコアaの値が第2の閾値t2を上回っているとき、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の繊維症ステージがF2、F3またはF4(F2とF4の間に含まれる)ことを決定する。スコアaの値がt1とt2の間にある(「グレーゾーン」)とき、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータが決定可能でないことを明示するデータを出力する。
【0206】
逆に、被験者の肝臓のヤング率Eが6.1kPaに等しい上述の閾値を上回っているとき、スコアbと呼ばれる第2のベンチマークパラメータが選択される。その後、Eの値と被験者の血液中のASTおよびALTの濃度の値とを考慮に入れて、スコアbの値が計算される。スコアbの値が第3の閾値t3未満であるとき、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の繊維症ステージがF0またはF1であると決定する。また、スコアbの値が第4の閾値t4を上回っているとき、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の繊維症ステージがF2、F3またはF4であると決定する。また、スコアbの値がt3とt4の間にあるとき(「グレーゾーン」)、制御および処理システム4は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータが決定可能でないことを明示するデータを出力する。
【0207】
図14は、
図11の方法の実現の特定例において実行される計算および検査シーケンスを示す。この例において、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法は、被験者の肝繊維症ステージがF4であるか、またはそれ未満(F0からF3)であるかを決定することを特に意図している。したがって、ステップS
Tに関わるEの閾値は比較的高く、例えば10.9kPaに等しい。
【0208】
Eが10.9kPa未満のとき、ステップSTの後に、制御および処理システム4は、被験者の肝繊維症ステージがF0とF3の間に含まれる(F0、F1、F2またはF3に等しい)ことを、さらなる計算なしで(この特定例の場合)、直接決定するステップS3’を実行する。
【0209】
逆に、Eが10.9kPaを上回っている場合、ステップSTの後に、制御および処理システム4は、肝酵素測定(ステップS20からS2)を始める。また、その後、ステップS3において、それは、EとASTおよびALTの濃度の値とを考慮に入れてスコア値を計算する。スコア値が閾値t1’未満のとき、制御および処理システム4は、被験者の肝繊維症ステージがF0とF3との間に含まれることを決定する。スコア値が閾値t2’を上回っているとき、制御および処理システム4は、被験者の肝繊維症ステージがF4であると決定する。それ以外の場合、制御および処理システム4は、は、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータが決定可能でない(「グレーゾーン」)ことを明示するデータを出力する。
【0210】
図15は、本開示の技術による、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するための方法の第2の実施形態を概略的に示す。
【0211】
この図において、方法は、
図11と同様の規則(特に時間tが経過する方向は、垂直下向き方向に対応する)を有するフローチャートの形式で示される。
【0212】
本第2の実施形態において、肝酵素測定処理と機械的パラメータ測定処理とは、それぞれの開始間に短時間の遅延TS’を有してほぼ並列に始められる。肝酵素測定処理が最初に(ステップS20’において)始められる。その後、(ステップS200において)被験者から血液試料が採取されると、および(ステップS23の開始時において)血液検査ディスポーザブル10が読み取り機3に導入されると、(ステップS10において)機械的パラメータ測定処理が遅延なく始められる。
【0213】
したがって、通常5分と10分との間である、検出化学反応が生じるのに必要な時間が、上述の機械的パラメータを平行して測定するために使用される。これによって、被験者の肝臓の健康状態に関係するパラメータを決定するために必要な合計時間TT’を低減することが可能となる。
【0214】
したがって、
図15の方法はステップS20’で開始し、その間に制御および処理システム4は肝酵素測定処理を始める。特に、ステップS20’において、制御および処理システム4は、被験者から毛細血管血液試料を採取すること、およびこの血液試料の分析を始めることを操作者100に対して促す情報を送信するように操作者インタフェース5を制御する。ステップS22において、ここでは表示することによって、操作者インタフェース5は上記の情報を操作者100に伝える。その後、ステップS200において、操作者は被験者から毛細血管血液試料を採取し、この血液試料が充填された血液検査ディスポーザブル10を血液検査読み取り機3に導入する(
図11の方法と同様に行う)。その後、血液試料を分析するステップS23が開始する。血液検査ディスポーザブル10が血液検査読み取り機3に挿入された直後のステップS23の開始時において、血液検査読み取り機3は、制御および処理システム4に、血液検査ディスポーザブル10が血液検査読み取り機3に挿入されたことを明示する情報を送信する。ステップS24において、この情報は制御および処理システム4によって受信される。血液試料分析が開始したことを確認するこの情報が受信されると、制御および処理システム4はステップS10において機械的パラメータ測定処理を始める。ここで、この測定処理は、
図11を参照して既に上述したステップS10、S11、S12、S100、S13、およびその後のS1を含む。
【0215】
ステップS10からS1の実行中、血液試料の化学的分析は継続し、ステップS23の終了時において、被験者の血液中のASTの濃度とALTの濃度とのそれぞれの値の決定に最終的につながる。その後、これらの値は制御および処理システム4に送信され、制御および処理システム4はその後のステップS2において取得する。その後、
図11を参照して上述したように、ステップS3が実行される。
【0216】
図12の方法において、時間T
S’は、通常、1分と5分との間である。また、肝酵素測定(すなわちステップS200)の開始時と、血清学的または機械的のいずれかの全測定の終了時(ここでは、最新の方に応じて、ステップS23の終了時またはステップS13の終了時に対応する)との間の全体時間Tm’は、通常、4分から10分の範囲である。この方法を実行するのに必要な合計時間T
T’は、
図11の方法を実行するのに必要な合計時間T
Tよりも短く、通常、5分と20分との間であり、7分と15分との間であることが多い(いずれにしても1時間未満)。
【符号の説明】
【0217】
1、1’、1” システム
2、2’、2” エラストグラフィデバイス
3 血液検査読み取り機
4、4’、4” 制御および処理システム
5、5’ 操作者インタフェース
6、6’ ケーシング
7 計算リソース
8 リモートデバイス
9 接続
10 血液検査ディスポーザブル
11 カートリッジ
12 プラグ
13 毛細管
21 エラストグラフィモジュール
22 プローブ
41 第1の部分
42 第2の部分
100 操作者
110 濾過膜
111 第1の検出パッド
112 第2の検出パッド
114 ブリスタ
115 供給管
116 コントロール基板
117 コントロールパッド
118 参照パッド
119 オンボードコントロール
121 カートリッジ端面
123 透過膜
【外国語明細書】