(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019630
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】複合材料及びそれから製造される銅被覆ラミネート
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220120BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K1/03 630H
H05K1/03 670Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021115776
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】63/052,049
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーチョン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ムーホワン チー
(72)【発明者】
【氏名】シーチン リン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイグアン リウ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB17A
4F100AB33A
4F100AG00C
4F100AK03C
4F100AK12B
4F100AK17C
4F100AK25C
4F100AK41C
4F100AK47C
4F100AK49C
4F100AK50C
4F100AK51C
4F100AK53C
4F100AK54C
4F100AK55C
4F100AK56C
4F100AK57C
4F100AL05B
4F100AN02B
4F100AS00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CB00B
4F100DG11C
4F100DG15C
4F100DH01C
4F100GB43
4F100JB01
4F100JB12B
4F100JG01A
4F100JK14A
4F100JK17
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】複合材料及びそれから製造される銅被覆ラミネートを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの平滑面を有する銅箔と、低いGk及びDf特性を有する接着剤層とを含む複合材料が開示される。本複合材料をフレキシブル又は硬質基板と積層することによって製造される、耐熱性及び良好乃至優れた接合強度を示す銅被覆ラミネートも開示される。それから製造されるPCBは、低い挿入損失を示し、且つ少なくとも1Gpsの高速又は少なくとも1GHzの高い周波信号を利用する様々な電気デバイスを形成するために他の構成要素と組み立てられ得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔と接着剤層とを含む銅被覆積層体を製造するための複合体であって、
前記銅箔は、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗と、2.0μm以下の表面粗さ(Rz)を有する少なくとも1つの平滑面と、1ピース/μm2未満のノジュール密度とを有し、且つ350μg/dm2以下である前記平滑面上の非銅金属元素の全含有量を有し;
前記接着剤層は、約5~25重量部の反応性樹脂、約0.1~3重量部の硬化剤、及び約72~94.9重量部のスチレン系ゴムを含有する樹脂マトリックスと;前記樹脂マトリックスの100重量部に基づいて約0~100重量部の添加物とを含む混合物に由来し;
前記接着剤層は、前記銅箔の前記平滑面と接触しており;
前記硬化された接着剤層は、10GHzにおいて、試験方法に記載される方法に従って3.0以下のDk及び0.006以下aのDfを有し;
但し、前記銅箔の前記平滑面は、接着促進剤で前処理されていないことを条件とする、複合体。
【請求項2】
前記銅箔は、約6μm~約400μmの厚さを有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記接着剤層は、約0.1μm~約200μmの厚さを有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記接着促進剤は、シラン、シリルアミン、アリルホスファイトエステル、アリルホスフェートエステル、アゾールシラン、不飽和アミド基置換複素環化合物、及びアミノトリアジン系化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
基板と、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体とを含む、改善された低い伝送損失を有する銅被覆積層体であって、
前記基板は、ポリイミド、ポリアミド-イミド、液晶ポリマー、フッ素系ポリマーから構成されるフィルムである、銅被覆積層体。
【請求項6】
基板と、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体とを含む、改善された低い伝送損失を有する銅被覆積層体であって、
前記基板は、ポリマー材料を含浸した繊維性補強部材から構成されるプリプレグであり;
前記繊維性補強部材は、織ガラス布、不織ガラス布、又は不織アラミド布であり;及び
前記ポリマー材料は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シアネートエステル、ポリエーテル、又はフッ素系ポリマーである、銅被覆積層体。
【請求項7】
前記銅被覆積層体が、0.4kN/m以上の剥離強度と、30秒超にわたる260℃での耐熱性と、10GHzにおいて2.5dB/10cm以下である又は39GHzにおいて8.0dB/10cm以下である挿入損失とを有する、請求項5又は6に記載の銅被覆積層体。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の銅被覆積層体から製造される、プリント回路基板。
【請求項9】
フレキシブルプリント回路基板又は硬質プリント回路基板である、請求項8に記載のプリント回路基板。
【請求項10】
高速用途、高周波用途、又は両方における請求項8に記載のプリント回路基板の使用であって、前記高速用途のデータ速度は、1Gbpsよりも高く、及び前記高周波用途の周波数は、1GHzよりも高い、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減少した導体損失、誘電損失及び高い剥離強度を示す銅被覆ラミネートを製造するための複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、エレクトロニクスの情報処理速度を上昇させ、且つ高周波数帯無線通信を処理するために、電気信号の高速伝送が電子部品のために必要とされている。高周波整合基板の適用も前進している。したがって、低い挿入損失は、高速及び/又は高周波用途向けのプリント回路基板にされる銅被覆ラミネート(CCL)の決定的に重要な特性の1つになっている。
【0003】
導体損失及び誘電損失の合計である全挿入損失を低くすることは、導体損失及び/又は誘電損失を低下させることによって達成され得る。誘電損失を低下させることは、基板、プリプレグ及び銅箔と基板との界面に存在する場合の接着剤を含めて、低いDk(誘電率、比誘電率とも呼ばれる)及びDf(散逸率、損失正接、tanδとも呼ばれる)の誘電材料を慎重に選択することによって達成され得る。高速/高周波条件下において、信号伝送の電流は、主として、スキン効果と名付けられる周知の現象である、銅箔の表面にわたる伝導である。スキン効果は、より大量の電流がより高い周波数によって導体の表面部分に集中している現象である。電流密度は、表面部分からのより深い深さで減少する。1/表面上の電流密度値のe(eは、自然対数である)を提供する深さは、スキン深さと言われ、電流が流れる深さの指標として役立つ。スキン深さは、周波数に依存し、周波数が増加するにつれて減少する。
【0004】
通常、銅被覆ラミネートのために使用される銅箔において、基板に積層される側の表面は、突起(又はノジュール)を有する粗面を形成するために加工される。この粗面は、基板に対して固着効果を示すために作られる。基板と銅箔との間の接着強度は、したがって、それから製造されたプリント回路基板の信頼性を確保するために高めることができる。表面粗さの減少は、導体損失を減らすための最も効率的な方法の1つであるが、トレードオフは、銅箔と基板との間の剥離強度によって測定されるような接着強度の弱化である。その結果として、最終製品(プリント回路基板)は、高周波数範囲(すなわち1GHz超)において悪化した信頼性及び性能を有し得る。より低い表面粗さで剥離強度を維持するための1つのアプローチは、Cu粗面処理プロセス中、形状、密度、サイズ等などのノジュールのモルフォロジを変更することである。例えば、S.-Q.Linらは、(非特許文献1)及び(非特許文献2)に開示した。
【0005】
別のアプローチは、銅箔の未粗化面を接着促進剤又はカップリング剤で前処理することである。例えば、T.Satoらは、(特許文献1)において、シランカップリング剤層が銅箔の未粗化面上に形成され、次いでプライマー樹脂層がその上に形成されることを開示している。明らかな欠点は、プライマー樹脂上に適用された余分な接着促進剤が、通常、その高いDk/Df特性のために誘電損失を増加させ、銅箔の導体損失が減少しているにもかかわらず、銅クラッド又はPCBデバイスのより高い全体挿入損失をもたらすことである。
【0006】
T.Matsunagaらは、ニッケル又はシランなどのかなりの非銅元素を使用することにより、銅箔の剥離強度、錆止め能力、耐熱性又は耐薬品性を増加させることも(非特許文献3)に開示した。しかしながら、これらの非銅元素は、銅クラッド又はPCBの挿入損失を著しく増加させるより高い透磁率又はより高い電気抵抗を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,815,387号明細書
【特許文献2】米国特許第5,861,076号明細書
【特許文献3】米国特許第4,521,558号明細書
【特許文献4】米国特許第9,688,704号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第A-0251490号明細書
【特許文献6】米国特許第10,385,076号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2016/0137889A1号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】TW M543248
【非特許文献2】TW M543249
【非特許文献3】TW I339222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高速及び/又は高周波用途向けに好適に使用することができる銅被覆ラミネート及びプリント回路基板を調製するための、低い導体損失、低い誘電損失及び十分に高い剥離強度を有する複合材料が継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、銅箔と接着剤層とを含む銅被覆ラミネートを製造するための複合材料であって、
銅箔は、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗及び少なくとも1つの平滑面を有し、前記平滑面は、2.0μm以下の表面粗さ(Rz)、1ピース/μm2未満のノジュール密度を有し、平滑面上の非銅金属元素の全含有量は、350μg/dm2以下であり;
接着剤層は、約5~25重量部の反応性樹脂、約0.1~3重量部の硬化剤及び約72~94.9重量部のスチレン系ゴムを含有する樹脂マトリックスと;樹脂マトリックスの100重量部を基準として約0~100重量部の添加物とを含む混合物に由来し;
接着剤層は、銅箔の平滑面と接触しており;
硬化された接着剤層は、10GHzにおいて、3.0以下のDk値及び0.006以下のDf値を有し;
但し、銅箔の平滑面は、接着促進剤で前処理されていないことを条件とする、複合材料を提供する。
【0011】
本発明は、銅被覆ラミネート、銅被覆回路及び本発明の複合材料を含むデバイスも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1表面11及び第2表面12を有する、銅箔1と、接着剤層2との層構成を有する本複合ラミネート100の一実施形態の拡大側面図を示し、平滑面である第2表面12は、接着剤層2と接触している。
【
図2】銅箔1と接着剤層2とから構成される本複合材料100;及び基板3の順序での層構成を有する片面CCLである、本銅被覆ラミネート200の一実施形態の拡大側面図を示し、基板3は、接着剤層2と接触している。
【
図3】銅箔1と接着剤層2とから構成される本複合材料100;基板3;任意選択的な接着剤層4及び第2銅箔5の順序での層構成を有する両面CCLである、本銅被覆ラミネート300の一実施形態の拡大側面図を示し、第2銅箔5及び銅箔1は、同じであるか又は異なり得;接着剤層4が存在する場合、接着剤層4及び第2銅箔5は、複合材料100と同じであるか又は異なる本複合材料110の実施形態でもあり得る。
【
図4】銅箔4A(0.62μmの表面粗さ(Rz)を有する)の平滑面対銅箔4B(3.57μmの表面粗さ及び1.5ピース/μm
2のノジュール密度を有する、福田から購入)の粗面の顕微鏡写真の目視比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、特に明記しない限り、あたかも完全に示されているかのように、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に明確に援用される。
【0014】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。不一致の場合、定義を含めて、本明細書が優先される。
【0015】
特に明記しない限り、全ての百分率、部、比率等は、重量による。
【0016】
本明細書で用いる場合、用語「から生成される」は、「含む」と同義語である。本明細書で用いる場合、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」、「含有する」若しくは「含有している」又はそれらの任意の他の変形は、非排他的包含に及ぶことを意図する。例えば、要素のリストを含む組成物、プロセス、方法、物品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品若しくは装置に固有の他の要素を含み得る。
【0017】
移行句「からなる」は、明記されていないあらゆる要素、工程又は原料を排除する。請求項における場合、そのような句は、それらと通常関係がある不純物を除いて、列挙されるもの以外の材料の包含を請求項から排除する。語句「からなる」が、前文の直後よりもむしろ請求項の本体の条項に現れる場合、それは、その条項に記述される要素のみを限定し;他の要素は、全体として請求項から排除されない。
【0018】
移行句「から本質的になる」は、文字通りに考察されるものに加えて、材料、工程、特徴、構成成分又は要素を含む組成物、方法又は装置を定義するために用いられ、但し、これらの追加の材料、工程、特徴、構成成分又は要素が、特許請求される本発明の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないことを条件とする。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間領域を占める。
【0019】
用語「含む」は、用語「から本質的になる」及び「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。
【0020】
量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値のリストのいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上方の範囲限界又は好ましい値と、任意の下方の範囲限界又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙された範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」等などを含むものと解釈されるべきである。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その端点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。
【0021】
用語「約」が値又は範囲の端点を表すのに用いられる場合、本開示は、言及される特定の値又は端点を含むと理解されるべきである。
【0022】
さらに、それとは反対を明確に述べない限り、「又は」は、包括的な「又は」を意味し、排他的な「又は」を意味しない。例えば、条件A「又は」Bは、下記のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)、且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)、且つBが真である(又は存在する)並びにA及びBが両方とも真である(又は存在する)。
【0023】
「Mol%」又は「モル%」は、モルパーセントを意味する。
【0024】
発明の概要に記載されるような本発明の実施形態は、本明細書に記載されるあらゆる他の実施形態を含み、任意の方法で組み合わせることができ、実施形態における変数の記載は、本発明の複合ラミネートのみならず、それから製造される物品にも関連する。
【0025】
本発明は、本明細書で以下に詳細に説明される。
【0026】
銅箔
銅箔には、圧延アニール(RA)銅箔及び電着(ED)銅箔が含まれる。一般に、ED銅箔は、艶消し面(堆積表面)及び光沢のある艶のある表面(ドラム表面)を有する一方、RA銅箔は、平滑である両面を有する。本複合材料は、高周波及び/又は高速用途向けのCCL及びPCBに組み込まれることを目的としているため、好適な銅箔は、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗の高純度を有する。銅箔は、以下の実施例の部において記載される方法によって測定されるように、2.0μm以下の表面粗さ(Rz)を有することで特徴付けられる少なくとも1つの平滑面を有する。さらに、平滑面は、1ピース/μm2、又は0.5ピース/μm2、又は0.3ピース/μm2、又は0.1ピース/μm2未満のノジュール密度を有するか、又は全く粗化されていない。粗化されている銅箔表面について、一般に、3ピース/μm2超のノジュール密度を有すると予期される。
【0027】
本明細書で用いる場合、銅箔の平滑面は、本複合材料がCCLを製造するために使用されるとき、それが基板に面する側であるため、「積層側」とも言われる。銅箔の反対側は、「レジスト側」(又は配線側)と言われる。
【0028】
いくつかの場合、1つ以上の不動態化層を、錆止め、耐熱性及び耐薬品性等などの追加の所望の特性を提供するために銅箔の1つ表面又は両表面上に適用することができる。不動態化層を形成するための好適な材料としては、亜鉛、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン及びそれらの組み合わせなどの非銅金属元素が挙げられる。350μg/dm2以下である、銅箔の平滑面上の非銅金属元素の全含有量の維持は、低い導体損失特性を損なうことなく、所望の特性を保持することを可能にする。
【0029】
レジスト側の表面特性は、マイクロエッチ、酸リンス、褐色酸化物、黒色酸化物、プレはんだマスク処理等などの多くのその後のプリント回路製造プロセスにさらされることに留意されたい。表面粗さ及び堆積される非銅金属元素の全含有量に対する要件は、存在しないことが理解できる。
【0030】
任意の不動態化層の存在にもかかわらず、銅箔の平滑面は、銅箔と基板との間の接着を向上させるために使用するためのいかなる接着促進剤でも処理されない。銅表面を処理するための公知の接着促進剤(カップリング剤とも名付けられる)としては、Adlamらに付与された(特許文献2)及びSatoらに付与された(特許文献1)に開示されているシラン及びシリルアミン;Mowdoodに付与された(特許文献4)に開示されているアリルホスファイトエステル及びアリルホスフェートエステル;Miuraらに付与された(特許文献5)に開示されているアゾールシラン;(特許文献6)に開示されている不飽和アミド基置換複素環化合物;Moriらに付与された(特許文献7);及びそれに引用されている多数の参考文献に開示されているアミノトリアジン系化合物が挙げられる。
【0031】
本複合材料の銅箔は、約6μm~約400μm、又は約12μm~約70μm、又は約18μm~約35μmの範囲の厚さを有する。
【0032】
本複合材料での使用に好適な銅箔は、例えば、Chang Chun Petrochemical Co.;Nan Ya Plastics Co.;三井金属鉱業株式会社;古河電気工業株式会社;又は福田金属箔粉工業株式会社から商業的に入手可能である。
【0033】
接着剤層
本複合材料の接着剤層は、銅箔の平滑面と接触しており、基板自体のもの以下の誘電損失を有する銅被覆ラミネートを製造するための基板への良好な接着を提供すると予期される。
【0034】
接着剤層は、約5~25重量部の反応性樹脂、及び約0.1~3重量部の硬化剤、及び約72~94.9重量部のスチレン系ゴムを含有する樹脂マトリックスと、樹脂マトリックスの100重量部を基準として約0~100重量部の添加物とを含む混合物に由来する。
【0035】
反応性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂又はそれらの組み合わせ;好ましくはエポキシ樹脂が挙げられる。
【0036】
ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノール-ノボラック型エポキシ、クレゾール-ノボラック型エポキシ、グリシジルエーテル型エポキシ、ナフタレン型エポキシ等などの様々なエポキシ樹脂が使用され得る。しかしながら、反応を適切に制御するために、少なくとも2つのエポキシ基を各分子中に含有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。上述のエポキシ樹脂は、単独で又は2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0037】
用いられるエポキシ樹脂のタイプに応じて、当業者は、好適な硬化剤を容易に選択し、次いで反応性樹脂のモル当量に従って適切な量を決定することができる。例えば、硬化剤としては、ジシアノジアミド、イミダゾール及び芳香族アミンなどのアミン;ビスフェノールA及び臭素化ビスフェノールAなどのフェノール類;フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂などのノボラック;並びに無水フタル酸などの酸無水物等が挙げられ得る。
【0038】
スチレン系ゴムの例としては、ポリスチレン及びスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)又はそれらの混合物などのブロックコポリマーが挙げられる。
【0039】
スチレン系ゴムは、酸変性ゴムを得るために不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物でグラフトされ得るか、又はそれらと共重合され得る。酸変性物としての使用に好適な不飽和カルボン酸又はその無水物の例としては、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸が挙げられる。とりわけ、無水マレイン酸が好適に使用される。酸変性ゴムを使用することにより、それは、Dk及び/又はDf値を増加させることなく接着信頼性をさらに高め得る。
【0040】
酸変性物のグラフト比は、例えば、グラフトされるスチレン系ゴムを基準として約0.05重量%~10.0重量%、好ましくは約0.1重量%~5.0重量%である。グラフト比が上記の範囲未満である場合、接着強度は、不十分であり得る。他方では、グラフト比が上記の範囲超である場合、スチレン系ゴムは、凝集し得、相溶性及び分散性が低下し得、その結果、生産効率が低下する傾向がある。
【0041】
本発明において、様々な添加物が、有益な官能性を提供するために、接着剤層を形成する混合物に添加され得る。例えば、好適な添加物としては、接着促進剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、充填材、難燃剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、加工助剤、熱安定剤、UV吸収剤等が挙げられるが、それらに限定されない。前記添加物は、本発明の効果が損なわれない限り、樹脂混合物に添加され得る。
【0042】
本混合物のための有用な充填材及び難燃剤の例としては、酸化アルミニウム、有機リン酸塩、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸カルシウム、粘土、マイカ、硫酸バリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、アルミニウム三水和物及び硫酸カルシウムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
接着剤層を形成する混合物は、好ましくは、反応性樹脂、スチレン系ゴム、任意選択的な添加物及び硬化剤を溶解又は分散させることができる溶媒と混合される。
【0044】
好適な溶媒としては、溶媒が樹脂混合物の接着特性に悪影響を及ぼさない限り、例えばメチルエチルケトン、トルエン、メチルシクロヘキサン、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、トリクロロエチレン又は塩化メチレンが挙げられる。これらの溶媒は、樹脂混合物の組成に従って任意選択的に混合され得る。例えば、1:1~100等であるメチルエチルケトンとトルエンとの混合物が用いられ得る。
【0045】
接着剤層を形成する混合物の固形分は、混合物の総重量を基準として約10重量%~約60重量%又は約15重量%~約45重量%である。
【0046】
良好な接着強度を有することに加えて、好適な樹脂混合物は、好ましくは、硬化後に低いDf及びDk値を有する。評価は、樹脂混合物を剥離性基板上に適用して、25μmの厚さの接着剤層を形成することによって行われ得る。積み重ね、乾燥させ、完全に硬化させた後、Df及びDkは、下記の実施例の部において記載される方法に従って測定された。
【0047】
本発明者らは、硬化した接着剤層が、好ましくは、10GHzで3.0以下又は2.5以下のDk及び10GHzで0.0060以下、又は0.0040以下、又は0.0020以下のDfを有することを発見した。
【0048】
好適な樹脂混合物は、(特許文献8)に開示されている接着剤組成に従って調製され得るか、又はDuPont製のPyralux(登録商標)GPL若しくはPyralux(登録商標)GFLなどの商業的供給源から購入され得る。
【0049】
本発明の複合材料
本発明の複合材料100は、銅箔1と接着剤層2とを含み、ここで、銅箔は、第1表面11と第2表面12(すなわち平滑面)とを有する。接着剤層を形成する混合物は、
図1に示されるように銅箔の平滑面12に適用された。
【0050】
接着剤層2を形成する混合物は、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ナイフオーバーロールコーティング、エアナイフコーティング、スロットダイコーティング、キャスティング、ダイレクトグラビア、リバースグラビア、オフセットグラビア、ロールコーティング、ディップコーティング又は浸漬コーティングなど、当技術分野において周知である様々なコーティング法によって適用され得る。ディップコーティング又は浸漬コーティングが用いられる場合、銅箔のレジスト側は、剥離性の保護層で覆われ得ることに留意されたい。いくつかの実施形態において、スロットダイコーティングが用いられ得る。
【0051】
当業者によって容易に決定されるであろう任意の適切な適用方法が樹脂混合物を適用するために利用され得る。本明細書で用いる場合、用途「コーティング」は、それが銅箔の平滑面上に適用される方法を限定することを意図しない。
【0052】
コーティング後、溶媒又は混合溶媒は、オーブン中で60~160℃の範囲の温度で加熱することによって除去されて、混合物がB段階で部分的に硬化することを確実にし得る。オーブンでの温度及び時間の長さは、使用された溶媒及びコーティング層の厚さに依存するであろう。代わりに、本発明の複合材料は、まず、混合物の層を剥離ライナー又はキャリアフィルム上にコーティングし、次いでコートされた層を積層によって銅箔の平滑面に移すことによって製造することができる。
【0053】
本複合材料の接着剤層の厚さは、複合材料の最終用途に応じて変わる。基板との積層前の本複合材料の接着剤層は、約0.1μm~約200μm、又は約0.5μm~約100μm、又は約1μm~約50μm、又は約3μm~約20μmの範囲の厚さを有する。そのような厚さが好ましいが、他の厚さが特定のニーズを満たすために生じられ得、依然として本発明の範囲内であることが理解されるべきである。
【0054】
本複合材料は、一般に、約6.1μm~約600μm、又は約10μm~約150μm、又は約15μm~約100μmの全厚さを有する。本複合材料の全厚さは、接着剤層の厚さ、銅箔の厚さ又は両方を変えることによって基板タイプに従って調整することができる。
【0055】
銅被覆ラミネート
本複合材料は、基板上に積層することによって銅被覆ラミネート(CCL)に組み込むことができる。本CCLを形成するための好適な基板は、硬質又はフレキシブルであり得る。
【0056】
フレキシブル基板としては、ポリイミド(PI)フィルム、ポリアミド-イミド(PAI)フィルム、液晶ポリマーフィルム又はフッ素系ポリマーフィルムが挙げられるが、それらに限定されない。商業的に入手可能なポリイミドフィルムとしては、DuPont製のKapton(登録商標)、カネカ製のAPICALTM、宇部製のUPILEX(登録商標)が挙げられ;Solvay製のTorlon(登録商標)などのポリアミド-イミドフィルムが挙げられる。
【0057】
硬質基板は、一般に、繊維性補強部材にポリマー材料を含浸させることによって形成されるプリプレグに由来する。繊維性補強部材の例としては、Eガラス(アルミノシリケートガラス)クロスなどの織ガラス布、不織ガラス布及び不織アラミド布が挙げられる。
【0058】
含浸させるために好適なポリマー材料としては、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、シアネートエステル、ポリエーテル又はフッ素系ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
エポキシ樹脂の例としては、二官能性又は多官能性ビスフェノールA又はビスフェノールF樹脂、エポキシ-ノボラック樹脂又は臭素化エポキシ樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
ポリエステルの例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
ポリオレフィンの例としては、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
フッ素系ポリマーの例としては、テトラフルオロエチレンポリマー(PTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレンパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニルヘキサフルオロプロピレンコポリマー又はポリフッ化ビニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
商業的に入手可能なプリプレグの例としては、Rogers Corpから入手可能な2929 bondply材料(PTFEをベースとする、10GHzでDk=2.9及びDf=0.3)並びにRO4450TMプリプレグ(10GHzで3.30~3.54であるDkは、厚さに依存する);Panasonic Corpから入手可能なR-5670プリプレグ材料(PPEをベースとする、12GHzでDk=3.35、Df=0.004);日立化成株式会社から入手可能なMCL-HS100プリプレグ材料(エポキシ樹脂をベースとする、10GHzでDk=3.4~4.1、Df=0.0025~0.0055)が挙げられる。
【0064】
本複合材料は、
図2に示されるような片面CCL又は
図3に示されるような両面CCLを形成するために用途に応じて基板の一面又は両面上に接合され得る。
【0065】
図2に示されるように、本発明の複合材料100は、接着剤層2が基板3と接触する状態で基板3上に置かれ、次いでホットプレス、連続圧延、連続ベルトプレス等などの方法によって積層されて、片面CCL、すなわち本発明の実施形態を提供する。
【0066】
同様に、
図3に示されるように、本発明の両面CCL300は、順番に、本複合材料100、基板3、任意選択的な接着剤層4及び第2銅箔5を組み合わせ;次いで、前に述べられた方法によって一緒に積層することによって製造され得、ここで、基板3は、接着剤層2と接触している。第2銅箔5及び銅箔1は、同じであるか又は異なり得ることに留意されたい。
【0067】
いくつかの実施形態において、接着剤層4が不在である場合、本発明の両面CCL300の第2銅箔5は、好ましくは、十分な接合を確実にするために基板3と接触したその粗面(すなわち本明細書では積層面とも言われる)を有し、前記粗面は、接着促進剤で前処理され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、接着剤層4は、第2銅箔5及び銅箔1が同じであるか又は異なるかにかかわらず、第2銅箔5と基板3との間の接着を高めるために存在する。
【0069】
他の実施形態において、接着剤層4及び第2銅箔5は、本発明の複合材料110に由来し、ここで、複合材料110及び複合材料100は、同じであるか又は異なり得る。
【0070】
本銅被覆ラミネートを調製するための温度、圧力及び時間などのプロセスパラメータは、一般に、基板の材料特性並びに調製方法に依存する。当業者は、状況に応じて好適なプロセスパラメータを決定することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本銅被覆ラミネートは、ホットプレスによって調製される。
【0072】
いくつかの実施形態において、ホットプレスは、約80℃~約250℃又は約135℃~約225℃の範囲の温度において;約0.2MPa~約17.4MPa又は約0.5MPa~約5MPaの範囲の圧力において;及び約30分~約300分間又は約60分~約240分の継続時間にわたって行われる。
【0073】
本銅被覆ラミネートは、一般に、約30μm~約2000μm、又は約50μm~約1500μm、又は約90μm~約1000μmの全厚さを有する。本銅被覆ラミネートの全厚さは、様々な厚さの本複合材料及び基板を使用することによって容易に調整することができる。
【0074】
本発明は、粗化されていない及び接着促進剤の前処理なしの、少なくとも1つの平滑面を有する銅箔を含む複合材料と、良好乃至優れた剥離強度を有する銅被覆ラミネートを製造するための低Dk及びDf樹脂材料から構成される接着剤層とを使用することである。本CCLの剥離強度は、例えば、0.4kN/m以上、又は0.6kN/m以上、又は0.8kN/m以上であり得る。剥離強度データは、基板が変わり得るために変わることに留意されたい。本明細書では、剥離強度は、以下の実施例の部において記載される方法に従って測定される。
【0075】
加えて、本銅被覆ラミネートは、優れた耐熱性も有し、PCB製造プロセス中のはんだ付け及びリフロー工程に耐えることが予期される。例えば、本CCLは、260℃若しくは288℃又はさらに320℃以上において、検体のブリスタリング形成又は層間剥離なしに少なくとも30秒以上にわたって熱処理に耐えることができる。本明細書では、はんだ付け温度への耐熱性は、以下の実施例の部において記載される方法によって測定される値である。
【0076】
プリント回路基板(PCB)
本発明の銅被覆ラミネートは、所定の導体パターン(すなわち回路)を銅箔のレジスト側上に形成して、プリント回路基板(PCB又はプリント配線盤)を製造するために、減法(フォトリソグラフィー)又は相加法(電気めっき)などの公知のパターン化方法にさらされ得る。PCBの製造方法は、当業者によく知られているため、その開示は、簡略にするために本明細書では省略される。
【0077】
本複合材料及びCCLから製造されたプリント回路基板は、次いで、リード線及び空孔などの他の構成要素と組み立てて、少なくとも1Gbpsのデータ転送速度の高速信号及び/又は少なくとも1GHzの高周波信号を利用する様々な電気物品を形成することができる。
【0078】
本発明の複合材料及びCCLを含むプリント回路基板は、10GHzの周波数において、挿入損失が2.5dB/10cm以下、又は2.0dB/10cm以下、又は1.5dB/10cm以下であり;39GHzの周波数において、挿入損失が8.0dB/10cm以下、又は7.0dB/10cm以下、又は6.0dB/10cm以下である。本明細書では、挿入損失は、以下の実施例の部において記載される方法によって測定される値である。
【0079】
高性能PCBを利用する製品としては、サーバー、ルーター、記憶域ネットワーク、電力増幅器、トランシーバーモジュール及び高速データチャンネルが挙げられる。
【0080】
加えて、より高いデータ転送速度及び計算性能を要求する消費者デバイスとしては、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、電子書籍リーダー、携帯ゲームデバイス、携帯メディアプレーヤー、デジタルカメラ、携帯電話又はウェアラブルデバイスなどの携帯電子デバイス;スマートホームデバイス;有人及び無人車両;ドローン、飛行機及び宇宙機器などの飛行デバイス等が挙げられる。
【0081】
さらなる詳述なしに、先行記載を用いる当業者は、本発明をその最大限まで利用することができると考えられる。以下の実施例は、したがって、単に例証的なものであり、本開示を決して限定するものではないと解釈されるべきである。
【実施例0082】
省略形「E」は、「実施例」を表し、「CE」は、「比較例」を表し、その例において銅被覆ラミネートが調製されることを示す数が続く。実施例及び比較例は、全て類似の方法で調製し、試験した。
【0083】
原材料
CF1:12μmの厚さを有する銅箔であり;箔の平滑面は、0.62μmの表面粗さ(Rz)を有し、100μg/dm2未満の非銅元素でめっきされている。35μmの厚さを除いてCF1と同じグレードを有する銅箔が試験され、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗を有することが分かった。
CF2:35μmの厚さを有するED銅箔であり;箔の平滑面は、1.06μmの表面粗さ(Rz)を有し、100μg/dm2未満の非銅元素でめっきされている。CF2銅箔のピースが試験され、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗を有することが分かった。
CF3:12μmの厚さを有するED銅箔、製品番号HVLP2であり;箔の積層面は、3.21μmの表面粗さ(Rz)を有し、300~350μg/dm2非銅元素でめっきされている。35μmの厚さを除いてCF3と同じグレードを有する銅箔が試験され、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗を有することが分かった。
CF4:12μmの厚さを有するED銅箔、製品番号HVLP1であり;箔の積層面は、4.22μmの表面粗さ(Rz)を有し、350~400μg/dm2の非銅元素でめっきされている。35μmの厚さを除いてCF4と同じグレードを有する銅箔が試験され、0.170gΩ/m2以下の電気抵抗を有することが分かった。
Adh1:製品名:Pyralux(登録商標)GPLでDuPontから入手可能な接合シートである。硬化したAdh1試料が以下に記載される手順に従ってDk及びDfについて試験され、2.8のDk及び0.0035のDfを有することが分かった。
Adh2:製品名:Pyralux(登録商標)GFLでDuPontから入手可能な接合シートである。硬化したAdh2試料が以下に記載される手順に従ってDk及びDfについて試験され、2.4のDk及び0.0017のDfを有することが分かった。
S1:織ガラス繊維布から構成され、変性エポキシ樹脂を含浸されており、(IPC-TM-650 No.2.5.5.13によって規定される条件に従って測定される)10GHzでDk=3.62及びDf=0.005を有する、約130μmの厚さの超低損失平面プリプレグである。
S2:織ガラス繊維布から構成され、変性エポキシ樹脂を含浸されており、(IPC-TM-650 No.2.5.5.9によって規定された条件に従って試験される)1GHzでDk=3.9~4.0及びDf=0.005~0.006を有する、約130μmの厚さの低損失平面プリプレグである。
【0084】
複合材料A及びBの調製
Adh1を、120℃のローラー温度において、約0.3MPa及び0.5m/分のライン速度でのローラーラミネータを用いた積層によってキャリアフィルム(132μmの剥離紙)から銅箔(CF1、29cm×20cm)のピースの平滑面に移して複合材料Aのピース、すなわち本発明の一実施形態を提供した。結果として生じた複合材料Aは、4.5μmの接着剤層厚さで約16.5μmの厚さを有する。
【0085】
複合材料Bは、Adh2を使用してAdh1に取って代わって銅箔(CF2)のピースの平滑面上に適用することを除いて、上記の手順に従って得られた。結果として生じた複合材料Bは、4μmの接着剤層厚さで約39μmの厚さを有する。
【0086】
実施例1~3の銅被覆ラミネートの調製
実施例(E1~3)の銅被覆ラミネートは、
図3における両側銅被覆ラミネート300のような構成を有し、任意選択的な層4は、不在であった。CCLは、(LCMによって製造される)ホットプレス機を用いることによって以下の通り製造した:基板シート(S1又はS2)を30cm×30cmの正方形シートにカットし、上記の手順によって得られた複合材料(複合材料A又はB)を、基板と接触した接着剤層を有する基板の上に置いた。銅箔(CF3)のピースを、基板と直接接触したその積層面を有する基板の反対側に適用した。
【0087】
積層パラメータを、基板の推奨される積層パラメータに従って調整した。積層は、以下の通りの温度及び圧力プロファイルで0.99気圧(751トール)の減圧下において行った:
温度プロファイル:(1)80℃からスタートし、5分以内に120℃まで加熱し、(2)120℃に3分間保持し、5分以内に180℃まで加熱し、(3)180℃に32分間保持し、5分以内に210℃まで加熱し、(4)210℃に143分間保持し、12分以内に160℃まで冷却し、(5)1分以内に50℃まで冷却し、50℃に30分間保持した。
圧力プロファイル:(1)1分以内に0.3MPaまで増加させ、(2)0.3MPaで3分間保持し、1分以内に1.0MPaまで増加させ、(3)1.0MPaで11分間保持し、1分以内の3.4MPaまで増加させ、(4)3.4MPaで176分間保持し、1分以内に2.7MPaまで低下させ、(5)2.7MPaで11分間保持し、1分以内に0.1MPaまで低下させ、(6)0.1MPaで30分間保持した。
【0088】
比較例1~6の銅被覆ラミネートの調製
比較例(CE1~6)の各銅被覆ラミネートは、銅箔(CF1、CF3又はCF4)のピースを直接に、平滑面を有する基板(S1又はS2)又は基板と接触した銅箔の積層面に積層することによって調製した。基板の反対側において、銅箔(CF3)のピースも、基板と直接接触した積層面を有する基板に積層した。積層は、実施例1~3について上記の積層条件に従って行った。
【0089】
実施例1及び3並びに比較例1~6の試験クーポンの調製
実施例及び比較例の各銅被覆ラミネートをさらに加工して、約162μmの全厚さ、100mmの導体長さ、12μmの導体厚さ並びにそれぞれ基板としてS1を使用するそれらのCCLについて300μm及び基板としてS2を使用するCCLについて275μmの導体幅を有するマイクロストリップ構造を形成した。
【0090】
試験結果を表1~3に列挙する。
【0091】
試験方法
表面粗さ(Rz):レーザー走査顕微鏡(KEYENCEによって製造、モデル:VK-9700)を用いて、5点で測定し、データを平均した。
【0092】
層厚さ:複合材料A又はBの接着剤層の厚さは、接触厚さゲージによって測定した。各検体を異なるスポットで6~10回測定し、結果を平均した。
【0093】
電気抵抗試験:IPC-TM-650 2.5.14に従い、35μmの厚さの銅箔試料を使用し、試料をN2オーブン中において2時間200℃でアニールした。
【0094】
はんだフロート試験:この試験は、プリント回路基板のためのはんだリフロー構成要素組立プロセスにおいて遭遇する熱衝撃をシミュレートしている。各CCL当たり3つの検体(サイズ:5cm×5cm)を、3分間260℃又は288℃でCF3側を下方に置くことによって溶融はんだ(99.3%スズ、0.7%銅)浴上に浮遊させた。検体を取り出し、次いで周囲温度まで冷却し、検体を目視検査した。検体の上面(すなわちCF3側とは反対側)を目視検査し、ブリスター形成及び層間剥離などの悪化が全く見出されない場合に「合格」と表示した。
【0095】
耐薬品性及び老化性能:各CCL実施例を異なる化学的処理にさらした。耐HCl性試験について、検体を、18%HCl溶液を有する容器に60分間浸漬し、次いで容器から取り出し、DI水でリンスし、24時間室温で風乾させ、検体の外観を目視検査した。相当するCCL実施例から作製された各検体を、30分間8%NaOH、60分間50℃で3%H2SO4などの他の化学的処理にさらすことによって類似の手順を繰り返した。最後に、検体を10日間180℃でのオーブン中に入れた。その後、検体を剥離強度試験のために送って化学的処理又は老化試験が何らかの悪化を引き起こすかどうかを決定した。
【0096】
剥離強度試験:調製されたままであるか又は化学的処理/老化試験後に得られたかのいずれかのCCL検体を75mm×30mmの長方形試料にカットした。試料を、次いで、線/空間が1mm/1mmである状態での直線でフォトリソグラフィーによってパターン化した。パターン化ラミネート試料を両面テープによって98mm(L)×31mm(W)のサイズのFR4プレート(すなわち繊維ガラスプレート、HONTECから購入)上に固定し、次いでスライドする試料ホルダー上に取り付けた。次いで、パターン化ラミネート試料の前方部を手動で剥離し、上方のクランプに固定した。試験機(島津製作所によって製造、モデル:AG-IS)を用いることにより、剥離強度を50.8mm/分の引張速度で試験し、剥離強度を測定し、kN/mの単位で記録した。3つの試験ラインの剥離強度データを平均し、表1~2に列挙した。
【0097】
Dk/Df測定:接着剤試料(adh1又はadh2)を約25μmの厚さで剥離性PETフィルム上にコートし、次いで接着剤層を約85~125μmの厚さまで積み重ね、200℃で90分間完全に硬化させて硬化した接着剤試料をもたらした。硬化した接着剤試料を、10GHzでのスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)キャビティ及びベクトルネットワーク分析装置(製造業者:Keysight、モデルno.E5063A)を用いることによって試験した。各資料を2回試験し、2つのデータを平均してDk/Dfデータを得た。
【0098】
挿入損失:カバーレイフィルムなしのマイクロストリップ構造を有するCCL検体をKeysight PNA Network Analyzerによって測定し、10MHzから40GHzまで、50Ωの基準インピーダンス、掃引数:4001ポイント、較正:Keysight AFR、温度:23℃で走査した。測定値の中で、10GHz及び39GHzでの周波数に対応する伝送損失(dB/m)を表3に報告した。挿入損失の改善は、比較例の挿入損失データと、基準実施例の測定された挿入損失データとの差を比較例のデータで割ることによって計算した。
【0099】
【0100】
表1の結果から以下が明らかである。
【0101】
E1及びE2のデータ対CE1のデータ間の比較は、E1及びE2のCCLがより良好な耐熱性を実証し、様々な酸/塩基処理を通して高い剥離強度を維持した。
【0102】
同じ基板(すなわちS1)及び銅箔厚さを有する、E1のデータ対CE2及びCE3のデータを比較すると、E1のラミネートは、同じような耐熱性、剥離強度を実証し、様々な酸/塩基処理を通して剥離強度を維持した。これらの結果は、本発明の複合材料及びCCLが、製造プロセスを通しての複数の過酷な条件後でも優れた性能及び信頼性をPCBに提供するのに好適であることを示す。
【0103】
【0104】
表2の結果から以下が明らかである。
【0105】
E3のはんだフロートデータ対CE4のデータ間の比較は、E3のCCLが、意外にも、様々な酸/塩基処理及び老化試験を通して耐熱性及び剥離強度の点でもより良好な性能を実証した。これらの結果は、本複合材料が様々な基板と相溶性であり、本発明のCCLが、高い作業温度でも優れた性能及び信頼性をPCBに提供し得ることを示す。
【0106】
【0107】
表3の結果から以下が明らかである。
【0108】
それらが同じ基板を有するときのE1の挿入損失データ対CE2及びCE3のデータ間の比較では、E1のCCLが、意外にも、CE2及びCE3のCCLのものよりも低い挿入損失値を提供した。
【0109】
それらが同じ基板を有するときのE3の挿入損失データ対CE5及びCE6のデータ間の比較では、E3のCCLが、CE5及びCE6のCCLのものよりもかなり低い挿入損失値も提供した。結果は、本複合材料及びCCLが、高周波数又は高速回路使用について低い挿入損失のプリント回路基板を製造するのに好適であることを実証する。
【0110】
本発明が典型的な実施形態において例示及び記載されてきたが、様々な修正形態及び置換形態が本発明の趣旨から逸脱することなく可能であるため、それは、示された詳細に限定されることを意図しない。したがって、本明細書に開示される本発明の修正形態及び均等物は、ルーチンにすぎない実験を用いて当業者に想到され得、全てのそのような修正形態及び均等物は、以下の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲内にあると考えられる。