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▶ 竹原 隆の特許一覧

<図1>
  • 特開-冷却用マスク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019651
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】冷却用マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220120BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220120BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20220120BHJP
   D04B 1/18 20060101ALI20220120BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20220120BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20220120BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20220120BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20220120BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
D04B1/16
D04B1/18
D04B21/16
D04B21/18
D03D15/08
D03D15/00 D
D02G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116483
(22)【出願日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020121413
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513189959
【氏名又は名称】竹原 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】竹原 隆
【テーマコード(参考)】
2E185
4L002
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC73
4L002AA02
4L002AA05
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC01
4L002BA00
4L002CA00
4L002EA00
4L002EA06
4L002FA00
4L036MA04
4L036MA39
4L036UA25
4L048AA08
4L048AA15
4L048AA20
4L048AA26
4L048AA51
4L048AB06
4L048AC00
4L048AC12
4L048CA00
4L048CA04
4L048DA22
(57)【要約】
【課題】本発明は、含水ゲル層を備える冷却シートをマスク本体の鼻口側面に装着した冷却可能なマスクを提供する。
【解決手段】本冷却用マスクは、変性ポリビスコース繊維を4.6~6.0%を含有する超高分子量ポリエチレン製の糸と弾性糸とその他の素材の糸とで構成する編織物素材で形成され、好ましくは前記超高分子量ポリエチレン製の糸を80%以上含有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリビスコース繊維を4.6~6.0%を含有する超高分子量ポリエチレン製の糸と弾性糸とその他の素材の糸とで構成する編織物素材で形成されたマスク本体を有する冷却用マスク。
【請求項2】
前記超高分子量ポリエチレン製の糸を80%以上含有する、請求項1に記載のマスク本体を有する冷却用マスク。
【請求項3】
前記超高分子量ポリエチレンは、前記変性ポリビスコース繊維を4.6~6.0%、ポリエチレン繊維を76~77%、ポリプロピレン18.1~18.4%含有する、請求項1に記載の冷却用マスク。
【請求項4】
前記弾性糸は、ポリウレタン合成繊維で構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却用マスク。
【請求項5】
前記その他の素材の糸は、綿糸又はポリエステル系の糸で構成される、請求項1に記載の冷却用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感度が高く、抗菌・抗ウィルス捕集性の高い冷却用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の拡大等により抗菌・抗ウィルスに対するユーザ意識及び社会要請が飛躍的に高まり、患者や医療従事者、飲食業従事者等以外の通常の健常者が日常的に不織布等で鼻口を覆う衛生マスクを着用することが一般的になりつつある。
【0003】
その一方、日常的に衛生マスクを着用することによる副次的な弊害も指摘されている。近年、特に夏期に野外活動中等における熱中症の多発が問題となっており、衛生マスクの着用は鼻口近傍に熱が滞留するため、熱中症をさらに誘発する要因となる。したがって、衛生マスクを着用しながら熱中症防止にもつながる対策の社会要請が高まっている。
【0004】
従来、夏期用の衛生マスクとして水に濡らしてその水分の気化熱で冷感を得るものが存在するが、着用時に濡れていて不快感を伴うと同時に湿度が高く水分の気化が進まない場合には冷却効果が小さい。また、マスク本体の裏面に水を循環させることで口元を冷却する所謂マスクエアコンも存在するが機構が複雑で高価なものが多く、日常使用に向かないという問題もある。
【0005】
また、近年、所謂アイスシルクと称する変性ポリビスコース繊維素材があり、冷感が持続しながら水洗い可能で伸縮性、ろ過性能を有するものが開発されている。この繊維素材を夏期用マスクとしてマスク本体の生地に採用する場合がある。
【0006】
しかしながら、このアイスシルクコットンは通常、衣服等に使用されてきたものであり、衛生マスクとしての適正配合量の検討がなされず、衣服等同様の素材をそのまま採用していることが多く、夏期用の衛生マスクとして十分な冷却性能を発揮するものとまではなっていなかった。また、衛生マスクを日常的に着用することになったのは感染症の拡大が大きな要因となっており、単に冷感のみを求めるだけでは微小粒子の捕捉まで要求される夏期用の衛生マスクとしては不十分であり、このことについても素材から検証する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-59261号公報
【特許文献2】特開2002-241746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような事情に鑑みて出願人は、熱中症等を防止すべく冷感度が高く、微小粒子の捕捉等の要請にも応え得る衛生マスク用の冷却用織物及びこれを用いた冷却用マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく創作された本発明は、
変性ポリビスコース繊維(所謂アイスシルク)を4.6~6.0%を含有する超高分子量ポリエチレン製の糸と弾性糸とその他の所定素材の糸で構成する編織物素材で形成されたマスク本体を有する冷却用マスクを提供する。
【0010】
また、前記超高分子量ポリエチレンは、前記変性ポリビスコース繊維を4.6~5.9%、ポリエチレン繊維を76~77%、ポリプロピレン18.1~18.4%含有する、ことが好ましい。
【0011】
また、前記超高分子量ポリエチレンを80%以上含有する、ことが好ましい。
【0012】
さらに、前記弾性糸は、ポリウレタン弾性糸である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却用マスクでは、マスク本体の生地が通常の衣服等の冷感度を超えた特に高い冷感度を有し、安価で伸縮性も高い編織物としており、熱がこもるマスク内を徐熱することで口元の冷却、ひいてはこれを吸気することにより体温上昇を低下させることができ、夏期の熱中症等を防止することができる。
【0014】
また、本冷却用マスクでは、口元等の高い冷却効果に加え、同時に微小な粒子、細菌、ウィルスの捕集性能も極めて高く、抗菌・抗ウィルス性にも優れており、夏期に日常的にマスク着用し、熱中症等が発生する要因となっていたウィルス蔓延に対する健康維持用の衛生マスクとしても非常に優れており、ウィルス対策と熱中症対策とを同時に達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の本冷却用マスクの斜視図である。
図2】本発明の冷却用マスクのマスク本体に使用する生地(素材例1)の冷感度をQ-MAX値により示した実験データを示している。
図3】従来マスクと比較した素材例1を用いた本冷却用マスク着用時の上半身の温度分布を示すサーモグラフィ例を示しており、右側に本冷却用マスク着用時、左側に従来マスク着用時を示している。
図4】本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例1)についてのPFE実験データを示している。
図5】本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例1)についてのBFE実験データを示している。
図6】本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例2)の冷感度をQ-MAX値により示した実験データであり、(a)には白色生地、(b)には黒色生地の場合が示されている。
図7】各種汎用素材及び本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例2)のQ-MAX値を比較したグラフ図である。
図8】本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例2)についてのPFE実験データを示している。
図9】本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例2)についてのBFE実験データを示している。
図10】本冷却用マスクのマスク本体の生地(素材例2)を複数回洗濯した場合における洗濯後のフィルター性能試験の結果が示されている。
図11】本マスク本体の生地(素材例2)について洗濯後の縮み率テストの結果が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の衛生マスク用の冷却用編織物を用いた冷却用マスクの図1図5を参照しつつ以下、例示説明する。図1は、本冷却用マスク10(以下、単に「本マスク10」、「マスク10」とも称する)の斜視図である。
【0017】
この図1に示すように、本冷却用マスク10は、汎用の衛生マスク同様にユーザの鼻口を含む顔面の下方を覆うマスク本体12と、ユーザの左右両耳に引っ掛けられるようマスク本体12の両側それぞれの上下に2箇所に装着する一対の引掛手段14とを備えている。マスク本体12は、通気性を有する冷却素材(後述)で形成されている。マスク本体12は伸縮性を有しており、着用時には折り畳み線13の近傍位置で鼻口前に空気が滞留する空間を得るように立体形状となり、非着用時には折り畳み線13を中心に両側に折り畳まれて平面的に積層される所謂3次元マスク形状である。
【0018】
《マスク本体12の素材例1》
マスク本体12は熱伝導率・熱拡散率の高い超高分子量ポリエチレン製の糸80%以上と、その他の糸と弾性糸とで構成された編織物素材で形成されている。まず、素材例1として図2図5の実験データでは。超高分子量ポリエチレン製の糸85%、綿糸10%、弾性糸5%で構成されている。
【0019】
超高分子量ポリエチレンは、冷感素材としての所謂アイスシルク(変性ポリビスコース繊維)を4.6~5.9%を含有し、その他、ポリエチレン繊維、ポリプロピレンで構成されている。具体的には、アイスシルクを4.6~5.9%、ポリエチレン繊維76~77、ポリプロピレン18.1~18.4%が好ましく、後述する図2図5の実験データでは、アイスシルクを4.6%、ポリエチレン繊維77%、ポリプロピレン18.4%で構成されている。また、弾性糸としては混紡率が低くても伸縮性に優れるスパンデックスと称するポリウレタン合成繊維の弾性糸を用いている。
【0020】
これらアイスシルクを含有する超高分子量ポリエチレン糸に綿糸とポリウレタン弾性糸とを所謂スパイラルウェブ編みで形成している。アイスシルク(変性ポリビスコース繊維)は、通気性があり、滑らかで高性能ろ過機能、可逆的熱特性を有するセルロース系の再生繊維であり、概ね平均重合度が150以上のものである。
【0021】
また、マスク本体12の冷却用編織物素材の製法工程は下記の通りである。
まず第1工程として、原料として超高分子量ポリエチレン糸に綿糸とポリウレタン弾性糸を選択し、第2工程としてスパイラルウェブ編みで薄く伸縮可能な生地を織り出す。次に、第3工程として「随心裁」(原材料)処理を行う。
【0022】
次に第4工程として、生地に油除去剤を加えて化学繊維の編制を行い、さらにもう1回油除去剤を加えて染色・整理の過程に発生した油脂を除去する。そして、第5工程で生地の滑らかさの改善し、第6工程で染色・整理の工程を2回全て行う。最後の第7工程で2回水洗い、2回油除去、幅出しを行い、3回定型を行う。
【0023】
上記工程により作成されたマスク本体12の生地についての冷感度を示したものを図2図3に示している。まず図2は生地(素材例1)の冷感度をQ-MAX値により示した実験データ(証明書)を示している。
【0024】
Q-MAX値(W/cm)とは、触れた瞬間の冷たさを表す値で接触冷温感評価値(最大熱吸収速度)であり、生地に触れた瞬間の熱の移動量を数値化した衣服等の冷たさの代表的な指標である。例えば、鉄などの金属はこのQ-MAX値が高いため、鉄自体の温度が低くなくとも、他の物体と比べて触れた瞬間に「冷たい」と感じる。図2は、本マスク12の生地についての実験データであり、測定条件として室温20±2℃、相対湿度65%±4%RHのときに室温との温度差20℃に加熱した加熱板を室温の試料(本マスク本体12の生地)に接触させ、試料の熱吸収速度(Q-MAX値)を測定した。
【0025】
その結果、Q-MAX値(W/cm)は、1回目0.520、2回目0.524、3回目0.518、4回目0.525、5回目0.527で平均0.523、であった。一般的な接触冷感製品と謳うQ-MAX値は0.2以上であり、0.4を超えるものは格段に優れた接触冷感製品と言える。したがって、本実験データによるQ-MAX値0.523は通常の被服では冷たすぎると判断される顕著に冷感度であり、狭い範囲で高温となり急激な徐熱を必要とするマスク向け特有の生地であると言える。
【0026】
また、図3には従来マスクと比較した本マスク10(素材例1)の着用時の上半身の温度分布を示すサーモグラフィ例を示しており、右側に本マスク10(COOLMAX)着用時、左側に従来マスク(代表的6社製品)着用時を示している。上半身全体としても本マスク10着用時の方が従来マスク着用時より明らかに体温が低下しており、特にマスク着用箇所の温度が本マスク10の場合と従来マスクの場合とで2℃以上低下していることがわかる。この図3からも本マスク本体10が冷却効果に優れていることがわかる。
【0027】
また、本マスク本体10の生地(素材例1)は、PFE(微粒子ろ過効率(Particle Filtration Efficiency Efficiency))、BFE(バクテリアろ過効率(Bacterial Filtration EfficiencyEfficiency))にも優れている。ここでPFEとは、約0.10μmサイズの粒子をどれくらいろ過(捕集)できたのかを表す指標であり。インフルエンザウィルス、ウィルス単体(飛沫核)、結核菌ウィルスなどが対象となり、PFE値99とは約0.10μmサイズの粒子を99%捕集できること意味する。
【0028】
図4は、本マスク本体12の生地(素材例1)についてのPFE実験データ(証明書)であり、1回目99.20、2回目99.15、3回目99.18、4回目99.15、5回目99.12、平均99.26、であり、全て約0.10μmサイズの粒子を99%以上ろ過するということになる。したがって、約30μmサイズの粒子である花粉、約3.0~5.0μmサイズの粒子である飛沫、約2.5μmサイズの粒子であるPM粒子、約1.0μmサイズである細菌、約0.1μmサイズであるインフルエンザウィルスを99%捕集することができ、本マスク本体12の生地(素材例1)は抗菌・抗ウィルス及び花粉症・粉塵等に対応する生地として優れていることがわかる。
【0029】
また、BFEとは、約3μmの細菌を含む粒子がどれくらいろ過(捕集)できたのかを表す指標であり、花粉や咳・くしゃみに伴う水分を含んだウィルスの飛沫などが対象となり、BFE値99とは約3サイズの細菌を99%捕集できること意味する。
【0030】
図5は、本マスク本体12(素材例1)の生地についてのBFE実験データ(証明書)であり、1回目99.10、2回目99.08、3回目99.05、4回目99.06、5回目99.03、平均99.06、であり、全て約3サイズの細菌を99%以上ろ過するということになる。したがって、約30μmサイズの粒子である花粉、約3.0~5.0μmサイズの粒子である飛沫、約2.5μmサイズの粒子であるPM粒子、約1.0μmサイズである細菌を99%捕集することができ、本マスク本体12の生地(素材例1)は抗菌及び花粉症・粉塵等に対応する生地として優れていることがわかる。
【0031】
《マスク本体12の素材例2》
次に、素材例2においてマスク本体12は素材例1と同様に超高分子量ポリエチレン製の糸80%以上と、その他の糸と弾性糸とで構成された編織物素材で形成されているが、超高分子量ポリエチレン製の糸と弾性糸の配合率と、それ以外の糸として別素材が選択されている。具体的には、図6図11の実験データでは、超高分子量ポリエチレン製の糸80%、ポリエステル糸12%、弾性糸としてポリウレタン合成繊維(スパンデックス)の糸8%で構成されている。
【0032】
超高分子量ポリエチレンは、冷感素材としての所謂アイスシルク(変性ポリビスコース繊維)を含有する超高分子量ポリエチレン糸に綿糸とポリウレタン弾性糸とを所謂スパイラルウェブ編みで形成し、ている点では素材例1と同様であるが、アイスシルクを素材例1より増量し、6.0%を含有している。また、マスク本体12の冷却用編織物素材の製法工程についても素材例1と同様である。
【0033】
上記冷却用編織物素材の製法工程により作成されたマスク本体12の生地についての素材例1と同様の測定条件で冷感度を示したものが図6図7に示されている。図6は、生地(素材例2)の冷感度をQ-MAX値により示した実験データ(一般財団法人ボーケン品質評価機構による試験結果)、(a)には白色生地、(b)には黒色生地の場合が示されている。図7には、各種汎用素材及び素材例2のQ-MAX値を比較したグラフ図が示されている。
【0034】
その結果、Q-MAX値(W/cm)は、同生地において最も冷感度が大きい色とされる白色生地の場合、0.520、最も冷感度が小さい色とされる黒色生地の場合、0.506であり、0.506≦Q-MAX値≦0.520の範囲内であった。上述したように一般的な接触冷感製品と謳うQ-MAX値は0.2以上であり、0.4を超えるものは格段に優れた接触冷感製品と言え、素材例のQ-MAX値=0.506~0.520は、通常の被服より非常に冷感度が高く、素材例1のQ-MAX値0.523よりも更に冷感度が高いことがわかった。特に夏場に鼻口近傍の狭い範囲で高温となり急激な徐熱を必要とするマスク向に対して有用な生地であり、熱中症対策にも最適であることがわかった。
【0035】
実際に各種汎用素材及び素材例2のQ-MAX値を比較した図7に示すように、一般に綿製の素材のQ-MAX値は0~0.3、シルクやキュプラ、レーヨン、ポリエステル、ナイロン製の素材のQ-MAX値は、0.3~0.35,麻(リネン)製の素材のQ-MAX値は、0.35~0.4、ポリエチレン製の素材のQ-MAX値は、0.45強、本発明の素材例2のQ-MAX値は、0.506~0.520であり、他の汎用素材より大幅に冷感度が高いことがわかる。
【0036】
また、本マスク本体10の生地(素材例2)は、素材例1の説明で上述したPFE(微粒子ろ過効率(Particle Filtration Efficiency Efficiency))、BFE(バクテリアろ過効率(Bacterial Filtration EfficiencyEfficiency))にも優れている。図8は、本マスク本体12の生地(素材例2)についてのPFE実験データ(証明書)であり、図中四角枠に示す通り1回目99.120、2回目99.730、3回目99.065であり、全て約0.10μmサイズの粒子を99%以上ろ過するということになる。したがって、素材例2においても素材例1と同様に約30μmサイズの粒子である花粉、約3.0~5.0μmサイズの粒子である飛沫、約2.5μmサイズの粒子であるPM粒子、約1.0μmサイズである細菌、約0.1μmサイズであるインフルエンザウィルスを99%捕集することができ、本マスク本体12の生地は抗菌・抗ウィルス及び花粉症・粉塵等に対応する生地として優れていることがわかる。なお、図8に示すPFE実験データは、スイス国ジュネーブい本拠を置く、各産業分野の検査、検証、試験及び公的規格の認証を行う国際企業であるSGSの中国事務所SGS上海による証明書である。
【0037】
図9では、本マスク本体12の生地(素材例2)について上記SGS上海によるBFE実験データ(証明書)であり、図中四角枠に示す通り1回目99.8、2回目99.9、3回目99.8であり、全て約3サイズの細菌を99%以上ろ過するということになる。したがって、約30μmサイズの粒子である花粉、約3.0~5.0μmサイズの粒子である飛沫、約2.5μmサイズの粒子であるPM粒子、約1.0μmサイズである細菌を99%以上、確実に捕集することができ、本マスク本体12の生地(素材例2)は素材例1の生地よりさらに抗菌及び花粉症・粉塵等に対応する生地として優れ、同時に背反しがちな冷却性能も高いことがわかる。
【0038】
次に、本マスク本体12の生地(素材例2)については、耐久性の検証として洗濯前後の性能テストも一般専門研究施設で実行した。図10は複数回洗濯した場合における洗濯後のフィルター性能試験の結果が示されている。なお、図10のフィルター性能試験の結果に示すPFE、BFEは、ともに約0.30μmサイズの粒子をどれくらいろ過(捕集)できたのかを表す指標として示されており(上述した図4図9のPFE、BFEではともに約0.10μmサイズの粒子を対象としている)、少なくとも約30μmサイズの粒子である花粉、約3.0~5.0μmサイズの粒子である飛沫、約2.5μmサイズの粒子であるPM粒子、約1.0μmサイズである細菌の捕集率、すなわち抗菌性以上の検証結果を示していると言える。
【0039】
図10の四角に示すように未洗濯でのPFE=100.00、BFE=100.00、1回洗濯後のPFE=100.00、BFE=100.00、2回洗濯後のPFE=100.00、BFE=100.00、3回洗濯後のPFE=100.00、BFE=99.21、4回洗濯後のPFE=100.00、BFE=100.00、5回洗濯後のPFE=100.00、BFE=100.00、10回洗濯後のPFE=100.00、BFE=99.89、15回洗濯後のPFE=99.96、BFE=99.68、20回洗濯後のPFE=100.00、BFE=100.00となっており、洗濯回数を重ねてもPFE,BFEともに99%以上の捕集率を維持していることがわかった。したがって、本マスク本体12の生地(素材例2)は、洗濯により抗菌性が劣化しないこととなる。
【0040】
図11には本マスク本体12の生地(素材例2)について洗濯後の縮み率テストとして「JIS L 1930 繊維製品の過程洗濯試験方法」に基づく洗濯試験結果が示されている。この試験は、化学繊維・合成繊維の検査、試験、認証を行うJNLA認定の一般財団法人カケンテストセンター (略称:カケン)が行った。具体的には、水温40±3℃の条件のもと順に、洗濯6分、脱水3分、すすぎ2分、脱水3分、吊干し乾燥を行い洗濯後の寸法変化率を検証した。図11にも示すように本マスク本体12の生地(素材例2)の洗濯後の縮み率は、たて-0.8%、よこ-2.0%であり、カケン品質基準とする±3.0%を大幅に上回っていることがわかった。したがって、本マスク本体12の生地(素材例2)は、洗濯をしても縮んだりヨレたりし難く、洗濯をしても初期と同様の顔面領域を覆うことができ、その意味でも衛生マスクとしての機能を長期間保持することができる。
【0041】
以上、本発明の冷却用マスクについてその実施形態を例示説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書等の記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例や改良例が得られることが当業者は理解できるであろう。
【符号の説明】
【0042】
10 冷却可能なマスク(マスク)
12 マスク本体
13 折り畳み線
14 引掛手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11