(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019679
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】段スキューモータの回転子鉄心及び永久磁石同期モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20220120BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20220120BHJP
H02K 1/28 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K1/27 501M
H02K1/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021117709
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】202010686041.6
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】511268454
【氏名又は名称】ジン-ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】カァィフゥー・ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】リィァンリィァン・ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】ロンユー・ヂィー
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE19
5H601FF02
5H601GA02
5H601GA15
5H601GA24
5H601GA32
5H601GC25
5H601GD03
5H601GD09
5H601JJ05
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622PP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】段スキューモータの回転子鉄心及び永久磁石同期モータを提供する。
【解決手段】段スキューモータの回転子鉄心はプリセット角度だけ互いにずらされた複数の回転子鉄心セグメントを含み、回転子鉄心セグメントが、回転子打抜板を積層することによって形成され、各回転子鉄心セグメント内には、円周方向に沿って磁性鋼溝が設けられており、磁性鋼溝内に磁性鋼が配置可能であり、各回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各回転子鉄心セグメントにおける補助溝は、位置及び/又は断面形状が完全に同一ではなく、モータ回転時のトルクリップル及び振動騒音を抑制するために使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段スキューモータの回転子鉄心であって、
前記回転子鉄心が、プリセット角度だけ互いにずらされた複数の回転子鉄心セグメントを含み、前記回転子鉄心セグメントが、回転子打抜板を積層することによって形成され、
各前記回転子鉄心セグメント内には、円周方向に沿って磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼溝内に磁性鋼が配置可能であり、
各前記回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各前記回転子鉄心セグメントにおける前記補助溝は、位置及び/又は断面形状が完全に同一ではなく、モータ回転時のトルクリップル及び振動騒音を抑制するために使用される
ことを特徴とする段スキューモータの回転子鉄心。
【請求項2】
複数の前記回転子鉄心セグメントが組分けして配置可能であり、2組ごとに軸方向に沿って対称であり、かつ、各組内の各前記回転子鉄心セグメントの補助溝は、形状及び/又は位置が完全に同一ではない
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子鉄心。
【請求項3】
前記組には、それぞれN1番目の回転子鉄心セグメント、N2番目の回転子鉄心セグメント、N3番目の回転子鉄心セグメント、…、Nn番目の回転子鉄心セグメントである、隣接するn個の前記回転子鉄心セグメントが含まれ、
前記N1番目の回転子鉄心セグメントに複数のN1番目の補助溝が配置され、前記N2番目の回転子鉄心セグメントに複数のN2番目の補助溝が配置され、前記N3番目の回転子鉄心セグメントに複数のN3番目の補助溝が配置され、このように類推して、前記Nn番目の回転子鉄心セグメントに複数のNn番目の補助溝が配置されており、
前記N1番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記N1番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N1-1番目の角度とN1-2番目の角度であり、前記N2番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記N2番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N2-1番目の角度とN2-2番目の角度であり、前記N3番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記N3番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N3-1番目の角度とN3-2番目の角度であり、このように類推して、前記Nn番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記Nn番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、Nn-1番目の角度とNn-2番目の角度であり、
上記のN1-1番目の角度とN1-2番目の角度、N2-1番目の角度とN2-2番目の角度、N3-1番目の角度とN3-2番目の角度、…、Nn-1番目の角度とNn-2番目の角度は、Nx番目の回転子鉄心セグメントを、回転子鉄心セグメントのスキュー回転方向に沿って回転させることによって得られ、ここで、x∈[1,n]である
ことを特徴とする請求項2に記載の回転子鉄心。
【請求項4】
前記組には、隣接する3つの回転子鉄心セグメントが含まれ、前記隣接する3つの回転子鉄心セグメントにおける、前記N1番目の補助溝及び前記N3番目の補助溝の、前記N2番目の補助溝に対するオフセット角度を、それぞれ、N1番目のオフセット角度及びN3番目のオフセット角度とすると、
N1-1番目の角度=N2-1番目の角度-プリセット角度+N1番目のオフセット角度、
N1-2番目の角度=N2-2番目の角度+プリセット角度-N1番目のオフセット角度、
N3-1番目の角度=N2-1番目の角度+プリセット角度-N3番目のオフセット角度、
N3-2番目の角度=N2-2番目の角度-プリセット角度+N3番目のオフセット角度となる
ことを特徴とする請求項3に記載の回転子鉄心。
【請求項5】
前記N1番目のオフセット角度、前記N3番目のオフセット角度、及び、前記プリセット角度が互いに異なる
ことを特徴とする請求項4に記載の回転子鉄心。
【請求項6】
前記N1番目のオフセット角度及び前記N3番目のオフセット角度がともに前記プリセット角度よりも小さい
ことを特徴とする請求項5に記載の回転子鉄心。
【請求項7】
前記N1番目のオフセット角度及び前記N3番目のオフセット角度がともにゼロである
ことを特徴とする請求項4に記載の回転子鉄心。
【請求項8】
前記N1番目のオフセット角度又は前記N3番目のオフセット角度が前記プリセット角度に等しい
ことを特徴とする請求項4に記載の回転子鉄心。
【請求項9】
前記補助溝の断面形状が円弧形、三角形、正方形、台形又は矩形である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転子鉄心。
【請求項10】
固定子と回転子とを含み、前記回転子には、請求項1~9のいずれか一項に記載の回転子鉄心が配置されている
ことを特徴とする永久磁石同期モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの技術分野に属し、特に、段スキューモータの回転子鉄心及び永久磁石同期モータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期モータは、電機子磁界と回転子磁界の相互作用によって電磁トルクを発生させる。そのうち、電機子磁界は固定子の電流によって発生し、回転子磁界は回転子の永久磁石によって提供され、モータのエアギャップにおけるこれら2つの磁界の合成磁界は、エアギャップ磁界となる。固定子の開溝、鉄心の磁気飽和などの要因の影響により、エアギャップ磁界は標準的な正弦波ではなく、その中に高調波成分が存在し、ひいては、トルクリップル及び特定の次数で明らかな径方向電磁力が生じることで、モータの騒音振動を引き起こしてしまう。
【0003】
新エネルギー車などのいくつかの適用場面では、モータのNVH(Noise、Vibration、Harshness)品質が車両全体の運転体験に直接影響するため、モータ本体の設計プロセスでは、できるだけそのトルクリップルを低減し、特定の次数での径方向電磁力を抑制すべきである。現在、よく使用されている方法としては、回転子スキューを設ける方法や、回転子に補助溝を配置する方法がある。回転子スキューは、磁極を一定の角度だけ互いにずらすことで、固定子の開溝によるコギング効果を低減するものであり、回転子の補助溝は、回転子打抜板に溝を開く(形成する)ことで、エアギャップ磁束密度波形を最適化するものである。段スキューモータの場合、その磁性鋼が、異なる回転子鉄心セグメントでは、異なる角度に向かうので、異なるセグメントでの合成エアギャップ磁束密度波形に違いが生じてしまう。従来技術では、各セグメントは同じ打抜板構造を採用しているが、この場合の総合的な振動低減及び騒音低減効果は最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題について、本発明は、上記の問題又は少なくともその一部を解決するための段スキューモータの回転子鉄心及び永久磁石同期モータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術案が用いられている。
【0006】
本発明の一つの局面では、段スキューモータの回転子鉄心が開示されており、前記回転子鉄心が、プリセット角度だけ互いにずらされた複数の回転子鉄心セグメントを含み、前記回転子鉄心セグメントが、回転子打抜板を積層することによって形成され、
各前記回転子鉄心セグメント内には、円周方向に沿って磁性鋼溝が設けられており、前記磁性鋼溝内に磁性鋼が配置可能であり、
各前記回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各前記回転子鉄心セグメントにおける前記補助溝は、位置及び/又は断面形状が完全に同一ではなく、モータ回転時のトルクリップル及び振動騒音を抑制するために使用される。
【0007】
また、複数の前記回転子鉄心セグメントが組分けして配置可能であり、2組ごとに軸方向に沿って対称であり、かつ、各組内の各前記回転子鉄心セグメントの補助溝は、形状及び/又は位置が完全に同一ではなくてもよい。
【0008】
また、前記組には、それぞれN1番目の回転子鉄心セグメント、N2番目の回転子鉄心セグメント、N3番目の回転子鉄心セグメント、…、Nn番目の回転子鉄心セグメントである、隣接するn個の前記回転子鉄心セグメントが含まれ、
前記N1番目の回転子鉄心セグメントに複数のN1番目の補助溝が配置され、前記N2番目の回転子鉄心セグメントに複数のN2番目の補助溝が配置され、前記N3番目の回転子鉄心セグメントに複数のN3番目の補助溝が配置され、このように類推して、前記Nn番目の回転子鉄心セグメントに複数のNn番目の補助溝が配置されており、
前記N1番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記N1番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N1-1番目の角度とN1-2番目の角度であり、前記N2番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記N2番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N2-1番目の角度とN2-2番目の角度であり、前記N3番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記N3番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N3-1番目の角度とN3-2番目の角度であり、このように類推して、前記Nn番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記Nn番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、Nn-1番目の角度とNn-2番目の角度であり、
上記のN1-1番目の角度とN1-2番目の角度、N2-1番目の角度とN2-2番目の角度、N3-1番目の角度とN3-2番目の角度、…、Nn-1番目の角度とNn-2番目の角度は、Nx(x∈[1,n])番目の回転子鉄心セグメントを、回転子鉄心セグメントのスキュー回転方向に沿って回転させることによって得られるようにしてもよい。
【0009】
また、前記組には、隣接する3つの回転子鉄心セグメントが含まれ、前記隣接する3つの回転子鉄心セグメントにおける、前記N1番目の補助溝及び前記N3番目の補助溝の、前記N2番目の補助溝に対するオフセット角度を、それぞれ、N1番目のオフセット角度及びN3番目のオフセット角度とすると、
N1-1番目の角度=N2-1番目の角度-プリセット角度+N1番目のオフセット角度、
N1-2番目の角度=N2-2番目の角度+プリセット角度-N1番目のオフセット角度、
N3-1番目の角度=N2-1番目の角度+プリセット角度-N3番目のオフセット角度、
N3-2番目の角度=N2-2番目の角度-プリセット角度+N3番目のオフセット角度となるようにしてもよい。
【0010】
また、前記N1番目のオフセット角度、前記N3番目のオフセット角度、及び、前記プリセット角度が互いに異なってもよい。
【0011】
また、前記N1番目のオフセット角度及び前記N3番目のオフセット角度がともに前記プリセット角度よりも小さくてもよい。
【0012】
また、前記N1番目のオフセット角度及び前記N3番目のオフセット角度がともにゼロであってもよい。
【0013】
また、前記N1番目のオフセット角度又は前記N3番目のオフセット角度が前記プリセット角度に等しくてもよい。
【0014】
また、前記補助溝の断面形状が、円弧形、三角形、正方形、台形又は矩形であってもよい。
【0015】
本発明のもう一つの局面では、永久磁石同期モータが開示されており、前記永久磁石同期モータが固定子と回転子とを含み、前記回転子には、上記に記載の回転子鉄心が配置されている。
【0016】
本発明の利点及び有益な効果は、下記の通りである。
【0017】
本発明の回転子鉄心において、各回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各回転子鉄心セグメントにおける補助溝の位置及び/又は断面形状が完全に同一ではないようにすることで、モータの回転時には、各セグメントの回転子鉄心に発生するトルクリップル及び径方向電磁力が、それぞれ低いレベルに抑制され、モータ全体のトルクリップル及び径方向電磁力が低減され、モータ振動騒音が効果的に抑制されているため、よりよい総合的な振動低減及び騒音低減効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものだけであり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。
【
図1】本発明の一実施例における回転子鉄心の部分構造図である。
【
図2】本発明の一実施例におけるN
1番目の回転子鉄心セグメントの径方向断面図である。
【
図3】本発明の一実施例におけるN
2番目の回転子鉄心セグメントの径方向断面図である。
【
図4】本発明の一実施例におけるN
3番目の回転子鉄心セグメントの径方向断面図である。
【
図5】本発明の一実施例における回転子鉄心の部分構造図である。
【
図6】本発明の一実施例における回転子鉄心の部分構造図である。
【
図7】本発明の一実施例における回転子鉄心の部分構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施例及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。記載された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて創造的な努力をすることなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の各実施例による技術案を詳しく説明する。
【0021】
(実施例1)
本発明の一実施例には、段スキューモータの回転子鉄心が開示されており、
図1に示すように、前記回転子鉄心が、プリセット角度5だけ互いにずらされた複数の回転子鉄心セグメントを含み、前記回転子鉄心セグメントが、回転子打抜板を積層することによって形成され、前記回転子打抜板が、プレス成形されるものであり、回転子鉄心セグメントが組み立てられるとき、各回転子鉄心セグメント同士がプリセット角度5だけずらされることにより、固定子の開溝によるコギング効果が低減される。
【0022】
各回転子鉄心セグメント内には、磁性鋼溝1が円周方向に沿って設けられており、前記磁性鋼溝1内に磁性鋼が配置可能であり、磁性鋼溝1の数が偶数であり、隣接する2つの磁性鋼溝1が対称的に配置されている。
【0023】
各回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各回転子鉄心セグメントにおける前記補助溝は、位置及び/又は断面形状が完全に同一ではなく、モータ回転時のトルクリップル及び振動騒音を抑制するために使用される。
【0024】
本発明の回転子鉄心において、各回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各回転子鉄心セグメントにおける補助溝の位置及び/又は断面形状が完全に同一ではなく、少なくとも2つの回転子鉄心セグメントにおける補助溝の位置及び/又は断面形状が異なるようにしている。従来技術においては、回転子鉄心セグメントに補助溝が設計されていても、各回転子鉄心セグメントにおける補助溝の位置及び断面形状が同一であり、その結果、一部の回転子鉄心セグメントでは振動低減及び騒音低減効果が非常に高いが、残り部分の回転子鉄心セグメントではエアギャップ磁束密度の高調波成分が多く含まれてしまい、総合的な振動低減及び騒音低減効果が明らかではない。
【0025】
本発明の当該実施例では、高調波エネルギーをより効果的に分散させるために、各回転子鉄心セグメントのエアギャップ磁束密度波形をそれぞれ最適化する新たな構造が提供されることで、モータの回転時には、各セグメントの回転子鉄心に発生するトルクリップル及び径方向電磁力が、それぞれ低いレベルに抑制され、モータ全体のトルクリップル及び径方向電磁力が低減され、モータ振動騒音が効果的に抑制されているため、よりよい総合的な振動低減及び騒音低減効果が得られる。また、一部の回転子鉄心セグメントの補助溝の位置が同じである場合、当該回転子鉄心セグメントの回転子打抜板は、同一セットの金型で製造可能であり、製造コストが削減される。
【0026】
一実施例において、前記回転子鉄心セグメントが組分けして配置され、即ち、前記回転子鉄心には、回転子鉄心セグメントが複数組含まれ、2組ごとに軸方向に沿って対称的に配置されることで、回転子鉄心構造が全体として対称となり、回転時のアンバランスが防止される。そして、各組の回転子鉄心セグメントには、いくつかの回転子鉄心セグメントが含まれ、例えば、各組の回転子鉄心セグメントには、3つの回転子鉄心セグメントが含まれてもよく、組み立てが必要な場合、2組の回転子鉄心セグメントを逆向きで軸方向に対称に配置して、6つの回転子鉄心セグメントからなる完全な構造を形成することが好ましく、こうすれば、より良い全体的な効果が得られる。
【0027】
もちろん、上記各回転子鉄心セグメントの幅(例えば回転子打抜板の数)は任意に選択可能であり、この実施例では具体的な制限は課されない。
【0028】
一実施例において、
図1~5に示すように、前記回転子鉄心セグメントが組分けして配置され、各組内の複数の回転子鉄心セグメントにおける補助溝は、特定の設計構造によって実現され、例えば、任意の回転子鉄心セグメントを左右の両方向に沿って回転させることで当該組内の他の回転子鉄心セグメントを得てもよく、こうすれば、組内の各回転子鉄心セグメントの全体的な設計が最適化される。
【0029】
具体的に、前記組には、それぞれN
1番目の回転子鉄心セグメント2-1、N
2番目の回転子鉄心セグメント2-2、N
3番目の回転子鉄心セグメント2-3、…、N
n番目の回転子鉄心セグメントである、隣接するn個の前記回転子鉄心セグメントが含まれ、ここで、nが1よりも大きい自然数であり、
図1~5は、各組に3つの回転子鉄心セグメントが含まれる場合の構造を例として示している。
【0030】
前記N1番目の回転子鉄心セグメント2-1に、複数のN1番目の補助溝3-1が配置され、前記N2番目の回転子鉄心セグメント2-2に、複数のN2番目の補助溝3-2が配置され、前記N3番目の回転子鉄心セグメント2-3に、複数のN3番目の補助溝3-3が配置され、このように類推して、前記Nn番目の回転子鉄心セグメントに、複数のNn番目の補助溝が配置されている。
【0031】
前記N1番目の回転子鉄心セグメント2-1の磁極軸の両側にある2つの前記N1番目の補助溝3-1の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N1-1番目の角度4-1-1とN1-2番目の角度4-1-2であり、前記N2番目の回転子鉄心セグメント2-2の磁極軸の両側にある2つの前記N2番目の補助溝3-2の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N2-1番目の角度4-2-1とN2-2番目の角度4-2-2であり、前記N3番目の回転子鉄心セグメント2-3の磁極軸の両側にある2つの前記N3番目の補助溝3-3の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、N3-1番目の角度4-3-1とN3-2番目の角度4-3-2であり、このように類推して、前記Nn番目の回転子鉄心セグメントの磁極軸の両側にある2つの前記Nn番目の補助溝の中心点は、前記磁極軸に対するオフセット角度が、それぞれ、Nn-1番目の角度とNn-2番目の角度であり、ここで、N1-1番目の角度4-1-1、N1-2番目の角度4-1-2、N2-1番目の角度4-2-1、N2-2番目の角度4-2-2、N3-1番目の角度4-3-1、N3-2番目の角度4-3-2、…、Nn-1番目の角度、Nn-2番目の角度の数値が完全に同一ではなく、エアギャップ磁束密度の高調波エネルギーを効果的に分散させ、振動騒音を抑制する目的を達成することができる。
【0032】
上記のN
1-1番目の角度4-1-1とN
1-2番目の角度4-1-2、N
2-1番目の角度4-2-1とN
2-2番目の角度4-2-2、N
3-1番目の角度4-3-1とN
3-2番目の角度4-3-2、…、N
n-1番目の角度とN
n-2番目の角度は、Nx(x∈[1,n])番目の回転子鉄心セグメントを、回転子鉄心セグメントのスキュー回転方向に沿って回転させることによって得られるものである。例えば、1番目の回転子鉄心セグメントが基準として使用され、他の各回転子鉄心セグメントの、前記磁極軸に対するオフセット角度が、回転子鉄心セグメントのスキュー回転方向に沿って回転させることによって得られるようにしてもよいが、もちろん、任意のセグメントの回転子鉄心が基準とされてもよい。各組に3つの回転子鉄心セグメントが含まれる例を挙げ、かつ、中間のセグメントとなる回転子鉄心セグメントを基準とする場合、従来技術に対しては、
図5を参照して、N
1-1番目の角度4-1-1とN
1-2番目の角度4-1-2は、N
2番目の回転子鉄心セグメント2-2を基準として、N
1番目の回転子鉄心セグメント2-1を反時計回りにプリセット角度5だけ回転させて得られ、N
3-1番目の角度4-3-1とN
3-2番目の角度4-3-2は、N
2番目の回転子鉄心セグメント2-2を基準として、N
3番目の回転子鉄心セグメント2-3を時計回りにプリセット角度5だけ回転させて得られている。
【0033】
一実施例において、
図5に示すように、前記組には、隣接する3つの回転子鉄心セグメントが含まれ、前記隣接する3つの回転子鉄心セグメントにおける、前記N
1番目の補助溝3-1及び前記N
3番目の補助溝3-3の、前記N
2番目の補助溝3-2に対するオフセット角度が、それぞれ、N
1番目のオフセット角度6-1及びN
3番目のオフセット角度6-2である。
【0034】
N1-1番目の角度4-1-1、N1-2番目の角度4-1-2、N3-1番目の角度4-3-1、N3-2番目の角度4-3-2と、N2-1番目の角度4-2-1、N2-2番目の角度4-2-2との数値関係は、次の通りである。ここで、N2-1番目の角度4-2-1とN2-2番目の角度4-2-2との数値関係が同一であるか、又は同一ではない。
【0035】
N1-1番目の角度4-1-1=N2-1番目の角度4-2-1-プリセット角度5+N1番目のオフセット角度6-1、
N1-2番目の角度4-1-2=N2-2番目の角度4-2-2+プリセット角度5-N1番目のオフセット角度6-1、
N3-1番目の角度4-3-1=N2-1番目の角度4-2-1+プリセット角度5-N3番目のオフセット角度6-2、
N3-2番目の角度4-3-2=N2-2番目の角度4-2-2-プリセット角度5+N3番目のオフセット角度6-2。
【0036】
一つの好ましい実施例において、前記N1番目のオフセット角度6-1、前記N3番目のオフセット角度6-2及び前記プリセット角度5が互いに異なる。
【0037】
一実施例において、
図5に示すように、前記N
1番目のオフセット角度6-1及び前記N
3番目のオフセット角度6-2がともに前記プリセット角度5よりも小さい。このとき、回転子鉄心の振動低減及び騒音低減効果が最も良い。
【0038】
一実施例において、
図6に示すように、前記N
1番目のオフセット角度6-1及び前記N
3番目のオフセット角度6-2がともにゼロであり、回転子鉄心が組み立てられた後、N
1番目の補助溝3-1、N
2番目の補助溝3-2及びN
3番目の補助溝3-3が1つの直線上にあり、このとき、回転子鉄心における補助溝としては、いくつかの連続した補助溝となる。また、前記N
1番目のオフセット角度6-1及び前記N
3番目のオフセット角度6-2がともにゼロであるため、N
1番目の回転子鉄心セグメント2-1とN
3番目の回転子鉄心セグメント2-3とが完全に対称的な構造であり、同一セットの金型で製造することができる。
【0039】
一実施例において、
図7に示すように、前記N
1番目のオフセット角度6-1又は前記N
3番目のオフセット角度6-2が前記プリセット角度5に等しい。
【0040】
N1番目のオフセット角度6-1がプリセット角度5である場合、N1番目の回転子鉄心セグメント2-1とN2番目の回転子鉄心セグメント2-2とは、打抜板構造が完全に同一であるが、両者はN3番目の回転子鉄心セグメント2-3と異なる。段スキューモータにおいて、すべてのセグメントが完全同一の回転子打抜板で設計されている場合、通常の状況では、中間のセグメント(即ち、N2番目の回転子鉄心セグメント2-2)と両側のうちの一方のセグメント(例えば、N1番目の回転子鉄心セグメント2-1)のエアギャップ磁束密度の高調波成分の含有量は高くないが、両側のうちの他方のセグメント(例えば、N3番目の回転子鉄心セグメント2-3)のエアギャップ磁束密度の高調波成分の含有量は高くなってしまう。本実施例において、N3番目の回転子鉄心セグメント2-3をさらに最適化して、そのN3番目の補助溝3-3の位置を、N1番目の回転子鉄心セグメント2-1、N2番目の回転子鉄心セグメント2-2における補助溝の位置と異ならせるようにすることで、より良い振動低減及び騒音低減効果を実現できる。N3番目のオフセット角度6-2がプリセット角度5である場合、N3番目の回転子鉄心セグメント2-3とN2番目の回転子鉄心セグメント2-2とは、完全同一の構造であるが、両者はN1番目の回転子鉄心セグメント2-1と異なる。
【0041】
一実施例において、前記補助溝の断面形状が円弧形、三角形、正方形、台形又は矩形であってもよい。もちろん、補助溝の断面形状は、上記の形状に限定されるものではなく、他の形状も本発明の保護範囲内に含まれる。
【0042】
(実施例2)
本発明の一実施例には、永久磁石同期モータが開示されており、前記永久磁石同期モータは、固定子と回転子とを含み、前記回転子には、上記に記載の回転子鉄心が配置されている。本実施例による永久磁石同期モータは、振動騒音が小さく、NVH(Noise、Vibration、Harshness)品質が高い。
【0043】
以上をまとめて、本発明は、段スキューモータの回転子鉄心及び永久磁石同期モータを開示しており、前記回転子鉄心が、プリセット角度だけ互いにずらされた複数の回転子鉄心セグメントを含み、回転子鉄心セグメントが、回転子打抜板を積層することによって形成され、各回転子鉄心セグメント内には、円周方向に沿って磁性鋼溝が設けられており、磁性鋼溝内に磁性鋼が配置可能であり、各回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各回転子鉄心セグメントにおける補助溝は、位置及び/又は断面形状が完全に同一ではなく、モータ回転時のトルクリップル及び振動騒音を抑制するために使用される。本発明の回転子鉄心において、各回転子鉄心セグメントの外周面には、軸方向に貫通するいくつかの補助溝が配置されており、各回転子鉄心セグメントにおける補助溝の位置及び/又は断面形状が完全に同一ではないようにすることで、モータの回転時には、各セグメントの回転子鉄心に発生するトルクリップル及び径方向電磁力が、それぞれ低いレベルに抑制され、モータ全体のトルクリップル及び径方向電磁力が低減され、モータ振動騒音が効果的に抑制されているため、よりよい総合的な振動低減及び騒音低減効果が得られる。
【0044】
上記内容は、あくまでも本発明の実施形態であり、本発明の保護範囲を制限するものではない。本発明の精神及び原則内になされたいかなる補正、均等的置換、改善、拡張等、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0045】
1 磁性鋼溝、2-1 N1番目の回転子鉄心セグメント、2-2 N2番目の回転子鉄心セグメント、2-3 N3番目の回転子鉄心セグメント、3-1 N1番目の補助溝、3-2 N2番目の補助溝、3-3 N3番目の補助溝、4-1-1 N1-1番目の角度、4-1-2 N1-2番目の角度、4-2-1 N2-1番目の角度、4-2-2 N2-2番目の角度、4-3-1 N3-1番目の角度、4-3-2 N3-2番目の角度、5 プリセット角度、6-1 N1番目のオフセット角度、6-2 N3番目のオフセット角度
【外国語明細書】