(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019695
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20220120BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E04B1/30 C
E04B1/58 503P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118157
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2020122928
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】今西 秀公
(72)【発明者】
【氏名】及川 照靖
(72)【発明者】
【氏名】野本 康介
(72)【発明者】
【氏名】林 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小原 孝之
(72)【発明者】
【氏名】松林 卓
(72)【発明者】
【氏名】吉本 勝哉
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA01
2E125AB12
2E125AC28
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG41
2E125AG57
2E125BA02
2E125BA52
2E125BB02
2E125BB22
2E125BE07
2E125BE08
2E125BF05
2E125CA82
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】従来に比べて施工性の優れた鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造を提供する。
【解決手段】鉄骨コンクリート構造体における第1主鋼材と第2主鋼材を接合する鉄骨継手構造であって、第1主鋼材に剛接合された第1の孔あき鋼板ジベルと、第2主鋼材に剛接合された第2の孔あき鋼板ジベルと、少なくとも第1の孔あき鋼板ジベルおよび第2の孔あき鋼板ジベルを被覆するように配置されたコンクリートと、を備え、第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベルが互いに対向且つ間隔をおいて配置され、第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベルがコンクリートに埋没した状態で当該コンクリートを介して一体に接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨コンクリート構造体における第1主鋼材と第2主鋼材を接合する鉄骨継手構造であって、
前記第1主鋼材に剛接合された第1の孔あき鋼板ジベルと、
前記第2主鋼材に剛接合された第2の孔あき鋼板ジベルと、
少なくとも前記第1の孔あき鋼板ジベルおよび前記第2の孔あき鋼板ジベルを被覆するように配置されたコンクリートと、
を備え、
前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルが互いに対向且つ間隔をおいて配置され、前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルがコンクリートに埋没した状態で当該コンクリートを介して一体に接合されている、
鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項2】
前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材は互いに平行に配置され、
前記第1の孔あき鋼板ジベルが前記第1主鋼材から垂直に立設され、且つ、前記第2の孔あき鋼板ジベルが前記第2主鋼材から垂直に立設されている、
請求項1に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項3】
前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルが上下方向に間隔をおいて対向配置されている、
請求項1又は2に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項4】
前記第1主鋼材の端部領域における主面及び前記第2主鋼材の端部領域における主面同士を添わせた状態で前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材が接合されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項5】
前記第1の孔あき鋼板ジベルのジベル孔及び前記第2の孔あき鋼板ジベルのジベル孔同士に跨って挿通された棒状又は板状の補強鉄材を、更に備える、
請求項1から4の何れか一項に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項6】
複数の前記第1主鋼材と、複数の前記第1主鋼材を互いに平行且つ間隔をおいて保持する第1ベース鋼板と、を含む第1鋼材ユニットと、
複数の前記第2主鋼材と、複数の前記第2主鋼材を互いに平行且つ間隔をおいて保持する第2ベース鋼板と、を含む第2鋼材ユニットと、
を備え、
複数の前記第1主鋼材が前記第1ベース鋼板から垂直に立設し、且つ、複数の前記第2主鋼材が前記第2ベース鋼板から垂直に立設している、
請求項1から5の何れか一項に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項7】
前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材の継手部にコンクリートを拘束する拘束鋼板が前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルの上方を覆うように設けられている、
請求項6に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項8】
前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材は、各々の端部領域における主面同士が横方向に間隔をおいて対向配置され、
前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルが横方向に間隔をおいて対向配置されている、
請求項1又は2に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項9】
前記第1の孔あき鋼板ジベルは前記第1主鋼材の端部領域に剛接合されると共に、前記第2の孔あき鋼板ジベルは前記第2主鋼材の端部領域に剛接合されており、
前記第1主鋼材の端面と前記第2主鋼材の端面には、各主鋼材の長手方向に直交して端プレートが剛接合されている、
請求項8に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【請求項10】
前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材の継手部に、コンクリートを拘束する拘束鋼板が前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルの上方及び下方を覆うように設けられている、
請求項8又は9に記載の鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨コンクリート構造体において、主桁等といった主鋼材同士を延在方向に継手接合する際には、溶接接合やボルト接合が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4727091号公報
【特許文献2】特開2018-123644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、主鋼材同士の溶接接合やボルト接合は施工性(作業性)が決して高いとは言えないのが実情であった。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比べて施工性の優れた鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、鉄骨コンクリート構造体における第1主鋼材と第2主鋼材を接合する鉄骨継手構造であって、前記第1主鋼材に剛接合された第1の孔あき鋼板ジベルと、前記第2主鋼材に剛接合された第2の孔あき鋼板ジベルと、少なくとも前記第1の孔あき鋼板ジベルおよび前記第2の孔あき鋼板ジベルを被覆するように配置されたコンクリートと、を備え、前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルが互いに対向且つ間隔をおいて配置され、前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルがコンクリートに埋没した状態で当該コンクリートを介して一体に接合されている。
【0007】
本発明によれば、第1主鋼材及び第2主鋼材同士を直接溶接したり、ボルト接合しなくても、第1主鋼材における第1の孔あき鋼板ジベルと第2主鋼材における第2の孔あき鋼板ジベルとを一体的にコンクリートに埋没させることで第1主鋼材及び第2主鋼材を接合することができるため、施工性が非常に優れている。特に、本発明においては、第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベルを互いに対向且つ間隔をおいて配置し、これらの間に介在するコンクリートに第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベル間の応力伝達を分担させることができるため、鉄骨コンクリート構造体の構築時に第1主鋼材における第1の孔あき鋼板ジベルと第2主鋼材における第2の孔あき鋼板ジベルにおける相互の位置合わせをシビアに行わなくても、これらを接合することができるという利点がある。言い換えると、第1主鋼材及び第2主鋼材の寸法精度に誤差が存在したり、或いは、第1主鋼材及び第2主鋼材の位置合わせに施工誤差が生じても、これらの誤差を吸収して第1主鋼材と第2主鋼材を容易、且つ、確実に接合できる。
【0008】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材は互いに平行に配置され、前記第1の孔あき鋼板ジベルが前記第1主鋼材から垂直に立設され、且つ、前記第2の孔あき鋼板ジベルが前記第2主鋼材から垂直に立設されていても良い。このようにすることで、鉄骨コンクリート構造体の構築時に第1主鋼材及び第2主鋼材を互いに
平行に配置することで、第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベルを容易に対向して配置できる。
【0009】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1の孔あき鋼板ジベルのジベル孔及び前記第2の孔あき鋼板ジベルのジベル孔同士に跨って挿通された棒状又は板状の補強鉄材を、更に備えていても良い。これによれば、第1主鋼材及び第2主鋼材の継手部において第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベルの間に介在するコンクリートを好適に補強することができる。つまり、第1主鋼材及び第2主鋼材の継手強度を高めることができる。
【0010】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、複数の前記第1主鋼材と、複数の前記第1主鋼材を互いに平行且つ間隔をおいて保持する第1ベース鋼板と、を含む第1鋼材ユニットと、複数の前記第2主鋼材と、複数の前記第2主鋼材を互いに平行且つ間隔をおいて保持する第2ベース鋼板と、を含む第2鋼材ユニットと、を備え、複数の前記第1主鋼材が前記第1ベース鋼板から垂直に立設し、且つ、複数の前記第2主鋼材が前記第2ベース鋼板から垂直に立設していても良い。このように、複数の第1主鋼材をユニット化すると共に複数の第2主鋼材をユニット化することで、鉄骨コンクリート構造体を構築する際の施工性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1の主鋼材及び前記第2の主鋼材の継手部にコンクリートを拘束する拘束鋼板が前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルの上方を覆うように設けられていても良い。これによれば、第1主鋼材及び第2主鋼材の継手部におけるコンクリートの拘束度合いを高めることができ、当該コンクリートにひび割れ等が起こりにくくなる。その結果、第1主鋼材及び第2主鋼材の継手部の強度をより一層増大させることができる。
【0012】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルが上下方向に間隔をおいて対向配置されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1主鋼材の端部領域における主面及び前記第2主鋼材の端部領域における主面同士を添わせた状態で前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材が接合されていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材は、各々の端部領域における主面同士が横方向に間隔をおいて対向配置され、前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルが横方向に間隔をおいて対向配置されていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1の孔あき鋼板ジベルは前記第1主鋼材の端部領域に剛接合されると共に、前記第2の孔あき鋼板ジベルは前記第2主鋼材の端部領域に剛接合されており、前記第1主鋼材の端面と前記第2主鋼材の端面には、各主鋼材の長手方向に直交して端プレートが剛接合されていてもよい。
【0016】
また、本発明に係る鉄骨継手構造は、前記第1主鋼材及び前記第2主鋼材の継手部に、コンクリートを拘束する拘束鋼板が前記第1の孔あき鋼板ジベル及び前記第2の孔あき鋼板ジベルの上方及び下方を覆うように設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来に比べて施工性の優れた鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る鉄骨コンクリート構造体における鉄骨継手構造を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る第1主鋼材の上面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る第2主鋼材の上面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る第1主鋼材の接合端部と第2主鋼材の接合端部を所定の継手位置に位置決めした状態を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る第1主鋼材の接合端部と第2主鋼材の接合端部を所定の継手位置に位置決めした状態を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る鉄骨コンクリート構造体における横断面を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例1に係る鉄骨コンクリート構造体の横断面を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例2に係る鉄骨コンクリート構造体の横断面を概略的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る第1鋼材ユニットの上面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る第2鋼材ユニットの上面図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る第1鋼材ユニット及び第2鋼材ユニットの継手方法を説明する図である。
【
図16】
図16は、ジベル位置決め完了状態の第1鋼材ユニット及び第2鋼材ユニットを示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態2に係る鉄骨コンクリート構造体の幅方向に沿った断面を概略的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態2の変形例1に係る第1鋼材ユニットの上面図である。
【
図20】
図20は、実施形態2の変形例1に係る鉄骨コンクリート構造体の幅方向に沿った断面を概略的に示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態2の変形例2に係る鉄骨コンクリート構造体の鉄骨継手構造を示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態3に係る第1鋼材ユニットの上面図である。
【
図24】
図24は、実施形態3に係る第2鋼材ユニットの上面図である。
【
図26】
図26は、実施形態3に係る第1鋼材ユニット及び第2鋼材ユニットの接続端側の一部を示す図である。
【
図27】
図27は、実施形態3に係る第1鋼材ユニット及び第2鋼材ユニットを連結した状態を示す図である。
【
図29】
図29は、実施形態3に係る第1主鋼材及び第2主鋼材の継手部へのコンクリートの打設が完了した状況を示す図である。
【
図30】
図30は、実施形態3において、コンクリートの打設後における継手部とその周辺を上面から眺めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。但し、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本発明は以下で説明する態様に限定されない。
【0020】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る鉄骨コンクリート構造体1における鉄骨継手構造を概略的に示す図である。鉄骨コンクリート構造体1は、主要構造としてコンクリート2及び鉄骨3を含む合成(複合)構造体である。
図1において、コンクリート2は硬化後のコンクリートである。また、
図1は、鉄骨コンクリート構造体1を上方から眺めたときの鉄骨コンクリート構造体の内部構造を示している。
【0021】
鉄骨コンクリート構造体1における鉄骨3は、鉄骨コンクリート構造体1における主方向に沿って延在する複数の主鋼材30を有している。複数の主鋼材30は、長手方向における端部同士が継手接合されている。
図1において、第1主鋼材30Aと第2主鋼材30Bの端部同士が接続されている。図中、符号300は、第1主鋼材30Aと第2主鋼材30Bが接合される継手部である。また、第1主鋼材30Aと第2主鋼材30Bは、鉄骨コンクリート構造体1の幅方向に間隔をおいて互いに平行に配置されている。なお、本明細書においては、鉄骨コンクリート構造体1の平面方向において、主鋼材30の長手方向に対応する方向を主方向とし、主鋼材30の長手方向に直交する方向を幅方向とする。
【0022】
図2は、実施形態1に係る第1主鋼材30Aの上面図である。
図3は、
図2におけるA矢視図である。
図4は、実施形態1に係る第2主鋼材30Bの上面図である。
図5は、
図4におけるB矢視図である。
図2~
図5には、主鋼材30(第1主鋼材30A及び第2主鋼材30B)における長手方向、幅方向、上下方向を図示する。主鋼材30(第1主鋼材30A及び第2主鋼材30B)における幅方向は、板厚方向ということもできる。
【0023】
第1主鋼材30Aは、第1主面301A、第2主面302A、上面303A、下面304A、第1端面305A、第2端面306Aによって外形が規定される平板形状を有する構造用鋼板である。
【0024】
第1主鋼材30Aにおける両端部には、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが溶接等によって剛接合されている。第1の孔あき鋼板ジベル32Aは、一対の長辺及び一対の短辺によって規定される矩形状の平面形状を有し、一の長辺が第1主鋼材30Aの第1主面301Aに沿って接続されている。また、第1の孔あき鋼板ジベル32Aは、第1主鋼材30Aにおける第1主面301Aから幅方向に向かって垂直に立設している。また、
図3に示すように、第1の孔あき鋼板ジベル32Aは、第1主鋼材30Aの上下方向における中央よりも上側の位置(高さ)に設けられている。
【0025】
また、
図2に示すように、第1の孔あき鋼板ジベル32Aには、複数の第1ジベル孔320Aが第1の孔あき鋼板ジベル32Aを厚さ方向に貫通するように穿設されている。
図2に示す例では、第1の孔あき鋼板ジベル32Aの短辺方向に2段、長辺方向に5列、合計10個の第1ジベル孔320Aが縦横に配列されている。また、第1ジベル孔320Aは、円形横断面を有している。但し、第1の孔あき鋼板ジベル32Aに形成される第1ジベル孔320Aの数、位置、大きさ、配列パターン等といった態様は特に限定されない。ここで、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段の第1ジベル孔320Aのうち、第1主鋼材30Aの第1主面301Aに近い方の段を「第1段目の第1ジベル孔」、遠い方の段を「第2段目の第1ジベル孔」と呼ぶ場合がある。
【0026】
次に、第2主鋼材30Bについて説明する。第2主鋼材30Bは、第1主面301B、第2主面302B、上面303B、下面304B、第1端面305B、第2端面306B
によって外形が規定される平板形状を有する構造用鋼板である。
【0027】
第2主鋼材30Bにおける両端部には、第2の孔あき鋼板ジベル32Bが溶接等によって剛接合されている。第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、一対の長辺及び一対の短辺によって規定される矩形状の平面形状を有し、一の長辺が第2主鋼材30Bの第2主面302Bに沿って接続されている。また、第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、第2主鋼材30Bにおける第2主面302Bから幅方向に向かって垂直に立設している。また、
図5に示すように、第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、第2主鋼材30Bの上下方向における中央よりも下側の位置(高さ)に設けられている。
【0028】
また、
図4に示すように、第2の孔あき鋼板ジベル32Bには、複数の第2ジベル孔320Bが第2の孔あき鋼板ジベル32Bを厚さ方向に貫通するように穿設されている。
図4に示す例では、第2の孔あき鋼板ジベル32Bの短辺方向に2段、長辺方向に5列、合計10個の第2ジベル孔320Bが縦横に配列されている。また、第2ジベル孔320Bは、円形横断面を有している。但し、第2の孔あき鋼板ジベル32Bに形成される第2ジベル孔320Bの数、位置、大きさ、配列パターン等といった態様は特に限定されない。ここで、第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける2段の第2ジベル孔320Bのうち、第2主鋼材30Bの第2主面302Bに近い方の段を「第1段目の第1ジベル孔」、遠い方の段を「第2段目の第1ジベル孔」と呼ぶ場合がある。なお、
図2~
図5で説明した第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bは、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bが配置される高さを除いて、実質的に同一構造である。
【0029】
次に、第1主鋼材30Aと第2主鋼材30Bの継手方法について説明する。
図6及び
図7は、実施形態1に係る第1主鋼材30Aの接合端部と第2主鋼材30Bの接合端部を所定の継手位置に位置決めした状態を示している。以下、
図6及び
図7に示す状態を「ジベル位置決め完了状態」をいう。
図6は、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの平面方向における相対的な位置関係を示す。
図7は、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの上下方向における相対的な位置関係を示す。
【0030】
図6及び
図7に示すジベル位置決め完了状態において、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、平面的方向に上下に重なっている。
図6に示す例では、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの短辺同士の位置が概ね合致している。また、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける1段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける2段目の第2ジベル孔320Bの平面位置が概ね合致し、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける1段目の第2ジベル孔320Bの平面位置が概ね合致している。但し、本実施形態において、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの全体が平面方向に完全に重なっている必要は無く、その一部同士が平面方向に重なるように配置されていれば良い。例えば、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける1段目の第2ジベル孔320Bの平面位置が概ね合致するように、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの平面が部分的に重なっていても良い。但し、第1ジベル孔320A及び第2ジベル孔320Bの平面的な位置がずれていても良い。
【0031】
また、
図7に示すように、ジベル位置決め完了状態において、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bが互いに対向し、且つ、間隔をおいて配置されている。
図7に示す例では、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが第2の孔あき鋼板ジベル32Bの上方に位置している。但し、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの上下方向における位
置関係が逆になっていても良い。また、ジベル位置決め完了状態において、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bは、所定の間隔をおいて離間した状態で平行に配置されており、第1継手部31Aにおける第1主面301Aと第2継手部31Bにおける第2主面301Bが互いに対向している。また、ジベル位置決め完了状態において、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの上下方向の位置は互いに揃っている。すなわち、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bにおける各上面303A,303B同士の高さが一致し、各下面304A,304B同士の高さが一致している。
【0032】
なお、
図7に示す符号P1は、ジベル位置決め完了状態において互いに隣接するように対向配置された第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの対向面322A,322B同士の離間寸法(以下、「ジベル離間寸法」という)である。ジベ
ル離間寸法P1は、互いに平行に配置された第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの上下方向に沿って各対向面322A,322Bが離間する寸法である。
【0033】
図6及び
図7で説明したジベル位置決め完了状態から、適宜、主鋼材30の側方を囲むように側方型枠(図示せず)を設置した後、コンクリートを打設する。本実施形態においては、硬化後のコンクリート2を介して第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bを一体に接合する。そのため、コンクリートを打設する際は、少なくとも第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bがコンクリートに埋没されるように打設される。
【0034】
図8は、実施形態1に係る鉄骨コンクリート構造体1における横断面を概略的に示す図である。鉄骨コンクリート構造体1における横断面とは、主方向に直交する方向の断面である。
図8には、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300に対応する断面構造が示されている。
【0035】
本実施形態における鉄骨コンクリート構造体1の鉄骨継手構造は、第1主鋼材30Aにおける接合端部に剛接合された第1の孔あき鋼板ジベル32Aと、第2主鋼材30Bにおける接合端部に剛接合された第2の孔あき鋼板ジベル32Bと、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを被覆するように配置されたコンクリート2と、を備え、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bが互いに対向且つ間隔をおいて配置され、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bがコンクリート2に埋没した状態で当該コンクリート2を介して一体に接合されている。具体的には、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを上下方向に間隔をおいて対向配置し、コンクリート2を介して各孔あき鋼板ジベル32A,32Bを一体に接合した。これにより、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bは、第1主鋼材30Aに剛接合された第1の孔あき鋼板ジベル32Aと、第2主鋼材30Bに剛接合された第2の孔あき鋼板ジベル32Bと、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを一体的に覆うことでこれらを接合するコンクリート2によって相互の応力伝達が可能となる。そのため、本実施形態における鉄骨継手構造によれば、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30B同士を直接溶接したり、ボルト接合しなくても、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bを離間して配置した状態で第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bとを一体的にコンクリート2に埋没させることで第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bを接合することができるため、施工性が非常に優れている。
【0036】
特に、本実施形態においては、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを互いに対向且つ間隔をおいて配置し、これらの間に介在するコンクリート2に第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32B間の応力伝達を分担させることができるため、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第
2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける相互の位置合わせをシビアに行わなくても、これらを接合することができるという利点がある。言い換えると、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの寸法精度に誤差が存在したり、或いは、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの位置合わせに施工誤差が生じても、これらの誤差を吸収して第1主鋼材30Aと第2主鋼材30Bを容易、且つ、確実に接合できる。
【0037】
また、鉄骨継手構造1は、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bが互いに平行に配置され、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが第1主鋼材30Aから垂直に立設され、且つ、第2の孔あき鋼板ジベル32Bが第2主鋼材30Bから垂直に立設されている。そのため、鉄骨コンクリート構造体1の構築時において第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bを互いに平行に配置することで、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを容易に対向して配置でき、施工性に優れている。
【0038】
なお、本実施形態においては、ジベル離間寸法P1を、コンクリート2に含まれる骨材の最大骨材寸法の(4/3)倍以上の寸法に設定されている。また、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける各ジベル孔320A, 320Bの孔径は、コンクリート2に含まれる骨材の最大骨材寸法の(4/3)倍以上の寸法に設定されている。これにより、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300にコンクリートを充填する際の充填性が向上する。
【0039】
なお、鉄骨コンクリート構造体1において、複数の主鋼材30を長手方向に継手接合する際、主鋼材30の接合本数は特に限定されない。3本以上の主鋼材30を継手接合する場合、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bを必要な本数だけ交互に継手接合すれば良い。なお、鉄骨コンクリート構造体1の主方向端部に位置する主鋼材30(第1主鋼材30A又は第2主鋼材30B)は、第1の孔あき鋼板ジベル32A(第2の孔あき鋼板ジベル32B)が一方の端部のみに設けられていても良い。また、鉄骨コンクリート構造体1は、その幅方向に複数の主鋼材30が配列されていても良い。また、鉄骨3を構成する複数の主鋼材30の横断面形状は特に限定されない。上記実施形態においては、主鋼材30(第1主鋼材30A、第2主鋼材30B)を平板鋼板によって形成する例を説明したが、例えばその横断面がI形、H形、その他の形状を有する形鋼によって形成しても良い。
【0040】
また、鉄骨コンクリート構造体1は、種々の用途に適用することができる。例えば、桁部材として使用しても良いし、床版として使用しても良い。また、トンネルの覆工体として使用しても良い。また、鉄骨コンクリート構造体1を鉛直方向に延伸する柱部材として構成しても良い。
【0041】
<変形例1>
図9は、実施形態1の変形例1に係る鉄骨コンクリート構造体1の横断面を概略的に示す図である。変形例1において、鉄骨コンクリート構造体1における鉄骨3、すなわち第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bは、
図1~
図8で説明した第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bと実質的に同一の構造である。変形例1においては、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける少なくとも一部のジベル孔320A,320B同士に跨って棒状の補強鉄筋(補強鉄材)4Aが挿通された状態でコンクリート2に埋め込まれている。なお、棒状の補強鉄筋4Aの代わりに、板状の補強鉄材を配置しても良い。
【0042】
図9に示す例では、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける1段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける2段目の第2ジベル孔320Bに跨って補強鉄筋4が挿通され、且つ、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける1段目の第2ジベル孔320Bに跨
って補強鉄筋4Aが挿通されている。但し、補強鉄筋4Aの設置態様は
図9に示す例には限定されない。
【0043】
また、
図9に示す補強鉄筋4Aは、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bから脱落することを抑制するためのフック状の係止部40が設けられている。これにより、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bのうち、上方に位置する方の第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける第1ジベル孔320Aの縁部に引っ掛けることができる。また、補強鉄筋4Aは、ジベル位置決め完了状態に移行した後、コンクリートの打設前に、上下のジベル孔320A,320Bに跨るように貫通した状態で第1の孔あき鋼板ジベル32Aや第2の孔あき鋼板ジベル32Bに溶接する等して固定しても良いし、他の固定手段を用いて補強鉄筋4Aを固定しても良い。なお、本変形例においては、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける各ジベル孔320A, 320Bの孔径から補強鉄筋4Aの孔径を差し引いた寸法が、コンクリート2に含まれる骨材の最大骨材寸法の(4/3)倍以上の寸法となるように設定されている。これにより、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300に対するコンクリートの充填性を確保できる。
【0044】
以上のように、本変形例においては、上下に位置するジベル孔320A,320B同士に跨って補強鉄筋4を配置するようにしたので、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300において第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの間に介在するコンクリート2を好適に補強することができる。
【0045】
<変形例2>
図10は、実施形態1の変形例2に係る鉄骨コンクリート構造体1の横断面を概略的に示す図である。変形例2においては、第1主鋼材30Aの上下方向に沿って複数の第1の孔あき鋼板ジベル32Aが間隔をおいて設けられている。また、第2主鋼材30Bの上下方向に沿って複数の第2の孔あき鋼板ジベル32Bが間隔をおいて設けられている。
図10に示す例では、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが2枚、第1主鋼材30Aの上下方向に沿って間隔をおいて上下に設けられ、第2の孔あき鋼板ジベル32Bが2枚、第2主鋼材30Bの上下方向に沿って間隔をおいて上下に設けられている。なお、本変形例において、第1主鋼材30Aの上下方向に沿って3枚以上の第1の孔あき鋼板ジベル32Aが配列されていても良いし、第2主鋼材30Bの上下方向に沿って3枚以上の第2の孔あき鋼板ジベル32Bが配列されていても良い。また、第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bとの枚数が異なっていても良い。また、第1主鋼材30Aに単一の第1の孔あき鋼板ジベル32Aを配置するとともに第2主鋼材30Bに複数の第2の孔あき鋼板ジベル32Bを配置しても良い。逆に、第1主鋼材30Aに複数の第1の孔あき鋼板ジベル32Aを配置するとともに第2主鋼材30Bに単一の第2の孔あき鋼板ジベル32Bを配置しても良い。
【0046】
本変形例のように、第1主鋼材30Aや第2主鋼材30Bに複数の孔あき鋼板ジベルを配置することによって、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300における第2継手部31Bとの定着性をより一層向上させることができる。なお、本変形例においても、互いに隣接するように対向配置された第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの対向面322A,322B同士が上下方向に離間するジベル離間
寸法P1が、いずれもコンクリート2に含まれる骨材の最大骨材寸法の(4/3)倍以上の寸法となるように設定されている。これにより、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300におけるコンクリートの充填性を確保することができる。
【0047】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る鉄骨コンクリート構造体1について説明する。実施形態2に係
る鉄骨コンクリート構造体1は、鉄骨3が
図11及び
図12に示す第1鋼材ユニット20Aと
図13及び
図14に示す第2鋼材ユニット20Bを含んで構成されている。実施形態2に係る鉄骨コンクリート構造体1において、実施形態1と同一の構成については同一の参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。詳しくは後述するが、第1鋼材ユニット20Aは、実施形態1で説明した第1主鋼材30Aを複数含み、これらを一体化した鋼材ユニットである。また、第2鋼材ユニット20Bは、実施形態1で説明した第2主鋼材30Bを複数含み、これらを一体化した鋼材ユニットである。本実施形態における鉄骨コンクリート構造体1に含まれる鉄骨3は、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bが接合される。
【0048】
図11は、実施形態2に係る第1鋼材ユニット20Aの上面図である。
図12は、
図11におけるC矢視図である。
図13は、実施形態2に係る第2鋼材ユニット20Bの上面図である。
図14は、
図13におけるD矢視図である。
【0049】
第1鋼材ユニット20Aは、複数の第1主鋼材30Aと、これらを保持する第1ベース鋼板40Aとを含んでいる。また、第2鋼材ユニット20Bは、複数の第2主鋼材30Bと、これらを保持する第2ベース鋼板40Bとを含んでいる。第1ベース鋼板40A及び第2ベース鋼板40Bは、矩形状の平面形状を有する鋼製の平板によって形成されている。第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bは、実施形態1で説明したものと実質的に同一構造である。
【0050】
図11における符号401Aは第1ベース鋼板40Aの長辺方向に沿って延在する側面であり、符号402Aは第1ベース鋼板40Aの短辺方向に沿って延在する端面である。また、符号403Aは第1ベース鋼板40Aの表面である。また、
図12における符号401Bは第2ベース鋼板40Bの長辺方向に沿って延在する側面であり、符号402Bは第2ベース鋼板40Bの短辺方向に沿って延在する端面である。また、符号403Bは第2ベース鋼板40Bの表面である。ここで、第1ベース鋼板40A及び第2ベース鋼板40Bの平面方向において、長辺に沿った方向を「長手方向」と呼び、短辺に沿った方向を「幅方向」と呼ぶ。なお、第1ベース鋼板40A及び第2ベース鋼板40Bの「長手方向」及び「幅方向」は、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bのそれぞれ「長手方向」及び「幅方向」に対応している。第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bの「上下方向(高さ方向)」は、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bにおける「上下方向(高さ方向)」に対応している。
【0051】
図11に示す例では、第1鋼材ユニット20Aにおける第1ベース鋼板40Aには、3枚の第1主鋼材30Aが第1ベース鋼板40Aの長手方向に沿って互い平行に設けられており、各第1主鋼材30Aが互いに対向して配置されている。また、各第1主鋼材30Aは、第1ベース鋼板40Aの表面403Aから垂直に立設している。
【0052】
各第1主鋼材30Aは、第1ベース鋼板40Aの幅方向に沿って一定の間隔毎に立設している。以下、各第1主鋼材30A同士が第1ベース鋼板40Aの幅方向に沿って離間する間隔を「第1主鋼材配置間隔C1」と呼ぶ)。また、各第1主鋼材30Aの長手方向の長さは、第1ベース鋼板40Aの長辺寸法に等しく、各第1主鋼材30Aにおける長手方向の端面が第1ベース鋼板40Aの端面402Aの位置に揃っている。また、本実施形態においても、各第1主鋼材30Aの両端部に第1の孔あき鋼板ジベル32Aが剛接合されている。なお、第1ベース鋼板40Aに立設する第1主鋼材30Aの数は特に限定されない。
【0053】
次に、第2鋼材ユニット20Bの詳細について説明する。
図13に示す例では、第2ベース鋼板40Bに3枚の第2主鋼材30Bが第2ベース鋼板40Bの長手方向に沿って互
い平行に設けられており、各第2主鋼材30Bが互いに対向して配置されている。また、各第2主鋼材30Bは、第2ベース鋼板40Bの表面403Bから垂直に立設している。
【0054】
各第2主鋼材30Bは、第2ベース鋼板40Bの幅方向に沿って一定の間隔毎に立設している。以下、各第2主鋼材30B同士が第2ベース鋼板40Bの幅方向に沿って離間する間隔を「第2主鋼材配置間隔C2」と呼ぶ。また、本実施形態においても各第2主鋼材30Bの両端部には、第2の孔あき鋼板ジベル32Bが形成されている。ここで、各第2主鋼材30Bの長手方向の長さは、第2ベース鋼板40Bの長辺寸法よりも長い。その結果、各第2主鋼材30Bの長手方向における両端部に形成された第2の孔あき鋼板ジベル32Bが、第2ベース鋼板40Bの端面402Bよりも外方に突出した状態で配置されている。なお、第2ベース鋼板40Bに立設する第2主鋼材30Bの数は特に限定されない。また、本実施形態において、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの板厚は同一であり、且つ、第1主鋼材配置間隔C1及び第2主鋼材配置間隔C2が同一の寸法に設定されている。
【0055】
ここで、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの第1主面301A,301Bは、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bが接合された際に、その幅方向において同一方向に配向する面であり、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの第2主面302A,302Bは、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bが接合された際に、その幅方向において同一方向に配向する面である。以下、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bにおける幅方向のうち、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの第1主面301A,301Bが配向する向きを「第1幅方向」と呼び、その反対側の方向を「第2幅方向」と呼ぶ。第2幅方向は、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bにおける幅方向のうち、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの第2主面302A,302Bが配向する向きに対応している。
【0056】
次に、第1鋼材ユニット20Aにおける各第1主鋼材30A及び第2鋼材ユニット20Bにおける各第2主鋼材30Bの継手構造について詳しく説明する。
【0057】
図11に示すように、各第1主鋼材30Aの両端部における第1主面301Aには、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが溶接等によって剛接合されている。第1の孔あき鋼板ジベル32Aは、第1主鋼材30Aにおける第1主面301Aから第1幅方向に向かって垂直に立設しており、その結果、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが第1ベース鋼板40Aと平行な姿勢で保持されている。
【0058】
更に、第1の孔あき鋼板ジベル32Aの短辺方向に沿った幅寸法(短辺寸法)は、第1主鋼材配置間隔C1よりも小さな寸法に設定されている。そのため、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける第1幅方向側の側面321Aと、当該第1の孔あき鋼板ジベル32Aに隣接する第1主鋼材30Aの第2主面302Aとの間には第1間隙部V1が形成されている。本実施形態においては、第1間隙部V1の幅が、第2主鋼材30Bの部材厚さ以上の寸法(好ましくは、第2主鋼材30Bの部材厚さよりも大きな寸法)となるように、第1の孔あき鋼板ジベル32Aの幅寸法と第1主鋼材配置間隔C1との相対的な大きさが調整されている。
【0059】
また、
図13に示すように、各第2主鋼材30Bの両端部における第2主面302Bには、第2の孔あき鋼板ジベル32Bが溶接等によって剛接合されている。第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、第2主鋼材30Bにおける第2主面302Bから第2幅方向に向かって垂直に立設しており、その結果、第2の孔あき鋼板ジベル32Bが第2ベース鋼板40Bに対して平行な姿勢で保持されている。また、
図13に示すように、各第2主鋼材30Bにおける両端部に設けられた第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、第2ベース鋼板40B
の長手方向において端面402Bよりも外方に突出している。
【0060】
更に、第2の孔あき鋼板ジベル32Bの短辺方向に沿った幅寸法(短辺寸法)は、第2主鋼材配置間隔C2よりも小さな寸法に設定されている。そのため、第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける第2幅方向側の側面321Bと、当該第2の孔あき鋼板ジベル32Bに隣接する第2主鋼材30Bの第1主面301Bとの間には第2間隙部V2が形成されている。本実施形態においては、第2間隙部V2の幅が、第1主鋼材30Aの部材厚さ以上の寸法(好ましくは、第1主鋼材30Aの部材厚さよりも大きな寸法)となるように、第2の孔あき鋼板ジベル32Bの幅寸法と第2主鋼材配置間隔C2との相対的な大きさが調整されている。
【0061】
次に、実施形態2に係る第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bの継手方法について説明する。
図15~
図17は、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bの継手方法を説明する図である。
図15に示すように、互いに接合すべき第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bを、その接続端側の端面402A,402B同士が対向するように向き及び高さを揃える。ここでいう接続端とは、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bにおける長手方向の端部のうち、相手方と接続される方の端部である。なお、
図15は、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bの接続端側の一部を示している。
【0062】
本実施形態においては、
図15に示す状態から第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bが接近するように移動させ、
図16に示すジベル位置決め完了状態に移行させる。
図17は、
図16のE-E矢視断面を概略的に示す図である。
【0063】
上記のように、各第2主鋼材30Bの第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、第2ベース鋼板40Bの長手方向において端面402Bよりも外方に突出している。すなわち、第2ベース鋼板40Bの端面402Bは、各第2主鋼材30Bの第2の孔あき鋼板ジベル32Bよりも内側に退避した位置に配置されている。また、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aは、第1主鋼材30Aの高さ方向中央よりも上側の位置に配置され、第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bは、第2主鋼材30Bの高さ方向中央よりも下側の位置に配置されている。上記構造を採用することで、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bにおける接続端側の端面402A,402B同士、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32B同士が互いに干渉することなく、各第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bを第1鋼材ユニット20Aの接合端領域内に挿入することができる。
【0064】
そして、
図17に示すように、各第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと各第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bが平面的に上下に重なるような位置に位置決めすることでジベル位置決め完了状態とすることができる。なお、ジベル位置決め完了状態において、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの一部同士が平面的に重なっていれば良い。
【0065】
図16に示す例では、ジベル位置決め完了状態において、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの短辺同士の位置が概ね合致し、且つ、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける2段目の第2ジベル孔320Bの平面位置が概ね合致している。また、
図17に示すように、ジベル位置決め完了状態においては、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bが互いに対向且つ間隔をおいて配置されている。
図17に示す例では、第1の孔あき鋼板ジベル32Aが第2の孔あき鋼板ジベル32Bの上方に位置している。
【0066】
更に、本実施形態においては、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの部材厚が等しく、且つ、第1主鋼材配置間隔C1及び第2主鋼材配置間隔C2が等しい。そのため、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bが対向するように位置合わせを行う際に、第1主鋼材30Aの端部領域における第2主面302Aに対して第2主鋼材30Bの端部領域における第1主面301Bを添わせながらこれらを好適にガイドできる。これにより、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bの位置合わせを容易に行うことができ、より短時間でジベル位置決め完了状態に移行することができる。
【0067】
なお、本実施形態において、3つ以上の鋼材ユニットを接合する場合には、
図15~
図17で説明した手順で、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bを交互に必要な個数だけ連設し、
図16及び
図17に示されるジベル位置決め完了状態となるように第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを位置合わせすれば良い。
【0068】
また、本実施形態においても、
図16及び
図17で説明したジベル位置決め完了状態から、適宜、鋼材ユニットの側方を囲むように側方型枠(図示せず)を設置した後、コンクリートを打設する。
図18は、実施形態2に係る鉄骨コンクリート構造体1の幅方向に沿った断面を概略的に示す図である。ここで、鉄骨コンクリート構造体1の幅方向は配力方向ということもできる。
【0069】
本実施形態においても、硬化後のコンクリート2を介して第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bを一体に接合するため、少なくとも第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bがコンクリートに埋没されるようにコンクリートが打設される。
図18に示す例では、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bの各主鋼材30A,30
Bがコンクリートに埋没するように、各ベース鋼板40A,40Bの表面403A, 40
3B上にコンクリートを打設することで鉄骨コンクリート構造体1が構築されている。勿論、第鉄骨コンクリート構造体1は、1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bにおける各ベース鋼板40A,40Bがコンクリート2に埋没していても良い。
【0070】
図18に示すように、実施形態2に係る鉄骨コンクリート構造体1においても、実施形態1と同様、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bが互いに対向且つ間隔をおいて配置され、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bがコンクリート2に埋没した状態で当該コンクリート2を介して一体に接合されている。これにより、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bは、第1主鋼材30Aの端部に剛接合された第1の孔あき鋼板ジベル32Aと、第2主鋼材30Bの端部に剛接合された第2の孔あき鋼板ジベル32Bと、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを一体的に覆うことでこれらを接合するコンクリート2によって相互の応力伝達が可能となる。なお、本実施形態においても、鉄骨コンクリート構造体1の主方向には、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bが交互に接合されており、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bが鉄骨コンクリート構造体1の主方向に沿って延在している。
【0071】
また、本実施形態に係る鉄骨コンクリート構造体1の鉄骨継手構造によれば、複数の第1主鋼材30Aとこれらを互いに平行且つ間隔をおいて保持する第1ベース鋼板40Aと、を含む第1鋼材ユニット20Aと、複数の第2主鋼材30Bとこれらを互いに平行且つ間隔をおいて保持する第2ベース鋼板40Bと、を含む第2鋼材ユニット20Bと、を備え、複数の第1主鋼材30Aが第1ベース鋼板40Aから垂直に立設し、且つ、複数の第
2主鋼材30Bが第2ベース鋼板40Bから垂直に立設する構造を採用した。また、
図18に示す例では、鉄骨コンクリート構造体1は、幅方向(配力方向)に沿って第1鋼材ユニット20A同士、第2鋼材ユニット20B同士が、例えば溶接やボルト接合等といった適宜の接合方法によって接合されている。
図18に示す符号BLは、鉄骨コンクリート構造体1の幅方向において、第1鋼材ユニット20A同士、第2鋼材ユニット20B同士がそれぞれ接合される接合位置を示している。以上のように、本実施形態における鉄骨コンクリート構造体1の鉄骨継手構造によれば、複数の第1主鋼材30Aをユニット化した第1鋼材ユニット20Aと、複数の第2主鋼材30Bをユニット化した第2鋼材ユニット20Bを備えているため、鉄骨コンクリート構造体1を構築する際の施工性をより一層向上させることができる。
【0072】
<変形例1>
次に、実施形態2に係る鉄骨コンクリート構造体1の変形例1について説明する。
図19は、実施形態2の変形例1に係る第1鋼材ユニット20Aの上面図である。本変形例に係る第1鋼材ユニット20Aは、その両端部に拘束鋼板5が設置されている。拘束鋼板5は、鉄骨コンクリート構造体1における第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300におけるコンクリート2を拘束するための部材である。本変形例において、拘束鋼板5は矩形平面形状を有しており、各第1主鋼材30Aにおける上面303Aに溶接されることで接合されている。但し、第1鋼材ユニット20Aに対する拘束鋼板5の接合方法は特に限定されない。変形例1に係る第1鋼材ユニット20Aは、拘束鋼板5を有する点を除いて、
図11及び
図12で説明した構造と同一である。
【0073】
拘束鋼板5における第1鋼材ユニット20Aの長手方向(第1主鋼材30Aの延在方向)に沿った長さ寸法は、第1の孔あき鋼板ジベル32Aの長辺寸法と略等しく、第1の孔あき鋼板ジベル32Aの上方を拘束鋼板5が覆っている。また、拘束鋼板5における長さ方向に直交する幅寸法は、第1鋼材ユニット20Aの幅寸法と等しい。また、拘束鋼板5には、当該拘束鋼板5を部材厚さ方向に貫通する円形断面を有する開口部50が形成されている。また、
図19に示すように、拘束鋼板5に開口部50は、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段目の各第1ジベル孔320Aに対応する位置に配置されている。なお、拘束鋼板5における開口部50の形状、大きさ、位置、数、範囲等は変更することができる。また、変形例1における鉄骨コンクリート構造体1においても、第1鋼材ユニット20A及び第2鋼材ユニット20Bを含んで鉄骨3が構成されている。なお、第2鋼材ユニット20Bについては実施形態2と同一構造であり、
図13及び
図14で説明した通りである。
【0074】
図20は、実施形態2の変形例1に係る鉄骨コンクリート構造体1の幅方向(配力方向)に沿った断面を概略的に示す図である。
図20に示す符号300は、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部である。第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部は、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32Aと、第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bが、これらの周辺コンクリート2Aによって一体に接合されることで形成された継手領域である。
図20に示すように、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300は、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの接合端部と、第1ベース鋼板40Aの端部領域と、拘束鋼板5によって囲まれた領域に位置つけられている。
【0075】
実施形態2の変形例1に係る鉄骨コンクリート構造体1の鉄骨継手構造によれば、上記のように第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300の上部に拘束鋼板5が配置されている。そのため、継手部300におけるコンクリート(
図20に符号2Aにて示す)を第1主鋼材30A、第2主鋼材30B及び第1ベース鋼板40Aに加えて拘束鋼板5によっても拘束することができる。つまり、継手部300におけるコンクリート2Aを
四方から拘束することで、当該コンクリート2Aの拘束度を一層高めることができる。その結果、継手部300におけるコンクリート2Aにひび割れが起こりにくくなり、継手部300の強度をより一層増大させることができる。また、拘束鋼板5には開口部50が形成されているため、鉄骨コンクリート構造体1の構築時において、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300に対するコンクリート2Aの充填性も向上する。
【0076】
なお、本変形例においては、第1鋼材ユニット20Aにおける各第1主鋼材30Aの上面303Aに対して拘束鋼板5を溶接していたが、一部の第1主鋼材30Aに対してのみ拘束鋼板5を接合しても良い。また、本変形例において、拘束鋼板5を第1鋼材ユニット20Aに接合する態様を例に説明したが、第2鋼材ユニット20Bにおける端部領域に拘束鋼板5を設置しても良い。この場合、第2鋼材ユニット20Bの幅方向に沿って拘束鋼板5を延在させ、各第2主鋼材30Bにおける上面303B間に跨るように拘束鋼板5を接合しても良い。また、上記態様のように、第1鋼材ユニット20Aや第2鋼材ユニット20Bに予め拘束鋼板5を接合しておくのではなく、第1鋼材ユニット20Aや第2鋼材ユニット20Bをジベル位置決め完了状態とした後に、第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300に拘束鋼板5を設置しても良い。また、拘束鋼板5に形成される開口部50は、拘束鋼板5の長さ方向における一端から他端に至るまで延在するスリットであっても良い。
【0077】
<変形例2>
次に、実施形態2の変形例2について説明する。
図21は、実施形態2の変形例2に係る鉄骨コンクリート構造体1の鉄骨継手構造を示す図である。
図21に示す変形例2に係る鉄骨継手構造は、
図9で説明した補強鉄筋が第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの継手部300に設置される点を除いて
図20で説明した変形例1と同一である。
【0078】
本変形例においては、
図9で説明した補強鉄筋4Aが、第1主鋼材30Aにおける第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2主鋼材30Bにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける少なくとも一部のジベル孔320A,320B同士に跨って挿通された状態で設置され、継手部300におけるコンクリート2Aに埋没している。
図21に示す例では、補強鉄筋4Aが、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける2段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける2段目の第2ジベル孔320Bに跨るようにして、これらを貫通した状態でコンクリート2Aに埋め込まれている。
【0079】
更に、
図21に示すように、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける1段目の第1ジベル孔320Aと第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける1段目の第2ジベル孔320Bにも、それぞれ補強鉄筋4B, 4Cが配置されている。補強鉄筋4B, 4Cは、補強鉄筋4Aよりも短い。補強鉄筋4Bは、第1の孔あき鋼板ジベル32Aにおける1段目の第1ジベル孔320Aのみを貫通した状態でコンクリート2Aに埋め込まれている。また、補強鉄筋4Cは、第2の孔あき鋼板ジベル32Bにおける1段目の第2ジベル孔320Bのみを貫通した状態でコンクリート2Aに埋め込まれている。なお、本変形例においても、補強鉄筋4A~4Cの端部に係止部40(
図9を参照)が形成されていても良く、この係止部40をジベル孔の縁部に係止させても良い。
【0080】
ここで、拘束鋼板5における開口部50は、鉄骨コンクリート構造体1の構築時に補強鉄筋4Aを第1ジベル孔320Aと第2ジベル孔320Bとに挿通させる際、補強鉄筋4Aを拘束鋼板5の背面側に挿入するための作業用開口としても用いることができ、これによって作業性を向上させることができる。
【0081】
<実施形態3>
次に、実施形態3について説明する。上述までの実施形態及びその変形例においては、
第1主鋼材30A及び第2主鋼材30Bの端部領域(継手領域)において、第1の孔あき鋼板ジベル32A及び第2の孔あき鋼板ジベル32Bを上下方向に間隔をおいて対向配置する態様を説明したが、実施形態3では、第1主鋼材及び第2主鋼材の端部領域にそれぞれ剛接合された第1の孔あき鋼板ジベル及び第2の孔あき鋼板ジベルを横方向に間隔をおいて対向配置する態様を説明する。以下では、上述した実施形態1及び2と共通する部材について同一の参照符号を付すことで詳しい説明を省略する。
【0082】
図22は、実施形態3に係る第1鋼材ユニット20Cの上面図である。
図23は、
図22におけるF矢視図である。
図24は、実施形態3に係る第2鋼材ユニット20Dの上面図である。
図25は、
図24におけるG矢視図である。
【0083】
第1鋼材ユニット20Cは、複数の第1主鋼材30Cと、これらを保持する第1ベース鋼板40Aとを含んでいる。また、第2鋼材ユニット20Dは、複数の第2主鋼材30Dと、これらを保持する第2ベース鋼板40Bとを含んでいる。第1ベース鋼板40A及び第2ベース鋼板40Bは、実施形態2で説明した通りであり、第1ベース鋼板40A及び第2ベース鋼板40Bの「長手方向」及び「幅方向」は、第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dのそれぞれ「長手方向」及び「幅方向」に対応している。第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dの「上下方向(高さ方向)」は、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dにおける「上下方向(高さ方向)」に対応している。
【0084】
図22及び
図23に示すように、第1鋼材ユニット20Cにおける第1ベース鋼板40Aには、3枚の第1主鋼材30Cが第1ベース鋼板40Aの長手方向に沿って互い平行に設けられており、各第1主鋼材30Cが互いに対向して配置されている。第1主鋼材30Cは、第1主面301A、第2主面302A、上面303A、下面304A、第1端面305A、第2端面306Aによって外形が規定される平板形状を有する構造用鋼板である。また、各第1主鋼材30Cは、第1ベース鋼板40Aの表面403Aから垂直に立設しており、第1ベース鋼板40Aの幅方向に沿って一定の間隔毎に設けられている。ここで、各第1主鋼材30Cの長手方向の長さは、第1ベース鋼板40Aの長辺寸法に等しく、各第1主鋼材30Cにおける長手方向の端面が第1ベース鋼板40Aの端面402Aの位置に揃っている。また、本実施形態においても、各第1主鋼材30Cの両端部に第1の孔あき鋼板ジベル32Cが剛接合されている。また、第1ベース鋼板40Aに立設する第1主鋼材30Cの数、間隔、寸法等は特に限定されない。
【0085】
各第1主鋼材30Cの端部領域(継手領域)の各々には一対の第1の孔あき鋼板ジベル32Cが溶接等によって剛接合されている。一対の第1の孔あき鋼板ジベル32Cにおける一方は、第1主面301Aから側方に向かって立設しており、他方は第2主面302Aから側方に向かって立設している。言い換えると、第1の孔あき鋼板ジベル32Cは、第1主面301A及び第2主面302Aから第1鋼材ユニット20C(第1ベース鋼板40A)の幅方向に向かって突設されており、第1ベース鋼板40Aと平行に設けられている。
【0086】
図22及び
図23に示す例において、第1の孔あき鋼板ジベル32Cは、一対の長辺及び一対の短辺によって規定される矩形状の平面形状を有し、一の長辺が第1主鋼材30Cの第1主面301A又は第2主面302Aに沿って接続されている。また、第1の孔あき鋼板ジベル32Cは、4つのジベル孔320Aが長辺方向に沿って配列されている。但し、第1の孔あき鋼板ジベル32Cにおいて、第1ジベル孔320Aの数、形状、大きさ、配置パターンは特に限定されない。また、
図24に示すように、第1の孔あき鋼板ジベル32Cは、第1主鋼材30Cの上下方向における中央部近傍の位置(高さ)に設けられている。
【0087】
ここで、第1主鋼材30Cのうち、第1の孔あき鋼板ジベル32Cが設けられる端部領域(継手領域)を除く部位を「一般鋼材部307A」と呼ぶ。一般鋼材部307Aは、第1主鋼材30Cにおいて、各端部領域(継手領域)の内側に位置する部位ということができる。
図22及び
図23に示すように、第1主鋼材30Cの一般鋼材部307Aには、ずれ止め鋼材33Aが設けられている。一般鋼材部307Aにおけるずれ止め鋼材33Aの形状、数、配置パターン等は特に限定されないが、図示の例では、一般鋼材部307Aの長手方向に沿った一定間隔毎にずれ止め鋼材33Aが設けられている。また、図示の例では、ずれ止め鋼材33Aは、一般鋼材部307Aの上下方向に沿って(下端から上端にかけて)延設された平板状又は帯状の鋼材によって形成されている。例えば、ずれ止め鋼材33Aは、一般鋼材部307Aにおける第1主面301A及び第2主面302Aの両面に設けられている。図示の例では、一般鋼材部307Aにおける第1主面301A側と第2主面302A側のそれぞれ同じ位置にずれ止め鋼材33Aが溶接等によって接合されている。但し、ずれ止め鋼材33Aは、一般鋼材部307Aにおける片面のみに設けられていてもよい。
【0088】
更に、第1鋼材ユニット20Cにおける長手方向の各端部領域には、矩形状の拘束鋼板5が設置されている。拘束鋼板5は、第1主鋼材30Cの第1の孔あき鋼板ジベル32Cの上部を覆う大きさを有しており、例えば、各第1主鋼材30Cの上面303Aに跨って載置された状態で各第1主鋼材30Cの適所に対して溶接等によって接合されている。なお、
図22においては、拘束鋼板5における第1鋼材ユニット20Cの長手方向(第1主鋼材30Cの延在方向)に沿った長さ寸法は第1の孔あき鋼板ジベル32Cの長辺寸法と略等しく、第1の孔あき鋼板ジベル32Cの上方を拘束鋼板5が覆っている。また、拘束鋼板5における長さ方向に直交する幅寸法は、第1鋼材ユニット20Cの幅寸法と等しい。なお、
図22においては、拘束鋼板5にハッチングを付して図示すると共に、拘束鋼板5を透視してその下方に位置する第1の孔あき鋼板ジベル32C等の部材を図示している。符号51は拘束鋼板5の長辺、符号52は拘束鋼板5の短辺を示す。拘束鋼板5には、継手部にコンクリートを投入するための開口部が設けられていてもよい。また、第1ベース鋼板40Aのうち、長手方向における端部領域を拘束鋼板部41と呼ぶ。第1ベース鋼板40Aの拘束鋼板部41は、拘束鋼板5と対向配置される領域であり、第1の孔あき鋼板ジベル32Cの下方を覆っている。
【0089】
更に、
図22及び
図23に示すように、第1主鋼材30Cの第1端面305A、第2端面306Aには、端プレート(支圧鋼板)34Aが接合されている。本実施形態における端プレート34Aは、正方形又は矩形の平板鋼板であり、第1主鋼材30Cの第1端面305A、第2端面306Aに溶接等によって接合されている。端プレート34Aは、第1主鋼材30Cの長手方向に直交して配置されている。また、端プレート34Aには、コンクリート打設時におけるコンクリートの充填性を向上させるための開口部341が端プレート34Aを厚さ方向に貫通して設けられている。端プレート34Aにおける開口部341の形状、位置、大きさ等は特に限定されない。
図23に示す例では、端プレート34Aの中央近傍に円形状の開口部341が設けられている。
【0090】
次に、第2鋼材ユニット20Dの詳細について説明する。
図24及び
図25に示すように、第2ベース鋼板40Bに2枚の第2主鋼材30Dが第2ベース鋼板40Bの長手方向に沿って互い平行に設けられており、各第2主鋼材30Dが互いに対向して配置されている。第2主鋼材30Dは、第1主面301B、第2主面302B、上面303B、下面304B、第1端面305B、第2端面306Bによって外形が規定される平板形状を有する構造用鋼板である。各第2主鋼材30Dは、第2ベース鋼板40Bの表面403Bから垂直に立設しており、第2ベース鋼板40Bの幅方向に間隔をおいて配置されている。また、本実施形態において、第2主鋼材30Dの上下寸法(高さ寸法)は、第1主鋼材30Cの上下寸法と略等しい。但し、第2ベース鋼板40Bに立設する第2主鋼材30Dの数
、間隔、寸法等は特に限定されない。
【0091】
各第2主鋼材30Dの端部領域の各々には一対の第2の孔あき鋼板ジベル32Dが溶接等によって剛接合されている。一対の第2の孔あき鋼板ジベル32Dにおける一方は、第1主面301Bから側方に向かって立設しており、他方は第2主面302Bから側方に向かって立設している。言い換えると、第2の孔あき鋼板ジベル32Dは、第1主面301B及び第2主面302Bから第2鋼材ユニット20D(第2ベース鋼板40B)の幅方向に向かって突設されており、第2ベース鋼板40Bと平行に設けられている。
【0092】
図24及び
図25に示す例において、第2の孔あき鋼板ジベル32Dは、一対の長辺及び一対の短辺によって規定される矩形状の平面形状を有し、一の長辺が第2主鋼材30Dの第1主面301B又は第2主面302Bに沿って接続されている。また、第2の孔あき鋼板ジベル32Dは、4つの第2ジベル孔320Bが長辺方向に沿って配列されている。但し、第2の孔あき鋼板ジベル32Dにおいて、第2ジベル孔320Bの数、形状、大きさ、配置パターンは特に限定されない。また、
図25に示すように、第2の孔あき鋼板ジベル32Dは、第2主鋼材30Dの上下方向における中央部近傍の位置(高さ)に設けられている。
【0093】
ここで、第2主鋼材30Dのうち、第2の孔あき鋼板ジベル32Dが設けられる端部領域(継手領域)を除く部位を「一般鋼材部307B」と呼ぶ。一般鋼材部307Bは、第2主鋼材30Dにおいて、各端部領域(継手領域)の内側に位置する部位ということができる。
図24及び
図25に示すように、第2主鋼材30Dの一般鋼材部307Bには、ずれ止め鋼材33Bが設けられている。一般鋼材部307Bにおけるずれ止め鋼材33Bの形状、数、配置パターン等は特に限定されないが、図示の例では、一般鋼材部307Bの長手方向に沿った一定間隔毎にずれ止め鋼材33Bが設けられている。また、図示の例では、ずれ止め鋼材33Bは、一般鋼材部307Bの上下方向に沿って(下端から上端にかけて)延設された平板状又は帯状の鋼材によって形成されている。例えば、ずれ止め鋼材33は、一般鋼材部307Bにおける第1主面301B及び第2主面302Bの両面に設けられている。図示の例では、一般鋼材部307Bにおける第1主面301B側と第2主面302B側のそれぞれ同じ位置にずれ止め鋼材33Bが溶接等によって接合されている。但し、ずれ止め鋼材33Bは、一般鋼材部307Bにおける片面のみに設けられていてもよい。
【0094】
更に、
図24及び
図25に示すように、第2主鋼材30Dの第1端面305B、第2端面306Bには、端プレート(支圧鋼板)34Bが接合されている。本実施形態における端プレート34Bは、正方形又は矩形の平板鋼板であり、第2主鋼材30Dの第1端面305B、第2端面306Bに溶接等によって接合されている。端プレート34Bは、第2主鋼材30Dの長手方向に直交して配置されている。また、端プレート34Bにも、端プレート34Aと同様に開口部341が設けられている。
【0095】
なお、各第2主鋼材30Dの長手方向の長さは、第2ベース鋼板40Bの長辺寸法よりも長い。その結果、各第2主鋼材30Dの長手方向における両端部に形成された第2の孔あき鋼板ジベル32Dが、第2ベース鋼板40Bの端面402Bよりも外方に突出した状態で配置されている。
【0096】
なお、本実施形態においても、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの第1主面301A,301Bは、第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dが接合された際に、その幅方向において同一方向に配向する面として形成されている。同様に、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの第2主面302A,302Bは、第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dが接合された際に、その幅方向において同一方向に配向す
る面として形成されている。
【0097】
次に、実施形態3に係る第1鋼材ユニット20Bにおける第1主鋼材30C及び第2鋼材ユニット20Bにおける第2主鋼材30Dの継手方法について説明する。
【0098】
まず、
図26に示すように、互いに接合すべき第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dを、その接続端側の端面402A,402B同士が対向するように向き及び高さを揃える。ここでいう接続端とは、第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dにおける長手方向の端部のうち、相手方と接続される方の端部である。なお、
図26は、第1鋼材ユニット20C及び第2鋼材ユニット20Dの接続端側の一部を示している。上記のように、各第2主鋼材30Dの第2の孔あき鋼板ジベル32Dは、第2ベース鋼板40Bの長手方向において端面402Bよりも外方に突出している。すなわち、第2ベース鋼板40Bの端面402Bは、各第2主鋼材30Dの第2の孔あき鋼板ジベル32Dよりも内側に退避した位置に配置されている。これにより、各第2主鋼材30Dにおける第2の孔あき鋼板ジベル32Dを第1鋼材ユニット20Cの接合端領域内に挿入することができ、
図27に示したようなジベル位置決め完了状態に移行させることができる。なお、
図27において、継手部300の上部を覆う拘束鋼板5の図示は便宜上省略している。
【0099】
図28は、
図27のH―H矢視断面を概略的に示す図である。本実施形態においては、
図27及び
図28に示すように、第1鋼材ユニット20Cにおける第1主鋼材30Cの接合端部及び第2鋼材ユニット20Dにおける第2主鋼材30Dの接続端側を所定の継手位置に位置決めしたジベル位置決め完了状態において、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dが第1ベース鋼板40Aの幅方向に離間する主鋼材配置間隔が、第1の孔あき鋼板ジベル32C及び第2の孔あき鋼板ジベル32Dの幅寸法(短辺寸法)の合計よりも大きな寸法に設定されている。更に、第1の孔あき鋼板ジベル32C及び第2の孔あき鋼板ジベル32Dは、それぞれ第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの高さ中央部近傍に配置されている。これらによれば、継手部300において、第1の孔あき鋼板ジベル32C及び第2の孔あき鋼板ジベル32Dの高さが概ね一致し、且つ、横方向に間隔をおいて対向して配置される。
【0100】
上記したジベル位置決め完了状態から、次に、第1鋼材ユニット20Cにおける第1主鋼材30C及び第2鋼材ユニット20Dにおける第2主鋼材30Dを被覆するようにコンクリートを打設する。その際、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの端部領域だけでなく一般鋼材部307A,307Bもコンクリート中に埋没するようにコンクリートを打設する。その結果、コンクリートを介して第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dを一体構造とすることができる。ここで、
図29は、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの継手部300へのコンクリート2の打設が完了した状況を示す図である。継手部300において、横方向に並んで対向配置された第1の孔あき鋼板ジベル32C及び第2の孔あき鋼板ジベル32Dがコンクリート2に埋没した状態で当該コンクリート2を介して一体に接合されている。これにより、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dは、第1主鋼材30Cの端部領域に剛接合された第1の孔あき鋼板ジベル32Cと、第2主鋼材30Dの端部領域に剛接合された第2の孔あき鋼板ジベル32Dと、これらの間に介在するコンクリート2によって相互の応力伝達が可能となる。
【0101】
また、本実施形態における継手構造によれば、拘束鋼板5及び拘束鋼板部41が、継手部300における第1の孔あき鋼板ジベル32C及び第2の孔あき鋼板ジベル32Dの上方及び下方を覆うように設けられている。これによれば、継手部300に打設されたコンクリート2を所謂空き重ね継手として間隔をおいて配置された第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの端部領域によって側方から拘束することに加えて、拘束鋼板5及び拘束鋼板部41によって上下方向からもコンクリート2を拘束することができる。これにより、
継手部300のコンクリート2の割裂破壊をより一層好適に抑制できる。すなわち、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dに軸引張力が作用した際、当該軸引張力は第1の孔あき鋼板ジベル32C及び第2の孔あき鋼板ジベル32Dを介してコンクリート2に伝達される結果、コンクリート2にせん断力が発生する。これに対して、本継手構造によれば、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dだけでなく、拘束鋼板5及び拘束鋼板部41によっても上下からコンクリート2を拘束することができる。これによれば、継手部300に打設されたコンクリート2のせん断耐力を向上させることができ、ひいては継手耐力の更なる向上を図ることができる。
【0102】
更には、本実施形態においては、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの端面にそれぞれ端プレート34A,34Bが設けられている。そのため、継手部300に打設されたコンクリート2を端プレート34A,34Bによって端方向から拘束することができる。
図30は、コンクリート2の打設後における継手部300とその周辺を上面から眺めた図である。
図30において拘束鋼板5の図示を省略している。
図30に示すように、継手部300とその外側に位置する一般部310の境界部に沿って、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dにおける端プレート34A,34Bが配置される。これによれば、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dに応力が掛かった際に、端プレート34A,34Bによる支圧力Fbによって継手部300のコンクリート2が拘束されるため、継手部300のコンクリート2の割裂をより一層抑制でき、継手耐力の更なる向上を図ることができる。
【0103】
更に、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dの一般鋼材部307A,307Bには、ずれ止め鋼材33A,33Bが一定間隔で配置されている。これにより、一般部310におけるコンクリート2と一般鋼材部307A,307Bとの付着力を増大させることができ、第1主鋼材30C及び第2主鋼材30Dとコンクリート2との一体化を一段と図ることができる。
【0104】
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例を説明したが、本発明は、可能な限り実施形態及び変形例を組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
1・・・鉄骨コンクリート構造体
2・・・コンクリート
3・・・鉄骨
4A,4B,4C・・・補強鉄筋
5・・・拘束鋼板
20A・・・第1鋼材ユニット
20B・・・第2鋼材ユニット
30A・・・第1主鋼材
30B・・・第2主鋼材
32A・・・第1の孔あき鋼板ジベル
32B・・・第2の孔あき鋼板ジベル
40A・・・第1ベース鋼板
40B・・・第2ベース鋼板