(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019698
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】極小ナノ粒子の製造方法、極小ナノ粒子および極小ナノ粒子溶液
(51)【国際特許分類】
B22F 9/14 20060101AFI20220120BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20220120BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20220120BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220120BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220120BHJP
B82Y 35/00 20110101ALI20220120BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220120BHJP
【FI】
B22F9/14 Z
B01J19/08 J
B22F9/00 B
B22F1/00 K
B22F1/00 R
B82Y30/00
B82Y35/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118177
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2020123134
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(71)【出願人】
【識別番号】597029228
【氏名又は名称】京石産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真下 茂
(72)【発明者】
【氏名】依田 真一
(72)【発明者】
【氏名】田村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】土井 善夫
【テーマコード(参考)】
4G075
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA62
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4G075BB03
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4K018BB05
4K018BD04
4K018KA32
4K018KA42
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】触媒や医療用途などの分野で利用が期待される極小ナノ粒子および極小ナノ粒子溶液、ならびにそのような極小ナノ粒子を効率的に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】液体中の一対となる電極間に、ピーク電流が80A以上、100A以上もしくは125A以上の繰り返し火花放電を行い、液体中に、電極および/または液体を材料とする平均粒径が2nm以下の極小ナノ粒子を形成することで極小ナノ粒子を含む極小ナノ粒子含有液を得る火花放電工程を有する極小ナノ粒子の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の一対となる電極間に
ピーク電流が80A以上の繰り返し火花放電を行い、
前記液体中に、電極および/または液体を材料とする平均粒径が2.0nm以下の極小ナノ粒子を形成することで前記極小ナノ粒子を含む極小ナノ粒子含有液を得る火花放電工程を有する
極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
液体中の一対となる電極間に
ピーク電流が100A以上の繰り返し火花放電を行い、
前記液体中に、電極および/または液体を材料とする平均粒径が2.0nm以下の極小ナノ粒子を形成することで前記極小ナノ粒子を含む極小ナノ粒子含有液を得る火花放電工程を有する
極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
液体中の一対となる電極間に
ピーク電流が125A以上の繰り返し火花放電を行い、
前記液体中に、電極および/または液体を材料とする平均粒径が2.0nm以下の極小ナノ粒子を形成することで前記極小ナノ粒子を含む極小ナノ粒子含有液を得る火花放電工程を有する
極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
放電条件が、矩形波状の電圧を周期的に印加するものである請求項1~3のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記電極が、金属、半金属、半導体、単体元素、合金、および化合物からなる群から選択されるいずれかを含む請求項1~4のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記火花放電の電極間の電流の立ち上がりおよび立ち下がりの時間が20μs以下である請求項1~5のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
放電条件が、電圧の立ち上がりおよび電圧の立ち下がりが1μs以下であり、かつ10μs以上200μs以下の時間幅の条件で矩形波状に電圧を周期的に印加するものである請求項1~3のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子含有液を、遠心分離した上澄み液を回収する遠心分離工程を有する請求項1~7のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記液体が、水、アルコール、トルエン、キシレン、アンモニア水溶液、イオウ、および四塩化炭素からなる群から選択されるいずれかを含む請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記電極が、いずれも金であり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が0.6nm未満である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記電極が、いずれもパラジウムであり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が1.7nm以下である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記電極が、いずれも白金であり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が1.4nm以下である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記電極が、貴金属単体であり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記電極が、卑金属単体であり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記電極が、合金であり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記電極が、化合物であり、前記極小ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である請求項1~9のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
前記極小ナノ粒子の平均粒径が1.5nm以下である請求項13~16のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
動的光散乱法により測定される平均粒径が0.6nm未満である、金を含む極小ナノ粒子。
【請求項19】
動的光散乱法により測定される平均粒径が1.4nm以下である、パラジウムを含む極小ナノ粒子。
【請求項20】
動的光散乱法により測定される平均粒径が1.7nm以下である、パラジウムを含む極小ナノ粒子。
【請求項21】
動的光散乱法により測定される平均粒径が1.4nm以下である、白金を含む極小ナノ粒子。
【請求項22】
動的光散乱法により測定される平均粒径が2.0nm以下であり、金属、半金属、および半導体および液体材料からなる群から選択されるいずれかを含む極小ナノ粒子。
【請求項23】
前記極小ナノ粒子の平均粒径が1.5nm以下である請求項20に記載の極小ナノ粒子。
【請求項24】
前記金属が、貴金属である請求項22または請求項23に記載の極小ナノ粒子。
【請求項25】
前記金属が、卑金属である請求項22または請求項23に記載の極小ナノ粒子。
【請求項26】
前記金属が、合金である請求項22または請求項23に記載の極小ナノ粒子。
【請求項27】
前記金属が、化合物である請求項22または請求項23に記載の極小ナノ粒子。
【請求項28】
請求項16~25のいずれかに記載の極小ナノ粒子が溶媒中に分散した極小ナノ粒子溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中繰り返し火花放電(スパーク放電)により形成された極小ナノ粒子の製造方法、ならびにその製造方法によって製造された極小ナノ粒子および極小ナノ粒子溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や半金属、半導体、化合物のナノ粒子は、触媒、磁性材料、電池材料、光電材料、半導体材料、医療材料、薬品材料、健康食品として、環境、IT、印刷、医療などさまざまな分野で産業化が進められている材料である。ナノ粒子は、バルク体、粉体に比べて、表面積、反応性、触媒特性、磁性などに優れている。
【0003】
ナノ粒子を作製する従来の技術としては、化学合成法、ゾルゲル、レーザー蒸発法、プラズマ照射法、アトマイズ法、射出、メカニカルミルイング、CVD、PVD、そしてプラズマ法などが用いられている。プラズマ法ではプラズマを発生する方法として、アーク放電、コロナ放電、グロー放電、ストリーマ放電、火花放電など放電現象を用いる方法やマイクロ波を用いるものがあり、また、線爆発法もそれに入る。ここではこの中で液体中の繰り返しの火花放電を用いる。しかし、これまでの方法では、ナノ粒子が凝集し易い欠点があった。また、サイズも化学合成法以外は大きい。この問題に対しては、例えば、特許文献1,2に記載されているような液中のグロー放電を用いることが考えられる。また、本発明者らは、液中火花放電を利用するナノ粒子の製造について、非特許文献1~5などを開示している。
【0004】
例えば、金属ナノ粒子である金ナノ粒子は古くからステンドガラスなどの染色材料として、最近では透過型電顕などの生体染色剤として用いられている。また、医療関係ではDNAセンサー、in vivoガン研究、ナノ毒性学、細胞内プローブ、光ピンセット、DNA解析などに金ナノ粒子などが用いられている。生体との親和性を利用してバイセンシング、生体親和性の高い高分子を被覆してジーンデリバリーとして用いられている。がん治療や検査用など医療用のナノ粒子は細胞間や細胞内部を通過することが求められたり、また、DNAとインキューベートさせたりするために、よりサイズの小さいものが求められる。
【0005】
白金やパラジウム、銀、銅のナノ粒子は抗菌材料として医療、健康食品、化粧品に広く使われている。白金は抗がん剤として使われている。白金、パラジウムとも厚生労働省により食品添加物としての安全性が認可されている。
【0006】
白金(Pt)やロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などで粒径の小さなナノ粒子の触媒の開発は環境、資源、エネルギーなど産業基盤に関わる重要課題の一つである。特に、半導体製造、排ガス触媒、燃料電池触媒では高性能な貴金属触媒の開発がその希少性、重要性から喫緊の課題となっている。また、白金は水の電気分解の触媒につかわれている。これの課題には粒径の小さなナノ粒子の創成が不可欠である。
【0007】
ここで扱うナノ粒子が分散した液体は分散質コロイドと呼ばれる。
【0008】
一般に、分散質コロイド粒子は、表面張力と同義の、分子間力の総和にあたる粒子間ファンデルワールス力引力を普遍的に有する。一方、分散質粒子の表面には組成と溶媒の極性差による電位差が存在し、その表面電位と逆符号の対イオンによる拡散電気二重層が形成される。同種の粒子には同種の対イオン二重層を有するため、粒子が接近すると二重層が重なり合い、イオン拡散に由来するエントロピー効果によって浸透圧斥力が生じ、粒子の凝集が妨げられ分散系は安定化する。なお、水を分散媒とする分散コロイドの区分で、電解質の投入により沈殿しやすいものを疎水コロイド、沈殿しにくいものを親水コロイドと呼び分ける場合がある。親水コロイドの場合、疎水コロイド同様に表面電荷を持つとともに、水和(溶媒和)により多数の水分子が配位しており、その立体斥力によってさらに強く反発し安定化している。
【0009】
金コロイドは金ナノ粒子が、流体中に分散しているコロイドである。色は液の状態によっても変わるが、10nm程度の微粒子の場合は概ね赤であり、粒径が小さくなると薄黄色、大きくなると紫~薄青、100nmを超えると濁った黄色となる。金コロイドは光学的、電気的に特徴があり、電子顕微鏡、電子工学、ナノテクノロジー、材料科学などに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-167335号公報
【特許文献2】特開2019-094541号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Homogeneously alloyed nanoparticles of immiscible Ag-Cu with ultrahigh antibacterial activity”, L. Yang, L. Chen, Y.C. Chen, L. Kang, J. Yu, Y. Wang, C. Lu, T. Mashimo, A. Yoshiasa, C.H. Lin, Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 180, 466-472 (2019)
【非特許文献2】“Synthesis of Pd-Fe System Alloy Nanoparticles by Pulsed Plasma in Liquid”, S. Tamura , T. Mashimo, K. Yamamoto, Z. Kelgenbaeva , W. Ma, X. Kang, M. Koinuma, H. Isobe and A. Yoshiasa, Nanomaterials 8, 1068 (2019)
【非特許文献3】“Sn and SnO2 nanoparticles by pulsed plasma in liquid: Synthesis, characterization and applications”, Z. Kelgenbaeva, E. Omurzak, H. Ihara, C. Iwamoto, S. Sulaimankulova, T. Mashimo, Phys. Status Solidi A, 1-7 (2015) / DOI 10.1002/pssa.201532502
【非特許文献4】“Onion-like carbon-encapsulated Co, Ni, and Fe magnetic nanoparticles with low cytotoxicity synthesized by a pulsed plasma in a liquid”, Z. Abdullaeva, E. Omurzak, C. Iwamoto, L. Chen, T. Mashimo, Carbon, 550,1776-1785 (2012)
【非特許文献5】“Synthesis method of nanomaterials by pulsed plasma in liquid”, E. Omurzak uul, J. Jasnakunov, N. Mairykava, A. Abdykerimova, A. Maatkasynov, S. Sulaaimankulov, M. Matsuda, M. Nishida, H. Ihara, T. Mashimo, J. Nanosci. Nanotechnol., 7, 3157-3159 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
触媒分野において、白金(Pt)やロジウム(Rd)、パラジウム(Pd)などの高性能触媒は、環境、資源、エネルギーなど産業基盤に関わり重要である。特に、排ガス触媒、燃料電池触媒では高性能な貴金属触媒の開発がその希少性、重要性から喫緊の課題となっており、この課題に対して本発明のナノ粒子は有用である。触媒においては粒径が小さいほど表面積が増加し、触媒特性も高いと言われている。
【0013】
白金やパラジウム、銀、銅のナノ粒子などは抗菌材料、として医療、健康食品、化粧品成分として広く使われている。人に対して抗菌材料が使われる場合、粒径の小さなナノ粒子が求められている。
【0014】
医療関係ではDNAセンサー、in vivoガン研究、ナノ毒性学、細胞内プローブ、光ピンセット、DNA解析などに金ナノ粒子などが用いられている。生体との親和性を利用してバイセンシング、生体親和性の高い高分子を被覆してジーンデリバリーとして用いられている。がん治療や検査用など医療用のナノ粒子は細胞間や細胞内部を通過することが求められたり、また、DNAとインキューベートさせたりするために、よりサイズの小さいものが求められる。
【0015】
ナノ粒子は触媒としても用いられ、サイズが小さいほど表面積が大きくなり触媒の効果が上がるためよりサイズの小さなものが求められる。例えば、半導体のメッキ作業にPdナノ粒子などが使われている。特に、IC、LSI半導体に用いる触媒は集積回路を構成する諸素子間に入り込み触媒特性を発揮する必要がある。この素子間距離は現在10nm程度で、IC、LSI半導体の性能を向上させるために、これよりも小さい2nm以下程度のパラジウムナノ粒子が求められている。
【0016】
また、強磁性ナノ粒子は電磁作用による発熱効果を利用したガン治療に用いられる。これには、Fe、Co、Niなどが用いられる。もしこれまでよりも小さなナノ粒子が得られれば細胞内に容易に侵入できるので効果が大きいと考えられる。
【0017】
このように触媒用や医療用、健康食品用の金属のナノ粒子は、より小さなナノ粒子の製造が求められている。このために化学的な還元法などが用いられているが、その粒子の大きさに限界がある。また、ナノ粒子ではよく分散した均一組成・均一粒子サイズのナノ粒子が求められるが、アーク放電法、蒸着法(CVD、PVD)、還元法などでは粒径が大きな凝集体が生成し、その抑制が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0019】
<A1> 液体中の一対となる電極間に、ピーク電流が80A以上、100A以上もしくは125A以上の繰り返し火花放電を行い、前記液体中に、電極および/または液体を材料とする平均粒径が2nm以下のナノ粒子を形成することで前記ナノ粒子を含むナノ粒子含有液を得る火花放電工程を有する極小ナノ粒子の製造方法。
<A2> 放電条件が、矩形波状の電圧を周期的に印加するものである<A1>に記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A3> 前記電極が、金属、半金属、半導体、単体元素、合金、および化合物からなる群から選択されるいずれかを含む<A1>または<A2>に記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A4> 前記火花放電の電極間の電流の立ち上がりおよび立ち下がりの時間が20μs以下である<A1>~<A3>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A5> 放電条件が、電圧の立ち上がりおよび電圧の立ち下がりが1μs以下であり、かつ10μs以上200μs以下の時間幅の条件で矩形波状に電圧を周期的に印加するものである<A1>に記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A6> 前記ナノ粒子含有液を、遠心分離した上澄み液を回収する遠心分離工程を有する<A1>~<A5>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A7> 前記液体が、水、アルコール、トルエン、キシレン、アンモニア水溶液、イオウ、および四塩化炭素からなる群から選択されるいずれかを含む<A1>~<A6>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A8> 前記電極が、いずれも金であり、前記ナノ粒子の平均粒径が0.6nm未満である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A9> 前記電極が、いずれもパラジウムであり、前記ナノ粒子の平均粒径が1.7nm以下である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A10> 前記電極が、いずれも白金であり、前記ナノ粒子の平均粒径が1.4nm以下である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A11> 前記電極が、貴金属単体であり、前記ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A12> 前記電極が、卑金属単体であり、前記ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A13> 前記電極が、合金であり、前記ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A14> 前記電極が、化合物であり、前記ナノ粒子の平均粒径が2.0nm以下である<A1>~<A7>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
<A15> 前記ナノ粒子の平均粒径が1.5nm以下である<A9>~<A14>のいずれかに記載の極小ナノ粒子の製造方法。
【0020】
<B1> 動的光散乱法により測定される平均粒径が0.6nm未満である、金を含む極小ナノ粒子。
<B2> 動的光散乱法により測定される平均粒径が1.4nm以下である、パラジウムを含む極小ナノ粒子。
<B3> 動的光散乱法により測定される平均粒径が1.7nm以下である、パラジウムを含む極小ナノ粒子。
<B4> 動的光散乱法により測定される平均粒径が1.4nm以下である、白金を含む極小ナノ粒子。
<B5> 動的光散乱法により測定される平均粒径が2.0nm以下であり、金属、半金属、および半導体からなる群から選択されるいずれかを含む極小ナノ粒子。
<B6> 前記極小ナノ粒子の平均粒径が1.5nm以下である<B5>に記載の極小ナノ粒子。
<B7> 前記金属が、貴金属、卑金属、合金、または化合物である<B5>または<B6>に記載の極小ナノ粒子。
<B8> <B1>~<B7>のいずれかに記載のナノ粒子が溶媒中に分散した極小ナノ粒子溶液。
【0021】
[火花放電とは]
火花放電は英語でスパーク放電といい、電圧がある限界をこえると、電極間に火花が観察される現象で、不連続な過渡的現象の場合を指す。電極間に印加する電圧を上げると、電極間に存在する分子が高電圧によって加速された電子と衝突して電離し(α作用と呼ぶ)、また、電離によって生成された正イオンが負極に衝突する際に起こる二次電子放出により負極より電子が電極間の空間に供給される(γ作用と呼ぶ)ようになる。これらの二つの作用により生成される荷電粒子の量が、両電極あるいは周囲の空間へと失われる量よりも多いと、電極間に流れる荷電粒子の量はなだれ的に増加し、電極間には大電流が流れるようになることで起こる。
【0022】
ここで、立ち上がりまたは立ち下がり時間とは電流がピークの10%から90%まで上昇する、または、電流がピークの90%から10%まで降下するにかかるそれぞれの時間である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、各種用途で優れた物性を示す極小ナノ粒子が効率的に製造される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るナノ粒子の製造方法に用いられるナノ粒子製造装置の概略構成の一例を表す図である。
【
図3】電源(2)による電圧波形例を示す図である。
【
図4A】パラジウム電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図4B】パラジウム電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図4C】パラジウム電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図4D】パラジウム電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図4E】パラジウム電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図5A】パラジウムナノ粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図5B】パラジウムナノ粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図5C】パラジウムナノ粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図5D】パラジウムナノ粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図6A】FE-TEMによるパラジウムナノ粒子の観察結果である。
【
図6B】FE-TEMによるパラジウムナノ粒子の観察結果である。
【
図6C】FE-TEMによるパラジウムナノ粒子の観察結果である。
【
図6D】FE-TEMによるパラジウムナノ粒子の観察結果である。
【
図6E】FE-TEMによるパラジウムナノ粒子の観察結果である。
【
図7A】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7B】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7C】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7D】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7E】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7F】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7G】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図7H】パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図8A】金電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図8B】金電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図8C】金電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図8D】金電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図9A】金ナノ粒子の粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図9B】金ナノ粒子の粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図9C】金ナノ粒子の粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図9D】金ナノ粒子の粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
【
図10A】FE-TEMによる金ナノ粒子の観察結果である。
【
図10B】FE-TEMによる金ナノ粒子の観察結果である。
【
図10C】FE-TEMによる金ナノ粒子の観察結果である。
【
図11A】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11B】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11C】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11D】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11E】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11F】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11G】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図11H】金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図12A】白金電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図12B】白金電極を用いた場合の電流波形の例を示す図である。
【
図13A】FE-TEMによる白金ナノ粒子の観察結果である。
【
図13B】FE-TEMによる白金ナノ粒子の観察結果である。
【
図14A】白金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【
図14B】白金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、図面において「~」という表現を用いる場合、その前の数値を含み、その後の数値を含まない表現として用いる。また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0026】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、液体中の一対となる金属、半金属、半導体、単体元素、合金、および化合物からなる群から選択されるいずれかの電極間に、ピーク電流が80A以上、好ましくは、100A以上もしくは125A以上の放電条件で液中繰り返し火花放電を行い、前記火花放電により、前記液体中に、金属、半金属、半導体、単体元素、合金、および化合物からなる群から選択されるいずれかを含むナノ粒子を形成することで前記ナノ粒子を含むナノ粒子含有液を得る火花放電工程を有する。本発明の製造方法によれば、従来よりも微小なナノ粒子(2.0nm以下の極小ナノ粒子)を効率よく製造することができる。
【0027】
[本発明のナノ粒子]
本発明のナノ粒子は、動的光散乱法により測定される平均粒径が0.1nm以上、2.0nm以下であり、金属、半金属、半導体、単体元素、合金、および化合物からなる群から選択されるいずれかを含む。
【0028】
本発明のナノ粒子は、従来のナノ粒子よりも粒径が小さいものが効率よく得られたもので、表面積、反応性、触媒特性、磁性などが飛躍的に向上することが期待され、これまでにない用途の染料、触媒や医療用、薬品材料、健康食品、磁性材料、電池材料、光電材料、半導体材料、量子ドットなどに用いることができる。
【0029】
本発明のナノ粒子は、本発明の製造方法により製造することができる。本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0030】
本発明のナノ粒子の製造方法は、液体に浸した2つの電極間で液中繰り返し火花放電を行うことにより極小のナノ粒子を形成する製造方法で、特殊な電源を使用するものである。この製造において、各電極には、目的のナノ粒子の単体金属や合金バルク金属などを用い、小さなサイズのナノ粒子を合成できる放電条件で放電させる。
【0031】
この放電条件について、火花放電の電極間の電流の立ち上がりおよび立ち下りの時間が、それぞれ10μs以下や、20μs以下と急峻なものとする。また、この放電条件について、160V以上250V以下程度のピーク電圧で、電圧の立ち上がりおよび立ち下がりが、それぞれ1μs以下で電流のピーク電流が80A以上、好ましくは、100A以上もしくは125A以上であるものを用いることが好ましい。また、10μs以上200μs以下の時間幅の条件で矩形波状に電圧を周期的に印加するものを用いることが好ましい。また、火花放電を50μs以上20ms以下の時間間隔で繰り返し発生させるものであることが好ましい。これにより、従来よりも小さいナノ粒子を効率よく合成することができることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0032】
I.<ナノ粒子の製造>
以下に、まず本発明の製造方法について、
図1等を参照して説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るナノ粒子の製造方法に用いられる製造装置10の概略構成の一例を表したものである。製造装置10は、例えば、電極101、102と、容器201に収容された液体202と、電源装置30を備えている。また、さらに振動装置40を備えている。なお、振動装置40は、省略することも可能である。
【0033】
[一対の電極101、102]
一対の電極101、102は、液体202中(液中)で繰り返し火花放電を起こすための電極となるものである。製造装置10において、例えば、電極101、102それぞれの一端が液体202に浸っており、電極101、102それぞれの他端が液体202に浸らず、大気中に配置されている。電極101、102のうち、液体202に浸っている方の端部は、所定の間隙を介して、例えば互いに対向するように配置されている。
【0034】
電極101、102は、例えば、棒状や針状、板状とすることができる。また、電極101、102の大きさは、互いに等しくなっていてもよいし、互いに異なっていてもよい。また、電極101、102が、互いに同じ材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。また、電極を大型化させる等して、放電面積を大きくするだけで、生産量を大きくすることができ、ナノ粒子の量産に向いている。放電面積は、装置構造や、電流の制御等を行うことができる範囲で特に制限なく大型化させることができる。
【0035】
[電極の素材]
電極101、102は、金属および/または半金属、半導体の電気伝導体材料が用いられたものである。これらの電極101、102は、双方同じものを用いてもよいし、互いに異なるものを用いてもよい。例えば、単独元素の粒子を得る場合、双方に単独元素の同じ電極を用いることが好ましい。また、合金や化合物を得る場合、双方に異なるものを用いてよい。合金や化合物を得る場合、双方に合金や化合物の同じ電極を用いてもよいし、双方に単独元素の電極を用いて液体202と反応させてもよい。
【0036】
[金属]
本発明において、金属には単体金属や合金を含む。ここでは、貴金属や卑金属などの実質的に単体金属元素からなるものや、実質的にこれらの金属元素からなる合金や、これらの金属元素に合金を形成するときに含まれる非金属元素などを含む合金を含めて金属とする。
【0037】
[貴金属]
本発明において、貴金属は化合物をつくりにくく希少性のある金属という条件を満たす金属、または標準水素電極と比較して高い正極電位をもつ金属と定義される。一般に、金 (Au)、銀 (Ag)、白金 (Pt)、パラジウム (Pd)、ロジウム (Rh)、イリジウム (Ir)、ルテニウム (Ru)、オスミウム (Os)の8つである。また、貴金属は、単体として産し、イオン化傾向が小さく、酸類などとは直接反応しにくく、空気中では酸化されにくい。本発明に用いる貴金属は、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および銅(Cu)からなる群から選択されるいずれかを含むものとすることができる。
【0038】
特に、貴金属を電極に用いると、双方に同種の貴金属を用いて、実質的にその電極に用いた貴金属の単体元素からなるナノ粒子を得やすい。例えば、金の電極を用いると金のナノ粒子を得ることができ、パラジウムを用いるとパラジウムのナノ粒子を得ることができ、白金を用いると白金のナノ粒子を得ることができる。
【0039】
特に貴金属元素材料(例えば、Au、Pt、Pd、Ru、RhまたはAg、Cu、など)のナノ粒子は触媒や医療用材料、薬品材料、健康食品として重要である。
【0040】
触媒分野において、白金(Pt)やロジウム(Rd)、パラジウム(Pd)などの高性能触媒は、環境、資源、エネルギーなど産業基盤に関わり重要である。特に、排ガス触媒、燃料電池触媒では高性能な貴金属触媒の開発がその希少性、重要性から喫緊の課題となっており、この課題に対して本発明のナノ粒子は有用である。
【0041】
排ガス触媒としてPt、Pd、Ruが燃料電池触媒としてPtやその合金が、水素、酸化反応でも貴金属単体が用いられる。また、PdはIC、LSI半導体の製造過程で触媒として使われている。
【0042】
触媒では粒子サイズが小さくなると表面積が大きくなり、反応性、触媒特性が著しく向上する。従って、粒径の小さなナノ粒子が有用である。
【0043】
[卑金属]
本発明において、卑金属は、イオン化傾向が水素より大きく(安定性が低い)、空気中で熱したりすると容易に酸化される金属であり、前述した貴金属を除く金属である。例えば、アルカリ金属(リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)など)や、アルカリ土類金属(カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)など)、マグネシウム族元素(ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)など)、アルミニウム族元素(アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In))、希土類元素(イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)など)、スズ族元素(チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、鉛(Pb)など)、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))、土酸元素(バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta))、クロム族元素(クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)など)、マンガン族元素(マンガン(Mn)、レニウム(Re))などである。
【0044】
[合金]
本発明において、合金は、二種以上の金属元素または金属元素と炭素、窒素、ケイ素等非金属元素との固溶体や金属間化合物である。これらの金属元素としては、前述した貴金属や卑金属などを用いることができる。
【0045】
[半金属]
半金属は、金属と非金属の中間の性質を示すものである。半金属は、グラファイトとなる炭素や、黒リンとなるリンも含む。また、半金属は、ホウ素や、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルやビスマス、ポロニウム、アスタシンなどを含む。これらの半金属に含まれる元素は、ナノ粒子の主たる構成元素となったり、合金や化合物、半導体を形成するときの構成元素となる。
【0046】
[半導体]
本発明において、半導体は、導体と絶縁体との中間の電気伝導率を持つ物質である。ケイ素、ゲルマニウム、セレン、化合物半導体などである。化合物半導体は、II-VI族半導体であるCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、CdS、ZnOなどや、III-V族半導体であるGaAs、InP、GaNなど、IV-VI族半導体であるPbS、PbSe、IV族化合物半導体であるSiC、SiGeなど、I-III-VI族半導体であるCuInSe2などカルコパイライト系半導体などがあげられる。半導体には、半金属の炭素などを含むものとしてもよい。
【0047】
[容器201]
容器201は、液体202を収容するものである。また、電極101、102付近の状態を初期状態に保ち反応条件を制御しやすいように、液体202の冷却を効率的に行うために、製造装置10は、液体202を撹拌したり、液体202に流れを起こしたりする機構を備えていてもよい。
【0048】
[液体202]
液体202は、一対の電極101、102を用いて液中火花放電を行うためのものであり、さらに、液中火花放電による生成物を一時的に貯蔵するためのものである。また、製造するナノ粒子の種類によってはナノ粒子の材料となる場合もある。液体202の量は、特に制限されるものではなく、一対の電極101、102の少なくとも一部が液体202中に存在できる程度の量であればよい。液体202の量は、後述の液中火花放電により液体202が飛散しない程度の量であればよく、また、液中火花放電による生成物の濃度によって液体202の拡散性が失われない程度の量であればよい。放電時の液体202の温度は、特に制限されるものではなく、使用する液体202の種類などに応じて適宜調整することができる。
【0049】
放電は、通常、室温~300℃の範囲で実施される。ただし、液体202の温度が高すぎる場合、液体202の蒸気圧が上がり、液体202が引火性の液体であるときには放電による引火の可能性がある。他方、液体202の温度が低すぎる場合、液体202の粘度が上がり、液中火花放電による生成物の拡散性が損なわれる可能性がある。従って、液体202を、これらを考慮した温度にしておくことが好ましい。温度の上限は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。温度の下限は、室温以上では十分に操作しやすいが、30℃以上や、40℃以上としてもよい。
【0050】
液体202は、特に限定されるものではなく、目的物の生成反応に影響を与えないものであれば、特に制限されない。液体202は、2種以上の化合物の混合物でもよい。液体202は、目的とするナノ粒子の組成等に応じて、選択することができる。例えば、電極に用いた材料からなるナノ粒子を得るために反応の場として存在して、その液体202を構成する元素がナノ粒子に取り組まれないものを選択することができる。または、合金や化合物のナノ粒子を得るために、火花放電等により電極由来の元素と適宜反応等して、合金や化合物を形成するための元素を含むものを用いることもできる。
【0051】
液体202は、水や、過酸化水素水、アンモニア水、油類、シリコーンオイル、イオン液体、四塩化炭素、ハロゲン溶液、溶融イオウ、溶融セレニウム、溶融テルル、飽和炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、エステル類、エーテル類などを用いることができる。
【0052】
例えば、液体202は、水、アルコール、トルエン、キシレン、アンモニア水溶液、イオウ、および四塩化炭素からなる群から選択することが好ましい。これらの液体を用いると、電極に用いた材料による純粋な単体元素のナノ粒子が合成されやすくなる場合がある。特に、液体と反応させたくない場合は、四塩化炭素やトルエンなどを用いることが望ましい。
【0053】
液体202は、以下のものなどを用いることができる。飽和炭化水素は、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタンなどを用いることができる。芳香族炭化水素は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどを用いることができる。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどを用いることができる。エステル類は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジメチルなどを用いることができる。エーテル類は、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどを用いることができる。
【0054】
液体202は、生成するナノ粒子の分散、引火、酸化性を考慮して、水、飽和炭化水素、芳香族炭化水素、またはアルコール類等を用いてもよい。例えば、メタノール、またはエタノールを用いることがより好ましい。また、高温下で合成を行ったり、引き続いてアニールを行う場合は、液体202として、高温で安定な油類、シリコーンオイル、または、イオン液体などを用いてもよい。
【0055】
液体202はナノ粒子を化合物としたり、ナノ粒子を修飾するために、構成元素を考慮して選択してもよい。例えば、液体202が、水のとき酸化物ナノ粒子を効率よく得たり、液体202が溶融イオウや硫黄を含むとき硫化物ナノ粒子を効率よく得たり、液体202が溶融したSe,Teなどカルコゲナイド元素を含む時カルコゲナイド化合物ナノ粒子を効率よく得たり、液体202がアルコール類のとき炭化物や炭素被膜型のナノ粒子を効率よく得ることができる場合がある。また、液体202が、飽和炭化水素や、芳香族炭化水素、アルコール、塩化酸素などハロゲン溶液、イオウのとき、炭素やハロゲン元素、硫黄などにより修飾したナノ粒子を効率よく得ることができる場合がある
【0056】
[ナノ粒子の組成]
本発明の方法では、電極101、102を構成する元素や、液体202を構成する元素単体を用いて、それらからなる、単独の金属、半金属、半導体や合金、化合物などのナノ粒子を合成できる。
【0057】
単体の金属を得るとき、反応性が低い金属元素を電極101、102に採用し液体202も反応しにくいものを用いて他の元素が反応しにくい条件とすることで、その単独金属の純度が高いナノ粒子をえることができる。
【0058】
また、合金を得るとき、電極101、102の組み合わせや、液体202と適宜反応させることで、任意の組成の合金を得ることができ、この合金は、他の製造条件では混ざりにくく製造しにくい、いわゆるインミッシブルの合金なども得ることができる。
【0059】
また、ナノ粒子に液体202に含まれる元素も用いて、合金のナノ粒子や、酸化物、窒化物、硫化物、カルコゲナイド化合物、炭化物、塩化物、ハロゲン化合物などの化合物のナノ粒子を得ることもできる。
【0060】
酸化物のナノ粒子を合成する場合は、液体202として、例えば、水や過酸化水素水などを用いる。窒化物のナノ粒子を合成する場合は、液体202として、例えば、アンモニア水などの窒素化合物を用いる。
【0061】
硫化物などカルコゲン化合物のナノ粒子を合成する場合は、液体202として、例えば、高温で液体状態の硫黄やセレンなどカルコゲン物質などを用いる。
【0062】
炭化物のナノ粒子や炭素被膜型ナノ粒子を合成する場合は、液体202として、例えば、アルコール類や炭化水素などを用いる。
【0063】
ハロゲン化合物のナノ粒子を合成する場合は、液体202として、例えば、臭素、シュウ酸、フッ酸、塩酸、ヨウ素、ハロゲン元素、またはハロゲン化合物などを用いる。また、合金等を得るために、液体202として、アルカリ元素化合物の塩、または、アルカリ元素化合物を含む酸もしくは塩などを用いることも考えられる。液体202として、アルカリ土類化合物の塩、または、アルカリ土類化合物を含む酸などを用いることも考えられる。
【0064】
本発明の製造方法では、実質的に電極に用いた元素からなるナノ粒子を作るだけでなく、ナノ粒子に、液体202に含まれる元素(例えば、酸素、窒素、硫黄、セレン、炭素、臭素、フッ素、塩素、または、ヨウ素)をドープしたり表面などに修飾したりすることもできる。また、Na、Mg、K、Caなどの、アルカリ金属やアルカリ土金属、他の金属元素も、適宜液体202に用いることで、ナノ粒子の表面などに修飾したりすることができる。
【0065】
本発明の製造方法では、実質的に電極に用いた元素からなるナノ粒子を作るだけでなく、ナノ粒子に、液体202に含まれる貴金属元素(例えば、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、銅など)をドープしたり表面などに修飾したりすることもできる。この場合、液体に適宜ハロゲン化合物などの溶液を用いてよい。
【0066】
また、本実施の形態において、液体202が、飽和炭化水素や、芳香族炭化水素、アルコール類などを用いるとき、ナノ粒子の表面を被覆する炭素被膜を形成することができる。ナノ粒子の表面を炭素被膜で被覆したとき、ナノ粒子が非毒性となり、生体適合性に優れたナノ粒子を形成することができる。従って、ナノ粒子の表面を炭素被膜で被覆したものが、医療分野(例えば、がん治療分野)での実用化が期待される。
【0067】
[電源装置30]
電源装置30は、製造装置10において、電流を供給し、電圧や電流を調整する装置である。電源装置30は、基本スパーク発生器と抵抗などを用いて設計される。基本発生器は従来の旧型と、新型があり、電圧の立ち上がりや電流値などが異なる。
【0068】
図2の電源(1)は、旧型の電源の回路図の例を示す概略図である。このパルス発生器にはサイリスタとコンデンサーなどからなる回路と、内部抵抗10Ω程度からなり、電流の立ち上がりが二段になったり、電流の立ち上り、立ち下がり時間が20μs以下、ピーク電流が5A~50A程度の矩形波の電流を出力するものとなる。この電源では立ち上りが長くなったり、多段になったりする。なお、この回路での電流は、時間平均で0.1から5Aの範囲などで使用される。
【0069】
図2の電源(2)は、本発明の製造方法に適した新型の電源の概略図である。
図3に電源(2)による電圧波形を示す。電源(2)において、矩形波を発生するパルス発生器は電圧は立ち上がり、立ち下がりが電源(1)より速い、0.5μs以下、幅が100μs間隔、ピーク電圧が160V以上250V程度以下、周波数が5kHzの電圧を出力できるものとすることができる。内部抵抗2Ω程度で、電極間に流れる電極間の電流の立ち上がり、立ち下がりが20μs以下、ピーク電流が80A~125A以上の電流を出力可能となる。50A以下では立ち上がり、立ち下がり時間は5μs以下である。
【0070】
この放電条件について、火花放電の電極間の電流の立ち上がりおよび立ち下りの時間が、それぞれ10μs以下や、20μs以下と急峻なものとする。また、この放電条件について、160V以上250V以下程度のピーク電圧で、電圧の立ち上がりおよび立ち下がりが、それぞれ1μs以下で電流のピーク電流が80A以上、好ましくは、100A以上もしくは125A以上であるものを用いることが好ましい。また、10μs以上200μs以下の時間幅の条件で矩形波状に電圧を周期的に印加するものを用いることが好ましい。また、火花放電を50μs以上20ms以下の時間間隔で繰り返し発生させるものであることが好ましい。これにより、従来よりも小さいナノ粒子を効率よく合成することができることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0071】
[火花放電]
本発明の製造方法では、2つの電極間で液中繰り返し火花放電を行う。これにより、瞬間的に電極材料が蒸発し、短時間のイオン化(プラズマ)状態になり、冷却の際に各元素が凝集し、そのまま常温などの製造しやすい条件でもナノ粒子が合成される。電極101、102間に高い電位差が生じると、端部同士の間に液中繰り返し火花放電が生じる。
【0072】
火花放電の周波数が5kHzのとき、放電の生じている領域の温度は、部分的に1000K~50000Kとなる。従って、溶融しにくい金属を融かしたり、気化、イオン化(プラズマ化)させたりすることができる。また、新型の電源の方が旧型の電源よりも電流が大きく、温度は極めて高くなる。
【0073】
また、液中繰り返し火花放電は、火花放電であることから、放電が間欠であり、放電の生じている領域がシャープで局地的である。従って、放電による高温高圧が狭い範囲で集中し、数時間の放電を続けても液体202の温度の上昇を抑制できる。
【0074】
そして、電極由来の元素がプラズマ化した時に、元素イオン同士が結合しやすくなる。その結果、短時間のプラズマ状態と、周囲の液体による急冷効果も加わって、ナノ粒子を合成することができる。この火花放電によって、電極101、102や液体202の組み合わせ等により、単体金属や、合金、化合物などのナノ粒子も合成できる。
【0075】
[電流と温度]
本発明の製造方法において、新型の電源(2)のピーク電流は旧型(1)の2倍以上、80A~125A以上になる。電気エネルギーは試料の抵抗が変わらないとすると電流の二乗に比例するので、新型では旧型の4倍以上のエネルギーが試料に発生することになる。それが全部熱エネルギー変換すると考えると温度エネルギーは比熱×温度であるので、比熱が変わらない場合、温度は4倍以上になる計算になる。しかしながら、プラズマでは温度が高くなると電子比熱が上昇するので、温度はそれより低くなるが、一方、一般にプラズマの抵抗率は温度の(3/2)乗に反比例するための電流はさらに大きくなり、逆に温度は高くなることも考えられる。いずれにしても、旧型の電源によるものに比べて少なくとも2倍以上になると考えられる。
【0076】
このような急激な温度上昇によって新型の電源を用いると旧型より極めて高い温度のプラズマを生成し、旧型の電源によるものより多数のイオンが生じる。そして、温度が高いほど周りの液体による冷却効果により多くの均一核生成を促して、旧型の電源によるものよりも激しい急冷速度により結晶成長を抑え、数多くの小さなクラスターが生成する。そして、温度が高いほど周りの液体による冷却によって多くの均一核生成を促し、激しい冷却効果によって結晶成長を抑え、格段に多い小さなクラスターが発生する。そのクラスターが急冷によりそのまま凍結されて、極小のナノ粒子が多量に得られるものと考えられる。
【0077】
[ピーク電流]
本発明の製造方法において、ピーク電流は80A以上、100A以上もしくは125A以上であることが好ましい。プラズマ温度をさらに上げると、多数のイオンを発生させ、急冷速度を極限まで上げることによって、金属の核生成数をさらに高めて、結晶成長を防ぎ、粒子のサイズをさらに小さくすることができる。ピーク電流は、旧型の電源などでは50A以下である。しかし、新型の電源を採用することにより、80A~125A以上になる。ただし、電極が接触したり溶着したりする場合は電流は小さくなる場合がある。また、電流値は電極の種類と個々の放電現象によるので、電流値は電圧とは比例するとは限らない。
【0078】
ピーク電流は、100A以上や、125A以上、150A以上としてもよい。また、ピーク電流の上限を特に定めなくてもよいが、立ち上がりおよび立ち下がり時間が長くなったり回路設計やその制御等の観点から、適宜、500A以下や、250A以下、200A以下としてもよい。
【0079】
なお、火花放電のピーク電流の幅や周波数、立ち上がりおよび立下り時間は、火花放電を行う電源装置30の電圧等に準じるものや、製造装置10における各種条件等によるものとすることができる。
【0080】
本発明のナノ粒子の製造方法は、液体に浸した2つの電極間で液中繰り返し火花放電を行うことによりナノ粒子を形成する製造方法である。各電極には、例えば、目的のナノ粒子の単体バルク金属を用い、電流が80A以上、好ましくは、100A以上もしくは125A以上の大電流で、これまでより小さなナノサイズ以下のナノ粒子を合成することができる。
【0081】
[振動装置40]
製造装置10は、振動装置40を有するものとしてもよい。振動装置40は、電極101、102に振動を与えるものである。電極20に振動を与えることで、電極20表面に生成される析出物の電極20表面での滞留をなくすことができ、放電を効率的に行うことができる。振動装置50は、電極20に定期的に振動を与えてもよいし、間欠的に振動を与えてもよい。振動は必ずしも与えなくてもよい。
【0082】
本発明の製造方法では、液中でナノ粒子が合成され、合成されたナノ粒子がブラウン粒子の場合、合成されたナノ粒子が液中に浮遊しやすいので、ナノ粒子の凝集を防ぐことができる。なお、合成されたナノ粒子は液中に沈殿することもあるが、この沈殿においてもナノ粒子の凝集は起こりにくい。ここで、凝集とは、ナノ粒子同士が互いにファンデルワールス力などで結合し合い、撹拌によって分離し難くなっていることを指す概念である。このように、本発明の製造方法は、ナノ粒子の凝集が生じにくく、ナノ粒子を液体202中に分散させた状態で使用することができる。また、凝集を防ぐために界面活性剤を使ってもよい。
【0083】
なお、上述の製造方法によって形成されたナノ粒子が液体202に分散された状態の溶液を、ナノ粒子の製品(ナノ粒子溶液)としてもよい。また、液体202中で沈降したナノ粒子を分離したものを、ナノ粒子の製品としてもよい。液体202中で小さなナノ粒子と大きなナノ粒子を分離させる方法としては、例えば、遠心分離工程が挙げられる。また、溶液中に浮遊するナノ粒子が自然に沈降し、容器30内に沈殿層が形成されたときに溶液に生じる上澄み液(溶液の上澄み液)を容器30から取り出し、取り出した上澄み液を、ナノ粒子の製品(ナノ粒子溶液)としてもよい。
【0084】
ここでナノ粒子が凝集し沈降しないで、分散している溶液は分散質コロイド粒子となっていると考えられる。一般に、分散質コロイド粒子は、表面張力と同義の、分子間力の総和にあたる粒子間ファンデルワールス力引力を普遍的に有する。一方、分散質粒子の表面には組成と溶媒の極性差による電位差が存在し、その表面電位と逆符号の対イオンによる拡散電気二重層が形成される。同種の粒子には同種の対イオン二重層を有するため、粒子が接近すると二重層が重なり合い、イオン拡散に由来するエントロピー効果によって浸透圧斥力が生じ、粒子の凝集が妨げられ分散系は安定化する。
【0085】
なお、水を分散媒とする分散コロイドの区分で、電解質の投入により沈殿しやすいものを疎水コロイド、沈殿しにくいものを親水コロイドと呼び分ける場合がある。親水コロイドの場合、疎水コロイド同様に表面電荷を持つとともに、水和(溶媒和)により多数の水分子が配位しており、その立体斥力によってさらに強く反発し安定化している。また、親水コロイドの中には疎水コロイドを取り囲んで凝析を防ぐものがあり、この様な状態のコロイドを保護コロイドと呼ぶ。保護コロイドは、表面にたんぱく質等が吸着し、表面電位が変化し安定化している場合もある。
【0086】
[界面活性剤]
液体中のナノ粒子は粒子同士凝集し、大きな粒子となり、ブラウン粒子でなくなって沈降、沈殿する傾向がある。界面活性剤は、分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質で両親媒性分子と呼ばれることも多い。ミセルやベシクル、ラメラ構造を形成することで、極性物質と非極性物質を均一に混合させる働きをする。また、表面張力を弱める作用を持つ。その結果、ナノ粒子を凝集させることなく液体中に分散させることができる。液体は水でも油でも有効である。
火花放電を用いたナノ粒子の合成ではなるべくナノ粒子を凝集させないように界面活性剤を溶液に加えて行ってもよい。
【0087】
[遠心分離工程]
本発明の製造方法は、ナノ粒子含有液を、遠心分離した上澄み液を回収する遠心分離工程を有することが好ましい。これは火花放電で得られたナノ粒子を含む液体を超遠心機にかけ、粒径の大きなナノ粒子を沈ませ、上澄み液を回収して粒径の小さなナノ粒子だけを選別して回収するものである。また、この工程によってナノ粒子が凝集して凝集体を作っていた場合、それを分散させる効果も期待できる。遠心分離工程には、例えば、工機ホールディングスの超遠心機CS150NXを用いることができる。ナノ粒子が分散した上澄み液は分散質コロイドと考えることができる。
【0088】
遠心分離により分離させる場合、本発明の製造方法により得られるナノ粒子が極めて小さいことからも、100kG(10万G)以上の相対遠心加速度となるものを用いることが好ましい。相対遠心加速度は200kG以上がより好ましく、400kG以上がより好ましく、600kG以上がより好ましい。また、遠心時間は加速度にもよるが、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がより好ましく、15分以上がさらに好ましい。遠心条件は、これらの相対遠心加速度と遠心時間の積などを考慮して適宜設定される。得たいナノ粒子の粒径の小さいものほど加速度が高い方が、時間は長い方が好ましい。相対遠心加速度の上限は定めなくてもよいが、2,000kG以下や1,000kG以下、800kG以下としてもよい。また遠心時間は、120分以下や、90分以下、60分以下、30分以下としてもよい。
【0089】
このように、本発明の製造方法は、電極101、102や液体202の組み合わせにより種々のナノ粒子を製造することができる。また、電流を所定の範囲とすることなどにより、従来よりも効率よく極小なナノ粒子を製造することができる。また、低電気エネルギーで、高真空や高圧電源を必要としない設備投資なども抑制できる製造方法である。また、設備を設計、管理しやすく、電極101、102や容器201の大きさなどにより大量生産なども行いやすく、本発明の製造方法は、高品質なナノ機能物質の大量製造方法に適している。
【0090】
[ナノ粒子]
本発明のナノ粒子は、動的光散乱法により測定される平均粒径が2.0nm以下であり、金属、金属化合物および半導体からなる群から選択されるいずれかを含む。
【0091】
本発明において、ナノ粒子は、ナノサイズからサブナノサイズの大きさの粒子である。本発明の製造方法で製造されたナノ粒子は、主に電極として用いた元素を含む粒子として形成されている。本発明におけるナノ粒子含有液は、本発明のナノ粒子を含む液である。例えば、本発明の製造方法によって形成されたナノ粒子が液体に分散された状態の分散液(溶液)である。
【0092】
本発明のナノ粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定する。動的光散乱法は、例えば、大塚電子株式会社の「粒径・分子量測定システム ELSZ-2000Sにより測定することができる。
【0093】
[TEM観察]
透過型電子顕微鏡観察(TEM観察)はフィリップスの高分解能電子顕微鏡(HR-TEM),F20を用いて行った。このTEM装置の分解能は使い方にもよるが、1nm程度である。
【0094】
[動的光散乱法]
動的光散乱法の光子相関法では、自己相関関数をキュムラント法で解析することで、自己相関関数の初期勾配(減衰定数Γ)を求める。これを解析すると、液体サンプル中の粒子の代表的なブラウン運動の速さ(拡散係数D)が求められ、これをアインシュタインストークスの式に代入することで、平均粒子径が得られる。標準偏差とは粒度分布から求めた、各ピークの標準偏差(広がり幅)である。上記で求めた各ピークの粒径と、棒グラフ1本1本の粒子径の差を求め、これを2乗し、さらに頻度を掛ける。この和を、各ピークが持つ頻度の和で割り平方根を取ると、各ピークの標準偏差が得られる。また、ガウス分布状の粒径分布で、粒径が最小の値をD0、ピーク値の値をD50、最大の値をD100、最小と最大の90%の値をD90と呼ぶ。また、粒径・分子量測定システム ELSZ-2000Sの粒径のカタログ上の測定範囲の最小限界は0.6nmである。大塚電子(株)によると、これは0.6nmまで値は保証するということで、それ未満の値が表示されれば平均粒径は0.6nm未満であることを示している。
【0095】
本発明のナノ粒子の平均粒径は、粒子の種類に応じて設定してもよいが、2.0nm以下とすることができ、好ましくは、1.7nm以下であり、1.5nm以下や、1.4nm以下、1.2nm以下としてもよい。さらには、構成する元素の種類等により、適宜、1.0nm以下や、0.8nm以下、0.7nm、0.6nm以下としてもよい。また、その平均粒径の下限は、それぞれのナノ粒子を構成する元素の種類や大きさ等に応じて適宜設定され、0.08nm以上や0.1nm以上、0.2nm以上などとされる場合もある。平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒子の数平均の平均粒径とすることができる。
【0096】
本発明のナノ粒子は、単分散であることが好ましい。ナノ粒子が単分散であることは、動的光散乱法により、粒径と個数分布とを軸とするグラフ化をしたとき、ピークが一つであることをいう。なおこのピークは最大のピークの個数分布よりも半分の個数を超えるものをピークとして扱う。
【0097】
本発明のナノ粒子は、粒径の偏差値が、小さいことが好ましい。本発明のナノ粒子は、このように平均粒径からのばらつきが極めて狭く、安定して粒径が小さいものを多量に含むものとして取り扱いやすい。偏差値は、粒径(nm)の標準偏差として、5以下や、3以下、1以下、0.7以下、0.5、0.2以下としてもよい。
【0098】
本発明のナノ粒子は、個数分布基準の90%粒径(D90)が、小さいことが好ましい。本発明のナノ粒子は、このように、実質的に極めて小さい微粒子のみからなるものとして得られ、粗大な粒子の存在確率が極めて少ないものとして取り扱いやすい。D90は、平均粒径の3倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましく、2.0倍以下がさらに好ましい。D90は、ナノ粒子の種類や平均粒径等に応じて、5.0nm以下や、4.0nm以下、3.0nm以下、2.0nm以下、1.5nm以下、1.0nm以下、0.8、0.6nm以下のように設定してもよい。
【0099】
動的光散乱法による粒径の計測では、ナノ粒子が凝縮して塊を作ってナノ粒子が分散していない場合、その集合体の大きさを計測する傾向がある。従ってその最小値がナノ粒子一個の値に近い値である。それに対し、TEM観察では、ナノ粒子一個一個の形と大きさを判別できる。従って、動的光散乱法による粒径がTEM観察によるナノ粒子の粒径と矛盾しないか、小さい場合はそれがナノ粒子一個の粒径と判断される。しかしながら、TEM観察の分解能は限界があり、本実験で用いたフィリップスの高分解能電子顕微鏡(HR-TEM),F20では粒径が2nm程度以下のものは正確な粒径の計測は難しい。しかしながら、本実験で用いた動的光散乱法の粒径・分子量測定システム ELSZ-2000S装置のカタログ上の粒径の測定範囲の最小限界は0.6nmである。フィリップスの高分解能電子顕微鏡(HR-TEM),F20の分解能は1nm程度で2nm以下の粒子は確認できるが、粒径を正確には決められないので、それ以下の粒径は動的光散乱法によるしかない。
【0100】
[ナノ粒子を構成する元素]
本発明のナノ粒子は、金属および/または半金属、半導体の元素を含む。これらの金属や半導体は、本発明の製造方法で説明した電極に用いられる材料に含まれる元素を少なくとも含むものである。また、電極由来の原則に加えて、適宜、液体由来のものを含むものとしてもよい。これらの電極や液体由来の元素を含むナノ粒子を構成する元素は、前述の本発明の製造方法において説明されたものに関する。
【0101】
本発明のナノ粒子は、構成する元素として、貴金属、卑金属、および合金からなる群から選択されるいずれかを含むものとすることができる。また、実質的に、貴金属、卑金属、および合金からなる群から選択されるいずれかからなるものとしてもよい。これらの貴金属や、卑金属、合金については、前述の本発明の製造方法において説明されたものに関する。また、同様に本発明のナノ粒子は、半導体の粒子としてもよい。
【0102】
触媒分野において、白金(Pt)やロシウム(Rh)、パラジウム(Pd)などの高性能触媒の開発は環境、資源、エネルギーなど産業基盤に関わる重要課題の一つである。特に、排ガス触媒、燃料電池触媒では高性能な貴金属触媒の開発がその希少性、重要性から喫緊の課題となっており、この課題には新しいナノ粒子の創成が不可欠である。排ガス触媒としてPt、Pd、Ruが燃料電池触媒としてPtやその合金が、水素、酸化反応でも貴金属単体が用いられる。また、PdはIC、LSI半導体の製造過程で触媒として使われてある。
【0103】
触媒では粒子サイズが小さくなると表面積が大きくなり、反応性、触媒特性が著しく向上する。従って、粒径の小さなナノ粒子の合成が重要な課題となっている。
【0104】
[金(Au)のナノ粒子]
本発明のナノ粒子は、構成する元素として実質的に金からなる金のナノ粒子とすることができる。金のナノ粒子は、動的光散乱法による平均粒径が、0.7nm以下のものが好ましい。より好ましくは、0.65nm以下、0.60nm以下、0.50nm以下としてもよい。なお、その下限は特に定めなくてもよく、金元素単独の大きさなどに基づいて設定してもよい。金のナノ粒子に関して、ウンデカゴールドの粒子径は約0.82nmとされている。本発明のナノ粒子は、このウンデカゴールドよりも小さい平均粒径のものとして提供され、ウンデカゴールドよりも反応性等に優れたものとすることができる。このナノ粒子が分散した上澄み液は分散質コロイドと考えることができる。
【0105】
[パラジウム(Pd)のナノ粒子]
本発明のパラジウムナノ粒子は、構成する元素として実質的にパラジウムからなるパラジウム(Pd)のナノ粒子とすることができる。Pdのナノ粒子は、動的光散乱法による平均粒径が、1.7nm以下のものが好ましい。より好ましくは、1.6nm以下や、1.5nm以下、1.4nm以下としてもよい。なお、その下限は特に定めなくてもよく、パラジウム元素単独の大きさや用途などに基づいて設定してもよい。例えばPdのナノ粒子の平均粒径の下限は、0.5nm以上や、0.8nm以上、1.0nm以上などとしてもよい。本発明のナノ粒子は、従来のPdのナノ粒子よりも小さい平均粒径のものとして提供され、反応性等に優れたものとすることができる。このナノ粒子が分散した上澄み液は分散質コロイドと考えることができる。
【0106】
[白金(Pt)のナノ粒子]
本発明のパラジウムナノ粒子は、構成する元素として実質的に白金からなる白金(Pt)のナノ粒子とすることができる。Ptのナノ粒子は、動的光散乱法による平均粒径が、1.7nm以下のものが好ましい。より好ましくは、1.6nm以下や、1.5nm以下、1.4nm以下としてもよい。なお、その下限は特に定めなくてもよく、白金元素単独の大きさや用途などに基づいて設定してもよい。例えばPdのナノ粒子の平均粒径の下限は、0.5nm以上や、0.8nm以上、1.0nm以上などとしてもよい。本発明のナノ粒子は、従来のPtのナノ粒子よりも小さい平均粒径のものとして提供され、反応性等に優れたものとすることができる。このナノ粒子が分散した上澄み液は分散質コロイドと考えることができる。
【0107】
量子ドットで、例えばCdSe量子ドットでは、粒径を約3nmから5nmにまで変えることによって青緑から赤まで発光(500-650nm)させることができる。一般に量子ドットの粒径は、合成に用いる有機金属化合物の熱分解反応の温度あるいは反応時間により制御することが可能である。また、量子ドットのバンドギャップは半導体の種類にも依存する。現在では、ZnSe,CdS,CdSe,CdSeTe,PbS,PbSe、Si、Cなどの半導体により可視から近赤外(400-2000nm)で発光する量子ドットを合成することができる。このように、より小さなサイズのナノ粒子の効率的な製造方法が求められている。本発明は、このようなナノ粒子を効率的に製造できる製造方法を提供する。この量子ドットのサイズを3nm以下にすることができれば紫外からの発光が可能になり、応用が飛躍的に広がることになる。
【0108】
[ナノ粒子の形態]
本発明のナノ粒子は、ナノ粒子として液中に分散させた状態で用いたり、ペースト状とするなど用途に応じた材料と組みあわせた混合組成物として提供される。
【0109】
[ナノ粒子の用途]
ナノ粒子は、バルク体、粉体に比べて、表面積、反応性、触媒特性、磁性などに優れている。このため、触媒、磁性材料、電池材料、半導体材料、ナノドット、光電材料、医療材料、薬品材料、健康食品、染料として、環境、IT、印刷、医療などさまざまな分野で用いることができる材料である。
【0110】
[実施例]
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
[実施例1]パラジウムナノ粒子の例
図1に示す製造装置に準じる構成で製造を行なった。液体として水を入れた200mLビーカーに、円柱状の単体元素であるパラジウムの電極(純度99.95%、直径3mm)2本を電極の先端間距離が、約0.5mmとなる配置で浸漬して、電極に振動を与えながら、パラジウム電極間に電源から供給される繰り返し電流によって火花放電を起こし、プラズマを繰り返し発生させ、パラジウムナノ粒子を合成した。なお、界面活性剤の有無の影響を試験する場合、界面活性剤として、花王社製「キュキュット」(登録商標)をビーカーの中の液体に一滴垂らして用いた。
【0112】
電源装置30は、
図2に示すようにパルス発生器と抵抗などを用いて設計される。パルス発生器は、従来公知の旧型(電源(1))と、これを改良した新型(電源(2))があり、前述のように、電圧、電流の立ち上がり、ピーク電流などが異なる。新型の電源装置30のパルス発生器は、
図3のように電圧は立ち上がりおよび立ち下がりが1μs以下、幅が100μs程度、ピーク電圧が160V以上250V以下程度、周波数が5kHzの矩形波電圧を出力できるものとすることができる。また、内部抵抗は、旧型は10Ω程度であったのに対し、新型は2Ω程度で、ピーク電流は旧型では50A以下であったのに対し、新型では80A~125A以上で、電流の幅は10μs~50μs程度である。
【0113】
図3は新型の電源(2)の発生機による電圧波形の測定例である。立ち上がり立ち下がりは0.5μs以下、間隔100μsで、周期5kHzの繰り返し矩形波が得られている。
【0114】
実験は電源(1)で発生器の設定電圧値を60V、100V、200Vとし、電源(2)で発生器の設定電圧値を15V、40Vとした。本明細書において、電源(1)や電源(2)の電圧として示した値は、電源(1)や電源(2)における設定電圧値であり、電源(1)や電源(2)の出力電圧の計測値ではない。製造を1時間で行うことでパラジウムナノ粒子は、乾燥重量で約0.5g得られる。以下の形状測定等については製造時間1時間程度で作成したものを用いた。
【0115】
【0116】
電源(1)では、立ち上がりが60V、100V、200Vとも2段階や1段階で15μs程度以下で、ピーク電流は50A以下である。また、電源(2)では15V、40Vで、10μs~20μs以下でピーク電流は80A~125A以上である。本明細書において、電源(1)や電源(2)の電流として示した値は、電源(1)や電源(2)の出力電流の計測値である。電流値は、カレントトランスフォーマー(Pearson Electronics(ピアソン)社製 モデル4100)によって計測される。間隔は基本的に100μsであるが、整形回路と放電特性によって、少し早くなったり、不規則になったりしている。ここで、電流値は電極の種類と個々の放電現象によるので、電流値は電圧とは比例するとは限らない。
【0117】
[光学的観察・写真]
図5(
図5A~
図5D)は、パラジウムナノ粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
図5A:電源(1)60V、
図5B:電源(1)100V、
図5C:電源(1)200V、左から0日目、1日目、2日目、3日目である。
図5D:電源(2)5V~40V、半年以上経過)
【0118】
電源(1)ではどの電圧でも日毎に徐々にナノ粒子が沈殿し3日目ではほとんどの粒子が沈んだ状態になっている、しかしながら、電圧が上がるごとにブラウン粒子の沈降が遅くなっている。これは電圧が高いほど浮遊している粒子の粒径が小さくなっているといえる(
図5A~
図5C)。電源(2)の15Vでは半年経過しても粒子の状態は、分散したまま、変わらず、浮遊している(
図5D)。これは、電源(2)で合成したパラジウムナノ粒子の粒径が(1)に比べて格段に小さいことを示唆している。このナノ粒子が分散した上澄み液は分散質コロイドと考えることができる。
【0119】
本発明の製造方法では、粒径の小さなナノ粒子を回収するために、実施例1で製造するナノ粒子含有液に遠心分離工程の処理を行った。遠心分離工程は工機ホールディングスの超遠心機CS150NXを用いた。この場合、遠心管は4ccのものを8個用いた。また、加速度は600kGで、10分行った。
【0120】
[TEM観察]
ナノ粒子の形態や大きさを直接見るためにTEM観察を行った。使用したTEMはFEI社のTecnai F20である。FE-TEMによるパラジウムナノ粒子の観察結果を
図6A~
図6Eに示す。結果を表1にまとめた。
【0121】
これらのピーク電流が50A以下の電源(1)による試料では
図6A-
図6Dに見られるように、粒径平均3nm以上で、2nm以下のものは得られなかったのに対し、ピーク電流が125A以上の電源(2)による試料では、
図6Eの右上と左下のTEM写真に見られるように、寸法は正確には確定できないが、粒径が2nm以下のナノ粒子が多数観察される(図中矢印)。なお、40Vの像における2nm以上のナノ結晶はTEMのピント合わせに用いたものである。ここで、ナノ粒子は回折格子の解析により、面心立方格子構造のパラジウムであることを確かめている。
【0122】
傾向としては電圧が高いほど凝集した試料の平均粒径は小さく、さらに、界面活性剤を使った方が平均粒径は小さい。これは投下エネルギーが高いほどより細かく微小化すると言える。また、界面活性剤が凝集を防いでいると言える。
【0123】
[動的光散乱法]
動的光散乱法による粒径測定には大塚電子社(株)のELSZ-2000を用いた。この装置はレーザー光線の散乱光を測定することによって、液体中のナノ粒子の粒径を見積もるものである。水中のパラジウムナノ粒子の平均粒径を動的光散乱法により測定した。パラジウム粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果を
図7(
図7A~
図7H)に示す。結果を表1にまとめた。
【0124】
[散乱強度分布]
図7A~
図7Fはピーク電流は50A以下の電源(1)を用いて得られた試料の動的光散乱法により粒径を測定した結果、
図7G~
図7Iはピーク電流が125A以上の電源(2)を用いて得られた試料の動的光散乱法により粒径を測定した結果である。電源(1)による遠心分離工程を行わない試料の粒子径(
図7A~
図7D)は、電源(2)によるもの(
図7F~
図7H)に比べて桁違いに大きく、TEM観察の結果では3nm~7nmの平均粒径のナノ粒子が観察されていることから、ナノ粒子が凝集して凝集体を作っているものと考えられる。しかしながら、同じく電源(1)による試料に対して遠心分離工程を行った試料の粒径(
図7E)では粒子は観察されなかった。これは電源(1)で得られたナノ粒子の凝集体が遠心分離工程で沈降してしまって、上澄みには存在せず、目的の極小ナノ粒子が存在しなかったことによると考えられる。一方、電源(2)による試料を遠心分離工程を行った試料について、信頼性を確保するために同じ試料で計測を3回行った。その結果、
図7F~
図7Hに見られるように平均粒径は結局、1.4、1.6、1.7nmの結果が得られた。従って、電源(1)では平均粒径3nm以上で2nm以下のナノ粒子は得られなかったのに対し、電源(2)では平均粒径が2nm以下の極小ナノ粒子が得られたものと判断される。これらの遠心処理工程で得られた試料の粒径はTEM観察によって平均粒径2nm以下の粒子が観察されており、1.4、1.6、1.7nmはナノ粒子の一個一個の粒径であるといえる。
【0125】
【0126】
表1は、Pdの粒径の測定結果のまとめである。表1中の※1では、電源(2)のFE-TEM観察では、粒径が2nm以下のナノ粒子が多数観察されたが、寸法は正確には確定することができなかった。動的光散乱方で平均粒径は1、4、1.6、1.7nmと計測された。
【0127】
表1に動的光散乱とFE-TEMによるパラジウムナノ粒子の粒径の結果をまとめた。光学的観察では、電源(1)によるナノ粒子は3日程度でほとんど沈殿するが、電源(2)によるナノ粒子は半年たっても沈殿せず浮遊した。これは電源(2)によるナノ粒子が(1)のよるものに比べて格段に小さいことを示している。
【0128】
TEM観察では電源(1)の試料の粒径が平均3nm~7nm程度のものが観察された。しかしながら、電源(2)による試料では小さいので寸法は確定できないが、平均粒径が2nm以下のナノ粒子が観察された。動的光散乱による測定結果は、電源(1)による試料の場合、遠心処理工程をしない場合は凝集体の粒径しか測れなかったが、電源(2)による試料を遠心処理工程したナノ粒子については個数分布の平均粒径は、3回の計測の結果、1.4nm~1.7nmであり、格段に小さいことがわかった。従って、電源(2)によって2nm以下のナノ粒子が得られたと判断された。
【0129】
この粒径の違いは、電極に流れる電流波形によると、旧型の電源(1)では、立ち上がりが60V、200Vとも2段階や1段階で20μs程度でピーク電流が50A以下である。また、新型の電源(2)では電流量が80A~125A以上であることが関係していると考えられる。一部前述したように、これはピーク電流値が新型の電源(2)では旧型の電源(1)と比べると2倍以上になって極めて高い温度上昇によって急激なプラズマの発生し、数多くのイオンを生成する。そして、温度が高いほど周りの液体による冷却によって多くの均一核生成を促し、激しい急冷効果によって結晶成長を抑え、格段に多い小さなクラスターが発生する。そのクラスターが急冷によりそのまま凍結されて、極小のナノ粒子が多量に得られたものと考えられる。
【0130】
これらの結論として、電圧の立ち上がり、立ち下がり時間が1μs以下、電源(2)を使い、ピーク電流の値が80A~125A以上、立ち上がりが10μs~20μs以下の繰り返し電流を電極に流すことで、粒径が2.0nm以下のナノ粒子を効率よく合成できることがわかった。この際、遠心分離工程は極小ナノ粒子だけを選別したり、凝集体を分散させる上で重要である。
【0131】
[実施例2]金ナノ粒子の例
実施例1のパラジウムの製造で用いたものと同様の装置を用いて金ナノ粒子の製造を行なった。水を入れた200mLビーカーに、円柱状の単体元素である金の電極(純度99.99%、直径3mm)2本を電極の先端間距離が約0.5mmとなる配置で浸漬して、電極に振動を与えながら、金電極間に電源から供給される繰り返し電流によって火花放電を起こし、プラズマを繰り返し発生させ、金ナノ粒子を合成した。電源装置30は、実施例1に準じるものである。
【0132】
電源(1)で発生器のピーク電圧を60V、100V、200Vで設定し、電源(2)で200Vで設定した。
【0133】
製造を1時間で行うことで金ナノ粒子は、乾燥重量で約2.1g得られる。以下の形状測定等については1時間程度で作成したものを用いた。
【0134】
図8A~
図8Dは、金電極を用いた場合の電流波形を示す図である。
図8A~
図8Cは、電源(1)による波形である。
図8Dは、電源(2)による波形である。電源(1)では、立ち上がりが60V、100V、200Vとも2段階や1段階で10μs~20μs程度以下で、ピーク電流は50A以下である。また、電源(2)では20μs以下でピーク電流は125A以上である。間隔は基本的に100μsであるが、整形回路と放電特性によって、少し早くなったり、不規則になったりしている。ここで、電流値は電極の種類と個々の放電現象によるので、電流値は電圧とは比例するとは限らない。
【0135】
[観察・写真]
図9A~
図9Dは、金ナノ粒子含有液を入れたガラス容器の写真である。
図9A:電源(1)60V、
図9B:電源(1)100V、
図9C:電源(1)200V、左から0日目、1日目、2日目、3日目である。
図9D:電源(2)200V、数ヶ月経過)
【0136】
傾向としては電圧が高いほど、長い時間ナノ粒子が浮遊した状態を保っている。つまり、電圧が高いほど沈降速度が遅く、浮遊している粒子の粒径が小さいと言える。
【0137】
電源(1)ではどの電圧でも日毎に徐々にナノ粒子が沈殿し3日目ではほとんどの粒子が沈んだ状態になっている、しかしながら、電圧が上がるごとにブラウン粒子の沈降が遅くなっている。これは電圧が高いほど浮遊している粒子の粒径が小さくなっているといえる(
図9A~
図9C)。電源(2)の15Vでは数ヶ月経過しても粒子の状態は、分散したまま、変わらず、浮遊している(
図9D)。これは、電源(2)で合成した金ナノ粒子の粒径が(1)に比べて格段に小さいことを示唆している。このナノ粒子が分散した上澄み液は分散質コロイドと考えることができる。
【0138】
本発明の製造方法では、粒径の小さなナノ粒子を回収するために、実施例2のナノ粒子含有液を、遠心分離工程を行った。遠心分離工程は工機ホールディングスの超遠心機CS150NXを用いた。この場合、遠心管は4ccのものを8個用いた。また、加速度は600kGで10分間行った。
【0139】
[TEM]
ナノ粒子の形態や大きさを直接見るためにTEM観察を行った。使用したTEMはFEI社のTecnai F20である。FE-TEMによる金ナノ粒子の観察結果を
図10A~
図10Cに示す。結果を表2にまとめた。
【0140】
これらのピーク電流が50A以下の電源(1)による試料では
図10A、
図10Bに見られるように、粒径平均3nm以上で、2nm以下のものは得られなかったのに対し、ピーク電流が125A以上の電源(2)による試料では、
図10Cの左下の画像に見られるように、2nm以下の粒子が観察されている。実際にTEMを操作している時はもっと小さな粒子もモニター上で肉眼で観察された。しかし、それらは小さすぎて、FE-TEMの撮像限界(1nm程度)を超えており、撮像時は記録することは難しかった。なお、200Vの像における2nm以上のナノ結晶はTEMのピント合わせに用いたものである。ここで、ナノ粒子は回折格子の解析により、面心立方格子構造の金であることを確かめている。
【0141】
傾向としては電圧が高いほど凝集した試料の平均粒径は小さく、さらに、界面活性剤を使った方が平均粒径は小さい。これは投下エネルギーが高いほどより細かく微小化すると言える。また、界面活性剤が凝集を防いでいると言える。
【0142】
[動的光散乱法]
動的光散乱法による粒径測定はパラジウムで用いたものと同様の装置を用いて行った。金ナノ粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果を
図11に示す。結果を表2にまとめた。
【0143】
[散乱強度分布]
図11A~
図11Eはピーク電流が50A以下の電源(1)を用いて得られた試料の動的光散乱法により粒径を測定した結果、
図6F~
図6Hはピーク電流が125A以上の電源(2)を用いて得られた試料の動的光散乱法により粒径を測定した結果である。電源(1)による遠心分離工程を行わない試料の粒径(
図11A~
図11D)は、電源(2)によるもの(
図11F~
図11H)に比べて
図11Dを除いて桁違いに大きく、TEM観察の結果では5nm程度以上の平均粒径のナノ粒子が観察されていることから、ナノ粒子が凝集して凝集体を作っているものと考えられる。しかしながら、同じく電源(1)による試料に対して遠心分離工程を行った試料の粒子径(
図6E)では平均粒径が10.6nmであった。これも少し凝集しているものと考えられる。一方、電源(2)による試料に対して遠心分離工程を行った試料に対して、信頼性を確保するために同じ試料で計測を3回行った。その結果、平均粒径は結局、全て0.2nmの結果が得られた。標準偏差0.1nm~0.5nm、90Dは0.6nmで、格段に小さいことが確認された。しかしながら、本装置のカタログ上の測定範囲の最小限界は0.6nmとされている。これは0.6nmまで値は保証するということで、それ以下の値が表示されれば平均粒径は0.6nm未満であることを示している。従って、平均粒径は0.6nm未満であると判定された。従って、電源(1)では平均粒径3nm以上で2nm以下のナノ粒子は得られなかったのに対し、電源(2)では平均粒径0.6nm未満の極小ナノ粒子が得られたものと判断される。これらの遠心処理工程で得られた試料の粒径はTEM観察によって平均粒径2nm以下の粒子が確認されており、0.6nm未満のナノ粒子の一個一個の粒径であるといえる。
【0144】
【0145】
表2は、金の粒径の測定結果のまとめである。表2中の※1では、電源(2)のFE-TEM観察では、粒径が2nm以下のナノ粒子が多数確認されたが、寸法は正確には確定することができなかった。動的光散乱方で平均粒径は0.6nm未満と計測された。
【0146】
表2に動的散乱光とFE-TEMによる金ナノ粒子の粒径の結果をまとめた。
光学的観察では、電源(1)によるナノ粒子は3日程度でほとんど沈殿するが、電源(2)によるナノ粒子は数ヶ月たっても沈殿せず浮遊した。これは電源(2)によるナノ粒子が(1)のよるものに比べて格段に小さいことを示している。
【0147】
TEM観察では電源(1)の試料の粒径が平均5nm程度のものが観察された。しかしながら、電源(2)による試料ではモニター上では2nm以下のナノ粒子を肉眼で確認することができたが、TEM装置の性能上、小さすぎて撮像は難しかった。動的光散乱による測定結果は、電源(1)による試料の場合、遠心処理工程をしない場合は凝集体の粒径しか測れなかったが、電源(2)による試料を遠心処理工程したナノ粒子については個数分布の平均粒径は、3回の計測の結果、0.6nm未満であり、格段に小さいことがわかった。従って、電源(2)によって0.6nm未満のナノ粒子が得られたと判断された。
【0148】
この粒径の違いは、電極に流れる電流波形によると、旧型の電源(1)では、立ち上がりが60V、200Vとも2段階や1段階で20μs程度でピーク電流が50A以下である。また、新型の電源(2)では電流量が80A~125A以上であることが関係していると考えられる。一部前述したように、これはピーク電流値が新型の電源(2)では旧型の電源(1)と比べると2倍以上になって極めて高い温度上昇によって急激なプラズマの発生し、多数のイオンを生成する。そして温度が高いほど周りの液体による冷却によって多数の均一核生成を促し、激しい急冷効果によって結晶成長を抑え、格段に多い小さなクラスターが発生する。そのクラスターが急冷によりそのまま凍結されて、極小のナノ粒子が多量に得られたものと考えられる。
【0149】
また、パラジウムでは電源(2)の40Vでは粒径は2nm以下程度であったが、金の200Vでは0.6nm未満を達成した。これはパラジウムで電圧が40V以上になると溶着などの影響が発生したことに対して、金では電源(2)の200Vでは電流が125A以上で150A近くに達し、プラズマ温度を上げ、急冷速度を極限まであげることによってプラズマ温度をさらに上げ、金属の核生成数を高めてさらに粒子のサイズを小さくすることができたものであると考えられる。パラジウムでも電源(2)の200Vなど高い電圧にすると、粒径はさらに小さくすることができるものと考えられる。
【0150】
これらの結論として、電圧の立ち上がり、立ち下がり時間が1μs以下、電源(2)を使い、ピーク電流の値が80A~125A以上、電流の立ち上がりが10μs~20μs以下の繰り返し電流を電極に流せば、粒径が0.6nm未満のナノ粒子を効率よく合成できることがわかった。この際、遠心分離工程は極小ナノ粒子だけを選別したり、凝集体を分散させる上で重要である。
【0151】
[実施例3]白金ナノ粒子の例
図1に示す製造装置に準じる構成で製造を行なった。液体として水を入れた200mLビーカーに、円柱状の単体元素である白金の電極(純度99.99%、直径3mm)2本を電極の先端間距離が約0.5mmとなる配置で浸漬して、電極に振動を与えながら、白金電極間に電源から供給される繰り返し電流によって火花放電を起こし、プラズマを繰り返し発生させ、白金ナノ粒子を合成した。なお、電源装置30は実施例1に準じるものである。
【0152】
実験は電源(1)で発生器のピーク電圧を100Vで設定し、電源(2)で200Vで設定した。
【0153】
製造を1時間で行うことで白金ナノ粒子は、乾燥重量で約0.5g得られる。以下の形状測定等については製造時間1時間程度で作成したものを用いた。
【0154】
【0155】
電源(1)では、立ち上がりが2段階や1段階で15μs程度以下で、ピーク電流は50A以下である。また、電源(2)では10μs~20μs以下でピーク電流は125A以上である。間隔は基本的に100μsであるが、整形回路と放電特性によって、少し早くなったり、不規則になったりしている。ここで、電流値は電極の種類と個々の放電現象によるので、電流値は電圧とは比例するとは限らない。
【0156】
本発明の製造方法では、粒径の小さなナノ粒子を回収するために、実施例3のナノ粒子含有液を、(1)も(2)の試料も遠心分離工程を行った。遠心分離工程は工機ホールディングスの超遠心機CS150NXを用いた。この場合、遠心管は4ccのものを8個用いた。また、加速度は600kGで、10分間行った。
【0157】
[TEM観察]
ナノ粒子の形態や大きさを直接見るためにTEM観察を行った。使用したTEMはFEI社のTecnai F20である。FE-TEMによる白金ナノ粒子の観察結果を
図13A、
図13Bに示す。結果を表3にまとめた。
【0158】
ピーク電流が50A以下の電源(1)による試料では平均粒径が3nm以上であるのに対し、ピーク電流が125A以上の電源(2)による試料では、Pdや金ほどはっきりとは観察されていなかったが、実際にTEMを操作していると2nm以下の粒子がモニター上に肉眼で観察された。しかし、それらは小さすぎて、FE-TEMの撮像限界を超えており、撮像時は記録が難しかった。なお、2nm以上のナノ結晶はTEMのピント合わせに用いたものである。ここで、ナノ粒子は回折格子の解析により、面心立方格子構造の白金であることを確かめている。
【0159】
[動的光散乱法]
動的光散乱法による粒径測定はパラジウムで用いたものと同様の装置を用いて行った。白金粒子の動的光散乱法による粒径の測定結果を
図14に示す。結果を表3にまとめた。
【0160】
[散乱強度分布]
図14Aはピーク電流が50A以下の電源(1)を用いて得られた試料の動的光散乱法により粒径を測定した結果、
図14Bはピーク電流が125A以上の電源(2)を用いて得られた試料の動的光散乱法により粒径を測定した結果である。
図14Aに見られるように、電源(1)による粒子径は電源(2)によるものに比べて桁違いに大きく、TEM観察の結果では3nm以上の平均粒径のナノ粒子が観察されていることから、ナノ粒子が凝集して凝集体を作っているものと考えられる。一方、
図14Bに見られるように、電源(2)のよる白金ナノ粒子の平均粒径は1.4nmで、標準偏差0.1nm、90Dは1.7nmであり、格段に小さいことが確認された。従って、電源(1)では平均粒径3nm以上で2nm以下のナノ粒子は得られなかったのに対し、電源(2)では平均粒径2nm以下の極小ナノ粒子が得られたものと判断される。これらの遠心処理工程で得られた試料の平均粒径はTEM観察によって2nm以下のものが存在することを確かめているので、平均粒径1.4nmはナノ粒子の粒径であると言える。遠心分離工程はナノ粒子を選別するだけでなく、凝集体を分散させる重要な工程である。
【0161】
【0162】
表3は、Ptの粒径の測定結果のまとめである。表3中の※1では、電源(2)のFE-TEM観察では、粒径が2nm以下のナノ粒子が多数観察されたが、寸法は正確には確定することができなかった。動的光散乱方で平均粒径は1、4nmと計測された。
【0163】
TEM観察では電源(1)の試料の粒径が平均3nm~5nm程度のものが観察された。しかしながら、電源(2)による試料ではモニター上では2nm以下のナノ粒子を肉眼で確認することができたが、TEM装置の性能上、小さすぎて撮像は難しかった。動的光散乱による測定結果は、電源(1)による試料の場合、TEM観察による粒径より大きかったが、電源(2)による試料を遠心処理工程したナノ粒子については個数分布の平均粒径は、1.4nm以下であり、格段に小さいことがわかった。従って、電源(2)によって2nm以下のナノ粒子が得られたと判断された。
【0164】
この粒径の違いは、電極に流れる電流波形によると、旧型の電源(1)では、立ち上がりが60V、200Vとも2段階や1段階で20μs程度でピーク電流が50A以下である。また、新型の電源(2)では電流量が80A~125A以上であることが関係していると考えられる。一部前述したように、これはピーク電流値が新型の電源(2)では旧型の電源(1)と比べると2倍以上になって極めて高い温度上昇によって急激なプラズマの発生し、多数のイオンを生成する。そして温度が高いほど周りの液体による冷却によって多数の均一核生成を促し、激しい急冷効果によって結晶成長を抑え、格段に多い小さなクラスターが発生する。そのクラスターが急冷によりそのまま凍結されて、極小のナノ粒子が多量に得られたものと考えられる。
【0165】
これらの結論として、立ち上がり、立ち下がり時間が1μs以下、電源(2)を使い、電流の値が80A~125A以上、立ち上がりが10μs~20μs以下の繰り返し電流を電極に流すことで、粒径が2.0nm以下のナノ粒子を効率よく合成できることがわかった。この際、遠心分離工程は極小ナノ粒子だけを選別したり、凝集体を分散させる上で重要である。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明のナノ粒子は、触媒、磁性材料、電池材料、光電材料、医療材料、薬品材料、健康食品として、環境、IT、印刷、医療などさまざまな分野で利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0167】
1…製造装置、101,102…電極、201…容器、202…液体、30…電源装置、40…振動装置。