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特開2022-19725粉体処理システムの診断装置、診断方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019725
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】粉体処理システムの診断装置、診断方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B02C 13/286 20060101AFI20220120BHJP
   B02C 13/18 20060101ALI20220120BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220120BHJP
【FI】
B02C13/286
B02C13/18 Z
G01M99/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172558
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2021529576の分割
【原出願日】2019-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000113355
【氏名又は名称】ホソカワミクロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 智浩
【テーマコード(参考)】
2G024
4D065
【Fターム(参考)】
2G024AD08
2G024BA12
2G024CA09
2G024CA13
2G024CA16
2G024DA09
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
4D065AA04
4D065BB04
4D065BB11
4D065BB20
4D065EA07
4D065EC02
4D065EC04
4D065EC05
4D065ED03
4D065ED14
4D065ED24
4D065ED29
4D065ED32
4D065ED35
4D065ED43
4D065ED50
4D065EE02
4D065EE07
4D065EE13
4D065EE15
4D065EE18
4D065EE20
(57)【要約】
【課題】粉体処理システムの診断装置、診断方法、及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】粉体処理システム内に流れる流体の流量を含む計測データを取得する取得部と、計測データの入力に応じて、粉体原料の供給速度、粉砕ロータの動力値、粉体処理システム内の圧力、又は粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布についての演算結果を出力するよう構成された学習モデルを用いて、取得部が取得した計測データに基づき、粉体原料の供給速度、粉砕ロータの動力値、粉体処理システム内の圧力、又は粉体の粒子径分布を推定する推定部と、推定部による推定結果に基づき、粉砕ロータ又は分級ロータの劣化度合いを診断する診断部と、診断部による診断結果を出力する出力部とを備える。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料を粉砕する粉砕ロータ、又は前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータを含む粉体処理システムに関して、前記粉体処理システム内に流れる流体の流量、前記粉砕ロータの回転速度、前記分級ロータの回転速度、及び前記粉体処理システムにおいて発生する振動の振動値の少なくとも1つを含む計測データを取得する取得部と、
前記計測データの入力に応じて、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布についての演算結果を出力するよう構成された学習モデルを用いて、前記取得部が取得した計測データに基づき、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布を推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づき、前記粉砕ロータ又は前記分級ロータの劣化度合いを診断する診断部と、
前記診断部による診断結果を出力する出力部と
を備える粉体処理システムの診断装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布を含む計測データを取得し、
前記診断部は、前記計測データに含まれる前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布と、前記学習モデルを用いて推定される前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布とを比較することにより、前記粉砕ロータ又は前記分級ロータの劣化度合いを診断する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
粉体処理のために設けられた回転体を回転駆動する駆動機構を含む粉体処理システムに関して、粉体原料の供給速度、前記粉体原料を粉砕する粉砕ロータの動力値及び回転速度、前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータの動力値及び回転速度、前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布、環境温度、前記粉体処理システムから発せられる音の少なくとも1つを含む計測データを取得する取得部と、
前記計測データの入力に応じて、前記駆動機構における振動値又は温度についての演算結果を出力するように構成された学習モデルを用いて、前記取得部が取得した計測データに基づき前記駆動機構における振動値又は温度を推定する推定部と、
前記推定部により推定された振動値又は温度に基づき、前記駆動機構の劣化度合いを診断する診断部と、
前記診断部による診断結果を出力する出力部と
を備える粉体処理システムの診断装置。
【請求項4】
前記取得部が取得する計測データは、前記駆動機構における振動値又は温度を含み、
前記診断部は、前記計測データに含まれる前記駆動機構における振動値又は温度と、前記学習モデルを用いて推定される前記駆動機構における振動値又は温度とを比較することにより、前記駆動機構の劣化度合いを診断する
請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
前記診断部は、前記粉体処理システムにおける異常の有無を診断し、
前記出力部は、前記粉体処理システムに異常があると前記診断部が診断した場合、警報を出力する
請求項1から請求項4の何れか1つに記載の診断装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記粉体処理システムのコンポーネントを撮像して得られる画像データ、粉体処理システム内の酸素濃度、前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径、湿分、温度、密度、粒子径、円形度、混合度、流動性、BET(Brunauer - Emmett - Teller)値、NIR(Near Infrared)、XRD(X-ray Diffraction)、TG-DTA(Thermogravimetry - Differential Thermal Analysis)、MS(Mass Spectrometry)、SEM(Scanning Electron Microscope)、FE-SEM(Field Emission - SEM)、及びTEM(Transmission Electron Microscope)のデータの少なくとも1つを含む計測データを取得する
請求項1から請求項5の何れか1つに記載の診断装置。
【請求項7】
前記粉体処理システムが実行する粉体処理の種別に対する選択を受付ける受付部
を備え、
前記推定部は、前記受付部にて選択された粉体処理の種別に対応して設けられた学習モデルに前記計測データを入力することによって、前記粉体処理システムの状態を推定する
請求項1から請求項6の何れか1つに記載の診断装置。
【請求項8】
コンピュータが、
粉体原料を粉砕する粉砕ロータ、又は前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータを含む粉体処理システムに関して、前記粉体処理システム内に流れる流体の流量、前記粉砕ロータの回転速度、前記分級ロータの回転速度、及び前記粉体処理システムにおいて発生する振動の振動値の少なくとも1つを含む計測データを取得し、
前記計測データの入力に応じて、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布についての演算結果を出力するよう構成された学習モデルを用いて、取得した計測データに基づき、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布を推定し、
推定結果に基づき、前記粉砕ロータ又は前記分級ロータの劣化度合いを診断し、
診断結果を出力する
粉体処理システムの診断方法。
【請求項9】
コンピュータが、
粉体処理のために設けられた回転体を回転駆動する駆動機構を含む粉体処理システムに関して、粉体原料の供給速度、前記粉体原料を粉砕する粉砕ロータの動力値及び回転速度、前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータの動力値及び回転速度、前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布、環境温度、前記粉体処理システムから発せられる音の少なくとも1つを含む計測データを取得し、
前記計測データの入力に応じて、前記駆動機構における振動値又は温度についての演算結果を出力するように構成された学習モデルを用いて、取得した計測データに基づき前記駆動機構における振動値又は温度を推定し、
推定された振動値又は温度に基づき、前記駆動機構の劣化度合いを診断し、
診断結果を出力する
粉体処理システムの診断方法。
【請求項10】
コンピュータに、
粉体原料を粉砕する粉砕ロータ、又は前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータを含む粉体処理システムに関して、前記粉体処理システム内に流れる流体の流量、前記粉砕ロータの回転速度、前記分級ロータの回転速度、及び前記粉体処理システムにおいて発生する振動の振動値の少なくとも1つを含む計測データを取得し、
前記計測データの入力に応じて、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布についての演算結果を出力するよう構成された学習モデルを用いて、取得した計測データに基づき、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布を推定し、
推定結果に基づき、前記粉砕ロータ又は前記分級ロータの劣化度合いを診断し、
診断結果を出力する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
粉体処理のために設けられた回転体を回転駆動する駆動機構を含む粉体処理システムに関して、粉体原料の供給速度、前記粉体原料を粉砕する粉砕ロータの動力値及び回転速度、前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータの動力値及び回転速度、前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布、環境温度、前記粉体処理システムから発せられる音の少なくとも1つを含む計測データを取得し、
前記計測データの入力に応じて、前記駆動機構における振動値又は温度についての演算結果を出力するように構成された学習モデルを用いて、取得した計測データに基づき前記駆動機構における振動値又は温度を推定し、
推定された振動値又は温度に基づき、前記駆動機構の劣化度合いを診断し、
診断結果を出力する
処理を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体処理システムの診断装置、診断方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体処理プロセスは、貯蔵、供給、輸送、粉砕、分級、混合、乾燥、造粒、複合化、球形化など種々のプロセスの組み合わせにより構成される(例えば、特許文献1を参照)。ユーザが望む品質を持った製品又は中間体を安定的に得るためには、各種プロセスの状態が適切であるか否かを適宜モニタリングする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-194592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粉体処理プロセスの状態を示すパラメータは多種多様であり、粉体処理システムからは非常に数多くの計測値が出力される。このため、処理中に計測される計測値に基づき、粉体処理システムの健全性をユーザが把握することは困難である。
【0005】
本発明は、粉体処理システムの健全性を診断できる粉体処理システムの診断装置、診断方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る粉体処理システムの診断装置は、粉体原料を粉砕する粉砕ロータ、又は前記粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級ロータを含む粉体処理システムに関して、前記粉体処理システム内に流れる流体の流量、前記粉砕ロータの回転速度、前記分級ロータの回転速度、及び前記粉体処理システムにおいて発生する振動の振動値の少なくとも1つを含む計測データを取得する取得部と、前記計測データの入力に応じて、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体処理システムから得られる粉体の粒子径分布についての演算結果を出力するよう構成された学習モデルを用いて、前記取得部が取得した計測データに基づき、前記粉体原料の供給速度、前記粉砕ロータの動力値、前記粉体処理システム内の圧力、又は前記粉体の粒子径分布を推定する推定部と、前記推定部による推定結果に基づき、前記粉砕ロータ又は前記分級ロータの劣化度合いを診断する診断部と、前記診断部による診断結果を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本願によれば、粉体処理システムの健全性を診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る診断装置の診断対象である粉体処理システムの構成を説明する説明図である。
図2】粉体処理装置の構成を示す模式的断面図である。
図3】集塵機の構成を示す模式的断面図である。
図4】実施の形態1に係る診断装置の内部構成を示すブロック図である。
図5】端末装置の内部構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態1における学習モデルの構成例を示す模式図である。
図7】診断装置が収集するデータの一例を示す概念図である。
図8】診断装置による学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
図9】実施の形態1に係る診断装置の診断手順を説明するフローチャートである。
図10】実施の形態2における学習モデルの構成例を示す模式図である。
図11】実施の形態3における学習モデルの構成例を示す模式図である。
図12】実施の形態4における学習モデルの構成例を示す模式図である。
図13】実施の形態4に係る診断装置の診断手順を説明するフローチャートである。
図14】実施の形態5における学習モデルの構成例を示す模式図である。
図15】実施の形態5に係る診断装置の診断手順を説明するフローチャートである。
図16】実施の形態6における学習モデルの構成例を示す模式図である。
図17】実施の形態6に係る診断装置の診断手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る診断装置100の診断対象である粉体処理システム1の構成を説明する説明図である。診断装置100の診断対象は、粉体原料からユーザが所望する粉体を生成する粉体処理システム1である。粉体処理システム1は、例えば、原料供給機2、熱風発生機3、粉体処理装置4、サイクロン5、集塵機6、ブロワ7、製品タンク8、及び集塵タンク9を備える。
【0010】
原料供給機2は、粉体原料を粉体処理装置4へ供給するための装置である。原料供給機2が粉体処理装置4へ供給する粉体原料は、無機材料、有機材料、又は金属材料の粉体を製造するための原料であり、例えば、粉体塗料、電池材料、磁性材料、トナー材料、染料、樹脂、ワックス、ポリマ、医薬品、触媒、金属粉、シリカ、はんだ、セメント、食品などを含む。
【0011】
原料供給機2は、原料供給路TP1を介して粉体処理装置4に接続されている。原料供給路TP1内には、粉体原料を搬送するためのスクリューフィーダ21(図2を参照)が設けられている。スクリューフィーダ21は、粉体原料が固体の場合であって、粉体原料を一定速度で連続的に投入する場合に好ましい。スクリューフィーダ21に代えて、ダブルダンパーやロータリーバルブ等を用いてもよい。また、熱風発生機3が発生させる熱風を原料供給路TP1に導入し、熱風と共に粉体原料を粉体処理装置4に供給してもよい。更に、原料供給機2は、ロードセルなどの重量センサS9(図4を参照)を用いて重量管理を行い、粉体処理装置4において連続処理を行う場合であっても、装置内滞留量が一定となるように粉体原料の供給量を調節してもよい。また、原料供給機2は、内蔵タイマ(不図示)の出力と、重量センサS9により計測される粉体原料の供給量とに基づき、単位時間あたりの粉体原料の供給量(すなわち供給速度)を計測してもよい。重量センサS9は、原料供給機2だけでなく、粉体処理装置4、サイクロン5、及び集塵機6に設けられてもよい。
【0012】
熱風発生機3は、粉体処理装置4に導入する熱風を発生させるための装置であり、加熱ヒータなどの熱源、送風機、及び熱風の温度及び流量を制御する制御装置などを備える。熱風発生機3は、上記の構成に限らず、公知の構成を用いればよい。例えば、粉体処理装置4に導入した熱風の一部を回収し、熱風発生機3と粉体処理装置4との間で循環させてもよい。
【0013】
熱風発生機3は、気体導入路TP2を介して粉体処理装置4に接続されている。熱風発生機3が発生させた熱風は、気体導入路TP2を介し、熱媒として粉体処理装置4に導入される。熱風発生機3が発生させる熱風の温度は、粉体処理装置4で処理される粉体に応じて適宜設定される。例えば、粉体処理装置4において粉体を乾燥させるために200℃~600℃程度の熱風を発生させてもよい。
【0014】
粉体処理装置4は、例えば、装置内に供給された粉体原料を粉砕する粉砕機能と、粉体原料を粉砕して得られる粉体を分級する分級機能とを有する装置である。粉砕機能と分級機能とを有する粉体処理装置4の一例は、ホソカワミクロン株式会社製ACMパルベライザ(登録商標)である。粉体処理装置4の内部構成については図2を用いて具体的に詳述する。
【0015】
粉体処理装置4にて処理された粉体は、粉体輸送路TP3を介してサイクロン5に輸送される。本実施の形態では、粉体処理装置4からサイクロン5に至る粉体輸送路TP3の中途に粒子径センサS5を設置し、粒子径センサS5により粉体処理装置4を通過する粉体の粒子径を常時若しくは定期的なタイミング(例えば5秒間隔)にて計測する。サイクロン5により収集される粉体は製品タンク8に取り出され、製品として回収される。
【0016】
粒子径センサS5は、例えばレーザ回折・散乱法を用いて粒度分布を測定する装置であり、D10,D50,D90の値を出力する。ここで、D10,D50,D90は、それぞれ粒度分布における累積体積分布の小径側から累積10%、50%、90%に相当する粒子径を表す。累積体積分布とは、粉末の粒子径(μm)と、小径側からの積算頻度(体積%)との関係を表す分布である。D50は、一般には平均粒子径(メジアン径)ともいわれる。粒子径センサS5は、D10,D50,D90に代えて、粒子径の頻度分布において出現比率が最も大きい粒子径を表すモード径、又は各種算術平均値(個数平均、長さ平均、面積平均、体積平均など)を出力してもよく、累積体積分布などの分布データを出力してもよい。
なお、本実施の形態では、粉体輸送路TP3に粒子径センサS5を設置する構成としたが、原料供給機2、サイクロン5から製品タンク8に至る経路、集塵機6から集塵タンク9に至る経路等の1又は複数箇所に粒子径センサS5を設置してもよい。
【0017】
サイクロン5には、集塵経路TP4を介して集塵機6が接続されている。集塵機6は、サイクロン5を通過した微粉等を捕集するためのバグフィルタを備える。集塵機6のバグフィルタを通過した気体は、排風路TP5を通じてブロワ7へ流れ、ブロワ7の排出口から排出される。一方、集塵機6のバグフィルタにより捕集された微粉等は集塵タンク9に取り出され、回収される。
【0018】
集塵機6には、排風路TP5を介してブロワ7が接続されている。このブロワ7を駆動することにより、粉体処理装置4からサイクロン5への気体の流れ(すなわち、粉体処理装置4から粉体を取り出す気体の流れ)、及びサイクロン5から集塵機6への気体の流れを形成する。本実施の形態では、集塵機6からブロワ7に至る排風路TP5の中途に流量センサS2(図4を参照)を設置し、粉体処理装置4から粉体を取り出す際の吐出・吸引流量を常時若しくは定期的なタイミング(例えば5秒間隔)にて計測する。排風路TP5に流量センサS2を設置する構成に代えて、原料供給路TP1、気体導入路TP2、粉体輸送路TP3、集塵経路TP4、ブロワ7の排出口等の1又は複数箇所に流量センサS2を設置してもよい。
【0019】
図1の例では、原料供給機2、熱風発生機3、粉体処理装置4、サイクロン5、集塵機6、及びブロワ7を備える粉体処理システム1について説明したが、粉体処理装置4に接続される機器は、上記のものに限定されず、各種機器を組み合わせて粉体処理システム1を構築することが可能である。また、本実施の形態では、ブロワ7を用いて、粉体処理装置4から粉体を取り出す気体の流れを形成する構成としたが、ブロワ7に代えてポンプを用いてもよい。更に、本実施の形態では、粉体処理装置4に気体(熱風又は冷風)を導入する構成としたが、気体を導入する構成に代えて液体を導入する構成としてもよい。
【0020】
診断装置100は、粉体処理システム1を構成する各種装置及び各種センサとの間で必要なデータを授受できるように構成されている。診断装置100は、粉体処理システム1において計測される各種計測データを取得し、後述する学習モデル210(図4を参照)を用いて粉体処理システム1の状態を推定する。そして、診断装置100は、粉体処理システム1の状態の推定結果に基づき、粉体処理システム1を構成するコンポーネントの健全性を推定する。健全性は、コンポーネントの劣化度合い、又はコンポーネントにおける異常の有無に基づき診断される。診断装置100は、診断結果を例えば粉体処理システム1の使用者又は管理者が使用する端末装置500へ通知する。なお、以下の説明では、粉体処理システム1の使用者及び管理者を区別せずに、単にユーザと記載することとする。
【0021】
図2は粉体処理装置4の構成を示す模式的断面図である。粉体処理装置4は、その内部において粉体処理を行う円筒形状のケーシング410を備える。このケーシング410には、原料投入口411、気体導入口412、粉砕ロータ413、ガイドリング414、分級ロータ415、粉体取出口416等が設けられている。
【0022】
ケーシング410の素材は、従来から粉体処理装置のケーシングに用いられている公知の材料を用いればよい。具体的には、SS400、S25C、S45C、SPHC(Steel Plate Hot Commercial)などの鉄系鋼材、SUS304、SUS316などのステンレス鋼材、FC20、FC40などの鉄鋳物材、SCS13、14などのステンレス鋳物材などの金属、あるいは、セラミックス、ガラスなどを用いればよい。また、内壁面に耐磨耗材を貼り付けるなどすれば、アルミニウム、その他木材や合成樹脂であってもよい。
【0023】
ケーシング410の内面は、装置の耐久性向上のために、ハードクロムメッキ処理などのメッキ処理、タングステンカーバイド溶射などの耐磨耗溶射材処理、真空下で行う金属蒸着、ダイヤモンド構造の炭素蒸着などの耐磨耗処理が施されていてもよい。
【0024】
また、ケーシング410内において、トナーなどの低融点樹脂成分の粉体処理を行う場合、固着成分が製品に混入すると品質不良となる。そこで、処理粉体の付着又は固着による気流の乱れ、または、ケーシング410内の閉塞を防ぐために、ケーシング410の内面には、バフ研磨、電解研磨、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などのコーティング、ニッケルなどのメッキ処理が施されてもよい。
【0025】
ケーシング410には、原料供給機2から供給される粉体原料をケーシング410内に投入するための原料投入口411が設けられている。この原料投入口411は、粉砕ロータ413の回転円盤413Aよりも上方の位置に設けられることが好ましい。原料供給機2から供給される粉体原料は、原料供給路TP1内のスクリューフィーダ21によって搬送され、原料投入口411よりケーシング410内に投入される。
【0026】
ケーシング410には、熱風発生機3による熱風(気体)をケーシング410内に導入するための気体導入口412が設けられている。気体導入口412は、気体導入路TP2を介して熱風発生機3に接続されている。この気体導入口412の位置は特に限定されないが、回転する粉砕ロータ413を介してケーシング410内に気体が導入されるように、粉砕ロータ413よりも下方の位置に設けられることが好ましい。本実施の形態では、粉砕ロータ413の回転方向と交差する方向から気体を導入する構成としたが、粉砕ロータ413の回転方向に沿って気体を導入する構成としてもよい。
【0027】
気体導入口412から導入された気体は、ケーシング410内部を旋回しつつ循環する気流を形成すると共に、ケーシング410の内部から分級ロータ415を経て、粉体取出口416からサイクロン5及び集塵機6に到達する。ケーシング410内の気流は、サイクロン5及び集塵機6を介して接続されているブロワ7による吸引によって形成されてもよく、気体導入口412側からの吹き込み(加圧)によって形成されてもよい。ケーシング410内に導入される気体の種類は、目的とする処理品に応じて適宜決めればよい。例えば、空気を用いてもよく、酸化防止のために、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いてもよい。
【0028】
処理対象の粉体によっては、ケーシング410内の温度上昇により、粉体に軟化現象が生じ、粉体同士が融着して粒子径にばらつきが生じたり、収率が低下したりする場合がある。そこで、ケーシング410内の1又は複数箇所に温度センサ(不図示)を設け、ケーシング410内の温度を管理してもよい。例えば、処理対象の粉体が例えば低融点のトナーの場合、粉体取出口416での排気温度が35~55℃となるように、ケーシング410内に導入する気体の温度を調節してもよい。
また、サイクロン5、集塵機6、製品タンク8、集塵タンク9等の1又は複数箇所に温度センサを設けてもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、ケーシング410内に熱風発生機3からの熱風を導入する構成としたが、図に示していない冷風発生機を用いて、ケーシング410内に-20℃~5℃程度の冷風を導入する構成としてもよい。この場合、結露防止のために、ケーシング410内に導入される気体は除湿された気体であることが好ましい。その他に、熱によって風味がなくなったり、変質し易い食品等を処理する場合には、0~15℃に調節された冷風空気を用いてもよい。
【0030】
更に、ケーシング410の内部温度を調節するために、ケーシング410の周囲にジャケット部を設けてもよい。ジャケット部は、別に設けたタンクから加熱流体または冷却流体を循環供給することによって、ケーシング410の内部温度を調節する。
【0031】
粉砕ロータ413は、回転円盤413Aと、回転円盤413Aの上面周縁部から上向きに突出する複数のハンマ413Bとを備えるロータである。粉体処理装置4は、粉砕ロータ413を回転駆動するために、粉砕モータ及びベアリングを含む駆動機構(不図示)を備える。粉砕ロータ413は、粉砕モータの動力により所望の回転速度にて回転するように構成されている。粉砕ロータ413の回転速度は、回転速度センサS7(図4を参照)によって常時若しくは定期的なタイミング(例えば5秒間隔)にて計測される。粉砕ロータ413のハンマ413Bは、回転円盤413Aの上面周縁部において周方向に等間隔に複数配置される。なお、ハンマ413Bの形状、寸法、個数、及び素材は、要求される製品粉体の粒子径や円形度等に応じて適宜設計される。例えば、図2では、棒状のハンマ413Bを示しているが、直方体状のハンマであってもよく、平面視において台形状のハンマであってもよい。また、ハンマ413Bに代えて、刃物状の構造物を用いてもよい。
【0032】
粉砕ロータ413は、粉砕モータの動力によって回転し、ケーシング410内に旋回する気流を発生させると共に、ハンマ413Bの作用により、ケーシング410内に導入された粉体原料に衝撃、圧縮、摩砕、剪断等の機械エネルギを与え、粉体原料を粉砕する。
【0033】
なお、粉砕ロータ413の素材は、従来から粉体処理装置の粉砕ロータに用いられている公知の材料を用いればよい。例えば、SS400、S25C、S45C、SUS304、SUS316、SUS630などを用いることができる。また、ハンマ413Bについては、衝撃力に耐え得るように、超硬合金のチップを付けたり、耐磨耗性及び強靭性を備えたセラミックスやサーメットなどの金属とセラミックスとの複合物を用いてもよい。
【0034】
更に、粉砕ロータ413の表面は、装置の耐久性向上のために、ハードクロムメッキなどのメッキ処理、タングステンカーバイド溶射などの耐磨耗溶射材処理、真空下で行う金属蒸着、ダイヤモンド構造の炭素蒸着などの耐磨耗処理、SUS630の焼き入れ硬化処理などが施されていてもよい。また、粉砕ロータ413の表面には、バフ研磨、電解研磨、PTFEなどのコーティング、ニッケルなどのメッキ処理が施されていてもよい。
【0035】
本実施の形態では、回転円盤413Aの上面周縁部から上向きに突出したハンマ413Bの構成について説明したが、回転円盤413Aの下面周縁部から下向きに突出したハンマを用いてもよい。このように下向きに突出したハンマは、ケーシング410内の粉体原料を直接的に粉砕するものではないが、ケーシング410内に強い旋回気流を形成することができるため、粉体原料同士を衝突させて間接的に粉体原料を粉砕することができる。
【0036】
また、ケーシング410の内周面であって、ハンマ413Bと対向する位置には粉砕ライナが設けられてもよい。粉砕ライナは、粉砕ロータ413の回転軸方向に沿った中心軸を有する筒状の部材であり、この筒状の部材の内周面には、三角形、波形、くさび形の溝が設けられてもよい。
【0037】
ガイドリング414は、ケーシング410内に旋回する気流を発生させ、ケーシング410内で処理される粉体を分級ロータ415へ導くための円筒状の部材である。ガイドリング414は、粉砕ロータ413の上方にて粉砕ロータ413と同軸に配され、ケーシング410の内部に固定される。ガイドリング414の固定方法は特に限定されるものではないが、粉体処理装置4の動作中はケーシング410内部にて回転することなく固定される必要がある。これは、ケーシング410内部で、処理対象の粉体の流動状態を適切な状態に制御するためである。図2の例では、その内径がケーシング410内の下側から上側に向かって連続的に大きくなるガイドリング414を示しているが、内径が上側に向かって連続的に小さくなるガイドリングであってもよく、内径が上下方向で変化しないガイドリングであってもよい。
【0038】
分級ロータ415は、放射状に配される複数の分級羽根415Aを備えたロータである。分級ロータ415の素材は、従来から粉体処理装置の分級ロータに用いられている公知の材料を用いればよい。例えば、SS400、S25C、S45C、SUS304、SUS316、チタン、チタン合金、アルミ合金などを用いることができる。また、分級ロータ415の表面は、装置の耐久性向上のために、浸炭焼入れなどの熱硬化処理、タングステンカーバイド溶射材処理、ハードクロムメッキなどのメッキ処理、溶射後に熱硬化処理を施すための特殊溶射材処理、真空下で行う金属蒸着、ダイヤモンド構造の炭素蒸着などの耐磨耗処理が施されていてもよい。
【0039】
また、分級ロータ415への粉体の付着や固着を防止するため、分級ロータ415の表面には、バフ研磨、電解研磨、PTFEなどのコーティング、ニッケルなどのメッキ処理が施されていてもよい。
【0040】
粉体処理装置4は、分級ロータ415を回転駆動するために、分級モータ及びベアリングを含む駆動機構(不図示)を備える。分級ロータ415は、分級モータの動力により所望の回転速度にて回転するように構成されている。分級ロータ415の回転速度は、回転速度センサS8(図4を参照)によって常時若しくは定期的なタイミング(例えば5秒間隔)にて計測される。分級ロータ415は、粉砕ロータ413の上方に設けられており、高速回転による遠心力により、ケーシング410内で処理された粉体のうち所定粒子径未満の粉体のみを通過させ、通過させた粉体のみを粉体取出口416へ導く。
【0041】
分級ロータ415を通過する粉体の粒子径は、分級ロータ415の回転速度等を制御することによって設定することができる。すなわち、分級ロータ415の回転速度を制御することによって、ケーシング410内から所定粒子径未満の粉体を取り出すことができる。一方、分級ロータ415を通過できない粉体は、ケーシング410内を循環し、繰り返し処理される。
【0042】
図3は集塵機6の構成を示す模式的断面図である。集塵機6は、ハウジング部600、フィルタ部610、払い落とし部620、及び排出部630を備える。
【0043】
ハウジング部600は、払い落とし部620を収納するトップブレナム601、フィルタ部610を固定し、クリーン側とダーティ側とを区画するチューブシート602、フィルタ部610を収納する直胴部603、捕集した粉体を排出部630へ送るホッパ部604により構成される。ハウジング部600の材質は、捕集する粉体の種類、ガス温度、ガス組成、使用目的などに応じて選定され、例えば、一般構造用圧延鋼材(SS400)、ステンレス鋼材などが使用される。また、直胴部603の下部には粉体を含む流体(例えばガス)を導入するための導入口603Aが設けられ、トップブレナム601の上面には集塵後の流体を排出するための排出口601Aが設けられる。
【0044】
フィルタ部610はろ布611を備える。ろ布611は、フェルト地の布により、筒型(例えば円筒状)に形成される。ろ布611の材質は、捕集する粉塵の性状やガス温度、ガス組成などによって選定され、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ナイロン-6、ガラス繊維などの繊維が用いられる。ろ布611の内部には、リテーナ(不図示)が挿入され形状が保持される。粉体を含む流体がろ布611の外部(下流側)から内部(上流側)に流れ込む際、流体に含まれる粉体はろ布611の外表面によって捕集される。ろ布611を通過した流体(すなわち、粉体が除去された流体)は、排出口601Aから外部へ排出される。
【0045】
払い落とし部620は、圧縮空気をろ布611へ噴射するブローチューブ621を備える。ブローチューブ621から噴射する圧縮空気の圧力は、フィルタ面積等に応じて適宜設定される。なお、図3の例では、左側のろ布611により粉体を捕集し、右側のろ布611では粉体を払い落としている状態を示しているが、粉体の捕集と払い落としとは双方のろ布611において適宜実施されるとよい。
【0046】
排出部630は例えばロータリーバルブ631を備える。運転時には、集塵機6の内部と外部とでは圧力差が生じているため、排出部630では、エアーロックを行いながら、粉体を排出する。
【0047】
次に、診断装置100及び端末装置500の構成について説明する。
図4は実施の形態1に係る診断装置100の内部構成を示すブロック図である。診断装置100は、サーバ装置などのコンピュータであり、制御部101、記憶部102、入力部103、出力部104、通信部105、操作部106、及び表示部107を備える。
【0048】
制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。制御部101が備えるROMには、診断装置100が備えるハードウェア各部の動作を制御する制御プログラム等が記憶される。制御部101内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラムや後述する記憶部102に記憶された各種コンピュータプログラムを実行し、ハードウェア各部の動作を制御することによって、本発明に係る診断装置としての機能を実現する。制御部101が備えるRAMには、演算の実行中に利用されるデータ等が一時的に記憶される。
【0049】
制御部101は、CPU、ROM、及びRAMを備える構成としたが、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、量子プロセッサ、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える1又は複数の演算回路又は制御回路であってもよい。また、制御部101は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
【0050】
記憶部102は、ハードディスク、フラッシュメモリなどを用いた記憶装置を備える。記憶部102には、制御部101によって実行されるコンピュータプログラム、外部から取得した各種データ、装置内部で生成した各種データ等が記憶される。
【0051】
記憶部102に記憶されるコンピュータプログラムは、粉体処理システム1の健全性を診断する診断プログラムPG1を含む。診断装置100の制御部101は、診断プログラムPG1を実行することにより、粉体処理システム1にて計測される計測データに基づき、粉体処理システム1の健全性を診断し、診断結果を出力する処理を実行する。
【0052】
診断プログラムPG1を含むコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体M1により提供されてもよい。記録媒体M1は、例えば、CD-ROM、USBメモリ、コンパクトフラッシュ(登録商標)、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、などの可搬型メモリである。制御部101は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体M1から各種プログラムを読み取り、読み取った各種プログラムを記憶部102に記憶させる。
【0053】
入力部103は、各種装置及びセンサを接続するための接続インタフェースを備える。入力部103が備える接続インタフェースは、有線のインタフェースであってもよく、無線のインタフェースであってもよい。入力部103に接続される装置は、原料供給機2、熱風発生機3、粉体処理装置4、サイクロン5、集塵機6、及びブロワ7を含む。入力部103には、原料供給機2、熱風発生機3、粉体処理装置4、サイクロン5、集塵機6、及びブロワ7から送出されるデータが入力される。また、入力部103に接続されるセンサは、圧力センサS1、流量センサS2、動力センサS3、濃度センサS4、粒子径センサS5等を含む。入力部103には、これらのセンサS1~S5によって計測される計測データが入力される。
【0054】
ここで、圧力センサS1は、粉体処理装置4が備えるケーシング410内、集塵機6の上流側及び下流側、ブロワ7の上流側などに設置され、これらの設置場所における圧力(静圧)を計測する。流量センサS2は、ケーシング410の上流側及び下流側、サイクロン5の上流側及び下流側、集塵機6の上流側及び下流側などに設置され、これらの設置場所における流体の流量を計測する。動力センサS3は、ブロワ7に設置され、ブロワ7の動力を計測する。濃度センサS4は、集塵機6の上流側及び下流側に設置され、これらの設置場所における含塵濃度を計測する。集塵機6の上流側及び下流側に濃度センサS4を設置する構成に代えて、集塵機6内においてろ布611よりも上流側及び下流側に濃度センサS4を設置する構成としてもよい。粒子径センサS5は、上述したように粉体処理装置4からサイクロン5に至る粉体輸送路TP3の中途に設置され、粉体処理装置4を通過する粉体の粒子径を計測する。
【0055】
入力部103には、撮像センサS6,回転速度センサS7,S8、重量センサS9、温度センサS10、振動センサS11、音センサS12などのセンサが接続されてもよい。撮像センサS6は、例えば、ろ布611の下流側からろ布611を撮像するためのCCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのセンサであり、画像データを出力する。また、撮像センサS6は、粉体処理装置4の内部状態を観察するために粉体処理装置4の内部又は外部に設置されてもよい。回転速度センサS7,S8は、粉体処理装置4に設置され、それぞれ粉砕ロータ413及び分級ロータ415の回転速度を計測する。重量センサS9は原料供給機2が供給する粉体原料の単位時間あたりの重量(すなわち粉体原料の供給速度)を計測する。温度センサS10は、粉体処理システム1の1又は複数箇所に設置され、設置箇所における温度を計測する。温度センサS10は、環境温度を計測してもよい。振動センサS11は、粉体処理システム1の1又は複数箇所に設置され、設置箇所における振動を計測する。音センサS12は、粉体処理システム1の1又は複数箇所に設置され、設置箇所における音(AE : Acoustic Emission)を計測する。
【0056】
出力部104は、各種装置及びセンサを接続するための接続インタフェースを備える。出力部104が備える接続インタフェースは、有線のインタフェースであってもよく、無線のインタフェースであってもよい。出力部104に接続される装置は、原料供給機2、熱風発生機3、粉体処理装置4、サイクロン5、集塵機6、及びブロワ7を含む。
【0057】
通信部105は、各種の通信データを送受信する通信インタフェースを備える。通信部105が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)やイーサネット(登録商標)で用いられるLAN(Local Area Network)の通信規格に準じた通信インタフェースである。代替的に、Bluetooth(登録商標) 、ZigBee(登録商標)、3G、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に準じた通信インタフェースであってもよい。
【0058】
通信部105は、例えば、粉体処理システム1のユーザが使用する端末装置500と通信を行う。診断装置100の制御部101は、粉体処理システム1の診断結果が得られた場合、診断結果を示す情報を通信部105より端末装置500へ送信する。また、制御部101は、端末装置500に表示させるユーザインタフェース画面の画面データを生成し、生成した画面データを通信部105を通じて端末装置500へ送信してもよい。
【0059】
操作部106は、キーボードやマウスなどの入力インタフェースを備えており、各種操作及び各種設定を受付ける。制御部101は、操作部106を通じて受付けた各種操作及び各種設定に基づき、適宜の処理を行い、必要に応じて設定情報を記憶部102に記憶させる。なお、本実施の形態では、診断装置100が操作部106を備える構成としたが、操作部106は必須ではなく、外部に接続されたコンピュータ(例えば、端末装置500)を通じて操作を受付ける構成であってもよい。
【0060】
表示部107は、液晶パネル又は有機EL(Electro-Luminescence)パネル等の表示パネルを備えており、ユーザに対して報知すべき情報を表示する。表示部107は、例えば、通信部105を通じて受信した各種センサS1~S5の計測データを表示してもよく、操作部106を通じて受付けた各種操作及び各種設定に基づく情報を表示してもよい。なお、本実施の形態では、診断装置100が表示部107を備える構成としたが、表示部107は必須ではなく、ユーザに報知すべき情報を外部のコンピュータ(例えば、端末装置500)へ出力し、出力先のコンピュータに情報を表示させてもよい。
【0061】
本実施の形態では、診断装置100を単一のコンピュータとして説明したが、単一のコンピュータである必要はなく、複数のコンピュータにより構成されてもよく、複数の仮想コンピュータにより構成されてもよい。
【0062】
図5は端末装置500の内部構成を示すブロック図である。端末装置500は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などのコンピュータであり、制御部501、記憶部502、通信部503、操作部504、及び表示部505を備える。
【0063】
制御部501は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備える。制御部501が備えるROMには、端末装置500が備えるハードウェア各部の動作を制御する制御プログラム等が記憶される。制御部501内のCPUは、ROMに記憶された制御プログラムや後述する記憶部502に記憶された各種コンピュータプログラムを実行し、ハードウェア各部の動作を制御する。また、制御部501は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えてもよい。制御部501が備えるRAMには、演算の実行中に利用されるデータ等が一時的に記憶される。
【0064】
記憶部502は、ハードディスク、フラッシュメモリなどを用いた記憶装置を備える。記憶部502には、制御部501によって実行されるコンピュータプログラム、外部から取得した各種データ、装置内部で生成した各種データ等が記憶される。記憶部502に記憶されるコンピュータプログラムは、端末装置500から診断装置100にアクセスするためのアプリケーションプログラムを含んでもよい。
【0065】
記憶部102に記憶されるコンピュータプログラムは、端末装置500から診断装置100にアクセスし、診断装置100から提供される情報を表示する表示プログラムを含んでもよい。表示プログラムを含むコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体により提供されてもよい。記録媒体は、例えば、CD-ROM、USBメモリ、コンパクトフラッシュ(登録商標)、SDカード、マイクロSDカード、などの可搬型メモリである。制御部501は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体から各種プログラムを読み取り、読み取った各種プログラムを記憶部502に記憶させる。
【0066】
通信部503は、各種データを送受信する通信インタフェースを備える。通信部503が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)やイーサネット(登録商標)で用いられるLANの通信規格に準じた通信インタフェースである。代替的に、Bluetooth(登録商標) 、ZigBee(登録商標)、3G、4G、5G、LTE等の通信規格に準じた通信インタフェースであってもよい。
【0067】
通信部503は、例えば診断装置100と通信を行う。端末装置500が通信部503を通じて診断装置100から受信するデータは、診断装置100による粉体処理システム1の診断結果、診断装置100が提供するインタフェース画面を表示部505に表示させるための画面データ等を含む。端末装置500が通信部503を通じて診断装置100へ送信するデータは、診断結果の送信要求等を含む。
【0068】
操作部504は、キーボードやマウスなどの入力インタフェースを備えており、各種操作及び各種設定を受付ける。制御部501は、操作部504を通じて受付けた各種操作及び各種設定に基づき、適宜の処理を行い、必要に応じて設定情報を記憶部502に記憶させる。
【0069】
表示部505は、液晶パネル又は有機ELパネル等の表示パネルを備えており、ユーザに対して報知すべき情報を表示する。表示部505は、例えば、通信部503にて受信した画面データに基づき、診断装置100が提供するインタフェース画面を表示する。また、表示部505は、通信部503にて受信した粉体処理システム1の診断結果を表示してもよい。
【0070】
以下、診断装置100において用いられる学習モデル210について説明する。
図6は実施の形態1における学習モデル210の構成例を示す模式図である。学習モデル210は、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。学習モデル210は、入力層211、中間層212A,212B、及び出力層213を備える。図6の例では、2つの中間層212A,212Bを記載しているが、中間層の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0071】
入力層211、中間層212A,212B、及び出力層213には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みおよびバイアスで結合されている。学習モデル210の入力層211には、入力層211が備えるノードの数と同数のデータが入力される。本実施の形態において、入力層211のノードに入力されるデータは、粉体処理システム1において計測される計測データである。具体的には、圧力センサS1によって計測されるケーシング410内の圧力、流量センサS2によって計測される流量、動力センサS3によって計測されるブロワ7の動力値、濃度センサS4によって計測される含塵濃度、粒子径センサS5によって計測される粒子径分布を含む計測データが入力層211のノードに入力される。学習モデル210の入力層211に入力する計測データは、スカラーに限定する必要はなく、ベクトルデータ、画像データ等の何らかの構造を有するデータであってもよい。
【0072】
入力された計測データは、入力層211を構成するノードを通じて、最初の中間層212Aが備えるノードへ出力される。最初の中間層212Aに入力されたデータは、中間層212Aを構成するノードを通じて、次の中間層212Bが備えるノードへ出力される。このとき、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いて出力が算出される。以下同様にして、ノード間において設定されている重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算を実行し、出力層213による演算結果が得られるまで次々と後の層に伝達される。ノード間を結合する重み、バイアス等のパラメータは、所定の学習アルゴリズムによって学習される。各種パラメータを学習する学習アルゴリズムには、例えば深層学習の学習アルゴリズムが用いられる。本実施の形態では、前述の計測データと、粉体処理システム1の状態を示すデータとを教師データに用いて、計測データが入力された場合、粉体処理システム1についての演算結果を出力するように、所定の学習アルゴリズムによってノード間の重み及びバイアスを含む各種パラメータを学習する。
【0073】
出力層213は、粉体処理システム1の状態についての演算結果を出力する。粉体処理システム1の状態として、実施の形態1に係る学習モデル210は、ろ布611の圧力損失についての演算結果を出力する。具体的には、出力層213を第1ノードから第nノードまでのn個のノードにより構成し、第1ノードからろ布611の圧力損失がPL1である確率P1を出力し、第2ノードからろ布611の圧力損失がPL2である確率P2を出力し、…、第nノードからろ布611の圧力損失がPLnである確率Pnを出力する。出力層213を構成するノードの数や各ノードに割り当てる演算結果は、上述の例に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0074】
診断装置100は、粉体処理システム1について計測されるデータ(ケーシング410内の圧力、流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、粒子径分布、並びに、ろ布611における圧力損失)を収集し、これらの計測データを教師データに用いて、上述したような学習モデル210を生成する。
【0075】
図7は診断装置100が収集するデータの一例を示す概念図である。診断装置100の制御部101は、入力部103を通じて、各種センサS1~S5によって計測される計測データを取得する。具体的には、圧力センサS1によって計測されるケーシング410内の圧力(atm)、流量センサS2によって計測される流体の流量(m3 /min)、動力センサS3によって計測されるブロワ7の動力値(kW)、濃度センサS4によって計測される集塵機6の入口(上流側)及び出口(下流側)の含塵濃度(g/m3 )、粒子径センサS5によって計測される粒子径分布(μm)、圧力センサS1によって計測される集塵機6の入口(上流側)及び出口(下流側)の圧力を取得する。制御部101は、取得した計測データをタイムスタンプと共に記憶部102に記憶させる。このとき、集塵機6の入口(上流側)及び出口(下流側)の圧力差として計測されるろ布611の圧力損失(atm)を記憶部102に記憶させてもよい。なお、図7は、5秒間隔で収集したデータを記憶部102に記憶させた例を示しているが、データを収集する時間間隔は5秒に限らず、任意に設定すればよい。
【0076】
制御部101は、収集した計測データを教師データに用いて、ケーシング410内の圧力、流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、及び粒子径分布を含む計測データと、ろ布611の圧力損失との関係を学習し、上述したような学習モデル210を生成する。
【0077】
以下、学習フェーズにおける診断装置100の動作について説明する。
図8は診断装置100による学習モデル210の生成手順を説明するフローチャートである。診断装置100の制御部101は、粉体処理システム1において計測された計測データを収集する(ステップS101)。ステップS101において収集する計測データは、上述したように、ケーシング410内の圧力、流体の流量、ブロワ7の動力値、ろ布611の圧力損失、含塵濃度、粒子径分布を含む。収集した計測データは、タイムスタンプと共に、記憶部102に記憶される。
【0078】
計測データの収集後、制御部101は、記憶部102に記憶されているデータから、一組の教師データを選択する(ステップS102)。すなわち、制御部101は、ケーシング410内の圧力、流体の流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、粒子径分布の計測値と、そのときに得られたろ布611の圧力損失とを記憶部102から一組だけ選択する。
【0079】
制御部101は、選択した教師データに含まれるケーシング410内の圧力、流体の流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、粒子径分布の計測値を学習モデル210へ入力し(ステップS103)、学習モデル210による演算を実行する(ステップS104)。すなわち、制御部101は、学習モデル210の入力層211を構成するノードに上記計測値を入力し、中間層212A,212Bにおいてノード間の重み及びバイアスを用いた演算を行い、演算結果を出力層213のノードから出力する処理を行う。なお、学習が開始される前の初期段階では、学習モデル210を記述する定義情報には初期値が与えられているものとする。
【0080】
次いで、制御部101は、ステップS104で得られた演算結果を評価し(ステップS105)、学習が完了したか否かを判断する(ステップS106)。具体的には、制御部101は、ステップS104で得られる演算結果と教師データとに基づく誤差関数(目的関数、損失関数、コスト関数ともいう)を用いて、演算結果を評価することができる。制御部101は、最急降下法などの勾配降下法により誤差関数を最適化(最小化又は最大化)する過程で、誤差関数が閾値以下(又は閾値以上)となった場合、学習が完了したと判断する。なお、過学習の問題を避けるために、交差検定、早期打ち切りなどの手法を取り入れ、適切なタイミングにて学習を終了させてもよい。
【0081】
学習が完了していないと判断した場合(S106:NO)、制御部101は、学習モデル210のノード間の重み及びバイアスを更新して(ステップS107)、処理をステップS102へ戻し、別の教師データを用いた学習を継続する。制御部101は、学習モデル210の出力層213から入力層211に向かって、ノード間の重み及びバイアスを順次更新する誤差逆伝播法を用いて、各ノード間の重み及びバイアスを更新することができる。
【0082】
学習が完了したと判断した場合(S106:YES)、制御部101は、学習済みの学習モデル210として記憶部102に記憶させ(ステップS108)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0083】
本実施の形態では、診断装置100において学習モデル210を生成する構成としたが、学習モデル210を生成する外部サーバ(不図示)を設け、外部サーバにて学習モデル210を生成してもよい。この場合、診断装置100は、通信等により、外部サーバから学習モデル210を取得し、取得した学習モデル210を記憶部102に記憶させればよい。
【0084】
次に、運用フェーズにおける診断装置100の動作を説明する。なお、運用フェーズにおいては、学習モデル210は学習済みであるとする。
【0085】
図9は実施の形態1に係る診断装置100の診断手順を説明するフローチャートである。実施の形態1では、粉体処理システム1のコンポーネントとして備える集塵機6のろ布611における健全性を診断する手順について説明する。
【0086】
診断装置100の制御部101は、各種センサにより計測される計測データの入力を受付ける(ステップS121)。ステップS121において入力を受付ける計測データは、ケーシング410内の圧力、流体の流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、及び粒子径分布を含む。また、制御部101は、後述する推定値との比較のために、ろ布611の圧力損失を含む計測データの入力を受け付ける。
【0087】
次いで、制御部101は、受付けた計測データのうち、ケーシング410内の圧力、流体の流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、粒子径分布の値を含むデータを学習モデル210の入力層211へ入力し、学習モデル210による演算を実行する(ステップS122)。入力層211のノードに与えられたデータは、隣接する中間層212Aのノードへ出力される。中間層212Aではノード間の重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算が行われ、演算結果は後段の中間層212Bへ出力される。中間層212Bにおいて、更に、ノード間の重み及びバイアスを含む活性化関数を用いた演算が行われ、演算結果は出力層213の各ノードへ出力される。出力層213の各ノードは、粉体処理システム1の状態を示す演算結果を出力する。具体的には、出力層213の各ノードは、ろ布611の圧力損失に関する演算結果を出力する。
【0088】
次いで、制御部101は、学習モデル210から演算結果を取得し(ステップS123)、ろ布611の圧力損失を推定する(ステップS124)。学習モデル210の出力層213は、例えば、ろ布611の圧力損失に関する演算結果として、ろ布611の圧力損失がPLiである確率Pi(i=1~n)を各ノードから出力する。制御部101は、これらの確率Pi(i=1~n)のうち、最も確率が高い圧力損失を特定することにより、ケーシング410内の圧力、流体の流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、及び粒子径分布の値から推定されるろ布611の圧力損失を求める。
【0089】
次いで、制御部101は、ステップS124において推定したろ布611の圧力損失に基づき、ろ布611の劣化度合いを診断する(ステップS125)。このとき、制御部101は、計測結果として得られるろ布611の圧力損失と、学習モデル210から推定されるろ布611の圧力損失とを比較し、その比較結果に基づき、ろ布611の劣化度合いを診断することができる。圧力損失の計測値と推定値とを比較する際に、MT法(Mahalanobis-Taguchi Method)を用いてもよい。制御部101は、例えば、計測結果として得られるろ布611の圧力損失が、推定結果として得られるろ布611の圧力損失よりも高い場合、ろ布611が劣化して閉塞状態になっていると診断することができる。また、制御部101は、計測結果として得られるろ布611の圧力損失が、推定結果として得られるろ布611の圧力損失よりも低い場合、ろ布611が劣化して破損していると診断することができる。
【0090】
次いで、制御部101は、ステップS125の診断結果に基づき、警報の要否を判断する(ステップS126)。制御部101は、計測結果として得られるろ布611の圧力損失が、推定結果として得られるろ布611の圧力損失より一定割合以上高い場合(あるいは低い場合)、警報を要と判断する。警報を要と判断した場合(S126:YES)、制御部101は、警報を出力する(ステップS128)。具体的には、制御部101は、ろ布611の劣化が想定以上である旨の警報情報を通信部105より端末装置500へ送信することにより、警報を出力する。また、制御部101は、ろ布611の劣化が想定以上である旨の警報情報を表示部107に表示することによって警報を出力してもよい。
【0091】
ステップS126で警報を要しないと判断した場合(S126:NO)、制御部101は、ステップS125における診断結果を出力する(ステップS127)。このとき、制御部101は、診断結果を表示部107に表示してもよい。また、制御部101は、診断結果を通信部105より端末装置500へ送信してもよい。
【0092】
更に、制御部101は、ろ布611の劣化度合いに応じて集塵機6への装着を推奨するろ布を選定し、選定したろ布の情報を端末装置500へ送信してもよい。例えば、制御部101は、学習モデル210を用いて推定されるろ布611の劣化度合いが、予め設定される想定値よりも大きい場合、より製品寿命が高いろ布を選定し、選定したろ布の情報を端末装置500へ送信することができる。
【0093】
以上のように、本実施の形態に係る診断装置100は、粉体処理システム1について計測される計測データが入力された場合、粉体処理システム1の状態に関する演算結果を出力するように構成された学習モデルを用いて、粉体処理システム1の状態を推定し、学習モデル210の推定結果に基づき、ろ布611の健全性(劣化度合い、及び異常の有無)を診断することができる。
【0094】
本実施の形態では、ニューラルネットワークによって構成される機械学習の学習モデル210を用いて制御パラメータに関する演算結果を取得する構成について説明したが、学習モデル210は特定の手法を用いて得られるモデルに限定されない。例えば、深層学習によるニューラルネットワークに代えて、パーセプトロン、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、残差ネットワーク、自己組織化マップ等による学習モデルであってもよい。
【0095】
また、上記のニューラルネットワークによる学習モデルに代えて、線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン等を含む回帰分析手法、決定木、回帰木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング木等の探索木を用いた手法、単純ベイズ等を含むベイズ推定法、AR(Auto Regressive)、MA(Moving Average)、ARIMA(Auto Regressive Integrated Moving Average)、状態空間モデル等を含む時系列予測手法、K近傍法等を含むクラスタリング手法、ブースティング、バギング等を含むアンサンブル学習を用いた手法、階層型クラスタリング、非階層型クラスタリング、トピックモデル等を含むクラスタリング手法、アソシエーション分析、強調フィルタリング等を含むその他の手法により学習された学習モデルであってもよい。
更に、PLS(Partial Least Squares)回帰、重回帰分析、主成分分析、因子分析、クラスター分析等を含む多変量分析を用いて学習モデルを構築してもよい。
【0096】
(実施の形態2)
実施の形態2では、ろ布611の内部を撮像して得られる画像データに基づき、診断を行う構成について説明する。
【0097】
図10は実施の形態2における学習モデル220の構成例を示す模式図である。学習モデル220は、例えば、CNN(Convolutional Neural Networks)による学習モデルであり、入力層221、中間層222、及び、出力層223を備える。学習モデル220は、撮像センサS6を用いてろ布611の内部を撮像して得られる画像データの入力に対して、ろ布611の圧力損失に関する演算結果を出力するように予め学習される。学習方法は、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略することとする。
【0098】
入力層221には、ろ布611の内部を撮像して得られる画像データが入力される。入力層221に入力された画像データは、中間層222へ送出される。
【0099】
中間層222は、例えば、畳み込み層222A、プーリング層222B、及び全結合層222Cにより構成される。畳み込み層222A及びプーリング層222Bは交互に複数設けられてもよい。畳み込み層222A及びプーリング層222Bは、各層のノードを用いた演算によって、入力層221を通じて入力される画像データの特徴を抽出する。全結合層222Cは、畳み込み層222A及びプーリング層222Bによって特徴部分が抽出されたデータを1つのノードに結合し、活性化関数によって変換された特徴変数を出力する。特徴変数は、全結合層222Cを通じて出力層223へ出力される。
【0100】
出力層223は、1つ又は複数のノードを備える。出力層223は、中間層222の全結合層222Cから入力される特徴変数を基に、ソフトマックス関数を用いて確率に変換し、ろ布611の圧力損失が特定の値である確率を各ノードから出力する。すなわち、出力層223を第1ノードから第nノードまでのn個のノードにより構成し、第1ノードからろ布611の圧力損失がPL1である確率P1を出力し、第2ノードからろ布611の圧力損失がPL2である確率P2を出力し、…、第nノードからろ布611の圧力損失がPLnである確率Pnを出力する。
【0101】
診断装置100の制御部101は、実施の形態1と同様に、学習モデル220を用いて推定したろ布611の圧力損失と、計測データとして得られるろ布611の圧力損失とを比較して、ろ布611の劣化度合い及び異常の有無を診断することができる。
【0102】
以上のように、実施の形態2に係る診断装置100は、ろ布611の内部を撮像して得られる画像データを学習モデル220へ入力することによって、ろ布611の劣化度合いや異常の有無を診断できる。
【0103】
なお、図10の例ではCNNによる学習モデル220を示したが、学習モデル220を構築する機械学習のモデルは任意に設定することができる。例えば、CNNに代えて、R-CNN(Region-based CNN)、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot Detector)等に基づく学習モデルを設定してもよい。
【0104】
(実施の形態3)
実施の形態3では、時系列データに基づき、ろ布611の交換時期を推定する構成について説明する。
【0105】
図11は実施の形態3における学習モデル230の構成例を示す模式図である。学習モデル230は、リカレントニューラルネットワークの一種であるSeq2Seq(Sequence to Sequence)モデルである。
【0106】
学習モデル230は、時系列データが入力されるm個のエンコーダE1~Emと、時系列データを出力するn個のデコーダD1~Dnとを備える。インデックスのmおよびnは2以上の整数である。図11において、エンコーダE1~EmおよびデコーダD1~Dnは、単一のブロックとして記載しているが、入力層および隠れ層を含む2~8層程度の複数の層を有する。エンコーダE1~EmおよびデコーダD1~Dnの内部構造、ならびに、エンコーダE1~EmおよびデコーダD1~Dnにおける内部パラメータの学習方法については公知であるため、その詳細な説明を省略する。本実施形態では、圧力センサS1によって計測されるケーシング410内の圧力、流量センサS2によって計測される流量、動力センサS3によって計測されるブロワ7の動力値、濃度センサS4によって計測される含塵濃度、及び粒子径センサS5によって計測される粒子径分布の時系列データを学習モデル230への入力とし、ろ布611における圧力損失の時系列データを出力するように、学習モデル230の内部パラメータが学習される。
【0107】
図11において横方向は時間ステップを表し、図中左方向から右方向へ手順が進行していることを表している。エンコーダE1~Emのそれぞれには、ケーシング410内の圧力、流量、ブロワ7の動力値、含塵濃度、及び粒子径分布のうち、何れか1つの時系列データが入力される。例えば、圧力センサS1の出力を学習モデル230への入力とした場合、診断装置100の制御部101は、時系列データとして得られる圧力の値K1,K2,…Kmを順次エンコーダE1~Emに入力する。
【0108】
エンコーダE1~Emの隠れ層には、内部状態として、入力された圧力の時系列データが内部ベクトルctとして記録される。ここで、tはタイムステップを表し、エンコーダE1~Em内では1~mの値をとる。内部ベクトルctは、入力ごとに値のステップへ受け渡され、全ての入力が終わった時点でデコーダD1に受け渡す内部ベクトルcmが得られる。
【0109】
最終のエンコーダEmにおける内部ベクトルcmはデコーダD1へ受け渡される。デコーダD1には出力の開始を指示する予約語が入力される。図11の例では、予約語として<go>を記載しているが、予め設定された固定値であればよい。エンコーダEmから内部ベクトルcmが受け渡され、出力の開始を指示する予約語が入力された場合、デコーダD1は出力h1を出力し、内部ベクトルはcm+1へ変化する。デコーダD1の出力h1は、次のステップにおけるデコーダD2への入力に用いられる。デコーダD1の内部ベクトルcm+1は、次のステップにおけるデコーダD2の内部状態として使用される。このようにして、D1,D2,…Dn-1の出力htおよび内部ベクトルctは、順次次のデコーダD2,D3,…,Dnに入力され、最終のデコーダDnが出力終了を表す予約語<eos>を出力するまで順次演算が実行される。
【0110】
以上の結果、デコーダD1~Dn-1のそれぞれ得られるn-1個の出力h1~hn-1が、学習モデル230の最終的な出力となる。これらの出力h1~hn-1は、ろ布611における圧力損失の推定値を示す時系列データを表す。
【0111】
制御部101は、学習モデル230のデコーダD1~Dn-1からろ布611における圧力損失の推定値を示す時系列データを取得する。制御部101は、エンコーダE1~Emへの時系列データの入力と、デコーダD1~Dn-1から出力される時系列データの取得とを順次繰り返すことによって、ろ布611における圧力損失の時系列変化を導出することができる。
【0112】
また、制御部101は、学習モデル230により推定される圧力損失の時系列変化に基づき、ろ布611の交換時期を推定してもよい。例えば、制御部101は、圧力損失に対する閾値を予め設定しておき、学習モデル230により推定される圧力損失が閾値以上あるいは閾値以下となる時期をろ布611の交換時期として推定すればよい。
【0113】
以上のように、実施の形態3に係る診断装置100は、学習モデル230を用いることにより、ろ布611の圧力損失に関して時系列変化を推定することができる。また、診断装置100は、学習モデル230により推定される圧力損失の時系列変化に基づき、ろ布611の交換時期を推定することができる。
【0114】
(実施の形態4)
実施の形態4では、粉体処理システム1において粉体を含む流体の圧送システムの劣化度合いを診断する構成について説明する。ここで、粉体を含む流体の圧送システムは、流体が流れる粉体輸送路TP3などの配管、及び配管内に流体を発生させるブロワ7を含む。
【0115】
図12は実施の形態4における学習モデル240の構成例を示す模式図である。学習モデル240は、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。学習モデル240は、入力層241、中間層242A,242B、及び出力層243を備える。図12の例では、2つの中間層242A,242Bを記載しているが、中間層の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0116】
入力層241、中間層242A,242B、及び出力層243には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みおよびバイアスで結合されている。学習モデル240の入力層241には、入力層241が備えるノードの数と同数のデータが入力される。本実施の形態において、入力層241のノードに入力されるデータは、粉体処理システム1において計測される計測データである。具体的には、回転速度センサS7によって計測される粉砕ロータ413の回転速度、回転速度センサS8によって計測される分級ロータ415の回転速度、圧力センサS1により計測されるろ布611の圧力損失、温度センサS10により計測される系内の温度を含む計測データが入力層241のノードに入力される。学習モデル240の入力層241に入力する計測データは、スカラーに限定する必要はなく、ベクトルデータ、画像データ等の何らかの構造を有するデータであってもよい。
【0117】
実施の形態4に係る学習モデル240は、これらの計測データの入力に対して、ブロワ7の動力値、粉体処理システム1に流れる流体の流量、系内の圧力についての演算結果を出力するように、所定の学習アルゴリズムによって学習される。学習方法は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0118】
学習モデル240の出力層243は、粉体処理システム1の状態として、ブロワ7の動力値、粉体処理システム1に流れる流体の流量、系内の圧力についての演算結果を出力する。具体的には、出力層243を第1ノードから第nノードまでのn個のノードにより構成し、第1ノードからブロワの動力値がBP1、系内の流量がFV1、系内の圧力SP1である確率P1を出力し、第2ノードからブロワの動力値がBP2、系内の流量がFV2、系内の圧力SP2である確率P2を出力し、…、第nノードからブロワの動力値がBPn、系内の流量がFVn、系内の圧力SPnである確率Pnを出力する。出力層243を構成するノードの数や各ノードに割り当てる演算結果は、上述の例に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0119】
図13は実施の形態4に係る診断装置100の診断手順を説明するフローチャートである。実施の形態4では、粉体を含む流体の圧送システムにおける健全性を診断する手順について説明する。
【0120】
診断装置100の制御部101は、各種センサにより計測される計測データの入力を受付ける(ステップS401)。ステップS401において入力を受付ける計測データは、粉砕ロータ413の回転速度、分級ロータ415の回転速度、ろ布611の圧力損失、及び系内の温度を含む。また、制御部101は、後述する推定値との比較のために、ブロワ7の動力値、系内の流量、系内の圧力を含む計測データの入力を受付ける。
【0121】
次いで、制御部101は、受付けた計測データのうち、粉砕ロータ413の回転速度、分級ロータ415の回転速度、ろ布611の圧力損失、及び系内の温度を含むデータを学習モデル240の入力層241へ入力し、学習モデル240による演算を実行する(ステップS402)。学習モデル240は、演算結果として、ブロワ7の動力値、粉体処理システム1に流れる流体の流量、系内の圧力に関する演算結果を出力する。
【0122】
次いで、制御部101は、学習モデル240から演算結果を取得し(ステップS403)、ブロワ7の動力値、粉体処理システム1に流れる流体の流量、系内の圧力を推定する(ステップS404)。学習モデル240の出力層243は、演算結果として、ブロワ7の動力値がBPi、粉体処理システム1に流れる流体の流量がFVi、系内の圧力がSPiである確率Pi(i=1~n)を各ノードから出力する。制御部101は、これらの確率Pi(i=1~n)のうち、最も確率が高い状態を特定することにより、粉砕ロータ413の回転速度、分級ロータ415の回転速度、ろ布611の圧力損失、及び系内の温度から推定されるブロワ7の動力値、系内の流量、及び系内の圧力を求める。
【0123】
次いで、制御部101は、ステップS404の推定結果に基づき、圧送システムにおける劣化度合いを診断する(ステップS405)。このとき、制御部101は、計測結果として得られるブロワ7の動力値、系内の流量、及び系内の圧力と、学習モデル240から推定されるブロワ7の動力値、系内の流量、及びケーシング410内の圧力とを比較し、その比較結果に基づき、圧送システムにおける劣化度合いを診断する。制御部101は、計測値と推定値との比較の際に、MT法を用いてもよい。制御部101は、例えば、動力あたりの流量が推定値よりも大きい場合、系外からのリークの可能性があるので、圧送システムにおいて劣化又は異常が生じていると診断することができる。また、制御部101は、動力あたりの流量が推定値よりも小さい場合、系内の閉塞又はブロワ7の部品劣化の可能性があるので、圧送システムにおいて劣化又は異常が生じていると診断することができる。更に、制御部101は、系内の圧力に関して計測値と推定値とを比較し、計測値と推定値との間に閾値以上の差が生じている箇所を特定することにより、閉塞箇所又はリーク箇所を特定してもよい。
【0124】
次いで、制御部101は、ステップS405の診断結果に基づき、警報の要否を判断する(ステップS406)。制御部101は、計測値と推定値との間に閾値以上の差が生じている場合、警報を要と判断する。警報を要と判断した場合(S406:YES)、制御部101は、警報を出力する(ステップS408)。具体的には、制御部101は、圧送システムの劣化が想定以上である旨の警報情報を通信部105より端末装置500へ送信することにより、警報を出力する。また、制御部101は、圧送システムの劣化が想定以上である旨の警報情報を表示部107に表示することによって警報を出力してもよい。
【0125】
ステップS406で警報を要しないと判断した場合(S406:NO)、制御部101は、ステップS405における診断結果を出力する(ステップS407)。このとき、制御部101は、診断結果を表示部107に表示してもよい。また、制御部101は、診断結果を通信部105より端末装置500へ送信してもよい。
【0126】
以上のように、本実施の形態に係る診断装置100は、学習モデル240の推定結果に基づき、圧送システムの健全性(劣化度合い、及び異常の有無)を診断することができる。
【0127】
なお、本実施の形態では、あるタイミングで計測された計測データを学習モデル240に入力する構成としたが、実施の形態3と同様の学習モデルを用いて、時系列変化を診断してもよい。
【0128】
(実施の形態5)
実施の形態5では、粉体処理装置4が備える粉砕ロータ413及び分級ロータ415、並びにその駆動機構の劣化度合いを診断する構成について説明する。なお、以下の説明において、粉砕ロータ413及び分級ロータ415を区別して説明する必要がない場合、単にロータとも記載する。
【0129】
図14は実施の形態5における学習モデル250の構成例を示す模式図である。学習モデル250は、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。学習モデル250は、入力層251、中間層252A,252B、及び出力層253を備える。図14の例では、2つの中間層252A,252Bを記載しているが、中間層の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0130】
入力層251、中間層252A,252B、及び出力層253には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みおよびバイアスで結合されている。学習モデル250の入力層251には、入力層251が備えるノードの数と同数のデータが入力される。本実施の形態において、入力層251のノードに入力されるデータは、粉体処理システム1において計測される計測データである。具体的には、回転速度センサS7によって計測される粉砕ロータ413の回転速度、回転速度センサS8によって計測される分級ロータ415の回転速度、及び振動センサS11により計測される振動値を含む計測データが入力層251のノードに入力される。学習モデル250の入力層251に入力する計測データは、スカラーに限定する必要はなく、ベクトルデータ、画像データ等の何らかの構造を有するデータであってもよい。
【0131】
実施の形態5に係る学習モデル250は、これらの計測データの入力に対して、ロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力(粉体原料の供給速度)、粒子径分布についての演算結果を出力するように、所定の学習アルゴリズムによって学習される。学習方法は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0132】
学習モデル250の出力層253は、粉体処理システム1の状態として、ロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力(粉体原料の供給速度)、粒子径分布についての演算結果を出力する。具体的には、出力層253を第1ノードから第nノードまでのn個のノードにより構成し、第1ノードからロータの動力値がRP1、ケーシング410内の圧力がCP1、処理能力がPV1、粒子径分布がDD1である確率P1を出力し、第2ノードからロータの動力値がRP2、ケーシング410内の圧力がCP2、処理能力がPV2、粒子径分布がDD2である確率P2を出力し、…、第nノードからロータの動力値がRPn、ケーシング410内の圧力がCPn、処理能力がPVn、粒子径分布がDDnである確率Pnを出力する。出力層253を構成するノードの数や各ノードに割り当てる演算結果は、上述の例に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0133】
図15は実施の形態5に係る診断装置100の診断手順を説明するフローチャートである。実施の形態5では、ロータ及びその駆動機構の健全性を診断する手順について説明する。
【0134】
診断装置100の制御部101は、各種センサにより計測される計測データの入力を受付ける(ステップS501)。ステップS501において入力を受付ける計測データは、粉砕ロータ413の回転速度、分級ロータ415の回転速度、及び系内の振動値を含む。また、制御部101は、後述する推定値との比較のために、ロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力、及び粒子径分布を含む計測データの入力を受付ける。
【0135】
次いで、制御部101は、受付けた計測データのうち、粉砕ロータ413の回転速度、分級ロータ415の回転速度、及び系内の振動値を含むデータを学習モデル250の入力層251へ入力し、学習モデル250による演算を実行する(ステップS502)。学習モデル250は、演算結果として、ロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力、及び粒子径分布に関する演算結果を出力する。
【0136】
次いで、制御部101は、学習モデル250から演算結果を取得し(ステップS503)、ロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力、及び粒子径分布を推定する(ステップS504)。学習モデル250の出力層253は、演算結果として、ロータの動力値がRPi、ケーシング410内の圧力がCPi、処理能力がPVi、及び粒子径分布DDiである確率Pi(i=1~n)を各ノードから出力する。制御部101は、これらの確率Pi(i=1~n)のうち、最も確率が高い状態を特定することにより、粉砕ロータ413の回転速度、分級ロータ415の回転速度、及び系内の振動値から推定されるロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力、及び粒子径分布を求める。
【0137】
次いで、制御部101は、ステップS504の推定結果に基づき、ロータ及びその駆動機構の劣化度合いを診断する(ステップS505)。このとき、制御部101は、計測結果として得られるロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力、及び粒子径分布と、学習モデル250から推定されるロータの動力値、ケーシング410内の圧力、処理能力、及び粒子径分布とを比較し、その比較結果に基づき、ロータ及び駆動機構の劣化度合いを診断する。制御部101は、計測値と推定値との比較の際に、MT法を用いてもよい。制御部101は、例えば、計測される処理能力が推定値よりも低い場合、粉砕ロータ413の摩耗、ベアリングを含む駆動機構の劣化、異物の付着による負荷の増大などの可能性があるので、ロータ及びその駆動機構に劣化が生じていると診断できる。また、制御部101は、計測される振動値が推定値よりも高い場合、ベアリングを含む駆動機構の劣化、偏摩耗によるアンバランス起因の振動の増加などの可能性があるので、ロータ及び駆動機構に劣化が生じていると診断できる。更に、制御部101は、粒子径分布が推定値よりも増大している場合、分級ロータ415への異物の付着による開口率の減少、駆動機構の劣化に伴う回転速度の低下などの可能性があるので、ロータ及び駆動機構に劣化が生じていると診断できる。
【0138】
次いで、制御部101は、ステップS505の診断結果に基づき、警報の要否を判断する(ステップS506)。制御部101は、計測値と推定値との間に閾値以上の差が生じている場合、警報を要と判断する。警報を要と判断した場合(S506:YES)、制御部101は、警報を出力する(ステップS508)。具体的には、制御部101は、ロータ又はその駆動機構の劣化が想定以上である旨の警報情報を通信部105より端末装置500へ送信することにより、警報を出力する。また、制御部101は、ロータ又はその駆動機構の劣化が想定以上である旨の警報情報を表示部107に表示することによって警報を出力してもよい。
【0139】
ステップS506で警報を要しないと判断した場合(S506:NO)、制御部101は、ステップS505における診断結果を出力する(ステップS507)。このとき、制御部101は、診断結果を表示部107に表示してもよい。また、制御部101は、診断結果を通信部105より端末装置500へ送信してもよい。
【0140】
以上のように、本実施の形態に係る診断装置100は、学習モデル250の推定結果に基づき、ロータ及びその駆動機構の健全性(劣化度合い、及び異常の有無)を診断することができる。
【0141】
なお、本実施の形態では、あるタイミングで計測された計測データを学習モデル250に入力する構成としたが、実施の形態3と同様の学習モデルを用いて、時系列変化を診断してもよい。
【0142】
(実施の形態6)
実施の形態6では、粉体処理システム1に設けられた駆動機構の劣化度合いを診断する構成について説明する。ここで、駆動機構は、粉体処理システム1に設けられる粉砕ロータ413及び分級ロータ415を含む回転体を回転駆動するための駆動機構である。粉砕ロータ413及び分級ロータ415に限らず、パドルやスクリューなどの任意の回転体であってもよい。以下の例では、ロータ(粉砕ロータ413及び分級ロータ415)を駆動する駆動機構の劣化度合いを診断する構成について説明する。
【0143】
図16は実施の形態6における学習モデル260の構成例を示す模式図である。学習モデル260は、例えば、深層学習を含む機械学習の学習モデルであり、ニューラルネットワークによって構成される。学習モデル260は、入力層261、中間層262A,262B、及び出力層263を備える。図16の例では、2つの中間層262A,262Bを記載しているが、中間層の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0144】
入力層261、中間層262A,262B、及び出力層263には、1つまたは複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みおよびバイアスで結合されている。学習モデル260の入力層261には、入力層261が備えるノードの数と同数のデータが入力される。本実施の形態において、入力層261のノードに入力されるデータは、粉体処理システム1において計測される計測データである。具体的には、重量センサS9によって計測される粉体原料の供給速度、回転速度センサS7,S8によって計測されるロータの回転速度、図に示していない動力センサによって計測されるロータの動力値、粒子径センサS5によって計測される粒子径分布、温度センサS10によって計測される環境温度、音センサS12によって計測される音を含む計測データが入力層261のノードに入力される。学習モデル260の入力層261に入力する計測データは、スカラーに限定する必要はなく、ベクトルデータ、画像データ等の何らかの構造を有するデータであってもよい。
【0145】
実施の形態6に係る学習モデル260は、これらの計測データの入力に対して、駆動機構の振動値及び温度についての演算結果を出力するように、所定の学習アルゴリズムによって学習される。学習方法は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0146】
学習モデル260の出力層263は、粉体処理システム1の状態として、駆動機構の振動値及び温度についての演算結果を出力する。具体的には、出力層263を第1ノードから第nノードまでのn個のノードにより構成し、第1ノードから駆動機構の振動値がDV1、温度がDT1である確率P1を出力し、第2ノードから駆動機構の振動値がDV2、温度がDT2である確率P2を出力し、…、第nノードから駆動機構の振動値がDVn、温度がDTnである確率Pnを出力する。出力層263を構成するノードの数や各ノードに割り当てる演算結果は、上述の例に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0147】
図17は実施の形態6に係る診断装置100の診断手順を説明するフローチャートである。実施の形態6では、駆動機構の健全性を診断する手順について説明する。
【0148】
診断装置100の制御部101は、各種センサにより計測される計測データの入力を受付ける(ステップS601)。ステップS601において入力を受付ける計測データは、粉体原料の供給速度、ロータの回転速度及び動力値、粒子径分布、環境温度、系内から発せられる音を含む。また、制御部101は、後述する推定値との比較のために、駆動機構の振動値及び温度を含む計測データの入力を受付ける。
【0149】
次いで、制御部101は、受付けた計測データのうち、粉体原料の供給速度、ロータの回転速度及び動力値、粒子径分布、環境温度、系内から発せられる音を含むデータを学習モデル260の入力層261へ入力し、学習モデル260による演算を実行する(ステップS602)。学習モデル260は、演算結果として、駆動機構の振動値及び温度に関する演算結果を出力する。
【0150】
次いで、制御部101は、学習モデル260から演算結果を取得し(ステップS603)、駆動機構の振動値及び温度を推定する(ステップS604)。学習モデル260の出力層263は、演算結果として、駆動機構の振動値がDVi、駆動機構の温度がDTiである確率Pi(i=1~n)を各ノードから出力する。制御部101は、これらの確率Pi(i=1~n)のうち、最も確率が高い状態を特定することにより、粉体原料の供給速度、ロータの回転速度及び動力値、粒子径分布、環境温度、系内から発せられる音から推定される駆動機構の振動値及び温度を求める。
【0151】
次いで、制御部101は、ステップS604の推定結果に基づき、駆動機構の劣化度合いを診断する(ステップS605)。このとき、制御部101は、計測結果として駆動機構の振動値及び温度と、学習モデル260から推定される駆動機構の振動値及び温度とを比較し、その比較結果に基づき、駆動機構の劣化度合いを診断する。制御部101は、計測値と推定値との比較の際に、MT法を用いてもよい。制御部101は、例えば、計測される駆動機構の振動値及び温度が推定値よりも高い場合、嵌め合い摩耗や偏摩耗によるアンバランス起因の振動増加の可能性があるので、駆動機構に劣化が生じていると診断できる。
【0152】
次いで、制御部101は、ステップS605の診断結果に基づき、警報の要否を判断する(ステップS606)。制御部101は、計測値と推定値との間に閾値以上の差が生じている場合、警報を要と判断する。警報を要と判断した場合(S606:YES)、制御部101は、警報を出力する(ステップS608)。具体的には、制御部101は、駆動機構の劣化が想定以上である旨の警報情報を通信部105より端末装置500へ送信することにより、警報を出力する。また、制御部101は、駆動機構の劣化が想定以上である旨の警報情報を表示部107に表示することによって警報を出力してもよい。
【0153】
ステップS606で警報を要しないと判断した場合(S606:NO)、制御部101は、ステップS605における診断結果を出力する(ステップS607)。このとき、制御部101は、診断結果を表示部107に表示してもよい。また、制御部101は、診断結果を通信部105より端末装置500へ送信してもよい。
【0154】
以上のように、本実施の形態に係る診断装置100は、学習モデル260の推定結果に基づき、駆動機構の健全性(劣化度合い、及び異常の有無)を診断することができる。
【0155】
なお、本実施の形態では、あるタイミングで計測された計測データを学習モデル260に入力する構成としたが、実施の形態3と同様の学習モデルを用いて、時系列変化を診断してもよい。
【0156】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0157】
例えば、学習モデル210~260は、上述した各種パラメータだけでなく、粉体処理システム1の任意のコンポーネントを撮像して得られる画像データ、粉体処理システム1内の酸素濃度、粉体処理システム1から得られる粉体の粒子径、湿分、温度、密度、粒子径、円形度、混合度、流動性、BET(Brunauer - Emmett - Teller)値、NIR(Near Infrared)、XRD(X-ray Diffraction)、TG-DTA(Thermogravimetry - Differential Thermal Analysis)、MS(Mass Spectrometry)、SEM(Scanning Electron Microscope)、FE-SEM(Field Emission - SEM)、及びTEM(Transmission Electron Microscope)のデータの少なくとも1つを用いて学習される学習モデルであってもよい。
【0158】
また、粉体処理装置4は、粉砕処理及び分級処理を行う装置に限定されるものではない。例えば、粉砕処理及び分級処理に代えて、粉体原料の乾燥処理、2種類以上の粉体原料(若しくは粉体原料及び液体)を混合する混合処理、2種類以上の粉体粒子同士を結合させる複合化処理、粉体表面の平滑化などの表面処理、1又は複数の成分からなる粉体原料を、結合剤などを用いて、原料より大きな粒状に加工する造粒処理の少なくとも1つを実施する処理装置であってもよい。
【0159】
更に、粉体処理システム1は、異なる種類の処理を実行する複数の粉体処理装置4,4,…,4を備えてもよい。この場合、学習モデルは、粉体処理装置4の処理種別毎に用意される。また、粉体処理システム1は、操作部106または通信部105を通じて、粉体処理の種別に対する選択を受付け、選択された粉体処理の種別に対応して用意された学習モデルに対して、計測データを入力することによって、粉体処理システムの状態を推定してもよい。
【符号の説明】
【0160】
1…粉体処理システム、2…原料供給機、3…熱風発生機、4…粉体処理装置、5…サイクロン、6…集塵機、7…ブロワ、611…ろ布、S1…圧力センサ、S2…流量センサ、S3…動力センサ、S4…濃度センサ、S5…粒子径センサ、100…診断装置、101…制御部、102…記憶部、103…入力部、104…出力部、105…通信部、106…操作部、107…表示部、500…端末装置、501…制御部、502…記憶部、503…通信部、504…操作部、505…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図17