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特開2022-19816防放射線機能を備えた金属混紡繊維生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019816
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】防放射線機能を備えた金属混紡繊維生地
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/10 20060101AFI20220120BHJP
   G21F 1/08 20060101ALI20220120BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20220120BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G21F1/10
G21F1/08
G21F3/00
B32B5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021191342
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】202111246586.6
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521516651
【氏名又は名称】高梵(浙江)信息技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GAOFAN (Zhejiang) Information Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 206, floor 2, building 2, No. 1, Jiuhua Road, Jianggan District, Hangzhou, Zhejiang, 310016, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】呉 昆明
(72)【発明者】
【氏名】張 伝貴
(72)【発明者】
【氏名】李 偉
(57)【要約】
【課題】吸湿せず、柔らかくなく、快適性に劣るという問題を解決した放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地を提供する。
【解決手段】一実施形態によれば、基布層、放射線防止樹脂層、および機能層を内側から外側に順に含む放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地が開示され、放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末、グラフェン粉末を含む。この繊維生地中の放射防止樹脂層は金属導電特性を有し、多孔質ポリジメチルシロキサンを基材とし、多次元高細孔構造であり、生地全体の吸湿性と柔軟性の向上に役立ち、着心地が良い。同時にテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末とグラフェン粉末を放射線防止充填粒子として採用し、放射防止性能が著しく向上している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布層と、放射線防止樹脂層と、機能層とを内側から外側に順に含み、前記放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末、グラフェン粉末を含むことを特徴とする放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項2】
前記放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン40~60部、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート5~10部、ステアリン酸2~8部、ポリビニルアルコール2~8部、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末4~12部、グラフェン粉末4~12部を含むことを特徴とする請求項1に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項3】
前記多孔質ポリジメチルシロキサンの製造方法において、ポリジメチルシロキサンを採取し、ポリジメチルシロキサンとエトキシル化ポリエチレンイミン溶液とを1g:2~4μLの割合で均一に撹拌混合し、次いで溶液が完全に揮発するまで真空引きを行い、多孔質ポリジメチルシロキサンを得ることを特徴とする、請求項1または2に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項4】
前記真空引きは、60~70℃、0.1~0.3気圧の環境下で行われることを特徴とする請求項3に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項5】
前記多孔質ポリジメチルシロキサンの気孔率が60~75%であることを特徴とする請求項3に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項6】
前記テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末とグラフェン粉末との質量比が1:1であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項7】
前記グラフェン粉末は、酸化還元法、マイクロ機械剥離法または化学気相成長法を用いて酸化黒鉛を処理してなることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項8】
前記グラフェン粉末の粒径が10~500nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項9】
前記基布層は、ナイロン繊維とポリエステル繊維とが混紡されてなることを特徴とする請求項1に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【請求項10】
前記機能層が、耐摩耗層、疎水層、撥油層、抗菌層、耐温層、絶縁層、紫外線防止層のうちの1種又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類生地技術の分野に関し、特に、放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地に関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備技術の更なる発展に伴い、放射線は私たちの周りに随所に見られ、影が形に添うように、仕事用の携帯電話、パソコン、プリンタでも家庭用の電子レンジ、電気毛布、ドライヤーなどでも一定量の放射線が発生し、人体の健康に脅威作用があり、特に抵抗力の弱い老人と子供に対して危害を及ぼす作用が更に大きく、しかも、長期的に放射線環境下で仕事をすると、不眠多夢、免疫力低下などの症状を引き起こし、特に妊娠している女性にとっては、放射線に対して密接な保護が必要であり、胎児を保護する必要があるため、高度な放射線防止生地が必要であり、全面的に放射線を防護するために便利である。
【0003】
現在市販されている放射線防止生地は、主に金属短繊維生地と銀繊維生地の2種類である。これらの繊維生地は放射線防止性能が基本的に要求を満たすことができるが、吸湿せず、皮膚に刺激性があり、織物が硬くて柔らかくなく、快適感に劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既存の放射線防止生地に存在する、吸湿せず、柔らかくなく、快適性に劣るという問題を解決した放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、以下の技術的態様により、上記目的を達成する。
基布層、放射線防止樹脂層、および機能層を内側から外側に順に含む放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地であって、前記放射線防止樹脂層の製造原料が、多孔質ポリジメチルシロキサン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ステアリン酸、ポリビニルアルコール、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末、グラフェン粉末を含む、金属混紡繊維生地。
【0006】
さらなる改善は、前記放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン40~60部、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート5~10部、ステアリン酸2~8部、ポリビニルアルコール2~8部、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末4~12部、およびグラフェン粉末4~12部を含むことにある。
【0007】
さらなる改善は、多孔質ポリジメチルシロキサンの製造方法が、ポリジメチルシロキサンを採取し、ポリジメチルシロキサンをエトキシル化ポリエチレンイミン溶液と1 g:2~4μLの割合で均一に撹拌混合し、次いで溶液が完全に揮発するまで真空引きを行い、それで多孔質ポリジメチルシロキサンを得ることにある。
【0008】
さらなる改善は、前記真空引きは、60~70℃、0.1~0.3気圧の環境下で行われることである。
【0009】
さらなる改善は、前記多孔質ポリジメチルシロキサンの気孔率が60~75%であることにある。
【0010】
さらなる改善は、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末とグラフェン粉末の質量比が1:1であることにある。
【0011】
さらなる改善は、酸化還元法、マイクロメカニカル剥離法、または化学気相成長によって酸化黒鉛を処理することによってグラフェン粉末が作られることにある。
【0012】
さらなる改善は、前記グラフェン粉末の粒径が10~500nmであることにある。
【0013】
さらなる改善は、前記基布層は、ナイロン繊維とポリエステル繊維とが混紡されてなることにある。
【0014】
さらなる改善は、前記機能層が、耐摩耗層、疎水層、撥油層、抗菌層、耐温層、絶縁層、紫外線防止層のうちの1種又はそれらの組み合わせであることにある。
【0015】
本発明の有益な効果は下記のことにある。本願の生地は金属繊維を直接使用するのではなく、生地中の放射線防止樹脂層が金属導電特性を有し、多孔質ポリジメチルシロキサンを基材とし、多次元高細孔構造であり、生地全体の吸湿性と柔軟性の向上に寄与し、着用が快適である。同時にテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末とグラフェン粉末を放射線防止充填粒子として採用し、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド自体は一定の帯電防止性能を持っているが、グラフェン粉末は良好な導電性能を有し、本発明は両者を協同使用し、放射防止性能が著しく向上していることを発見した。また、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドは一定の融合作用を果たすことができ、粒子と基材の均一な分散融合を促進し、生地構造層の安定性を向上させることに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、実施例に関連して本願をさらに詳細に説明する。なお、以下の具体的な実施形態は、本願をさらに説明するためにのみ使用され、本願の保護範囲の制限と理解されるべきではない。当業者は、上述した出願の内容に基づいて、いくつかの非本質的な改善および調整を行うことができる。
【0017】
実施例1
基布層と、放射線防止樹脂層と、機能層とを内側から外側に順に含み、前記基布層は、ナイロン繊維とポリエステル繊維とが混紡されてなる、放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地であって、放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン40部、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート5部、ステアリン酸2部、ポリビニルアルコール2部、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末4部、およびグラフェン粉末4部を含み、前記機能層は耐摩耗層である。
【0018】
多孔質ポリジメチルシロキサンの製造方法は下記のとおりである。すなわち、ポリジメチルシロキサンを採取し、ポリジメチルシロキサンをエトキシル化ポリエチレンイミン溶液と1 g:2μLの割合で均一に撹拌混合し、次いで60℃、0.3気圧の環境下で溶液が完全に揮発するまで真空引きを行い、それで60.40%の気孔率を有する多孔質ポリジメチルシロキサンを得る。
【0019】
前記グラフェン粉末は、酸化黒鉛を酸化還元法で処理して作られ、グラフェン粉末の粒径は10~50nmである。
【0020】
実施例2
基布層と、放射線防止樹脂層と、機能層とを内側から外側に順に含み、前記基布層は、ナイロン繊維とポリエステル繊維とが混紡されてなる、放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地であって、放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン50部、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート8部、ステアリン酸5部、ポリビニルアルコール5部、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末8部、およびグラフェン粉末8部を含み、前記機能層は耐温層である。
【0021】
多孔質ポリジメチルシロキサンの製造方法は下記のとおりである。すなわち、ポリジメチルシロキサンを採取し、ポリジメチルシロキサンをエトキシル化ポリエチレンイミン溶液と1g:3μLの割合で均一に撹拌混合し、次いで65℃、0.2気圧の環境下で溶液が完全に揮発するまで真空引きを行い、それで67.53%の気孔率を有する多孔質ポリジメチルシロキサンを得る。
【0022】
前記グラフェン粉末は、酸化グラファイトをマイクロメカニカル剥離法で処理して作られ、グラフェン粉末の粒径は50~100nmである。
【0023】
実施例3
基布層と、放射線防止樹脂層と、機能層とを内側から外側に順に含み、前記基布層は、ナイロン繊維とポリエステル繊維とが混紡されてなる、放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地であって、放射線防止樹脂層の製造原料は、多孔質ポリジメチルシロキサン60部、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10部、ステアリン酸8部、ポリビニルアルコール8部、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末12部、およびグラフェン粉末12部を含み、前記機能層は抗菌層と紫外線防止層である。
【0024】
多孔質ポリジメチルシロキサンの製造方法は下記のとおりである。すなわち、ポリジメチルシロキサンを採取し、ポリジメチルシロキサンをエトキシル化ポリエチレンイミン溶液と1g:4μLの割合で均一に撹拌混合し、次いで70℃、0.1気圧の環境下で溶液が完全に揮発するまで真空引きを行い、それで73.69%の気孔率を有する多孔質ポリジメチルシロキサンを得る。
【0025】
グラフェン粉末は、酸化グラファイトを化学気相成長で処理して作られ、グラフェン粉末の粒径は450~500nmである。
【0026】
比較例1
多孔質ポリジメチルシロキサンを通常のポリジメチルシロキサンに置き換えることだけが異なるが、実施例2と実質的に同じ原料を有する放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地である。
【0027】
比較例2
テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末8部をグラフェン粉末8部に置き換え、すなわち合計16部のグラフェン粉末を使用することだけが異なるが、実施例2と実質的に同じ原料を有する放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地である。
【0028】
比較例3
グラフェン粉末8部をテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末8部に置き換え、すなわちテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末を合計16部使用することだけが異なるが、実施例2と実質的に同じ原料を有する放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地である。
【0029】
上記各実施例および比較割合は、具体的な製造工程において、放射線防止樹脂層中の各原料を均一に混合し、超音波分散してスラリーを形成し、スラリーを基布層表面に均一に塗布し、塗布厚さを0.35~0.40mm、塗布量を250~300g/mとした後、80℃で乾燥し、完全乾燥した後、従来方式で機能層を被覆した。
【0030】
上記実施例2および比較例1~3で製造した放射線防止機能を有する金属混紡繊維生地試料を採取し、それぞれ以下の試験を行った。
(1)吸湿性能:“GB/T 21655.1-2008吸湿速乾性の評定”を参照して、試料の吸湿率、滴下拡散時間、芯吸引高さを試験した。
(2)柔軟性能:織物スタイル試験器を用いて生地試料の柔軟度を測定した(I-V級、I級柔軟度が最適)。
(3)放射線防止性能:“GB/T 22583-2009放射線防止編物”標準を参照して、実施例と比較例の生地の水洗前、水洗30回後の電磁遮蔽効果を試験した。
【0031】
各試験結果は次の表を参照されたい。
【0032】
上表から分かるように、本発明の実施例2で製造した生地は、吸湿性能および柔軟性能が比較例1より明らかに優れていることから、多孔質ポリジメチルシロキサンは多次元高細孔構造を有しており、通常のポリジメチルシロキサンに対して生地の吸湿性能および柔軟性能を著しく向上させたことが示唆された。同時に、実施例2で製造した生地は水洗前、水洗30回後の電磁遮蔽効果はすべて42dB以上に達し、非常に突出していたが、比較例2はグラフェン粉末単一粒子のみを採用したため、電磁遮蔽効果が比較的に低く、しかも水洗過程は電磁遮蔽効果を明らかに低下させた。また、比較例3ではテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末単一粒子のみを用いていたため,電磁遮蔽能が低下しており,グラフェン粉末とテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド粉末を併用して初めて良好な放射線防止性能を発揮することが示唆された。
【0033】
上記の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を表すだけであり、説明は比較的に具体的かつ詳細であるが、本発明の特許範囲への限定として理解されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱することなく、いくつかの変形および改善も行うことができ、これらはすべて本発明の保護範囲に含まれる。