(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019838
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021194409
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2018042316の分割
【原出願日】2018-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】日本電産コパル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆男
(57)【要約】
【課題】 測定する方向のトルクに対するセンサの感度を高め、その他の方向のトルクに対する耐久性を向上したトルクセンサを提供することにある。
【解決手段】 トルクセンサ10は、環状に形成された第1領域部1と、第1領域部1の内側で、第1領域部1と同心円上に位置し、環状に形成された第2領域部2と、第1領域部1の内側と第2領域部2の外側とを接続する複数の第1梁部3と、第1領域部1の内側と第2領域部2の外側とを接続し、第1領域部1又は第2領域部2との接続部分の幅が第1領域部1と第2領域部2との間の中央部分の幅よりも狭く、中央部分に穴が設けられた形状の第2梁部4と、第2梁部4の穴を跨ぐように第2梁部4の両端よりも内側に固定され、第1領域部1と第2領域部2との相対的な変位を検出するための起歪体5とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された第1領域部と、
前記第1領域部の内側で、前記第1領域部と同心円上に位置し、環状に形成された第2領域部と、
前記第1領域部の内側と前記第2領域部の外側とを接続する複数の第1梁部と、
前記第1領域部の内側と前記第2領域部の外側とを接続し、前記第1領域部又は前記第2領域部との接続部分の幅が前記第1領域部と前記第2領域部との間の中央部分の幅よりも狭く、前記中央部分に穴が設けられた形状の第2梁部と、
前記第2梁部の前記穴を跨ぐように前記第2梁部の両端よりも内側に固定され、前記第1領域部と前記第2領域部との相対的な変位を検出するための起歪体と
を備えたことを特徴とするトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクを検出するトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、部材の弾性変形によりトルクを検出するセンサが知られている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部材の弾性変形によりトルクを検出するセンサの場合、センサの感度を高くするには、弾性変形する部材を変形し易くする必要があるが、部材を変形し易くすると、過大な負荷が掛けられた場合、センサの耐久性が低くなり易い。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、測定する方向のトルクに対するセンサの感度を高め、その他の方向のトルクに対する耐久性を向上したトルクセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の観点に従ったトルクセンサは、環状に形成された第1領域部と、前記第1領域部の内側で、前記第1領域部と同心円上に位置し、環状に形成された第2領域部と、前記第1領域部の内側と前記第2領域部の外側とを接続する複数の第1梁部と、前記第1領域部の内側と前記第2領域部の外側とを接続し、前記第1領域部又は前記第2領域部との接続部分の幅が前記第1領域部と前記第2領域部との間の中央部分の幅よりも狭く、前記中央部分に穴が設けられた形状の第2梁部と、前記第2梁部の前記穴を跨ぐように前記第2梁部の両端よりも内側に固定され、前記第1領域部と前記第2領域部との相対的な変位を検出するための起歪体とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、測定する方向の歪に対するセンサの感度を高め、その他の方向のトルクに対する耐久性を向上したトルクセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るトルクセンサの構成を示す構成図。
【
図2】第1の実施形態に係るトルクセンサの歪検出用梁部近傍を拡大した拡大図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係るトルクセンサの歪検出用梁部近傍を拡大した拡大図。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係るトルクセンサの歪検出用梁部近傍を拡大した拡大図。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係るトルクセンサの歪検出用梁部近傍を拡大した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るトルクセンサ10の構成を示す構成図である。
【0010】
トルクセンサ10は、Z軸(図面に対して垂直方向)を回転軸としたZ軸モーメントMzのトルクを検出するためのセンサである。例えば、トルクセンサ10は、ロボットなどに実装される。
【0011】
トルクセンサ10は、第1領域部1、第2領域部2、複数の梁部3、複数の歪検出用梁部4、及び、複数の起歪体5を備える。
【0012】
第1領域部1、第2領域部2、複数の梁部3、及び、複数の歪検出用梁部4は、金属などの材質により一体に形成される。第1領域部1は、環状に形成される。第2領域部2は、第1領域部1よりも径の小さい環状に形成される。第2領域部2は、第1領域部1の環状の内側(中心側)で、同心円上に位置する。複数の梁部3及び複数の歪検出用梁部4は、第2領域部2から放射状に延び、第1領域部1の内側と第2領域部2の外側を接続するように設けられる。梁部3は、第1領域部1と第2領域部2とを接続する役割を持つ。歪検出用梁部4は、梁部3と同じ役割の他に、歪を測定するための起歪体5が設けられる。梁部3は、いくつ設けられてもよい。歪検出用梁部4は、少なくとも起歪体5の数だけは設けられる。
【0013】
第1領域部1は、トルクを受ける負荷に取り付けられる部分である。例えば、第1領域部1は、ロボットの手又は腕などの可動部に取り付けられる。第2領域部2は、トルクを発生する動力源に取り付けられる部分である。例えば、第2領域部2は、モータ又は減速機などに取り付けられる。
【0014】
起歪体5は、第1領域部1と第2領域部2との相対的な変位による力が加わるように、歪検出用梁部4に設けられる。起歪体5は、例えば長方形状である。なお、起歪体5は、いくつ設けられてもよい。
【0015】
起歪体5は、歪を検出するセンサの役割を果たす歪ゲージを備える。歪ゲージは、例えば細長い形状であり、起歪体5の長手方向が歪ゲージの長手方向と一致するように設けられる。歪ゲージは、変形すると電気的変位が生じるように構成される。なお、歪ゲージは、電気的に検出可能な変位が生じるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、歪ゲージは、変形量に応じて、電気抵抗が変化してもよいし、電圧を発生させてもよい。トルクセンサ10は、これらの電気的変位を起歪体5(歪ゲージ)から検出することにより、トルクを測定する。
【0016】
例えば、起歪体5は、次のように用いる。トルクセンサ10にトルクが加わると、互いに対称となる応力が加わる位置(左右対称又は上下対称などになる位置)に、一対の起歪体5を設ける。測定しない方向の力については、一対の起歪体5のそれぞれの歪ゲージの出力を相殺することで、検出しないようにする。これにより、トルクセンサ10は、測定する方向(Z軸モーメントMz)のトルクのみを検出するようにする。
【0017】
図2は、本実施形態に係るトルクセンサ10の歪検出用梁部4近傍を拡大した拡大図である。
【0018】
起歪体5は、歪検出用梁部4が第1領域部1と第2領域部2とを接続する方向(以下、「接続方向」という。)と起歪体5の長手方向(又は、歪ゲージの長手方向)が平行になる向きで、歪検出用梁部4の中央に配置される。歪検出用梁部4は、Z軸モーメントMzの力を検出し易いように、以下のように構成される。
【0019】
歪検出用梁部4は、第1領域部1及び第2領域部2との接続部分の幅が第1領域部1と第2領域部2との間の中央部分の幅よりも狭い形状である。具体的には、歪検出用梁部4の両側Rは、第1領域部1又は第2領域部2の接続部分(両端)から中央部分に向けて膨らむような曲線に形成される。
【0020】
歪検出用梁部4の中央部分には、穴H1が設けられる。穴H1は、配置される起歪体5の長手方向の中央部分に位置する。起歪体5は、両端で歪検出用梁部4に固定される。起歪体5の両端以外の中央部分は、何処にも固定されず、宙に浮いた形になる。即ち、起歪体5は、穴H1を跨ぐように歪検出用梁部4に設けられる。
【0021】
歪検出用梁部4の両端を中央よりも幅を狭くすることで、Z軸モーメントMz以外の力が印加されても、歪検出用梁部4の両端の幅が狭い部分(
図2の点線で囲まれた部分)に撓みが集中するようにする。これにより、Z軸モーメントMz以外の力が起歪体5に加わる力を軽減する。また、歪検出用梁部4の中央に穴H1を設け、起歪体5が両端で固定されるようにすることで、Z軸モーメントMzの力により起歪体5が変形し易いようにする。起歪体5は、溶接などにより、歪検出用梁部4に固定される。
【0022】
起歪体5を歪検出用梁部4に固定する場合、端ではなく、端よりも少し内側の箇所Wで固定することで、トルクによる応力が起歪体5の端に集中することを避けられる。但し、端で固定した方が、トルクによる応力が起歪体5に加わり易い。このため、センサとしての感度を高くするために、端で固定してもよい。
【0023】
本実施形態によれば、歪検出用梁部4について、第1領域部1及び第2領域部2との接続部分の幅を第1領域部1と第2領域部2との間の中央部分の幅よりも狭くし、設けられた起歪体5の中央部分に位置する箇所に穴H1を設けて、起歪体5の両端部分が歪検出用梁部4に固定される。これにより、Z軸モーメントMzのトルクに対するセンサの感度を高め、Z軸モーメントMz以外の方向のトルクに対する耐久性を向上することができる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るトルクセンサ10Aの歪検出用梁部4A近傍を拡大した拡大図である。
【0024】
トルクセンサ10Aは、
図2に示す第1の実施形態に係るトルクセンサ10において、歪検出用梁部4を歪検出用梁部4Aに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0025】
歪検出用梁部4Aは、第1の実施形態に係る歪検出用梁部4において、補助梁部BMを、第1の実施形態に係る歪検出用梁部4の幅方向(接続方向と垂直の方向)と平行に、穴H1の中央部分に設けたものである。2つの穴H11,H12は、第1の実施形態に係る穴H1が補助梁部BMにより分断されたものに相当する。補助梁部BMは、2つの穴H11,H12が第1領域部1側と第2領域部2側に分断されるように設けられていれば、接続方向と必ずしも垂直でなくてもよい。その他の点は、第1の実施形態に係る歪検出用梁部4と同様である。
【0026】
補助梁部BMの中央部分の上には、起歪体5が位置する。起歪体5は、補助梁部BMには固定されないが、固定されてもよい。
【0027】
歪検出用梁部4Aは、補助梁部BMが設けられた形状にすることで、
図3に点線で示すように、H型形状部分を含む形状になる。このH型形状部分は、Z軸モーメントMzの方向の力に対しては変形し易いが、Y軸モーメントMyの方向の力に対しては変形し難い。
【0028】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0029】
歪検出用梁部4Aは、補助梁部BMを設けることにより、Z軸モーメントMzの方向の力に対しては変形し易いが、Y軸モーメントMyを含むZ軸モーメントMz以外の方向の力に対しては変形し難い形状にすることができる。これにより、Z軸モーメントMzの方向のトルクに対するセンサの感度を下げないようにして、Z軸モーメントMz以外の方向の外力に対する耐久性を向上することができる。
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係るトルクセンサ10Bの歪検出用梁部4B近傍を拡大した拡大図である。
【0030】
トルクセンサ10Bは、
図2に示す第1の実施形態に係るトルクセンサ10において、歪検出用梁部4を歪検出用梁部4Bに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0031】
歪検出用梁部4Bは、第1の実施形態に係る歪検出用梁部4において、第1領域部1との接続部分と第2領域部2との接続部分のそれぞれの付近で、穴H1から接続方向の延長線上に、肉抜き部L1を設けたものである。その他の点は、第1の実施形態に係る歪検出用梁部4と同様である。
【0032】
肉抜き部L1は、歪検出用梁部4Bの肉抜き部L1以外の部分と比較して、軽量化されるように形成される。肉抜き部L1は、他の部分と比較して厚みが薄くなるように窪みに形成してもよいし、穴があくように形成してもよい。なお、肉抜き部L1は、第1領域部1との接続部分と第2領域部2との接続部分のいずれか一方にのみ設けてもよい。また、両方に設ける場合でも、それぞれの形状が異なってもよい。
【0033】
肉抜き部L1は、特に、Z軸方向に力が加わるときに、この力による撓みをこの部分に集中させ、歪検出用梁部4Bの起歪体5が設けられた中央部分に加わる力を軽減する。
【0034】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、以下の作用効果を得ることができる。
【0035】
歪検出用梁部4Bに、肉抜き部L1を設けることにより、Z軸方向の力に対して、起歪体5が設けられた中央部分に加わる力を軽減することができる。これにより、起歪体5は、Z軸方向の力に対する歪を軽減でき、Z軸モーメントMzの方向のトルクに対するセンサの感度を向上することができる。
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係るトルクセンサ10Cの歪検出用梁部4C近傍を拡大した拡大図である。
【0036】
トルクセンサ10Cは、
図2に示す第1の実施形態に係るトルクセンサ10において、歪検出用梁部4を歪検出用梁部4Cに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0037】
歪検出用梁部4Cは、第1の実施形態に係る歪検出用梁部4において、第2の実施形態に係る補助梁部BM及び第3の実施形態に係る肉抜き部L1を設けたものである。
【0038】
本実施形態によれば、第1の実施形態による作用効果に加え、第2の実施形態及び第3の実施形態のそれぞれの作用効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、構成要素を削除、付加又は変更等をしてもよい。また、複数の実施形態について構成要素を組合せ又は交換等をすることで、新たな実施形態としてもよい。このような実施形態が上述した実施形態と直接的に異なるものであっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0040】
1…第1領域部、2…第2領域部、3…梁部、4…歪検出用梁部、5…起歪体、10…トルクセンサ。