(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019849
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/48 20200101AFI20220120BHJP
D06F 33/40 20200101ALI20220120BHJP
【FI】
D06F33/48
D06F33/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195031
(22)【出願日】2021-11-30
(62)【分割の表示】P 2019185556の分割
【原出願日】2019-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】乾 浩章
(57)【要約】
【課題】アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、できる限り所望の脱水率を得ることができる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機は、洗濯物を収容するドラムと、ドラムを回転駆動するモータと、モータの回転制御を実行する制御部と、回転するドラム内での洗濯物の偏在によるアンバランス量を検知し、当該アンバランス量を前記制御部に送るアンバランス検知部と、を備える。制御部は、脱水処理の実行中において、第1回転数での第1のアンバランス状態によって、第1回転数よりも低い第2回転数まで減速した後に第1回転数まで増速した回数をカウントし、カウントした回数が設定回数になるまで、第1回転数でのアンバランス量が第1のアンバランス状態にあると判定されて第2回転数まで減速した後に第1回転数まで増速する処理を繰り返す。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容するドラムと、
前記ドラムを回転駆動するモータと、
前記モータの回転制御を実行する制御部と、
回転する前記ドラム内での前記洗濯物の偏在によるアンバランス量を検知し、当該アンバランス量を前記制御部に送るアンバランス検知部と、
を備え、
前記制御部は、脱水処理工程の定常処理の実行中において、
前記定常処理における前記ドラムの回転数である第1回転数で前記ドラムが回転するように前記モータに指令し、
前記ドラムが前記第1回転数で回転している状態で、前記アンバランス検知部が検知したアンバランス量に基づいて第1のアンバランス状態にあるか否かを判定し、
前記第1のアンバランス状態にあると判定した場合に、前記第1回転数よりも低い前記定常処理における前記ドラムの回転数である第2回転数まで前記ドラムが減速するように前記モータに指令し、
前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、再び前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令し、
前記第2回転数まで減速した後に前記第1回転数まで増速した回数をカウントし、前記カウントした回数が設定回数になるまで、前記第1回転数での前記アンバランス量が前記第1のアンバランス状態にあると判定されて前記第2回転数まで減速した後に前記第1回転数まで増速する処理を繰り返す、
洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、前記ドラムが前記第2回転数で回転している状態で、前記アンバランス検知部が検知したアンバランス量に基づいて第2のアンバランス状態にあるか否かを判定し、
前記第2のアンバランス状態にないと判定した場合に前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令し、前記第2のアンバランス状態にあると判定した場合に、前記回転数を漸減させて停止するように前記モータに指令する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、前記ドラムが前記第2回転数で回転している状態で所定時間を経過すると、前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令する、
請求項1に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関し、特に脱水処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機には、ドラムの回転により洗濯物の脱水を行う脱水機能が付加されている。洗濯機で脱水処理が実行される場合において、ドラム内の洗濯物の偏在(アンバランス)などにより振動や騒音が発生することがある。
【0003】
特許文献1には、洗濯機で脱水処理を開始した後にドラムの回転数を所定よりも高い状態として実際に脱水処理を行っている最中に、ドラムの異常振動によりアンバランス状態であると判断した場合にドラムの回転を停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、洗濯機の脱水処理は、設定された所定時間が経過すれば停止されることとなるので、アンバランスの発生によりドラムの回転を停止する上記特許文献1に開示の技術では、充分な脱水率が得られない場合が生じ得る。
【0006】
なお、上記特許文献1に開示の技術をもとに、脱水処理の設定時間内であれば一旦ドラムの回転を停止した後に、再度ドラムを回転させた上で同様にアンバランスの判定を行うようにすることも考えられる。
【0007】
しかしながら、再度ドラムの回転を開始するような場合にも、一旦ドラムを停止させた後に実際に脱水処理が実行可能な回転数までドラムの回転数を増速するのには時間を要する。よって、この場合にも、設定された脱水時間内に充分な脱水率を得られない場合が生じ得る。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも高い脱水率を得ることができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る洗濯機は、洗濯物を収容するドラムと、ドラムを回転駆動するモータと、モータの回転制御を実行する制御部と、回転するドラム内での洗濯物の偏在によるアンバランス量を検知し、当該アンバランス量を制御部に送るアンバランス検知部と、を備える。
【0010】
そして、本態様に係る洗濯機の制御部は、脱水処理工程の定常処理の実行中において、前記定常処理における前記ドラムの回転数である第1回転数で前記ドラムが回転するように前記モータに指令し、前記ドラムが前記第1回転数で回転している状態で、前記アンバランス検知部が検知したアンバランス量に基づいて第1のアンバランス状態にあるか否かを判定し、前記第1のアンバランス状態にあると判定した場合に、前記第1回転数よりも低い前記定常処理における前記ドラムの回転数である第2回転数まで前記ドラムが減速するように前記モータに指令し、前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、再び前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令し、前記第2回転数まで減速した後に前記第1回転数まで増速した回数をカウントし、前記カウントした回数が設定回数になるまで、前記第1回転数での前記アンバランス量が前記第1のアンバランス状態にあると判定されて前記第2回転数まで減速した後に前記第1回転数まで増速する処理を繰り返す。
【発明の効果】
【0011】
上記態様に係る洗濯機では、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも高い脱水率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る洗濯機の外観構成を示す模式斜視図である。
【
図3】洗濯機の制御に係る構成の一部を示すブロック図である。
【
図4】洗濯機の制御部が実行する脱水処理の制御フローの一部を示すフローチャートである。
【
図5】洗濯機の制御部が実行する脱水処理の制御フローの一部を示すフローチャートである。
【
図6】洗濯機の脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。
【
図7】変形例1に係る脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。
【
図8】変形例2に係る脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。
【
図9】変形例3に係る脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[概要]
本発明の一態様に係る洗濯機は、洗濯物を収容するドラムと、ドラムを回転駆動するモータと、モータの回転制御を実行する制御部と、回転するドラム内での洗濯物の偏在によるアンバランス量を検知し、当該アンバランス量を制御部に送るアンバランス検知部と、を備える。
そして、本態様に係る洗濯機の制御部は、脱水処理工程の定常処理の実行中において、前記定常処理における前記ドラムの回転数である第1回転数で前記ドラムが回転するように前記モータに指令し、前記ドラムが前記第1回転数で回転している状態で、前記アンバランス検知部が検知したアンバランス量に基づいて第1のアンバランス状態にあるか否かを判定し、前記第1のアンバランス状態にあると判定した場合に、前記第1回転数よりも低い前記定常処理における前記ドラムの回転数である第2回転数まで前記ドラムが減速するように前記モータに指令し、前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、再び前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令し、前記第2回転数まで減速した後に前記第1回転数まで増速した回数をカウントし、前記カウントした回数が設定回数になるまで、前記第1回転数での前記アンバランス量が前記第1のアンバランス状態にあると判定されて前記第2回転数まで減速した後に前記第1回転数まで増速する処理を繰り返す。
上記態様に係る洗濯機において、前記制御部は、前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、前記ドラムが前記第2回転数で回転している状態で、前記アンバランス検知部が検知したアンバランス量に基づいて第2のアンバランス状態にあるか否かを判定し、前記第2のアンバランス状態にないと判定した場合に前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令し、前記第2のアンバランス状態にあると判定した場合に、前記回転数を漸減させて停止するように前記モータに指令する。
上記態様に係る洗濯機において、前記制御部は、前記ドラムの回転数が減速により前記第2回転数に到達した場合に、前記ドラムが前記第2回転数で回転している状態で所定時間を経過すると、前記第1回転数まで前記ドラムが増速するように前記モータに指令する。
【0014】
そして、明細書に係る洗濯機の制御部は、脱水処理の実行中において、第1回転数で前記ドラムが回転するように前記モータに指令し、前記ドラムが前記第1回転数で回転している状態で、前記アンバランス量に基づいて所定のアンバランス状態にあるか否かを判定し、前記所定のアンバランス状態にあると判定した場合に、前記第1回転数よりも低く0rpmよりも高い回転数である第2回転数まで前記ドラムが減速するように前記モータに指令する。
【0015】
上記明細書に係る洗濯機では、ドラムが第1回転数で回転している状態でのアンバランス判定において、制御部が所定のアンバランス状態にあると判定した場合にもドラムの回転を停止(0rpm)にするのではなく、0rpmよりも高い第2回転数でドラムを回転させることとしているので、上記特許文献1に開示の技術よりも脱水処理のために割り当てられた時間内に可能な限りの高い脱水率を得ることができる。
【0016】
また、上記明細書に係る洗濯機では、ドラムが第1回転数で回転している状態でのアンバランス判定において、制御部が所定のアンバランス状態にあると判定した場合に、第1回転数よりも低い回転数である第2回転数までドラムを減速させることとしているので、アンバランス状態の解消や緩和を図ることもできる場合があり、また回転数を減速することでアンバランスによる振動や騒音の抑制を図ることができる。
【0017】
上記明細書に係る洗濯機において、制御部は、ドラムの回転数が減速により第2回転数に到達した場合に、再び第1回転数までドラムが増速するようにモータに指令する、こととしてもよい。
【0018】
上記明細書に係る洗濯機では、再び第1回転数までドラムの回転数を上げているため、上記特許文献1に開示の技術のようにドラムの回転を停止(0rpm)とはしないので、脱水処理のために割り当てられた時間内に可能な限りの高い脱水率を得ることができる。
【0019】
また、上記明細書に係る洗濯機では、ドラムの回転数が第2回転数に到達した後、再び第1回転数まで増速するリトライ動作を実行することとしているので、より高い脱水率の実現が可能である。
【0020】
上記明細書に係る洗濯機において、制御部は、ドラムの回転数が増速により再び第1回転数に到達した場合に、所定のアンバランス状態にあるか否かの判定を実行する、こととしてもよい。
【0021】
上記明細書に係る洗濯機では、一旦第2回転数までドラムの回転を減速した後に再び増速して第1回転数までドラムの回転数を増速した場合(リトライした場合)にも、ドラムの回転数が第1回転数に到達した場合に再度所定のアンバランス状態にあるか否かの判定を行うこととしているので、そのまま第1回転数でドラムを回転させることができる場合も生じ得る。よって、上記明細書に係る態様の洗濯機では、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、より高い脱水率を得ることも可能となる。
【0022】
なお、ドラムの回転数を第1回転数と第2回転数との間で増減することにより、ドラム内の洗濯物の偏在状態(アンバランス状態)が解消又は緩和する場合も考えられ、上記明細書でのリトライ後のアンバランス状態の再判定はこれを考慮したものである。
【0023】
上記明細書に係る洗濯機において、制御部は、ドラムの回転数が第2回転数を維持するようにモータに指令する、こととしてもよい。
【0024】
上記明細書に係る洗濯機では、第2回転数を維持することによって、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつ高い脱水率を得ることができる。
【0025】
上記明細書に係る洗濯機において、制御部は、脱水処理の実行開始からドラムが最初に第1回転数に至るまでの間に、ドラムの回転数が第1回転数よりも低く0rpmよりも高い第3回転数に到達した場合に、所定のアンバランス状態にあるか否かの判定を実行する、こととしてもよい。
【0026】
上記明細書に係る洗濯機では、脱水処理の実行開始からドラムが最初に第1回転数に至るまでの間の、ドラムの回転数が第3回転数に到達した場合に所定のアンバランス状態にあるか否かの判定を行うこととしているので、明らかに所定のアンバランス状態にある場合にドラムの回転数を増速することを回避することも可能となる。よって、上記明細書に係る洗濯機では、よりアンバランスによる振動や騒音の抑制を図ることが可能となる。
【0027】
上記明細書に係る洗濯機において、制御部は、ドラムの回転数が第3回転数に到達した場合に、アンバランス量に基づいて第1回転数の値を設定する、こととしてもよい。
【0028】
上記明細書に係る洗濯機では、ドラムの回転数が第3回転数に到達した場合もアンバランス量の大小に応じて、その後のドラムの回転数である第1回転数の値を設定することとしているので、振動や騒音などの抑制と高い脱水率の実現との両立を図ることができる最適な第1回転数でドラムを回転させることができる。よって、上記明細書に係る洗濯機では、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも高い脱水率を得るのにさらに優れる。
【0029】
以上のように、本発明の各態様に係る洗濯機では、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつ高い脱水率を得ることができる。
【0030】
以下では、実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例を例示するものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0031】
[実施形態]
1.概略構造
本実施形態に係る洗濯機1の概略構造について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、洗濯機1の外観構成を示す模式斜視図であり、
図2は、洗濯機1の内部構成を示す模式断面図である。
【0032】
図1および
図2に示すように、本実施形態では、洗濯槽14の中心軸が水平方向(Y方向)に配された、所謂、ドラム式の洗濯機1を一例として説明する。ただし、縦型洗濯機に適用することも勿論可能である。
【0033】
図1に示すように、洗濯機1では、略直方体形状の筐体10を備える。筐体10の+Y側の面には洗濯槽14の開口部を開閉するためのドア11が設けられている。ここで、筐体10のドア11が設けられた側(+Y側)を洗濯機1の前面側とし、反対の-Y側を背面側とする。
【0034】
筐体10における前面側のドア11が設けられた部分の上側(+Z側)には、インターフェースユニット12と洗剤投入部13とが設けられている。インターフェースユニット12は、その一部の面だけが筐体10の前面側に露出している。インターフェースユニット12は、洗濯の運転についてユーザが操作するために操作部121,123,124と、ユーザによる入力内容や運転状況などを表示するために表示部122と、を有する。
【0035】
操作部121,123,124は、電源のON/OFF機能、運転スタート・一時停止の機能、および洗濯コースの選択機能などを備える。
【0036】
洗剤投入部13は、ユーザの操作により蓋部を開くことができるようになっており、蓋部を開いた状態で洗濯槽14に対して洗剤を投入することができる部分である。
【0037】
図2に示すように、筐体10の内部には、洗濯水などを貯留するための洗濯槽14が収容されている。洗濯槽14の+Y側の開口部は、ドア11で閉じることができるようになっている。そして、洗濯槽14の内部には、洗濯物(衣類など)が投入されるドラム15が収容されている。
【0038】
筐体10の内部におけるドラム15の-Y側には、ドラム15を回転駆動するためのモータ16が収容されている。
【0039】
筐体10の内部における+Z側の部分には、モータ16の回転制御等を実行する制御ユニット17が収容されている。制御ユニット17の構成については後述する。
【0040】
2.洗濯機1の制御に係る構成
洗濯機1の制御に係る構成について、
図3を用いて説明する。なお、
図3では、洗濯機1の制御に係る構成の一部だけを図示している。
【0041】
図3に示すように、本実施形態に係る洗濯機1では、制御ユニット17に対して、操作部121、電流計測部19、および回転数計測部20から適時に信号が入力される。
【0042】
一方、制御ユニット17は、入力された各信号に基づいて、モータ16および表示部122に適時に信号を出力する。
【0043】
ここで、制御ユニット17は、制御部171、記憶部172、およびタイマ173を有する。制御部171は、マイクロコンピュータを含み構成されている。記憶部172は、例えば、EEPROM、RAM、ROMなどを含み構成されている。
【0044】
電流計測部19は、脱水処理の実行中において、モータ16に対する電流量を適時に計測し、制御ユニット17に当該計測情報を出力する部分である。
【0045】
回転数計測部20は、ドラム15の回転数としてモータ16の回転数を適時に計測し、制御ユニット17に当該計測情報を出力する。
【0046】
制御ユニット17の記憶部172には、運転コースごとに、モータ16(ドラム15)の回転数と、当該回転数を達成するためにモータ16に流すべき電流値と、が対応付けられて記憶されている。
【0047】
また、記憶部172には、上記排水を行った後に、ドラム15の内部での洗濯物の偏在の度合いであるアンバランス量と、モータ16を目標回転数で回転させるのに必要な電流値と、についても対応付けられて記憶されている。即ち、ドラム15の内部における洗濯物のアンバランス量が大きいほどモータ16の負荷が増大され、同じ回転数でモータ16を回転させようとしても大きな電流を流す必要がある。このような観点から、本実施形態に係る洗濯機1の制御部171は、電流計測部19、および回転数計測部20からの各情報を適時に受けて、フィードバック制御によりモータ16を回転駆動する。
【0048】
本実施形態に係る洗濯機1では、電流計測部19と回転数計測部20との協働によりアンバランス検知部としての機能を果たす。なお、電流計測部19と回転数計測部20は、フィードバック制御するためのモータ16から制御部171への出力を利用して計測している。
【0049】
3.脱水処理の制御
洗濯機1にて実行される脱水処理の制御について、
図4から
図6を用いて説明する。
図4および
図5は、洗濯機1の制御部171が実行する脱水処理の制御フローを示すフローチャートであり、
図6は、洗濯機1の脱水処理実行に係る経過時間とドラム15の回転数との関係を示すタイムチャートである。
【0050】
図4に示すように、脱水処理が開始されると、設定の初期化が行われた後(ステップS1)、タイマ173をON状態として計時を開始するとともに(ステップS2)、モータ16の回転駆動を開始させる(ステップS3)。そして、本実施形態に係る洗濯機1では、脱水処理工程の最初の段階でアンバランス低減動作を行う(ステップS4)。具体的には、
図6に示すように、制御部171は、ドラム回転数をR
0とR
1との間で複数回増減するようにモータ16への電流を制御する。
【0051】
図4に戻って、アンバランス低減動作が終了すると、ドラム15の回転がR
2まで経過時間t
1に増速するようにモータ16への電流を制御する(ステップS5)。
なお、ステップS1~S5までの処理は所謂、脱水起動処理であり、アンバランス状態がひどい場合を除いて、脱水工程の定常処理へと移行する。脱水起動処理におけるドラム15の回転数を脱水起動域とし、定常処理におけるドラム15の回転数を定常域とする。脱水起動域(の回転数)は、定常域(の回転数)よりも低い。例えば、ドラム15の回転数が0(rpm)~R
2の場合が脱水起動域であり、アンバランス状態によっては脱水工程初期まで戻ってアンバランス状態を改善する場合を含む。また、R
3、R
4、R
5の場合が定常域である。
【0052】
ステップS5で回転数がR
2になると、
図6の符号CP
0で示すように、ドラム15の内部の洗濯物が偏在することで所定のアンバランス状態が生じているか否かを判定する(ステップS6)。ここでの所定のアンバランス状態は、ドラム15を定常域内の回転数でドラム15を回転させることができない状態であり、所定のアンバランス状態になっていないとは、定常域内の回転数でドラム15を回転できる状態である。なお、
図6(
図7~
図9まで同様)では、CP
0の判定において、回転数R
2を維持していないが、実際は所定時間回転数を維持して行われる。
【0053】
なお、本実施形態に係る制御部171は、モータ16(ドラム15)の目標回転数と、当該目標回転数を達成するためにモータ16の電流値と、から予め記憶部172に記憶されたアンバランス量に関するデータを参照して、振動および騒音の観点から許容できるアンバランス量であるか否か(所定のアンバランス状態であるか否か)を判定する。
【0054】
制御部171は、アンバランス量に基づき所定のアンバランス状態が生じていると判定した場合には(ステップS6:Yes)、ステップS4に戻ってアンバランス低減動作等を行う。
一方、ステップS6で所定のアンバンス状態が生じていないと判定した場合には(ステップS6:No)、
図6に示すように、ドラム15の回転数を定常域内の回転数R
3まで経過時間t
2に増速するようにモータ16への電流を制御する(ステップS7)。そして、制御部171は、経過時間がt
3になるまでドラム15の回転数がR
3で維持されるように、モータ16への電流を制御する(ステップS8:No)。
【0055】
ここで、本実施形態においてドラム15の回転数R3は、脱水起動域でのドラム15の回転数よりも高い、定常域内の回転数であり、制御ユニット17の記憶部172に予め記憶されている。
【0056】
制御部171は、経過時間t
3になったと判定した場合には(ステップS8:Yes)、
図6の符号CP
1で示すように、ドラム15の内部の洗濯物が偏在することで所定のアンバランス状態が生じているか否かを判定する(ステップS9)。ここでの所定のアンバランス状態は、回転数R
3以上にドラム15を回転させることができない状態である。
【0057】
制御部171は、アンバランス量に基づき所定のアンバランス状態が生じていないと判定した場合には(ステップS9:No)、
図5に示すようにドラム15の回転数がR
4まで増速するようにモータ16への電流を制御する(ステップS15)。
図6に示すように、ドラム15の増速は、経過時間t
4で回転数R
4になるように行われる。回転数R
4については、定常域内の回転数であり、制御ユニット17の記憶部172に予め記憶されている。回転数R
4は、アンバランス量が小さい場合に、定常処理で行われる最高回転数でもある。
【0058】
図5に戻って、制御部171は、内蔵されたカウンタによる回数カウント(時間)を開始し(ステップS16)、経過時間がt
5になるまでドラム15の回転数がR
4で維持されるように、モータ16への電流を制御する(ステップS17:No)。
【0059】
制御部171は、経過時間t
5になったと判定した場合には(ステップS17:Yes)、
図6の符号CP
2で示すように、ドラム15の内部の洗濯物が偏在することで所定のアンバランス状態になっているか否かを判定する(ステップS18)。ここでの所定のアンバランス状態は、回転数R
4を維持できない範囲のアンバランス状態であり、所定のアンバランス状態になっていないとは、回転数R
4を維持できる状態である。
制御部171は、アンバランス量に基づき所定のアンバランス状態になっていないと判定した場合には(ステップS18:No)、カウンタをリセットした上で(ステップS19)、経過時間が脱水処理に割り当てられた時間であるt
12に達するまで(ステップS20:No)、ドラム15の回転数がR
4を維持するようにモータ16への電流を制御する。そして、制御部171は、経過時間がt
12に達したと判定した場合には(ステップS20:Yes)、
図4に示すように、モータ16の回転数を漸減させて停止させ(ステップS14)、タイマ173での計時を終了して(ステップS12)、
図6に示す経過時間t
13でドラム15の回転数が0rpmとなり脱水処理を終了する。なお、ステップS18での判定でアンバランス状態になっていない場合のタイムチャートは、経過時間がt
5からt
13までの一点鎖線L1で示す線分である。
【0060】
一方、制御部171は、ステップS18で所定のアンバランス状態になっていると判定した場合には(ステップS18:Yes)、ドラム15の回転数が回転数R
4よりも低いR
5まで減速するようにモータ16への電流を制御する(ステップS21)。
図6に示すように、ドラム15の減速は、経過時間t
6で回転数R
5になるように行われる。回転数R
5については、定常域内の回転数であり、ここでは、回転数R
3とR
4との間の回転数であり、制御ユニット17の記憶部172に予め記憶されている。
【0061】
制御部171は、経過時間t
6になり回転数がR
5になった場合に、
図6の符号CP
3で示すように、ドラム15の内部の洗濯物が偏在することで所定のアンバランス状態になっているか否かを判定する(ステップS22)。ここでの所定のアンバランス状態は、回転数R
5を維持できない範囲のアンバランス状態であり、所定のアンバランス状態になっていないとは、回転数R
5を維持できる状態である。なお、
図6(
図7~
図9まで同様)では、CP
3の判定において、回転数R
5を維持していないが、実際は回転数R
5を所定時間維持して行われ、
図6のCP
6の判定も同様である。
【0062】
制御部171は、アンバランス量に基づき所定のアンバランス状態になっていないと判定した場合には(ステップS22:No)、カウンタをリセットした上で(ステップS19)、経過時間が脱水処理に割り当てられた時間であるt
12に到達するまで(ステップS20:No)、ドラム15の回転数がR
5を維持するようにモータ16への電流を制御する。そして、制御部171は、経過時間がt
12に到達したと判定した場合には(ステップS20:Yes)、
図4に示すように、モータ16の回転数を漸減させて停止させ(ステップS14)、タイマ173での計時を終了して(ステップS12)、
図6に示す経過時間t
14でドラム15の回転数が0rpmとなり脱水処理を終了する。なお、ステップS22での判定でアンバランス状態になっていない場合のタイムチャートは、経過時間がt
6からt
10までの二点鎖線L2と、t
10からt
14までの破線とで示す線分である。
【0063】
制御部171は、ステップS22で所定のアンバランス状態になっていると判定した場合には(ステップS22:Yes)、ドラム15の回転数が、回転数R
5よりも低いR
3まで減速するようにモータ16への電流を制御する(ステップS23)。
図6に示すように、ドラム15の減速は、経過時間t
7で回転数R
3になるように行われる。そして、制御部171は、回転数がR
3に到達した経過時間t
7からt
8までの差分である△tが経過するまで(ステップS24:No)、ドラム15の回転数がR
3を維持するようにモータ16への電流を制御する。
そして、制御部171は、時間△tが経過した(経過時間t
8に達した)と判定した場合には(ステップS24:Yes)、
図6の符号CP
4で示すように、ドラム15の内部の洗濯物が偏在することで所定のアンバランス状態になっているか否かを判定する(ステップS25)。ここでの所定のアンバランス状態は、回転数R
3で回転させると危険な状態であり、所定のアンバランス状態になっていないとは、回転数R
3で回転可能な状態である。
【0064】
制御部171は、ステップS25の判定でアンバランス量に基づき所定のアンバランス状態になっていないと判定した場合には(ステップS25:No)、リトライ数を示すカウンタ値nが予め設定された値n
thに到達したか否かを判定する(ステップS26)。制御部171は、カウンタ値nが値n
thに到達したと判定した場合には(ステップS26:Yes)、ドラム15の回転数がR
3を維持するようにモータ16への電流を制御する。そして、制御部171は、ステップS19、ステップS20、ステップS14、およびステップS12の各処理を実行した後に、
図6に示す経過時間t
15でドラム15の回転数が0rpmとなり脱水処理を終了する。
【0065】
一方、制御部171は、ステップS26でカウンタ値nが値nthに未だ到達していないと判定した場合には(ステップS26:No)、カウンタ値nが1つ加算し(ステップS27)、ドラム15の回転数を再びR4に増速する(ステップS28)。そして、制御部171は、ステップS18、ステップS21からステップS26までの処理を繰り返し実行する。
【0066】
なお、ステップS26の判定でカウントアップとなる値n
thは、回転数がR4とR3との間で増速・減速の繰り返し数を示し、“2”以上の値であればよいが、
図6に示すように、本実施形態では一例として“5”としている。このステップS18、ステップS21からステップS26までの処理を繰り返し実行する場合のタイムチャートは、経過時間がt
8からt
15までの実線L3で示す線分である。
【0067】
制御部171は、ステップS25の判定でアンバランス量に基づき所定のアンバランス状態になっていると判定した場合には(ステップS25:Yes)、
図4に示すように、モータ16の回転数を漸減させて停止させる(ステップS10)。制御部171は、モータ16を停止させた時点で経過時間が脱水処理に割り当てられた時間であるt
12に到達しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0068】
ステップS11で経過時間t12に到達している場合には(ステップS11:Yes)、制御部171はステップS12を実行した後に脱水処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS11で経過時間t12に到達していない場合には(ステップS11:No)、制御部171はモータ16を再び駆動し(ステップS13)、ステップS7からステップS11の処理を繰り返し実行する。
【0070】
本実施形態において、回転数R
4が“第1回転数”の一例に該当し、経過時間t
7以降のドラム15の回転数であるR
3が“第2回転数”の一例に該当する。また、経過時間t
2から経過時間t
3の間でのドラム15の回転数であるR
3が“第3回転数”の一例に該当する。
なお、
図6では、回転数R
4のCP
5以降の判定、回転数R
3でのCP
4よりも後の判定において、回転数を維持していないが、実際は回転数を所定時間維持して行われている。
【0071】
4.効果
本実施形態に係る洗濯機1では、ドラム15が回転数R4で回転している状態でのアンバランス判定CP2,CP5において、制御部171が所定のアンバランス状態にあると判定した場合にもドラム15の回転を停止(0rpm)にするのではなく、0rpmよりも高い回転数R5又は回転数R3でドラム15を回転させることとしているので、上記特許文献1に開示の技術よりも脱水処理のために割り当てられた時間内に可能な限りの脱水率を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る洗濯機1では、ドラム15が回転数R4で回転している状態でのアンバランス判定CP2,CP5において、制御部171が所定のアンバランス状態にあると判定した場合に、回転数R4よりも低い回転数である回転数R5又は回転数R3までドラム15を減速させることとしているので、アンバランス状態の解消や緩和を図ることもできる場合があり、また回転数を減速することでアンバランスによる振動や騒音の抑制を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る洗濯機1では、回転数R3は回転数R4より小さいが、上記特許文献1に開示の技術のようにドラムの回転を停止(0rpm)とはしないので、脱水処理のために割り当てられた時間内に可能な限りの脱水率を得ることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る洗濯機1では、減速によりドラム15の回転数が回転数R3に到達した後、再びR4まで回転数を増速するリトライ動作を実行することとしているので、より高い脱水率の実現が可能である。
【0075】
また、本実施形態に係る洗濯機1では、ドラムの回転を一旦R3まで減速した後に再び増速して回転数R4までドラム15の回転数を増速した場合(リトライした場合)にも、ドラム15の回転数が回転数R4に到達した場合に再度所定のアンバランス状態にあるか否かの判定(アンバランス判定CP5)を行うこととしているので、そのまま回転数R4でドラム15の回転を維持することができる場合も生じ得る。よって、本実施形態に係る洗濯機1では、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、より目標に近い脱水率を得ることも可能となる。
【0076】
なお、ドラム15の回転数をR4,R5,R3の間で増減することにより、ドラム15内の洗濯物のアンバランス状態が解消又は緩和する場合も考えられ、本実施形態でのリトライ時のアンバランス状態の再判定CP3~CP6,・・はこれを考慮したものである。
【0077】
また、ドラム15の回転数を、R4,R5,R3と減速後に、再度回転数をR4に増速する際に、アンバランス状態を判定しているため、何らかの要因で洗濯物が移動してアンバランス量が大きくなった場合でも、ドラム15を停止させることができる。よって、本実施形態に係る洗濯機1では、脱水率を高めつつ、安全性も確保される。
【0078】
また、本実施形態に係る洗濯機1では、一例として
図6に示すように、回転数R
5が定常域内の回転数の場合であって、経過時間t
10以降において当該回転数R
5を維持することによって、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、所望の脱水率を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る洗濯機1では、脱水処理の実行開始からドラム15が最初に回転数R4に至るまでの間の、ドラム15の回転数がR3に到達した場合に所定のアンバランス状態にあるか否かの判定(アンバランス判定CP1)を行うこととしているので、明らかに所定のアンバランス状態にある場合にまでドラム15の回転数を増速することを回避することも可能となる。よって、本実施形態に係る洗濯機1では、よりアンバランスによる振動や騒音の抑制を図ることが可能となる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る洗濯機1では、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、できる限り所望の脱水率を得ることができる。
【0081】
[変形例1]
変形例1に係る洗濯機について、
図7を用いて説明する。
図7は、変形例1に係る洗濯機での、脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。なお、以下では、上記実施形態との差異部分だけを説明する。
【0082】
図7に示すように、本変形例に係る洗濯機では、脱水処理の実行において、経過時間t
1で第1回目のアンバランス判定CP
0を実行して、回転数R
4まで回転数を増速できると判定されると、経過時間t
14においてドラム15の回転数がR
4となるようにモータ16を一気に増速することとしている。即ち、上記実施形態では、第1回目のアンバランス判定CP
0後にドラム15の回転数をR
3で所定時間(経過時間t
2~t
3)維持し、その後にR
4とすることとしたが、本変形例に係る洗濯機では、第1回目のアンバランス判定CP
0後のアンバンス状態が良好(アンバランス量が小さい)な場合、回転数R
3で所定時間維持することなくR
4に到達させても良い。
【0083】
また、上記実施形態では、経過時間t
3で第1回目のアンバランス判定CP
1を実行することとしたが、本変形例に係る洗濯機では、ドラム15がR
4で回転している経過時間t
17で第1回目のアンバランス判定CP
7を実行する。
なお、
図7では、回転数R
4のCP
7よりも後の判定、回転数R
3のCP
9よりも後の判定、回転数R
5のCP
8以降の判定において、回転数を維持していないが、実際は回転数を所定時間維持して行われている。
【0084】
なお、経過時間t17以降に制御部171が実行する脱水処理制御については、上記実施形態と同様であり、減速により回転数がR5に到達した経過時間t18で実行するアンバランス判定CP8、さらに減速により回転数がR3に到達した経過時間t20で実行するアンバランス判定CP9などについても、上記実施形態と同様である。
【0085】
本変形例では、回転数R4が“第1回転数”の一例に該当し、経過時間t17以降のドラム15の回転数であるR3が“第2回転数”の一例に該当する。ただし、上記実施形態と同様に、アンバランス判定CP2で、ドラム15の回転数をR5に維持できると判定されて、回転数をR5に減速した場合には、R5が“第2回転数”の一例に該当すると規定することもできる。
【0086】
本変形例に係る洗濯機では、脱水処理において、経過時間t1~t14において、回転数R3で所定時間維持することなくR4に到達させることとしたが、上記実施形態に係る洗濯機1と同様に、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、できる限り所望の脱水率を得ることができる。
【0087】
[変形例2]
変形例2に係る洗濯機について、
図8を用いて説明する。
図8は、変形例2に係る洗濯機での、脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。なお、以下では、上記実施形態との差異部分だけを説明する。
【0088】
上記実施形態では、ドラム15の回転数をR
4からR
3へと減速する途中の回転数R
5である経過時間t
6、t
10などでアンバランス判定CP
3,CP
6を実行することとしたが、
図8に示すように、本変形例に係る洗濯機の制御部は、経過時間t
6、t
10などでアンバランス判定を実行しないこととしている。これにより制御の簡素化を図ることができる。
なお、
図8では、回転数R
4のCP
5以降の判定、回転数R
3のCP
4よりも後の判定において、回転数を維持していないが、実際は回転数を所定時間維持して行われている。
【0089】
なお、
図8では、一例として、経過時間t
10以降にドラム15の回転数をR
5で維持することとしている。これは、経過時間t
9で実行するアンバランス判定CP
5において制御部が取得したアンバランス量に基づいて、回転数をR
5で維持することができる所定のアンバランス状態である旨も判定(推定)している。これについても、予め記憶部172に記憶されたアンバランス量とドラム15の回転数との関係に基づいて推定される。つまり、CP
2やCP
5で、アンバランス量の大きさによって、減速させる回転数を決定するようにしてもよい。具体的には、CP
2やCP
5で減速させる回転数をR
3やR
5に決定するようにしてもよい。
【0090】
本変形例においても、回転数R4が“第1回転数”の一例に該当し、経過時間t7以降のドラム15の回転数であるR3が“第2回転数”の一例に該当する。また、経過時間t2から経過時間t3の間でのドラム15の回転数であるR3が“第3回転数”の一例に該当する。
【0091】
本変形例に係る洗濯機では、脱水処理において、経過時間t6、t10などでアンバランス判定を実行しないこととしたが、上記実施形態に係る洗濯機1と同様に、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、できる限り所望の脱水率を得ることができる。
【0092】
[変形例3]
変形例3に係る洗濯機について、
図9を用いて説明する。
図9は、変形例3に係る洗濯機での、脱水処理実行に係る経過時間とドラム回転数との関係を示すタイムチャートである。なお、以下では、上記実施形態との差異部分だけを説明する。
【0093】
上記実施形態では、アンバランス低減動作の実行後において、ドラム15の回転数をR4,R5,R3の3つの値を以って制御することとしたが、本変形例に係る洗濯機では、定常域内の回転数であってアンバランス量が少ない場合の最高回転数よりも低い回転数R6と、上記実施形態などと同様に定常域内の回転数であって回転数R6未満である回転数R3と、の2値を以って制御する。なお、R3、R6は定常域である。
【0094】
制御部によるアンバランス判定は、経過時間t3で回転数がR3の場合(アンバランス判定CP10)と、経過時間t24,t27・・で回転数がR6の場合(アンバランス判定CP11,CP12・・)に行われる。なお、経過時間t26・・で回転数がR3の場合にもアンバランス判定を実行するようにしてもよい。
また、回転数がR6からR3に減速した後に所定時間(ここでは、回転数がR3に到達した経過時間t25からt26までの差分である)経過すると、アンバランス判定なしで、回転数をR6に増速させている。
【0095】
ここで、本変形例の制御部は、経過時間t
2でドラム15の回転数がR
3に到達した場合のアンバランス判定CP
10において、アンバランス量に基づいて、回転数R
4より小さい回転数であって当該アンバランス量での最高回転数である回転数R
6の値を設定することとしている。
なお、
図9では、回転数R
6のCP
12以降の判定において、回転数を維持していないが、実際は回転数を所定時間維持して行われている。
【0096】
本変形例に係る洗濯機では、上記実施形態に係る洗濯機1と同様に、アンバランスによる振動や騒音の抑制を図りつつも、できる限り所望の脱水率を得ることができる。
【0097】
また、本変形例に係る洗濯機では、アンバランス判定CP10において、アンバランス量に基づいて最高回転数である回転数R6の値を設定することとしているので、振動や騒音などの抑制と高い脱水率の実現との両立を図ることができる最適な最高回転数R6までドラムの回転数を増速することができる。
【0098】
[その他の変形例]
上記したように、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、所謂、ドラム式の洗濯機を一例として採用したが、縦型洗濯機や、脱水用のドラムと洗いようのドラムとが別体となった二槽式洗濯機を採用することも勿論可能である。
【0099】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、筐体10の上部にインターフェースユニット12を備える構造を採用したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、インターフェースユニット12に代えて、あるいはインターフェースユニット12に加えて外部の端末(リモートコントロールユニットやスマートフォンなど)との間で、入出力情報をやり取りができるようにすることもできる。
【0100】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、電流計測部19と回転数計測部20との協働によりアンバランス検知部としての機能を果たすこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、Gセンサ(加速度センサ)とホール素子などの回転検出手段(回転数計測部)によりアンバランス検知部としての機能を果たすこととしてもよい。
また、電流計測部で電流値と電流位相値とモータ回転数とをセンサレスで判定することによりアンバランス検知部としての機能を果たすこととしてもよい。ただし、製造コストの観点から、Gセンサ(加速度センサ)を用いる場合よりも、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3のように電流計測部19と回転数計測部20とによりアンバランス検知部としての機能を果たすこととしたほうが優れる。
【0101】
上記実施形態では、特に説明していなかったが、モータとしてダイレクトドライブモータ(直流ドライブモータ)を使用している。これにより、モータ電流値を見ながら制御できるため、フィードバック制御が容易に行える。なお、モータとして交流ドライブモータを使用してもよいし、伝達機構を介してモータの駆動を伝達する構造であってもよい。
【0102】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、脱水処理において、制御部171が行うドラム15を2値又は3値の回転数で制御することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、4つ以上の回転数でドラム15の回転を制御することとしてもよい。この場合、高い回転数から複数回減速するごとにアンバランス判定を行っても良いし、低い回転数から複数回増速するごとにアンバランス判定を行っても良いし、最も高い回転数でのアンバランス判定で、減速するべき回転数を複数の回転数から選択(決定)するようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2では、脱水処理において、経過時間t10の後、ドラム15の回転数をR5で維持するようにしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ドラム15の回転数をR5で維持した後、所定時間の経過後又は直後に、ドラム15を回転数R4に増速するようにしてもよい。
【0104】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2では、回転数がR4に増速した後に、回転数R4とR3との間の回転数R5に減速しているが、回転数がR3に減速した後に、回転数R4とR3との間の回転数R5に増速するようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2では、回転数がR5で維持した後に、アンバランス判定を行っていないが、所定時間経過後に、アンバランス判定して、その結果により回転数R4に増速するようにしてもよい。
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、第2回転数と第3回転数とが同じ(回転数R3)であったが、第2回転数と第3回転数とが異なってもよい。この場合、第2回転数が、第3回転数よりも高くてもよいし、低くてもよい。
【0106】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2では、
図6から
図8に示したように、脱水処理工程の後半でドラム15の回転数をR
5で維持する態様を一例としたが、アンバランス判定の判定結果によってはR
4で維持することも生じ得る。
【0107】
また、上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、脱水処理の最初にアンバランス低減動作を実行することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、脱水処理実行に際して全くアンバランス低減動作を行わないようにしてもよい。また、回転数R4,R6などから減速した後に、再度アンバランス低減動作を実行することとしてもよい。
【0108】
上記実施形態ならびに上記変形例1,2,3では、脱水負荷検知部は、洗い処理およびすすぎ処理を実行した後に洗濯物の重量を検知しているが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、洗い処理を行う前に洗濯物の重量を検知するようにしてもよい。
【0109】
上記実施形態ならびに上記変形例1,3では、ドラムが第1回転数(例えば、例えば、回転数R4やR6である)に到達する前のアンバランス状態の判定(例えば、CP10やCP10)と、ドラムが第1回転数(例えば、例えば、回転数R4やR6である)に到達した後のアンバランス状態の判定(例えば、CP2やCP11)との両方を行っている。
しかしながら、第1回転数の到達前後の各判定に着目した場合、着目した判定以外の他方の判定は、行ってもよいし、行わなくてもよい。
つまり、第1回転数の到達前の判定に着目した場合、到達後の判定の有無に関係なく、当該到達前の判定のみにより、ドラムを第1回転数まで安全に増速することができ、定常域での回転に対する安全の信頼性をより一層高めることができるという効果が得られる。なお、従来では、脱水起動処理で第1回転数まで増速できるか否かを判定しており、それ以降で判定は行っておらず、安全に対する信頼性が不十分である。
一方、第1回転数の到達後の判定に着目した場合、到達前の判定の有無に関係なく、当該到達後の判定のみにより、脱水率を高めることができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0110】
1 洗濯機
10 筐体
14 洗濯槽
15 ドラム
16 モータ
17 制御ユニット
18 脱水負荷検知部
19 電流計測部
20 回転数計測部
171 制御部
172 記憶部
173 タイマ