(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019914
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】低炭素フェロクロムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 33/04 20060101AFI20220120BHJP
C22B 34/32 20060101ALI20220120BHJP
C22B 5/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C22C33/04 B
C22B34/32
C22B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195845
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2021537965の分割
【原出願日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2019162550
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500103236
【氏名又は名称】JFEマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】杉森 博一
(72)【発明者】
【氏名】森 正浩
(57)【要約】
【課題】固定型電気炉の耐火物が溶損するのを防止できる低炭素フェロクロムの製造方法を提供する。
【解決手段】クロム鉱石と生石灰を原料とし、それらを電気炉で溶解した溶解原料を出湯し、溶解原料に還元剤を加えて低炭素フェロクロムを製造する方法において、電気炉に出湯後に湯溜まりを残す固定型電気炉1を用い、固定型電気炉1の溶解原料のMgOとAl
2O
3の質量比(MgO/Al
2O
3)を0.5以上1.5以下に調整し、固定型電気炉1の耐火物9の内側にクロムスピネル型のセルフライニング層51を形成する低炭素フェロクロムの製造方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロム鉱石と生石灰を原料とし、それらを電気炉で溶解した溶解原料を出湯し、前記溶解原料に還元剤を加えて低炭素フェロクロムを製造する方法において、
前記電気炉に出湯後に湯溜まりを残す固定型電気炉を用い、
前記固定型電気炉の前記溶解原料のMgOとAl2O3の質量比(MgO/Al2O3)を0.5以上1.5以下に調整し、前記固定型電気炉の耐火物の内側にクロムスピネル型のセルフライニング層を形成する低炭素フェロクロムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低炭素フェロクロムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素フェロクロムは、Cr60質量%以上、C0.1質量%以下のFe-Cr合金であり、特殊鋼、特にステンレス鋼のCr添加材等に用いられている。低炭素フェロクロムの製造方法としては、古くからペラン法が用いられている。ペラン法は、クロム鉱石と生石灰を原料とし、それらを電気炉で溶解した溶解原料を出湯し、溶解原料に還元剤を加えて低炭素フェロクロムを製造するものである。
【0003】
ペラン法において、電気炉には傾動しながら溶解原料を出湯する傾動型電気炉が用いられている。しかし、傾動型電気炉を用いて1次スラグを出湯する際、溶解原料の湯面が大気に露出した状態になる。このため、湯面から大気への熱放散が大きく、熱効率が悪いという課題がある。また、傾動の邪魔になる電極を引き抜いて通電を停止する必要があるので、通電率が低下したり、停炉にともなう熱損失が大きくなったりするという課題がある。
【0004】
この課題を解決するために、出願人は、傾動型電気炉の替わりに固定型電気炉を用いることを提案している(特許文献1参照)。固定型電気炉では、炉を傾動させることなく、出湯口から溶解原料を出湯する。溶解原料は全量出湯されずに、出湯後に炉の底部に湯溜まりとして残る。固定型電気炉を用いれば、湯溜まり効果によって原料の溶解性(熱効率)が向上する。また、溶解原料を出湯する際、湯面を未溶解の原料によって覆うことができるので、湯面から大気への熱放散を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、傾動型電気炉の場合、原料を溶解した状態と炉内を空にした状態とを繰り返すので、加熱と冷却が繰り返し行われ、温度差が大きく、耐火物がスポーリングにより剥離・溶損するという課題がある。このため、1年に数回程度、炉内を空にした状態で耐火物を張り替える必要がある。
【0007】
固定型電気炉の場合、傾動型電気炉ほど温度差が大きくないので、傾動型電気炉ほど耐火物は溶損しない。しかし、炉内に常時湯溜まりが存在するので、耐火物が一旦溶損すると、簡単には耐火物を張り替えられないという課題がある。耐火物が溶損すると、停炉し、冷却・固化させた1次スラグを掘り上げ、耐火物の解体・築炉をしなければならない。このため、長期に亘って停炉する必要がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、固定型電気炉の耐火物が溶損するのを防止できる低炭素フェロクロムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上課題を解決するために、本発明の一態様は、クロム鉱石と生石灰を原料とし、それらを電気炉で溶解した溶解原料を出湯し、前記溶解原料に還元剤を加えて低炭素フェロクロムを製造する方法において、前記電気炉に出湯後に湯溜まりを残す固定型電気炉を用い、前記固定型電気炉の前記溶解原料のMgOとAl2O3の質量比(MgO/Al2O3)を0.5以上1.5以下に調整し、前記固定型電気炉の耐火物の内側にクロムスピネル型のセルフライニング層を形成する低炭素フェロクロムの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、固定型電気炉の耐火物の内側にクロムスピネル型のセルフライニング層(Cr2O3クロマイト系耐火物と同等の耐火物)を形成するので、固定型電気炉の耐火物が溶損するのを防止でき、長期にわたって無補修とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の低炭素フェロクロムの製造方法の工程図である。
【
図2】本実施形態の低炭素フェロクロムの製造方法で用いる固定型電気炉の縦断面図である。
【
図5】Cr
2O
3-MgO-Al
2O
3の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の低炭素フェロクロムの製造方法を詳細に説明する。ただし、本発明の低炭素フェロクロムの製造方法は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の低炭素フェロクロムの製造方法の工程図である。
図1に示すように、本実施形態の低炭素フェロクロムの製造方法は、まず、クロム鉱石と媒溶剤である生石灰を原料とし、これらを固定型電気炉内で溶解させて溶解原料を生成する。そして、溶解原料を固定型電気炉の出湯口から反応容器に出湯する(S1)。
【0014】
次に、溶解原料を出湯した反応容器に、還元剤としてのシリコクロム、追装クロム鉱石を添加し、反応容器に不活性ガスを底吹きすることにより攪拌する(S2)。なお、反応容器として2基の取鍋を用い、2基の取鍋の間でリレードリングを行うことで攪拌してもよい。
【0015】
クロム鉱石中の酸化クロムとシリコンとの還元反応は以下のように進む。
Cr2O3+3/2Si→2Cr+3/2SiO2…(1)
ここで、遊離したSiO2は、以下の(2)(3)のように生石灰と反応し、スラグが生成する。
CaO+SiO2→CaO・SiO2…(2)
2CaO+SiO2→2CaO・SiO2…(3)
(2)(3)のようにスラグが生成すると、(1)の遊離のSiO2が少なくなり、(1)の還元反応は左から右に進む。
【0016】
還元反応によって生成した低炭素フェロクロムの溶湯は、鋳型に鋳込まれて製品となる。製品の低炭素フェロクロムは、Crを60質量%以上、Siを1.0質量%以下、Cを0.1質量%以下含む。一方、還元反応によって生成したスラグは、低炭素フェロクロムの溶湯から分離される。
【0017】
なお、上記実施形態では、還元剤にシリコクロムを用いているが、シリコクロムの他に金属ケイ素等のシリコン系還元剤を用いてもよい。また、シリコン系還元剤の他にアルミ若しくはアルミ合金等のアルミニウム系還元剤、マグネシウム若しくはマグネシウム合金等のマグネシウム系還元剤、又はカルシウム若しくはカルシウム合金等のカルシウム系還元剤を用いてもよい。さらに、これらの還元剤の混合物を用いてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態の方法に使用する固定型電気炉の縦断面図である。電気炉には、固定型電気炉1を用いる。炉体には、3本の電極(
図2には省略して2本の電極4a,4bを示す)が挿入される。電極4a,4bの先端は、原料シュート5より装入されたクロム鉱石と生石灰の原料11に埋まる。電極4a,4bの通電によって、原料11を溶解させて溶解原料12を形成する。溶解原料12を形成した後に、出湯口2に充填されたマッド材6を取り除いて、出湯口2から溶解原料12の出湯を行う。溶解原料12を出湯する際、溶解原料12の湯面は未溶解の原料11で覆われる。出湯後、溶解原料12のレベルは出湯口2のレベルまで下がるが、出湯口2のレベル以下には溶解原料12が湯溜まりとして残る。原料11の装入、溶解、出湯は、電極4a,4bに通電した状態で繰り返し行われる。7は炉底、8は鉄皮である。鉄皮8の内側には耐火物9が設けられる。9a,9bは耐火物9のレンガ、9cは耐火物9のスタンプである。10a,10bは電極ホルダである。なお、上記実施形態では、出湯後の溶解原料12の湯面レベルを出湯口2のレベルに合わせているが、出湯後の溶解原料12の湯面レベルを出湯口2よりも高い所定のレベルに合わせてもよい。
【0019】
h1は炉深さ、すなわち炉底7から上部リング14の下面までの距離である。h2は湯溜まり深さ、すなわち炉底7から出湯後の溶解原料12の湯面レベルまでの距離(本実施形態では炉底7から出湯口2までの距離)である。湯溜まり深さh2と炉深さh1との比(h2/h1)は、0.2以上0.6以下に設定される。0.6を超えると、出湯量が少なくなりすぎるからである。また、0.2未満であると、残湯量が少なすぎて、湯溜まり効果(原料11の溶解性向上の効果)が少ないからである。
【0020】
図3は、固定型電気炉の回路図である。21は遮断器、22は変圧器、4a,4b,4cは電極、3は炉体、23は電極4cに流れる電流(実電流)を検出する電流検出器、24は電極4cと接地された炉体3との間の電圧(実電圧)を検出する電圧検出器、25は電極4cを昇降させる電極昇降装置のモータ、26は電極4cの昇降を制御する電極昇降制御装置、27はモータ25に電力を供給するインバータである。なお、
図3では簡略化されており、実際には電流検出器23、電圧検出器24、モータ25、電極昇降制御装置26、インバータ27は、3相の相毎に設けられる。3本の電極4a,4b,4cは、1本毎に昇降制御される。
【0021】
電極昇降制御装置26は、電極4a,4b,4cの実電流と実電圧を入力信号とし、実電流と実電圧の比(実電流/実電圧)が設定値(設定電流/設定電圧)になるように電極4a,4b,4cを昇降制御する。実電圧に比して実電流の割合が設定値より大きくなったとき、すなわちインピーダンスが低下したとき、電極昇降制御装置26は、電極4a,4b,4cを上昇させる速度信号をインバータ27に出力し、逆に実電圧に比して実電流の割合が設定値より小さくなったとき、すなわちインピーダンスが大きくなったとき、電極4a,4b,4cを下降させる速度信号をインバータ27に出力する。このように、実電流と実電圧の比、すなわちインピーダンスが一定になるように制御することを、一般にインピーダンス一定制御と呼んでいる。
【0022】
電極4a,4b,4cの昇降を制御する際の設定値、すなわち設定電流と設定電圧の比(設定電流/設定電圧)を大きくすれば、電極4a,4b,4cと湯面の距離を小さくでき、熱集中型となり、溶解性が向上する場合もあるが、必要以上のスーパーヒートにより、逆に溶解効率が低下し、溶解帯が小さくなる。固定型電気炉の湯溜まり効果によって原料の溶解性が向上していることからも、設定電流と設定電圧の比(設定電流/設定電圧)を30A/V以上150A/V以下に小さく、すなわち高電圧かつ低電流に設定する。これにより、電極4a,4b,4cの下端と溶解原料12の湯面との距離を長くし、電極4a,4b,4cが溶解原料12に没入するのを防止する。30A/V未満では、原料11の溶解性が低下する。150A/Vを超えると、設定電圧に比して設定電流の割合が高くなり、電極4a,4b,4cが溶解原料12に没入するおそれがある。
【0023】
表1は、設定電流と設定電圧の比(A/V)が電極の没入度及び吹き上げ現象に及ぼす影響を検討した結果を示す。表1に示すように、A/Vが150A/Vを超えると、溶解原料への電極の没入度が大きくなり、吹き上げ現象が多発するのに対し、150A/V以下では、目立った電極の没入及び吹き上げ現象が発生せずに良好となる。また、30A/V未満では、電極の没入及び吹き上げ現象は発生しないが、溶解不十分となる。最適な設定電流と設定電圧の比は、30A/V以上150A/V以下である。
【表1】
【0024】
図4は、固定型電気炉1の横断面図である。3は炉体、31は炉壁、4a,4b,4cは電極、32a,32b,32cは電流貫流面(反応帯とも呼ばれる)、Rは炉壁の内法の直径、dは配置円の直径、Dは電極の直径、rは電流貫流面の半径である。配置円の直径dは1.0m以上2.2m以下に設定される。配置円上には、3本の電極4a,4b,4cが等間隔で配置される。3つの電流貫流面32a,32b,32cの半径rは同一である。電流貫流面32a,32b,32cの半径rは、隣接する電流貫流面32a,32b,32cが接するように設定される。
【0025】
電流貫流面における平均電力密度(kW/m2)は、電力/3πr2で表される。電力(kW)=√3・I・V・cosψで表される。ここで、Iは実電流、Vは実電圧、ψは力率である。3πr2は、電流貫流面の面積である。電流貫流面における平均電力密度が大きければ、原料11の溶解性が向上する。しかし、固定型電気炉1の湯溜まり効果によって原料11の溶解性が向上しているので、電流貫流面における平均電力密度を500kW/m2以上3000kW/m2以下に小さく設定する。これにより、炉心部の熱集中、スーパーヒートを緩和でき、溶解原料12に突沸吹き上げ現象が発生するのを防止できる。500kW/m2未満では、炉心部が熱不足となり、出湯に弊害が生じる。3000kW/m2を越えると、炉心部に熱集中、スーパーヒートが発生し、溶解原料12の突沸吹き上げ現象が発生する。
【0026】
表2は、直径が互いに異なるA炉とB炉において、電流貫流面における平均電力密度が吹き上げ現象に及ぼす影響を検討した結果を示す。表2に示すように、平均電力密度が3000kW/m
2を越えると、吹き上げ現象が多発するのに対し、3000kW/m
2未満では、目立った吹き上げ現象が発生せずに良好となる。また、500kW/m
2未満では、吹き上げ現象は発生しないが、溶解不十分となる。最適な平均電力密度は、500kW/m
2以上3000kW/m
2以下である。
【表2】
【0027】
再び
図2に示すように、固定型電気炉1で原料11を溶解する際、溶解原料12のMgOとAl
2O
3の質量比(MgO/Al
2O
3)は、0.5以上1.5以下に調整される。具体的には、固定型電気炉1から溶解原料12を出湯する際、溶解原料12の組成を分析し、溶解原料12のMgOとAl
2O
3の質量比(MgO/Al
2O
3)が0.5以上1.5以下になるように原料11を調整する。原料11のクロム鉱石には、MgOの含有量が高いクロム鉱石やAl
2O
3の含有量が高いクロム鉱石が存在する。MgOとAl
2O
3の質量比が低い場合、MgOの含有量が高いクロム鉱石の配合量を増やし、MgOとAl
2O
3の質量比が高い場合、Al
2O
3の含有量が高いクロム鉱石の配合量を増やす。クロム鉱石だけで調整しきれない場合、MgO源及び/又はAl
2O
3源を装入する。そして、耐火物9の内側に図中斜線で示すクロムスピネル型のセルフライニング層51を形成する。このセルフライニング層51により耐火物9の溶損を防止する。0.5未満であると、セルフライニング層51の溶損が激しくなり、十分なセルフライニング層51が形成されない。1.5を超えると、原料の溶解が不十分となり、溶解帯が小さくなる。また、溶解原料12の粘性が高くなり、出湯に弊害が生じる。
【0028】
部分的な過電力等により、耐火物9に部分的溶損部52が発生した場合、MgOの含有量が高いクロム鉱石及び/又はMgO源を部分的溶損部52の近傍に集中的に装入する。そして、溶解原料12のMgOとAl2O3の質量比を上記の範囲に調整し、部分的溶損部52の近傍に集中的にクロムスピネル型のセルフライニング層51を形成する。これにより、部分的溶損部52を補修する。
【0029】
図5は、Cr
2O
3-MgO-Al
2O
3の状態図である。
図5に示すように、溶解原料12のCr
2O
3:MgO:Al
2O
3をモル比で38.5%:44.7%:16.8%に調整すれば、クロムスピネル53を形成することができる。
【0030】
表3には、溶解原料12の組成を示す。溶解原料12のMgO:Al2O3を質量比で1:1に調整すれば、溶解原料12のMgO:Al2O3をモル比で44.7%:16.8%に調整することができる。なお、溶解原料12のCr2O3の質量はMgOやAl2O3に比べて十分に大きく、モル比を上記のように調整するのは容易である。
【0031】
【実施例0032】
図1の製造工程図に従って低炭素フェロクロムを製造した。表4には、(1)原料の使用量、(2)固定型電気炉の電力使用量、(3)溶解原料の出湯量、(4)副原料の使用量、(5)低炭素フェロクロムとスラグの製造量、(6)溶解電力原単位を示す。
【0033】
【0034】
表5には、固定型電気炉(直径が互いに異なるA炉とB炉)の操業条件を示す。
【0035】
【0036】
実施例1に示すように、電極の設定電流と設定電圧との比(設定電流/設定電圧)を85A/Vに設定し、電流貫流面における平均電力密度を1200kW/m2に設定したところ、目立った溶解原料の吹き上げが発生しなかった。実施例2に示すように、設定電流/設定電圧を145A/Vに設定し、電流貫流面における平均電力密度を1150kW/m2に設定した場合も、目立った溶解原料の吹き上げが発生しなかった。実施例3に示すように、設定電流/設定電圧を60A/Vに設定し、電流貫流面における平均電力密度を2350kW/m2に設定したところ、目立った溶解原料の吹き上げが発生しなかった。
【0037】
一方、比較例1に示すように、電極の設定電流と設定電圧との比(設定電流/設定電圧)を160A/Vに設定したところ、電極が溶解原料に没入し、COガスが発生し、溶解原料の吹き上げが多発した。
【0038】
比較例2に示すように、電流貫流面における平均電力密度を3100kW/m2に設定したところ、炉心部に熱集中が発生し、溶解原料の吹き上げが多発した。
【0039】
比較例3に示すように、傾動型電気炉を用いた場合、湯面から大気への熱放散が大きく、また、通電率が低下するので、溶解電力原単位kWh/tが1350という大きい値であった。