(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020038
(43)【公開日】2022-01-31
(54)【発明の名称】画像表示媒体、広告塔、画像展示装置、画像表示媒体の製造方法、及び画像表示媒体の使用方法
(51)【国際特許分類】
G09F 19/02 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
G09F19/02 A
G09F19/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123352
(22)【出願日】2020-07-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】301054003
【氏名又は名称】株式会社ウラノ
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】浦野 公義
(57)【要約】
【課題】 視角により画像が予想外に歪んで見える画像表示媒体を提供する。
【解決手段】 本開示による画像表示媒体101は、以下の工程により製造される。円形の正画像1を周方向に圧縮し、圧縮された画像を、シート状かつ扇形の印刷媒体3に印刷する。印刷がなされた後に、印刷面が内側となるように、扇形の印刷媒体3の周方向の両端部5,7を互いに連結して、印刷媒体3を円錐形とする。これにより、画像表示媒体101が完成する。画像表示媒体101の内側面8の印刷画像は、開口側から円錐形の中心軸9に沿って正画像1を内側面8に投影した投影画像に相当する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐形の内側面を有し、当該内側面に画像を表示し、当該画像は、開口側から中心軸に沿って正画像を前記内側面に投影した投影画像に相当する、画像表示媒体。
【請求項2】
前記画像は、前記内側面に印刷された印刷画像である、請求項1に記載の画像表示媒体。
【請求項3】
前記画像表示媒体の形状は、前記内側面を有する円錐形のシート状である、請求項2に記載の画像表示媒体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の画像表示媒体を備え、前記画像が広告の画像である広告塔。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の画像表示媒体と、
前記画像表示媒体を、前記円錐形の中心軸に交差する軸の周りに回転又は揺動させる駆動機構と、を備える画像展示装置。
【請求項6】
各々が請求項1から3のいずれかに記載の画像表示媒体である複数の画像表示媒体と、
前記複数の画像表示媒体を、開口部が外方を向くように、軸の周りに放射状に連結する連結部材と、
前記連結部材を前記軸の周りに回転又は揺動させる駆動機構と、を備える画像展示装置。
【請求項7】
請求項3に記載の画像表示媒体の製造方法であって、
シート状かつ扇形の印刷媒体に、円形の前記正画像を周方向に圧縮して印刷することと、
印刷面が内側となるように、前記扇形の印刷媒体の周方向の両端部を互いに連結して、前記印刷媒体を円錐形とすることと、を含む、画像表示媒体の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の画像表示媒体を、紐体により吊すことと、
前記画像表示媒体に向けて風を送ることと、を含む画像表示媒体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐形の内側面に画像が表示された画像表示媒体、当該画像表示媒体を用いた広告塔、前記画像表示媒体を用いた画像展示装置、前記画像表示媒体の製造方法、及び前記画像表示媒体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的な形状を有する表面に印刷が施された立体印刷物が、従来より知られている。特許文献1に開示される転写方法も、かかる立体印刷物を製造する方法の一例である。
【0003】
従来の立体印刷物は、立体的な形状に由来して、当然ながら、見る方向(すなわち視角)によって、印刷された画像が異なって見える。しかし、その異なり方は、立体的な形状から当然に予想される範囲のものに止まっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、視角により画像が予想外に歪んで見える画像表示媒体、当該画像表示媒体を用いた広告塔、前記画像表示媒体を用いた画像展示装置、前記画像表示媒体の製造方法、及び前記画像表示媒体の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、画像表示媒体であって、円錐形の内側面を有し、当該内側面に画像を表示し、当該画像は、開口側から中心軸に沿って正画像を前記内側面に投影した投影画像に相当する。
【0007】
この構成によれば、円錐形の内側面の開口側から、内側面に表示された画像を見ることができる。円錐形の中心軸に沿って見ると、正画像と同じ画像を見ることができ、視線が中心軸からずれると、ずれた量に応じて、正画像が予想外に歪んで見え、あたかも立体画像を見るかのような錯覚を、見る者に抱かせる。すなわち、この構成によれば、意外性のある視覚効果が達成される。なお、正画像とは、格別な歪みの無い見たままの対象物の画像であり、通常にカメラ撮影された人物、風景の写真、通常に漫画化された対象物のイラストなどは、その具体例に該当する。
【0008】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による画像表示媒体であって、前記画像は、前記内側面に印刷された印刷画像である。
【0009】
この構成によれば、視角により画像が予想外に歪んで見える画像表示媒体が、印刷によって得られる。
【0010】
本発明のうち第3の態様によるものは、第2の態様による画像表示媒体であって、前記画像表示媒体の形状は、前記内側面を有する円錐形のシート状である。
【0011】
この構成によれば、展開されたシート状の印刷媒体に画像を印刷した後に、この印刷媒体を円錐形にすることにより、画像表示媒体が得られる。
【0012】
本発明のうち第4の態様によるものは、広告塔であって、第1から第3のいずれかの態様による画像表示媒体を備え、前記画像が広告の画像である。
【0013】
この構成によれば、通行人、車両等により移動する人の目に、広告の画像が立体的に動いて見える。
【0014】
本発明のうち第5の態様によるものは、画像展示装置であって、第1から第3のいずれかの態様による画像表示媒体と、前記画像表示媒体を、前記円錐形の中心軸に交差する軸の周りに回転又は揺動させる駆動機構と、を備えている。
【0015】
この構成によれば、画像を見る人が動かなくても、見る人の目に、画像が立体的に動いて見える。この構成による画像展示装置は、大きさ、画像の内容により、室内のオブジェ、屋外の広告塔など、様々な用途に用いることができる。
【0016】
本発明のうち第6の態様によるものは、画像展示装置であって、各々が第1から第3のいずれかの態様による画像表示媒体である複数の画像表示媒体と、前記複数の画像表示媒体を、開口部が外方を向くように、軸の周りに放射状に連結する連結部材と、前記連結部材を前記軸の周りに回転又は揺動させる駆動機構と、を備えている。
【0017】
この構成によれば、画像を見る人が動かなくても、見る人の目に、画像が立体的に動いて見える。しかも、同時に複数の方向から、動く立体画像を見ることができる。この構成による画像展示装置は、大きさ、画像の内容により、室内のオブジェ、屋外の広告塔など、様々な用途に用いることができる。
【0018】
本発明のうち第7の態様によるものは、第3の態様による画像表示媒体の製造方法であって、シート状かつ扇形の印刷媒体に、円形の前記正画像を周方向に圧縮して印刷することと、印刷面が内側となるように、前記扇形の印刷媒体の周方向の両端部を互いに連結して、前記印刷媒体を円錐形とすることと、を含んでいる。
【0019】
この構成によれば、第3の態様による画像表示媒体を製造することができる。
【0020】
本発明のうち第8の態様によるものは、画像表示媒体の使用方法であって、第3の態様による画像表示媒体を、紐体により吊すことと、前記画像表示媒体に向けて風を送ることと、を含んでいる。
【0021】
この構成によれば、紐体により吊され、円錐形である画像表示媒体は、開口部が風下の方向を向くとともに、風の作用で揺動する。このため、画像を見る人の目に、画像が立体的に揺れ動いて見える。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、視角により画像が予想外に歪んで見える画像表示媒体、当該画像表示媒体を用いた広告塔、前記画像表示媒体を用いた画像展示装置、前記画像表示媒体の製造方法、及び前記画像表示媒体の使用方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態による画像表示媒体の製造工程を例示する工程図である。
【
図2】
図1の製造工程により製造される画像表示媒体を用いた画像展示装置の外観を例示する外観図である。
【
図3】
図2の画像展示装置を、様々な角度から視たときの外観を例示する外観図である。
【
図4】別の画像展示装置の構成を例示する斜視図である。
【
図5】
図1の製造工程により製造される画像表示媒体を用いた広告塔の外観を例示する俯瞰図である。
【
図6】
図1の製造工程により製造される画像表示媒体の別の使用方法を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態による画像表示媒体の製造工程を例示する工程図である。この画像表示媒体101は、
図1(c)に例示するように、円錐形のシート状であり、その内側面8に画像が印刷されている。製造工程を例示することにより、その構成もより明瞭となる。
【0025】
図1に例示する製造工程では、
図1(a)に例示する円形の正画像1を、
図1(b)に例示するように周方向に圧縮し、圧縮された画像を、シート状かつ扇形の印刷媒体3に印刷する。正画像とは、
図1(a)に例示するように、格別な歪みの無い見たままの対象物の画像であり、通常にカメラ撮影された人物、風景の画像、通常に漫画化された対象物のイラストなどは、その具体例に該当する。扇形の中心角は、意外性のある視覚効果を得る上では、270°前後、例えば250°~290°の範囲であることが望ましい。図示例では。扇形の中心角は、約260°である。
【0026】
印刷がなされた後に、印刷面が内側となるように、扇形の印刷媒体3の周方向の両端部5,7を互いに連結して、印刷媒体3を円錐形とする。これにより、
図1(c)に示すように画像表示媒体101が完成する。画像表示媒体101の内側面8の印刷画像は、開口側から円錐形の中心軸9に沿って正画像1を内側面8に投影した投影画像に相当する。画像表示媒体101が奏する意外性のある視覚効果は、次の
図2及び
図3の例示により明瞭となる。
【0027】
図2は、
図1(c)に例示した画像表示媒体101を用いた画像展示装置の外観を例示する外観図である。この画像展示装置102は、
図2(a)に例示するように、箱体11の一側面に円形の開口13が設けられ、この開口13を通して円錐形の画像表示媒体101の開口部が外方に面するように、画像表示媒体101が箱体11の内部に収容されている。例示する箱体11は、立方体形状である。
【0028】
本願出願人は、
図2(a)に例示する画像展示装置102を試作している。
図2(b)は、試作した画像展示装置102の正面撮影写真である。
図2(b)に例示するように、画像表示媒体101の内側面8に印刷された画像を、中心軸9に沿って観察すると、正画像1と同じ画像を見ることができる。
【0029】
図3は、
図2に例示する画像展示装置102を、様々な角度から視たときの外観を例示する外観図である。
図3(a)は、試作した画像展示装置102を、中心軸9から左側にずれた方向から撮影することにより得られた写真である。また、
図3(b)は、同画像展示装置102を、中心軸9から右下にずれた方向から、
図3(c)は、下にずれた方向から撮影することにより得られた写真である。これらの図が例示するように、視線が中心軸9からずれると、ずれた量に応じて、正画像1が予想外に歪んで見え、あたかも立体画像を見るかのような錯覚を、見る者に抱かせる。このように、画像表示媒体101は、意外性のある視覚効果を奏する。
【0030】
図4は、別の画像展示装置の構成を例示する斜視図である。この画像展示装置103は、
図2に例示した画像展示装置102の箱体11の4側面に開口13が設けられ、それぞれに画像展示装置102と同様に、画像表示媒体101が配置された構造を有している。画像展示装置103においては、箱体11は、4つの画像表示媒体101を、開口部が外方を向くように、鉛直軸15の周りに放射状に連結する連結部材として機能する。4つの画像表示媒体101は、互いに同一の画像が印刷されていても良く、異なる画像が印刷されていても良い。
【0031】
画像展示装置103は、さらに、箱体11を鉛直軸15の周りに緩やかに回転させる駆動機構17を有している。駆動機構17は、例えば電動モータを内蔵している。画像表示媒体101の内側面8に印刷された画像を見る人が動かなくても、見る人の目に、画像が立体的に動いて見える。しかも、同時に複数の方向から、動く立体画像を見ることができる。画像展示装置103は、大きさ、画像の内容により、室内のオブジェ、屋外の広告塔など、様々な用途に用いることができる。
【0032】
画像展示装置103は、箱体11を鉛直軸15の周りに、回転させる代わりに揺動させても良い。この場合にも、回転させた場合と同様の効果が得られる。また、複数の画像表示媒体101ではなく、単一の画像表示媒体101を有する画像展示装置102(
図2(a))に駆動機構17を連結し、画像表示媒体101を回転或いは揺動させてもよい。
【0033】
図5は、画像表示媒体101を用いた広告塔の外観を例示する俯瞰図である。この広告塔104は、建物19の屋根あるいは屋上に設置されている。広告塔104は、
図4に例示した画像展示装置103の箱体11及び画像表示媒体101を、屋外の設置に適する材料、例えば鋼あるいはアルミニウムにより構成し、また屋外の設置に適する大きさに設定し、駆動機構17を除去して、代わりに脚部21により建物19に設置した構造を有している。
【0034】
画像表示媒体101には、広告の画像が印刷されている。画像表示媒体101は動かなくても、通行人20の目、あるいは車両22等により移動する人の目に、画像表示媒体101に表示された広告の画像が、立体的に動いて見える。それにより、見る人に広告を印象づけることができ、広告の効果を高めることができる。なお、脚部21に代えて、屋外の設置に適する大きさの駆動機構17を用いることにより、
図4に例示した画像展示装置103と同様に、画像表示媒体101が動くようにしても良い。
【0035】
図6は、画像表示媒体101(
図1(c)参照)の別の使用方法を例示する説明図である。この使用方法では、画像表示媒体101を、糸などの紐体23により天井25などに吊して用いる。そして、画像表示媒体101に向かって、例えばブロワ27により風29を送る。そうすると、紐体23により吊され、円錐形である画像表示媒体101は、開口部が風下の方向を向くとともに、風29の作用で揺動する。このため、画像を見る人の目に、画像が立体的に揺れ動いて見える。この使用方法は、例えば、店舗の屋内の広告に適している。
【0036】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、画像表示媒体101が円錐形の印刷媒体を有する例を示した。これに対して、岩石、材木、樹脂などの塊に、円錐形の孔を設け、その内側面に、開口側から中心軸に沿って正画像を投影させた投影画像に相当する画像を印刷しても良い。
【0037】
上記の実施の形態では、画像表示媒体101が印刷画像を表示する例を示した。これに対して、印刷によらずに、円錐形の内側面に画像を表示する画像表示媒体を構成することも可能である。例えば、有機EL画像表示媒体を円錐形に構成し、この媒体に、開口側から中心軸に沿って正画像を投影させた投影画像に相当する画像を表示させても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 正画像、 3 印刷媒体、 5,7 両端部、 8 内側面、 9 中心軸、 11 箱体、 13 開口、 15 鉛直軸、 17 駆動機構、 19 建物、 21 脚部、 23 紐体、 25 天井、 27 ブロワ、 29 風、 101 画像表示媒体、 102,103 画像展示装置、 104 広告塔。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐形の内側面を有し、当該内側面に画像を表示し、当該画像は、開口側から中心軸に沿って正画像を前記内側面に投影した投影画像に相当する、画像表示媒体を備え、前記画像が広告の画像である広告塔。
【請求項2】
前記画像は、前記内側面に印刷された印刷画像である、請求項1に記載の広告塔。
【請求項3】
前記画像表示媒体の形状は、前記内側面を有する円錐形のシート状である、請求項2に記載の広告塔。
【請求項4】
円錐形の内側面を有し、当該内側面に画像を表示し、当該画像は、開口側から中心軸に沿って正画像を前記内側面に投影した投影画像に相当する、画像表示媒体と、
前記画像表示媒体を、前記円錐形の中心軸に交差する軸の周りに回転又は揺動させる駆動機構と、を備える画像展示装置。
【請求項5】
画像展示装置であって、複数の画像表示媒体を備え、
前記複数の画像表示媒体の各々は、円錐形の内側面を有し、当該内側面に画像を表示し、当該画像は、開口側から中心軸に沿って正画像を前記内側面に投影した投影画像に相当するものであり、
前記画像展示装置は、
前記複数の画像表示媒体を、開口部が外方を向くように、軸の周りに放射状に連結する連結部材と、
前記連結部材を前記軸の周りに回転又は揺動させる駆動機構と、を更に備える画像展示装置。
【請求項6】
前記画像は、前記内側面に印刷された印刷画像である、請求項4又は5に記載の画像展示装置。
【請求項7】
前記画像表示媒体の形状は、前記内側面を有する円錐形のシート状である、請求項6に記載画像展示装置。
【請求項8】
画像表示媒体を、紐体により吊すことと、
前記画像表示媒体に向けて風を送ることと、を含み、
前記画像表示媒体は、円錐形の内側面を有し、当該内側面に画像を表示し、当該画像は、開口側から中心軸に沿って正画像を前記内側面に投影した投影画像に相当するものであり、
前記画像は、前記内側面に印刷された印刷画像であり、
前記画像表示媒体の形状は、前記内側面を有する円錐形のシート状である、画像表示媒体の使用方法。