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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020064
(43)【公開日】2022-01-31
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220124BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20220124BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220124BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/12
A61Q17/04
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021180419
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】江口 彩菜
(72)【発明者】
【氏名】安部 隆士
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB322
4C083AB362
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC852
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD352
4C083AD412
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD17
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子を用いなくとも、触感が良好かつ損なわれにくい、伸びが良好、及びべとつきが抑制されている等の諸特性が有効に発揮される、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェル等の化粧料を提供する。
【解決手段】樹脂ビーズを含有する、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェルのいずれかの化粧料である。樹脂ビーズが、セルロース及びセルロース誘導体の少なくともいずれかを主成分とする樹脂で形成され、樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径が50μm以下であり、樹脂ビーズの真球度が0.7~1.0であり、樹脂ビーズの表面平滑度が70~100%である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ビーズを含有する、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェルのいずれかの化粧料であって、
前記樹脂ビーズが、セルロース及びセルロース誘導体の少なくともいずれかを主成分とする樹脂で形成され、
前記樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径が50μm以下であり、
前記樹脂ビーズの真球度が0.7~1.0であり、
前記樹脂ビーズの表面平滑度が70~100%である化粧料。
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、アセチル基の含有率が15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が10質量%以上のセルロースアセテートプロピオネートである請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記樹脂ビーズが、前記樹脂で形成されたコアビーズを固体の表面処理剤で表面処理して得られるものであり、
前記表面処理剤が、アスペクト比(長径/短径)が2以上10以下の板状物質である請求項1又は2に記載の化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ビーズを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂ビーズ等の種々の樹脂粉体(樹脂粒子)が用いられた化粧料は、樹脂粒子の球状特性によって伸展性等の特性が向上されている。しかし、近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題などから、化粧料に配合される樹脂ビーズの構成材料が石油由来の合成系素材から天然系素材へと移行しつつある。
【0003】
化粧料のなかでも、ルースパウダーは、そのほとんどが粉体原料のみで構成された粉末状の化粧料である。このため、粉体原料そのものの触感が化粧料の触感に大きく影響ので、触感に優れる原材料が強く望まれている。また、ファンデーションは、近年、肌色補正機能以外にも、夏季の高温多湿による汗や皮脂による化粧くずれを防止するとともに、冬季の低温乾燥から肌のうるおいを守るべく、均一で伸びの良い使用感が必要とされている。
【0004】
日焼け止めクリームは、太陽光線中のUVA及びUVBの両領域の紫外線をカットして肌を守ることを目的としている。一般的な日焼け止めクリームは、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤を組み合わせて高い効果を付与しているものが多い。なかでも、高い屈折率による紫外線散乱効果と透明性を両立した微粒子酸化チタンが使われることが多い。しかし、微粒子酸化チタンは表面積が大きいために凝集力が強く、日焼け止めクリームの触感を損なうことが多いので、触感を改善しうる原材料の要求が高まっている。
【0005】
オールインワンジェルは、近年、女性の社会進出に伴い、スキンケアからメイクアップまでを一度に行えるタイプの化粧料であり、みずみずしく爽やかな使用感の水性ジェルが好まれていた。そして、肌の油分補給や保湿性の観点から、油分を配合した水性ジェルや油性ジェルへの要望が高まっている。しかし、油分の影響によるべたつきが生じやすくなるため、べたつきを改善しうる原材料が必要とされている。
【0006】
樹脂ビーズを用いた化粧料としては、例えば、球状セルロース粉体を配合した化粧料が提案されている(特許文献1)。また、金属石鹸又は水添レシチンで表面処理した微結晶セルロース粉体を配合した、使用感を高めた化粧料が提案されている(特許文献2)。さらに、生分解性と触感に優れたセルロースアセテート粒子を含有する化粧料組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-221000号公報
【特許文献2】特開2003-146829号公報
【特許文献3】特許6609726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1で提案された化粧料は、配合される球状セルロース粉体の短径と長径の比率が大きいため、肌に対する伸びや触感が必ずしも良好であるとはいえず、ざらつきを感じやすいものであった。また、特許文献2で提案された化粧料は、配合されるセルロース粉体の円形度が低いため、肌に対する伸びや触感が良好であるとはいえなかった。さらに、特許文献3で提案された化粧料組成物は、配合されるセルロースアセテート粒子が臭気を発生しやすい。また、化粧料組成物も乾いた触感を示しやすく、市場で要求される柔らかでしっとりとした触感を示すものではなかった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子を用いなくとも、触感が良好かつ損なわれにくい、伸びが良好、及びべとつきが抑制されている等の諸特性が有効に発揮される、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェル等の化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す化粧料が提供される。
[1]樹脂ビーズを含有する、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェルのいずれかの化粧料であって、前記樹脂ビーズが、セルロース及びセルロース誘導体の少なくともいずれかを主成分とする樹脂で形成され、前記樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径が50μm以下であり、前記樹脂ビーズの真球度が0.7~1.0であり、前記樹脂ビーズの表面平滑度が70~100%である化粧料。
[2]前記セルロース誘導体が、アセチル基の含有率が15質量%以下であり、プロピオニル基の含有率が10質量%以上のセルロースアセテートプロピオネートである前記[1]に記載の化粧料。
[3]前記樹脂ビーズが、前記樹脂で形成されたコアビーズを固体の表面処理剤で表面処理して得られるものであり、前記表面処理剤が、アスペクト比(長径/短径)が2以上10以下の板状物質である前記[1]又は[2]に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子を用いなくとも、触感が良好かつ損なわれにくい、伸びが良好、及びべとつきが抑制されている等の諸特性が有効に発揮される、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェル等の化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】製造例1で製造した樹脂ビーズの表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
図2】製造例1で製造した樹脂ビーズの断面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
図3】製造例2で製造した樹脂ビーズの表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、本明細書中の各種物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0014】
本発明者らは、触感に優れたルースパウダー、伸びの良いファンデーション、微粒子酸化チタンを用いながらも触感が損なわれにくい日焼け止めクリーム、及び高い保湿効果を有しながらもべとつきにくいオールインワンジェル等の化粧料を提供しうる、天然系素材からなる樹脂ビーズについて種々検討した。その結果、以下に示す構成とすることで、天然系素材により実質的に形成された、上記各種の特性が付与された化粧料を提供可能な樹脂ビーズが得られることを見出した。すなわち、本発明の化粧料に配合される樹脂ビーズは、セルロース及びセルロースアセテートプロピオネートから選択されるセルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズである。この樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径は50μm以下であり、真球度は0.7~1.0であり、表面平滑度は70~100%である。
【0015】
樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径(メジアン径;D50)は50μm以下であり、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは0.5~28μm、特に好ましくは1~25μmである。D50を上記の範囲とすることで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される滑り性やソフトフォーカス性を有効に発現させることができる。
【0016】
樹脂ビーズの真球度は0.7~1.0であり、好ましくは0.75~1.0、さらに好ましくは0.8~1.0、特に好ましくは0.85~1.0である。真球度を上記の範囲としたことで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される肌への伸び、優れた触感を有効に発現させることができる。
【0017】
樹脂ビーズが真球状であるか否の指標となる真球度は、以下に示す手順にしたがって測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像を画像解析し、下記式(1)より、個々の樹脂ビーズの円形度Cを算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの円形度Cの相加平均値を真球度とする。
C=(4πS)/(L) ・・・(1)
【0018】
上記式(1)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Lは、画像中における樹脂ビーズの外周部の長さを示す。円形度Cの値が1に近いほど、粒子の形状は真球に近い。
【0019】
樹脂ビーズの表面平滑度は70~100%であり、好ましくは80~100%、さらに好ましくは90~100%である。表面平滑度を上記の範囲としたことで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される良好な触感及び肌への伸びを有効に発現させることができる。
【0020】
樹脂ビーズの表面平滑度は、以下に示す手順にしたがって測定することができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像(×5,000)を観察し、下記式(2)より、個々の樹脂ビーズの平滑度Mを算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの平滑度Mの相加平均値を表面平滑度とする。平滑度Mの値が1に近いほど、粒子の表面は平滑に近い。
M=(1-(S)/(S))×100 ・・・(2)
【0021】
上記式(2)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Sは、樹脂ビーズとそれに近似した円を重ねた際に、樹脂粒子の輪郭で形成されたエリアと、重ねた円の輪郭より内側にある面積と外部にある面積の総和を示す。
【0022】
樹脂ビーズの中実度は、50~100体積%であることが好ましく、60~100体積%であることがさらに好ましく、70~100体積%であることが特に好ましい。中実度を上記の範囲内とすることで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される安定性をより高めることができるとともに、透明性を向上させることができる。樹脂ビーズの中実度が50体積%未満であると、空域によって光散乱が生じ、透明性が低下しやすくなる。また、中実度が低下すると吸油量や強度が変化する場合や、液体や粒子が空域に侵入し不均一になり易い。このため、中実度が低い樹脂ビーズを化粧料に配合すると、化粧料の安定性がやや低下することがある。
【0023】
樹脂ビーズの中実度は、以下に示す手順にしたがって測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズの断面のSEM画像を画像解析し、個々の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積を算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積の平均値を中実度(体積%)とする。
【0024】
樹脂ビーズは、顔料及び染料の少なくともいずれかを含有していてもよい。顔料や染料を含有するコアビーズを得るには、例えば、後述する樹脂ビーズを製造する方法において、顔料及び染料の少なくともいずれかをさらに含有する油相を用いて懸濁液を調製すればよい。顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄等の金属酸化物の他、法定色素和名の黄色4号、赤色202号、青色1号、カーボンブラック等を挙げることができる。また、マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の体質顔料を用いることもできる。染料としては、赤色104号、黄色5号、青色1号等を挙げることができる。
【0025】
樹脂ビーズは、顔料と、界面活性剤及び分散剤及び高分子分散剤の少なくともいずれかと、を含有することが好ましい。また、顔料は、シリコーン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸、アミノ酸金属塩、油脂、及び脂質からなる群より選択される少なくとも一種で処理された処理顔料であることが好ましい。
【0026】
樹脂ビーズは、用途に応じて、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかを含有していてもよい。紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を含有するコアビーズを得るには、例えば、後述する樹脂ビーズを製造する方法において、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の少なくともいずれかをさらに含有する油相を用いて懸濁液を調製すればよい。紫外線吸収剤等としては、例えば、微粒子二酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【0027】
樹脂ビーズは、セルロースやセルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成されたコアビーズを表面処理剤で表面処理して得られたものであることが好ましい。コアビーズを表面処理剤によって表面処理すると、コアビーズの表面の少なくとも一部に表面処理剤が付着、担持、又は結合等して、ある種の被覆層が形成されると推測される。但し、表面処理剤の付着状態や、表面処理剤がコアビーズに付着等して形成される被覆層の状態(範囲、付着量、厚さ等)を分析して確認することは実質的に困難又は不可能である。
【0028】
表面処理剤としては、従来公知の処理剤を用いることができる。表面処理剤としては、例えば、金属水酸化物、シリコーン樹脂、シロキサン系物質、疎水性シリカ、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸系物質、リン脂質や糖脂質等の複合脂質、界面活性剤、ワックス類、高級アルコール、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛等を挙げることができる。これらの表面処理剤でコアビーズの表面を処理する際には、必要に応じて、加熱、焼き付け、架橋、及び重合等の処理を施してもよい。
【0029】
表面処理剤としては、親油性処理剤を用いることが好ましい。コアビーズを親油性処理剤で表面処理することで、親油性(撥水性)が高く、より安定性に優れた化粧品等の製品を提供可能な樹脂ビーズとすることができる。親油性処理剤としては、金属石鹸系処理剤、アミノ酸系処理剤、リン脂質系処理剤、糖脂質系処理剤、複合脂質系処理剤、セラミド系処理剤等を挙げることができる。なかでも、金属石鹸系処理剤及びアミノ酸系処理剤が好ましい。金属石鹸系処理剤としては、ステアリン酸金属塩、パルミチン酸金属塩、ミリスチン酸金属塩、ラウリン酸金属塩、カプリン酸金属塩、カプリル酸金属塩、ベヘン酸金属塩、オレイン酸金属塩、12-ヒドロキシステアリン酸金属塩等を挙げることができる。なかでも、ステアリン酸金属塩を用いることが好ましい。親油性処理剤で表面処理したことで得られる効果については、例えば、樹脂ビーズの各種化粧品基材に対する濡れ性や、樹脂ビーズの撥水性を確認することによって評価することができる。
【0030】
次に、上述の樹脂ビーズを製造する方法について説明する。樹脂ビーズの製造方法は、例えば、セルロースやセルロース誘導体を主成分とする樹脂が溶解した有機溶剤を含有する油相(第1の液体)と、分散安定化剤を含有する水相(第2の液体)と、を混合して、上記の樹脂を含有する油滴を含む懸濁液を調製する工程(懸濁液調製工程)を有する。
【0031】
懸濁液調製工程では、樹脂が溶解した有機溶剤を含有する油相と、分散安定化剤を含有する水相とを混合する。油相と水相を混合し、必要に応じて撹拌することで、樹脂及び有機溶剤を含有する油滴が水中に分散した懸濁液を得ることができる。この油滴は水中に分散した状態で存在するため、油滴中の有機溶剤は水中へと徐々に移動する。そして、有機溶剤の移動に伴って油滴が収縮し、有機溶剤に溶解していたセルロース誘導体等の樹脂が徐々に析出する。析出した樹脂は、平滑な表面を維持しながら成長する。最終的には、析出した樹脂が固定化され、実質的に中実なコアビーズ及び樹脂ビーズの前駆体となる樹脂粒子が形成される。油滴の収縮が生じているか否かは、光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて観察した画像を解析することで判断することができる。このような油滴の収縮が生ずることで、真球性(真球度)が高く、実質的に中実であり、平滑な表面を有する、所望とする粒子径の樹脂ビーズを得ることができる。
【0032】
懸濁液調製工程では、油相と水相を混合して懸濁液を調製する。油相と水相を混合するには、撹拌下の水相に油相を添加してもよく、撹拌下の油相に水相を添加してもよい。必要に応じて、ディスパーやホモジナイザーなどの乳化装置を使用し、形成される油滴の粒径を調整することが好ましい。例えば、ホモジナイザーの回転数を変えてせん断力を調整することで、形成される油滴の粒子径を容易に調整することができる。その結果、得られるコアビーズ及び樹脂ビーズの粒子径を所望の範囲となるように適宜に調整することができる。
【0033】
セルロース誘導体としては、セルロースエステルを用いることができる。セルロースエステルは、通常、天然系のセルロース誘導体として化粧料に用いられている。セルロースエステルとしては、セルロース有機酸エステル及びセルロースリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。より具体的には、セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースブチレート、及びセルロースアセテートブチレートからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0034】
セルロース誘導体のなかでも、セルロースエステルは、一部加水分解して遊離酸を生ずることがある。このため、セルロースエステル類で形成された樹脂ビーズは遊離酸の臭気が問題となる場合がある。セルロース誘導体を主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズについては、アセチル基(CHCO-)の含有率を制御する(低減する)ことで、加水分解によって生ずる酢酸の遊離を抑制し、臭気の発生を抑えることができる。具体的には、樹脂ビーズが、セルロース誘導体を主成分とする樹脂によって、好ましくはセルロース誘導体によって形成されているとともに、セルロース誘導体が、アセチル基の含有率が25質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のセルロースアセテートプロピオネートであることが好ましい。アセチル基の含有率が上記の範囲内であるセルロースアセテートプロピオネートによって形成された樹脂ビーズを用いることで、経時的に発生する酢酸臭等の異臭が抑制された化粧料とすることができる。
【0035】
アセチル基の含有率は、例えば、アセチル基含有率が所定の範囲内のセルロース誘導体を原料として用いることで調整することができる。セルロース誘導体は、市販のセルロース誘導体をそのまま用いてもよいし、常法にしたがって加水分解又はエステル化してアセチル基の含有率を調整したものを用いてもよい。さらに、アセチル基含有率の異なる複数の樹脂ビーズを混合して、樹脂ビーズ全体のアセチル基含有率が所定の範囲内となるように制御してもよい。
【0036】
また、樹脂ビーズが、セルロース誘導体を主成分とする樹脂によって、好ましくはセルロース誘導体によって形成されているとともに、セルロース誘導体が、プロピオニル基(CHCHCO-)の含有率が10質量%以上、好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%のセルロースアセテートプロピオネートであることが好ましい。プロピオニル基の含有率が上記の範囲内であるセルロースアセテートプロピオネートによって形成された樹脂ビーズを用いることで、「しっとりとした触感」を有する化粧料とすることができる。
【0037】
セルロース誘導体のなかでも、セルロースエステルは、エステル部分の置換基の種類が、樹脂ビーズの触感に大きな影響を及ぼす。また、樹脂ビーズの触感は、エステル部分の置換基固有の性質の他、後述する製造方法で用いる有機溶剤へのセルロースエステル類の溶解度や、懸濁液中の分子の配向性等によって発現すると推測される。なかでも、原料として用いるセルロース誘導体のプロピオニル基の含有率を適切に設定することで、しっとりとした触感」を発現させることができる。
【0038】
樹脂ビーズ中のプロピオニル基の含有率は、例えば、プロピオニル基含有率が所定の範囲内のセルロースセルロースアセテートプロピオネートを原料として用いることで調整することができる。セルロース誘導体は、市販のセルロース誘導体をそのまま用いてもよいし、常法にしたがって加水分解又はエステル化してプロピオニル基の含有率を調整したものを用いてもよい。さらに、プロピオニル基含有率の異なる複数の樹脂ビーズを混合して、樹脂ビーズ全体のプロピオニル基含有率が所定の範囲内となるように制御してもよい。
【0039】
樹脂ビーズの製造方法は、上記の加水分解工程で得たコアビーズを表面処理剤で表面処理する工程(表面処理工程)をさらに有してもよい。この表面処理工程では、コアビーズ100質量部を表面処理剤0.1~30質量部で表面処理することが好ましく、0.5~20質量部で表面処理することがさらに好ましく、1~10質量部で表面処理することが特に好ましい。処理対象物であるコアビーズに対する表面処理剤の量を上記の範囲とすることで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される肌への伸び、しっとり感、及び柔らかさ等の触感により優れているとともに、さらに安定性の高い樹脂ビーズを得ることができる。
【0040】
表面処理剤は固体であることが好ましく、固体の板状物質であることがさらに好ましい。本明細書における「板状物質」とは、長径と短径の比(長径/短径)の値が1超であり、かつ、長径と厚さの比(長径/厚み)の値が2以上である物質をいう。板状物質は、その面で化学的性質が緻密に発現されるとともに、所定の厚さを有することで、物理的及び化学的に安定して対象物を表面処理することができる。このため、表面処理剤として板状物質を用いることで、新たな特性をより安定的にコアビーズに付与することができる。なお、板状物質のアスペクト比(長径/短径)は10以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましい。
【0041】
真球度及び表面平滑度が高いコアビーズを表面処理すると、コアビーズの表面を極めて緻密に被覆することができるので、得られる樹脂ビーズの物理的安定性や化学的効果をより高めることができる。そして、板状物質でコアビーズを表面処理することで、上記の効果を特に高めることができる。これに対して、セルロースの形状を直接球状に調整したビーズや、ビスコース法により再生したビーズは、真球度や表面平滑度が低いため、例えば乾式処理等で表面処理すると、ビーズ表面の凹部が未処理部分として残ったり、結着性が低下したりする場合がある。さらに、セルロースの形状を直接球状に調整したビーズや、ビスコース法により再生したビーズは、分子内の水素結合が強い。このため、これらのビーズに対する表面処理剤の化学的な吸着安定性も低くなりやすく、表面処理効果が低下すると考えられる。
【0042】
樹脂ビーズの製造方法では、セルロースエステル誘導体等を原材料として用いて、水素結合が弱い状態で真球状に固定化された樹脂粒子を形成した後、エステル部位を比較的ゆっくりと加水分解して得たコアビーズを表面処理する。このため、セルロース分子間の水素結合が抑えられていると考えられるので、表面処理剤との水素結合力を高めることができ、表面処理効果をより向上させることができると考えられる。
【0043】
表面処理剤として用いる板状物質の平均粒子径は、5.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましい。また、板状物質の平均厚さは、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。板状物質の厚さが薄いほど、また、板状物質の粒子径が小さいほど、コアビーズの表面をより緻密に被覆することができるので、物理的安定性や化学的効果をより高めることができる。板状物質の平均粒子径は、粒度分布測定器を使用して測定した値の相加平均値である。板状物質のアスペクト比(長径/短径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した板状物質のSEM画像(×5,000)を観察し、任意に選択した10個以上の板状物質の長径及び短径のそれぞれの相加平均値を用いて算出した。板状物質の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した板状物質のSEM画像(×5,000)を観察し、任意に選択した10個以上の板状物質の厚さの相加平均値として算出した。
【0044】
表面処理剤の付着、イオン結合、又は共有結合等により、コアビーズを表面処理して樹脂ビーズを得ることができる。具体的な表面処理としては、ドライブレンド(乾式処理)、湿式処理、気相処理、スプレードライ処理、メカノケミカル処理等を挙げることができる。メカノケミカル処理は、固体によって固体を処理する方法の一つであり、物質の構造・結合状態の変化を引き起こす粉砕、摩砕、又は摩擦等により、粒子の表面活性や表面電荷を利用する処理である。上記の表面処理のなかでも、ドライブレンド処理やメカノケミカル処理が好ましい。
【0045】
上述の樹脂ビーズは、真球性(真球度)が高く、中実であり、平滑な表面を有する天然系素材を構成材料とする樹脂粒子である。このため、上記の樹脂ビーズを含有させることで、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子を用いなくても、肌への伸び、しっとり感、及び柔らかさ等の触感に優れているとともに、そのような触感が長期にわたって維持される安定性の高い化粧料を提供することができる。
【0046】
本発明の化粧料に含まれる樹脂ビーズの量は、化粧料の種類等に応じて適宜設計されればよく、特に限定されない。化粧料中の樹脂ビーズの含有量は、化粧料全体を基準として、通常、1~10質量%、好ましくは1~5質量%である。
【0047】
本発明の化粧料は、上述の樹脂ビーズ以外の成分として、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェル等の各種化粧料の種類に応じて用いられる通常の原材料を含有する。樹脂ビーズ以外の原材料としては、パーソナルケア製品評議会(Personal Care Products Council)より発行されている「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(第13版、2010年)に収載されている各種成分を用いることができる。
【0048】
本発明の化粧料に用いられる樹脂ビーズ以外の原材料としては、油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、炭化水素、シリコーン油、界面活性剤、金属石鹸、高分子化合物、保湿剤、体質顔料、有機着色料、無機着色料、白色顔料、パール顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、及び水等を挙げることができる。
【0049】
油脂としては、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、及び硬化ヒマシ油等を挙げることができる。
【0050】
ロウとしては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、カンデリラロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、P OEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、及びPOE水素添加ラノリンアルコールエーテル等を挙げることができる。
【0051】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びドコサヘキサエン酸(DHA)等を挙げることができる。
【0052】
高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、及びヘキシルドデカノール等を挙げることができる。
【0053】
エステル類としては、酸とアルコールの脱水反応物を用いることができる。酸としては、脂肪酸、多塩基酸、及びヒドロキシ酸等を挙げることができる。アルコールとしては、低級アルコール、高級アルコール、及び多価アルコール等を挙げることができる。エステル類の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ラウロイルグルタミン酸(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル/イソステアリル)、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等を挙げることができる。
【0054】
炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、オゾケライト、プリスタン、スクワレン、ワセリン、水添ポリデセン等を挙げることができる。
【0055】
シリコーン油としてはメチルポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチコン、シクロメチコン等が挙げられる。
【0056】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子界面活性剤、及び天然界面活性剤等を挙げることができる。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN-メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、及びN-アシルアミノ酸塩等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、及び塩化ベンザルコニウム等を挙げることができる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニムベタイン等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン型、多価アルコールエステル型、及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等を挙げることができる。高分子界面活性剤としては、アクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体、及びトラガントゴム等を挙げることができる。天然界面活性剤としては、レシチン、ラノリン、コレステロール、及びサポニン等を挙げることができる。
【0057】
金属石鹸としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ジステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、ジミリスチン酸アルミニウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、及びパルミチン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0058】
高分子化合物には、製品の粘度を調整する目的で用いられる増粘剤高分子や、皮膜形成能を有する皮膜剤高分子等がある。増粘剤高分子としては、主として、天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物に大別される水溶性高分子が用いられる。天然高分子としては、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、及びデンプン等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、及びヒアルロン酸等の微生物系高分子;ゼラチン、カゼイン、アルブミン、及びコラーゲン等の動物系高分子;等を挙げることができる。
【0059】
半合成系高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びメチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、及びメチルデンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸プロピレングリコールエステル、及びアルギン酸塩等のアルギン酸系の多糖類誘導体等を挙げることができる。合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、及びポリアクリル酸ソーダ等のビニル系高分子の他;ポリオキシエチレンオキシド、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドブロック共重合体等を挙げることができる。無機物としては、ベントナイト、ラポナイト、微粉酸化ケイ素、及びコロイダルアルミナ等を挙げることができる。
【0060】
皮膜剤高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0061】
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びソルビトール等の多価アルコールの他、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、及びペンチレングリコール等を挙げることができる。
【0062】
体質顔料としては、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、及び硫酸バリウム等を挙げることができる。有機着色料としては、食品、医薬品、及び化粧品用のタール色素等の合成着色料;β-カロチン、カルサミン、カルミン、及びクロロフィル等の天然着色料を挙げることができる。無機着色料としては、赤酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、及びカーボンブラック等の無機顔料;アルミニウムパウダー及びカッパーパウダー等の金属粉末顔料等を挙げることができる。白色顔料としては、酸化チタン及び亜鉛華等を挙げることができる。パール顔料としては、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、及び酸化鉄処理雲母チタン等を挙げることができる。
【0063】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸誘導体、及びサリチル酸誘導体等を挙げることができる。紫外線吸収剤のさらなる具体例としては、「新化粧品学」(第2版、光井武夫編、2001年、南山堂発行)第161頁に記載された化合物を挙げることができる。
【0064】
酸化防止剤としては、キレート剤、トコフェノール類、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸エステル類、クロロゲン酸、カテキン、ブチルヒドロキシアニソール、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、及びEDTA等を挙げることができる。金属イオン封鎖剤としては、EDTAのナトリウム塩、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸ナトリウム、及びメタリン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0065】
本発明の化粧料は、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェルのいずれかである。ルースパウダーは、粉体原料のみで実質的に構成された粉末状の化粧料である。樹脂ビーズ以外の粉体原料としては、前述の体質顔料、有機着色料、無機着色料、白色顔料、パール顔料、及び金属石鹸等を挙げることができる。これらの粉体原料と、前述の樹脂ビーズとを定法にしたがって混合することで、しっとりした滑らかな触感を示すルースパウダーとすることができる。
【0066】
ファンデーションは、例えば、パウダーファンデーションとリキッドファンデーションに大別される。パウダーファンデーションは、体質顔料、有機着色料、無機着色料、白色顔料、及びパール顔料等の粉体原料と、油脂、ロウ、エステル類、及び炭化水素等の結合剤とが用いられる。伸びをよくするためにシリコーン油を用いることもできる。但し、前述の樹脂ビーズを用いることで十分な伸びが得られるので、シリコーン油を用いなくてもよい。シリコーン油を用いないと、生分解性の点で有利である。パウダーファンデーションには、化粧品用の防腐剤を配合することができる。防腐剤のなかでも、保湿効果を有するとともに、さっぱりとした使用感を得ることができるペンチレングリコールが好ましい。
【0067】
リキッドファンデーションには、O/W乳化型ファンデーション及びW/O乳化型ファンデーション等がある。W/O乳化型ファンデーションは、外相が油分であるためにべたついた使用感のものが多かった。これに対して、前述の樹脂ビーズを配合することで、べたついた使用感を抑えることができる。
【0068】
日焼け止めクリームには、O/W乳化型クリーム及びW/O乳化型クリーム等がある。
W/O乳化型クリームは、一般的にオイルリッチタイプと呼ばれており、日持ちがよい一方で使用感が重くなる傾向にある。これに対して、前述の樹脂ビーズを含有するW/O乳化型クリームは、伸びの良い使用感を得ることができる。
【0069】
オールインワンジェルには、必要に応じて、エタノール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びイソペンチルジオール等の溶媒や、これらの溶媒の水溶液を配合することができる。また、前述の界面活性剤以外の界面活性剤(その他の界面活性剤)を配合することができる。その他の界面活性剤としては、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム等のジェミニ型界面活性剤;ステアリン酸ポリグリセリル-10及びステアリン酸ポリグリセリル-4等の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。これらその他の界面活性剤を配合することで、より使用感に優れたオールインワンジェルとすることができる。
【実施例0070】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、製造例、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0071】
<樹脂ビーズの製造>
(製造例1)
セルロースアセテートプロピオネート(商品名「CAP-482-0.5」、イーストマンケミカル社製)100部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール24部をイオン交換水300部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,800rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、15μmであった。
【0072】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水4,500部を75分間かけて注入し、樹脂粒子分散液(樹脂ビーズ分散液)を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠して撹拌した。ろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して、樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズの表面の状態を示す電子顕微鏡写真を図1に示す。また、得られた樹脂ビーズの断面の状態を示す電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0073】
(製造例2)
セルロースアセテート(商品名「CA-398-6」、イーストマンケミカル社製、アセチル基の含有率:39.8%)150部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)1,350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール100部をイオン交換水1,250部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて2,000rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、18μmであった。
【0074】
ディゾルバーを用いて得られた懸濁液を500rpmで撹拌しながら、イオン交換水42,000部を90分間かけて注入し、樹脂粒子分散液を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠して撹拌した。ろ過及び洗浄して得た樹脂粒子を、イオン交換水2,500部に分散させた。水酸化ナトリウムを添加してpH13.0以下に調整するとともに、50℃に加熱して加水分解反応を行った。加水分解反応終了後、塩酸で中和した。生成物をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して、メジアン径(D50)9μmのコアビーズを得た。
【0075】
得られたコアビーズ50g及びステアリン酸亜鉛(商品名「SPZ-100F」、堺化学工業社製、板状粉体、平均粒子径0.4μm、厚さ0.1μm、アスペクト比3)1.5gを小型混合機に入れた。乾式で3分間混合して、コアビーズをステアリン酸亜鉛で表面処理し、樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズの表面の状態を示す電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0076】
(比較製造例1)
セルロース微粒子(商品名「CELLULOBEADS D-5」大東化成工業社製)を比較例1の樹脂ビーズとした。
【0077】
(比較製造例2)
セルロースアセテート(商品名「CA-398-6」、イーストマンケミカル社製、アセチル基の含有率:39.8%)35部を酢酸エチル(水溶解度:8g/100g)350部に溶解して油相を調製した。また、ポリビニルアルコール15部をイオン交換水300部に溶解して水相を調製した。調製した水相に油相を加えて混合し、ディゾルバーを用いて1,000rpmで3分間撹拌した。さらに、ディゾルバーを用いて1,500rpmで10分間撹拌して、油滴が均一に分散した懸濁液を得た。光学顕微鏡で観察及び画像解析して測定した油滴の体積平均粒子径は、16μmであった。
【0078】
ディゾルバーを用いてイオン交換水4,500部を500rpmで撹拌しながら、得られた懸濁液を10分間かけて注入し、樹脂粒子分散液を得た。樹脂粒子をろ過及び洗浄した後、イオン交換水に解膠した。さらに、ろ過及び洗浄した後、乾燥及び解砕処理して樹脂ビーズを得た。
【0079】
<樹脂ビーズの評価>
(粒子径)
コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)を使用して、樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径(D50)を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(真球度)
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像を画像解析し、下記式(1)より、個々の樹脂ビーズの円形度Cを算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの円形度Cの相加平均値を真球度とした。結果を表1に示す。
C=(4πS)/(L) ・・・(1)
【0081】
上記式(1)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Lは、画像中における樹脂ビーズの外周部の長さを示す。円形度Cの値が1に近いほど、粒子の形状は真球に近い。
【0082】
(表面平滑度)
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズのSEM画像(×5,000)を観察し、下記式(2)より、個々の樹脂ビーズの平滑度Mを算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの平滑度Mの相加平均値を表面平滑度とした。結果を表1に示す。平滑度Mの値が1に近いほど、粒子の表面は平滑に近い。
M=(1-(S)/(S))×100 ・・・(2)
【0083】
上記式(2)中、Sは、画像中に占める樹脂ビーズの面積(投影面積)を示し、Sは樹脂ビーズとそれに近似した円を重ねた際に、樹脂粒子の輪郭で形成されたエリアと、重ねた円の輪郭より内部にある面積と外部にある面積の総和を示す。
【0084】
(中実度)
走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した樹脂ビーズの断面のSEM画像を画像解析し、個々の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積を算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの、樹脂で満たされた部分の体積の平均値を中実度(体積%)とした。結果を表1に示す。
【0085】
(アセチル基及びプロピオニル基の含有率)
特表2006-523752号公報の記載内容(主として、段落[0136]~[0145]の記載内容)に準じて、樹脂ビーズ(樹脂ビーズを構成するセルロースアセテートプロピオネート)中のアセチル基含有率及びプロピオニル基含有率を測定及び算出した。結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
<化粧料の製造>
(ルースパウダー)
表2に示す配合量で各成分を配合し、ブレンダーを使用して混合した。粉砕機を使用して粉砕した後、ふるいを通して、ルースパウダーを得た。
【0088】
【0089】
(パウダーファンデーション)
表3に示す配合量で各成分を配合及び混合して、粉体原料及び結合剤をそれぞれ得た。粉体原料を結合剤に撹拌しながら徐々に添加し、均一に混合してパウダーファンデーションを得た。
【0090】
【0091】
(W/Oリキッドファンデーション)
表4に示す油相(1)の各成分を混合し、60℃に加温して均一に溶解した後、油相(2)の各成分を加えて均一に混合した。一方、表4に示す水相(1)の各成分を均一に混合した後、溶解状態とした水相(2)の各成分を加えて均一に混合した。油相(1)及び油相(2)の混合物に、表4に示す粉体原料の各成分を添加して分散させ、分散液を得た。得られた分散液を、水相(1)及び水相(2)の混合物に撹拌しながら徐々に加え、均一に混合して、W/Oリキッドファンデーションを得た。
【0092】
【0093】
(日焼け止めクリーム)
表5に示す油相(1)の各成分を50℃に加温して溶解させた後、油相(2)の各成分を加えて均一にした。一方、表5に示す水相(2)の各成分を混合して均一にした後、水相(2)の各成分を溶解させたものを加えて均一にした。油相(1)及び油相(2)の混合物に、表5に示す粉体原料の各成分を加えて分散及び混合した後、水相(1)及び水相(2)の混合物を徐々に加えて均一に乳化し、日焼け止めクリームを得た。
【0094】
【0095】
(オールインワンジェル)
表6に示す水相(2)のクエン酸を精製水に溶解させた後、水相(1)のカルボキシビニルポリマー(商品名「NTC-CARBOMER 380」、日光ケミカルズ社製)を加えて分散させた。水相(1)の残りの成分を加えて均一化した。表6に示す油相(1)の各成分を混合して均一に分散させた後、水相(1)及び水相(2)の混合物に添加した。一方、表6に示す油相(2)を70℃に加温した後、樹脂ビーズを加えて分散液を得た。得られた分散液を、水相(1)、水相(2)、及び油相(1)の混合物に加え、撹拌及び混合して乳化した。表6に示す中和剤を加えて撹拌した後、冷却して、オールインワンジェルを得た。
【0096】
【0097】
<化粧料の評価>
製造した各化粧料の「触感」及び「肌への伸び」について、10人のパネルテストによる官能評価を行った。「触感」及び「肌への伸び」を判断し、以下に示す評価基準にしたがってそれぞれ5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表7~11に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の化粧料は、石油由来の合成系素材からなる樹脂粒子を使用しなくとも、触感及び肌への伸びに優れており、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム及びオールインワンジェルとして有用である。
図1
図2
図3