(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020121
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220125BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
A41D13/11 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123425
(22)【出願日】2020-07-20
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】510295309
【氏名又は名称】To.Pi工房有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】金川 將宏
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA16
2E185CC32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】夏期に耐ウィルス性を保証しつつ息苦しさや熱中症の懸念を解消できるようにしたマスクを提供する。
【解決手段】少なくとも通気性を有する表側布と、表側布に重ねられ表側布に対して上側縁部及び下側縁部が各々縫合されてマスク本体部分10を構成し、少なくとも通気性を有する裏側布と、帯状又はワイヤー状をなしマスク本体部分両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部に該側縁部に沿って設けられ変形されてマスク本体部分の少なくとも一方の側縁部と顔面との間に口及び鼻に至る通気路20を形成し得る通気路構成部材と、マスク本体部分を顔への装着状態に保持する装着保持部材18と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも通気性を有する表側布と、
上記表側布に重ねられ、上記表側布に対して上側縁部及び下側縁部が各々縫合されてマスク本体部分を構成し、少なくとも通気性を有する裏側布と、
帯状又はワイヤー状をなし、上記マスク本体部分両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部に該側縁部に沿って設けられ、変形されて上記マスク本体部分の少なくとも一方の側縁部と顔面との間に口及び鼻に至る通気路を形成し得る通気路構成部材と、
上記マスク本体部分の両側縁部に設けられマスク本体部分を顔への装着状態に保持するための装着保持部材と、
を備えたことを特徴とするマスク。
【請求項2】
上記表側布が通気性及びファッション性を有する織布を用いて作製され、上記裏側布が通気性及び接触冷感性を有する織布を用いて作製されている請求項1記載のマスク。
【請求項3】
上記装着保持部材が耳に引っ掛けられる耳掛け紐、帽子に着脱可能に取付けられるフック又は紐、あるいは後頭部に掛け回される紐である請求項1記載のマスク。
【請求項4】
上記マスク本体部分上側縁部を鼻の立体形状に対応する立体形状に変形保持する鼻形状構成部材が更に設けられ、該鼻形状構成部材は帯状又はワイヤー状をなし、上記マスク本体部分上側縁部の表側布と裏側布との間に上記上側縁部に沿って設けられている請求項1記載のマスク。
【請求項5】
上記マスク本体部分の下側縁部を顎の立体形状に対応する立体形状に変形保持する顎形状構成部材が更に設けられ、該顎形状構成部材は帯状又はワイヤー状をなし、上記マスク本体部分下側縁部の表側布と裏側布との間に上記上側縁部に沿って設けられている請求項1記載のマスク。
【請求項6】
不織布製マスクが挿入され得る袋状をなすマスクカバーにおいて、
カバーの両側縁部のうち少なくとも一方の側縁部に通気路構成部材が該側縁部に沿って設けられ、通気路構成部材は帯状又はワイヤー状をなし、変形されて上記カバーの少なくとも一方の側縁部と顔面との間に口及び鼻に至る通気路を形成し得るようになっていることを特徴とすマスクカバー。
【請求項7】
少なくとも通気性を有する表側布素材及び裏側布素材を準備し、上記表側布素材及び裏側布素材をマスク本体部分の左半部及び右半部の形状に加工し、
上記表側布素材の左半部及び右半部の対向する側縁部を縫合して表側布を作製し、上記裏側布素材の左半部及び右半部の対向する側縁部を縫合して裏側布を作製し、
上記表側布及び裏側布を両者の表面が合わさるように重ねて上記表側布及び裏側布の上側縁部及び下側縁部を縫合することによってマスク本体部分を作製し、
上記表側布及び裏側布を裏返して両者の表面を露出させ、
上記表側布及び裏側布の両側縁部の少なくとも一方の側縁部に通気路構成部材を側縁部に沿って設け、装着保持部材を重ねて上記表側布及び裏側布の側縁部を裏側布側に折り返して縫合するようにしたことを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項8】
上記マスク本体部分を作製するときに上記表側布又は裏側布の上側縁部に帯状又はワイヤー状をなす鼻形状構成部材を取付けるようにした請求項7記載のマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスク及びその製造方法に関し、特に夏期に耐ウィルス性を保証しつつ息苦しさや熱中症の懸念を解消できるようにしたマスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、飛沫や空気を媒体としたウィルス性疾患の感染や感染者からの拡散を抑止するためにマスクを用いることが推奨されている。
【0003】
マスクのフィルター性能を発揮させるために、マスク本体部分に不布を用い、マスク本体部分を着用者の顔面にフィットさせることが提案されている(特許文献1)。しかし、マスク本体部分の気密性が高まると、鼻及び近傍部分とマスク本体部分上側縁部との間に隙間ができ、呼気が漏れ、眼鏡のレンズが曇るという不具合が発生していた。
【0004】
そこで、マスク本体部分上側縁部に沿ってノーズワイヤーを内装し、着用時にノーズワイヤーを屈曲させることによって、マスク本体部分上側縁部を鼻及びその近傍部分にフィットさせることが提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3197113号公報
【特許文献2】特許第6692009号公報
【特許文献3】実用新案登録第3220822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のマスクでは高い気密性故に夏期になるとマスク本体部分内に熱がこもって温度が上昇しやすく、息苦しさを感じるとともに、マスク本体部分をずらして汗を拭く必要があり、最悪の場合には熱中症が懸念される。
また、運動を行っている間にもウィルス感染を抑止する上でマスクの着用が求められており、息苦しさや熱中症が特に懸念される。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、夏期に耐ウィルス性を保証しつつ息苦しさや熱中症の懸念を解消できるようにしたマスク及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係るマスクは、少なくとも通気性を有する表側布と、上記表側布に重ねられ、上記表側布に対して上側縁部及び下側縁部が各々縫合されてマスク本体部分を構成し、少なくとも通気性を有する裏側布と、帯状又はワイヤー状をなし、上記マスク本体部分両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部に該側縁部に沿って設けられ、変形されて上記マスク本体部分の少なくとも一方の側縁部と顔面との間に口及び鼻に至る通気路を形成し得る通気路構成部材と、上記マスク本体部分の両側縁部に設けられマスク本体部分を顔への装着状態に保持するための装着保持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つはマスク本体部分の両側縁部の少なくとも一方の側縁部に帯状又はワイヤー状の通気路構成部材を設け、マスク本体部分の側縁部と顔面との間に鼻や口に至る通気路を形成できるようにした点にある。
【0010】
これにより、夏期には通気路を介してマスク本体部分内に外気を流入させることができ、マスク本体部分内に熱がこもって温度が上昇することが大幅に抑制され、汗を拭うことも少なくなり、息苦しさや熱中症の懸念を解消でき、しかも必要なときには側方の通気路を閉じることによってウィルス感染を確実に抑止することができる。
【0011】
上述のように、マスク本体部分を表側布と裏側布の2枚で構成すると、裏側布が鼻や口に吸いつきやすくなる。そこで、表側布と裏側布を適宜相互に縫合して裏側布が鼻や口に吸いつくのを防止するのがよい。
【0012】
表側布は少なくとも通気性を有していればよく、例えば通気性及びファッション性に優れるラッセル生地やダブルラッセル生地を用いることができる。また、裏側布は少なくとも通気性、好ましくは通気性及び接触冷感性を有していればよく、例えば通気性、速乾性及び接触冷感性に優れたゼロクール(登録商標)生地を用いることができる。さらに、マスク本体部分は織布製の場合について説明したが、不織布製であってもよい。
【0013】
鼻形状構成部材及び通気路構成部材は帯状又はワイヤー状であればよく、例えばポリカーボネイトや金属材料を用いることができる。
【0014】
さらに、表側布と裏側布の間には遮熱性に優れたシートを介在させてマスク内の温度上昇を抑制するようにしてもよい。この遮熱性シートにはチタンを蒸着した布を用いることができる。
【0015】
通気路構成部材はマスク本体の左右両側縁部のうちの少なくとも一方の側縁部に設けられていれば口や鼻への通気性を確保できるが、優れた通気性を確保する上で、両側縁部に通気路構成部材を設けるのが好ましい。
【0016】
また、装着保持部材はマスク本体部分を顔への装着状態に保持できればよく、耳に引っ掛けられる耳掛け紐、帽子に着脱可能に取付けられるフック又は紐、あるいは後頭部に掛け回される紐であってもよい。
【0017】
さらに、マスク本体部分上側縁部を鼻の立体形状に対応する立体形状に変形保持する鼻形状構成部材を更に設け、鼻形状構成部材は帯状又はワイヤー状をなし、マスク本体部分上側縁部の表側布と裏側布との間に上側縁部に沿って設けられているのが好ましい。なお、この鼻形状構成部材は必ずしも設けなくともよい。
【0018】
また、マスク本体部分の下側縁部を顎の立体形状に対応する立体形状に変形保持する顎形状構成部材を更に設け、顎形状構成部材は帯状又はワイヤー状をなし、マスク本体部分下側縁部の表側布と裏側布との間に上側縁部に沿って設けられているのがよいが、必ずしも設けなくてもよい。
【0019】
さらに、本発明はマスクカバーに適用することもできる。すなわち、不織布製マスクが挿入され得る袋状をなすマスクカバーにおいて、カバーの両側縁部のうち少なくとも一方の側縁部に通気路構成部材が該側縁部に沿って設けられ、通気路構成部材は帯状又はワイヤー状をなし、変形されて上記カバーの少なくとも一方の側縁部と顔面との間に口及び鼻に至る通気路を形成し得るようになすことができる。
【0020】
また、マスク本体部分は1枚の表側布と裏側布によって構成してもよいが、表側布及び裏側布を左半部及び右半部から構成し、左半部及び右半部の対向する縁部を縫合して表側布及び裏側布を製作するようにしてもよい。特に、左半部及び右半部の対向縁部を縫合すると、マスク本体部分の中央に上下に延びる強度の大きい箇所を形成することができ、これによってマスク本体部分を好ましい立体形状に保持することができる。
【0021】
上述のマスクを製造する方法も斬新である。すなわち、本発明に係るマスクの製造方法は、少なくとも通気性を有する織布製又は不織布製の表側布素材と少なくとも通気性を有する織布製又は不織布製の裏側布素材を準備し、上記表側布素材及び裏側布素材をマスク本体部分の左半部及び右半部の形状に加工し、上記表側布素材の左半部及び右半部の対向する縁部を縫合して表側布を作製するとともに、上記裏側布素材の左半部及び右半部の対向する縁部を縫合して裏側布を作製し、上記表側布及び裏側布を両者の表面が合わさるように重ねて上記表側布及び裏側布の上側縁部及び下側縁部を縫合することによってマスク本体部分を作製するとともに、帯状又はワイヤー状の鼻形状構成部材を表側布又は裏側布の上縁部に沿わせて取付け、上記表側布及び裏側布を裏返して両者の表面を露出させ、上記表側布及び裏側布の両側縁部の少なくとも一方の側縁部に通気路構成部材を側縁部に沿って設け、装着保持部材を重ねて上記表側布及び裏側布の側縁部を裏側布側に折り返して縫合するようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るマスクの製造方法の好ましい実施形態の前半部分の作業工程の例を示す図である。
【
図2】上記実施形態の後半部分の作業工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づき説明する。
図1ないし
図3は本発明に係るマスクの製造方法の好ましい実施形態を示す。図において、マスクはマスク本体部分10と左右一対の耳掛け(装着保持部材)18から構成され、マスク本体部分10は鼻、口、顎を覆う大きさに製作されている。
【0024】
マスクを製造する場合、表側布素材及び裏側布素材を準備する。表側布素材には通気性及びファッション性に優れた織布、例えばラッセル生地を用いることができる。他方、裏側布素材には通気性、速乾性及び接触冷感性に優れた織布、例えばゼロクール(登録商標)生地を用いることができる。勿論、不織布を用いることもできる。
【0025】
素材が準備できると、
図1の(a)に示されるように、表側布11及び裏側布12の左半部及び右半部の形状に加工し、表側布11の左半部及び右半部の対向する側縁部11Aを縫合するとともに、裏側布12の左半部及び右半部の対向する側縁部12Aを縫合する。次に、
図1の(b)に示されるように、両者の表面を合わせて表側布11及び裏側布12を重ね合わせ、
図1の(c)に示されるように、ポリカーボネイト製の鼻ワイヤー(鼻形状構成部材)19を適当な生地で包んで表側布11の上縁部13Aに沿わせるとともに、表側布11及び裏側布12の上縁部13A及び下縁部13Bを縫合し、表側布11及び裏側布12を裏返して両者の表面を露出させると、
図2の(a)に示されるように、マスク本体部分10が得られる。
【0026】
なお、表側布11又は裏側布12の裏側上縁部13Aに筒体を縫合しておき、必要に応じて鼻ワイヤー19を抜き差しできるようにしてもよい。
【0027】
次に、
図2の(b)に示されるように、マスク本体部分10を上下に適切な間隔をあけて横幅方向に延びるように縫合し、マスク本体部分10の両側縁部も上下方向に縫合し、マスク本体10の表側布11及び裏側布12を一体的となす。
【0028】
また、金属製(又はポリカーボネイト製)のサイドワイヤー15の両端部を折り曲げ、これをマスク本体部分10の両側縁部内に縦に入れ、
図2の(c)に示されるように、耳掛け18を重ねてマスク本体部分10の両側縁部を裏側布12側に折り返して縫合すると、本例のマスクを製造することができる。なお、マスク本体部分10の下側縁部13Bにはさらに顎ワイヤーを設けるようにしてもよい。
【0029】
サイドワイヤー15は変形自在であるので、
図3に示されるように、マスク本体部分10の側縁部と顔面との間に鼻や口に至る通気路20を形成できる。
その結果、夏期には通気路20を介してマスク本体部分10内に外気を流入させることができ、マスク本体部分10内に熱がこもって温度が上昇することが大幅に抑制され、汗を拭うことも少なくなり、息苦しさや熱中症の懸念を解消でき、しかも必要なときには側方の通気路20を閉じることによってウィルス感染を確実に抑止することができる。
【0030】
また、表側布11と裏側布12を適宜相互に縫合しているので、裏側布12が鼻や口に吸いつくのを防止することができる。
【0031】
さらに、
図4に示されるように、表側布11と裏側布12の間にチタンを蒸着した遮熱性布30を介在させ、直射日光に起因するマスク本体10内の温度上昇を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 マスク本体部分
11 表側布
12 裏側布
15 サイドワイヤー(通気路構成部材)
18 耳掛け(装着保持部材)
19 鼻ワイヤー(鼻形状構成部材)