(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020127
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/04 20060101AFI20220125BHJP
F28F 13/12 20060101ALI20220125BHJP
F28F 1/10 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F28F3/04 B
F28F13/12 Z
F28F1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123434
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】マーレベーアサーマルシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】峯 北斗
(57)【要約】
【課題】暖房時におけるフィンへの着霜に起因する暖房能力の短時間での低下を抑制しうるとともに、冷房時および暖房時に通風間隙を通過する空気および冷媒流通管とフィンとの伝熱面積の減少を防止しうるヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器を提供する。
【解決手段】室外熱交換器4における隣り合う冷媒流通管44どうしの間の通風間隙に配置されたフィン45は、通風間隙の通風方向の範囲内に位置するメイン熱交換部46と、通風間隙よりも風上側に突出した突出部47とからなる。フィン45の突出部47の連結部473に、上側に突出するとともに連結部473の幅方向に延び、かつ裏側に下方に開口した第1凹部が形成されている横断面略V形の第1凸部474と、下側に突出するとともに連結部473の幅方向に延び、かつ裏側に上方に開口した第2凹部が形成されている横断面略V形の第2凸部475とが、通風方向に並ぶように、それぞれ少なくとも1つ設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向および厚み方向を同方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で厚み方向に間隔をおいて配置された複数の扁平状冷媒流通管と、隣り合う冷媒流通管どうしの間に配置されたフィンとを備えているヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器であって、
フィンが、隣接する冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙の通風方向の範囲内に位置するメイン熱交換部と、メイン熱交換部に一体に設けられ、かつ通風間隙よりも風上側に突出した突出部とからなり、フィンのメイン熱交換部が、通風方向に延びかつ通風間隙の両側の冷媒流通管のうちのいずれか一方に接合された波頂部、通風方向に延びかつ通風間隙の両側の冷媒流通管のうちのいずれか他方に接合された波底部、および通風方向に延びかつ波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状であり、フィンの突出部が、通風方向に延びかつメイン熱交換部の波頂部に連なった波頂部、通風方向に延びかつメイン熱交換部の波底部に連なった波底部、および通風方向に延びかつ波頂部と波底部とを連結するとともにメイン熱交換部の連結部に連なった連結部よりなるコルゲート状であり、フィンの突出部の連結部に、冷媒流通管の長手方向一端側に突出するとともに連結部の幅方向に延び、かつ裏側に冷媒流通管の長手方向他端側に開口した第1凹部が形成されている横断面略V形の第1凸部と、冷媒流通管の長手方向の他端側に突出するとともに連結部の幅方向に延び、かつ裏側に冷媒流通管の長手方向一端側に開口した第2凹部が形成されている横断面略V形の第2凸部とが、通風方向に並ぶように、それぞれ少なくとも1つ設けられているヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器。
【請求項2】
前記第1凸部と前記第2凸部とが、横断面において正弦曲線状となるように連なっている請求項1記載のヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプ式冷凍サイクルに用いられる室外熱交換器に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図2の上下、左右を上下、左右というものとする。また、
図2の紙面表裏方向を通風方向というものとし、同図の紙面裏側(
図3および
図4に矢印Xで示す方向)を風下側、これと反対側(
図2の紙面表側)を風上側というものとする。
【背景技術】
【0003】
原動機としてエンジンおよびモータが用いられるハイブリッド自動車や、原動機としてモータが用いられる電気自動車などの比較的廃熱の少ない車両の車両用空調装置に用いられるヒートポンプ式冷凍サイクルとしては、圧縮機と、車室外に配置され、かつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器と、車室内に配置されかつ冷房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室内エバポレータと、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して冷媒を凝縮させる室内コンデンサとを備えており、室外熱交換器が、所定間隔をおいて配置された複数の扁平状冷媒流通管と、隣り合う冷媒流通管どうしの間の通風間隙に配置されたフィンとを備えており、フィンが、通風方向に延びかつ前記通風間隙を形成する2つの冷媒流通管のうちのいずれか一方に接合された波頂部、通風方向に延びかつ前記通風間隙を形成する2つの冷媒流通管のうちのいずれか他方に接合された波底部、および通風方向に延びかつ波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるとともに、波頂部と波底部とが交互に形成されたコルゲート状であり、各通風間隙に1つのフィンが配置されているヒートポンプ式冷凍サイクルが周知である。
【0004】
上述した周知のヒートポンプ式冷凍サイクルを用いた車両用空調装置においては、冬季などの暖房時に外気温が低くなると、室外熱交換器のフィンに着霜が発生し、室外熱交換器の隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙が塞がれて熱交換効率が短時間で著しく低下し、その結果暖房能力が短時間で低下するという問題があった。特に、フィンへの着霜の発生は、通風間隙の風上側部分において顕著である。
【0005】
そこで、このような問題を解決したヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器として、長手方向を鉛直方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向け、さらに厚み方向を室外熱交換器の幅方向に向けた状態で当該幅方向に間隔をおいて配置された複数の扁平状冷媒流通管と、隣り合う冷媒流通管どうしの間の各通風間隙に配置された1つのフィンとを備えており、フィンが、通風方向に延びかつ前記通風間隙を形成する2つの冷媒流通管のうちのいずれか一方に接合された波頂部、通風方向に延びかつ前記通風間隙を形成する2つの冷媒流通管のうちのいずれか他方に接合された波底部、および通風方向に延びかつ波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるとともに、波頂部と波底部とが交互に形成されたコルゲート状であり、各フィンの全連結部の風上側端部における室外熱交換器の幅方向の中央部よりも波頂部側の部分または波底部側の部分に切り欠きが形成されるとともに、波頂部側の部分の切り欠きと波底部側の部分の切り欠きとが上下方向に交互に配置された室外熱交換器が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載の室外熱交換器においては、各フィンの全連結部における室外熱交換器の幅方向の中央部よりも波頂部側の部分または波底部側の部分に切り欠きが形成されるとともに、波頂部側の部分の切り欠きと波底部側の部分の切り欠きとが上下方向に交互に配置されているので、各フィンの風上側の部分に着霜が発生した場合にも、切り欠きが形成されている部分ではフィンへの着霜による通風間隙の閉塞が比較的長時間にわたって抑制され、暖房能力の短時間での低下が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/207785号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器においては、各フィンの全連結部に切り欠きが形成されているので、通風間隙を通過する空気および冷媒流通管とフィンとの伝熱面積が減少し、冷房時および暖房時において熱交換性能が低下する。
【0009】
この発明の目的は、上記問題を解決し、暖房時におけるフィンへの着霜に起因する暖房能力の短時間での低下を抑制しうるとともに、冷房時および暖房時に通風間隙を通過する空気および冷媒流通管とフィンとの伝熱面積の減少を防止しうるヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0011】
1)長手方向および厚み方向を同方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で厚み方向に間隔をおいて配置された複数の扁平状冷媒流通管と、隣り合う冷媒流通管どうしの間に配置されたフィンとを備えているヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器であって、
フィンが、隣接する冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙の通風方向の範囲内に位置するメイン熱交換部と、メイン熱交換部に一体に設けられ、かつ通風間隙よりも風上側に突出した突出部とからなり、フィンのメイン熱交換部が、通風方向に延びかつ通風間隙の両側の冷媒流通管のうちのいずれか一方に接合された波頂部、通風方向に延びかつ通風間隙の両側の冷媒流通管のうちのいずれか他方に接合された波底部、および通風方向に延びかつ波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状であり、フィンの突出部が、通風方向に延びかつメイン熱交換部の波頂部に連なった波頂部、通風方向に延びかつメイン熱交換部の波底部に連なった波底部、および通風方向に延びかつ波頂部と波底部とを連結するとともにメイン熱交換部の連結部に連なった連結部よりなるコルゲート状であり、フィンの突出部の連結部に、冷媒流通管の長手方向一端側に突出するとともに連結部の幅方向に延び、かつ裏側に冷媒流通管の長手方向他端側に開口した第1凹部が形成されている横断面略V形の第1凸部と、冷媒流通管の長手方向の他端側に突出するとともに連結部の幅方向に延び、かつ裏側に冷媒流通管の長手方向一端側に開口した第2凹部が形成されている横断面略V形の第2凸部とが、通風方向に並ぶように、それぞれ少なくとも1つ設けられているヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器。
【0012】
2)前記第1凸部と前記第2凸部とが、横断面において正弦曲線状となるように連なっているそれぞれ少なくとも1つ設けられている上記1)記載のヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器。
【発明の効果】
【0013】
上記1)~2)のヒートポンプ式冷凍サイクル用室外熱交換器によれば、隣り合う冷媒流通管どうしの間に配置されたフィンが、隣接する冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙の通風方向の範囲内に位置するメイン熱交換部と、メイン熱交換部に一体に設けられ、かつ通風間隙よりも風上側に突出した突出部とからなるので、暖房時には、フィンの突出部に着霜が優先的に発生し、水分量が減らされた空気がメイン熱交換部に触れることになって、水分量の少ない空気と冷媒流通管を流れる冷媒とがメイン熱交換部を介して熱交換を行うことになり、その結果フィンのメイン熱交換部への着霜の発生を抑制することが可能になる。したがって、フィンへの着霜による通風間隙の閉塞が比較的長時間にわたって抑制され、暖房能力の短時間での低下が抑制される。
【0014】
しかも、フィンの突出部の連結部に、冷媒流通管の長手方向一端側に突出するとともに連結部の幅方向に延び、かつ裏側に冷媒流通管の長手方向他端側に開口した第1凹部が形成されている横断面略V形の第1凸部と、冷媒流通管の長手方向の他端側に突出するとともに連結部の幅方向に延び、かつ裏側に冷媒流通管の長手方向一端側に開口した第2凹部が形成されている横断面略V形の第2凸部とが、通風方向に並ぶように、それぞれ少なくとも1つ設けられているので、フィンの突出部の連結部全体が平坦である場合に比べ表面積が大きくなる。さらに、フィンの突出部の連結部における冷媒流通管の長手方向一端側を向いた面に沿って流れる空気は、最も風上側の第1凸部の風上側面に当たった後、第1凸部の風下側面に沿って流れて、風下側に隣接する第2凸部の裏側の第2凹部内で渦状に流れる。一方、フィンの突出部の連結部における冷媒流通管の長手方向他端側を向いた面に沿って流れる空気は、最も風上側の第1凸部の裏側の第1凹部内で渦状に流れた後、風下側に隣接する第2凸部の風上側面に当たり、ついで第2凸部の風下側面に沿って流れる。室外熱交換器を通過する空気が、フィンの突出部において上述したように流れるので、前記第1凸部および第1凹部の表面と、第2凸部および第2凹部の表面にも着霜が発生する。したがって、フィンの突出部全体への着霜量が、連結部全体が平坦な場合に比べて多くなり、フィンのメイン熱交換部への着霜が遅くなって、フィンのメイン熱交換部への着霜による通風間隙の閉塞が比較的長時間にわたって抑制される。その結果、フィンのメイン熱交換部で行われる通風間隙を流れる空気と冷媒流通管を流れる冷媒との熱交換効率の低下を遅延させることが可能になり、暖房能力の短時間での低下を抑制することができる。
【0015】
さらに、フィンのメイン熱交換部と冷媒流通管との冷房時および暖房時に通風間隙を通過する空気および冷媒流通管とフィンとの伝熱面積の減少を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明による室外熱交換器が用いられているヒートポンプ式冷凍サイクルを備えた車両用空調装置を示す概略図である。
【
図2】この発明による室外熱交換器の全体構成を示す一部切り欠き正面図である。
【
図3】
図2の室外熱交換器の要部を示す部分拡大斜視図である。
【
図4】
図2の室外熱交換器のフィンの突出部を拡大して示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1はこの発明による室外熱交換器が用いられているヒートポンプ式冷凍サイクルを備えた車両用空調装置を概略的に示す。
図2は
図1の車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルに用いられている室外熱交換器の全体構成を示し、
図3~
図4は
図2の室外熱交換器の要部の構成を示す。
【0019】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0020】
図1において、ハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる車両用空調装置は、冷房運転モード、暖房運転モードおよび除霜運転モードを有するものであって、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と空調ケース(2)とを備えている。
【0021】
ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)は、圧縮機(3)と、車室外に配置され、かつ冷房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱させるとともに暖房時に減圧された冷媒に熱を受熱させて蒸発させる室外熱交換器(4)と、車室内に配置され、かつ暖房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱させる室内コンデンサ(5)と、冷房時に室外熱交換器(4)を通過した冷媒を減圧する第1減圧器としての膨張弁(6)と、車室内に配置され、かつ冷房時に膨張弁(6)で減圧された冷媒に熱を受熱させて蒸発させる室内エバポレータ(7)と、暖房時に室内コンデンサ(5)を通過した冷媒を減圧する第2減圧器としての固定絞り弁(8)と、固定絞り弁(8)と並列に設けられ、かつ冷房時に固定絞り弁(8)への冷媒の流れを阻止するとともに暖房時に固定絞り弁(8)のみに冷媒が流れるようにする開閉弁(9)と、冷房時に室内エバポレータ(7)を通過した冷媒を気液2相に分離するとともに、暖房時に室外熱交換器(4)を通過した冷媒を気液2相に分離する気液分離器(10)とを備えており、これらの機器が冷媒循環路(11)により接続されている。
【0022】
冷媒循環路(11)における室外熱交換器(4)の冷媒流出側と気液分離器(10)の冷媒流入側との間には、冷房時のみに冷媒が流れる第1冷媒流通部(12)、および暖房時のみに冷媒が流れる第2冷媒流通部(13)が並列状に設けられており、第1冷媒流通部(12)に膨張弁(6)および室内エバポレータ(7)が配置されている。室外熱交換器(4)から流出した冷媒が第1冷媒流通部(12)と第2冷媒流通部(13)とに分流する部分には三方弁(14)が設けられている。また、冷媒循環路(11)における室内コンデンサ(5)の冷媒流出側と室外熱交換器(4)の冷媒流入側との間には、冷房時のみに冷媒が流れる第3冷媒流通部(15)、および暖房時のみに冷媒が流れる第4冷媒流通部(16)が並列状に設けられており、第3冷媒流通部(15)に開閉弁(9)が設けられ、第4冷媒流通部(16)に固定絞り弁(8)が設けられている。
【0023】
したがって、冷媒循環路(11)は、開閉弁(9)および三方弁(14)の働きによって、冷房時に冷媒を圧縮機(3)、室内コンデンサ(5)、室外熱交換器(4)、膨張弁(6)、室内エバポレータ(7)および気液分離器(10)の間の冷房用回路で循環させ、暖房時に冷媒を圧縮機(3)、室内コンデンサ(5)、固定絞り弁(8)、室外熱交換器(4)および気液分離器(10)の間の暖房用回路で循環させる。
【0024】
車両用空調装置の冷房運転モードおよび除霜運転モードにおいては、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮されて室内コンデンサ(5)を通過した後に室外熱交換器(4)に送られ、室外熱交換器(4)で熱を放熱して凝縮し、ついで膨張弁(6)により減圧された後に室内エバポレータ(7)で熱を奪って蒸発し、ついで気液分離器(10)で気液分離された後に圧縮機(3)に戻される(
図1破線矢印参照)。なお、除霜運転モードにおいては、冷媒は、室外熱交換器(4)を流れる際に、自身の有する熱により室外熱交換器(4)に付着した霜を溶かす。車両用空調装置の暖房運転モードにおいては、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に室内コンデンサ(5)で熱を放熱して凝縮し、ついで固定絞り弁(8)により減圧された後に室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発し、ついで気液分離器(10)で気液分離された後に圧縮機(3)に戻される(
図1実線矢印参照)。
【0025】
空調ケース(2)は、車室内空気と車室外空気とが適当な比率(0~100%)で導入される空気導入部(20)と、空気導入部(20)に連なって設けられた空気通路(21)と、空気通路(21)から分岐して互いに並列状に設けられた第1分岐通路(22)および第2分岐通路(23)とを備えている。空気導入部(20)に送風機(24)が配置され、空気通路(21)に室内エバポレータ(7)が配置され、第2分岐通路(23)に室内コンデンサ(5)が配置されている。また、空調ケース(2)に、第1分岐通路(22)および第2分岐通路(23)の上流端を開閉し、室内エバポレータ(7)を通過した後第1分岐通路(22)を流れる空気量と、室内エバポレータ(7)を通過した後第2分岐通路(23)を流れる空気量とを調節するダンパ(25)が設けられている。
【0026】
そして、上述した車両用空調装置におけるヒートポンプ式冷凍サイクル(1)の室外熱交換器(4)として、本発明の室外熱交換器が用いられている。
【0027】
図2に示すように、室外熱交換器(4)は、長手方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製上下両ヘッダタンク(41)(42)と、上下両ヘッダタンク(41)(42)間に設けられた熱交換コア部(43)とを備えている。
【0028】
図示は省略したが、上下両ヘッダタンク(41)(42)のうちのいずれかに、冷房時に圧縮機(3)により圧縮された高圧の冷媒が流入するとともに、暖房時に固定絞り弁(8)により減圧された低圧の冷媒が流入する冷媒入口(図示略)が形成され、上下両ヘッダタンク(41)(42)のうちのいずれかに、冷房時に冷媒が膨張弁(6)に向かって流出するとともに、暖房時に冷媒が気液分離器(10)に向かって流出する冷媒出口(図示略)が形成されている。
【0029】
熱交換コア部(43)は、長手方向を上下方向に向けるとともに厚み方向を左右方向に向け、さらに幅方向を通風方向(前後方向)に向けた状態で両ヘッダタンク(41)(42)間に左右方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部が両ヘッダタンク(41)(42)に接続された複数のアルミニウム製扁平状冷媒流通管(44)と、隣り合う2つの冷媒流通管(44)どうしの間に形成された通風間隙に配置されたアルミニウム製フィン(45)とを備えている。
【0030】
熱交換コア部(43)には、左右方向に連続して並んだ複数の冷媒流通管(44)からなる熱交換パスが奇数設けられている場合と、左右方向に連続して並んだ複数の冷媒流通管(44)からなる熱交換パスが偶数設けられている場合とがあるが、前者の場合には、上下両ヘッダタンク(41)(42)のうちのいずれか一方に冷媒入口が形成されるとともに、同他方に冷媒出口が形成される。また、後者の場合には、上下両ヘッダタンク(41)(42)のうちのいずれか一方に冷媒入口および冷媒出口が形成される。
【0031】
図3に示すように、熱交換コア部(43)のフィン(45)は、通風間隙の通風方向の範囲内に位置するメイン熱交換部(46)と、メイン熱交換部(46)から通風間隙の風上側に突出するように一体に設けられた突出部(47)とよりなる。
【0032】
フィン(45)のメイン熱交換部(46)は、通風方向に延びかつ通風間隙の両側の2つ(1組)の冷媒流通管(44)のうちのいずれか一方、ここでは左側の冷媒流通管(44)にろう付された波頂部(461)、通風方向に延びかつ通風間隙の両側の2つの冷媒流通管(44)のうちのいずれか他方、ここでは右側の冷媒流通管(44)にろう付された波底部(462)、および通風方向に延びかつ波頂部(461)と波底部(462)とを連結する連結部(463)よりなるコルゲート状である。フィン(45)のメイン熱交換部(46)の連結部(463)には、幅方向に延びる複数のルーバ(464)が通風方向に間隔をおいて設けられている。
【0033】
フィン(45)の突出部(47)は、通風方向に延びかつメイン熱交換部(46)の波頂部(461)に連なった波頂部(471)、通風方向に延びかつメイン熱交換部(46)の波底部(462)に連なった波底部(472)、および通風方向に延びかつ波頂部(471)と波底部(472)とを連結するとともにメイン熱交換部(46)の連結部(463)に連なった連結部(473)よりなるコルゲート状である。
【0034】
図3および
図4に示すように、フィン(45)の突出部(47)の連結部(473)における風上側部分には、冷媒流通管(44)の長手方向の一端側、ここでは上側に突出するとともに連結部(473)の幅方向(左右方向)に延びる横断面略V形の第1凸部(474)と、冷媒流通管(44)の長手方向の他端側、ここでは下側に突出するとともに連結部(473)の幅方向(左右方向)に延びる横断面略V形の第2凸部(475)とが、通風方向に並ぶように、それぞれ少なくとも1つ、ここでは1つずつ交互に設けられている。両凸部(474)(475)は連結部(473)が変形して形成されたものであり、第1凸部(474)の下側に下方に開口した第1凹部(476)が形成されるとともに、第2凸部(475)の上側に上方に開口した第2凹部(474)が形成されている。そして、第1凸部(474)と第2凸部(475)とは、横断面において正弦曲線状となるように連なっている。
【0035】
なお、フィン(45)の突出部(47)の連結部(473)における風下側部分には、幅方向に延びる複数のルーバが通風方向に間隔をおいて設けられていてもよい。
【0036】
上述した構成の車両用空調装置において、車室内冷房時の冷房運転モードにおいては、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)では、開閉弁(9)および三方弁(14)の働きによって、冷媒は第1および第3冷媒流通部(12)(15)を通って冷媒循環路(11)を流れる。さらに、空調ケース(2)のダンパ(25)が、第2通路部分(23)への空気の流れを遮断するとともに第1通路部分(22)への空気の流れを許容する位置に切り替えられる(
図1実線参照)。なお、車室内の冷房時にも、空調用空気が両通路部分(22)(23)を流れるようにダンパ(25)の位置が調整されることもある。このとき、車両のグリルの開口部から入った走行風(車室外空気)が、室外熱交換器(4)の熱交換コア部(43)を通過し、冷媒流通管(44)内を流れる冷媒から熱を奪う。
【0037】
冷媒は、
図1に破線矢印で示すように、圧縮機(3)で圧縮されて高温高圧とされた後に室内コンデンサ(5)を通過し、ついで室外熱交換器(4)で車室外空気に熱を放熱して凝縮し、ついで膨張弁(6)により減圧された後に室内エバポレータ(7)で空調ケース(2)の空気通路(21)を流れる空調用空気から熱を奪って蒸発し、ついで気液分離器(10)で分離された気相冷媒が圧縮機(3)に戻される。室内エバポレータ(7)で熱を奪われた空調用空気は、第1通路部分(22)を通って車室内に吹き出される。
【0038】
また、上述した構成の車両用空調装置において、車室内暖房時の暖房運転モードでは、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)においては、三方弁(14)および開閉弁(9)の働きによって、冷媒は第2および第4冷媒流通部(13)(16)を通って冷媒循環路(11)を流れる。さらに、空調ケース(2)のダンパ(25)が、第1通路部分(22)への空気の流れを遮断するとともに第2通路部分(23)への空気の流れを許容する位置に切り替えられる(
図1破線参照)。なお、車室内の暖房時にも、空調用空気が両通路部分(22)(23)を流れるようにダンパ(25)の位置が調整されることもある。このとき、車両のグリルの開口部から入った走行風(車室外空気)が、室外熱交換器(11)の熱交換コア部(43)を通過して冷媒流通管(44)内を流れる冷媒に熱を与える。
【0039】
冷媒は、
図1に実線で示すように、圧縮機(3)で圧縮されて高温高圧とされた後に室内コンデンサ(5)内に流入し、高温高圧の冷媒が有する温熱は、室内コンデンサ(5)を流れる間に空気通路(21)の第2通路部分(23)を流れる空調用空気に放熱され、冷媒が凝縮させられる。室内コンデンサ(5)を通過して冷媒から温熱を奪った空調用空気は、第2通路部分(23)を通って車室内に吹き出される。室内コンデンサ(5)において放熱した冷媒は、固定絞り弁(8)により減圧された後に、室外熱交換器(4)において車室外空気から熱を奪って蒸発し、ついで気液分離器(10)において分離された気相冷媒が圧縮機(3)に戻される。
【0040】
このような車室内の暖房時において、車室外空気の温度が低温の場合に、室外熱交換器(3)に着霜が発生して冷媒流通管(44)およびフィン(45)に霜が付着し、霜が成長することにより室外熱交換器(4)を通過する車室外空気に対する通気抵抗が上昇し、室外熱交換器(4)の熱交換性能が著しく低下する。
【0041】
このような着霜は、まずフィン(45)の突出部(47)の表面に発生し、水分量が減らされた空気がメイン熱交換部(46)に触れることになって、水分量の少ない空気と冷媒流通管(44)を流れる冷媒とがメイン熱交換部(46)を介して熱交換を行うことになり、その結果メイン熱交換部(46)への着霜の発生を遅らせることが可能になる。
【0042】
すなわち、
図4に示すように、空気が室外熱交換器(4)を通過する際に、フィン(45)の突出部(47)においては、連結部(473)における冷媒流通管(44)の長手方向一端側(上側)を向いた面に沿って流れる空気は、最も風上側の第1凸部(474)の風上側面に当たった後、第1凸部(474)の風下側面に沿って流れて、風下側に隣接する第2凸部(475)の裏側の第2凹部(477)内で渦状に流れる。一方、連結部(473)における冷媒流通管(44)の長手方向他端側(下側)を向いた面に沿って流れる空気は、最も風上側の第1凸部(474)の裏側の第1凹部(476)内で渦状に流れた後、風下側に隣接する第2凸部(475)の風上側面に当たり、ついで第2凸部(475)の風下側面に沿って流れる。その結果、第1凸部(474)および第2凸部(475)の表裏両面全体にも着霜が発生する。したがって、突出部(47)の表面積が、全体に平坦な場合に比べて増大していることと相俟って、突出部(47)全体への着霜量が、連結部(473)全体が平坦な場合に比べて多くなり、フィン(45)のメイン熱交換部(46)への着霜が遅くなって、メイン熱交換部(46)への着霜による通風間隙の閉塞が比較的長時間にわたって抑制される。その結果、フィン(45)のメイン熱交換部(46)で行われる通風間隙を流れる空気と冷媒流通管(44)を流れる冷媒との熱交換効率の低下を遅延させることが可能になり、暖房能力の短時間での低下を抑制することができる。
【0043】
このような着霜が発生した場合、車両用空調装置は除霜運転モードに切り替えられる。除霜運転モードでは、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)においては、上述した冷房運転モードの場合と同様に、三方弁(14)および開閉弁(9)の働きによって、冷媒は第1および第3冷媒流通部(12)(15)を通って冷媒循環路(11)を流れる。また、空調ケース(2)のダンパ(25)が、第2通路部分(23)への空気の流れを遮断するとともに第1通路部分(22)への空気の流れを許容する位置に切り替えられる。なお、車両用空調装置の除霜運転モードにおいても、空調用空気が両通路部分(22)(23)を流れるようにダンパ(25)の位置が調整されることもある。
【0044】
冷媒は、冷房運転モードの場合と同様に、圧縮機(3)で圧縮されて高温高圧とされた後に室内コンデンサ(5)を通過し、ついで室外熱交換器(4)で車室外空気に熱を放熱して凝縮し、ついで膨張弁(6)により減圧された後に室内エバポレータ(7)で空調ケース(2)の空気通路(21)を流れる空調用空気から熱を奪って蒸発し、ついで気液分離器(17)で分離された気相冷媒が圧縮機(3)に戻される。室内エバポレータ(7)において空調用空気から熱を奪うとともに、圧縮機(3)で圧縮された冷媒が、室外熱交換器(4)の冷媒流通管(44)を流れる間に、冷媒の有する熱により冷媒流通管(44)およびフィン(45)に付着した霜が溶かされれ、解霜水が排水される。こうして、室外熱交換器(4)の除霜が行われる。
【0045】
上述した実施形態においては、室外熱交換器(4)は、長手方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置された上下両ヘッダタンク(41)(42)と、上下両ヘッダタンク(41)(42)間に設けられた熱交換コア部(43)とを備えており、熱交換コア部(43)が、長手方向を上下方向に向けるとともに厚み方向を左右方向に向け、さらに幅方向を通風方向(前後方向)に向けた状態で両ヘッダタンク(41)(42)間に左右方向に間隔をおいて配置された冷媒流通管(44)と、隣り合う2つの冷媒流通管(44)どうしの間に形成された通風間隙に配置されたフィン(45)とを備えているが、これに限定されるものではなく、この発明による室外熱交換器は、長手方向を上下方向に向けた状態で左右方向に間隔をおいて配置された左右両ヘッダタンクと、左右両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部とを備えており、熱交換コア部が、長手方向を左右方向に向けるとともに厚み方向を上下方向に向け、さらに幅方向を通風方向(前後方向)に向けた状態で左右両ヘッダタンク間に上下方向に間隔をおいて配置された冷媒流通管と、隣り合う2つの冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙に配置されたフィンとを備えたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明による室外熱交換器は、比較的廃熱の少ないハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置を構成するヒートポンプ式冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
(1):ヒートポンプ式冷凍サイクル
(4):室外熱交換器
(44):冷媒流通管
(45):フィン
(46):メイン熱交換部
(461):波頂部
(462):波底部
(463):連結部
(47):突出部
(471):波頂部
(472):波底部
(473):連結部
(474):第1凸部
(475):第2凸部
(476):第1凹部
(477):第2凹部