(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020175
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】上貼用の床シート材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20220125BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20220125BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
E04F15/16 A
E04F15/00 R
B32B21/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123533
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】518254894
【氏名又は名称】PSP商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】劉 震宇
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA12
2E220AA19
2E220AA29
2E220AA33
2E220AA53
2E220AC01
2E220BA01
2E220BA19
2E220BB04
2E220CA07
2E220DB09
2E220GA09X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA25Y
2E220GB32X
2E220GB37X
2E220GB44X
2E220GB47X
2E220GB49X
4F100AK51E
4F100AK51G
4F100AP01A
4F100AP01D
4F100BA05
4F100BA07
4F100CC02B
4F100DH02C
4F100EC182
4F100EH46B
4F100GB07
4F100JB14B
4F100JM01E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】既存の床に直接貼ることができ、耐衝撃性や防音性能をある程度具えるとともに、厚みの薄いシート材であって、ホルムアルデヒドの放散量のない上貼用のシート材を提供する。
【解決手段】表面から順に塗膜で被覆された天然木材で形成される第1の層と、硬質繊維板で形成される第2の層と、天然コルク材で形成される第3の層と、からなり、前記第1の層および前記第2の層そして該第2の層および前記第3の層は互いに水性ポリウレタン樹脂系接着剤で接着されていて、シート材全体の厚みを略4.0mmに抑える、構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の住宅床に上貼りされる積層のシート材であって、
表面から順に塗膜で被覆された天然木材で形成される第1の層と、硬質繊維板で形成される第2の層と、天然コルク材で形成される第3の層と、からなり、
前記第1の層および前記第2の層そして該第2の層および前記第3の層は互いに水性ポリウレタン樹脂系接着剤で接着されている、ことを特徴とする上貼り用の床シート材。
【請求項2】
前記第1の層の厚さは0.25mmであり、前記第2の層の厚さは1.0mmであり、前記第3の層の厚さは2.75mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の上貼り用床のシート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、住宅の改修工事に使用する上貼用の床シート材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅内装用の床材としては、和室以外の居間や台所では畳に代わって主に木質フローリングが使用されている。木質フローリングはその表面に塗装仕上げを施しているが、日焼け、傷付き、乾燥による反り等の欠点がある。 また、施工方法としては、構造用合板やスラブに直接貼りすることが多く、そのため貼り替え等のリフォームをすることが困難となっている。
【0003】
上記のような問題点に鑑みてなされた発明が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示の技術は、発明の名称を「床材シート」と称し、「木質フローリングの上から直接貼れるリフォーム用の床材シートを提供する」ことを課題としていて、その解決手段を「透明樹脂保護層、基材シート、発泡樹脂層、粘着剤層、離型シートを順に積層し、透明樹脂保護層、基材シート、発泡樹脂層のうちの少なくともいずれかに装飾処理を施した構成にする。基材シートを省略した層構成でもよい。離型シートを剥して簡単に貼れるので、木質フローリングの上から直接貼って簡単にリフォームをすることができ、施工後の床はクッション性のあるものとなる」という構成にしている。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、木質フローリングが使用されている室同士の床レベルが同一で室間が扉で仕切られていて、扉と床表面のクリヤランスが10mm程度しかない場合には、「木質フローリングの上から直接貼れるリフォーム用の床材シート」の厚さには制限が必要となる。さらに、リフォーム工事であってもシックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの放散を防止することが求められる。
【0006】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、既存の床に直接貼ることができ、耐衝撃性や防音性能をある程度具えるとともに、厚みの薄いシート材であって、ホルムアルデヒドの放散量のない上貼用のシート材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本願請求項1に係る上貼り用の床シート材は、既存の住宅床に上貼りされる積層のシート材であって、表面から順に塗膜で被覆された天然木材で形成される第1の層と、硬質繊維板で形成される第2の層と、天然コルク材で形成される第3の層と、からなり、前記第1の層および前記第2の層そして該第2の層および前記第3の層は互いに水性ポリウレタン樹脂系接着剤で接着されている、ことを特徴としている。
また、本願請求項2に係る上貼り用の床シート材は、請求項1に記載の上貼り用の床シート材であって、前記第1の層の厚さは0.25mmであり、前記第2の層の厚さは1.0mmであり、前記第3の層の厚さは2.75mmである、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は上記の構成により以下の効果を奏する。
(1-1)本願発明に係る上貼り用の床シート材では、表層に塗膜で被覆された天然木材で形成される第1の層を有しているため、塗膜により表面の硬度調整が可能であり、傷がつきにくく日焼けもしにくくなる、とともに天然木材が具える質感や高級感を保つことができる。
(1-2)そして、第1の層の直下の第2の層は天然木材の硬質繊維板で形成されているため、第1の層に傷がついてその傷が第1の層を貫通し第2の層に達するようなことがあっても、そこで止まることとなる。
(1-3)また、第3の層が天然コルク材で形成されているため、遮音性能が改善するとともに、コルク自体の含水率が略8%で安定していて変形しないため、上貼り後の床シート材自体の反りが少なくなる。
(1-4)層間の接着に水性ポリウレタン樹脂系接着剤を使用し、第1の層ないし第3の層に使用されている木材を厳選することにより、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの発生を防止することができる。
(2-1)第1の層の厚さが0.25mm、第2の層の厚さが1.0mmそして第3の層の厚さが2.75mmであるため、上貼り用の床シート材の厚みは略4.0mmとなる、出願人の知見では、木質フローリングが使用されている室同士の床レベルが同一で室間が室内扉で仕切られている場合では、床シート材の厚みを4.0mmとすれば、室内扉はスムーズに開閉し、上貼りをしても支障がない。
(2-2)そして、第3の層の厚みを2.75mmとすることは、限定された床シート材の厚みのなかで限度一杯のものであり、天然コルク材の効果を最大限に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本願発明に係る上貼り用の床シート材の断面分解構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態に係る実施例について、
図1に基づいて説明する。なお、
図1において、符号1は実施例に係る上貼り用の床シート材、符号11は第1の層、符号12は第2の層、符号13は第3の層、符号15は接着剤の層、である。
【0011】
まず、実施例に係る上貼り用の床シート材1の構成について説明する。
上貼り用の床シート材1は薄板を重ねて形成される長尺のシート材であり、主に、表面から順に塗膜で被覆された天然木材で形成される第1の層11と、硬質繊維板で形成される第2の層12と、天然コルク材で形成される第3の層13と、から形成されていて、第1の層11および第2の層12そして第3の層13の層間は接着剤の層15が介在して、互いに水性ポリウレタン樹脂系接着剤で接着されている。
【0012】
実施例では、第1の層11に天然木材のオークが使用されているが、木目の美しい間伐材の杉や桧が使うことにより、美観性が向上するとともに、環境に優しく、自然保護にも繋がることになる。さらに、第1の層11の表面は透明性のある塗装でコーティングしているので、耐久性や耐摩耗性の性能を高めたものとすることができる。実施例ではUV硬化型の塗装を施していて、その塗装後の硬度を3H以上としている。
【0013】
硬質繊維板で形成される第2の層12は合板用ラワン材のムキ芯,単板屑,製材廃材などの廃材を主とした木材を主原料として成形した板であり、表面は平滑で固く強い曲げ強度を持っている。このため、第1の層についた傷痕は第2の層で防ぐことができる。
【0014】
天然コルク材で形成される第3の層13では、多孔質で弾力性のある天然コルクを使用しているため、吸音性に優れて歩行時のきしみ音も減ずることができ、気持ちの良い歩行感が得られ、保温性も向上する。
【0015】
前述したように、上貼り用の床シート材1の厚みが略4.0mmなので、床シート材は曲げやすく、円筒状に丸めるとその径は300mmφ程度となり、床シート材の大きさを幅120mm×909mmとしても、持ち運びが容易である。なお、上貼り用の床シート材1は不燃性の塗料を塗布することにより、天井材や壁材として使用することができる。
【0016】
ここで、上貼り用の床シート材に対して、令和2年6月に一般財団法人ベターリビングのつくば建築試験研究センターで実施したガラスデシケーター法による「ホルムアルデヒド放射量試験」について説明する。
[試験方法]
上貼り用の床シート材がホルムアルデヒド発散建築材料性能評価業務方法書(一般財団法人ベターリビング 平成23年12月1日改訂)に規定するデシケーター法とする。
[試験結果]
試験体の寸法:150mm×50mm×4mm
試験体の構成材料:上貼り用の床シート材1と同一の構成である
上貼り用の床シート材の製造日:2020年5月
製造時の養生条件:15℃から5℃常温条件で
製造時養生期間:3日間
試験体の梱包方法:アルミ箔で包み食品用ラップシートで密閉処理
[試験結果]
試験環境:温度 20℃±0.5℃
試験片数:11(枚/デシケーター)
ホルムアルデヒド放散量:平均0.09(mg/L)
最大0.09(mg/L)
※ ホルムアルデヒド放散量は、農林水産省が定めた最も厳しい放散量(平均値で0.3mg/L)をも大幅に下回るものであった。
【符号の説明】
【0017】
1 実施例に係る上貼り用の床シート材
11 第1の層
12 第2の層
13 第3の層
15 接着剤の層