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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020180
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】結合金具
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/12 20060101AFI20220125BHJP
   F16L 37/084 20060101ALI20220125BHJP
   A62C 33/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L37/084
A62C33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123538
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】上原 一輝
(72)【発明者】
【氏名】荒井 匠
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
【テーマコード(参考)】
2E189
3J106
【Fターム(参考)】
2E189AB05
2E189LA02
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE26
3J106CA02
3J106EA03
3J106EB03
3J106EC06
3J106ED14
3J106EF15
(57)【要約】
【課題】 受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制する。
【解決手段】 押し輪および係止部が設けられた差し金具と爪が設けられた受け金具とを備える差込式の結合金具において、押し輪は、先端側の第1面とその反対側の第2面とを有するフランジ部を含む。受け口は、係止部と爪が係合した結合状態において第1面と対向し爪と外周面の間への押し輪の先端の移動を規制する第1位置と、結合状態において第1面と対向しない第2位置との間で移動可能な可動部材を備えている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、前記先端側の第1面とその反対側の第2面とを有するフランジ部を含み、
前記受け口は、前記係止部と前記爪が係合した結合状態において前記第1面と対向し前記爪と前記外周面の間への前記先端の移動を規制する第1位置と、前記結合状態において前記第1面と対向しない第2位置との間で移動可能な可動部材を備える、
結合金具。
【請求項2】
前記可動部材を前記第1位置に向けて付勢する弾性部材をさらに備える、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記受け口は、前記受け金具の端部から前記軸方向に突出する凸部を備え、
前記可動部材は、前記凸部に設けられている、
請求項1または2に記載の結合金具。
【請求項4】
前記凸部は、前記半径方向と交差する内面および外面と、前記軸を中心とした周方向と交差する側面とを有し、
前記可動部材は、前記凸部に収容されるとともに、少なくとも前記第1位置において前記内面から一部が突出する、
請求項3に記載の結合金具。
【請求項5】
前記可動部材は、前記凸部の前記側面から突出した操作部を有し、
前記操作部を前記半径方向に移動させることにより、前記可動部材の全体が前記半径方向に移動する、
請求項4に記載の結合金具。
【請求項6】
前記凸部は、前記結合状態において前記フランジ部と前記半径方向に対向する、
請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項7】
前記受け口は、前記結合状態において最も前記半径方向に突出する保護部材を備え、
前記凸部は、前記保護部材の一部である、
請求項3乃至6のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項8】
前記保護部材は、前記軸を中心とした周方向に間隔を空けて配置された複数の前記凸部と、前記周方向において隣り合う前記凸部の間に位置する複数の凹部と、を有し、
前記受け金具に前記差し金具が挿し込まれ且つ前記押し輪により前記爪と前記係止部の係合が解除された状態において、前記フランジ部の前記第2面が前記凹部の底面よりも前記凸部の先端側に位置している、
請求項7に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し金具を受け金具に差し込むことにより両金具が結合される差込式の結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホース同士を接続するための金具として、雄金具である差し金具と、雌金具である受け金具とを備えた差込式の結合金具が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この結合金具においては、差し金具の先端に設けられた環状の凸部である係止部と、受け金具に設けられ当該金具の内側に向けて付勢された複数の爪とを係合させることにより、差し金具が受け金具に対して抜け止めされる。
【0003】
各爪は受け金具の軸を中心とした半径方向に移動可能であり、結合時においては差し金具の外周面に接触している。また、差し金具にはその外周面に沿ってスライド可能な押し輪が装着されている。この押し輪により各爪を半径方向に押し上げることで各爪と係止部の係合が解除され、差し金具を受け金具から抜き出すことが可能となる。
【0004】
実際の消防活動においては結合金具が現場の障害物などに接触した際に押し輪が押され、差し金具と受け金具が離脱する虞がある。この点に関し、特許文献1,2においては意図せぬ離脱を抑制するための結合金具の構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された結合金具においては、差し金具の外周面および押し輪の内周面に滑り止め溝が形成され、かつこれら外周面と内周面の間に隙間が設けられている。これにより、障害物によって押し輪に不均等な力が加わった場合には押し輪の先端の一部が差し金具の外周面から浮き上がるとともに他の部分が当該外周面に当接する。この当接した部分において差し金具の外周面と押し輪の内周面の溝が係合するために押し輪の移動が規制され、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0006】
特許文献2に開示された結合金具においては、軸線方向に延びる保護枠が受け金具の周囲に設けられ、結合時には保護枠が押し輪(解除部材)のフランジ部よりも受け金具側に位置している。さらに保護枠は弾性を有しており、障害物が押し輪に接触した場合でも保護枠の内縁を弾性変形させてフランジ部を受け口側に移動させる十分な力が加わらない限り、押し輪の先端が爪に到達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-14477号公報
【特許文献2】特開2018-31464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に開示された結合金具を踏まえても、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を抑制するための構造に関しては未だに種々の改善の余地がある。例えば、特許文献1,2のいずれに開示された結合金具においても、押し輪が障害物により押される角度や力の程度によっては離脱を十分に抑制できない。
【0009】
そこで、本発明は、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る結合金具においては、差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪は、前記先端側の第1面とその反対側の第2面とを有するフランジ部を含む。前記受け口は、前記係止部と前記爪が係合した結合状態において前記第1面と対向し前記爪と前記外周面の間への前記先端の移動を規制する第1位置と、前記結合状態において前記第1面と対向しない第2位置との間で移動可能な可動部材を備えている。
【0011】
結合金具は、前記可動部材を前記第1位置に向けて付勢する弾性部材をさらに備えてもよい。前記受け口が前記受け金具の端部から前記軸方向に突出する凸部を備え、前記可動部材が前記凸部に設けられてもよい。
【0012】
前記凸部は、前記半径方向と交差する内面および外面と、前記軸を中心とした周方向と交差する側面とを有してもよい。この場合において、前記可動部材は、前記凸部に収容されるとともに、少なくとも前記第1位置において前記内面から一部が突出してもよい。
【0013】
前記可動部材が前記凸部の前記側面から突出した操作部を有し、前記操作部を前記半径方向に移動させることにより前記可動部材の全体が前記半径方向に移動してもよい。前記凸部は、前記結合状態において前記フランジ部と前記半径方向に対向してもよい。
【0014】
前記受け口が前記結合状態において最も前記半径方向に突出する保護部材を備え、前記凸部が前記保護部材の一部であってもよい。
【0015】
前記保護部材は、前記軸を中心とした周方向に間隔を空けて配置された複数の前記凸部と、前記周方向において隣り合う前記凸部の間に位置する複数の凹部と、を有してもよい。さらに、前記受け金具に前記差し金具が挿し込まれ且つ前記押し輪により前記爪と前記係止部の係合が解除された状態において、前記フランジ部の前記第2面が前記凹部の底面よりも前記凸部の先端側に位置してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る結合金具の概略的な側面図である。
図2図2は、図1に示した受け口をしめ輪側から軸方向に沿って見た図である。
図3図3は、図2に示した凸部の概略的な斜視図である。
図4図4は、受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
図5図5は、受け金具に差し金具が挿入され、かつ係止部と爪が係合した状態における結合金具の一部を示す断面図である。
図6図6は、受け金具に差し金具が挿入され、かつ係止部と爪の係合が解除された状態における結合金具の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施形態につき図面を参照しながら説明する。
本実施形態においては、主に消防分野での使用が想定される差込式の結合金具を例示する。ただし、当該結合金具は、消防分野以外にも工業用や農業用の流路の結合など種々の用途で利用できる。
【0019】
図1は、本実施形態に係る結合金具Cの概略的な側面図である。結合金具Cは、受け口Fと、差し口Mとを備えている。受け口Fは、軸AX1を中心とした円筒状の受け金具1(雌金具)を備えている。差し口Mは、軸AX2を中心とした円筒状の差し金具2(雄金具)を備えている。
【0020】
図1において、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態で並んでいる。この状態において軸AX1,AX2と平行な方向を軸方向Dxと定義する。また、軸AX1,AX2を中心として軸AX1,AX2から離れる方向を半径方向Drと定義する。
【0021】
受け金具1は、軸方向Dxにおいて第1端部1aおよび第2端部1bを有している。さらに受け金具1は、消防用ホースの端部に挿入される装着部11を第1端部1a側に有するとともに、装着部11よりも外径が大きい拡径部12を第2端部1b側に有している。装着部11の外周面には、消防用ホースを抜け止めするための軸方向Dxに並ぶ複数の環状の段差が形成されている。
【0022】
受け口Fは、拡径部12に連結された環状のしめ輪3と、しめ輪3の外周面に装着された保護部材4とをさらに備えている。しめ輪3は金属材料で形成され、例えば複数のねじによって拡径部12に連結されている。保護部材4は例えば樹脂材料で形成され、その外周面は受け口Fおよび差し口Mにおいて最も半径方向Drに突出している。
【0023】
受け口Fは、受け金具1の第2端部1bから軸方向Dxに突出する3つの凸部40(40A,40B,40C)をさらに備えている。これら凸部40A,40B,40Cは、しめ輪3の端面31よりも軸方向Dxに突出している。図1の例においては、凸部40A,40B,40Cの軸方向Dxにおける高さが等しい。これにより、凸部40A,40B,40Cを下方に向けて受け口Fを置く際に、凸部40A,40B,40Cによって受け口Fが安定的に支持される。
【0024】
本実施形態においては、凸部40A,40B,40Cが保護部材4の一部であり、保護部材4の他の部分と一体的に形成されている。ただし、凸部40A,40B,40Cのうちの少なくとも一つは、保護部材4と異なる部材であってもよい。この場合において、保護部材4と異なる部材である凸部40は、適宜の方法により保護部材4に取り付けられてもよいし、受け金具1やしめ輪3等の他の要素に取り付けられてもよい。なお、受け口Fが備える凸部40の数は3つに限られず、2つ以下であってもよいし4つ以上であってもよい。
【0025】
受け口Fは、可動部材100をさらに備えている。詳しくは後述するが、本実施形態においては可動部材100が凸部40Cに設けられている。可動部材100は、凸部40A,40Bに対しさらに設けられてもよい。
【0026】
差し金具2は、軸方向Dxにおいて第1端部2aおよび第2端部2bを有している。さらに差し金具2は、受け金具1側の消防用ホースとは異なる他の消防用ホースの端部に挿入される装着部21を第1端部2a側に有するとともに、係止部22を第2端部2b側に有している。係止部22は、例えば周囲よりも半径方向Drにやや突出した環状の凸部である。装着部21の外周面には、装着部11と同じく複数の環状の段差が形成されている。
【0027】
差し口Mは、装着部21と係止部22の間における差し金具2の外周面2cに固定された環状の止め輪5と、係止部22と止め輪5の間に設けられた押し輪6とをさらに備えている。止め輪5は、例えば外周面2cに設けられた環状の溝に装着された金属線であり、少なくとも一部が外周面2cよりも半径方向Drに突出している。
【0028】
押し輪6は、外周面2cを囲う円筒部61と、止め輪5側の円筒部61の端部に設けられたフランジ部62とを有している。フランジ部62の反対側に位置する円筒部61の先端6aは、軸方向Dxにおいて係止部22の側面と対向している。係止部22および止め輪5により、押し輪6が差し金具2に対し抜け止めされている。押し輪6は、係止部22と止め輪5の間において軸方向Dxにスライド可能である。
【0029】
フランジ部62は、先端6a側の第1面62aと、第1面62aの反対側の第2面62bとを有している。第1面62aおよび第2面62bは、例えば軸方向Dxと直交する平面である。ただし、第1面62aおよび第2面62bは、軸方向Dxと90°以外の角度で交わる平面であってもよいし、少なくとも一部が曲面であってもよい。
【0030】
図2は、受け口Fを軸方向Dxに沿って凸部40A,40B,40C側から見た図である。図示したように、軸AX1(AX2)を中心とした周方向Dθを定義する。受け口Fの内部には、3つの爪7A,7B,7Cが配置されている。爪7A,7B,7Cは、周方向Dθに沿った円弧状であり、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。なお、受け口Fが備える爪の数は3つに限られない。
【0031】
凸部40A,40B,40Cは、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。一例として、凸部40A,40B,40Cの周方向Dθにおける長さは同じである。ただし、例えば可動部材100が設けられた凸部40Cの周方向Dθにおける長さを凸部40A,40Bより大きくするなど、凸部40A,40B,40Cの長さ(サイズ)が異なってもよい。
【0032】
凸部40A,40B,40Cは、半径方向Drと交差する内面41および外面42と、周方向Dθと交差する一対の側面43,44とを有している。図2の例においては、凸部40A,40B,40Cの内面41がしめ輪3の外周面よりも軸AX1側に僅かに突出している。一方、半径方向Drにおいて、凸部40A,40B,40Cの外面42の位置と、保護部材4の他の部分の外周面の位置とが一致している。
【0033】
保護部材4は、凸部40Aと凸部40Bの間、凸部40Bと凸部40Cの間、および、凸部40Cと凸部40Aの間にそれぞれ形成された凹部45を有している。凹部45の底面45aの軸方向Dxにおける位置は、例えばしめ輪3の端面31と略一致する(図1参照)。
【0034】
図3は、凸部40Cの概略的な斜視図である。図2および図3の例において、凸部40Cは、周方向Dθに並ぶ第1部分P1および第2部分P2に分割されている。凸部40Cの内部には空間が設けられており、この空間に可動部材100が収容されている。
【0035】
凸部40Cの内面41には、第1開口AP1が形成されている。凸部40Cの側面43には、第2開口AP2が形成されている。図3には示されていないが、側面44にも第2開口AP2が形成されている。
【0036】
可動部材100は、第1開口AP1から突出する規制部101と、側面43の第2開口AP2から突出する操作部102とを有している。図3には示されていないが、可動部材100は、側面44の第2開口AP2から突出する操作部102も有している(図2参照)。
【0037】
図3に示すように、第2開口AP2の半径方向Drにおける幅は、操作部102の半径方向Drにおける幅よりも大きい。可動部材100は、操作部102が第2開口AP2内で移動できる範囲内で、半径方向Drと平行に移動可能である。
【0038】
図2に示すように、凸部40Cの内部には、弾性部材110が配置されている。弾性部材110は、例えば可動部材100と凸部40C内の空間の内壁との間に配置されたコイルばねであり、可動部材100を軸AX1に向けて付勢する。例えば規制部101や操作部102に外力が加わっていない状態において、可動部材100は、弾性部材110の付勢力によって図3に示す位置まで押される。
【0039】
図4は、受け口Fと差し口Mが連結された状態(結合状態)における結合金具Cの部分断面図である。断面視した部分には、凸部40Aと爪7Aが含まれる。受け金具1の第2端部1bは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。しめ輪3は、第2端部1bと軸方向Dxに対向する端部3aを有している。端部3aは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。
【0040】
受け口Fは、拡径部12の内側に配置されたシール材8と、爪7A,7B,7Cを保持する爪座9とをさらに備えている。シール材8は、例えば環状のゴムパッキンである。爪座9は、しめ輪3によって受け金具1に固定されており、第2端部1bと端部3aの間に配置されている。
【0041】
爪7Aは、爪座9と第2端部1bの間において、半径方向Drと平行に移動可能である。爪7Aは、例えば板ばねである弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。なお、爪7B,7Cも爪7Aと同じく爪座9と第2端部1bの間において半径方向Drと平行に移動可能であり、弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。
【0042】
受け口Fと差し口Mを結合する際には、しめ輪3の開口を通じて差し金具2の第2端部2bを受け金具1の拡径部12に挿入する。このとき、係止部22が弾性部材70の付勢力に抗して爪7A,7B,7Cを半径方向Drに押し上げる。これにより、図4に示すように第2端部2bと拡径部12の内面とが接触する位置まで差し金具2が受け金具1に差し込まれる。
【0043】
第2端部2bが拡径部12の内面に接触した状態においては、受け金具1の内部に形成された第1流路10と、差し金具2の内部に形成された第2流路20とが接続される。このとき、シール材8のリップが係止部22の外周面22aに接触し、受け金具1と差し金具2の隙間が液密に保たれる。
【0044】
さらに、爪7A,7B,7Cが弾性部材70の付勢力により差し金具2の外周面2cに接触する。この状態においては、爪7A,7B,7Cのそれぞれの一部が係止部22と軸方向Dxに対向する。すなわち、係止部22と爪7A,7B,7Cが軸方向Dxに係合するために、受け金具1と差し金具2を離脱させることができない。
【0045】
爪7A,7B,7Cは、外周面2cと対向する傾斜面71を有している。受け金具1と差し金具2を離脱させる際に、作業者は、押し輪6を爪7A,7B,7Cに向けて押す。このとき、押し輪6の先端6aと傾斜面71が接触し、爪7A,7B,7Cが半径方向Drに押し上げられ、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除される。
【0046】
図5は、受け金具1に差し金具2が挿入され、かつ係止部22と爪7Cが係合した状態における結合金具Cの一部を示す断面図である。図6は、受け金具1に差し金具2が挿入され、かつ係止部22と爪7Cの係合が解除された状態における結合金具Cの一部を示す断面図である。これら断面図は、いずれも凸部40Cおよび可動部材100を含む。
【0047】
図5においては、可動部材100が弾性部材110により付勢され、規制部101が凸部40Cの内面41から最大限に突出している。このような可動部材100の位置を、第1位置Q1と呼ぶ。
【0048】
第1位置Q1において、規制部101は、フランジ部62としめ輪3の端部3aの間に位置している。すなわち、規制部101は、軸方向Dxにおいてフランジ部62の第1面62aと対向している。
【0049】
このような状態において、押し輪6が矢印Aで示すように爪7Cに向けて押されると、フランジ部62の第1面62aと規制部101が接触する。例えば、第1面62aと規制部101が接触した状態においては、押し輪6の先端6aが爪7A,7B,7Cの傾斜面71に到達しない。そのため、押し輪6を押しても爪7A,7B,7Cと係止部22の係合が解除されない。
【0050】
可動部材100が第1位置Q1にある状態において、作業者が上述の操作部102を半径方向Drに押すことにより、可動部材100の全体が半径方向Drに移動する。図6においては、規制部101がフランジ部62と干渉しない位置まで移動している。このような可動部材100の位置を、第2位置Q2と呼ぶ。
【0051】
第2位置Q2において、規制部101は、フランジ部62の第1面62aと対向しない。したがって、図6に示すように押し輪6を爪7A,7B,7Cと差し金具2の外周面2cとの間に差し込むことができる。このとき、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除されるので、受け金具1と差し金具2を離脱させることが可能となる。
【0052】
従来の結合金具においては、本実施形態における保護部材4に代えてゴム製のバンドがしめ輪3の外周面に装着されている。このバンドには凸部40A,40B,40Cや可動部材100に相当する要素が配置されていない。当該従来の結合金具で結合された消防用ホースを用いた消火活動において、結合金具が何らかの障害物に当たると、押し輪が意図せず押されて差し金具と受け金具が離脱する可能性がある。このような離脱は、消火活動の重大な遅延に繋がりかねない。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る結合金具Cにおいては、受け口Fと差し口Mを結合した状態で図5に示したように可動部材100が第1位置Q1にあれば、意図せず押し輪6が押されても係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除されない。したがって、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を効果的に抑制できる。
【0054】
受け金具1と差し金具2を離脱させる際には、作業者が操作部102を押して可動部材100を第2位置Q2に移動させる。この状態で作業者が押し輪6を押せば係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が全て解除され、受け金具1と差し金具2を離脱させることができる。
【0055】
なお、受け金具1に差し金具2を挿し込む動作においては、第1位置Q1および第2位置Q2のいずれにあるかによらず、可動部材100は押し輪6等の部材と干渉しない。そのため、従来の結合金具と同様の手順で受け金具1と差し金具2を結合することができる。
【0056】
可動部材100は弾性部材110によって付勢されているため、操作部102が押されていなければ可動部材100が第1位置Q1にある。そのため、受け金具1と差し金具2の結合後、可動部材100により押し輪6の移動を規制するための特別な操作は不要である。また、作業者が操作部102を押して可動部材100を第2位置Q2に移動させた後に操作部102を放せば、可動部材100が自然と第1位置Q1に戻る。
【0057】
また、図4および図5に示したように、係止部22と爪7A,7B,7Cが係合した状態においては、フランジ部62が凸部40A,40B,40Cと半径方向Drに対向する。これにより、フランジ部62が凸部40A,40B,40Cにより保護され、障害物がフランジ部62に当たりにくくなる。
【0058】
さらに、凸部40A,40B,40Cの間に凹部45が設けられているため、作業者はこれら凹部45を通じてフランジ部62を押すことができる。図6に示した例においては、押し輪6により係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除された状態においても、フランジ部62の第2面62bが凹部45の底面45a(破線部)よりも凸部40Cの先端側に位置している。このように十分な深さの凹部45が設けられていれば、押し輪6を押す動作が凸部40A,40B,40Cによって阻害されにくい。
【0059】
以上の実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を結合金具に適用できる。
【0060】
例えば、上記実施形態においては消防用ホースが受け口Fおよび差し口Mの双方に接続される結合金具Cを例示したが、受け口Fおよび差し口Mの少なくとも一方が消火栓や消防車両などの構造物に設けられてもよい。
【0061】
可動部材100およびその周囲の構造は、上記実施形態にて説明した意図せぬ離脱の防止に関する効果が得られる限り、上記実施形態にて例示したものに限られない。
【符号の説明】
【0062】
C…結合金具、F…受け口、M…差し口、1…受け金具、2…差し金具、3…しめ輪、4…保護部材、5…止め輪、6…押し輪、62…フランジ部、7A,7B,7C…爪、8…シール材、9…爪座、22…係止部、40A,40B,40C…凸部、100…可動部材、110…弾性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6