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特開2022-20186配置構成設計装置、配置構成設計方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020186
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】配置構成設計装置、配置構成設計方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20220125BHJP
   B60M 3/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H02J3/00 170
B60M3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123544
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 広昂
(72)【発明者】
【氏名】尾西 京太郎
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】最適な設備の配置を決定する配置構成設計装置を提供する。
【解決手段】配置構成設計装置は、複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある設備を削除して、設備の配置構成を設定する配置構成設定部、設定した設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定する成立性確認部、条件が成立する配置構成において削除された設備の情報を削除候補リストに登録する削除候補リスト更新部、条件が成立しない配置構成において削除された設備の情報を削除不可リストに登録する削除不可リスト更新部、条件が成立し且つそれ以上設備を削除することができない配置構成が算出できるまで、配置構成の設定と条件の成立性の判定を含む確認処理を、削除する設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させる制御部、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定する配置構成設定部と、
設定した前記配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定する成立性確認部と、
削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータと、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータを記憶する記憶部と、
前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を前記削除候補リストデータに登録する削除候補リスト更新部と、
前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を前記削除不可リストデータに登録する削除不可リスト更新部と、
前記条件が成立し、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成の設定と、前記条件の成立性の判定と、前記削除候補リストデータへの登録と、前記削除不可リストデータへの登録と、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させる制御部と、
を備え、
1回目の前記確認処理において、
前記配置構成設定部は、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記成立性確認部は、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リスト更新部は、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リスト更新部は、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、
n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、
削除候補リスト更新部は、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、
前記削除不可リスト更新部は、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、
n+1回目の前記確認処理において、
前記配置構成設定部は、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する、
配置構成設計装置。
【請求項2】
前記制御部は、n回目の前記確認処理において、前記削除不可リストデータに登録された前記設備の組合せを含まないように前記設備のn個の組合せを作成できなくなると、前記確認処理の実行を終了する、
請求項1に記載の配置構成設計装置。
【請求項3】
前記制御部は、電力網に接続された列車に電力を供給する電力設備の前記配置構成を算出した場合、前記電力網における電圧の値が最低となる位置の付近に補助き電線を設定する、
請求項1から請求項2の何れか1項に記載の配置構成設計装置。
【請求項4】
前記制御部は、電力網に接続された列車に電力を供給する電力設備の前記配置構成を算出した場合、前記電力網における電圧の降下が閾値以上の上り線と、電圧の降下が閾値未満の下り線を接続する上下接続抵抗を設定する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の配置構成設計装置。
【請求項5】
複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定するステップと、
設定した前記設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータに登録するステップと、
前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータに登録するステップと、
を有し、
前記条件を満たし、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成を設定するステップと前記条件が成立するか否かを判定するステップと前記削除候補リストデータに登録するステップと前記削除不可リストデータに登録するステップと、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させ、
1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記条件が成立するか否かを判定するステップでは、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、
n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、
削除候補リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、
前記削除不可リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、
n+1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する、
配置構成設計方法。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定するステップと、
設定した前記設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータに登録するステップと、
前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータに登録するステップと、
を有し、
前記条件を満たし、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成を設定するステップと前記条件が成立するか否かを判定するステップと前記削除候補リストデータに登録するステップと前記削除不可リストデータに登録するステップと、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させ、
1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記条件が成立するか否かを判定するステップでは、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、
n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、
削除候補リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、
前記削除不可リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、
n+1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種設備の配置を最適化する配置構成設計装置、配置構成設計方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の電力設備の設計では、運用上想定されるあらゆる運転において、列車がパンタグラフと接する点の電圧が規定範囲に収まるように、設備容量と位置を決定する必要がある。例えば、ある地点Aの付近で複数の列車が同時に力行するような状況が想定される場合、電力設備が地点Aから遠くに設置されていると、電圧降下により列車に供給される電圧が低下し、力行能力が低下する恐れがある。電圧低下が許容できない場合は、電力設備の容量を上げるか、あるいは、地点Aの近くに別の電力設備を設けるという設計に変更する必要がある。
【0003】
従来、電力設備の配置構成は、例えば、以下のような手順で設計している(ノウハウ方式)。
(手順1)駅に隣接する形で全ての駅に電力設備を配置する。
(手順2)設計者のノウハウにより、必要のない位置の電力設備を削除する。
(手順3)設計した構成にてシミュレーションを実施し、各種条件の成立性を確認する。
(手順4-1)手順3にて不成立の場合には、条件を満たさなかった位置の近くに電力設備を追加する。または最寄りの設備能力を大きくする、補助設備を追加するなどを行う。
(手順4-2)手順3にて成立の場合には、設計者のノウハウにより電力設備1つを削除する。
(手順5)手順3以降を繰り返し、設計者の判断により設備配置構成を決定する。
【0004】
あるいは、従来、電力設備の配置構成を総当たり方式で検討している。例えば、駅がn個存在する場合、各駅に1つの電力設備(合計でn個)を配置する。次に各駅の電力設備を1つずつ削除して問題が無いかどうか(例えば、コスト要件を満足するか、必要な電力が供給できるか)を確認するという処理を、削除する電力設備を1つずつ増加させながら繰り返し行う。例えば、1回目の処理ではn個の電力設備それぞれについて、その電力設備を削除した場合の成立性を確認する。つまり、1回目の処理では上記の処理をn回試行する。2回目の処理では、1回目の処理で削除した電力設備を削除したうえで、残りのn-1個の電力設備の中から更に1つ削除して上記の処理を実行する。総当たり方式で2回目まで処理を行うと、処理をn(n-1)回試行することになる。この処理の様子を図10に示す。3回目の以降の処理についても同様であるから、機械的に総当たりで処理αを実行する場合、n!のオーダの計算量が必要になる。
【0005】
関連する技術として特許文献1には、電力系統におけるループコントローラの配置コストが最小となる値を求める数理計画問題を解き、配置コストが最小となる最適解を求め、ループコントローラの配置数と容量を最小化する方法が開示されている。特許文献2には、電力で列車を運行する交通システムにおける電力設備の位置や電力設備の定格容量を引数とする電力設備の設置コストを算出する評価関数を設定し、列車への供給電圧等の制約条件を満たしつつ、その評価関数の値を最小化する最適化問題を解いて、電力設備の位置や容量を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-89250号公報
【特許文献2】特開2018-148753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した総当り方式の場合、計算量が膨大になり、ノウハウ方式の場合は決定された配置構成が最適かどうか不明であるという課題がある。
【0008】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる配置構成設計装置、配置構成設計方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば配置構成設計装置は、複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定する配置構成設定部と、設定した前記配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定する成立性確認部と、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータと、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータを記憶する記憶部と、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を前記削除候補リストデータに登録する削除候補リスト更新部と、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を前記削除不可リストデータに登録する削除不可リスト更新部と、前記条件が成立し、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成の設定と、前記条件の成立性の判定と、前記削除候補リストデータへの登録と、前記削除不可リストデータへの登録と、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させる制御部と、を備え、1回目の前記確認処理において、前記配置構成設定部は、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記成立性確認部は、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リスト更新部は、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リスト更新部は、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、削除候補リスト更新部は、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リスト更新部は、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、n+1回目の前記確認処理において、前記配置構成設定部は、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する。
【0010】
本開示の一態様によれば、配置構成設計方法は、複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定するステップと、設定した前記設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータに登録するステップと、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータに登録するステップと、を有し、前記条件を満たし、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成を設定するステップと前記条件が成立するか否かを判定するステップとを含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させ、1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、削除候補リストデータに登録するステップでは、1回目の前記確認処理の結果、削除できる前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、1回目の前記確認処理の結果、削除できない前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、n-1回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、削除候補リストデータに登録するステップでは、n-1回目の前記確認処理の結果、前記設備n-1個の組合せのうち削除できる組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、n-1回目の前記確認処理の結果、前記設備n-1個の組合せのうち削除できない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、n回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、n回目の前記確認処理において、前記削除候補リストに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備の組合せを含まないようにして、前記設備n個の組合せを可能な数だけ設定する。
【0011】
本開示の一態様によれば、プログラムは、コンピュータに、複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定するステップと、設定した前記設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータに登録するステップと、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータに登録するステップと、を有し、前記条件を満たし、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成を設定するステップと前記条件が成立するか否かを判定するステップとを含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させ、1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、削除候補リストデータに登録するステップでは、1回目の前記確認処理の結果、削除できる前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、1回目の前記確認処理の結果、削除できない前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、n-1回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、削除候補リストデータに登録するステップでは、n-1回目の前記確認処理の結果、前記設備n-1個の組合せのうち削除できる組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、n-1回目の前記確認処理の結果、前記設備n-1個の組合せのうち削除できない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、n回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、n回目の前記確認処理において、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備の組合せを含まないようにして、前記設備n個の組合せを可能な数だけ設定する処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、従来よりも少ない計算量で最適な電力設備の配置構成を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態における配置構成設計装置の一例を示すブロック図である。
図2】第一実施形態における配置構成設計対象の設備の一例を示す図である。
図3】第一実施形態における対象設備の初期モデル一例を示す図である。
図4】第一実施形態における配置構成設計処理の一例を示すフローチャートである。
図5】第一実施形態における配置構成設計処理を説明する図である。
図6】配置構成決定処理結果の一例を示す図である。
図7】第二実施形態における配置構成設計装置の一例を示すブロック図である。
図8】第二実施形態における補助設備の設定処理を説明する図である。
図9】第二実施形態における補助設備の設定処理の一例を示すフローチャートである。
図10】従来の配置構成決定処理の一例を示す図である。
図11】本開示の各実施形態における配置構成設計装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
(システム構成)
以下、本開示の第一実施形態による計測システムについて図1図6を参照して説明する。
図1は、第一実施形態における配置構成設計装置の一例を示すブロック図である。
配置構成設計装置10はコンピュータで構成される。図1に示すように配置構成設計装置10は、データ取得部11と、制御部12と、出力部13と、記憶部14とを備える。
データ取得部11は、設備の配置構成の設計に必要なデータを取得する。例えば、データ取得部11は、設備配置の初期モデルを取得する。
制御部12は、設備の配置構成を設計する処理(配置構成設計処理)を制御する。配置構成設計処理とは、所定の条件を満たす設備の最小配置構成を探索する処理である。制御部12は、配置構成設定部121と、成立性確認部122と、削除不可リスト更新部123と、削除候補リスト更新部124とを備える。
配置構成設定部121は、確認対象の配置構成を設定する。
成立性確認部122は、確認対象の配置構成が所定の条件を満たすか否かを判定する。
削除不可リスト更新部123は、全ての設備のうち削除できない設備を記載した削除不可リストを作成、更新する。
削除候補リスト更新部124は、全ての設備のうち削除できる可能性がある設備を記載した削除候補リストを作成、更新する。
出力部13は、配置構成設計処理の結果を表示装置や電子ファイルに出力する。
記憶部14は、配置構成設計処理に必要なデータを記憶する。
【0015】
図2は、第一実施形態における配置構成設計対象の設備の一例を示す図である。
配置構成設計装置10は、例えば、図2に例示する交通システム5において、電力網4に接続された列車3A1~3C2に対して電力を供給するために、電力網4に接続される電力設備2A等の配置を決定する。
交通システム5は、複数の電力設備2A~2Cと、複数の列車3A1~3C2と、電力網4とを備える。電力設備2A~2Cは、配置する電力設備の候補であって、駅A~Cごとに配置される。
交通システム5では、電力設備2A~2Cが電力網4を介して列車3A1~3C2に電力を供給する。列車3A1~3C2の各々は、電力設備2A等から供給される電力を用いて走行する。
【0016】
交通システム5における電力設備の設計では、運用上想定されるあらゆる運転において、列車に供給される電圧(例えば、パンタグラフと接触する位置でのトロリ線(給電線)における電圧)が規定範囲内に収まるように、電力設備の容量及び位置を決定する必要がある。例えば、駅A付近で複数の列車が同時に力行するような状況が想定される場合、電力設備が駅Aから遠くに設置されていると、電圧降下により列車3A1、3A2に供給される電圧が低下し、力行能力が低下する恐れがある。電圧の低下によって必要な電圧の条件を満たさない場合は、電力設備の容量を上げるか、電力設備を駅Aに近づけるなど、設計に修正を加える必要がある。
【0017】
配置構成設計装置10は、電力設備2A~2Cの中から列車3A1~3C2の運転上必要となる条件を満たし、且つ、設置する電力設備の数や設置コストが最小となるように電力設備の配置を決定する。列車3A1~3C2の運転上必要となる条件とは、例えば、各列車3A1等への供給電圧が規定範囲となることである。
【0018】
配置構成設計装置10は、図2の中から検討対象の電力設備2A~2Cの初期配置をモデル化した初期モデルに基づいて、電力設備2A等の配置構成設計処理を実行する。図3に駅が8つの場合の電力設備の初期モデル6の一例を示す。図3に例示する初期モデル6は、図示しない8つの駅の各々に電力設備(設備1~8)が配置されている状態を、電力設備の初期配置構成として定めることを示している。配置構成設計装置10は、この初期配置構成から削除可能な電力設備を削除して、電力設備の配置を最適化する。
例えば、配置構成設計装置10は、設備1を削除して、残りの設備2~8だけで供給電圧の条件を満たすかどうかを確認し、条件を満たす場合、設備1を削除可能な設備の候補として削除候補リストに登録する。設備1を削除したときに条件を満たさない場合、配置構成設計装置10は、設備1を削除できない設備として削除不可リストに登録する。配置構成設計装置10は、条件の成立性を確認しながら、設備1~8の中から削除する設備の組合せを様々に変化させて、削除可能な設備の組合せを探索するが、従来の総当たり方式のように網羅的に削除する設備の組合せを作成して各々について条件の成立性を確認するのではなく、確認対象の配置構成の候補を徐々に絞り込みながら、削除可能な設備の組合せを探索する。具体的には、(1)削除候補リストに登録された設備の中から削除不可リストに登録された組合せを含まないようにして、削除する設備の組合せを作成し、その組合せを削除した配置構成における条件の成立性を確認する。(2)条件が成立する設備の組合せを削除候補リストに登録する。(3)条件が成立しない設備の組合せが見つかると、その組み合わせを削除不可リストに登録する。(4)組み合わせる設備数を増やしながら、(1)~(3)を繰り返す。次に図4図5を参照しながら、図3の初期モデル6について、削除可能な設備の組合せを探索する方法についてより詳細に説明する。
【0019】
(動作)
図4は、第一実施形態における配置構成設計処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、第一実施形態における配置構成設計処理を説明する図である。
まず、データ取得部11が、電力設備の初期配置を示す情報を取得し、記憶部14に記録する(ステップS1)。例えば、データ取得部11は、図3に例示する初期モデル6を取得する。制御部12は、初期モデル6を対象に設備の配置構成を決定する処理を行う。
【0020】
(1回目の確認処理)
制御部12は、1回目の確認処理を実行する。1回目の確認処理では、初期配置から1つの設備を削除して形成される配置構成の各々について後述する成立性確認シミュレーションが実行される。
まず、配置構成設定部121が、初期モデル6が示す初期の設備配置から設備を1つ削除した設備の配置構成を全パターン(初期モデル6の場合8通り)作成する。
【0021】
具体的には、配置構成設定部121は、設備1を削除した設備配置構成1-1、設備2を削除した設備配置構成1-2、・・・、設備8を削除した設備配置構成1-8の8種類の設備配置構成1-1~1-8を作成する。次に、成立性確認部122が、設備配置構成1-1~1-8のそれぞれについて、成立性確認シミュレーションを実行する(ステップS2)。例えば、成立性確認部122は、設備配置構成1-1について、列車3の運行パターンを全パターン作成し、各々の運行パターンごとに各々の列車に供給される電圧を計算する。列車3の運行パターンとは、例えば、設備1に対応する駅1の下り方向にのみ列車が存在し、駅1の上り方向および他の駅の上り下りには列車3が存在しない列車3の分布状態(運行パターン1とする。)、駅1の上りおよび下り方向に列車が存在し、他の駅の上り下りには列車3が存在しない列車3の分布状態(運行パターン2とする。)、・・・、8つの駅1~8の各々の上り下りに列車3が存在する列車3の分布状態というように、運用上想定されるあらゆる運転における列車3の分布状態、列車3の配置パターンのことである。列車3の運行パターンは、全パターン分、予め記憶部14に登録されていてもよい。成立性確認部122は、それぞれの運行パターンについて、その運行パターンにおいて存在する全ての列車3に対して近くの電源設備から供給される電圧を計算する。例えば、上記の運行パターン1であれば、削除した設備1を除く設備2~8の何れかから駅1の下り方向に存在する列車へ供給される電圧を計算する。運行パターン2であれば、設備2~8の何れかから駅1の上り方向に存在する列車および下り方向に存在する列車へ供給される電圧を計算する。成立性確認部122は、全ての運行パターンについて、各列車に供給される電圧を計算する。電圧の計算方法については任意の方法であってよい。成立性確認部122は、運行パターンと対応付けて各列車ごとに計算した電力を記憶部14に記録する。
【0022】
成立性確認部122は、設備配置構成1-1について計算した電圧の中に、所定の規定範囲に収まらない値が含まれる場合、設備配置構成1-1は解なし(設備1は削除できない)と判定し、計算した全ての電圧が規定範囲に収まる場合、解あり(設備1は削除できる)と判定する(ステップS3)。
【0023】
成立性確認部122は、他の設備配置構成1-2~1-8についても、運行パターンを全パターン作成し、各運行パターンについて成立性確認シミュレーション及び解の有無について判定を行う。なお、ステップS2の成立性確認シミュレーションの処理については、特許文献2に記載の方法を用いることができる。
【0024】
解なしの場合(ステップS3;No)、削除不可リスト更新部123は、削除不可リストを更新する(ステップS4)。例えば、設備配置構成1-1が解なしの場合、削除不可リスト更新部123は、削除できない設備1を削除不可リストに登録する。
【0025】
解ありの場合(ステップS3;Yes)、削除候補リスト更新部124は、削除候補リストを更新する(ステップS5)。例えば、設備配置構成1-2が解ありの場合、削除候補リスト更新部124は、削除可能な設備2を削除候補リストに登録する。
【0026】
ここで、1回目の確認処理の結果、設備1、4、6、8は削除できないという結果(解なし)が得られ、設備2、3、5、7は削除可能という結果(解あり)が得られたとする。削除不可リスト更新部123は、設備1、4、6、8を削除不可リストに登録する。削除候補リスト更新部124は、設備2、3、5、7を削除候補リストに登録する。1回目の確認処理結果を図5の表(処理回数=1回目の行)に示す。
【0027】
次に制御部12が、次回の確認処理における確認対象の設備配置構成の候補の有無を判定する。候補がある場合(ステップS6;Yes)、ステップS7の処理に進む。候補無しの場合(ステップS6;No)、ステップS8の処理に進む。
例えば、制御部12は、削除候補リストと削除不可リストを参照して、次回の確認処理において、削除対象の設備の組合せが作成できれば候補有り、削除対象の設備の組合せが作成できなければ候補無し、と判定する。次回が2回目の確認処理の場合、制御部12は、削除候補リストの中から、削除不可リストの記載と矛盾すること無く、2個の設備を選択して組み合わせることが可能であれば、候補有りと判定する。この例の場合、候補有りと判定される。
【0028】
(2回目の確認処理)
ステップS7で候補有りと判定された場合、2回目の確認処理が実行される。
まず、配置構成設定部121が、削除候補リストと削除不可リストに基づいて、今回の確認処理における確認対象の設備配置構成を設定する(ステップS7)。今回は2回目の確認処理の為、配置構成設定部121は、設備1~8のうちの2個を削除した設備配置構成を設定する。この際、配置構成設定部121は、削除する2個の設備について、削除候補リストに登録された設備を対象とし、削除不可リストに登録された設備は削除対象としない。例えば、図5を参照すると、1回目の確認処理の結果、削除候補リストに登録された設備は、設備2、3、5、7である。削除不可リストに登録された設備は、設備1、4、6、8である。配置構成設定部121は、削除候補リストに登録された設備2、3、5、7のみを削除対象として、これらのうち2つを削除した設備配置構成を全パターン作成する。具体的には、配置構成設定部121は、設備2と設備3を削除した設備配置構成2-1、設備2と設備5を削除した設備配置構成2-2、設備2と設備7を削除した設備配置構成2-3、設備3と設備5を削除した設備配置構成2-4、設備3と設備7を削除した設備配置構成2-5、設備5と設備7を削除した設備配置構成2-6の6通りの設備配置構成を作成する。
【0029】
2回目の確認処理では、作成された6通りの配置構成の各々について成立性確認シミュレーションが実行される。
制御部12は、新たに作成された6通りの設備配置構成を対象として、成立性確認シミュレーションを実行する(ステップS2)。
具体的には、配置構成設定部121は、設備配置構成2-1~2-6のそれぞれについて、列車3の運行パターンを全パターン作成し、各々の運行パターンごとに各々の列車に供給される電圧を計算する。
【0030】
成立性確認部122は、設備配置構成2-1~2-6の各々について、解の有無を判定する(ステップS3)。成立性確認部122は、設備配置構成2-1~2-6の各々の全運行パターンについて計算した列車3への供給電圧が、規定範囲に収まるか否かの判定を行う。計算した全ての電圧が規定範囲に収まる場合を解あり、そうでない場合を解なしとする。
【0031】
解なしの場合(ステップS3;No)、削除不可リスト更新部123は、削除できない設備の組合せを削除不可リストに登録する。解ありの場合(ステップS3;Yes)、削除候補リスト更新部124は、削除可能な設備の組合せを削除候補リストに登録する。
【0032】
ここで、2回目の確認処理の結果、設備配置構成2-1以外の設備配置構成では、解ありの結果となったとする。削除不可リスト更新部123は、設備2と設備3の組合せを削除不可リストに登録する。削除候補リスト更新部124は、他の削除可能な2つの設備の組合せを削除候補リストに登録する。2回目の確認処理結果を図5の表(処理回数=2回目の行)に示す。
【0033】
次に制御部12が、次回の確認処理における確認対象の設備配置構成の候補の有無を判定する。候補がある場合(ステップS6;Yes)、ステップS7の処理に進む。候補無しの場合(ステップS6;No)、ステップS8の処理に進む。
次回が3回目の確認処理の場合、制御部12は、削除候補リストの中から、削除不可リストの記載(例えば、設備2と設備3)と矛盾すること無く、3個の設備を選択して組み合わせることが可能であれば、候補有りと判定する。図5の例の場合、例えば、設備2と設備5と設備7の組合せが可能なので(この組み合わせは、削除不可リストに登録された設備2と設備3は組合せ不可との記載に矛盾しない。)、制御部12は、候補有りと判定する。
【0034】
(3回目の確認処理)
ステップS7で候補有りと判定された場合、3回目の確認処理が実行される。
まず、配置構成設定部121が、削除候補リストと削除不可リストに基づいて、3回目の確認処理における確認対象の設備配置構成を設定する(ステップS7)。今回は3回目の処理の為、配置構成設定部121は、設備1~8のうちの3個を削除した設備配置構成を設定する。また、配置構成設定部121は、削除する3個の設備について、削除候補リストに登録された設備を対象とし、削除不可リストに登録された設備および設備の組合せは削除対象としない。例えば、図5を参照すると、2回目の処理の結果、削除候補リストに登録された設備は、設備2と設備5の組合せ、設備2と設備7の組合せ、設備3と設備5の組合せ、設備3と設備7の組合せ、設備5と設備7の組合せ、である。削除不可リストに登録された設備及び設備の組合せは、設備1、4、6、8及び設備2と設備3の組合せである。配置構成設定部121は、削除不可リストに登録された設備2と設備3の組合せを含まないように、削除候補リストに登録された上記の組合せを削除対象として、これらに含まれる設備のうち3つを削除した設備配置構成を全パターン作成する。具体的には、配置構成設定部121は、設備2と設備5と設備7を削除した設備配置構成3-1、設備3と設備5と設備7を削除した設備配置構成3-2の2通りの設備配置構成を作成する。
【0035】
今回(3回目)は、設備2と設備3の組合せが、削除不可リストに登録されている為、配置構成設定部121は、設備2と設備3と設備5を削除した設備配置構成や、設備2と設備3と設備7を削除した設備配置構成を作成しない。
【0036】
3回目の確認処理では、作成された2通りの配置構成の各々について成立性確認シミュレーションが実行される。
制御部12は、新たに作成された2通りの設備配置構成3-1~3-2を対象として、3回目の成立性確認シミュレーションを実行する(ステップS2)。
次に成立性確認部122は、設備配置構成3-1~3-2の各々について、解の有無を判定する(ステップS3)。
【0037】
解なしの場合(ステップS3;No)、削除不可リスト更新部123は、削除できない設備3つの組合せを削除不可リストに登録する。解ありの場合(ステップS3;Yes)、削除候補リスト更新部124は、削除可能な設備の組合せを削除候補リストに登録する。
【0038】
ここで、3回目の成立性確認シミュレーションの結果、何れの設備配置構成も解ありの結果となったとする。削除候補リスト更新部124は、削除可能な3つの設備の組合せを削除候補リストに登録する。解なしが無い為、削除不可リスト更新部123は、削除不可リストの更新を行わない。3回目の処理結果を図5の表の3回目の行に示す。
【0039】
次に制御部12が、次回の処理における確認対象の設備配置構成の候補の有無を判定する(ステップS6)。候補がある場合(ステップS6;Yes)、ステップS7の処理に進む。候補無しの場合(ステップS6;No)、ステップS8の処理に進む。
次回が4回目の処理の場合、制御部12は、削除候補リストの中から、削除不可リストの記載(例えば、設備2と設備3)と矛盾すること無く、4個の設備を選択して組み合わせることが可能であれば、候補有りと判定する。図5の例の場合、例えば、設備2と設備3の組合せを含めないようにして4個の設備を組み合わせることができないので、制御部12は、候補無しと判定する。これは、全ての削除可能な設備の組み合わせを、これまでの3回の処理で検討したので、これ以上の処理が必要ではないことを意味する。ステップS6の判定がNoの為、制御部12は、図3に例示する初期モデルに対する配置構成設計処理を終了する。この例の場合、設備2,5,7又は設備3,5,7が削除の候補である。つまり、設備1、3、4、6、8、又は、設備1、2、4、6、8、が実際に配置すべき電力設備の候補である。最後に出力部13が、設備配置構成の候補を出力する(ステップS8)。例えば、出力部13は、図5に例示する最後に残った削除候補リストをテキストで出力する他、図6に例示する画像を出力などしてもよい。
【0040】
図6に配置構成決定処理結果の一例を示す。
図6の成立性に×印が付された設備1、4、6、8は削除できない電力設備である。これらに設備2又は設備3を加えた配置が、列車3に電力を供給するうえで必要な条件を満たしつつ、設備数が最小となる構成である。
なお、制御部12は、これら2つの候補の中から更に、各設備のコストや容量に基づいてコスト又は容量が最小となる設備の組合せを選択してもよい。
【0041】
従来の方法では、図3の初期モデル6の中から、削除可能な設備の組合せを総当りで算出し、それぞれについてステップS2の成立性確認シミュレーションを実行して、最小の設備配置構成を決定するか、設計者による経験やノウハウによって最適な設備配置が決定されることが多い。前者の方法では、計算量が膨大になり、最適な設備配置構成を決定するまでに時間が掛かり、後者の方法では、決定された設備配置構成が最適解ではない可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、削除できない設備や設備の組合せを削除不可リストに登録し、削除不可リストに登録された設備および設備の組合せを含まないようにして、削除する設備の組合せの規模(設備数)を増加させながら、削除可能な設備の組合せを探索することで、従来の総当り方式よりも、少ない計算量で、短時間に最適な設備配置を決定することができる。また、設計者のノウハウに依らず、削除可能な設備の組み合わせを全て検討しているので、最適な設備配置構成の候補を得ることがきる。
【0042】
なお、上記の実施例では交通システム5における電源設備2A等の配置構成の設計を例に説明を行ったが、本実施形態の適用先はこれに限定されない。例えば、移動体通信に用いる基地局やアンテナの配置を本実施形態の配置構成決定処理を用いて決定してもよい。
【0043】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による配置構成設計装置10Aについて図7図9を参照して説明する。
図7は、第二実施形態における配置構成設計装置の一例を示すブロック図である。
本開示の第二実施形態に係る配置構成設計装置10Aの構成要素のうち、第一実施形態に係る配置構成設計装置10と同じ構成要素には同じ符号を付し、それらの説明を省略する。配置構成設計装置10Aは、第一実施形態の構成に加えて、補助設備設定部125を備える。
第一実施形態では、ある電力設備を削除した場合に成立性確認シミュレーションを実行して、列車3に供給される電圧が閾値以上であれば、その設備を削除可能であるとした。この方法によれば、計算上、最小限の設備配置構成を算出することができるが、列車3の実運転の場面では、列車3に供給される電圧にあまり余裕が無い状況が生じ得る。そこで、補助設備設定部125は、成立性確認シミュレーション中に計算された各列車3へ供給される電圧の状況に応じて、上下線接続抵抗、補助き電線などの補助設備の配置を設計する。
【0044】
図8は、第二実施形態における補助設備の配置設計処理を説明する図である。
補助設備設定部125は、図4を用いて説明した配置構成決定処理において、最終的に最適な配置構成の候補として決定した設備配置構成についての成立性確認シミュレーション(ステップS2)で計算された電圧を記憶部14から読み出す。そして、補助設備設定部125は、電力網4における電圧が最低となる位置の付近に補助き電線7を設けることを決定する。これにより当該位置付近の電圧の低下を抑制することができる。
また、補助設備設定部125は、電力網4における電圧の降下が大きい上り線41と電圧降下に余裕のある下り線42の位置が近い場合、あるいは、電力網4における電圧の降下が大きい下り線42と電圧降下に余裕のある上り線41の位置が近い場合、上り線41と下り線42をこの位置で結ぶ、上下線接続抵抗8を設けることを決定する。これにより、電圧の勾配部において、上下線間の電力融通を効率化することができる。
【0045】
図9は、第二実施形態における補助設備の設定処理の一例を示すフローチャートである。
まず、配置構成設計装置10Aが図4で説明した配置構成設計処理を実行する(ステップS11)。次に補助設備設定部125が、最終的に決定された設備配置構成の候補について計算された列車3に供給される電圧を記憶部14から読み出す。
補助設備設定部125は、読み出した電圧に基づいて、電力網4における電圧の分布状況を算出する(ステップS12)。例えば、電力網4のある位置について、運行パターン別にX回、その位置における電圧が計算されていたならば、補助設備設定部125は、X回計算した電圧の平均値を、その位置の電圧としてもよい。
補助設備設定部125は、電圧の分布状況に基づいて、電力網4に補助設備を設定する(ステップS13)。例えば、補助設備設定部125は、電圧が最低となる位置の付近に補助き電線7を設定する。例えば、補助設備設定部125は、電圧の降下が大きい上り線と電圧降下に余裕のある下り線の位置が近い場合、その位置に上下線接続抵抗8を設定する。出力部13は、例えば、図9に例示する補助設備が設定された交通システム5の模式図を、表示装置に出力してもよい。
【0046】
第二実施形態によれば、電力網4への最小限の電力設備の配置に対し、補助設備の設定を追加することで、安全側に余裕を持たせた設計を行うことができる。
【0047】
図11は、本開示の一実施形態における配置構成設計装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の配置構成設計装置10,10Aは、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0048】
配置構成設計装置10,10Aの全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、配置構成設計装置10,10Aは、複数のコンピュータ900によって構成されていても良い。
【0049】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
<付記>
各実施形態に記載の配置構成設計装置10、10A、配置構成設計方法、プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0051】
(1)第1の態様に係る配置構成設計装置10、10Aは、複数の位置の各々に配置された設備(電力設備2A~2C、設備1~8)から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定する配置構成設定部121と、設定した前記配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定する成立性確認部122と、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータと、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータを記憶する記憶部と、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を前記削除候補リストデータに登録する削除候補リスト更新部124と、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を前記削除不可リストデータに登録する削除不可リスト更新部123と、前記条件が成立し、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成の設定と、前記条件の成立性の判定と、前記削除候補リストデータへの登録と、前記削除不可リストデータへの登録と、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させる制御部12と、を備え、1回目の前記確認処理において、前記配置構成設定部は、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記成立性確認部は、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リスト更新部は、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リスト更新部は、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、削除候補リスト更新部は、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リスト更新部は、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、n+1回目の前記確認処理において、前記配置構成設定部は、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する。
これにより、条件を満たすかどうかを確認する設備配置構成の数を減らし、最適な設備の配置構成を少ない計算量で算出することができる。
【0052】
(2)第2の態様に係る配置構成設計装置10、10Aは、(1)の配置構成設計装置10、10Aであって、前記制御部は、n回目の前記確認処理において、前記削除不可リストに登録された前記設備の組合せを含まないように前記設備のn個の組合せを作成できなくなると、前記確認処理の実行を終了する。
これにより、削除可能かどうかを確認しなければならない設備の組合せの有無を確認することができる。
【0053】
(3)第3の態様に係る配置構成設計装置10Aは、(1)~(2)の配置構成設計装置10Aであって、前記制御部12は、電力網4に接続された列車3に電力を供給する電力設備2A~2Bの前記配置構成を算出した場合、前記電力網4における電圧の値が最低となる位置の付近に補助き電線7を設定する。
【0054】
(4)第4の態様に係る配置構成設計装置10Aは、(1)~(3)の配置構成設計装置10Aであって、前記制御部12は、電力網4に接続された列車3に電力を供給する電力設備2A~2Cの前記配置構成を算出した場合、前記電力網4における電圧の降下が閾値以上の上り線41と、電圧の降下が閾値未満の下り線42を接続する上下接続抵抗8を設定する。
第3の態様、第4の態様によれば、最小限の電力設備の配置に対し、安全側に余裕を持たせた設計を行うことができる。
【0055】
(5)第5の態様に係る配置構成設計方法は、複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定するステップと、設定した前記設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータに登録するステップと、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータに登録するステップと、を有し、前記条件を満たし、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成を設定するステップと前記条件が成立するか否かを判定するステップと前記削除候補リストデータに登録するステップと前記削除不可リストデータに登録するステップと、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させ、1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記条件が成立するか否かを判定するステップでは、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、削除候補リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、n+1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する。
【0056】
(6)第6の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、コンピュータに、複数の位置の各々に配置された設備から削除できる可能性がある前記設備を削除して、前記設備の配置構成を設定するステップと、設定した前記設備の配置構成において、所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できる前記設備の情報を登録する削除候補リストデータに登録するステップと、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備の情報を、記憶部が記憶する、削除できない前記設備の情報を登録する削除不可リストデータに登録するステップと、を有し、前記条件を満たし、且つ、それ以上前記設備を削除することができない前記配置構成が算出できるまで、前記配置構成を設定するステップと前記条件が成立するか否かを判定するステップと前記削除候補リストデータに登録するステップと前記削除不可リストデータに登録するステップと、を含む確認処理を、削除する前記設備の数を1ずつ増加させながら繰り返し実行させ、1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、複数の前記設備の中から1つずつ前記設備を削除して前記複数通りの前記配置構成を設定し、前記条件が成立するか否かを判定するステップでは、前記複数通りの前記配置構成の各々について、前記条件の成立性を判定し、削除候補リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立する前記配置構成において削除された前記設備を前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、前記条件が成立しない前記配置構成において削除された前記設備を前記削除不可リストデータへ登録し、n回目(nは1より大きい整数)の前記確認処理において、削除候補リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立する組合せを前記削除候補リストデータへ登録し、前記削除不可リストデータに登録するステップでは、削除する前記設備n個の組合せのうち前記条件が成立しない組合せを前記削除不可リストデータへ登録し、n+1回目の前記確認処理において、前記配置構成を設定するステップでは、前記削除候補リストデータに登録された前記設備n個の組合せの中から、前記削除不可リストデータに登録された前記設備及び前記設備の組合せを含まないようにして、削除する前記設備n+1個の組合せを可能な数だけ設定する処理、を実行させる。
【符号の説明】
【0057】
10、10A・・・配置構成設計装置
11・・・データ取得部
12・・・制御部
121・・・配置構成設定部
122・・・成立性確認部
123・・・削除不可リスト更新部
124・・・削除候補リスト更新部
125・・・補助設備設定部
13・・・出力部
14・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11