(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020189
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ネットリスト生成装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/398 20200101AFI20220125BHJP
G06F 30/367 20200101ALI20220125BHJP
【FI】
G06F17/50 666L
G06F17/50 662G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123550
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢佑
【テーマコード(参考)】
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
5B046AA08
5B046BA03
5B046DA05
5B046JA04
5B046KA05
5B146AA22
5B146DL08
5B146GG24
5B146GL04
(57)【要約】
【課題】少ない作業者への負担で、回路の評価を行うことができ、回路を高い精度で設計することができる。
【解決手段】電子部品と電子部品を接続する配線の情報を含む第1の回路データから電子部品に接続される配線を抽出し、抽出した抽出配線に設定された値の抵抗またはコンデンサが追加された第2の回路データを作成する回路加工部と、第2の回路データに基づいて、回路の電気の流れをシミュレーションするためのネットリストを作成するネットリスト作成部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と前記電子部品を接続する配線の情報を含む第1の回路データから前記電子部品に接続される配線を抽出し、抽出した抽出配線に設定された値の抵抗またはコンデンサが追加された第2の回路データを作成する回路加工部と、
前記第2の回路データに基づいて、回路の電気の流れをシミュレーションするためのネットリストを作成するネットリスト作成部と、を含むネットリスト生成装置。
【請求項2】
前記回路加工部は、ループを形成し、かつ、ループを形成する経路に何も部品が配置されていない配線に前記抵抗を直列に追加する請求項1に記載のネットリスト生成装置。
【請求項3】
前記抵抗は、前記第1の回路データに含まれる電子部品の抵抗値よりも小さい抵抗値である請求項1または請求項2に記載のネットリスト生成装置。
【請求項4】
前記回路加工部は、前記電子部品の内部に配置され、両端が外部と接続し、かつ、内部で他の電子部品が接続されていない配線に、接地しているコンデンサを追加する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のネットリスト生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットリスト生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路は、例えば、物理的なレイアウトを示す回路図面を作成し、回路図面から電気的な接続関係を示すネットリストを作成することで設計される。特許文献1には、データの少ないネットリストを作成する装置として、繰り返し構成を備える回路のネットリスト生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、回路は、設計した後、適切に動くかを評価するために、ネットリストについて電気的なシミュレーションを実行し、電気信号が適切に流れる回路か、回路に不具合がないかを評価する。ネットリストを用いて実行するシミュレーションする場合、ネットリストで表現される回路構成で解が出ない部分があるとシミュレーションが実行できない。シミュレーションが実行できない場合、ネットリストや回路図面を確認して、不具合が生じる部分を発見し、シミュレーションに影響が出ない範囲で回路を加工する必要が生じ、作業員の負担となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、少ない作業者への負担で、回路の評価を行うことができ、回路を高い精度で設計することができるネットリスト生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るネットリスト生成装置は、電子部品と前記電子部品を接続する配線の情報を含む第1の回路データから前記電子部品に接続される配線を抽出し、抽出した抽出配線に設定された値の抵抗またはコンデンサが追加された第2の回路データを作成する回路加工部と、前記第2の回路データに基づいて、回路の電気の流れをシミュレーションするためのネットリストを作成するネットリスト作成部と、を含む。
【0007】
前記回路加工部は、ループを形成し、かつ、ループを形成する経路に何も部品が配置されていない配線に前記抵抗を直列に追加することが好ましい。
【0008】
前記抵抗は、前記第1の回路データに含まれる電子部品の抵抗値よりも小さい抵抗値であることが好ましい。
【0009】
前記回路加工部は、前記電子部品の内部に配置され、両端が外部と接続し、かつ、内部で他の電子部品が接続されていない配線に、接地しているコンデンサを追加することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、少ない作業者への負担で、回路の評価を行うことができ、回路を高い精度で設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る回路設計装置の断面図である。
【
図2】
図2は、回路設計装置を用いた回路設計方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ネットリスト作成方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ネットリスト作成方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、ネットリスト作成方法を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、ネットリスト作成方法を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、ネットリスト作成方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る回路設計装置の断面図である。
図1に示すように、回路設計装置10は、回路図面の作成、シミュレーションに用いることができるネットリストの作成、シミュレーション、を実行する。本実施形態の回路設計装置10は、1つの装置で、回路図面の作成、シミュレーションに用いることができるネットリストの作成、シミュレーション、を実行する場合として説明するが、それぞれを別の装置で実行してもよい。つまり、回路設計装置10は、回路図面を作成する回路図面作成装置と、シミュレーションに用いることができるネットリストを作成するネットリスト作成装置と、シミュレーションを実行するシミュレーション装置の機能を備えるが、それぞれを別の装置としてもよい。
【0014】
回路設計装置10は、入力部12と、出力部14と、通信部16と、処理部18と、記憶部20と、を備える。回路設計装置10は、入力出力手段が作業者の手元にあり、入力に基づいて各種演算処理を実行する装置であり、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット、クラウドコンピュータ等である。回路設計装置10は、入力部12と、出力部14と、通信部16と、処理部18と、記憶部20と、を備える。
【0015】
入力部12は、作業者の入力を検出する機器である、入力部12としては、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク(音声検出機器)、カメラ(ジェスチャ検出機器)等を用いることができる。出力部14は、作業者に各種情報を出力する機器であり、モニター等の表示装置、スピーカ等の音声出力装置である。通信部16は、他の電子機器と通信を行い、データの送受信を行う。通信部16は、優先、無線で通信を行う。また、回路設計装置10は、記録媒体とデータの授受を行うUSB端子等を備えていてもよい。
【0016】
処理部18は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置を備える。処理部18は、記憶部20に記憶されているプログラムを実行することで処理を実行する。処理部18は、回路図面作成部32と、モデル作成部34と、回路加工部35と、シミュレーション実行部36と、を含む。
【0017】
回路図面作成部32は、作業者の入力に基づいて、回路図面(第1の図面データ)を作成する。回路図面作成部32は、記憶部20に記憶される回路図面を作成するソフトウェアを実行し、作業者の入力に基づいて情報を取得することで、回路図面の作成処理を実行する。回路図面は、電子部品と配線の物理配置の情報が対応付けられたデータである。
【0018】
モデル作成部(ネットリスト作成部)34は、回路図面のデータに基づいてネットリストを作成する。つまり、モデル作成部34は、回路図面をネットリストに変換する。ネットリストは、シミュレーションで処理する対象である、設計した回路のモデルとなる。
【0019】
回路加工部35は、回路図面またはネットリストに対して部品を付加する加工を行う。回路加工部35は、シミュレーション実行時に、計算でき条件を満たす配線に対して、抵抗及びコンデンサの少なくとも一方を付加する。回路加工部35で加工した回路図面、ネットリストが、第2の図面データとなる。
【0020】
シミュレーション実行部36は、モデル作成部34で作成し、回路加工部35で加工されたネットリストのシミュレーションを行い、ネットリストの回路が作動するかの判定処理を実行する。シミュレーション実行部36が実行するシミュレーションは特に限定されず、回路を動作させる種々のシミュレーションを用いることができる。
【0021】
記憶部20は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)等のデータを記憶する装置である。記憶部20は、部品データベース42と、変換用データベース44と、加工条件データベース46と、を含む。
【0022】
部品データベース42は、回路図面に搭載する電子部品、配線の情報を蓄積している。電子部品の情報としては、名称、大きさ、形状、端子の数、位置、各端子の内部での接続状態、内部で各端子に接続される電子部品の機能(抵抗、容量等)が記憶される。部品データベース42は、電子部品、配線毎のネットリストの情報も記憶している。
【0023】
変換用データベース44は、回路図面の情報をネットリストに変換するデータである変換リストを蓄積している。変換データベース44は、回路図面上で回路部品をネットリストの情報に変換する場合の変換規則や、回路図面上で電子部品を接続している配線をネットリストの情報に変換する場合の変換規則が記憶される。
【0024】
加工条件データベース46は、回路加工部35で部品を付加する条件を蓄積している。ここで、追加する電子部品としては、抵抗、コンデンサが例示される。また、追加する電子部品は、ネットリストのシミュレーションの結果に実質的な影響を与えない程度の特性、配置位置が設定される。加工条件データベース46は、回路図面及びネットリストの少なくとも一方の情報に基づいて、配線に抵抗またはコンデンサを追加する条件を含む。具体的な条件としては、コネクタと外部の部品との接続部の配線に抵抗またはインピーダンス素子(抵抗器、コイル、コンデンサ)を設置する、ループを形成し、かつ、ループを形成する経路に何も部品が配置されていない配線に抵抗を配置する、電子部品の内部に配置され、両端が外部と接続し、かつ、内部で他の電子部品が接続されていない配線に、接地しているコンデンサまたはインピーダンス素子(抵抗器、コイル、コンデンサ)を追加する等である。
【0025】
図2は、回路設計装置を用いた回路設計方法の一例を示すフローチャートである。回路設計装置10は、作業者の操作を検出して、各種処理を実行し、作業者が設計する回路を作成し、作成した回路が適切に稼働するかの確認処理を行う。
【0026】
次に、
図2から
図7を用いて、回路設計装置10で実行する処理動作を説明する。まず、
図2を用いて、回路設計装置10で実行する回路作成方法について、説明する。
図2に示す処理は、回路設計装置10が、作業者の入力を検出して各種処理を実行する。
【0027】
回路設計装置10は、回路図面を作成する(ステップS12)。具体的には、回路設計装置10は、入力部12で検出した入力に基づいて、回路図面作成部32で電子部品及び配線の物理的な配置の情報を含む回路図面を作成する。回路図面作成部32は、回路図面を作成するソフトウェアを実行し、部品データベース42の選択画面を表示して、回路図面を作成する。回路図面作成部32は、選択された部品に対するドロップアンドドラック操作で部品を指定された位置に配置する。また、回路図面作成部32は、マウスのポインタで電子部品同士を接続する操作に基づいて、配線を配置する。
【0028】
回路設計装置10は、ネットリストを作成する(ステップS14)。回路設計装置10は、モデル作成部34により、回路図面のデータをネットリストに変換する。また、回路設計装置10は、回路加工部35で、加工条件データベース46の条件を満たす位置に電子部品を追加する。この点については、後述する。
【0029】
回路設計装置10は、シミュレーショを実行する(ステップS16)。回路設計装置10は、シミュレーション実行部36でネットリストを解析する。シミュレーション実行部36は、ネットリストの回路が適切に動作するかを判定する。シミュレーション実行部36は、ネットリストの回路の不具合がある位置を検出した場合、その位置を示す情報、例えば、エラーログの情報を生成する。回路設計装置10は、シミュレーション結果を出力する(ステップS18)。回路設計装置10は、出力部14にシミュレーション結果を出力する。シミュレーション結果としては、回路が適切に動作するか、しないかの判断結果、回路のシミュレーションを実行して出力される信号の情報、不具合を検出した場合不具合がある位置等がある。
【0030】
次に、回路設計方法のステップS14の処理、つまり、回路図面からネットリストを作成する処理について、具体的に説明する。
図3は、ネットリスト作成方法の一例を示すフローチャートである。
図3に示す処理は、回路図面をネットリストに変換する処理の具体的な一例である。
図3に示す処理は、モデル作成部34及び回路加工部35で実行する。
【0031】
モデル作成部34は、回路図面のデータを取得する(ステップS22)。つまり、モデル作成部34は、回路図面作成部32で作成した電子部品の物理配置を示す情報である回路図面の情報を取得する。モデル作成部34は、変換リストを取得する(ステップS24)。つまり、モデル作成部34は、変換用データベース44から変換リストの情報を取得する。モデル作成部34は、変換リストに基づいて、回路図面データをネットリストに変換する(ステップS26)。モデル作成部34は、以上の処理を実行して、作成された回路図面に対応するネットリストを作成する。
【0032】
回路加工部35は、変換したネットリストの情報に基づいて、回路に対して部品の追加の処理を実行する。回路加工部35は、加工条件データベースを取得する(ステップS28)。次に、回路加工部35は、判断対象を抽出する(ステップS30)。つまり、回路加工部35は、ネットリストに含まれる情報から、判断対象として一部分の情報、具体的には、ネットリストの1つの電子部品や1つの配線に関する情報を取得する。
【0033】
回路加工部35は、加工を行う対象かを判定する(ステップS32)。回路加工部35は、判断対象が部品を追加する条件を満たしているかを判定する。回路加工部35は、加工を行う対象ではない(ステップS32でNo)と判定した場合、ステップS36に進む。回路加工部35は、加工を行う対象ではある(ステップS32でYes)と判定した場合、判定対象に部品を追加し(ステップS34)、ステップS36に進む。つまり、回路加工部35は、抵抗を追加すると判定した位置に抵抗を追加し、コンデンサを追加すると判定した位置にはコンデンサを追加する。
【0034】
回路加工部35は、全対象の判定が完了したかを判定する(ステップS36)。回路加工部35は、全ての判定対象について部品を追加するかの判定を行ったかを判定する。回路加工部35は、全対象の判定が完了していない(ステップS36でNo)と判定した場合、ステップS30に進む。回路加工部35は、全対象の判定が完了した(ステップS36でYes)と判定した場合、本処理を終了する。
【0035】
回路設計装置10は、このように、回路加工部35で、ネットリストの判定対象のそれぞれについて部品を追加するかを判定し、必要と判定した位置に部品を追加する。
【0036】
図4は、ネットリスト作成方法の他の例を示すフローチャートである。
図3に示す処理では、回路加工部35が、ネットリストに対して、判定処理を実行したが、回路図面の情報に対して、部品の追加の処理を実行してもよい。
【0037】
モデル作成部34は、回路図面のデータを取得する(ステップS22)。つまり、モデル作成部34は、回路図面作成部32で作成した電子部品の物理配置を示す情報である回路図面の情報を取得する。
【0038】
回路加工部35は、回路図面の情報に基づいて、回路に対して部品の追加の処理を実行する。回路加工部35は、部品データベースを取得する(ステップS54)。回路加工部35は、回路図面に含まれる電子部品を判定するために部品データベースの情報を取得する。次に、回路加工部35は、加工条件データベースを取得する(ステップS56)。次に、回路加工部35は、判断対象を抽出する(ステップS58)。つまり、回路加工部35は、回路図面に含まれる電子部品、配線の情報から、判断対象として一部分の情報、具体的には、回路図面の1つの電子部品や1つの配線に関する情報を取得する。
【0039】
回路加工部35は、加工を行う対象かを判定する(ステップS60)。回路加工部35は、判断対象が部品を追加する条件を満たしているかを判定する。回路加工部35は、加工を行う対象ではない(ステップS60でNo)と判定した場合、ステップS64に進む。回路加工部35は、加工を行う対象ではある(ステップS60でYes)と判定した場合、判定対象に部品を追加し(ステップS62)、ステップS64に進む。つまり、回路加工部35は、抵抗を追加すると判定した位置に抵抗を追加し、コンデンサを追加すると判定した位置にはコンデンサを追加する。
【0040】
回路加工部35は、全対象の判定が完了したかを判定する(ステップS64)。回路加工部35は、全ての判定対象について部品を追加するかの判定を行ったかを判定する。回路加工部35は、全対象の判定が完了していない(ステップS64でNo)と判定した場合、ステップS58に進む。回路加工部35は、全対象の判定が完了した(ステップS64でYes)と判定した場合、ステップS68に進む。
【0041】
モデル作成部34は、変換リストを取得する(ステップS68)。つまり、モデル作成部34は、変換用データベース44から変換リストの情報を取得する。モデル作成部34は、変換リストに基づいて、回路図面データをネットリストに変換する(ステップS70)。モデル作成部34は、以上の処理を実行して、作成され、かつ、回路加工部35で不品を追加する処理を実行した回路図面に対応するネットリストを作成する。
【0042】
回路設計装置10は、このように、回路加工部35で、回路図面の判定対象のそれぞれについて部品を追加するかを判定し、必要と判定した位置に部品を追加する。
【0043】
図5から
図7は、それぞれネットリスト作成方法を説明するための説明図である。
図5から
図7は、本実施形態の回路加工部35で実行する電子部品の追加の処理の一例を、回路図面で示している。
図5は、加工前の回路図面であり、
図6、
図7は、それぞれ加工後の回路図面である。
【0044】
図5に示す回路モデル100は、電源110と、電源110から電力が供給されるECU(Electronic Control Unit)112と、を含む。なお、回路モデル100は、一例であり、対象は、ECU112に限定されない。電源110は、直流12Vの電圧を供給する直流電源である。
【0045】
ECU112は、モータ等のアクチュエータに供給する電力を制御し、アクチュエータの動作を制御する。ECU112は、コネクタ114と、電源回路116と、アクチュエータ駆動回路118と、CANトランシーバ(controller area network トランシーバ)120と、MPU(Micro-processing unit)122と、を含む。
【0046】
コネクタ114は、接続端子であり、電源110とECU112の内部の各部と、を接続する。コネクタ114は、配線130、132、134、136、138、140、142を介して、電源110と接続している。それぞれの配線は、制御信号を伝送する配線や、電力を伝送する電力線となる配線である。コネクタ114は、電源110と電源回路116とを接続し、電源110のCANトランシーバ120とを接続する。
【0047】
電源回路116は、コネクタ114を介して電源110の電力線と接続し、アクチュエータ駆動回路118と接続する。電源回路116は、電源110から供給される電力をアクチュエータ駆動回路118に供給できる電力に変換する回路である。例えば、電源回路116は、直流を交流に変換する回路や、電圧値を変換する回路である。アクチュエータ駆動回路118は、アクチュエータを駆動する回路である。アクチュエータがモータである場合、モータのコイルに接続している回路である。
【0048】
CANトランシーバ120は、電源110から供給される制御信号を受信する。MPC122は、CANトランシーバ120で受信した信号に基づいて、各部の動作を制御する。回路モデル100は、以上のように各部が接続されている。
【0049】
本実施形態の回路設計装置10は、回路加工部35で対象とする位置を特定し、特定した箇所に電子部品を追加する。
図6は、加工条件データベース46で、コネクタと外部の部品との接続部の配線に抵抗を設置する設定が有効になっている場合の一例である。この場合、
図6に示す回路モデル100aは、コネクタ114と電源110とを接続する配線130、132、134、136、138、140、142に、それぞれ1つの抵抗150a、150b、150c、150d、150e、150f、150gを追加する。これにより、コネクタ114と外部とを接続する配線に抵抗が形成される。また、本実施形態の場合、配線132と配線134とで形成されるループにも抵抗150b、150cが配置され、配線136と配線138とで形成されるループにも抵抗150c、150eが配置される。
【0050】
図7は、加工条件データベース46で、コネクタと外部の部品との接続部の配線に抵抗を設置する設定と、電子部品の内部に配置され、両端が外部と接続し、かつ、内部で他の電子部品が接続されていない配線に、接地しているコンデンサを追加する設定が有効となっている場合の一例である。この場合、
図7に示す回路モデル100bは、コネクタ114と電源110とを接続する配線130、132、134、136、138、140、142に、それぞれ1つの抵抗150a、150b、150c、150d、150e、150f、150gを追加する。これにより、コネクタ114と外部とを接続する配線に抵抗が形成される。抵抗は、配線に対して直列に配置される。また、回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線130と配線131との間にコンデンサ160aが配置される。回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線132と配線133との間にコンデンサ160bが配置される。回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線134と配線135との間にコンデンサ160cが配置される。回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線136と配線137との間にコンデンサ160dが配置される。回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線138と配線139との間にコンデンサ160eが配置される。回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線140と配線141との間にコンデンサ160fが配置される。回路モデル100bは、コネクタ114で接続する配線142と配線143との間にコンデンサ160gが配置される。
【0051】
コンデンサ160a、160b、160c、160d、160e、160f、160gは、コネクタ114の内部に配置され、一方の端部がそれぞれの配線に接続され、他方の端部が設置される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る回路設計装置10は、シミュレーションに用いる回路モデルの作成時に、回路加工部35で回路図面またはネットリストの各部に対して判定処理を実行し、加工条件データベース46に一致する位置に、電子部品を追加することで、シミュレーションが実行できる回路モデルを作成することができる。つまり、回路毛設計装置10は、回路加工部35で部品を追加することで、シミュレーション実行部36でシミュレーションを実行する際に回路モデルの各部に回路図面の構成に対して影響が出ない範囲で値を付与することができ、シミュレーション時に解が出ない構成となることを抑制することができる。
【0053】
具体的には、ループを形成し、かつ、ループを形成する経路に何も部品が配置されていない配線に抵抗を配置することで、計算が実行可能なモデルとすることができる。また、本実施形態のように、コネクタと外部の部品との接続物の配線に抵抗を設置することで、ループが形成されることを抑制できる。また、本実施形態ではコネクタとしたが、コネクタ以外でも、部品と部品とを接続し、他の部品が配置されていない配線に抵抗を設けてもよい。
【0054】
また、本実施形態のように内部に抵抗、コンデンサ、コイル等の部品が配置されておらず、配線のみが設定されている電子部品の配線に、接地したコンデンサを配置することで、計算が実行可能なモデルとすることができる。また、接地したコンデンサを配置することで、抵抗を設けるよりもシミュレーションに与える影響を小さくすることができる。
【0055】
ここで、回路加工部35で追加する抵抗(追加抵抗)は、ネットリストで設定される抵抗(例えば、電子部品としてICが設けられた場合の当該ICの入力抵抗)の1/100以下とすることが好ましい。また、回路加工部35で追加する抵抗(追加抵抗)は、ネットリストで設定される最小の抵抗値とすることも好ましい。また、回路加工部35で追加する抵抗(追加抵抗)は、電流の桁数を考慮して、12桁の中に入り、かつ、0.01mΩ以上100mΩ以下とすることも好ましい。追加抵抗を上記範囲のいずれかを満たすようにすることで、追加抵抗がシミュレーションに与える影響を確実に小さくすることができ、追加抵抗を設けることでシミュレーション結果に実質的な変化が生じることを抑制できる。
【0056】
また、回路加工部35で追加するコンデンサは、配線に接続しない端部を接地させることが好ましい。また、コンデンサの容量は、無限大の設定とすることが好ましい。これにより、追加したコンデンサがシミュレーショに与える影響を小さくすることができ、追加のコンデンサを設けることでシミュレーション結果に実質的な変化が生じることを抑制できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
10 回路設計装置
12 入力部
14 出力部
16 通信部
18 処理部
20 記憶部
32 回路図面制作部
34 ネットリスト作成部
35 回路加工部
36 シミュレーション実行部
42 部品データベース
44 変換用データベース
46 加工条件データベース
100、100a、100b 回路モデル
110 電源
112 ECU
114 コネクタ
116 電源回路
118 アクチュエータ駆動回路
122 MPU
124 CANトランシーバ
130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143 配線
150a、150b、150c、150d、150e、150f、150g 抵抗、
160a、160b、160c、160d、160e、160f、160g コンデンサ