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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020200
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】スナップフィット係合コネクタ
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/12 20060101AFI20220125BHJP
   F16L 37/088 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L37/088
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123567
(22)【出願日】2020-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一斉
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106CA17
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC01
3J106EC07
3J106ED12
3J106EE02
3J106EF04
3J106EF15
(57)【要約】
【課題】コネクタ本体部の内部からパイプが抜け出るのを抑制することが可能なスナップフィット係合コネクタを提供する。
【解決手段】リテーナ3の爪部33の先端部は、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が挿入された際に、コネクタ本体部1の開口11側からスプール部51に当接する。爪部33には、コネクタ本体部1の開口11側に凸となった屈曲部33aが設けられている。屈曲部33aは、コネクタ本体部1の開口11側に折り曲げられた後に、コネクタ本体部1の開口11側とは反対側に折り返されたような形に形成されている。屈曲部33aの頂点は、コネクタ本体部1の内部空間12の側面よりもコネクタ本体部1の内部側に位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプが挿入される開口と、前記開口に連通する内部空間とを有するコネクタ本体部と、
前記パイプの端部の外周に設けられた環状の凸部であるスプール部と係合することで、前記コネクタ本体部の内部に挿入された前記パイプを固定するリテーナと、
を有し、
前記リテーナは、
前記コネクタ本体部の前記開口側に配置されて、前記開口に連通する孔部を有するリング部と、
前記リング部から、前記コネクタ本体部の前記開口側とは反対側に延びる脚部と、
前記脚部の前記リング部とは反対側の端部から、前記コネクタ本体部の内部に向かって延びて、前記コネクタ本体部の側部に形成された貫通穴を貫通する爪部と、
を有し、
前記爪部の先端部は、前記コネクタ本体部の内部に前記パイプが挿入された際に、前記コネクタ本体部の前記開口側から前記スプール部に当接し、
前記爪部には、前記コネクタ本体部の前記開口側に凸となった屈曲部が設けられており、
前記屈曲部は、前記コネクタ本体部の前記開口側に折り曲げられた後に、前記コネクタ本体部の前記開口側とは反対側に折り返されたような形に形成されており、
前記屈曲部の頂点は、前記内部空間の側面よりも前記コネクタ本体部の内部側に位置していることを特徴とするスナップフィット係合コネクタ。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記爪部の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスナップフィット係合コネクタ。
【請求項3】
前記屈曲部において、その頂点から前記脚部の端部にかけての部分と、その頂点から前記爪部の先端部にかけての部分とが、それぞれ直線状であることを特徴とする請求項2に記載のスナップフィット係合コネクタ。
【請求項4】
前記パイプの周方向に前記爪部が移動可能なように、前記周方向において、前記貫通穴の幅は、前記爪部の幅よりも広くされており、
前記コネクタ本体部の外面には、前記周方向に前記爪部が移動した際に、前記脚部が乗り上げる凸部が設けられており、
前記パイプの径方向において、前記凸部の高さは、前記スプール部の高さよりも高いことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスナップフィット係合コネクタ。
【請求項5】
前記脚部が、平坦な板状であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスナップフィット係合コネクタ。
【請求項6】
前記脚部の中央部が、前記脚部の両端部よりも細くされていることを特徴とする請求項5に記載のスナップフィット係合コネクタ。
【請求項7】
前記パイプの先端部の外周の一部に凹部が設けられており、
前記コネクタ本体部の内部の側面であって、前記パイプの挿入方向における前記内部空間よりも奥側の側面の一部に、前記凹部に対応する凸部が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のスナップフィット係合コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップフィットでパイプに係合するスナップフィット係合コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クリップの内径をつまみで拡開させて、ボディ(コネクタ本体部)のクリップ嵌着部にクリップを嵌めると、ボディの内部に挿入された管体(パイプ)の抜止め突部(スプール部)をクリップの係止爪が係止することで、ボディに対して管体が抜け止めされる構成のコネクタが開示されている。クリップの係止爪は、ボディの外面側からボディの内部に向かって延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3670191号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、パイプの内部に圧力がかかって、コネクタ本体部の内部から抜け出る方向にパイプが動くと、スプール部によって係止爪が折り曲げられ、コネクタ本体部の外面側に係止爪が浮き上がることで、コネクタ本体部の内部からパイプが抜け出る虞がある。特に、カーエアコンなど、パイプの内部にかかる圧力が高い用途では、コネクタ本体部の内部からパイプが抜け出る虞が高くなる。
【0005】
本発明の目的は、コネクタ本体部の内部からパイプが抜け出るのを抑制することが可能なスナップフィット係合コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パイプが挿入される開口と、前記開口に連通する内部空間とを有するコネクタ本体部と、前記パイプの端部の外周に設けられた環状の凸部であるスプール部と係合することで、前記コネクタ本体部の内部に挿入された前記パイプを固定するリテーナと、を有し、前記リテーナは、前記コネクタ本体部の前記開口側に配置されて、前記開口に連通する孔部を有するリング部と、前記リング部から、前記コネクタ本体部の前記開口側とは反対側に延びる脚部と、前記脚部の前記リング部とは反対側の端部から、前記コネクタ本体部の内部に向かって延びて、前記コネクタ本体部の側部に形成された貫通穴を貫通する爪部と、を有し、前記爪部の先端部は、前記コネクタ本体部の内部に前記パイプが挿入された際に、前記コネクタ本体部の前記開口側から前記スプール部に当接し、前記爪部には、前記コネクタ本体部の前記開口側に凸となった屈曲部が設けられており、前記屈曲部は、前記コネクタ本体部の前記開口側に折り曲げられた後に、前記コネクタ本体部の前記開口側とは反対側に折り返されたような形に形成されており、前記屈曲部の頂点は、前記内部空間の側面よりも前記コネクタ本体部の内部側に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リテーナの爪部に設けられた屈曲部の頂点は、コネクタ本体部の内部空間の側面よりもコネクタ本体部の内部側に位置している。よって、パイプの内部に圧力がかかり、コネクタ本体部の内部から抜け出る方向にパイプが動くと、パイプのスプール部によって爪部がコネクタ本体部の開口側に押され、内部空間の側面とパイプの外周面との間に屈曲部が食い込む。その結果、コネクタ本体部の外面側に爪部が浮き上がるのが抑制される。また、リテーナの脚部が、コネクタ本体部の開口側とは反対側に引っ張られ、リテーナのリング部が、コネクタ本体部に当接する。リング部が、コネクタ本体部に当接した後は、屈曲部の食い込み量が増すにつれて、脚部にかかる引張荷重が大きくなる。脚部の引張強度によって、コネクタ本体部の内部から抜け出る方向へのパイプの動きが抑えられる。従来の係止爪では、係止爪の曲げ強度で、パイプの動きを抑えていた。しかし、カーエアコンなど、パイプの内部にかかる圧力が高い用途では、パイプの動きを十分に抑えることができず、係止爪が折れ曲がり、コネクタ本体部の外面側に係止爪が浮き上がることで、コネクタ本体部の内部からパイプが抜け出る虞があった。ここで、一般的に、樹脂や金属の引張強度は、曲げ強度よりも高い。そこで、脚部の引張強度で、パイプの動きを抑えることで、カーエアコンなど、パイプの内部にかかる圧力が高い用途においても、パイプの動きを好適に抑えることができる。これにより、コネクタ本体部の内部からパイプが抜け出るのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コネクタの斜視図である。
図2】コネクタの断面図である。
図3】パイプの斜視図である。
図4】コネクタ本体部および雄継手部の斜視図である。
図5】リテーナの斜視図である。
図6】チェッカーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(コネクタの構成)
本実施形態におけるコネクタ(スナップフィット係合コネクタ)は、例えば、カーエアコンの冷媒配管の接続に用いられる継手である。用途がカーエアコンの場合、コネクタの破裂強度は10MPa以上である。
【0011】
コネクタ100の斜視図である図1、および、コネクタ100の断面図である図2に示すように、コネクタ100は、直線状のコネクタである。コネクタ100の材質は、例えば、樹脂である。コネクタ100は、パイプ50が挿入される雌継手部としてのコネクタ本体部1と、雄継手部2と、を備える。
【0012】
コネクタ本体部1は、パイプ50が挿入される開口11と、開口11に連通する内部空間12とを有している。本実施形態において、コネクタ本体部1は、円筒状であるが、これに限定されない。
【0013】
雄継手部2は、コネクタ本体部1と同軸に設けられ、コネクタ本体部1の内部空間12と連通する流路21を有している。雄継手部2には、例えば、ホース(不図示)が接続される。雄継手部2におけるホースが接続される部分は、円筒状である。
【0014】
コネクタ本体部1は、一体成形品であり、例えば、射出成形により一体成形される。また、コネクタ本体部1および雄継手部2についても同様であり、コネクタ本体部1と雄継手部2とは、例えば、射出成形により一体成形される。なお、本実施形態では、コネクタ本体部1と雄継手部2とが一体成形されているが、コネクタ本体部1と雄継手部2とが一体成形されている必要はなく、例えば、コネクタ本体部1と雄継手部2とが別々に成形されたものを接合してもよい。
【0015】
また、本実施形態では、コネクタ本体部1と雄継手部2とが同軸に並んでいるが、コネクタ本体部1と雄継手部2とが直交していてもよい。また、コネクタ本体部1と雄継手部2とが交差していてもよい。つまり、コネクタ100は、L字形状のコネクタであってもよい。ここでの「L字形状」には、コネクタ本体部1と雄継手部2とがなす角度が90度のものだけでなく、30度や45度や60度など、様々な角度をなすものが含まれる。
【0016】
パイプ50の斜視図である図3に示すように、パイプ50は、内部に冷媒が流されるパイプ(管)である。パイプ50の材質は、例えば、アルミニウム合金等の金属である。パイプ50の端部の外周には、環状の凸部であるスプール部51が設けられている。パイプ50の先端部の外周の一部には、凹部52が設けられている。
【0017】
図1および図2に示すように、コネクタ100は、リテーナ3を有している。リテーナ3は、コネクタ本体部1の内部に挿入されたパイプ50を固定するものである。パイプ50に設けられたスプール部51と、リテーナ3とが係合されることで、パイプ50は、コネクタ本体部1に固定(ロック)される。リテーナ3の材質は、例えば、樹脂である。
【0018】
ここで、スプール部51とリテーナ3とは、スナップフィットにより係合される。スナップフィットとは、材料の弾性を利用して一方を他方に嵌め込むことである。具体的には、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が挿入されていくと、リテーナ3の後述する爪部33がスプール部51に押されて、コネクタ本体部1の外周面(外面)側に向かって弾性変形する。コネクタ本体部1の奥にパイプ50が完全に挿入されて、スプール部51が爪部33を通過すると、爪部33が元の位置に戻る。これにより、スプール部51とリテーナ3とが係合される。
【0019】
コネクタ本体部1および雄継手部2の斜視図である図4に示すように、コネクタ本体部1の側部には、第1貫通穴(貫通穴)13が形成されている。本実施形態では、第1貫通穴13は、コネクタ本体部1の周方向に等間隔で4つ形成されている。この第1貫通穴13に、リテーナ3の後述する爪部33が嵌る。
【0020】
また、コネクタ本体部1の外周面には、凸部14が設けられている。本実施形態では、凸部14は、コネクタ本体部1の周方向に等間隔で4つ設けられている。凸部14は、第1貫通穴13の近傍に配置されている。パイプ50の径方向(コネクタ本体部1の径方向)において、凸部14の高さは、スプール部51の高さよりも高い。
【0021】
また、コネクタ本体部1の側部には、第2貫通穴15が形成されている。本実施形態では、第2貫通穴15もまた、コネクタ本体部1の周方向に等間隔で4つ形成されている。第2貫通穴15は、第1貫通穴13に対して、コネクタ本体部1の開口11側とは反対側(奥側)に形成されている。また、第2貫通穴15は、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が完全に挿入された際に、スプール部51が対向する位置に形成されている。
【0022】
本実施形態では、第2貫通穴15は第1貫通穴13に連通しているが、連通していなくてもよい。
【0023】
リテーナ3の斜視図である図5に示すように、リテーナ3は、リング部31と、脚部32と、爪部33と、を有している。図1に示すように、リング部31は、コネクタ本体部1の開口11側に配置されている。図5に示すように、リング部31は、開口11に連通する孔部31aを有している。
【0024】
脚部32は、リング部31から、コネクタ本体部1の開口11側とは反対側(奥側)に延びている。本実施形態では、脚部32は、リング部31の周方向に等間隔で4つ設けられている。
【0025】
本実施形態において、脚部32は、平坦な板状である。即ち、脚部32は、パイプ50の周方向(リング部31の周方向)に湾曲していない。そのため、リング部31と脚部32との接続箇所を支点として、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を好適に反らせることができる。
【0026】
また、脚部32の中央部が、脚部32の両端部よりも細くされている。本実施形態では、パイプ50の周方向における脚部32の幅が、脚部32の端部から中央部に向かって漸減されている。そのため、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32の全体を容易に撓らせることができる。
【0027】
爪部33は、脚部32のリング部31とは反対側の端部から、コネクタ本体部1の内部に向かって延びている。つまり、爪部33は、リング部31の周方向に等間隔で4つ設けられている。なお、脚部32および爪部33の数には、4つだけでなく、1つや2つや3つなども含まれる。図2に示すように、爪部33は、コネクタ本体部1の側部に形成された第1貫通穴13を貫通している。
【0028】
図2に示すように、爪部33の先端部は、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が完全に挿入された際に、コネクタ本体部1の開口11側からスプール部51に当接する。
【0029】
図5に示すように、爪部33には、屈曲部33aが設けられている。この屈曲部33aは、コネクタ本体部1の開口11側に凸となっている。屈曲部33aは、コネクタ本体部1の開口11側に折り曲げられた後に、コネクタ本体部1の開口11側とは反対側(奥側)に折り返されたような形に形成されている。
【0030】
本実施形態では、屈曲部33aは、爪部33の全長にわたって設けられている。つまり、屈曲部33aは、脚部32のリング部31とは反対側の端部から、コネクタ本体部1の開口11側に折り曲げられた後に、爪部33の先端部を含む部分が、コネクタ本体部1の奥側に折り返されたような形に形成されている。よって、脚部32と爪部33との接続箇所から爪部33の先端部にかけてのすべてが、屈曲部33aとなっている。
【0031】
また、屈曲部33aにおいて、その頂点から脚部32の端部にかけての部分と、その頂点から爪部33の先端部にかけての部分とが、それぞれ直線状であり、これら2つの部分のなす角度は、100度以下、好ましくは90度以下である。本実施形態では、これら2つの部分のなす角度は、90度である。これにより、爪部33の変形を抑制し、パイプ50を保持する力を高めることができる。
【0032】
図2に示すように、屈曲部33aの頂点は、内部空間12の側面よりもコネクタ本体部1の内部側に位置している。
【0033】
図1に示すように、パイプ50の周方向において、第1貫通穴13の幅は、爪部33の幅よりも広くされている。これにより、爪部33は、第1貫通穴13の内部において、パイプ50の周方向に移動(回転)可能になっている。
【0034】
ここで、上述したように、コネクタ本体部1の外周面には、凸部14が設けられている。パイプ50の周方向に爪部33が移動(回転)した際に、この凸部14に脚部32が乗り上げる。
【0035】
図2に示すように、コネクタ本体部1の内部の側面であって、パイプ50の挿入方向における内部空間12よりも奥側の側面(雄継手部2付近の側面)の一部には、凸部16が設けられている。この凸部16は、パイプ50の凹部52に対応している。よって、凹部52が凸部16に対向するようにして、パイプ50をコネクタ本体部1の内部に挿入しなければ、コネクタ本体部1の奥までパイプ50を完全に挿入することができず、その結果、リテーナ3でパイプ50を固定することもできない。
【0036】
また、図1に示すように、コネクタ100は、チェッカー4を有している。チェッカー4は、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が完全に挿入されたか否かをチェックするものである。チェッカー4の斜視図である図6に示すように、チェッカー4は、嵌合部41と、引張部42と、接続部43と、を有している。チェッカー4の材質は、例えば、樹脂である。
【0037】
嵌合部41は、コネクタ本体部1の外形に沿った半環状であり、コネクタ本体部1の外周に嵌められる。嵌合部41は、その内側に突出した第1突起部44を両端部に有している。この第1突起部44は、それぞれ第2貫通穴15(図4参照)に嵌め込まれる。コネクタ本体部1の開口11側において、第1突起部44には、テーパがそれぞれ形成されている。このテーパにより、コネクタ本体部1の開口11側から奥側に向かってスプール部51が移動しやすくなる。
【0038】
第1突起部44の先端同士の距離は、スプール部51の外径よりも短い。そのため、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が完全に挿入されると、スプール部51によって、第1突起部44の先端同士の距離が広げられることで、嵌合部41が弾性変形する。
【0039】
嵌合部41の中央部には、コネクタ本体部1の奥側に突出した第2突起部45が設けられている。第2突起部45を奥側にして、コネクタ本体部1の外周に嵌合部41が嵌められた際に、第2突起部45は、コネクタ本体部1の外周に当接する。一方、第2突起部45を開口11側にして、コネクタ本体部1の外周に嵌合部41が嵌められようとした際に、第2突起部45は、リテーナ3の爪部33と干渉し、コネクタ本体部1の外周に嵌合部41が嵌るのを阻害する。よって、第2突起部45を奥側にした正しい向きでしか、コネクタ本体部1の外周に嵌合部41を嵌めることができない。
【0040】
引張部42は、リング状であり、作業者の指を掛けることが可能である。引張部42と嵌合部41とは、接続部43で接続されている。コネクタ本体部1の奥までパイプ50が完全に挿入されると、嵌合部41が弾性変形するので、引張部42を指で引っ張ることで、コネクタ本体部1からチェッカー4を容易に取り外すことができる。
【0041】
(コネクタの組立方法)
次に、コネクタ100の組立方法について説明する。
【0042】
まず、図2に示すように、2個のOリング5および2個のバックアップリング6を、開口11からコネクタ本体部1の内部へ挿入する。なお、Oリング5およびバックアップリング6の個数は、2個に限定されない。
【0043】
次に、コネクタ本体部1の開口11側から、コネクタ本体部1の外周にリテーナ3を取り付ける。具体的には、コネクタ本体部1の外周面に当接させた爪部33を第1貫通穴13まで移動させて第1貫通穴13に嵌める。
【0044】
ここで、パイプ50の周方向に脚部32が湾曲している場合、リング部31と脚部32との接続箇所を支点として、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を反らせるのは容易ではない。これに対して、脚部32が平坦な板状の場合、リング部31と脚部32との接続箇所を支点として、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を好適に反らせることができる。よって、コネクタ本体部1にリテーナ3を取り付ける際に、コネクタ本体部1の外周面に当接させた爪部33を第1貫通穴13まで移動させて第1貫通穴13に嵌める作業を、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を反らせながら行うことができる。これにより、コネクタ100の組み立てを容易に行うことができる。
【0045】
また、脚部32の中央部が、脚部32の両端部よりも細くされている。これにより、コネクタ本体部1から離れる方向に、脚部32の全体を容易に撓らせることができる。よって、コネクタ本体部1にリテーナ3を取り付ける際に、コネクタ本体部1の外周面に当接させた爪部33を第1貫通穴13まで移動させて第1貫通穴13に嵌める作業を、リング部31と脚部32との接続箇所を支点に脚部32を反らせながら、且つ、脚部32の全体を撓らせながら行うことができる。これにより、コネクタ100の組み立てをさらに容易に行うことができる。
【0046】
次に、コネクタ本体部1にチェッカー4を取り付ける。具体的には、第2突起部45を奥側にして、2つの第1突起部44を、それぞれ第2貫通穴15に嵌め込む。
【0047】
(コネクタの各部品の動き)
次に、コネクタ100の各部品の動きについて説明する。
【0048】
(パイプ挿入時)
図1に示すように、コネクタ本体部1の内部にパイプ50が挿入される。このとき、図2に示すように、凹部52が凸部16に対向するようにして、パイプ50がコネクタ本体部1の内部に挿入される。そのため、パイプ50に対するコネクタ本体部1の周方向の向きが決まる。
【0049】
コネクタ本体部1の内部にパイプ50が挿入されていくと、爪部33がスプール部51に押されて、コネクタ本体部1の外周面側に向かって弾性変形する。コネクタ本体部1の奥にパイプ50が完全に挿入されて、スプール部51が爪部33を通過すると、爪部33が元の位置に戻る。これにより、コネクタ本体部1にパイプ50が固定される。
【0050】
凹部52を凸部16に対向させると、パイプ50に対してコネクタ本体部1を回転させることができなくなる。これにより、パイプ50に対してコネクタ本体部1が回転するのを防止することができる。その結果、雄継手部2に接続されたホースの位置が、コネクタ本体部1の回転に伴って変化するのを防止することができるので、ホースがエンジンなどに接触するのを防止することができる。
【0051】
コネクタ本体部1の奥までパイプ50が完全に挿入されると、チェッカー4の嵌合部41が弾性変形する。この状態で、チェッカー4の引張部42を作業者の指で引っ張ることで、コネクタ本体部1からチェッカー4を容易に取り外すことができる。一方、コネクタ本体部1の奥までパイプ50が完全に挿入されていなければ、嵌合部41が十分に弾性変形せず、コネクタ本体部1からチェッカー4を容易に取り外すことができない。
【0052】
(パイプ挿入後)
コネクタ本体部1にパイプ50が固定された後に、カーエアコンの冷媒などが、パイプ50の内部を流通する。これにより、パイプ50の内部に圧力がかかり、コネクタ本体部1の内部から抜け出る方向にパイプ50が動く。すると、図2に示すように、パイプ50のスプール部51によって、リテーナ3の爪部33が、コネクタ本体部1の開口11側に押され、内部空間12の側面とパイプ50の外周面との間に屈曲部33aが食い込む。その結果、コネクタ本体部1の外周面側に爪部33が浮き上がるのが抑制される。また、矢印で示すように、リテーナ3の脚部32が、コネクタ本体部1の開口11側とは反対側に引っ張られ、リテーナ3のリング部31が、コネクタ本体部1に当接する。リング部31が、コネクタ本体部1に当接した後は、屈曲部33aの食い込み量が増すにつれて、脚部32にかかる引張荷重が大きくなる。脚部32の引張強度によって、コネクタ本体部1の内部から抜け出る方向へのパイプ50の動きが抑えられる。
【0053】
特許文献1に開示されているような従来の係止爪では、係止爪の曲げ強度で、パイプ50の動きを抑えていた。しかし、カーエアコンなど、パイプ50の内部にかかる圧力が高い用途では、パイプ50の動きを十分に抑えることができず、係止爪が折れ曲がり、コネクタ本体部1の外周面側に係止爪が浮き上がることで、コネクタ本体部1の内部からパイプ50が抜け出る虞があった。
【0054】
ここで、一般的に、樹脂や金属の引張強度は、曲げ強度よりも高い。そこで、脚部32の引張強度で、パイプ50の動きを抑えることで、カーエアコンなど、パイプ50の内部にかかる圧力が高い用途においても、パイプ50の動きを好適に抑えることができる。これにより、コネクタ本体部1の内部からパイプ50が抜け出るのを抑制することができる。
【0055】
ここで、屈曲部33aは、爪部33の全長にわたって設けられている。そのため、例えば、爪部33の中央部のみに屈曲部33aを設けるのに比べて、折れ曲がり箇所の数を少なくすることができる。よって、折れ曲がり箇所にストレスがかかって、爪部33が折れてしまうのを抑制することができる。
【0056】
(パイプ抜き取り時)
コネクタ本体部1の内部からパイプ50を抜き取る際には、図1に矢印で示すように、パイプ50の周方向に爪部33が移動(回転)される。すると、コネクタ本体部1の外周面に設けられた凸部14に脚部32が乗り上げる。これにより、コネクタ本体部1の外周面側に爪部33が浮き上がる。このとき、パイプ50の径方向において、凸部14の高さは、スプール部51の高さよりも高いので、爪部33の先端部がスプール部51から離れる。よって、パイプ50の周方向に爪部33を移動(回転)させて、凸部14に脚部32を乗り上げさせることで、コネクタ本体部1の内部からパイプ50を抜き出すことができる。
【0057】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るコネクタ100によると、リテーナ3の爪部33に設けられた屈曲部33aの頂点は、コネクタ本体部1の内部空間12の側面よりもコネクタ本体部1の内部側に位置している。よって、パイプ50の内部に圧力がかかり、コネクタ本体部1の内部から抜け出る方向にパイプ50が動くと、パイプ50のスプール部51によって爪部33がコネクタ本体部1の開口11側に押され、内部空間12の側面とパイプ50の外周面との間に屈曲部33aが食い込む。その結果、コネクタ本体部1の外周面側に爪部33が浮き上がるのが抑制される。また、リテーナ3の脚部32が、コネクタ本体部1の開口11側とは反対側に引っ張られ、リテーナ3のリング部31が、コネクタ本体部1に当接する。リング部31が、コネクタ本体部1に当接した後は、屈曲部33aの食い込み量が増すにつれて、脚部32にかかる引張荷重が大きくなる。脚部32の引張強度によって、コネクタ本体部1の内部から抜け出る方向へのパイプ50の動きが抑えられる。従来の係止爪では、係止爪の曲げ強度で、パイプ50の動きを抑えていた。しかし、カーエアコンなど、パイプ50の内部にかかる圧力が高い用途では、パイプ50の動きを十分に抑えることができず、係止爪が折れ曲がり、コネクタ本体部1の外周面側に係止爪が浮き上がることで、コネクタ本体部1の内部からパイプ50が抜け出る虞があった。ここで、一般的に、樹脂や金属の引張強度は、曲げ強度よりも高い。そこで、脚部32の引張強度で、パイプ50の動きを抑えることで、カーエアコンなど、パイプ50の内部にかかる圧力が高い用途においても、パイプ50の動きを好適に抑えることができる。これにより、コネクタ本体部1の内部からパイプ50が抜け出るのを抑制することができる。
【0058】
また、屈曲部33aは、爪部33の全長にわたって設けられている。そのため、例えば、爪部33の中央部のみに屈曲部33aを設けるのに比べて、折れ曲がり箇所の数を少なくすることができる。よって、折れ曲がり箇所にストレスがかかって、爪部33が折れてしまうのを抑制することができる。
【0059】
また、屈曲部33aにおいて、その頂点から脚部32の端部にかけての部分と、その頂点から爪部33の先端部にかけての部分とが、それぞれ直線状である。これにより、爪部33の変形を抑制し、パイプ50を保持する力を高めることができる。
【0060】
また、パイプ50の周方向に爪部33が移動(回転)した際に、コネクタ本体部1の外周面に設けられた凸部14に脚部32が乗り上げる。これにより、コネクタ本体部1の外周面側に爪部33が浮き上がる。このとき、パイプ50の径方向において、凸部14の高さは、スプール部51の高さよりも高いので、爪部33の先端部がスプール部51から離れる。よって、パイプ50の周方向に爪部33を移動(回転)させて、凸部14に脚部32を乗り上げさせることで、コネクタ本体部1の内部からパイプ50を抜き出すことができる。
【0061】
また、脚部32が、平坦な板状である。パイプ50の周方向に脚部32が湾曲している場合、リング部31と脚部32との接続箇所を支点として、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を反らせるのは容易ではない。これに対して、脚部32が平坦な板状の場合、リング部31と脚部32との接続箇所を支点として、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を好適に反らせることができる。よって、コネクタ本体部1にリテーナ3を取り付ける際に、コネクタ本体部1の外周面に当接させた爪部33を第1貫通穴13まで移動させて第1貫通穴13に嵌める作業を、コネクタ本体部1から離れる方向に脚部32を反らせながら行うことができる。これにより、コネクタ100の組み立てを容易に行うことができる。
【0062】
また、脚部32の中央部が、脚部32の両端部よりも細くされている。これにより、コネクタ本体部1から離れる方向に、脚部32の全体を容易に撓らせることができる。よって、コネクタ本体部1にリテーナ3を取り付ける際に、コネクタ本体部1の外周面に当接させた爪部33を第1貫通穴13まで移動させて第1貫通穴13に嵌める作業を、リング部31と脚部32との接続箇所を支点に脚部32を反らせながら、且つ、脚部32の全体を撓らせながら行うことができる。これにより、コネクタ100の組み立てをさらに容易に行うことができる。
【0063】
また、コネクタ本体部1の内部の側面であって、パイプ50の挿入方向における内部空間12よりも奥側の側面(雄継手部2付近の側面)の一部には、パイプ50の凹部52に対応する凸部16が設けられている。よって、凹部52が凸部16に対向するようにして、パイプ50をコネクタ本体部1の内部に挿入しなければ、コネクタ本体部1の奥までパイプ50を完全に挿入することができない。これにより、パイプ50に対するコネクタ本体部1の周方向の向きが決まる。そして、凹部52を凸部16に対向させると、パイプ50に対してコネクタ本体部1を回転させることができなくなる。これにより、パイプ50に対してコネクタ本体部1が回転するのを防止することができる。その結果、雄継手部2に接続されたホースの位置が、コネクタ本体部1の回転に伴って変化するのを防止することができるので、ホースがエンジンなどに接触するのを防止することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に、本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0065】
例えば、コネクタ100の雄継手部2の部分については、この部分が、フランジ継手などにされていてもよい。
【0066】
また、コネクタ100の用途は、カーエアコン用配管などの接続に限られず、燃料用配管の接続や、圧縮空気が流れる配管の接続に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 コネクタ本体部
2 雄継手部
3 リテーナ
4 チェッカー
5 Oリング
6 バックアップリング
11 開口
12 内部空間
13 第1貫通穴(貫通穴)
14 凸部
15 第2貫通穴
16 凸部
21 流路
31 リング部
31a 孔部
32 脚部
33 爪部
33a 屈曲部
41 嵌合部
42 引張部
43 接続部
44 第1突起部
45 第2突起部
50 パイプ
51 スプール部
52 凹部
100 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6