(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020215
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物、封止材、及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220125BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220125BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220125BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
H01L23/30 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123588
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 さわ子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】ミスン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジ・カン
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP12W
4J002CP14W
4J002DA117
4J002DD077
4J002DJ016
4J002EC038
4J002EZ007
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD208
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA04
4M109EA10
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB13
4M109EB17
4M109EB18
4M109EC03
4M109EC11
4M109GA01
(57)【要約】
【課題】低温であっても実用上有効な硬化性を示し、硬化時の形状変化や収縮率が低く、かつ短時間で硬化して、透明で高硬度な硬化物を形成できる硬化性シリコーン組成物を提供すること。
【解決手段】(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化反応用触媒、及び(D)硬化反応抑制剤を含む、硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒、及び
(D)硬化反応抑制剤
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(C)ヒドロシリル化反応用触媒が白金系触媒であり、硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、白金原子の量が10ppm以下の量になるように含まれる、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(D)硬化反応抑制剤の含有量が、硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、200ppm以上である、請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン及び/又はRSiO4/2で表されるシロキサン単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
無機充填剤として、シリカを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を含む、封止材。
【請求項8】
請求項7に記載の封止材を備える、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シリコーン組成物に関し、より具体的には、光半導体の封止材に好適に用いられる硬化性シリコーン組成物に関する。また、本発明は、こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる封止材により封止された光半導体装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、援水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。特に、その硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料用に適している。
【0003】
近年、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置に用いられるシリコーン封止材は、より高い光取り出し効率を達成するために、高い透明性が要求されている。また、実装工程で高い生産効率を実現するために、高い寸法安定性も要求されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、(A)ジフェニルシロキサン単位が総シロキサン単位の5モル%以下であり、分子中の全ケイ素原子結合有機基の少なくとも20モル%がフェニル基であり、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するメチルフェニルアルケニルポリシロキサン、(B)ジフェニルシロキサン単位が総シロキサン単位の5モル%以下であり、分子中の全ケイ素原子結合有機基の少なくとも20モル%がフェニル基であり、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサンおよび(C)ヒドロシリル化反応触媒からなり、本組成物中のジフェニルシロキサン単位は総シロキサン単位の5モル%以下であることを特徴とする、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、(A)一般式:R1
3SiO(R1
2SiO)mSiR1
3(式中、各R1は独立に、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR1がアルケニル基であり、全R1の少なくとも30モル%がアリール基であり、mは5~1,000の整数である。)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン及び平均単位式:(R1SiO3/2)g(R1
2SiO2/2)h(R1
3SiO1/2)i(SiO4/2)j(XO1/2)k{式中、R1は前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR1がアルケニル基であり、全R1の少なくとも30モル%がアリール基であり、gは正数であり、hは0又は正数であり、iは0又は正数であり、jは0又は正数であり、kは0又は正数であり、かつ、h/gは0~10の数であり、i/gは0~5の数であり、j/(g+h+i+j)は0~0.3の数であり、k/(g+h+i+j)は0~0.4の数である。}で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサンからなるオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン、(C)平均単位式:(R2SiO3/2)b(R2
2SiO2/2)c(R2
3SiO1/2)d(SiO4/2)e(XO1/2)f{式中、各R2は独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はエポキシ含有有機基であり、ただし、一分子中、全R2の少なくとも5モル%がアルケニル基であり、少なくとも15モル%がアリール基であり、少なくとも10モル%がエポキシ含有有機基であり、Xは水素原子又はアルキル基であり、bは正数であり、cは0又は正数であり、dは0又は正数であり、eは0又は正数であり、fは0又は正数であり、かつ、c/bは0~10の数であり、d/bは0~5の数であり、e/(b+c+d+e)は0~0.3の数であり、f/(b+c+d+e)は0~0.02の数である。}で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、及び(D)ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し,全シロキサン単位の70モル%以上がメチルフェニルシロキサン単位であるジオルガノポリシロキサン(ただし、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサンおよび1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサンの含有量の合計が5重量%以下である)、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基のうち15モル%以上がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中の総アルケニル基のモル数に対して、(B)成分のケイ素原子結合水素原子のモル数が10~500%となる量}、および(C)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物を硬化させるのに十分な量)から少なくともなることを特徴とする、硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、(A)一分子中、少なくとも3個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも30モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン、(B)分子鎖両末端がジオルガノハイドロジェンシロキシ基で封鎖され、アリール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5~2モルとなる量}、(C)一分子中、少なくとも3個のジオルガノハイドロジェンシロキシ基を有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも15モル%はアリール基である分岐鎖状オルガノポリシロキサン{前記(B)成分と本成分に含まれるジオルガノハイドロジェンシロキシ基の合計量に対して、本成分中のジオルガノハイドロジェンシロキシ基が1~20モル%となる量}、及び(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)から少なくともなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、A)平均単位式:(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R2SiO3/2)c(R3SiO3/2)d(式中、R1は同じかまたは異なる、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、もしくは炭素数7~20のアラルキル基、但し、一分子中、少なくとも2個のR1は前記アルケニル基であり、R2は炭素数6~20のアリール基または炭素数7~20のアラルキル基であり、R3は炭素数1~12のアルキル基であり、a、b、c、およびdは、それぞれ、0.01≦a≦0.5、0≦b≦0.7、0.01≦c<0.7、0.1≦d<0.9、かつa+b+c+d=1を満たす数である。)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサン{(A)成分100質量部に対して0.1~150質量部}、(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中と(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~5モルとなる量}、および(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)を含む硬化性シリコーン組成物が記載されている。
【0009】
また、特許文献6には、(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有し、式:R1
2SiO2/2(式中、R1はアリール基である。)で表されるシロキサン単位を含有するジオルガノポリシロキサン、(B)式:SiO4/2で表されるシロキサン単位、式:R2
2R3SiO1/2(式中、R2は脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R3はアルケニル基である。)で表されるシロキサン単位、および式:R2
3SiO1/2(式中、R2は前記と同じである。)で表されるシロキサン単位からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が異なる少なくとも2種のレジン状オルガノポリシロキサン{(A)成分100質量部に対して10~100質量部}、(C)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン{本成分中のケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中と(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して0.1~10モルとなる量}、および(D)触媒量のヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性シリコーン組成物が記載されている。
【0010】
しかしながら、従来の熱硬化性シリコーン組成物を用いる封止材は、硬化するのに高温で長時間処理する必要があるため、硬化の際に形状が収縮し、その結果、フレシキブル基板に反りが発生したり、半導体素子の実装工程においてパターニングの正確性が低下したり、または、熱により搭載される電子素子等が損傷を被る場合もあった。さらには従来の常温・低温硬化可能なシリコーンでは、形成される硬化物の透明性や接着性が低く、デラミネーションなど長期信頼性の面でも封止材には適さない場合があるという問題があった。また、また、従来の分子鎖にアリール基を有するオルガノポリシロキサンを含む硬化性シリコーン組成物を封止材に用いた場合、アリール基を有するオルガノポリシロキサンは温度に対して影響を受けやすいので、高温で粘度が大幅に低下し、硬化する際に容易く形状が変化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2012-507582号公報
【特許文献2】特開2015-78375号公報
【特許文献3】特開2010-84118号公報
【特許文献4】特開2010-1336号公報
【特許文献5】特表2016-534162号公報
【特許文献6】特表2016-529331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、低温であっても実用上有効な硬化性を示し、硬化時の形状変化や収縮率が低く、かつ短時間で硬化可能で、透明で高硬度な硬化物を形成できるシリコーン組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性シリコーン組成物を含む封止材を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、本発明の封止材で封止された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく、本件発明者は、鋭意検討した結果、驚くべきことに、(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化反応用触媒、及び(D)硬化反応抑制剤を含む硬化性シリコーン組成物により、低温でも効率的に硬化可能で、硬化時の収縮率が低く、かつ短時間で硬化可能であり、さらに、透明に優れ、高硬度な硬化物を形成できることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
本発明の一実施形態において、(C)ヒドロシリル化反応用触媒が白金系触媒であり、硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、白金原子の量が10ppm以下の量になるように含まれる。
【0016】
本発明の一実施形態において、(D)硬化反応抑制剤の含有量が、硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、200ppm以上である。
【0017】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン及び/又はRSiO4/2で表されるシロキサン単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを更に含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物は、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを更に含んでもよい。
【0019】
本発明はまた、本発明に係る硬化性シリコーン組成物からなる封止材にも関する。
【0020】
本発明はまた、本発明に係る封止材を備える光半導体装置にも関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物によれば、低温であっても実用上有効な硬化性を示し、硬化時の形状変化や収縮率が低く、かつ短時間で硬化可能であり、さらに、透明で高硬度な硬化物を提供できる。
【0022】
また、本発明の封止材によれば、本発明の硬化性シリコーン組成物から形成されているので、低温かつ短時間で半導体素子を封止することができる。そのため、高温、長時間での加熱により封止形状が硬化時の粘度低下により変形したり、半導体素子が熱により損傷を受けたりすることを防ぐことができる。さらに、本発明の封止材によれば、透明で高硬度な硬化物により、半導体素子を封止することができる。そのため、信頼性及び透明性に優れた半導体パッケージを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明は、低温で実用的に硬化可能な硬化性シリコーン組成物に関し、
(A)一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応用触媒、及び
(D)硬化反応抑制剤
を含む。
【0025】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、低温であっても実用上有効に硬化させることができる。硬化温度としては、特に限定されないが、例えば、120℃以下であり、好ましくは100℃以下である。また、硬化温度は、通常、常温以上であり得る。硬化時間としては、特に限定されないが、実用上問題ない時間であり、例えば、60℃での硬化の場合は、60分以内、好ましくは50分以内であり、また、例えば、100℃での硬化の場合は、好ましくは45分以内であり、より好ましくは30分以内である。
【0026】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃で1000mPa・s以上あり、より好ましくは2000mPa・s以上、さらに好ましくは3000mPa・s以上であり、優先的には3500mPa・s以上であり、特に好ましくは4000mPa・s以上である。また、本発明に係る硬化性シリコーン組成物の粘度は、例えば、25℃で20,000mPa・s以下であり、好ましくは18,000mPa・s以下であり、より好ましくは15,000mPa・s以下であり、さらに好ましくは12,000mPa・s以下であり得る。なお、本明細書において、粘度は、25℃においてJIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。
【0027】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、硬化して高硬度の硬化物を形成できる。好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、25℃におけるタイプDデュロメータ硬さが20以上、あるいは30以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0028】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、硬化して良好な透明性を有する硬化物を形成できる。具体的には、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物は、波長400nm~波長700nmにおける光透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、硬化性シリコーン組成物の硬化物の光透過率は、例えば、光路長1mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0029】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0030】
(A)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基と、少なくとも1つの(SiO4/2)単位を含む、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(A)成分を含んでもよいし、2種類以上の(A)成分を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本明細書において、レジン状とは、分子構造中に分岐状または三次元網状構造を有することを意味する。(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのRSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含み、SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0032】
(A)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0033】
(A)成分に含まれるアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(A)成分のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基から選択される。
【0034】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、
(A-1)平均単位式(I):(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
(式(I)中、R1は同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR1はアルケニル基であり、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.9、0<d<0.8、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0である)で表され得る。
【0035】
上記式(I)中のR1のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R1は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。R1は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、または炭素原子数2~6のアルケニル基、特にビニル基から選択される。
【0036】
上記式(I)において、aは、好ましくは0.1≦a≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.3≦a≦0.6の範囲であり、さらに好ましくは0.5≦a≦0.7の範囲である。上記式(I)において、bは、好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、特に0≦b≦0.1の範囲である。上記式(I)において、cは、好ましくは0≦c≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦c≦0.3の範囲であり、特に0≦c≦0.1の範囲である。上記式(I)において、dは、好ましくは0.1≦d≦0.7の範囲であり、より好ましくは0.2≦d≦0.6の範囲であり、特に0.3≦d≦0.5の範囲である。上記式(I)において、eは、好ましくは0≦e≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、特に0≦e≦0.05の範囲である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子末端にアルケニル基を含有する。(A)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)にアルケニル基を有し、分子鎖側鎖(すなわち、SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位))にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態において、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、好ましくは、M単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)とからなり、D単位及びT単位を含まない。そのため、本発明の好ましい一実施形態において、(A)成分は、
(A-2)平均単位式(II):(R1
3SiO1/2)a(SiO4/2)d(XO1/2)e
(式中、R1は同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR1はアルケニル基であり、0≦a<1、0<d<0.8、及び0≦e<0.4であり、a+d=1.0である)で表され得る。
【0039】
上記式(II)中のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基、a、d、及びeについては、上記式(I)について説明した通りであり、同じ記載が適用される。
【0040】
(A)成分のケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の1モル%以上、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の30モル%以下、好ましくは20モル%、より好ましくは15モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または以下の滴定法によって求めることができる。
【0041】
滴定法により各成分中のアルケニル基量を定量する方法について説明する。オルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずオルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH2=CH- + 2ICl → CH2I-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I2 + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基量を定量することができる。
【0042】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃で50mPa~1000mPaの範囲内である。本明細書において、オルガノポリシロキサン成分の粘度は、25℃において、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。
【0043】
(A)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。また、好ましくは、(A)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。
【0044】
(B)レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分は、ヒドロシリル化硬化反応により、硬化性シリコーン組成物の架橋剤として作用するものであり、一分子当たり少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、レジン状の構造を有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(B)成分を含んでもよいし、2種類以上の(B)成分を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(B)成分のレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのQ単位を含み、T単位を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0046】
(B)成分の水素原子以外にケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(B)成分の水素原子以外にケイ素原子に結合する基としては、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基から選択される。
【0047】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、
(B-1)平均単位式(III):(R2
3SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)b(R2SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
(式中、R2は水素原子または同じかもしくは異なるハロゲン置換または非置換のアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、ただし、少なくとも2個のR2は水素原子であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、及びeは、0≦a<1.0、0≦b<1.0、0≦c<0.9、0<d<0.8、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0である。)で表されるレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり得る。
【0048】
上記式(III)中のR2のハロゲン置換または非置換のアルケニル基以外の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R2は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。R2は、好ましくは、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基から選択される。
【0049】
(B)成分の上記式(III)においてXは水素原子またはアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、及びプロピル基が例示される。
【0050】
上記式(III)において、aは、好ましくは、0.2≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.3≦a≦0.7の範囲であり、さらに好ましくは0.4≦a≦0.6の範囲である。上記式(III)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、特に0≦b≦0.1の範囲である。上記式(III)において、cは、好ましくは、0≦c≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦c≦0.3の範囲であり、特に0≦c≦0.1の範囲である。上記式(III)において、dは、好ましくは0.2≦d≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.3≦d≦0.7の範囲であり、特に0.4≦d≦0.6の範囲である。上記(III)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0051】
(B)成分は、好ましくは、ケイ素原子結合水素原子を分子末端に含有しており、また、分子側鎖にケイ素原子結合水素原子が含有してもしなくてもよいが、好ましくは、分子側鎖にケイ素原子結合水素原子を有しない。好ましくは、(B)成分は、分子末端にのみケイ素原子結合水素原子を含有する。すなわち、本発明の一実施形態において、(B)成分は、M単位にケイ素原子結合水素原子を有し、好ましくはM単位のみにケイ素原子結合水素原子を有する。また、別の実施形態では、(B)成分は、T単位及びD単位を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態において、(B)成分は、M単位及びQ単位のみからなるレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B-2)を含み、このレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B-2)は、以下の平均単位式(IV)で表され得る。
平均単位式(IV):(R2
3SiO1/2)a(SiO4/2)d(XO1/2)e
式中、R2、X、a、d、及びeは、式(III)で説明したものと同じである。
【0053】
(B)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、例えば、25℃で1mPa~500mPaの範囲内である。
【0054】
(B)成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。また、好ましくは、(B)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0055】
<他のオルガノポリシロキサン成分>
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、上記(A)及び(B)成分以外に、以下の他のオルガノポリシロキサン成分を含むことができる。
【0056】
(直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、上記(A)及び(B)成分以外に、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよい。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種以上の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0057】
直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0058】
好ましい本発明の実施形態において、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、少なくとも1個のアリール基を有する。アリール基としては、無置換でも置換されていてもよく、好ましくは炭素数6~20のアリール基であり、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、及びこれらのアリール基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。特に好ましくは、アリール基は置換又は無置換のフェニル基であり、より好ましくは無置換のフェニル基である。
【0059】
直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基及びアリール基以外にケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基及びアリール基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。
【0060】
こうした直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、以下の平均構造式(V):
平均構造式(V):R3
3SiO(R3
2SiO)mSiR3
3
(式(V)中、R3は同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR3はアルケニル基であり、mは4~1,000の整数である。)で表され得る。
【0061】
R3のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。
【0062】
上記式(V)中のmは、好ましくは10以上、より好ましくは40以上、特に好ましくは70以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは200以下であり、特に好ましくは120以下である。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、追加の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端にアルケニル基を含有する、分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサンであり得る。追加の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖側鎖(すなわち、SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位))にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、追加の直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、分子鎖側鎖にケイ素原子結合アリール基を含有する。追加の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端(すなわち、SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位))にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0065】
直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.2モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の30モル%以下、好ましくは20モル%、より好ましくは10モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または上記滴定法によって求めることができる。
【0066】
直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基全体に占めるアリール基の量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の10モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の70モル%以下、好ましくは60モル%、より好ましくは50モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0067】
直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの含有量は、特に限定されないが、好ましくは、本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれる全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。また、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0068】
(Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、上記(A)及び(B)成分以外に、Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよい。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類のQ単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種以上のQ単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0069】
Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり得る。また、Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中に少なくとも1個のアリール基を含んでもよいし、含まなくてもよい。好ましい一実施形態において、本発明に含まれ得るレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基と、少なくとも1個のアリール基を含有する。
【0070】
Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのT単位を含む。
【0071】
Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基としては、上記直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基と同じものが例示できる。
【0072】
こうしたレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、以下の平均単位式(VI)
平均単位式(VI):(R4
3SiO1/2)a(R4
2SiO2/2)b(R4SiO3/2)c(XO1/2)e
(式(VI)中、R4は同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR4はアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a<1、0≦b<1、0<c<0.9、及び0≦e<0.4であり、a+b+c=1.0である)で表され得る。
【0073】
上記式(VI)中のR4のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R4は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。R4は、好ましくは、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基、または炭素原子数2~6のアルケニル基、特にビニル基から選択される。
【0074】
上記式(VI)においてXは水素原子またはアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、及びプロピル基が例示される。
【0075】
上記式(VI)において、aは、好ましくは0.1≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.15≦a≦0.6の範囲であり、さらに好ましくは0.2≦a≦0.5の範囲である。上記式(VI)において、bは、好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.3の範囲であり、特に0≦b≦0.1の範囲である。上記式(VI)において、cは、好ましくは0.3≦c≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.45≦c≦0.85の範囲であり、特に0.6≦c≦0.8の範囲である。上記式(VI)において、eは、好ましくは0≦e≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、特に0≦e≦0.05の範囲である。
【0076】
Q単位を含まないアルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、分子末端にアルケニル基を含有する。好ましくは、Q単位を含まないアルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、M単位にアルケニル基を有し、D単位及び/又はT単位にはアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。また、Q単位を含まないアルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、D単位を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0077】
Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の1モル%以上、好ましくは2モル%以上、より好ましくは3モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の50モル%以下、好ましくは40モル%、より好ましくは35モル%以下であり得る。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または上記滴定法によって求めることができる。
【0078】
本発明の一実施形態において、Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンがアリール基を含む場合、ケイ素原子結合有機基全体に占めるアリール基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の3モル%以上、好ましくは7モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の60モル%以下、好ましくは50モル%、より好ましくは40モル%以下であり得る。なお、アリール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0079】
Q単位を含まないレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの含有量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、例えば、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下の量で含まれ得る。
【0080】
(直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、上記(A)及び(B)成分以外に、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよい。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでもよいし、2種以上の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0081】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有する。また、好ましくは、追加の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも1個のアリール基を含有する。
【0082】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれ得るアリール基としては、無置換でも置換されていてもよく、好ましくは炭素数6~20のアリール基であり、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、及びこれらのアリール基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。特に好ましくは、アリール基は置換又は無置換のフェニル基であり、より好ましくは無置換のフェニル基である。
【0083】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれ得る他のケイ素原子結合有機基としては、アルケニル基以外のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるケイ素原子に結合する有機基は、好ましくは、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基から選択される。
【0084】
本発明の一実施形態において、硬化性シリコーン組成物が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む場合、この直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは以下の平均構造式(VII)で表され得る。
平均構造式(VII):R5
3SiO(R5
2SiO)mSiR5
3
式中、R5は水素原子または同じかもしくは異なるハロゲン置換または非置換のアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のR5は水素原子であり、mは1~100の整数である。
【0085】
上記式(VII)中のR5のハロゲン置換または非置換のアルケニル基以外の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R5は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。R5は、好ましくは、水素原子、炭素数が6~20個のアリール基、特にフェニル基、炭素原子数1~6のアルキル基、特にメチル基から選択される。
【0086】
上記式(VII)中のmは、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下であり、特に好ましくは5以下である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を含有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、M単位にケイ素原子結合水素原子を有し、D単位にはケイ素原子結合水素原子を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0088】
追加の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、分子鎖側鎖にケイ素原子結合アリール基を含有する。直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端にアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0089】
本発明の一実施形態において、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンがアリール基を含む場合、ケイ素原子結合有機基全体に占めるアリール基の含有量は、特に限定されないが、例えば、ケイ素原子結合有機基の合計の10モル%以上、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、また、ケイ素原子結合有機基の合計の50モル%以下、好ましくは40モル%、より好ましくは30モル%以下であり得る。なお、アリール基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0090】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物の全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上で含まれ、また、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下の量で含まれ得る。
【0091】
(エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン)
さらに別の実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物は、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含んでもよく、このエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、平均単位式(VIII):(R6
3SiO1/2)a(R6
2SiO2/2)b(R6SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
(式中、R6は同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基又はエポキシ基含有有機基であり、但し、少なくとも1個のR6はエポキシ基含有有機基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である)で表され得る。
【0092】
上記(VIII)において、R6は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基、及びエポキシ基含有有機基から選択される。エポキシ基含有基としては、例えば、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-プロピル基等のエポキシシクロアルキルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは、3-グリシドキシプロピル基である。
【0093】
上記式(VIII)において、aは、好ましくは、0≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.05≦a≦0.6の範囲であり、特に0.1≦a≦0.4の範囲である。式(X)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.1≦b≦0.8の範囲であり、特に0.2≦b≦0.7の範囲である。式(X)において、cは、好ましくは、0≦c≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.1≦c≦0.85の範囲であり、特に0.2≦c≦0.8の範囲である。式(X)において、dは、好ましくは、0≦d≦0.7の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.5の範囲であり、さらに好ましくは0≦d≦0.2の範囲である。式(X)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0094】
好ましい実施形態において、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、R6にアルケニル基を含む。エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、より好ましくは2モル%以上であり、さらに好ましくは3モル%以上であり、また、例えば30モル%以下であり、好ましくは25モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
【0095】
好ましい実施形態において、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合有機基全体に占めるエポキシ基含有有機基の量は、特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上であり、例えば50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。なお、エポキシ基含有有機基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0096】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種以上のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを組み合わせて含んでもよい。
【0097】
エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物がエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含む場合、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上で含まれ、また、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下の量で含まれ得る。
【0098】
(環状オルガノポリシロキサン)
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、一実施形態において、環状オルガノシロキサンを含んでもよく、この直鎖状オルガノシロキサンは以下の単位式(IX)で表され得る。
単位式(IX):(R7
2SiO)n
式中、R7は各々独立に、ハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、nは25℃の粘度が1000mPa以下となる数である。なお、粘度は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。
【0099】
上記式(IX)において、R7のハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。R7は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。
【0100】
一実施形態において、環状オルガノポリシロキサンは、一分子当たり少なくとも2個のアルケニル基を含み得る。環状オルガノポリシロキサンがケイ素原子結合有機基にアルケニル基を含む場合、ケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、例えば、10モル%以上であり、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上である。また、追加の環状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合有機基全体に占めるアルケニル基の量は、例えば、80モル%以下であり、好ましくは70モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0101】
環状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物が環状オルガノポリシロキサンを含む場合、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上で含まれ、また、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で含まれ得る。
【0102】
本発明の硬化性シリコーン組成物において、オルガノポリシロキサン成分中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合水素原子の比率は、特に限定されないが、例えば、硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が0.3モル以上、好ましくは0.5モル以上、より好ましくは0.7モル以上となる量であり、また、例えば、硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、ケイ素原子結合水素原子が5モル以下、好ましくは4モル以下、より好ましくは3モル以下、さらに好ましくは2モル以下、特に好ましくは1.8モル以下となる量であり得る。
【0103】
(C)ヒドロシリル化反応用触媒
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化を促進するための触媒である。このような(C)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0104】
(C)成分の配合量は、触媒量であり、より具体的には、(C)成分として白金系触媒を用いた場合、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、白金原子の量が好ましくは0.01ppm以上であり、より好ましくは0.1ppm以上であり、さらに好ましくは1ppm以上であり、また、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、白金原子の量が好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは15ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下あり、特に好ましくは5ppm以下での量であり得る。
【0105】
(D)硬化反応抑制剤
(D)成分の硬化反応抑制剤は、硬化性シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分である。こうした硬化反応抑制剤としては、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。好ましくは、(D)成分は、アルキンアルコール時から選択され、特に好ましくは1-エチニル-1-シクロヘキサノールである。
【0106】
(D)硬化反応抑制剤の含有量は限定されないが、本発明の硬化性シリコーン組成物の総質量に対して、100ppm以上が好ましく、より好ましくは200ppm以上であり、さらに好ましくは300ppm以上であり、特に好ましくは400ppm以上の量であり、また、本組成物の総質量に対して、好ましくは50,000ppm以下であり、より好ましくは30,000ppm以下であり、さらに好ましくは20,000ppm以下の量であることが好ましい。
【0107】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、粉砕石英、シリカ、酸化チタン、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、ケイ藻土等の無機充填材、こうした無機充填材の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填材、ケイ素原子結合水素原子及びケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、接着性付与剤、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、カーボンブラック等の顔料及び染料などの着色成分、溶剤等が挙げられる。
【0108】
無機充填材のうち、シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。また、シリカは、オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物若しくはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等で表面疎水化処理されていてもよい。
【0109】
無機充填材は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上の量で本発明の硬化性シリコーン組成物中に含まれることができ、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の量で本発明の硬化性シリコーン組成物中に含まれ得る。
【0110】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、三本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0111】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、低温であっても実用上有効な硬化性を示し、硬化時の形状変化や収縮率が低く、かつ短時間で硬化して硬化物を形成できる。そのため、本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化の際に高温で長時間加熱する必要がないので、低温かつ短時間での加熱により硬化時に封止形状が変形することを防ぐことができる。また、本発明の硬化性シリコーン組成物は、透明で高硬度の硬化物を形成できる。そのため、半導体素子、特に光半導体素子の封止材として特に有用である。
【0112】
[封止材、フィルム]
本発明は、本発明の硬化性シリコーン組成物を用いる半導体用の封止材にも関する。本発明の封止材の形状は、特に限定されないが、好ましくはドーム状または、シート状である。本発明の封止材またはフィルムにより封止される半導体は特に限定されず、例えば、SiC、GaN等の半導体、特にパワー半導体または発光ダイオードなどの光半導体が挙げられる。
【0113】
本発明の封止材によれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を用いているので、低温であっても実用上有効な硬化性を示すので、低温で半導体素子を封止することができる。そのため、高温での加熱により封止材が変形したり、半導体素子が熱により損傷を受けたりすることを防ぐことができる。また、本発明の封止材によれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を用いているので、透明で高硬度の硬化物を形成できる。信頼性に優れた半導体パッケージを製造することができる。
【0114】
[光半導体素子]
本発明はまた、本発明の封止材を備える光半導体素子にも関する。光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0115】
発光ダイオード(LED)は、光半導体素子の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、及び銅等の導電性金属;アルミニウム、及びニッケル等の非導電性の金属;PPA、及びLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、及びシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、及び窒化アルミナ等のセラミックスが例示される。
【0116】
本発明の光半導体素子は、本発明の封止材により封止されているので、信頼性に優れる。
【実施例0117】
本発明の硬化性シリコーン組成物を以下の実施例及び比較例により詳細に説明する。
【0118】
[実施例1~4及び比較例1~4]
各成分を表に示す組成(重量部)で混合し、硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、以下でMeはメチル基を表し、Viはビニル基を表し、Phはフェニル基を表し、Epは3-グリシドキシプロピル基を表す。また、表中にはオルガノポリシロキサン成分の構造を簡略化して示しており、括弧内はM、D、又はT単位中のMe以外の官能基を示している。また、H/Viは、オルガノポリシロキサン成分中のケイ素原子結合水素原子(H)とビニル基(Vi)とのモル比を示している。
【0119】
(成分a:アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)
成分a-1:平均構造式 ViMe2SiO(PhMeSiO)20SiMe2Viで表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-2:平均構造式 ViMe2SiO(Me2SiO)60(Ph2SiO)30SiMe2Viで表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-3:平均単位式 (Me3SiO1/2)5(ViMe2SiO1/2)17(MeSiO3/2)39(PhSiO3/2)39で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-4:平均単位式 (Me3SiO1/2)14(ViMe2SiO1/2)11(MeSiO3/2)53(PhSiO3/2)22で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-5:平均単位式 (Me3SiO1/2)45(ViMe2SiO1/2)15(SiO4/2)40で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-6:平均単位式 (ViMe2SiO1/2)25(PhSiO3/2)75(EpMeSiO2/2)40で表される、レジン状アルケニル基及びエポキシ基含有オルガノポリシロキサン
成分a-7:平均単位式 (ViMeSiO2/2)4で表される環状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-8:平均単位式 (ViMe2SiO1/2)25(PhSiO3/2)75で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-9:平均構造式 ViMe2SiO(Me2SiO)150SiMe2Viで表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-10:平均構造式 ViMe2SiO(Me2SiO)530SiMe2Viで表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-11:平均単位式 (ViMe2SiO1/2)11(Me3SiO1/2)34(SiO4/2)55で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(成分b:オルガノハイドロジェンポリシロキサン)
成分b-1:平均単位式 (HMe2SiO1/2)60(PhSiO3/2)40で表される、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分b-2:平均単位式 (HMe2SiO1/2)(SiO4/2)で表される、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分b-3:平均構造式 HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2Hで表される、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分b-4:平均構造式 Me3SiO(MeHSiO)50SiMe3で表される、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分c:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体
成分d:1‐エチニル‐2‐シクロヘキサノール
成分e:ヒュームドシリカ
【0120】
[評価]
得られた実施例及び比較例の硬化性シリコーン組成物について、以下のとおり、粘度、低温(60、100℃)での硬化性、硬化前後の形状変化、熱収縮率、硬化物の硬度、硬化物の光透過率、及びLEDデバイス上でのエージング(150℃)後の外観を評価した。なお、比較例4の組成物は、成分が非相溶であったため、以下の評価は行わなかった。
【0121】
<粘度>
得られた硬化性シリコーン組成物について、25℃においてJIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって粘度を測定した。
【0122】
<低温での硬化性>
得られた硬化性シリコーン組成物について、低温(60又は100℃)での硬化の挙動を評価した。具体的には、60℃又は100℃の恒温槽に所定時間放置して、組成物が硬化するまでの時間を測定した。60℃または100℃で1時間以内に硬化したシリコーンを成形加工に優位なシリコーンとした。
【0123】
<形状変化>
得られた硬化性シリコーン組成物について、ディスペンス成形にて高さ約1mmでガラス基板上に塗布したシリコーンを、100℃で60分間恒温槽にて硬化を行い、硬化物の高さ変化を計測し、硬化前後での形状変化率を算出した。硬化物の高さ変化が10%以下のものを、形状安定なシリコーンとした。
【0124】
<熱収縮率>
得られた硬化性シリコーン組成物について、1mm厚のシートを60℃もしくは100℃の熱プレス成型で60分間加熱して成形し(100℃60分で完全硬化できないものは、150℃にて実施)、硬化後シートの寸法を計測し、金型からの収縮率を計算した。金型の内寸は120mm×120mmであった。1%以下のものを寸法安定性に適したシリコーンとした。
【0125】
<硬化物の硬度>
得られた硬化性シリコーン組成物を60℃もしくは100℃で60分間プレス成形することによりシート状硬化物を作製した。JIS K 6253-1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」で規定されるタイプDデュロメータにより、このシート状硬化物の25℃での硬さを測定した。
【0126】
<硬化物の光透過率>
得られた硬化性シリコーン組成物を2枚の透明なガラス板の間に入れ、60℃もしくは100℃で1時間加熱して硬化させ、光路長1mmの試験体を作製した。この試験体の光透過率を、可視光(波長400nm~700nm)の範囲において任意の波長で測定できる自記分光光度計を用いて25℃で測定した。なお、表1中には、波長450nmにおける光透過率の値を記載した。
【0127】
<硬化物のエージング後の外観観察>
得られた硬化性シリコーン組成物をLED基板上に塗布し、60もしくは100℃の恒温槽で60分間加熱して成形した。得られたシートを150℃で1000時間エージングした後の外観を観察し、クラック又はデラミネーションの有無を観察した。
【0128】
以上の評価結果を、以下の表に示す。
【0129】
【0130】
以上の結果から分かるとおり、本発明の硬化性シリコーン組成物は、低温で60分以内に硬化することから、低温であっても実用上有効な硬化性を示すことができる。また、得られた硬化物は、硬化時の形状変化や収縮率が低く、かつ高い硬度及び透明性を示すことができる。
本発明の硬化性シリコーン組成物は、低温であっても実用上有効な硬化性を示し、硬化時の収縮率が低く、かつ短時間で硬化でき、高硬度で透明な硬化物を提供できるので、半導体パッケージを製造する際のドーム状またはシート状封止材用途に非常に有用である。