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特開2022-20224ストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法
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  • 特開-ストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法 図1
  • 特開-ストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020224
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法
(51)【国際特許分類】
   D07B 7/16 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
D07B7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123602
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】春山 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健志
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153CC52
3B153EE26
3B153FF04
3B153GG25
3B153GG40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ストランドの端部を十分に折り曲げることができるストランド折り曲げ治具、及びストランド折り曲げ方法の提供。
【解決手段】ボルト孔が形成された把持プレート11aと、ボルト15を挿入する挿入孔が形成された把持プレート11bと、把持プレート11aと把持プレート11bを回動可能に接続する蝶番13と、把持プレート11aと把持プレート11bのそれぞれに形成され、把持プレート11aと把持プレート11bが対向した状態においてストランド3が挿入されるストランド溝12と、挿入孔に挿入され、ボルト孔のネジ部と螺合するボルト15と、を備えたストランド折り曲げ治具10。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープのストランドの端部を折り曲げるストランド折り曲げ治具であって、
ボルト孔が形成された第1の把持プレートと、ボルトが挿入する挿入孔が形成された第2の把持プレートと、前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートを回動可能に接続する蝶番と、前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートのそれぞれに形成され、前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートが対向した状態において前記ストランドが挿入されるストランド溝と、前記挿入孔に挿入され、前記ボルト孔のネジ部と螺合する前記ボルトと、を備えたことを特徴とするストランド折り曲げ治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートの何れか一方には、前記ストランドの端部を係止するストランド係止部材を備えたことを特徴とするストランド折り曲げ治具。
【請求項3】
請求項2において、
前記ストランド係止部材は、U字形状を成しており、前記U字形状の部分が前記ストランド溝の延長上に位置することを特徴とするストランド折り曲げ治具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項において、
前記ストランド溝は、前記蝶番と前記ボルトとの間に位置するよう形成したことを特徴とするストランド折り曲げ治具。
【請求項5】
請求項4において、
前記ストランド溝は、複数形成したことを特徴とするストランド折り曲げ治具。
【請求項6】
ロープのストランドの端部を折り曲げるストランド折り曲げ方法であって、
蝶番で回動可能に接続された2枚の把持プレートを対向させ、前記2枚の把持プレートのうち一方の把持プレートにはボルト孔を形成し、他方の把持プレートには挿入孔を形成し、前記挿入孔を通して前記ボルト孔にボルトを螺合させ、
前記2枚の把持プレートの対向位置に形成されたストランド溝にU字状に曲げたロープのストランドを挿入し、
前記ボルトを締め付けて前記2枚の把持プレートにより前記ストランドを押圧することを特徴とするストランド折り曲げ方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記2枚の把持プレートの何れか一方にはストランド係止部材を備え、前記ストランド係止部材に前記ストランドの端部を係止することを特徴とするストランド折り曲げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター等で使用されるロープのストランド端部を折り曲げる際に用いられるロープストランド折り曲げ治具及び折り曲げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来一般に行われているロープのストランドの折り曲げ作業を示す図、図2は従来一般に行われている折り曲げたストランドにソケットを固定する作業を示す図である。
【0003】
一般的に、エレベーター等に備えられるロープは、複数本のストランドを撚り合わせて形成されており、複数本のストランドのそれぞれの端部は折り曲げられ、この折り曲げられた端部にソケットが固定される。
【0004】
図1に示すように、ドラム1に巻回されたワイヤロープ2の端部2aのストランド3は、プライヤー4で1本ずつ解され、解された端部の各々がプライヤー4によって折り曲げられる。この状態において、図2に示すように、折り曲げられた全ての端部が収容されるようにしてワイヤロープ2の端部にソケット5が取り付けられ、容器6に収容されたバビットメタル7がソケット5内に注ぎ込まれる。このようにして、ワイヤロープ2の端部にバビットメタル7を介してソケット5が固定される。
【0005】
前述のように、ワイヤロープ2の端部にソケット5を固定するために、ストランド3の端部を折り曲げる作業は、従来プライヤー4を用いた手作業で行われており、多大の力を要求される。また、ストランド3の本数だけ折り曲げ作業を繰り返さなければならず、大きな疲労感を与えやすかった。このようなことから、ストランド折り曲げ作業を人力により容易に行うことができるシャコ万力を基礎とした治具が、特許文献1として提案されている。
【0006】
この特許文献1に開示された治具は、外周にネジ溝が形成された棒状部材と、一端に貫通形成されたネジ穴部に棒状部材が螺合されるとともに、他端に形成された支持部で折り曲げ対象物を支持する治具本体部と、棒状部材の一端に設けられ、棒状部材の回転軸周りに回転力を付与し、棒状部材の螺合位置を移動させる操作部材と、棒状部材の他端に接続され、凹部の先端部で折り曲げ対象物を押圧するヘッドピースとを備えている。
【0007】
特許文献1に開示された治具は、操作部材を操作して棒状部材を回転させることで、ヘッドピースを移動させ、ヘッドピース先端部の中にストランドを固定する。そして、操作部材を操作して棒状部材を更に回転させることでヘッドピースがストランドを押圧し、ストランドに曲げ癖をつけることができる。
【0008】
ヘッドピースには、棒状部材とは反対側にネジ穴部の方向に窪んだ凹部と、この凹部に繋がり、凹部から外側に向かって拡がるように案内溝が形成されている。ストランドは凹部、案内溝に沿って曲げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-95835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献1に記載されたストランド折り曲げ治具では、ストランドを凹部、案内溝に沿って曲げるようにしているので、曲げ力が弱く、ストランドの曲げ部分の頂点部にプライヤー等を用いた手作業による追加の折り曲げが必要となる課題があった。
【0011】
本発明の目的は、ストランドの端部を十分に折り曲げることができるストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明は、ロープのストランドの端部を折り曲げるストランド折り曲げ治具であって、ボルト孔が形成された第1の把持プレートと、ボルトが挿入する挿入孔が形成された第2の把持プレートと、前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートを回動可能に接続する蝶番と、前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートのそれぞれに形成され、前記第1の把持プレートと前記第2の把持プレートが対向した状態において前記ストランドが挿入されるストランド溝と、前記挿入孔に挿入され、前記ボルト孔のネジ部と螺合する前記ボルトと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明はロープのストランドの端部を折り曲げるストランド折り曲げ方法であって、蝶番で回動可能に接続された2枚の把持プレートを対向させ、前記2枚の把持プレートのうち一方の把持プレートにはボルト孔を形成し、他方の把持プレートには挿入孔を形成し、前記挿入孔を通して前記ボルト孔にボルトを螺合させ、前記2枚の把持プレートの対向位置に形成されたストランド溝にU字状に曲げたロープのストランドを挿入し、前記ボルトを締め付けて前記2枚の把持プレートにより前記ストランドを押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ストランドの端部を十分に折り曲げることができるストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来一般に行われているロープのストランドの折り曲げ作業を示す図である。
図2】従来一般に行われている折り曲げたストランドにソケットを固定する作業を示す図である。
図3】本発明の実施例に係るストランド折り曲げ治具を開放した状態における外観斜視図である。
図4】本発明の実施例に係るストランド折り曲げ治具を閉じた状態における外観斜視図である。
図5図4のV-V矢視図である。
図6】ストランド折り曲げ治具10をドラム1に固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0017】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【0018】
以下、本発明に係るストランド折り曲げ治具、及び折り曲げ方法の実施例について図3図6を用いて説明する。
【0019】
図3は本発明の実施例に係るストランド折り曲げ治具を開放した状態における外観斜視図、図4は本発明の実施例に係るストランド折り曲げ治具を閉じた状態における外観斜視図、図5図4のV-V矢視図、図5は本発明の実施例に係るストランド折り曲げ治具のドラム等に固定した状態を示す図である。
【0020】
図3図5に示すように、ストランド折り曲げ治具10は、2枚の把持プレート11a,11bと、把持プレート11a,11bの上下方向に沿って形成されたストランド溝12a,12bと、2枚の把持プレート11a,11bを回動可能に接続する蝶番13と、把持プレート11a(第1の把持プレート)に雌ネジが形成されたボルト孔14と、ボルト15が貫通するようにボルト15のネジ部の径よりも大きく開口された挿入孔16と、ボルト15の頭部と把持プレート11bとの間に配置された平座金17と、一方の把持プレート11b(第2の把持プレート)に設けられ、ストランドを係止するストランド係止部材18を備えている。
【0021】
ストランド溝12a,12bは、把持プレート11a,11bを閉じた状態において互いが対向するように配置されている。そして、把持プレート11a,11bが対向した状態で1つのストランド溝12が形成される。同様に、ボルト孔14と挿入孔16は、把持プレート11a,11bを閉じた状態において互いが対向するように配置されている。
【0022】
また、ボルト孔14と挿入孔16は、蝶番13から離れるように蝶番13とは反対側の位置に寄せて配置されている。ストランド溝12a,12bは、蝶番13とボルト孔14(挿入孔16)との間に位置するように配置されている。
【0023】
ボルト15は、ボルト孔14に形成したねじ山と螺合し、時計回りに回転することにより把持プレート11aと把持プレート11bとを押圧させ、反時計回りに回転することにより把持プレート11aと把持プレート11bとの押圧状態を解放させる。把持プレート11aと把持プレート11bは、蝶番13を支点としてボルト15側が接近したり、離間したりする。そのため、挿入孔16は、蝶番13を支点として把持プレート11bが動作し易いように、横方向に延びた長孔としている。
【0024】
一方の把持プレート11aに設けられたストランド係止部材18は、ストランド3の端部3aを挿入するU字形状のストランド挿入部18aを備えており、ストランド3に曲げ癖をつける際、ストランド3の位置ずれを抑制する。ストランド挿入部18aは、把持プレート11aにおいて、把持プレート11bと対向する側の面に位置するように設けられている。また、ストランド係止部材18は、U字形状のストランド挿入部18aがストランド溝12(12a)の延長上に位置するように配置されている。ストランド係止部材18は、把持プレート11a,11bの何れか一方に設ければ良い。
【0025】
次に、本実施例のストランド折り曲げ治具10を用いた折り曲げ方法について説明する。ストランド折り曲げ治具10を用いてワイヤロープ2(ロープ)のストランド3の端部を折り曲げる際、例えばエレベーターの据付現場までワイヤロープ2が巻回されるドラム1と共にストランド折り曲げ治具10を持ち運ぶ。
【0026】
そして、ドラム1に巻回されたワイヤロープ2の端部2aのストランド3を、プライヤー4で1本ずつ解す。
【0027】
ストランド折り曲げ治具10は、例えばドラム1に固定して使用する。図6はストランド折り曲げ治具10をドラム1に固定した状態を示す図である。
【0028】
図6に示すように、ストランド折り曲げ治具10には、例えば固定プレート20をボルト21や溶接等で後付けし、この固定プレート20をシャコ万力22等を使用してドラム1や建屋の梁に固定する。
【0029】
次に、2枚の把持プレート11a,11bを対向させ、把持プレート11a,11bを押さえるボルト15を緩めた状態にし、U字状に曲げたストランド3の頂点部3b側からストランド溝12(12a,12b)に沿って挿入すると共に、ストランド3の端部3aをストランド挿入部18aに挿入し、ストランド3を引っ掛ける。ストランド3の折り曲げ部の頂点部3bが把持プレート11の上面から突出していない状態で、電動工具等によってボルト15を時計回りに回転させて締め付け、把持プレート11a,11bで押圧する。ストランド3は、その折り曲げ部の頂点部3bが把持プレート11a,11bで押圧され、曲げ癖がつく。この作業をストランド3の本数分繰り返す。
【0030】
全てのストランド3の端部が折り曲げられると、前述した図2に示したように、折り曲げられたストランド3の全ての端部が収容されるようにして、ワイヤロープ2の端部にソケット5が配置され、容器6に収容されたバビットメタル7がソケット5内に注ぎ込まれる。このようにしてワイヤロープ2の端部にバビットメタル7を介してソケット5が固定される。
【0031】
本実施例によれば、ストランドの端部を十分に折り曲げることができるストランド折り曲げ治具及びストランド折り曲げ方法を提供することができる。
【0032】
本実施例では、ストランド折り曲げ治具10において1本のストランド3に曲げ癖をつけるようにしたが、ストランド折り曲げ治具10に複数のストランド溝12を形成し、この複数のストランド溝12に複数本のストランド3を配置し同時に押圧して曲げ癖をつけるようにしても良い。これにより、ストランドの折り曲げ作業の作業効率をより向上することができる。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0034】
1…ドラム、2…ワイヤロープ、3…ストランド、3a…端部、3b…頂点部、4…プライヤー、5…ソケット、10…ストランド折り曲げ治具、11,11a,11b…把持プレート、12,12a,12b…ストランド溝、13…蝶番、14…ボルト孔、15…ボルト、16…挿入孔、17…平座金、18…ストランド係止部材、18a…ストランド挿入部、20…固定プレート、21…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6