IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワールドケミカルの特許一覧

特開2022-20233マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体
<>
  • 特開-マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体 図1
  • 特開-マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体 図2
  • 特開-マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体 図3
  • 特開-マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体 図4
  • 特開-マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020233
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】マグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/02 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
F04D13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123621
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】391001044
【氏名又は名称】株式会社ワールドケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】森 渉
(72)【発明者】
【氏名】海老原 透
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴司
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA91C
3H130BA91G
3H130BA95G
3H130EA04C
3H130EA04G
3H130ED02C
3H130ED02G
(57)【要約】
【目的】マグネットキャンとインペラとが別体構成であって、組立・分解が容易で製造時やメンテナンス時の作業性が高く、しかも、両者の接続部分の強度が高い回転体を提供する。
【構成】マグネットカップリング式ポンプであり、マグネットキャンがポンプケーシング内に固定した軸に回転軸受を介して取り付けられ、マグネットキャンの回転軸方向の一端側にインペラが取付固定された構成において、
インペラとマグネットキャンとの取付固定が、対面する部分に設けられた受け口と差し口とを印籠継ぎにより回転軸方向において嵌合すると共に、回転軸に対して捻って回動させた後に回動の戻りを規制して緩みを阻止して接続を固定する構成であり、
回動の戻りを規制する構成が、受け口の奥部と差し口の先端とが対面する部分に設けられた切欠部に凸部が入り込んで回動した後に、凸部の回動方向後方に生じる切欠部との間隙に、間隙を埋める規制部材を嵌め込む構成。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側マグネットを回転させることにより従動側マグネットに設けられたインペラを回転させて液体移送力を発生させるマグネットカップリング式のポンプであり、
前記従動側マグネットがマグネットキャンに収納され、該マグネットキャンがポンプケーシング内に固定した軸に回転軸受を介して取り付けられると共に、該マグネットキャンの回転軸方向の一端側に前記インペラが取付固定された構成のマグネットポンプにおいて、
前記インペラとマグネットキャンとの取付固定が、インペラとマグネットキャンとが対面する部分のいずれか一方に設けられた受け口と他方に設けられた差し口とを印籠継ぎにより回転軸方向において嵌合すると共に、回転軸に対して捻って回動させた後にこの回動の戻りを規制して緩みを阻止することによりインペラとマグネットキャンとの接続を固定する構成であり、
前記回動の戻りを規制する構成が、受け口の奥部と差し口の先端とが対面する部分のいずれか一方に設けられた切欠部に他方に設けられた凸部が入り込んで回動した後に、該凸部の回動方向後方に生じる切欠部との間隙に、該間隙を埋める規制部材を嵌め込む構成であること、
を特徴とするマグネットポンプ。
【請求項2】
前記規制部材が、インペラとマグネットキャンとの取付固定後に該マグネットキャンの回転軸方向の他端側から挿入される回転軸受の先端部分に設けられた構成であることを特徴とする請求項1に記載のマグネットポンプ。
【請求項3】
前記印籠継ぎ部分の受け口の内壁部と差し口の外壁部のいずれか一方には回転軸方向に対して斜めに延伸する凸条が設けられ、他方には該凸条が入り込む凹条が凸条と同様に回転軸方向に対して斜めに延伸して設けられており、マグネットキャンにインペラを取り付ける際に、凹条への凸条の入り込みによって前記受け口と差し口との印籠継ぎの際の回転軸方向における嵌合と捩り回動とが導かれる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネットポンプ。
【請求項4】
前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条による捻り回動の方向がマグネットキャン及びインペラの回転方向と逆方向となるように該凸条・凹条が形成された構成であることを特徴とする請求項3に記載のマグネットポンプ。
【請求項5】
前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条の回転方向における幅が、入り込み部分の入口側が広く、奥側が狭い構成であることを特徴とする請求項3又は4に記載のマグネットポンプ。
【請求項6】
駆動側マグネットを回転させることにより従動側マグネットに設けられたインペラを回転させて液体移送力を発生させるマグネットカップリング式のポンプに用いられる回転体であって、
該回転体が、従動側マグネットを収納するマグネットキャンと、該マグネットキャンの回転軸方向の一端側に取付固定されるインペラと、を有して成る構成であり、
前記インペラとマグネットキャンとの取付固定が、インペラとマグネットキャンとが対面する部分のいずれか一方に設けられた受け口と他方に設けられた差し口とを印籠継ぎにより回転軸方向において嵌合すると共に、回転軸に対して捻って回動させた後にこの回動の戻りを規制して緩みを阻止することによりインペラとマグネットキャンとの接続を固定する構成であり、
前記回動の戻りを規制する構成が、受け口の奥部と差し口の先端とが対面する部分のいずれか一方に設けられた切欠部に他方に設けられた凸部が入り込んで回動した後に、該凸部の回動方向後方に生じる切欠部との間隙に、該間隙を埋める規制部材を嵌め込む構成であること、
を特徴とするマグネットポンプ用回転体。
【請求項7】
前記回転体が、インペラとマグネットキャンに加えて、該インペラとマグネットキャンとの取付固定後に該マグネットキャンの回転軸方向の他端側から挿入され、ポンプケーシング内に固定した軸の軸受けとなる回転軸受を有して成る構成であり、
更に、前記規制部材が、前記マグネットキャンに挿入される回転軸受の先端部分に設けられた構成であること、
を特徴とする請求項6に記載のマグネットポンプ用回転体。
【請求項8】
前記印籠継ぎ部分の受け口の内壁部と差し口の外壁部のいずれか一方には回転軸方向に対して斜めに延伸する凸条が設けられ、他方には該凸条が入り込む凹条が凸条と同様に回転軸方向に対して斜めに延伸して設けられており、マグネットキャンにインペラを取り付ける際に、凹条への凸条の入り込みによって前記受け口と差し口との印籠継ぎの際の回転軸方向における嵌合と捩り回動とが導かれる構成であることを特徴とする請求項6又は7に記載のマグネットポンプ用回転体。
【請求項9】
前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条による捻り回動の方向がマグネットキャン及びインペラの回転方向と逆方向となるように該凸条・凹条が形成された構成であることを特徴とする請求項8に記載のマグネットポンプ用回転体。
【請求項10】
前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条の回転方向における幅が、入り込み部分の入口側が広く、奥側が狭い構成であることを特徴とする請求項8又は9に記載のマグネットポンプ用回転体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体に関し、詳しくは従動側マグネットを収納するマグネットキャンにインペラが取り付けられた構成のマグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネットポンプは、ケーシング内に固定した軸(支持軸、回転軸とも言う。)に回転軸受を介して回転可能に支持されると共に従動側マグネットを収容するマグネットキャンと、該マグネットキャンの一端に取り付けられて回転することにより液体の吸込・吐出を行うインペラと、ケーシング外において該ケーシングの外周に近接して回転する駆動側マグネットと、該駆動側マグネットを回転駆動するモータと、から主として構成されており、駆動側マグネットの回転力が従動側マグネットに磁力によって非接触で伝達することによってポンプ動作する構成を有するものである。かかる構成によって、モータとポンプ部分とが遮断されているため、液漏れ無くポンプ動作することが可能である。
【0003】
マグネットキャンとインペラの構成としては大きく分けて、(1)別体構成のマグネットキャンとインペラとを接続固定した構成のもの(例えば、特許文献1~3等)、(2)マグネットキャンとインペラとが一体構成のもの(例えば、特許文献4等)、がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3403719号
【特許文献2】特許第4104542号
【特許文献3】特許第6324999号
【特許文献4】特許第5993274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の技術は、マグネットキャンとインペラとが回転軸方向に嵌合し、嵌合部に対して直交方向に固定ピンを貫通させることにより両者を固定する構成を有するものである。
また、特許文献4の技術は、マグネットキャンとインペラとが別体構成ではなく一体成形された構成を有するものである。
【0006】
特許文献1~3の技術のようにマグネットキャンとインペラとが別体構成のものでは、ポンプを高速回転させた際や逆回転させた際等にマグネットキャンとインペラとの接続部分に負荷が掛かり固定ピンが破損する等して嵌合接続部分に弛みやがたつきが生じる虞れがあった。かかる問題に対処するために、ピンの本数を増やす等、接続構造を強化した場合には組立や分解に時間や手間が掛かるようになり製造時やメンテナンス時の作業性が低下する等の問題が生じることが判った。
【0007】
一方、特許文献4の技術のようにマグネットキャンとインペラとが一体構成のものでは、マグネットキャンとインペラの何れか一方に破損等の故障が生じた場合に、一体化しているマグネットキャンとインペラの両方の交換が必須であり、故障した一方のみの交換が不可能であるためコスト高である。
【0008】
そこで本発明の課題は、マグネットキャンとインペラとが別体構成であって、組立・分解が容易で製造時やメンテナンス時の作業性が高く、しかも、両者の接続部分の強度が高いマグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は下記構成によって達成される。
【0010】
1.駆動側マグネットを回転させることにより従動側マグネットに設けられたインペラを回転させて液体移送力を発生させるマグネットカップリング式のポンプであり、
前記従動側マグネットがマグネットキャンに収納され、該マグネットキャンがポンプケーシング内に固定した軸に回転軸受を介して取り付けられると共に、該マグネットキャンの回転軸方向の一端側に前記インペラが取付固定された構成のマグネットポンプにおいて、
前記インペラとマグネットキャンとの取付固定が、インペラとマグネットキャンとが対面する部分のいずれか一方に設けられた受け口と他方に設けられた差し口とを印籠継ぎにより回転軸方向において嵌合すると共に、回転軸に対して捻って回動させた後にこの回動の戻りを規制して緩みを阻止することによりインペラとマグネットキャンとの接続を固定する構成であり、
前記回動の戻りを規制する構成が、受け口の奥部と差し口の先端とが対面する部分のいずれか一方に設けられた切欠部に他方に設けられた凸部が入り込んで回動した後に、該凸部の回動方向後方に生じる切欠部との間隙に、該間隙を埋める規制部材を嵌め込む構成であること、
を特徴とするマグネットポンプ。
【0011】
2.前記規制部材が、インペラとマグネットキャンとの取付固定後に該マグネットキャンの回転軸方向の他端側から挿入される回転軸受の先端部分に設けられた構成であることを特徴とする上記1に記載のマグネットポンプ。
【0012】
3.前記印籠継ぎ部分の受け口の内壁部と差し口の外壁部のいずれか一方には回転軸方向に対して斜めに延伸する凸条が設けられ、他方には該凸条が入り込む凹条が凸条と同様に回転軸方向に対して斜めに延伸して設けられており、マグネットキャンにインペラを取り付ける際に、凹条への凸条の入り込みによって前記受け口と差し口との印籠継ぎの際の回転軸方向における嵌合と捩り回動とが導かれる構成であることを特徴とする上記1又は2に記載のマグネットポンプ。
【0013】
4.前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条による捻り回動の方向がマグネットキャン及びインペラの回転方向と逆方向となるように該凸条・凹条が形成された構成であることを特徴とする上記3に記載のマグネットポンプ。
【0014】
5.前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条の回転方向における幅が、入り込み部分の入口側が広く、奥側が狭い構成であることを特徴とする上記3又は4に記載のマグネットポンプ。
【0015】
6.駆動側マグネットを回転させることにより従動側マグネットに設けられたインペラを回転させて液体移送力を発生させるマグネットカップリング式のポンプに用いられる回転体であって、
該回転体が、従動側マグネットを収納するマグネットキャンと、該マグネットキャンの回転軸方向の一端側に取付固定されるインペラと、を有して成る構成であり、
前記インペラとマグネットキャンとの取付固定が、インペラとマグネットキャンとが対面する部分のいずれか一方に設けられた受け口と他方に設けられた差し口とを印籠継ぎにより回転軸方向において嵌合すると共に、回転軸に対して捻って回動させた後にこの回動の戻りを規制して緩みを阻止することによりインペラとマグネットキャンとの接続を固定する構成であり、
前記回動の戻りを規制する構成が、受け口の奥部と差し口の先端とが対面する部分のいずれか一方に設けられた切欠部に他方に設けられた凸部が入り込んで回動した後に、該凸部の回動方向後方に生じる切欠部との間隙に、該間隙を埋める規制部材を嵌め込む構成であること、
を特徴とするマグネットポンプ用回転体。
【0016】
7.前記回転体が、インペラとマグネットキャンに加えて、該インペラとマグネットキャンとの取付固定後に該マグネットキャンの回転軸方向の他端側から挿入され、ポンプケーシング内に固定した軸の軸受けとなる回転軸受を有して成る構成であり、
更に、前記規制部材が、前記マグネットキャンに挿入される回転軸受の先端部分に設けられた構成であること、
を特徴とする上記6に記載のマグネットポンプ用回転体。
【0017】
8.前記印籠継ぎ部分の受け口の内壁部と差し口の外壁部のいずれか一方には回転軸方向に対して斜めに延伸する凸条が設けられ、他方には該凸条が入り込む凹条が凸条と同様に回転軸方向に対して斜めに延伸して設けられており、マグネットキャンにインペラを取り付ける際に、凹条への凸条の入り込みによって前記受け口と差し口との印籠継ぎの際の回転軸方向における嵌合と捩り回動とが導かれる構成であることを特徴とする上記6又は7に記載のマグネットポンプ用回転体。
【0018】
9.前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条による捻り回動の方向がマグネットキャン及びインペラの回転方向と逆方向となるように該凸条・凹条が形成された構成であることを特徴とする上記8に記載のマグネットポンプ用回転体。
【0019】
10.前記印籠継ぎ部分に設けられた凸条・凹条の回転方向における幅が、入り込み部分の入口側が広く、奥側が狭い構成であることを特徴とする上記8又は9に記載のマグネットポンプ用回転体。
【発明の効果】
【0020】
請求項1又は請求項6に示す発明によれば、マグネットキャンとインペラとが別体構成であって、組立・分解が容易で製造時やメンテナンス時の作業性が高く、しかも、両者の接続部分の強度が高いマグネットポンプ及びマグネットポンプ用回転体を提供することができる。
【0021】
特に、マグネットキャンとインペラとの嵌合接続部分が、簡易な構造で強固な接続が可能な印籠継ぎであって、しかも印籠継ぎの受け口の奥部と差し口の先端とが対面する部分に切欠部と凸部を設けて、この印籠継ぎの部分を捩り回動させることによって接続強度をより高めることができ、更に切欠部と該切欠部に入り込んだ凸部の回動方向後方に生じた間隙に規制部材を嵌め込むことにより印籠継ぎの部分の回動の戻りを規制することによって嵌合接続部分が弛むことが無くなる。
従って、ポンプを高速回転させた際や逆回転させた際等にマグネットキャンとインペラとの接続部分に負荷が掛かった場合であっても嵌合接続部分に弛みやがたつきが生じる虞れがなく、しかも、この印籠継ぎ構成の嵌合接続部分は簡易な構成であるため、組立や分解に時間や手間が掛かることがなく、製造時やメンテナンス時の作業性が良好である。また、マグネットキャンとインペラのいずれか一方のみに破損等の故障が生じた場合には、故障が生じた一方のみを必要に応じて交換することができる。
【0022】
請求項2又は請求項7に示す発明によれば、マグネットポンプの必須構成部材の1つである回転軸受に規制部材が設けられた構成なので、マグネットキャンとインペラとの接続に余分な構成部品の付加が不要であり、必須構成部材のみの簡素な機構でマグネットキャンとインペラとの嵌合接続を固定化することができる。
【0023】
請求項3又は請求項8に示す発明によれば、マグネットキャンとインペラとの接続の際、回転軸方向への嵌合と回転軸に対して捻る回動とを同時に行うことができる。
【0024】
請求項4又は請求項9に示す発明によれば、回転方向において斜めに当接する凸条と凹条とがインペラの正回転の際に、凸条と凹条とが互いに引き合う方向に締結力が作用するため、より強固な接続になる。
【0025】
請求項5又は請求項10に示す発明によれば、嵌合接続の際にガイドとして機能する凹条に凸条を入り込ませる構成が、凹条の入口側が広く、凸条の入り込む先端部分が狭いため、凹条に凸条を入り込ませ易い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るマグネットポンプ用回転体のマグネットキャンとインペラと回転軸受の接続構成の一例を示す斜視図
図2図1の接続構成を他の方向から見た斜視図
図3図1及び図2の接続構成のインペラの凸条がマグネットキャンの凹条に入り込む直前の状態を示す平面図、斜視図、側面図
図4図1及び図2の接続構成のインペラの凸条がマグネットキャンの凹条に入り込んだ後の状態を示す平面図、斜視図、側面図
図5図1及び図2の接続構成のインペラの凸条がマグネットキャンの凹条に入り込んだ後にマグネットキャンに回転軸受を挿入した状態を示す平面図、斜視図、側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について実施例に基づき説明する。
【0028】
本発明のマグネットポンプは、駆動側マグネットを回転させることにより従動側マグネットに設けられたインペラを回転させて液体移送力を発生させるマグネットカップリング式のポンプであり、前記従動側マグネットがマグネットキャンに収納され、該マグネットキャンがポンプケーシング内に固定した軸に回転軸受を介して取り付けられると共に、該マグネットキャンの回転軸方向の一端側に前記インペラが取付固定された構成を有するマグネットポンプに適用される構成、即ち、前記[背景技術]にて記載した構成(1)の別体構成のマグネットキャンとインペラとを接続固定した構成のものに関する技術である。
【0029】
尚、マグネットポンプは公知技術であるため、ポンプケーシング、駆動モータ、駆動側マグネット等を含むマグネットポンプ全体の図面については省略し、本明細書においては本発明の主たる構成部分であるマグネットキャン、インペラ、回転軸受、即ち、マグネットポンプ用回転体について図示すると共に当該構成について以下説明する。
【0030】
尚また、マグネットキャンに収納される従動側マグネットや、回転軸受に配設されるベアリング等についてもマグネットポンプにおける周知構成であるため図示は省略する。
【0031】
別体構成のマグネットキャンとインペラとを接続する構成において、本発明は添付図面に示すように、
前記インペラ1とマグネットキャン2との取付固定が、インペラ1とマグネットキャン2とが対面する部分のいずれか一方(本実施例ではインペラ1)に設けられた受け口11と他方(本実施例ではマグネットキャン2)に設けられた差し口21とを印籠継ぎにより回転軸方向において嵌合すると共に、回転軸に対して捻って回動させた後にこの回動の戻りを規制して緩みを阻止することによりインペラ1とマグネットキャン2との接続を固定する構成であり、
前記回動の戻りを規制する構成が、受け口11の奥部と差し口21の先端とが対面する部分のいずれか一方(本実施例では差し口21)に設けられた切欠部22に他方(本実施例では受け口11)に設けられた凸部12が入り込んで回動した後に、該凸部12の回動方向後方に生じる切欠部22との間隙K(図4の平面図と斜視図に示す符号Kの部分)に、該間隙Kを埋める規制部材31を図5の平面図と斜視図に示すように嵌め込む構成であること、
を主構成とするものである。図1図2に示す符号3は回転軸受であり、インペラ1、マグネットキャン2、回転軸受3が本発明のマグネットポンプ用回転体の主構成部材である。
【0032】
本発明において「印籠継ぎ」とは、印籠のかぶせ蓋の構造と同様の継ぎ手構成であって材木や釣竿に用いられる代表的な継ぎ手構成の一つを言い、差し込む側を「差し口」、差し口が差し込まれる側を「受け口」と呼ぶ。
【0033】
前記インペラ1、マグネットキャン2及び回転軸受3の各々は、接続構成以外の他の部分、例えば、インペラ1の羽根の形状や枚数等の基本的構成等については図示の実施例に示すものに限定されず、この種のマグネットポンプに用いられるインペラ1、マグネットキャン2、回転軸受3として公知公用の構成(材料を含む)を採ることができる。また、インペラ1、マグネットキャン2、回転軸受3以外のマグネットポンプにおける他の構成についても公知公用の構成を採ることができる。
【0034】
前記規制部材31は、インペラ1とマグネットキャン2との取付固定後に前記間隙Kに嵌め込むことにより印籠継ぎの部分の回動の戻りを規制することによってインペラ1とマグネットキャン2との嵌合接続部分の弛みを防ぐ機能のみ有するものであり、本実施例に示すように回転軸受3の先端部分に該回転軸受3と一体的に設けられた構成とすることが好ましい。
かかる構成によれば、インペラ1とマグネットキャン2との取付固定後に該マグネットキャン2の回転軸方向の他端側から回転軸受3を挿入することによって軸受構成が組み上がるだけでなく、インペラ1とマグネットキャン2との接続の固定化も同時に完了することになる。即ち、マグネットポンプの必須構成部材の1つである回転軸受3に規制部材31を設けた構成とすることによって、インペラ1とマグネットキャン2との接続に固定ピン等の余分な構成部品の付加が不要であり、必須構成部材のみの簡素な機構でインペラ1とマグネットキャン2との嵌合接続を固定化することができる。
【0035】
また、メンテナンス時や修理時等の分解は、インペラ1とマグネットキャン2と回転軸受3とから成る回転部材から回転軸受3を取り外すことによってインペラ1とマグネットキャン2との接続固定を極めて容易に解除することができるため、嵌合接続時とは逆方向に捻りながらインペラ1とマグネットキャン2とを引き離すことにより分解することができる。この分解の際も、嵌合接続の固定に固定ピンのような細かな付加部材を用いていないため、固定ピンを用いた場合に生じ易い貫通部分への固着等の問題も起こることがなく、専用の抜取治具も不要であり、容易に手順良く分解することができる。
【0036】
また、インペラ1とマグネットキャン2とを回転軸方向において嵌合する際に、この嵌合と共に回転軸に対して捻って回動させる構成として、本実施例では、前記印籠継ぎ部分の受け口11の内壁部と差し口21の外壁部のいずれか一方(本実施例では受け口11の内壁部)には回転軸方向に対して斜めに延伸する凸条13が設けられ、他方(本実施例では差し口21の外壁部)には前記凸条13が入り込む凹条23が凸条13と同様に回転軸方向に対して斜めに延伸して設けられており、マグネットキャン2にインペラ1を取り付ける際に、凹条23への凸条13の入り込みによって受け口11と差し口21との印籠継ぎの際の回転軸方向における嵌合と捩り回動とが導かれるガイドとして作用する構成になっている。
かかる構成によれば、インペラ1とマグネットキャン2との接続の際、回転軸方向へ捻りながら嵌合することによって、回転軸方向への嵌合と回転軸に対する回動とを同時に行うことができる。
【0037】
尚、図3図4図5では、凸部12が切欠部22へ入り込む構成と、凸条13が凹条23へ入り込む構成と、をわかり易く図示するために、インペラ1については凸部12及び凸条13のみを図示し、他の部分については図示を省略している。
【0038】
更に、上記の凸条13及び凹条23は、本実施例で示すように、嵌合接続する際の捻り回動の方向がインペラ1及びマグネットキャン2の回転方向と逆方向となるように形成された構成であることが好ましい。かかる構成によれば、回転方向において斜めに当接する凸条13と凹条23とがインペラ1の正回転の際に、凸条13と凹条23とが互いに引き合う方向に締結力が作用するため、より強固な接続になる。
【0039】
更にまた、上記の凸条13及び凹条23の回転方向における幅は、本実施例中の図4の正面図に示すように、入り込み部分の入口側の幅Eが広く、奥側の幅Bが狭い構成であることが好ましい。かかる構成によれば、嵌合接続の際にガイドとして機能する凹条23に凸条13を入り込ませる際に、凹条23の広い入口に先端部分が狭い凸条13から入り込み、入り込むに従って徐々に凹条23の幅と凸条13の幅が近付き、最終的に奥まで入り込ませた時には凹条23に凸条13が密に入り込むので、凹条23に対して凸条13を締め込みし易い嵌合接続となる。
【0040】
以上、本発明のマグネットポンプ用回転体について実施例に基づき説明したが、本発明の範囲内において他の構成を採ることもできる。
【0041】
凸部12及び切欠部22は、上記実施例では各々2箇所ずつ設けた構成としているが、1箇所ずつでもよいし3箇所以上ずつでもよい。好ましくは回転軸を中心として回転方向において等間隔に2箇所ずつ~4箇所ずつ程度設けた構成である。等間隔に設ける構成によれば、回転時(正回転時、逆回転時)に凸部12・切欠部22等に掛かる負荷が偏ることなく均等に分散されるので損傷や破損を抑制することができる。
【0042】
また、凸条13及び凹条23は、上記実施例では各々2箇所ずつ設けた構成としているが、1箇所ずつでもよいし3箇所以上ずつでもよい。好ましくは回転軸を中心として回転方向において等間隔に2箇所ずつ~4箇所ずつ程度設けた構成である。等間隔に設ける構成によれば、回転時(正回転時、逆回転時)に凸条13・凹条23等に掛かる負荷が偏ることなく均等に分散されるので損傷や破損を抑制することができる。
【0043】
更に、規制部材31は、上記実施例では回転軸受3の先端部分に該回転軸受3と一体的に設けられた構成としているが、回転軸受3とは別体構成の単独構成部品であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 インペラ
11 受け口
12 凸部
13 凸条
2 マグネットキャン
21 差し口
22 切欠部
23 凹条
3 回転軸受
31 規制部材
K 間隙
E 入口側の幅
B 奥側の幅
図1
図2
図3
図4
図5