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特開2022-20238試料支持具、支持機器、および試料作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020238
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】試料支持具、支持機器、および試料作製方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/06 20060101AFI20220125BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220125BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G01N1/06 F
G01N1/28 W
H01J37/20 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123627
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】小入羽 祐治
(72)【発明者】
【氏名】春田 知洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 知久
(72)【発明者】
【氏名】池田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 佑輔
【テーマコード(参考)】
2G052
5C001
【Fターム(参考)】
2G052AD12
2G052AD52
2G052BA16
2G052EC03
2G052GA32
2G052GA33
2G052GA34
5C001AA01
5C001CC01
5C001CC08
(57)【要約】
【課題】ミクロトームで作製された切片を所望の位置に載置できる試料支持具を提供する。
【解決手段】試料支持具100は、ミクロトームで作製された切片を支持するための試料支持具であって、切片をガイドする溝104が設けられている試料支持体102を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロトームで作製された切片を支持するための試料支持具であって、
前記切片をガイドする溝が設けられている試料支持体を含む、試料支持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記試料支持体には、第1貫通孔が設けられ、
前記溝は、前記試料支持体の端部から前記第1貫通孔まで延在している、試料支持具。
【請求項3】
請求項2において、
前記試料支持体の前記溝の底を規定する面には、凹部が設けられ、
前記凹部には、前記切片を支持する支持膜を有するチップを取付可能である、試料支持具。
【請求項4】
請求項3において、
前記試料支持体には、前記支持膜と重なる領域に第2貫通孔が設けられている、試料支持具。
【請求項5】
ミクロトームで作製された切片を支持するための支持機器であって、
前記切片をガイドする溝が設けられている試料支持体を含む試料支持具と、
前記試料支持具を、前記切片を浮かせるための液体を受ける容器に固定するための治具と、
を含む、支持機器。
【請求項6】
請求項5において、
前記治具は、前記溝に前記液体が満たされるように、前記試料支持具を前記容器に固定する、支持機器。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記試料支持体には、第1貫通孔が設けられ、
前記溝は、前記試料支持体の端部から前記第1貫通孔まで延在している、支持機器。
【請求項8】
請求項7において、
前記治具は、
前記試料支持具が載置される面に設けられ、前記第1貫通孔に連通する凹部と、
前記凹部に溜まった前記液体を抜くための流路と、
を有し、
前記凹部に溜まった前記液体を抜くことによって、前記溝を満たす前記液体を抜く、支持機器。
【請求項9】
ミクロトームを用いた試料作製方法であって、
溝が設けられた試料支持体を含む試料支持具を準備する工程と、
前記溝を液体で満たす工程と、
前記ミクロトームで切片を作製する工程と、
を含み、
前記切片は、前記溝でガイドされる、試料作製方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記ミクロトームで前記切片を作製する工程の後に、前記溝から前記液体を抜く工程を含む、試料作製方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記試料支持体には、第1貫通孔が設けられ、
前記溝は、前記試料支持体の端部から前記第1貫通孔まで延在し、
前記溝から前記液体を抜く工程では、前記第1貫通孔から前記溝を満たす前記液体を抜く、試料作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料支持具、支持機器、および試料作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウルトラミクロトームを用いて作製された切片は、ナイフボートに満たされた蒸留水の水面に展開される。水面に展開された切片は、シリコン基板やスライドガラスなどの試料支持具に載置され、光学顕微鏡や、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡などで観察される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ナイフで切り取られた切片を、水溜めボートに入っている水に浮かせ、この切片をグリッドに載せて透過電子顕微鏡用の試料とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-005682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切片をグリッドなどの試料支持具に載せる際には、例えば、試料支持具で水面に浮かんだ切片を掬って、試料支持具に切片を載せる。しかしながら、この方法では、切片を試料支持具の所望の位置に載置することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る試料支持具の一態様は、
ミクロトームで作製された切片を支持するための試料支持具であって、
前記切片をガイドする溝が設けられている試料支持体を含む。
【0007】
このような試料支持具では、ミクロトームで作製された切片を所望の位置に載置できる。
【0008】
本発明に係る支持機器の一態様は、
ミクロトームで作製された切片を支持するための支持機器であって、
前記切片をガイドする溝が設けられている試料支持体を含む試料支持具と、
前記試料支持具を、前記切片を浮かせるための液体を受ける容器に固定するための治具と、
を含む。
【0009】
このような支持機器では、ミクロトームで作製された切片を所望の位置に載置できる。
【0010】
本発明に係る試料作製方法の一態様は、
ミクロトームを用いた試料作製方法であって、
溝が設けられた試料支持体を含む試料支持具を準備する工程と、
前記溝を液体で満たす工程と、
前記ミクロトームで切片を作製する工程と、
を含み、
前記切片は、前記溝でガイドされる。
【0011】
このような試料作製方法では、ミクロトームで作製された切片を所望の位置に載置できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る試料支持具を模式的に示す斜視図。
図2】第1実施形態に係る試料支持具を模式的に示す断面図。
図3】チップを模式的に示す平面図。
図4】チップを模式的に示す断面図。
図5】支持機器を模式的に示す斜視図。
図6】支持機器を模式的に示す断面図。
図7】治具を模式的に示す斜視図。
図8】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製方法の一例を示すフローチャート。
図9】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
図10】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
図11】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
図12】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
図13】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
図14】第1実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
図15】試料支持具にホルダーを装着した状態を模式的に示す斜視図。
図16】ホルダーが装着された試料支持具をナイフボートにセットした状態を模式的に示す断面図。
図17】第2実施形態に係る試料支持具を模式的に示す斜視図。
図18】第2実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製方法の一例を示すフローチャート。
図19】第2実施形態に係る試料支持具を用いた試料作製工程を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 第1実施形態
1.1. 試料支持具
まず、第1実施形態に係る試料支持具について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る試料支持具100を模式的に示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る試料支持具100を模式的に示す断面図である。なお、図2は、図1のII-II線断面図である。
【0015】
試料支持具100は、ミクロトームで作製された切片を支持するために用いられる。試料支持具100は、図1に示すように、試料支持体102を含む。また、試料支持具100は、チップ110を含む。
【0016】
試料支持体102は、ミクロトームで作製された切片を支持する。試料支持体102は、例えば、透過電子顕微鏡用の試料カートリッジである。試料支持体102は、透過電子顕微鏡用の試料ホルダーであってもよい。試料支持体102は、板状の部材である。試料支持体102は、例えば、金属板である。試料支持具100は、観察対象の切片を支持した状態で透過電子顕微鏡に導入される。
【0017】
試料支持体102には、溝104が設けられている。溝104は、試料支持体102の
上面101に設けられている。溝104は、試料支持体102の端部105から第1貫通孔106まで直線状に延在している。試料支持体102の端部105は、例えば、試料支持体102の外縁を構成する面である。溝104は、ミクロトームで作製された切片をガイドするガイド溝として機能する。試料支持具100では、溝104によって、切片を所望の位置に導くことができる。溝104は、切片をチップ110上に導く。溝104の深さは、例えば、0.2mm程度である。溝104の幅は、チップ110の支持膜114の幅と同程度であり、例えば、1.5mm程度である。
【0018】
試料支持体102の溝104の底を規定する面107には、凹部109が設けられている。凹部109には、チップ110を取り付けることができる。凹部109にチップ110が取り付けられることによって、チップ110の上面115と試料支持体102の面107とは、面一となる。
【0019】
試料支持体102では、チップ110にミクロトームで作製された切片が載置される。すなわち、試料支持体102は、チップ110を介して切片を支持する。なお、試料支持体102は、直接、切片を支持してもよい。
【0020】
なお、図1および図2に示す例では、1つの試料支持具100に1つのチップ110が搭載可能であるが、1つの試料支持具100に複数のチップ110が搭載可能であってもよい。
【0021】
試料支持体102には、第1貫通孔106および第2貫通孔108が設けられている。第1貫通孔106と溝104とは、連通している。第2貫通孔108は、チップ110の支持膜114と重なる領域に設けられている。第2貫通孔108は、凹部109の底を規定する面に設けられている。
【0022】
図3は、チップ110を模式的に示す平面図である。図4は、チップ110を模式的に示す断面図である。なお、図4は、図3のIV-IV線断面図である。
【0023】
チップ110は、基板112と、支持膜114と、を含む。
【0024】
基板112は、例えば、シリコン基板である。なお、基板112として、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。基板112の厚さは、例えば、100μm以上200μm以下である。基板112には、貫通孔112aが設けられている。基板112の平面形状(基板112の厚さ方向から見た形状)は、例えば、長方形である。
【0025】
支持膜114は、切片を支持するための膜である。支持膜114は、基板112によって保持されている。支持膜114は、例えば、窒化ケイ素(SiN)膜である。なお、支持膜114として、カーボン膜を用いてもよい。支持膜114の膜厚は、例えば、数十nm程度である。
【0026】
支持膜114は、薄膜領域114aを有している。薄膜領域114aは、基板112の厚さ方向から見て(すなわち電子線の入射方向から見て)、基板112と重なっていない領域、すなわち、貫通孔112aと重なる領域である。薄膜領域114aに切片を載置することによって、切片を透過電子顕微鏡で観察することができる。
【0027】
薄膜領域114aの平面形状は、図示の例では、長方形である。薄膜領域114aの1辺の長さは、例えば、数百μm~数mm程度である。なお、薄膜領域114aの平面形状は、特に限定されない。
【0028】
1.2. 支持機器
図5は、支持機器10を模式的に示す斜視図である。図6は、支持機器10を模式的に示す断面図である。図7は、治具200を模式的に示す斜視図である。
【0029】
支持機器10は、試料支持具100と、治具200と、を含む。支持機器10は、さらに、ナイフボート300(容器の一例)を含む。
【0030】
図5および図6に示すように、試料支持具100は、治具200によって、ナイフボート300に取り付けられる。
【0031】
治具200は、試料支持具100を、ナイフボート300に固定する。ナイフボート300には、蒸留水が満たされる。治具200は、試料支持具100の溝104に蒸留水が満たされるように、試料支持具100をナイフボート300に固定する。試料支持具100は、切り出された切片が溝104に沿って展開されるように、ナイフ310の近傍に配置される。
【0032】
治具200は、試料支持具100を水平に固定する。治具200は、水面の高さが試料支持具100の上面101よりも下、溝104を規定する面107よりも上になるように、試料支持具100をナイフボート300に固定する。なお、ナイフボート300に満たされる液体は、蒸留水に限定されない。
【0033】
治具200は、図7に示すように、試料支持具100が取り付けられる第1凹部202を有している。第1凹部202は、試料支持具100の外縁と同様の形状を有している。試料支持具100が第1凹部202に取り付けられることで、試料支持具100が治具200に固定される。
【0034】
治具200の第1凹部202の底面を規定する面203には、第2凹部204が設けられている。治具200の面203は、試料支持具100が載置される面である。試料支持具100が面203に載置された状態で、第2凹部204は、試料支持具100の第1貫通孔106に連通する。図6に示すように、試料支持具100が治具200に装着された状態で、第2凹部204と第1貫通孔106は重なる。
【0035】
治具200には、第2凹部204に溜まった蒸留水を抜くための流路210が設けられている。治具200の上面201には、排水口212が設けられている。排水口212は、蒸留水を排出するためのポンプに接続される。流路210は、第2凹部204と排水口212を接続している。
【0036】
治具200は、ナイフボート300を跨ぐようにナイフボート300に取り付けられる。治具200は、ナイフボート300にネジ220で固定される。
【0037】
ナイフボート300は、切片を浮かせるための液体を受ける容器である。ナイフボート300には、バルク試料を切削するためのナイフ310が固定されている。ナイフ310は、例えば、ダイヤモンドナイフ、ガラスナイフなどである。
【0038】
1.3. 試料作製方法
図8は、試料支持具100を用いた試料作製方法の一例を示すフローチャートである。図9図14は、試料支持具100を用いた試料作製工程を模式的に示す図である。なお、図10は、図9のX-X線断面図である。図12は、図11のXII-XII線断面図である。図14は、図13のXIV-XIV線断面図である。
【0039】
まず、図1および図2に示す試料支持具100を準備する(S100)。試料支持具100の凹部109には、図3および図4に示すチップ110が取り付けられている。
【0040】
次に、図5および図6に示すように、治具200を用いて試料支持具100をナイフボート300に固定する(S102)。試料支持具100は、例えば、溝104の底を規定する面107が水平になるように、ナイフボート300に固定される。これにより、ナイフボート300が蒸留水で満たされたときに、溝104の底を規定する面107が水面に対して平行になる。
【0041】
なお、試料支持具100をナイフボート300に固定する前に、試料支持具100に対して親水化処理を行ってもよい。親水化処理は、例えば、プラズマアッシャーや、UVオゾンクリーナーなどを用いて行う。
【0042】
次に、図9および図10に示すように、試料支持具100の溝104を蒸留水2で満たす(S104)。具体的には、ナイフボート300に蒸留水2を満たす。ナイフボート300が蒸留水2で満たされることにより、試料支持具100の溝104が蒸留水2で満たされる。水面の高さは、試料支持具100の上面101よりも下、溝104の底を規定する面107よりも上とする。
【0043】
次に、ミクロトームで切片を作製する(S106)。例えば、あらかじめ設定された送り量で送り出されるバルク試料を、ナイフ310に対して、上から下に動かすことによって、バルク試料を薄く切削する。これにより、厚さ100nm以下の切片が作製される。切削を繰り返すことによって、複数の切片が連なってリボン状の連続切片が形成される。
【0044】
図11および図12に示すように、作製された切片4は、複数の切片4が連なった連続切片となる。連続切片は、蒸留水2の水面に浮かぶ。連続切片は、試料支持具100の溝104に満たされた蒸留水2の水面に展開される。切削を繰り返すことによって、連続切片が延びる。これにより、連続切片は、試料支持具100の溝104にガイドされてチップ110の薄膜領域114aに導かれる。目的の切片4が薄膜領域114aに導かれると切削を中止する。
【0045】
次に、試料支持具100の溝104を満たした蒸留水2を抜く(S108)。
【0046】
まず、図7に示す治具200の排水口212に、シリンジポンプに接続された配管を接続する。次に、シリンジポンプを動作させ、治具200の第2凹部204に溜まった蒸留水2を抜く。ここで、第2凹部204は、試料支持具100の第1貫通孔106に連通し、第1貫通孔106は溝104に連通している。そのため、第2凹部204に溜まった蒸留水2を抜くことで、溝104を満たす蒸留水2を抜くことができる。図13および図14に示すように、溝104を満たす蒸留水2を抜くことで、切片4が薄膜領域114aに載置される。
【0047】
ここで、シリンジポンプで蒸留水2を排水する速度は、例えば、50ml/hour程度である。このように、溝104を満たす蒸留水2をゆっくり抜くことによって、蒸留水2を抜く際に、蒸留水2に流れが生じたり水面が揺れたりして、切片4が移動したり切片4が湾曲したりすることを防ぐことができる。
【0048】
以上の工程により、試料支持具100で切片4を支持することができる。
【0049】
切片4を支持した状態の試料支持具100は、治具200から取り外されて、透過電子
顕微鏡に導入される。
【0050】
1.4. 作用効果
試料支持具100は、ミクロトームで作製された切片4をガイドする溝104が設けられている試料支持体102を含む。そのため、試料支持具100では、ミクロトームで作製された切片4を、所望の位置、すなわち、チップ110の薄膜領域114aに載置できる。
【0051】
透過電子顕微鏡や走査透過電子顕微鏡で切片4を観察する際には、切片4を薄膜領域114aのように電子線を透過する領域に載置しなければならない。ここで、透過電子顕微鏡や走査透過電子顕微鏡に導入可能な試料の大きさは、数mm以下に制限される。そのため、ミクロトームで作製された切片4を、数mm以下の薄膜領域114aに載置しなければならない。
【0052】
試料支持具100では、上述したように、試料支持体102の溝104をガイドとして切片4を薄膜領域114aに容易に載置できる。したがって、試料支持具100を、透過電子顕微鏡や走査透過電子顕微鏡用の試料(切片4)の作製に用いることで、容易に、試料(切片4)を観察可能な領域に載置することができる。
【0053】
試料支持具100では、試料支持体102には、第1貫通孔106が設けられ、溝104は、試料支持体102の端部105から第1貫通孔106まで延在している。そのため、試料支持具100では、溝104を満たす蒸留水2を、第1貫通孔106から抜くことができる。
【0054】
例えば、ナイフボート300の底から蒸留水2を抜くことによって、溝104を満たす蒸留水2を抜く場合、溝104を満たす蒸留水2に流れが生じたり、水面が揺れたりすることがある。また、溝104に蒸留水2が残る場合がある。
【0055】
これに対して、第1貫通孔106から溝104を満たす蒸留水2を抜くことで、水流や水面の揺らぎを低減できる。また、溝104に蒸留水2が残ることを防ぐことができる。したがって、試料支持具100では、第1貫通孔106から溝104を満たす蒸留水2を抜くことによって、切片4が水流や水面の揺らぎによって流れたり湾曲したりすることを防ぐことができる。また、溝104に残った蒸留水2によって、切片4が湾曲したり、切片4が所望の位置からずれたりすることを防ぐことができる。
【0056】
試料支持具100では、試料支持体102の溝104を規定する面107には、凹部109が設けられ、凹部109には、支持膜114を有するチップ110を載置可能である。そのため、試料支持具100では、支持膜114上に切片4を載置することができる。
【0057】
試料支持具100では、試料支持体102には、支持膜114と重なる領域に第2貫通孔108が設けられている。そのため、試料支持具100では、支持膜114上の切片4に電子線を照射した場合に、切片4を透過した電子線が第2貫通孔108を通過する。したがって、試料支持具100を、透過電子顕微鏡用の試料カートリッジ(試料ホルダー)として用いることができる。
【0058】
支持機器10は、ミクロトームで作製された切片4を支持するための支持機器であって、切片4をガイドする溝104が設けられている試料支持体102を含む試料支持具100と、試料支持具100を蒸留水2を受けるナイフボート300に固定する治具200と、を含む。そのため、支持機器10では、ミクロトームで作製された切片4を所望の位置に載置できる。
【0059】
支持機器10では、治具200は、試料支持具100の溝104に蒸留水2が満たされるように、試料支持具100をナイフボート300に固定する。そのため、支持機器10では、溝104で切片4をガイドすることができる。
【0060】
支持機器10では、治具200は、試料支持具100が載置される面203に設けられ、試料支持具100の第1貫通孔106に連通する第2凹部204と、第2凹部204に溜まった蒸留水2を抜くための流路210と、を有し、第2凹部204に溜まった蒸留水2を抜くことによって、溝104を満たす蒸留水2を抜く。そのため、支持機器10では、切片4が水流や水面の揺らぎによって流れたり湾曲したりすることを防ぐことができる。
【0061】
1.5. 変形例
上述した実施形態では、図5および図6に示すように、試料支持具100を治具200を用いてナイフボート300に取り付けたが、試料支持具100をナイフボート300に取り付ける方法はこれに限定されない。
【0062】
図15は、試料支持具100にホルダー400を装着した状態を模式的に示す斜視図である。図16は、ホルダー400が装着された試料支持具100をナイフボート300にセットした状態を模式的に示す断面図である。
【0063】
ホルダー400は、試料支持具100に装着される。図15に示すように、ホルダー400は、試料支持具100の溝104と重なる位置に開口402を有している。開口402および溝104は、切片をガイドするガイド溝として機能する。すなわち、ホルダー400を試料支持具100に装着することによって、試料支持具100のみを用いる場合と比べて、切片をガイドするガイド溝の深さを大きくすることができる。
【0064】
ホルダー400は、下面404と、傾斜面406と、を有している。図16に示すように、試料支持具100をナイフボート300に装着した場合、ホルダー400の下面404がナイフボート300の底に接触し、ホルダー400の傾斜面406がナイフボート300の傾斜した側面に接触する。そのため、ナイフボート300に対して試料支持具100を位置精度よく固定できる。例えば、ナイフボート300のナイフ310が固定されている面は、傾斜しており、この傾斜した面にホルダー400の傾斜面406を突き当てて、試料支持具100をナイフボート300にセットする。
【0065】
ホルダー400は、図15に示すように、試料支持具100を水平に保持する。そのため、試料支持具100を、水面に対して平行に支持することができる。
【0066】
ホルダー400は、把持部410を有している。把持部410は、棒状の部材である。ホルダー400が把持部410を有しているため、ユーザーは、試料支持具100に触れることなく試料支持具100をナイフボート300にセットすることができる。
【0067】
本変形例における試料作製方法は、上述した図8に示す試料作製方法と同様であり、その説明を省略する。
【0068】
2. 第2実施形態
2.1. 試料支持具
次に、第2実施形態に係る試料支持具について図面を参照しながら説明する。図17は、第2実施形態に係る試料支持具150を模式的に示す斜視図である。以下、第2実施形態に係る試料支持具150において、第1実施形態に係る試料支持具100の構成部材と
同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
上述した図1および図2に示す試料支持具100は、透過電子顕微鏡用の試料ホルダー(カートリッジ)であった。これに対して、試料支持具150は、電子顕微鏡用の試料台である。なお、試料支持具150は、光学顕微鏡や蛍光顕微鏡などの試料台としても用いることができる。
【0070】
試料支持具150は、試料支持体152を含む。試料支持体152は、例えば、シリコン基板である。試料支持体152は、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板などの各種の基板を用いてもよい。
【0071】
試料支持体152には、溝154が設けられている。溝154は、一方の端部から他方の端部まで直線状に延在している。溝154は、ミクロトームで作製された切片をガイドするガイド溝として機能する。
【0072】
溝154は、例えば、シリコン基板をリソグラフィーを用いてパターニングすることで形成できる。また、例えば、シリコン基板に金属膜を形成し、当該金属膜をパターニングすることで溝154を形成してもよい。また、シリコン基板に溝154を形成した後に、溝154にSU-8などの高分子膜を成膜して、溝154とその他の部分に濡れ性の差を付与してもよい。
【0073】
2.2. 試料作製方法
図18は、試料支持具150を用いた試料作製方法の一例を示すフローチャートである。図19は、試料支持具150を用いた試料作製工程を模式的に示す図である。
【0074】
まず、図17に示す試料支持具150を準備する(S200)。
【0075】
次に、ナイフボート350を蒸留水で満たす(S202)。ナイフボート350には、ナイフ352が固定されている。ナイフボート350の底には、蒸留水を抜くための排水口354が設けられている。
【0076】
次に、試料支持具150を親水化処理する(S204)。親水化処理は、例えば、プラズマアッシャーや、UVオゾンクリーナーなどを用いて行われる。
【0077】
次に、ナイフボート350に試料支持具150をセットする(S206)。
【0078】
次に、ミクロトームで切片を作製する(S208)。作製された連続切片は、水面に展開される。このとき、試料支持具150の溝154がガイドとして機能し、連続切片は直線状に展開される。試料支持具150が溝154を有することによって、連続切片が湾曲することなく、直線状に展開される。
【0079】
次に、ナイフボート350を満たす蒸留水を抜く(S210)。例えば、シリンジポンプを用いてナイフボート350を満たす蒸留水を抜く。蒸留水は、排水口354から抜いてもよい。
【0080】
ナイフボート350を満たす蒸留水を抜くことによって、水面が下がり、水面に展開された連続切片は、試料支持具150の溝154の底を規定する面155に載置される。
【0081】
例えば、切片を作製しながら、ナイフボート350を満たす蒸留水を抜いてもよい。試料支持具150では、水面より上にある溝154がガイドとして機能するため、切片を作
製しながら蒸留水を抜いて水面を下げることによって、より長い連続切片を溝154に沿って直線状に載置できる。
【0082】
2.3. 作用効果
試料支持具150は、ミクロトームで作製された切片をガイドする溝154が設けられた試料支持体152を含む。そのため、試料支持具100では、ミクロトームで作製された切片を、試料支持体152上の溝154に直線状に載置できる。
【0083】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0084】
2…蒸留水、4…切片、10…支持機器、100…試料支持具、101…上面、102…試料支持体、104…溝、105…端部、106…第1貫通孔、107…面、108…第2貫通孔、109…凹部、110…チップ、112…基板、112a…貫通孔、114…支持膜、114a…薄膜領域、115…上面、150…試料支持具、152…試料支持体、154…溝、155…面、200…治具、201…上面、202…第1凹部、203…面、204…第2凹部、210…流路、212…排水口、220…ネジ、300…ナイフボート、310…ナイフ、350…ナイフボート、352…ナイフ、354…排水口、400…ホルダー、402…開口、404…下面、406…傾斜面、410…把持部
図1
図2
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図5
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