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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020242
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】印刷機および印刷機の後片付け方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/16 20060101AFI20220125BHJP
   B41F 35/00 20060101ALI20220125BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20220125BHJP
   B41F 7/12 20060101ALI20220125BHJP
   B41F 13/58 20060101ALI20220125BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B41F33/16
B41F35/00 A
B41F7/02 454
B41F7/12
B41F13/58 454
B65H27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123632
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】道法 崇光
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰彦
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
3F104
【Fターム(参考)】
2C034AA16
2C034AA44
2C250EA17
2C250EA18
2C250EA47
2C250FA17
2C250FB02
2C250FB14
3F104AA01
3F104FA01
3F104KA09
(57)【要約】
【課題】印刷機および印刷機の後片付け方法において、後片付け作業を実施するための作業者の省人化によるコストの削減を図る。
【解決手段】ウェブを供給する給紙装置と、ウェブに印刷を行う印刷装置と、印刷済のウェブを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、縦裁断して重ねられたウェブを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、ウェブパス装置に配置されるガイドローラを洗浄するガイドローラ洗浄装置と、給紙装置と印刷装置との間でウェブを切断する切断装置と、印刷終了後の後片付け作業を開始する開始信号が入力されるとウェブを印刷速度より低速である緩動速度で搬送すると共にガイドローラ洗浄装置を作動してガイドローラ洗浄装置の作動開始から予め設定された所定時間の経過後に切断装置を作動する制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブを供給する給紙装置と、
前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、
印刷済の前記ウェブを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、
縦裁断して重ねられた前記ウェブを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、
前記ウェブパス装置に配置されるガイドローラを洗浄するガイドローラ洗浄装置と、
前記給紙装置と前記印刷装置との間で前記ウェブを切断する切断装置と、
印刷終了後の後片付け作業を開始する開始信号が入力されると前記ウェブを印刷速度より低速である緩動速度で搬送すると共に前記ガイドローラ洗浄装置を作動して前記ガイドローラ洗浄装置の作動開始から予め設定された所定時間の経過後に前記切断装置を作動する制御装置と、
を備える印刷機。
【請求項2】
前記所定時間は、前記ガイドローラ洗浄装置による予め設定されたガイドローラ洗浄時間より短い時間である、
請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記所定時間は、前記ガイドローラ洗浄時間から前記切断装置による前記ウェブの切断端部が前記印刷装置を排出されるまでの排出時間を減算して算出する、
請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記切断装置を作動した後、前記ウェブを前記緩動速度で継続して搬送することで、前記ウェブを前記折機まで搬送して排紙する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷機。
【請求項5】
前記ウェブパス装置および前記折機は、前記ガイドローラの洗浄により洗浄液およびインキが付着した前記ウェブを搬送して排紙する、
請求項4に記載の印刷機。
【請求項6】
前記印刷装置に配置されるローラを洗浄するローラ洗浄装置を有し、前記制御装置は、前記切断装置を作動した後、前記ローラ洗浄装置を作動する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記切断装置による前記ウェブの切断端部が前記印刷装置を排出された後、前記ローラ洗浄装置を作動する、
請求項6に記載の印刷機。
【請求項8】
前記印刷装置に配置されるブランケット胴を洗浄するブランケット胴洗浄装置を有し、前記制御装置は、前記開始信号が入力されると前記ブランケット胴洗浄装置を作動する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の印刷機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記切断装置を作動した後、前記給紙装置を作動して繰り出されている前記ウェブを巻き取る、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の印刷機。
【請求項10】
ウェブを供給する給紙装置と、
前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、
印刷済の前記ウェブを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、
縦裁断して重ねられた前記ウェブを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、
を備える印刷機の後片付け方法において、
印刷終了後に前記ウェブを印刷速度より低速である緩動速度で搬送する工程と、
前記ウェブパス装置に配置されるガイドローラを洗浄する工程と、
前記ガイドローラの洗浄開始から予め設定された所定時間の経過後に前記給紙装置と前記印刷装置との間で前記ウェブを切断する工程と、
前記ウェブが切断された切断端部より下流側の前記ウェブを前記折機まで搬送して排紙する工程と、
を有する印刷機の後片付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷終了後における印刷機の後片付け作業の自動化を図る印刷機、印刷機の後片付け作業における印刷機の後片付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、新聞用オフセット輪転印刷機は、給紙装置と印刷装置とウェブパス装置と折機とから構成される。新聞用オフセット輪転印刷機は、印刷作業が終了すると、後片付け作業を実施する。後片付け作業としては、印刷装置におけるブランケット胴の洗浄作業、ローラの洗浄作業、版胴からの刷版の取り外し作業、ウェブパス装置に配置される複数のガイドローラの洗浄作業、搬送経路内に残存するウェブの排出作業などがある。
【0003】
新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業は、複数の作業者により実施している。例えば、一人目の作業者がブランケット胴の洗浄作業や複数のガイドローラの洗浄作業を実施する。二人目の作業者がブランケット胴およびガイドローラの洗浄作業の終了後に給紙装置と折機の位置でウェブを切断して排出する作業を実施する。三人目の作業者がウェブを切断した後にウェブパス装置からウェブを排出する作業を実施する。また、二人目の作業者がインキローラや湿しローラの洗浄作業を実施する。そして、三人で分担して刷版の取り外し作業を実施する。このような新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業を実施するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5134275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業の作業時間の短縮化を図っている。ところが、近年、後片付け作業の作業時間の短縮化よりも、後片付け作業を実施するための作業者の省人化が望まれている。すなわち、作業者の省人化による人件費の削減が求められている。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、後片付け作業を実施するための作業者の省人化によるコストの削減を図る印刷機および印刷機の後片付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の印刷機は、ウェブを供給する給紙装置と、前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、印刷済の前記ウェブを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、縦裁断して重ねられた前記ウェブを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、前記ウェブパス装置に配置されるガイドローラを洗浄するガイドローラ洗浄装置と、前記給紙装置と前記印刷装置との間で前記ウェブを切断する切断装置と、印刷終了後の後片付け作業を開始する開始信号が入力されると前記ウェブを印刷速度より低速である緩動速度で搬送すると共に前記ガイドローラ洗浄装置を作動して前記ガイドローラ洗浄装置の作動開始から予め設定された所定時間の経過後に前記切断装置を作動する制御装置と、を備える。
【0008】
また、本開示の印刷機の後片付け方法は、ウェブを供給する給紙装置と、前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、印刷済の前記ウェブを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置と、縦裁断して重ねられた前記ウェブを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機と、を備える印刷機において、印刷終了後に前記ウェブを印刷速度より低速である緩動速度で搬送する工程と、前記ウェブパス装置に配置されるガイドローラを洗浄する工程と、前記ガイドローラの洗浄開始から予め設定された所定時間の経過後に前記給紙装置と前記印刷装置との間で前記ウェブを切断する工程と、前記ウェブが切断された切断端部より下流側の前記ウェブを前記折機まで搬送して排紙する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の印刷機および印刷機の後片付け方法によれば、後片付け作業を実施するための作業者の省人化によるコストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機における制御ブロックを表す概略構成図である。
図2図2は、新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業を表すフローチャートである。
図3図3は、新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業を表すタイムチャートである。
図4図4は、給紙装置を表す概略図である。
図5図5は、後片付け作業時における給紙装置の作動を表す概略図である。
図6図6は、後片付け作業時における給紙装置の作動を表す概略図である。
図7図7は、新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。
図8図8は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[新聞用オフセット輪転印刷機]
図7は、第1実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機は、印刷装置の版胴のサイズが4頁幅×1頁周長に設定された4×1輪転印刷機であるが、版胴のサイズが4頁幅×2頁周長に設定された4×2輪転印刷機であってもよい。
【0013】
本実施形態の印刷機は、図7に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機10である。新聞用オフセット輪転印刷機10は、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとを備える。
【0014】
給紙装置Rは、複数(本実施形態では、7台)の給紙ユニットR1~R7を有する。インフィード装置Iは、複数(本実施形態では、7台)のインフィードユニットI1~I7を有する。印刷装置Uは、複数(本実施形態では、6台)の印刷ユニットU1~U6を有する。ウェブパス装置Dは、複数(本実施形態では、2台)のウェブパスユニットD1,D2を有する。折機Fは、複数(本実施形態では、2台)の折ユニットF1,F2を有する。
【0015】
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1~R7は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブ(印刷媒体)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アームを有する。保持アームを回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。インフィード装置Iにおいて、インフィードユニットI1~I7は、ほぼ同様の構成をなし、印刷装置Uの各印刷ユニットU1~U6に送り込むウェブWの張力を調整することで、印刷装置Uを走行するウェブWの張力を適正値に安定して維持する。なお、給紙装置Rからインフィード装置IまでのウェブWの張力は、給紙ユニットR1~R7に設けられた図示しないブレーキ装置により行われる。
【0016】
印刷装置Uにおいて、印刷ユニットU1~U6は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1~U6は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11~U62とすることができる。印刷ユニットU11~U62は、ほぼ同様の構成をなし、インキ供給装置、版胴、ブランケット胴などを有する。
【0017】
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1~U3に対して設けられ、ウェブパスユニットD2は、印刷ユニットU4~U6に対して設けられる。ウェブパスユニットD1,D2は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWを縦方向(ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタ、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバー、ウェブWにおける天地長手方向における絵柄位置を調整するコンペンセータなどを有する。
【0018】
印刷ユニットU1~U3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより絵柄位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4~U6で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタにより縦裁断され、ターンバーにより搬送経路が変更され、コンペンセータにより絵柄位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU4~U6で印刷が施された各ウェブWが、ウェブパスユニットD1を経由し、印刷ユニットU1~U3で印刷が施された各ウェブWの上に入るパターンもある。
【0019】
折機Fにて、2つの折ユニットF1,F2は、操作側と駆動側に配設される。ウェブパスユニットD1から複数のウェブW1が重ねられて導入されると、折ユニットF1は、ウェブW1を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。また、ウェブパスユニットD2から複数のウェブW2が重ねられて導入されると、折ユニットF2は、ウェブW2を縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙する。なお、本実施形態では折ユニットF1,F2を2つ設けているが、折ユニットF2を設けずに、折ユニットF1の1台にてウェブW1とウェブW2を重ねて縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙してもよい。
【0020】
[印刷ユニット]
図8は、新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットを表す概略構成図である。
【0021】
印刷ユニットU1は、図8に示すように、4色印刷が可能となるように、H型のタワーユニットをなす。印刷ユニットU1は、ウェブWの搬送方向にて、下から上に向かう方向)に沿って、墨、藍、紅、黄ごとの4つのスタック21,22,23,24が配置されて構成され、スタック21,22,23,24は、それぞれ左右対称となるローラ配列である。なお、墨、藍、紅、黄の色順は、この限りではない。
【0022】
スタック21,22,23,24は、左右に対向してブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bがウェブWの搬送経路を挟んで対接可能であり、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bに版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bが対接する。スタック21,22,23,24は、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bが設けられる。また、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bに対して、湿し水供給装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bが設けられる。
【0023】
[新聞用オフセット輪転印刷機の制御ブロック]
図1は、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機における制御ブロックを表す概略構成図である。図1では、給紙装置Rとインフィード装置Iと印刷装置Uとウェブパス装置Dと折機Fをそれぞれ一つのユニットだけとして表し、以下の説明では、一つの給紙ユニットから供給されたウェブの搬送経路に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、給紙装置Rは、アーム装置100を有する。アーム装置100は、図示しないフレームに支持され、複数(本実施形態では、3本)の保持アーム101a,101b,101cと、アーム旋回装置102と、ブレーキ装置103と、巻取紙回転装置104とを有する。保持アーム101a,101b,101cは、回転軸101から放射状に延出するように連結される。保持アーム101a,101b,101cは、先端部に巻取紙WRを保持可能である。アーム旋回装置102は、回転軸101を中心に保持アーム101a,101b,101cを旋回可能である。ブレーキ装置103は、保持アーム101a,101b,101cの先端部に設けられ、巻取紙WRから繰り出されるウェブWに対して制動力を付与可能である。巻取紙回転装置104は、最上部側に位置する保持アーム101a,101b,101cの巻取紙WRを回転可能である。
【0025】
給紙装置Rの巻取紙WRから繰り出されたウェブWは、ガイドローラ105、フローティングローラ106、ガイドローラ107、テンションピックアップローラ108、ガイドローラ109を介してインフィード装置Iに送られる。フローティングローラ106は、ウェブWの張力変動により移動することで、ウェブWの張力変動を吸収する。テンションピックアップローラ108は、ウェブWの張力を検出する。テンションピックアップローラ108が検出したウェブWの張力に応じてブレーキ装置103を作動することで、ウェブWの張力を予め設定された所定値に維持することができる。
【0026】
インフィード装置Iは、給紙装置Rから供給されたウェブWを受け取り、ガイドローラ111、インフィードドラグローラ112および紙押えローラ113、テンションピックアップローラ114を介して印刷装置Uに送る。インフィードドラグローラ112は、駆動モータ115により駆動回転可能である。テンションピックアップローラ114は、ウェブWの張力を検出する。また、インフィード装置Iは、インフィードカッタ116を有する。インフィードカッタ116は、ガイドローラ111とインフィードドラグローラ112の間に配置され、搬送されるウェブWを切断可能である。
【0027】
印刷装置Uは、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bと、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bを有し、インフィード装置Iから供給されたウェブWに対して両面印刷を実施可能である。ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bと、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bは、駆動モータ121,122,123,124によりそれぞれ独立して駆動回転可能である。印刷済のウェブWは、出口ドラグローラ126および紙押えローラ127、ガイドローラ128を介してウェブパス装置Dに送られる。テンションピックアップローラ125は、ウェブWの張力を検出する。出口ドラグローラ126は、駆動モータ129により駆動回転可能である。
【0028】
ウェブパス装置Dは、スリッタナイフ131とスリッタドラグローラ132を有する。印刷装置Uから供給されたウェブWは、スリッタナイフ131により幅方向の中央部で裁断される。スリッタドラグローラ132は、駆動モータ133により駆動回転可能である。スリッタナイフ131により裁断された各ウェブWは、中間ドラグローラ134,135により搬送される。中間ドラグローラ134,135は、駆動モータ136,137により駆動回転可能である。なお、機械構成上、駆動モータ136のみで駆動することもある。スリッタナイフ131と中間ドラグローラ134,135との間にターンバー139が配置される。ウェブパス装置Dは、ターンバー139と、コンペンセータ141,142を有する。ターンバー139は、ウェブWの搬送経路を変更可能である。中間ドラグローラ134,135より下流側にコンペンセータ141,142が配置される。コンペンセータ141,142は、ウェブWの経路長を変更可能である。
【0029】
折機Fは、ウェブパス装置Dから供給されたウェブWを折り畳んで新聞を製作する。折機Fは、三角板ドラグローラ151および紙押えローラ152と、三角板153を有する。三角板ドラグローラ151は、駆動モータ154により駆動回転可能である。コンペンセータ141,142と三角板ドラグローラ151との間にテンションピックアップローラ155,156が配置される。テンションピックアップローラ155,156は、ウェブWの張力を検出する。
【0030】
制御装置160は、テンションピックアップローラ108,114から検出値が入力される。制御装置160は、各検出値に基づいて駆動モータ115を制御することで、インフィードドラグローラ112、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b、版胴41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b、出口ドラグローラ126、スリッタドラグローラ132、中間ドラグローラ134,135、三角板ドラグローラ151の回転速度を同期させると共に、ブレーキ装置103を作動し、ウェブWの張力を調整する。
【0031】
また、制御装置160は、アーム旋回装置102と、巻取紙回転装置104と、インフィードカッタ116の作動を制御可能である。
【0032】
新聞用オフセット輪転印刷機10は、ブランケット胴洗浄装置161と、ローラ洗浄装置162と、ガイドローラ洗浄装置163とを有する。制御装置160は、ブランケット胴洗浄装置161とローラ洗浄装置162とガイドローラ洗浄装置163の作動を制御可能である。
【0033】
ブランケット胴洗浄装置161は、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bを洗浄可能である。ブランケット胴洗浄装置161は、例えば、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bの周面に洗浄液を含んだ洗浄布(例えば、不織布)を押し付けることで、付着しているインキを拭き取る。
【0034】
ローラ洗浄装置162は、インキ供給装置51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bを構成する複数のインキローラや湿し水供給装置61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bを構成する複数の湿しローラを洗浄可能である。ローラ洗浄装置162は、例えば、回転する所定のインキローラに洗浄液を噴射し、各インキローラの回転によりすべてのインキローラに洗浄液を供給して洗浄した後、回転する所定のインキローラからインキおよび洗浄液を掻き取ることで、付着しているインキを除去する。さらに、ローラ洗浄装置162は、版胴を介して湿しローラに洗浄液を供給し、洗浄した後、回転する湿しローラからさらに版胴を介してインキローラ側で付着している洗浄液を掻き取る。
【0035】
ガイドローラ洗浄装置163は、ドラグローラ126,132,134,135,151とガイドローラ128とコンペンセータ141,142を洗浄可能である。ガイドローラ洗浄装置163は、印刷装置Uの上流側に配置される。ガイドローラ洗浄装置163は、搬送中のウェブWに洗浄液を噴射する。洗浄液で濡れたウェブWがドラグローラ126,132,134,135,151とガイドローラ128とコンペンセータ141,142の周面に接触することで、付着しているインキを除去する。なお、ウェブパス装置Dは、図示しないが、上述したガイドローラ128以外に多数のガイドローラが配置され、ガイドローラ洗浄装置163は、全てのガイドローラを洗浄可能である。
【0036】
[新聞用オフセット輪転印刷機の後片付け作業]
ところで、新聞用オフセット輪転印刷機10は、印刷終了後に、後片付け作業を実施する。後片付け作業としては、ブランケット胴洗浄作業、ローラ洗浄作業、ガイドローラ洗浄作業、刷版取り外し作業、ウェブ排出作業などがある。近年、後片付け作業を実施するための作業者の省人化が望まれている。そこで、本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機10は、後片付け作業の自動化を可能とすることで、作業者の省人化を図る。
【0037】
新聞用オフセット輪転印刷機10は、前述したように、給紙装置Rと、インフィード装置Iと、印刷装置Uと、ウェブパス装置Dと、折機Fとを備える。また、新聞用オフセット輪転印刷機10は、ブランケット胴洗浄装置161と、ローラ洗浄装置162と、ガイドローラ洗浄装置163とを備える。そして、新聞用オフセット輪転印刷機10は、インフィードカッタ(切断装置)116と、開始スイッチ171と、制御装置160とを備える。
【0038】
開始スイッチ171は、作業者により操作可能なスイッチである。印刷終了後に作業者が開始スイッチを操作(ON)することで、後片付け作業が自動的に開始される。開始スイッチが操作(ON)されると、印刷終了後の後片付け作業を開始する開始信号が制御装置160に入力される。制御装置160は、開始スイッチ171が操作され、開始信号が入力されると、ウェブWを印刷速度より低速である緩動速度で搬送すると共に、ガイドローラ洗浄装置163を作動し、ガイドローラ洗浄装置163の作動開始から予め設定された所定時間の経過後にインフィードカッタ116を作動する。
【0039】
ここで、所定時間は、ガイドローラ洗浄装置163による予め設定されたガイドローラ洗浄時間より短い時間である。具体的に、所定時間は、ガイドローラ洗浄時間からインフィードカッタ116によるウェブWの切断端部が印刷装置Uを排出されるまでの排出時間を減算して算出される。
【0040】
制御装置160は、インフィードカッタ116を作動した後、ウェブWを緩動速度で継続して搬送する。すると、インフィードカッタ116によるウェブWの切断端部より下流側のウェブWを折機Fまで搬送して排紙する。すなわち、ウェブパス装置Dおよび折機Fは、ガイドローラ128の洗浄により洗浄液およびインキが付着したウェブWを搬送して排紙する。
【0041】
制御装置160は、インフィードカッタ116を作動した後、ローラ洗浄装置162を作動する。このとき、制御装置160は、インフィードカッタ116によるウェブWの切断端部が印刷装置Uを排出された後、ローラ洗浄装置162を作動する。
【0042】
また、制御装置160は、開始スイッチ171が操作され、開始信号が入力されると、ウェブWを印刷速度より低速である緩動速度で搬送すると共に、ガイドローラ洗浄装置163およびブランケット胴洗浄装置161を作動する。
【0043】
一方、制御装置160は、インフィードカッタ116を作動した後、給紙装置Rを作動して巻取紙WRから繰り出されているウェブW、つまり、インフィードカッタ116によるウェブWの切断端部より上流側のウェブWを巻取紙WRに巻き取る。
【0044】
[新聞用オフセット輪転印刷機の後片付け方法]
図2は、新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業を表すフローチャート、図3は、新聞用オフセット輪転印刷機における後片付け作業を表すタイムチャート、図4は、給紙装置を表す概略図、図5は、後片付け作業時における給紙装置の作動を表す概略図、図6は、後片付け作業時における給紙装置の作動を表す概略図である。
【0045】
本実施形態の新聞用オフセット輪転印刷機の後片付け方法は、印刷終了後にウェブWを印刷速度より低速である緩動速度で搬送する工程と、ウェブパス装置Dに配置されるガイドローラ128を洗浄する工程と、ガイドローラ128の洗浄開始から予め設定された所定時間の経過後に給紙装置Rと印刷装置Uとの間でウェブWを切断する工程と、ウェブWが切断された切断端部より下流側のウェブWを折機Fまで搬送して排紙する工程と、を有する。
【0046】
以下、新聞用オフセット輪転印刷機10の後片付け方法を図2のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
図1および図2に示すように、ステップS11にて、制御装置160は、予め設定された所定部数の新聞の印刷が終了したかどうかを判定する。ここで、新聞の印刷終了の判定は、印刷速度が0になったかどうかで判定する。新聞の印刷が終了していないと判定(No)されると、新聞の印刷を継続する。一方、新聞の印刷が終了したと判定されると、ステップS12にて、勘定チェック作業を実施する。勘定チェック作業とは、折機Fから排出された新聞が所定部数あるかどうかを確認する作業である。
【0048】
また、制御装置160は、ステップS11で、新聞の印刷が終了したと判定(Yes)されると、ステップS13にて、開始スイッチ171が操作(ON)されたかどうかを判定する。作業者は、新聞用オフセット輪転印刷機10の後片付け作業を実施する場合、開始スイッチ171を操作(ON)する。作業者が開始スイッチ171を操作(ON)すると、制御装置160は、ステップS13にて、開始信号が入力されることで開始スイッチ171が操作(ON)されたと判定(Yes)し、ステップS14に移行する。一方、開始信号が入力されないことで開始スイッチ171が操作(ON)されていないと判定(No)されると、ここで待機する。
【0049】
ステップS14にて、制御装置160は、給紙装置Rにおけるアーム装置100の保持アーム101a,101b,101cを回転(逆転)する。そして、ステップS15にて、給紙している巻取紙WRを回転(逆転)する。すなわち、図4に示すように、アーム装置100は、3本の保持アーム101a,101b,101cを有し、保持アーム101a,101b,101cは、先端部にそれぞれ巻取紙WRを保持する。そして、ウェブWを供給している巻取紙WR(保持アーム101a)を図4にて左下方に位置させる。ステップS14では、アーム旋回装置102により保持アーム101a,101b,101cを逆回転(図4にて、時計回り方向に回転)し、図5に示すように、ウェブWを供給している巻取紙WR(保持アーム100a)を図5にて中央上方に移動する。ここで、保持アーム100aの先端部と巻取紙回転装置104とが連結される。すなわち、巻取紙回転装置104により保持アーム100aに保持された巻取紙WRを回転可能となる。ウェブWを供給している巻取紙WRを図5にて中央上方に移動すると、ウェブWが一時的に弛む。ステップS15では、巻取紙回転装置104により保持アーム101aが保持して給紙している巻取紙WRを逆回転(図5にて、反時計回り方向に回転)し、弛んだウェブWを巻き取る。
【0050】
図1および図2に戻り、ステップS16にて、制御装置160は、紙張りがOKかどうかを判定する。例えば、フローティングローラ106の角度やテンションピックアップローラ108がウェブWの張力を検出する。制御装置160は、テンションピックアップローラ108が検出したウェブWの張力に応じてブレーキ装置103を作動してウェブWの張力を所定値に維持する。その他、巻取紙WRの径により所定のブレーキ力を与えてウェブWの張力を所定値に維持する場合もある。前述したステップS14にて、保持アーム101aの逆転によりウェブWが弛んで張力が低下し、巻取紙WRの逆転により弛んだウェブWが巻き取られて張力が上昇する。ステップS16では、テンションピックアップローラ108が検出したウェブWの張力(または、フローティングローラ106の角度)に基づいて、低下したウェブWの張力が所定値に戻ったかどうかを判定する。
【0051】
ここで、ウェブWの張力が所定値になっておらずに紙張りがOKでないと判定(No)されると、弛んだウェブWの巻き取りを継続する。一方、ウェブWの張力が所定値に戻って紙張りがOKであると判定(Yes)されると、ステップS17にて、新聞用オフセット輪転印刷機10を緩動速度での運転を開始する。ここで、緩動速度とは、通常の印刷速度より低い速度であり、例えば、通常の印刷速度は、5~16万部/時(ブランケット胴の周速3.8~12.2m/s)であり、緩動速度は、約0.1~0.2万部/H(ブランケット胴の周速0.08~0.15m/s)である。
【0052】
新聞用オフセット輪転印刷機10が緩動速度で運転されると、ステップS18にて、ガイドローラ洗浄装置163によるガイドローラ128の洗浄作業を開始する。ガイドローラ洗浄装置163は、印刷装置Uに供給される前のウェブWに洗浄液を噴射する。洗浄液で濡れたウェブWは、印刷装置Uを通過した後、ドラグローラ126,132,134,135,151とガイドローラ128の周面に接触する。ここで、洗浄液で濡れたウェブWと、ドラグローラ126,132,134,135,151とガイドローラ128との間に速度差(周速差)を与えることで、ドラグローラ126,132,134,135,151とガイドローラ128に付着しているインキを洗浄液で濡れたウェブWに移し取って除去する。
【0053】
また、ステップS19にて、ブランケット胴洗浄装置161によるブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bの洗浄作業を開始する。ブランケット胴洗浄装置161は、ブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bの周面に洗浄液を含んだ洗浄布を押し付けることで、付着しているインキを拭き取る。なお、ステップS18におけるガイドローラ洗浄作業と、ステップS19におけるブランケット胴洗浄作業は、同時に開始してもよいし、時間をずらして開始してもよい。一般的に、ガイドローラ洗浄時間は、ブランケット胴洗浄時間よりも長い。また、給紙装置Rから折機Fまでは、複数のウェブWの搬送経路があり、且つ、複数のウェブWの搬送経路は、長さが相違する。そのため、ガイドローラ洗浄時間は、ウェブWの搬送経路ごとに設定されている。
【0054】
ステップS20にて、制御装置160は、ガイドローラ洗浄作業が開始されてから所定時間が経過したかどうかを判定する。ここで、ガイドローラ洗浄作業が開始されてから所定時間が経過していないと判定(No)されると、ステップS18に戻り、ガイドローラ洗浄作業を継続する。一方、ガイドローラ洗浄作業が開始されてから所定時間が経過したと判定(Yes)されると、ステップS21にて、制御装置160は、インフィードカッタ116を作動する。すると、搬送中のウェブWは、給紙装置Rと印刷装置Uとの間で切断される。そして、ウェブWは、インフィードカッタ116の作動により切断された位置よりも下流側のウェブWだけが搬送される。
【0055】
そして、ステップS22にて、ガイドローラ洗浄装置163によるガイドローラ128の洗浄作業が終了する。ステップS23にて、ブランケット胴洗浄装置161によるブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bの洗浄作業が終了する。
【0056】
ステップS24にて、制御装置160は、給紙装置Rにて、給紙している巻取紙WRを回転(逆転)する。そして、ステップS25にて、制御装置160は、給紙装置Rの保持アーム101a,101b,101cを回転(正転)する。すなわち、図6に示すように、ステップS21で、インフィードカッタ116が作動して搬送中のウェブWを給紙装置Rと印刷装置Uとの間で切断すると、ウェブWは、インフィードカッタ116の作動により切断された位置よりも上流側のウェブWが垂れ下がる。ステップS24では、巻取紙回転装置104により保持アーム101aが保持して給紙している巻取紙WRを逆回転(図6にて、反時計回り方向に回転)し、垂れ下がっているウェブWを巻き取る。そして、ステップS25では、アーム旋回装置102により保持アーム101a,101b,101cを正回転(図6にて、反時計回り方向に回転)し、図6に示すように、ウェブWを供給している巻取紙WR(保持アーム100a)を図6にて左下方に移動する。つまり、保持アーム101aを回転して巻取紙WRを通常の運転位置(給紙位置)に戻す。
【0057】
また、ステップS26にて、制御装置160は、インフィードカッタ116の作動により切断された位置よりも下流側のウェブWが印刷装置Uを排出されたかどうかを判定する。ウェブWが印刷装置Uを排出されたかどうかの判定は、タイマやセンサの検出により実行すればよい。例えば、ウェブWの切断端部が印刷装置Uを排出されるまでの排出時間は、ウェブWの経路長と搬送速度により算出される。そのため、インフィードカッタ116の作動から排出時間が経過したら、ウェブWが印刷装置Uを排出されたと判定する。また、印刷装置Uの出口側(上方側)にウェブWを検出するセンサを設ける。センサがウェブWを検出しなくなると、ウェブWが印刷装置Uを排出されたと判定する。
【0058】
ここで、ウェブWが印刷装置Uを排出されていないと判定(No)されると、そのまま待機する。一方、ウェブWが印刷装置Uを排出されたと判定(Yes)されると、ステップS27にて、印刷装置Uを単独運転に切り替える。すなわち、ここまで、印刷装置Uとウェブパス装置Dと折機Fは、同期して緩動速度で運転していた。ステップS27では、ウェブパス装置Dと折機Fを同期して緩動速度で運転することは継続し、印刷装置Uだけを単独で運転し、例えば、緩動速度より高速で運転する。例えば、高速とは、6万部/Hであり、ブランケット胴の周速が約4.6m/sである。そして、ステップS28にて、ローラ洗浄装置162による複数のインキローラや複数の湿しローラの洗浄作業を開始する。ローラ洗浄装置162は、回転する所定のインキローラに洗浄液を噴射し、各インキローラの回転によりすべてのインキローラに洗浄液を供給して洗浄した後、回転する所定のインキローラからインキおよび洗浄液を掻き取ることで、付着しているインキを除去する。また、ローラ洗浄装置162は、版胴を介して湿しローラに洗浄液を供給し、洗浄した後、回転する湿しローラからさらに版胴を介してインキローラ側で付着している洗浄液を掻き取る。この場合、印刷装置Uは、ウェブWが存在しないことから、運転速度がウェブパス装置Dおよび折機Fの運転速度と相違しても、ウェブパス装置Dおよび折機FによるウェブWの搬送作業に影響がない。そのため、印刷装置Uは、複数のインキローラを高速で回転することで、洗浄作業を効率よく実施することが可能となる。
【0059】
その後、ステップS29にて、ローラ洗浄作業が終了する。そして、ステップS30にて、刷版の取り外し作業を実施する。刷版の取り外し作業は、作業者の手動により実施してもよいし、自動版交換装置により実施してもよい。
【0060】
ステップS24,S25の処理とステップS26~S30の処理とは、並行して実施される。また、ステップS31,S32処理も、ステップS24,S25の処理およびステップS26~S30の処理と並行して実施される。すなわち、ステップS21にて、インフィードカッタ116の作動によりウェブWが切断されると、インフィードカッタ116の作動により切断された位置よりも下流側のウェブWだけが搬送される。この切断位置から折機FまでのウェブWは、ガイドローラ洗浄作業に使用されたものであり、廃棄処分される。ガイドローラ洗浄作業およびブランケット胴洗浄作業が終了し、印刷装置Uを単独運転に切り替えても、ウェブパス装置Dおよび折機Fの緩動速度は継続される。ステップS31にて、制御装置160は、ウェブパス装置Dおよび折機Fの緩動速度での運転を継続し、折機Fからの排紙を実施する。ここで、折機Fからの排紙された折帖は、新聞の形態をなしているものの、印刷されておらず、枚数が相違していたり、インキ汚れが発生したりしていることから廃棄処分となる。そして、ステップS32にて、折機FからすべてのウェブWが排紙されると、排紙完了となる。
【0061】
次に、新聞用オフセット輪転印刷機10の後片付け方法を図3のタイムチャートを用いて説明する。
【0062】
図1および図3に示すように、時間t1にて、所定部数の新聞の印刷が終了し、新聞用オフセット輪転印刷機10が停止する。時間t2にて、作業者による勘定チェック作業が実施され、開始スイッチ171が操作(ON)され、制御装置160に開始信号が入力される。すると、給紙装置Rにおけるアーム装置100の保持アーム101a,101b,101cが回転(逆転)し、時間t3にて、給紙している巻取紙WRが回転(逆転)し、弛んだウェブWを巻き取る。
【0063】
そして、時間t4にて、ウェブWの張力が所定値に戻るって紙張りがOKになると、新聞用オフセット輪転印刷機10を緩動速度での運転を開始する。また、同時に、ガイドローラ洗浄装置163によるガイドローラ128の洗浄作業と、ブランケット胴洗浄装置161によるブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bの洗浄作業を開始する。なお、新聞用オフセット輪転印刷機10の緩動速度での運転の開始と、ガイドローラ洗浄作業およびブランケット胴洗浄作業の開始は、同時でなくてもよい。また、ガイドローラ洗浄作業の開始とブランケット胴洗浄作業の開始は、同時でなくてもよい。
【0064】
時間t5にて、ガイドローラ洗浄作業が開始されてから所定時間Tが経過する。所定時間は、ガイドローラ洗浄時間T1より短い時間である。具体的に、所定時間Tは、ガイドローラ洗浄時間T1から、インフィードカッタ116によるウェブWの切断端部が印刷装置Uを排出されるまでの排出時間T2を減算して算出する。ガイドローラ洗浄時間T1は、ウェブパス装置Dおよび折機Fにおける複数のウェブWの搬送経路長に応じて適宜設定される。排出時間T2は、ウェブWの経路長と搬送速度により算出される。時間t5にて、ガイドローラ洗浄作業が開始されてから所定時間Tが経過すると、インフィードカッタ116を作動(ON)し、給紙装置Rと印刷装置Uとの間でウェブWを切断する。すると、切断位置よりも上流側のウェブWの張力が低下(紙張りNG)する。なお、ガイドローラ洗浄作業を実施している期間に対応する時間t4から時間t5までの紙張り期間中、ウェブWは、所定の張力が維持された状態、または、若干弛みをもった状態で搬送される。
【0065】
そして、時間t6にて、ガイドローラ洗浄作業が終了すると共に、ブランケット胴洗浄作業が終了する。また、時間t6にて、給紙装置Rの給紙している巻取紙WRを回転(逆転)し、垂れ下がっているウェブWを巻き取る。そして、時間t7にて、給紙装置Rの保持アーム101a,101b,101cを回転(正転)すると、時間t8にて、巻取紙WRを通常の運転位置(給紙位置)に戻される。
【0066】
また、時間t6にて、インフィードカッタ116の作動により切断された位置よりも下流側のウェブWが印刷装置Uを排出されると、印刷装置Uを単独運転に切り替える。すなわち、時間t6までの運転期間Tsは、印刷装置Uとウェブパス装置Dおよび折機Fを同期して運転していた。時間t6になると、ウェブパス装置Dと折機Fとが同期した緩動速度を継続し、印刷装置Uだけを単独で運転し、例えば、緩動速度より高速で運転する。そして、ローラ洗浄装置162による複数のインキローラや複数の湿しローラの洗浄作業を開始する。時間t9にて、ローラ洗浄作業が終了すると、刷版の取り外し作業を開始する。このとき、印刷装置Uは、単独運転を継続し、刷版の取り外し作業に応じて正転および逆転を繰り返す。その後、時間t10にて、版の取り外し作業が完了すると、印刷装置Uの運転を停止する。
【0067】
一方、インフィードカッタ116の作動によりウェブWが切断されると、インフィードカッタ116の作動により切断された位置よりも下流側のウェブWだけが搬送される。この切断位置から折機FまでのウェブWは、印刷作業と同様に、ウェブパス装置Dおよび折機Fで処理され、折機Fからの折帖として廃止される。時間t11にて、全てのウェブWが排紙されると、後片付け作業が終了する。なお、新聞の形態として排出された折帖は、廃棄処分される。
【0068】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る印刷機は、ウェブWを供給する給紙装置Rと、ウェブWに印刷を行う印刷装置Uと、印刷済のウェブWを縦裁断して重ねると共に搬送経路および経路長を変更するウェブパス装置Dと、縦裁断して重ねられたウェブWを縦折りした後に横断裁して折帖を形成する折機Fと、ウェブパス装置Dに配置されるガイドローラ128を洗浄するガイドローラ洗浄装置163と、給紙装置Rと印刷装置Uとの間でウェブWを切断するインフィードカッタ(切断装置)116と、印刷終了後の後片付け作業を開始する開始信号が入力されるとウェブWを印刷速度より低速である緩動速度で搬送すると共にガイドローラ洗浄装置163を作動してガイドローラ洗浄装置163の作動開始から予め設定された所定時間の経過後にインフィードカッタ116を作動する制御装置160とを備える。
【0069】
第1の態様に係る印刷機は、印刷終了後に、後片付け作業を実施する場合、ウェブWを緩動速度で搬送し、この状態でガイドローラ洗浄作業を開始し、ガイドローラ洗浄作業を開始して所定時間の経過後に、給紙装置Rと印刷装置Uとの間でウェブWを切断する。そのため、ガイドローラ洗浄作業により汚れたウェブWを所定のタイミングで折機Fから切断して排出することができる。その結果、後片付け作業を実施するための作業者を省人化することができ、作業コストの削減を図ることができる。
【0070】
第2の態様に係る印刷機は、所定時間は、ガイドローラ洗浄装置163による予め設定されたガイドローラ洗浄時間より短い時間である。これにより、ガイドローラ洗浄作業を終了する前にウェブWを切断することとなり、ガイドローラ洗浄作業により汚れていないウェブWの廃棄処分量を減少することができる。
【0071】
第3の態様に係る印刷機は、所定時間は、ガイドローラ洗浄時間からインフィードカッタ116によるウェブWの切断端部が印刷装置Uを排出されるまでの排出時間を減算して算出する。これにより、適切なタイミングでウェブWを切断することとなり、ガイドローラ洗浄作業により汚れたウェブWを適切に排出することができると共に、ガイドローラ洗浄作業により汚れていないウェブWの廃棄処分量を減少することができる。
【0072】
第4の態様に係る印刷機は、制御装置160は、インフィードカッタ116を作動した後、ウェブWを緩動速度で継続して搬送することで、ウェブWを折機Fまで搬送して排紙する。これにより、ガイドローラ洗浄作業により汚れたウェブWを折機Fまで搬送し、折帖として排出することとなり、排出された折帖を容易に廃棄することができる。
【0073】
第5の態様に係る印刷機は、ウェブパス装置Dおよび折機Fは、ガイドローラ128の洗浄により洗浄液およびインキが付着したウェブWを搬送して排紙する。これにより、廃棄処分となるウェブWを適切に排紙することができる。
【0074】
第6の態様に係る印刷機は、印刷装置Uに配置されるローラを洗浄するローラ洗浄装置162を有し、制御装置160は、インフィードカッタ116を作動した後、ローラ洗浄装置162を作動する。これにより、印刷装置UにウェブWが存在しなくなり、ローラ洗浄作業を容易に行うことができる。
【0075】
第7の態様に係る印刷機は、制御装置160は、インフィードカッタ116によるウェブWの切断端部が印刷装置Uを排出された後、ローラ洗浄装置162を作動する。これにより、印刷装置UにウェブWが存在しない状態を確認した後、ローラ洗浄作業を行うこととなり、ブランケット胴や版胴などへのウェブWの巻き込みを防止することができる。
【0076】
第8の態様に係る印刷機は、印刷装置Uに配置されるブランケット胴31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34bを洗浄するブランケット胴洗浄装置161を有し、制御装置160は、前記開始信号が入力されるとブランケット胴洗浄装置161を作動する。これにより、ガイドローラ洗浄作業と並行してブランケット胴洗浄作業を実施することができる。
【0077】
第9の態様に係る印刷機は、制御装置160は、インフィードカッタ116を作動した後、給紙装置Rを作動して繰り出されているウェブWを巻き取る。これにより、給紙装置Rから繰り出されたウェブのガイドローラ等への巻付きを抑制することができると共に、次の印刷作業時における巻取紙交換作業や紙通し作業を容易に行うことができる。
【0078】
第10の態様に係る印刷機の後片付け方法は、印刷終了後にウェブWを印刷速度より低速である緩動速度で搬送する工程と、ウェブパス装置Dに配置されるガイドローラ128を洗浄する工程と、ガイドローラ128の洗浄開始から予め設定された所定時間の経過後に給紙装置Rと印刷装置Uとの間でウェブWを切断する工程と、ウェブWが切断された切断端部より下流側のウェブWを折機Fまで搬送して排紙する工程とを有する。これにより、ガイドローラ洗浄作業により汚れたウェブWを所定のタイミングで折機Fから切断して排出することができる。その結果、後片付け作業を実施するための作業者を省人化することができ、作業コストの削減を図ることができる。
【0079】
なお、上述した実施形態では、印刷終了後に作業者が開始スイッチを操作(ON)し、制御装置160は、後片付け作業を開始する開始信号が制御装置160に入力されると、ウェブWを緩動速度で搬送すると共にガイドローラ洗浄装置163を作動するように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、制御装置160は、印刷終了信号を、後片付け作業を開始する開始信号として利用し、ウェブWを緩動速度で搬送すると共にガイドローラ洗浄装置163を作動するように構成してもよい。印刷終了信号は、発送作業者からの入力信号、発送機器からの自動完了信号、工場管制からの印刷完了の入力信号などである。また、制御装置160による自動制御ではなく、ウェブWを緩動速度で搬送する制御やガイドローラ洗浄装置163を作動する制御を作業者が直接操作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
R 給紙装置
R1~R7 給紙ユニット
I インフィード装置
I1~I7 インフィードユニット
U 印刷装置
U1~U6,U11~U62 印刷ユニット
D ウェブパス装置
D1,D2 ウェブパスユニット
F 折機
F1,F2 折ユニット
10 新聞用オフセット輪転印刷機(印刷機)
21,22,23,24 スタック
31a,31b,32a,32b,33a,33b,34a,34b ブランケット胴
41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b 版胴
51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b インキ供給装置
61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64b 湿し水供給装置
100 アーム装置
101 回転軸
101a,101b,101c 保持アーム
102 アーム旋回装置
103 ブレーキ装置
104 巻取紙回転装置
105 ガイドローラ
106 フローティングローラ
107 ガイドローラ
108 テンションピックアップローラ
109 ガイドローラ
111 ガイドローラ
112 インフィードドラグローラ
113 紙押えローラ
114 テンションピックアップローラ
115 駆動モータ
116 インフィードカッタ(切断装置)
121,122,123,124 駆動モータ
125 テンションピックアップローラ
126 出口ドラグローラ
127 紙押えローラ
128 ガイドローラ
129 駆動モータ
131 スリッタナイフ
132 スリッタドラグローラ
133 駆動モータ
134,135 中間ドラグローラ
136,137 駆動モータ
139 ターンバー
141,142 コンペンセータ
151 三角板ドラグローラ
152 紙押えローラ
153 三角板
154 駆動モータ
155,156 テンションピックアップローラ
160 制御装置
161 ブランケット胴洗浄装置
162 ローラ洗浄装置
163 ガイドローラ洗浄装置
171 開始スイッチ
WR 巻取紙
W ウェブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8