(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020271
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形機の射出成形方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/54 20060101AFI20220125BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B29C45/54
B29C45/76
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123670
(22)【出願日】2020-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】久保 義和
(72)【発明者】
【氏名】荒木 寿一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】明山 兼三
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM32
4F206AR072
4F206JA07
4F206JD05
4F206JL02
4F206JM01
4F206JN04
4F206JQ11
4F206JQ31
4F206JT02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既存のスクリュプリプラ式射出装置の構造を大幅に変更することなく、簡単に熱可塑性樹脂の混錬性を向上することが可能な射出成形機および射出成形機の射出成形方法を提供する。
【解決手段】可塑化シリンダ50内でスクリュ51を回転させて成形材料を可塑化する可塑化ユニット5と、射出ユニット6を備えた射出成形機であって、射出ユニット6は、射出室65内を往復移動するプランジャ61と、プランジャ61を往復移動させる射出駆動装置64を有し、射出駆動装置64を駆動してプランジャ61を射出室65内で後退および前進させるとともに、回転駆動装置52を駆動してスクリュ51を正転方向および逆転方向に交互に回転させることで、成形材料が可塑化シリンダ50から射出室65までの間を往復するように制御することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化シリンダの中で成形材料をスクリュの回転によって可塑化する可塑化ユニットと、前記可塑化ユニットから射出シリンダの射出室内に供給された前記成形材料を金型内に射出する射出ユニットと、前記可塑化ユニットと前記射出ユニットの動作を制御する射出制御部を備え、
前記可塑化ユニットは、前記スクリュを回転させる回転駆動装置を有し、
前記射出ユニットは、前記射出室内を往復移動するプランジャと、前記プランジャを往復移動させる射出駆動装置を有し、
前記射出制御部は、前記射出駆動装置を駆動して前記プランジャを前記射出室内で後退および前進させるとともに、前記回転駆動装置を駆動して前記スクリュを正転方向および逆転方向に交互に回転させることで、前記成形材料が前記可塑化シリンダ内から前記射出室内までの流通経路を往復するように制御することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記射出制御部は、
前記回転駆動装置を駆動して前記スクリュを正転方向に回転させ、前記成形材料を前記可塑化シリンダ内から前記射出室内へ押し出して前記プランジャを後退させて、前記プランジャを計量完了位置で停止させ、
前記回転駆動装置を駆動して前記スクリュを逆転方向に回転させるとともに前記射出駆動装置を駆動して前記プランジャを前進させ、前記成形材料を前記射出室内から前記可塑化シリンダ内へ押し戻すことを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項3】
前記射出制御部は、前記スクリュの正転方向、逆転方向の回転および前記プランジャの後退、前進を複数サイクル行わせることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形機。
【請求項4】
前記流通経路に細孔板を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の射出成形機。
【請求項5】
可塑化シリンダの中で成形材料をスクリュの回転によって可塑化する可塑化ユニットと、射出室内を往復移動するプランジャを有する射出ユニットを備えた射出成形機の射出成形方法であって、
前記スクリュを正転方向に回転させて前記成形材料を前記可塑化シリンダから前記射出室内へ押し出して前記プランジャを後退させた後、前記プランジャを計量完了位置で停止させる計量工程と、
前記計量工程の後に前記スクリュを逆転方向に回転させて前記プランジャを前進させ、前記成形材料を前記射出室内から前記可塑化シリンダへ押し出す押戻し工程を行うことを特徴とする射出成形機の射出成形方法。
【請求項6】
前記計量工程と前記押戻し工程は複数サイクル行われることを特徴とする請求項5記載の射出成形機の射出成形方法。
【請求項7】
可塑化シリンダの中で成形材料をスクリュの回転によって可塑化する可塑化ユニットと、射出室内を往復移動するプランジャを有する射出ユニットを備えた射出成形機のプログラムであって、
前記スクリュを正転方向に回転させて前記成形材料を前記可塑化シリンダから前記射出室内へ押し出して前記プランジャを後退させた後、前記プランジャを計量完了位置で停止させる計量工程と、
前記計量工程の後に前記スクリュを逆転方向に回転させて前記プランジャを前進させ、前記成形材料を前記射出室内から前記可塑化シリンダへ押し出す押戻し工程を行わせることを特徴とする射出成形機のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑化ユニットが射出ユニットと分離されたスクリュプリプラ式射出成形機において、特に可塑性樹脂の混錬性を向上した射出成形機、射出成形機の射出成形方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機に備える射出装置の一つとして、従来、例えば特許文献3に開示されているように、熱可塑性の成形材料を可塑化スクリュで可塑化させる可塑化ユニットと、可塑化ユニットで可塑化された溶融状態の成形材料を射出軸で押して射出シリンダから金型内に射出する射出ユニットとを別個に設けてなる、いわゆるスクリュプリプラ式射出装置が知られている。また、熱硬化性の成形材料と添加剤を混合軸またはスタティックミキサで混合させる混合部と、混合部で混合された液状の成形材料を射出軸で押して金型内に射出する射出ユニットとを別箇に設けてなる、スクリュプリプラ式射出装置も知られている。射出軸は、例えば、射出プランジャまたは射出スクリュなどが使われている。
【0003】
昨今、汎用プラスチックの弱点であった強度や耐熱性等の問題を克服した高機能プラスチックに注目が集まっている。高機能プラスチックは高い強度、耐熱性、摺動性、低摩耗性、軽量性、耐薬品性等を備えたいわゆるスーパエンプラと呼ばれる熱可塑性樹脂から形成され、スーパエンプラを成形材料として射出成形して得られた製品は、極めて高い機能性により、工業製品、医療、先端産業部品等、多くの分野で使用されている。
また従来から、成形材料として熱可塑性樹脂原料に可塑剤、充填材、着色剤、強化材、その他各種配合剤を加えて混合して射出成形することにより機能性や強度の高い製品を製造することも盛んに行われている。
【0004】
しかしながら、スーパエンプラの種類である液晶ポリマ、ポリフェニレンスルファイド等の熱可塑性樹脂や強化繊維等の充填材を多量に配合した高充填配合の樹脂組成物は、溶融温度および溶融粘度が高いため可塑化が大変困難で、さらに均一に通常の押出成形や射出成形で成形することが難しい。
また、着色剤等の配合剤をマスターバッチペレットとして所望の熱可塑性樹脂とともに射出成形機に投入して所定の成形品を製造する場合、熱可塑性樹脂との混錬が不十分であると、可塑化が不均一となって成形品に色ムラができてしまう等の問題が生じていた。
よって、難成形樹脂を射出成形することが困難であることの問題や、配合剤の熱可塑性樹脂中への分散混合が不十分となる問題を改善するために、様々な取り組みがなされている。
【0005】
特許文献1は、射出シリンダの内部にトーピードおよび複数のボールを設けた発明であって、ペレット状の樹脂がプランジャにより押されてトーピードの複数の穴に流入し、ボールが回転することで樹脂が撹拌、混錬される射出成形機が開示されている(その段落0027-0029)。
特許文献2は、可塑化工程において、スクリュの下流側に溶融樹脂を充填させた後に、スクリュを後退させながら逆転および正転させて強化繊維を撹拌させる射出成形方法が開示されており(その段落0028-0029、
図3)、プリプラ方式の射出成形機の可塑化装置にこの発明を適用する場合は、可塑化スクリュが前進及び後退できる構造および制御とする必要があることが記載されている(その段落0061)。
特許文献3は、射出成形法で成形する対象の樹脂が高粘度で難成形樹脂である場合、その難成形樹脂に高圧下でガスを溶解させて難成形樹脂の粘度を低下させて射出を行う構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-059204号公報
【特許文献2】特許第6126719号公報
【特許文献3】特願2020-103847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の発明においては、トーピード等の特殊な撹拌部材を射出シリンダ内に配置するため追加の部材が必要となるうえ、難成形樹脂等を使用しない場合は、射出シリンダ内から撹拌部材を取り外す作業が発生し、設定作業が煩雑化してしまう。
また、特許文献2の発明をスクリュプリプラ式射出装置に適用した場合、可塑化スクリュを前進および後退させる構造を追加する等の設計変更が必要となり、従来から使用されているプリプラ式射出装置から構造変更を余儀なくされてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、既存のスクリュプリプラ式射出装置の構造を大幅に変更することなく、簡単に熱可塑性樹脂の混錬性を向上することが可能な射出成形機、射出成形機の射出成形方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の射出成形機は、可塑化シリンダの中で成形材料をスクリュの回転によって可塑化する可塑化ユニットと、前記可塑化ユニットから射出シリンダの射出室内に供給された前記成形材料を金型内に射出する射出ユニットと、前記可塑化ユニットと前記射出ユニットの動作を制御する射出制御部を備え、前記可塑化ユニットは、前記スクリュを回転させる回転駆動装置を有し、前記射出ユニットは、前記射出室内を往復移動するプランジャと、前記プランジャを往復移動させる射出駆動装置を有し、前記射出制御部は、前記射出駆動装置を駆動して前記プランジャを前記射出室内で後退および前進させるとともに、前記回転駆動装置を駆動して前記スクリュを正転方向および逆転方向に交互に回転させることで、前記成形材料が前記可塑化シリンダ内から前記射出室内までの流通経路を往復するように制御することを特徴とする。
また本発明は、可塑化シリンダの中で成形材料をスクリュの回転によって可塑化する可塑化ユニットと、射出室内を往復移動するプランジャを有する射出ユニットを備えた射出成形機の射出成形方法であって、前記スクリュを正転方向に回転させて前記成形材料を前記可塑化シリンダから前記射出室内へ押し出して前記プランジャを後退させた後、前記プランジャを計量完了位置で停止させる計量工程と、前記計量工程の後に前記スクリュを逆転方向に回転させて前記プランジャを前進させ、前記成形材料を前記射出室内から前記可塑化シリンダへ押し出す押戻し工程を行うことを特徴とする。
さらに本発明は、可塑化シリンダの中で成形材料をスクリュの回転によって可塑化する可塑化ユニットと、射出室内を往復移動するプランジャを有する射出ユニットを備えた射出成形機のプログラムであって、前記スクリュを正転方向に回転させて前記成形材料を前記可塑化シリンダから前記射出室内へ押し出して前記プランジャを後退させた後、前記プランジャを計量完了位置で停止させる計量工程と、前記計量工程の後に前記スクリュを逆転方向に回転させて前記プランジャを前進させ、前記成形材料を前記射出室内から前記可塑化シリンダへ押し出す押戻し工程を行わせることを特徴とする。
ここで、「スクリュ」とは実施例において可塑化スクリュを指し、また「プランジャ」とは実施例において射出プランジャを指すものとする。
【0010】
本発明によれば、可塑化計量工程において射出プランジャが繰り返し前後に移動し、可塑化スクリュが正転方向および逆転方向に交互に回転することによって溶融樹脂が射出室と可塑化シリンダの間の流通経路を往復移動する。このような射出成形機の駆動制御により、溶融樹脂の可塑化溶融が促進して可塑性樹脂と配合剤を均一に混合することが可能であり、また溶融温度および溶融粘度が高い難成形樹脂であっても簡単に成形することが可能となる。
【0011】
本発明の前記射出制御部は、前記回転駆動装置を駆動して前記スクリュを正転方向に回転させ、前記成形材料を前記可塑化シリンダ内から前記射出室内へ押し出して前記プランジャを後退させて、前記プランジャを計量完了位置で停止させ、前記回転駆動装置を駆動して前記スクリュを逆転方向に回転させるとともに前記射出駆動装置を駆動して前記プランジャを前進させ、前記成形材料を前記射出室内から前記可塑化シリンダ内へ押し戻すことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、既存のスクリュプリプラ式射出装置の構造を利用して溶融樹脂を射出室と可塑化シリンダの間で往復移動させているため、既存の構造を変更することなく駆動制御の方法を変更するだけで簡単に熱可塑性樹脂の混錬性を向上することが可能となる。
【0013】
本発明の前記射出制御部は、前記スクリュの正転方向、逆転方向の回転および前記プランジャの後退、前進を複数サイクル行わせることを特徴とする。
また本発明の射出成形方法は、前記計量工程と前記押戻し工程は複数サイクル行われることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、スクリュの正転方向、逆転方向の回転およびプランジャの後退、前進を複数回行い計量工程と押戻し工程を複数サイクル繰り返すことで、熱可塑性樹脂の混錬性をさらに向上することが可能となる。
【0015】
本発明の射出成形機は、前記流通経路に細孔板を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、可塑化シリンダ内から射出室内までの流通経路に孔板を備えることにより、溶融樹脂が複数の細孔を通して往復移動し溶融樹脂が分散および撹拌され、混錬性をさらに向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可塑化計量工程において射出プランジャが繰り返し前後に移動し、さらに可塑化スクリュが正転方向および逆転方向に交互に回転することによって、溶融樹脂が射出室と可塑化シリンダの間を往復移動し、溶融樹脂の可塑化溶融が促進する。上述の構成を採用することにより、既存のスクリュプリプラ式射出装置の構造を大幅に変更することなく可塑性樹脂と配合剤を均一に混合することが可能となるうえ、溶融温度および溶融粘度が高い難成形樹脂であっても簡単に成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態における射出成形機1を示す概略図である。
【
図2】上記実施形態の射出成形機1の型締装置2を示す概略図である。
【
図3】上記実施形態の射出成形機1の射出装置3を示す概略側面図である。
【
図4】上記実施形態の射出成形機1の射出装置3を示す概略斜視図である。
【
図5】上記実施形態の制御装置4の構成を示すブロック図である。
【
図6】上記実施形態の可塑化計量工程における射出装置3の動作を説明するための説明図(その1)である。
【
図7】上記実施形態の可塑化計量工程における射出装置3の動作を説明するための説明図(その2)である。
【
図8】上記実施形態の可塑化計量工程の流れを示すフロー図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態における射出成形機100の要部を示す概略図である。
【
図10】上記実施形態の細孔板70を示す斜視図である。
【
図11】上記実施形態の細孔板70を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<1. 本発明の第1の実施形態>
(1.1 射出成形機1の全体構成)
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の射出成形機1を示す概略構成図である。本発明の射出成形機1は、機台9上に、型締装置2、射出装置3が配置され、さらに、制御装置4の本体が機台9内に設けられ、制御装置4の操作パネルユニット40が型締装置2と射出装置3の間に設けられる。また、制御装置4の本体は、操作パネルユニット40内に設けられてもよい。
【0020】
型締装置2は、金型を開閉させる機構を有し、金型に樹脂材料を充填した時に十分な圧力(型締力)をかける構造になっている。型締力をかけることで溶けた樹脂材料が金型に入ってくる時の圧力に負けないようにして、金型から樹脂材料が外に出ないようにする。一方、射出装置3は、樹脂材料を加熱しながら可塑化して溶融し、その溶融樹脂を高圧で射出して型締装置2に搭載された金型内のキャビティ空間に充填し、そのキャビティ空間内の溶融樹脂を冷却し固化させて成形品を得る。
【0021】
図2は、本発明の実施形態における射出成形機1の型締装置2の概略図である。
型締装置2は、タイバ10によって連結された固定プラテン11とバックプラテン12と、それらのプラテン間で移動する可動プラテン13、そして、可動プラテン13を固定プラテン11に対して進退させて押圧する型締駆動装置14を機台9の上に備える。固定プラテン11には、金型20の固定側金型20aが取り付けられ、可動プラテン13には、金型20の可動側金型20bが取り付けられる。金型20の取り付けは、複数個の金型取り付け部材16によって固定プラテン11側または可動プラテン13側に締め付けて固定するようにされる。型締駆動装置14は、可動プラテン13を可動側金型20bとともに進退させて型開閉し、押圧して型締めする装置であり、例えば油圧駆動あるいは電動油圧駆動の直圧式型締装置やトグル式型締装置などがある。成形材料を可塑化して射出する射出装置3は、型締装置2の固定プラテン11側に配置される。
【0022】
図3は本発明の実施形態における射出成形機1の射出装置3を示す概略側面図であり、
図4は本発明の実施形態における射出成形機1の射出装置3を示す概略斜視図である。
射出装置3では、樹脂材料を可塑化して溶融する可塑化ユニット5と、その溶融樹脂を金型20内のキャビティ空間21に向かって射出充填する射出ユニット6とが別設され、それらが溶融樹脂の連通路7aを有する連結部材7で接続されている。
【0023】
可塑化ユニット5は、可塑化シリンダ50と、可塑化シリンダ50内の可塑化スクリュ51と、可塑化スクリュ51を回転させる回転駆動装置52と、可塑化スクリュ51を僅かに進退させる逆止駆動装置53を有する。ホッパ8が、可塑化シリンダ50の後端側から樹脂材料を供給するために設けられる。
【0024】
可塑化シリンダ50の内部は、連通路7aおよび射出ユニット6の連通路62aを介して、射出ユニット6の射出室65と連通している。連通路7aの可塑化ユニット側の開口7bは、可塑化スクリュ51の軸線上に位置している。可塑化スクリュ51の先端は先鋭した円錐状に形成されている。回転駆動装置52が駆動されると、可塑化スクリュ51が正転方向CW(時計回り方向)または逆転方向CCW(反時計回り方向)に回転する。
【0025】
逆止駆動装置53は、後述される射出プランジャ61によって射出室65内に圧力が掛けられた際に、射出室65内の成形材料が可塑化シリンダ50内に逆流することを防止するために設けられている。その具体的な構成としては、例えば特許第6281999号公報に示されているように、空圧シリンダ等の駆動部により可塑化スクリュ51を前進させて、可塑化スクリュ51の先端で連通路7aの可塑化ユニット側の開口7bを閉塞する構成等を採用することができる。また、逆止駆動装置53は、上述の構成に限られず、連通路7aの途中を閉塞するチェック弁、ロータリ弁またはニードル弁などの開閉弁を採用してもよい。
【0026】
射出ユニット6は、射出シリンダ60と、射出シリンダ60の射出シリンダ孔60a内の射出プランジャ61と、射出プランジャ61を進退させる射出駆動装置64と、射出シリンダ60の前端にノズルシリンダ62を介して取り付けられる射出ノズル63とを有する。ノズルシリンダ62の射出シリンダ60側端面には、射出プランジャ61の先端面61aと略等しい形状の前壁62bが形成されている。その前壁62bと射出シリンダ60の射出シリンダ孔60aと射出プランジャ61の先端面61aとで囲まれた空間として射出室65が形成される。そして、射出室65には、連結部材7の連通路7aを介して可塑化シリンダ50内と連通する連通路62aや射出ノズル63の先端にまで連通する射出孔63aが開口している。カップリング66は、射出プランジャ61と射出駆動装置64の駆動ロッドを連結する。
【0027】
射出ユニット6の各種駆動装置は、油圧式または空圧式または電動式などで適宜構成される。
【0028】
可塑化シリンダ50、射出シリンダ60、ノズルシリンダ62、連結部材7、射出ノズル63などの外周には、バンドヒータ等の加熱器69(以下、単にヒータという)が設けられる。例えば、各シリンダは、先端部、中間部、後端部のように軸方向に複数のゾーンに分けられて、それぞれにヒータ69が巻かれる。また、射出ノズル63にもヒータ69が巻かれる。
図3は、便宜上、可塑化シリンダ50にヒータ69が巻かれた状態を示しているが、射出シリンダ60、ノズルシリンダ62、連結部材7、射出ノズル63にも巻かれる。ホッパ8から可塑化シリンダ50に供給された成形材料は、ヒータによる可塑化シリンダ50等の加熱および可塑化スクリュ51の圧縮と回転に伴う剪断発熱によって溶融される。
【0029】
(1.2.制御装置4の構成)
図5は、本発明の実施形態における制御装置4の構成を示すブロック図である。
制御装置4は、操作パネルユニット40が設けられ、ハードディスクなどの記憶装置(記憶部)41、基板に配設された少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)とキャッシュメモリ(二次キャッシュ)を含む演算装置、専用のスロットに差し込まれた増設のRAM(Random Access Memory)、各種インターフェースのような付属部品が1つの収納された筐体とで構成される。
【0030】
また、記憶装置41には、オペレーティングシステムなどの基本ソフトウェアに加え、専用ソフトウェアがインストールされ、演算装置のCPUによって実行されることにより、制御装置4が制御部42として機能する。
【0031】
制御部42は、型締装置2の動作を制御する型締制御部422、射出装置3の動作を制御する射出制御部423、および、型締制御部422と射出制御部423で型締装置2と射出装置3を制御して型閉および型締め、射出、保圧、可塑化計量、型開、取出の順番で成形品の成形を行う成形制御部421が設けられる。
【0032】
型締制御部422は、可動側金型20bとともに可動プラテン13を進退させて型開閉し、さらに、型工程では閉じられた金型20a、20bの密着後に所定の型締力まで昇圧するように型締駆動装置14を制御する。
【0033】
射出制御部423は、射出プランジャ61が移動した位置や速度を逐次検出するための位置検出装置および射出プランジャ61が射出室65内の溶融樹脂に与える圧力を逐次検出するための圧力検出装置の実際の検出値を読み込み、それら検出値と予め設定された成形条件などとを比較しながら、予め設定された成形条件や動作手順に従って動作するように指令を出して射出駆動装置64を制御する。位置検出装置としては、
図3に示すようなリニアスケール68などを用いても良いし、射出駆動装置64がモータであればロータリエンコーダで検出した回転数から算出するようにしても良い。速度の実測値は、例えば、位置検出装置から逐次検出される位置情報を、演算装置の基準クロックを参照して速度情報に変換して求めることができる。また、圧力検出装置としては、
図3に示すように射出プランジャ61後端と射出駆動装置64の駆動ロッド前端との間にロードセル67を用いても良いし、射出駆動装置64が油圧シリンダであれば射出プランジャ61を前進させる側の油室の圧力を検出するようにしても良いし、射出駆動装置64がモータであれば電流計測器やトルク計測器で検出したモータの入力電流や回転トルクから算出するようにしても良い。
また、射出制御部423は回転駆動装置52を駆動して、可塑化スクリュ51を正転方向CWまたは逆転方向CCWに回転制御を行う。
【0034】
成形制御部421は、型締制御部422で型締装置2の型締駆動装置14を制御して型閉および型締めを行い、射出制御部423で各種駆動装置52、53、64を制御して射出、保圧、可塑化計量を行う。最後に、型締制御部422で、型締装置2に取り付けられた金型20の型締を開放し型開すると、成形品が取り出される。
【0035】
操作パネルユニット40は、表示装置、キーボードや各種ボタンが設けられた操作盤が配設され、成形条件等の各種設定が可能である。少なくとも後述する押戻し工程における射出プランジャ61の前進時間や計量工程と押戻し工程の繰り返し回数を設定することができる。
【0036】
(1.3. 射出成形機1の成形サイクル)
図6は、上記実施形態の可塑化計量工程における射出装置3の動作を説明するための説明図(その1)であり、
図7は、上記実施形態の可塑化計量工程における射出装置3の動作を説明するための説明図(その2)である。
図8は、上記実施形態の可塑化計量工程の流れを示すフロー図である。
本実施形態においては、以上のように構成された射出成形機1を使用して射出工程(S01)、保圧工程(S02)、可塑化計量工程(S03)の順に成形サイクルが繰り返し行われる。以下の説明においては発明の技術的特徴である可塑化計量工程(S03)について主に説明を行う。
【0037】
可塑化計量工程(S03)においては、最初にホッパ8から供給された樹脂材料が、回転駆動装置52により正転方向CWに回転している可塑化スクリュ51による剪断発熱とヒータ69による加熱によって可塑化溶融され、連通路7aの開口7bへ押し出される(S301)。逆止駆動装置53は、押し出す溶融樹脂に作用する背圧により可塑化スクリュ51の後退を許容して、可塑化シリンダ50側の連通路7aの開口7bを開く(可塑化工程:S302、
図6)。
溶融樹脂は、可塑化スクリュ51の正転方向CWの回転によって連通路7a、62aを通して射出室65内へ押し出され、溶融樹脂が射出室65に送り出されるに伴って射出プランジャ61が溶融樹脂の背圧により後退し、その後退量がリニアスケール68等の位置検出装置で検出される(S303)。やがて、射出プランジャ61の後退位置が計量完了位置に達したときに可塑化スクリュ51の回転を停止する(計量工程:S304)。
次に、射出駆動装置64により射出プランジャ61を予め設定された時間だけ前進させるとともに、可塑化スクリュ51を逆転方向CCWに回転させる(押戻し工程:S305)。射出室65内の溶融樹脂は射出プランジャ61からの圧力および可塑化スクリュ51の逆転方向CCWの回転により、射出室65内から連通路62a、7aを通して連通路7aの開口7bから可塑化シリンダ50内に押し戻される。このとき、逆止駆動装置53は、押し戻される溶融樹脂に作用する圧力により可塑化スクリュ51の後退を許容して、可塑化シリンダ50側の連通路7aの開口7bは開いた状態となっている(
図7)。溶融樹脂は、連通路7a、62aを介しての射出室65内から可塑化シリンダ50への移動やヒータ69による加熱、逆転方向CCWに回転している可塑化スクリュ51による剪断発熱によって可塑化溶融が促進する。
そして、射出駆動装置64は射出プランジャ61の前進動作を停止して、回転駆動装置52は可塑化スクリュ51の回転を停止し(S306)、今度は可塑化スクリュ51を正転方向CWに回転する(S308)。溶融樹脂は可塑化スクリュ51による剪断発熱とヒータ69による加熱によってさらに可塑化溶融され、可塑化スクリュ51の正転方向CWの回転によって連通路7a、62aを通して射出室65内へ押し出され、射出プランジャ61が溶融樹脂の背圧により後退し、その後退量がリニアスケール68等の位置検出装置で検出される。やがて、射出プランジャ61の後退位置が計量完了位置に達したときに可塑化スクリュ51の回転を停止する(S303-S304)。
計量工程および押戻し工程は、あらかじめ設定された回数繰り返し行われる(S307)。
【0038】
このように、可塑化計量工程において射出プランジャ61が繰り返し前後に移動し、そして可塑化スクリュ51が正転方向CWおよび逆転方向CCWに交互に回転することによって、溶融樹脂は、射出室65内から可塑化シリンダ50へ、可塑化シリンダ50から射出室65内へ往復移動し、さらに可塑化スクリュ51の交互回転による剪断発熱によって可塑化溶融が促進される。
よって難成形樹脂であっても簡単に射出成形することが可能で、可塑性樹脂と配合剤を均一に混合することが可能となる。
【0039】
射出工程(S01)においては、射出プランジャ61が前進して、溶融樹脂を射出ノズル63から金型20内のキャビティ空間21に向かって充填する。予め設定された充填速度条件に従って、充填速度、例えば射出プランジャ61の前進速度が優先されて制御された状態で、溶融樹脂を金型20内のキャビティ21内の空間に向けて充填する。なお、その充填の前には、逆止駆動装置53が可塑化スクリュ51を前進させて、可塑化シリンダ50側の連通路7aの開口を閉塞して逆流防止が行われ、射出ノズル63からの鼻垂れを防止するサックバック、すなわち射出プランジャ61を僅かに後退させる動作が行われる。
【0040】
その後の保圧工程(S02)では、例えば射出プランジャ61が溶融樹脂に付与する所定の圧力が優先されて制御された状態で、その金型20内に充填された溶融樹脂の冷却にともなう熱収縮分も含め、金型20内で不足している分の溶融樹脂が充填される。さらに、保圧工程ではキャビティ空間21に隣接する金型20内のゲート部分の溶融樹脂が固化するまでキャビティ空間21内の溶融樹脂に圧力を付与して逆流を防止する。
【0041】
<2. 本発明の第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態における射出成形機100の要部を示す概略図であり、
図10は、上記実施形態の細孔板70を示す斜視図である。
図11は、上記実施形態の細孔板70を示す平面図である。
本発明の第2の実施形態における射出成形機100は、混錬性を向上するために溶融樹脂の流通経路に細孔板70を設けたものであって、その他の構成は第1の実施形態の射出成形機1と同様であるため、同様の機能および構成を有するものに関しては、第1の実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
本発明の細孔板70は、溶融樹脂の流路に設けられた円盤状の平板であり、中央部71に厚さ方向に貫通する所定の径の細孔71aが多数設けられている。細孔板70は細孔71a内を溶融樹脂が通過するように、溶融樹脂の流通経路方向に対して立設するように設けられている。本実施の形態では、細孔板70は、溶融樹脂の流通経路上でかつ可塑化スクリュ51や射出プランジャ61の移動に邪魔にならない位置である射出シリンダ60とノズルシリンダ62の間に設けられている(
図9)。
細孔板70の細孔71aの径や形状および数は、対象とする溶融樹脂や混在する配合剤の種類に基づいて適宜設定することができ、細孔71aの形状は、円形状や楕円形状、線状等、種々の形状を組み合わせて使用することが可能である。
【0043】
計量工程において、溶融樹脂は可塑化シリンダ50から複数の細孔71aを通して射出室65内へ流入し、押戻し工程において射出室65内から細孔71aを通して可塑化シリンダ50に流入する。このように溶融樹脂が流通経路上を往復移動する際に複数の細孔71aを通して移動するため、溶融樹脂が分散するとともに細孔板70によって乱流が発生して溶融樹脂が撹拌され、混錬性をさらに向上することが可能となる。
【0044】
以上、本実施形態では、熱可塑性の成形材料を使用するスクリュプリプラ式射出成形機について説明を行ったが、成形材料にガスを圧縮溶解できる射出装置や、熱硬化性の成形材料と添加剤を混合軸またはスタティックミキサで混合させる混合部を有するスクリュプリプラ式射出装置適用可能である。
【0045】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置
5 可塑化ユニット
6 射出ユニット
7 連結部材
7a 連通路
8 ホッパ
9 機台
10 タイバ
11 固定プラテン
12 バックプラテン
13 可動プラテン
14 型締駆動装置
16 部材
20 金型
20a 固定側金型
20b 可動側金型
21 キャビティ空間
40 操作パネルユニット
41 記憶部
42 制御部
421 成形制御部
422 型締制御部
423 射出制御部
50 可塑化シリンダ
51 可塑化スクリュ
52 回転駆動装置
53 逆止駆動装置
60 射出シリンダ
60a 射出シリンダ孔
61 射出プランジャ
61a 先端面
62 ノズルシリンダ
62a 連通路
62b 前壁
63 射出ノズル
63a 射出孔
64 射出駆動装置
65 射出室
66 カップリング
67 ロードセル
68 リニアスケール
69 加熱器(ヒータ)
70 細孔板