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特開2022-20279遮音性能測定方法及び遮音性能測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020279
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】遮音性能測定方法及び遮音性能測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G01H17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123682
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史明
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕三
(72)【発明者】
【氏名】西井 朋也
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA05
2G064AB16
2G064BA28
2G064CC13
2G064CC30
2G064CC41
2G064DD26
(57)【要約】
【課題】測定対象の周波数帯域全体の遮音性能を、測定時間を抑制しながら効率よく測定する。
【解決手段】本遮音性能測定方法は、測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数から少なくとも1組の中心周波数を選定し(S70)、選定した各組の2つの中心周波数の各々について、測定周波数帯域よりも広い出力周波数帯域を設定した後(S80)、各組の2つの出力周波数帯域の信号を合成した合成インパルス試験音を出力して(S90)、出力の応答を2つの中心周波数に対応する測定周波数帯域毎に分析する(S100~S130)インパルス応答測定を含む。これにより、全ての測定周波数帯域毎に試験音を出力して測定を行うことなく、選定した組毎に合成した試験音を出力して測定を行うため、測定時間を抑制しながら、測定対象の周波数帯域全体の遮音性能を効率よく測定することが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を、建築物内の音源室で出力される試験音を前記音源室と建築物内の受音室との双方で収音した前記試験音の差分を利用して、複数の測定周波数帯域毎に測定して把握する方法であって、
前記複数の測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数から少なくとも1組の中心周波数を選定し、該選定した各組に含まれる2つの中心周波数の各々について、対応する測定周波数帯域よりも広い出力用の出力周波数帯域を設定した後、前記2つの中心周波数に対応する2つの前記出力周波数帯域の信号を合成した合成インパルス試験音を出力して、該出力の応答を前記2つの中心周波数に対応する測定周波数帯域毎に分析するインパルス応答測定を含むことを特徴とする遮音性能測定方法。
【請求項2】
前記インパルス応答測定が、Swept-sine法を用いたものであり、
前記2つの中心周波数に対応する2つの前記出力周波数帯域を、一方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数が、他方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数の3倍の大きさになるように設定することを特徴とする請求項1記載の遮音性能測定方法。
【請求項3】
前記複数の測定周波数帯域の全てにわたるピンクノイズ試験音を出力し、該出力の収音結果を測定対象の測定周波数帯域毎に分析するピンクノイズ測定を含み、
前記複数の測定周波数帯域を低周波数帯域と高周波数帯域との2つに分け、前記低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定を前記ピンクノイズ測定によって実行し、前記高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定を前記インパルス応答測定によって実行することを特徴とする請求項1又は2記載の遮音性能測定方法。
【請求項4】
前記複数の測定周波数帯域として、125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域が含まれ、
前記ピンクノイズ測定により、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域との測定を実行し、
前記インパルス応答測定により、500Hz及び2000Hzを前記2つの中心周波数とする組と、1000Hz及び4000Hzを前記2つの中心周波数とする組との2組を選定し、該選定した組毎に測定を実行することを特徴とする請求項3記載の遮音性能測定方法。
【請求項5】
中心周波数が500Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を353Hz及び943Hzに設定すると共に、中心周波数が2000Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を1059Hz及び2829Hzに設定し、
中心周波数が1000Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を707Hz及び1886Hzに設定すると共に、中心周波数が4000Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を2121Hz及び5658Hzに設定することを特徴とする請求項4記載の遮音性能測定方法。
【請求項6】
前記インパルス応答測定により、前記複数の中心周波数の全てを網羅するように複数組の中心周波数を選定し、該選定した組毎に測定を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の遮音性能測定方法。
【請求項7】
請求項3から5のいずれか1項記載の遮音性能測定方法を利用して、高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を測定するシステムであって、
前記音源室に設置され、試験音を出力するための出力装置と、
前記音源室と前記受音室との双方に設置され、試験音を収音するための収音装置と、
前記出力装置及び前記収音装置に接続される制御装置と、を含み、
該制御装置は、前記出力装置から前記合成インパルス試験音を出力させ、前記収音装置から収音した結果を利用して前記インパルス応答測定を行うインパルス応答測定部と、前記出力装置から前記ピンクノイズ試験音を出力させ、前記収音装置から収音した結果を利用して前記ピンクノイズ測定を行うピンクノイズ測定部と、を含むことを特徴とする遮音性能測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を測定して把握する遮音性能測定方法と、これを利用する遮音性能測定システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高遮音性能仕様を有する建築物の空気音遮音性能の測定には、例えば、非特許文献1に示すJIS A 1417:2000「建築物の空気音遮断性能の測定方法」に基づく手法(以下、単に「JISに基づく手法」とも言う。)や、インパルス応答測定に基づく手法などが利用される。JISに基づく手法は、定常で測定対象周波数範囲の全体にわたって連続的なスペクトルを有する試験音(ピンクノイズ)を出力し、1/3オクターブバンド又は1オクターブバンド中心周波数毎の測定結果から、音源室と受音室との間の音圧レベルの差分を算出して、遮音性能を求めるものである。インパルス応答測定に基づく手法は、空間にインパルスを入力した際の応答の二乗積分値から単発音圧暴露レベルを算出し、音源室と受音室との間の差分をとることで遮音性能を求めるものである。特に、国内ではSwept-sine法が広く用いられており、例えば1オクターブバンド中心周波数毎の各帯域について、下限周波数から上限周波数へとシフトさせる試験音を用い、帯域毎に測定を行う場合もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本産業規格 JIS A 1417:2000「建築物の空気音遮断性能の測定方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、音響測定を行う上での基本事項として、測定結果に含まれる不要な暗騒音に対する試験音の比(S/N)に、十分な大きさを確保することが挙げられる。そして、遮音性能を評価する測定では、高い周波数帯域になるほど建築物の遮音性能が向上するため、高周波数帯域において暗騒音の影響を受け易くなる。このため、特に受音室側で測定する高周波数帯域について、S/Nの大きさに留意しなければならない。上述したJISに基づく手法では、測定対象周波数範囲の全体にわたるピンクノイズを空間に放射して測定するため、暗騒音の影響を受け難い低い周波数帯域では遮音性能の評価が可能であるが、高い周波数帯域になるほど暗騒音の影響を受け易くなり、評価ができなくなるという問題がある。
【0005】
一方、Swept-sine法などを用いるインパルス応答測定に基づく手法では、空間での暗騒音の影響が試験音の信号の長さに依存するため、信号の長さを調整すれば、高い周波数帯域の音まで測定して遮音性能を評価することができる。しかしながら、暗騒音の影響を低減するために、特に高い周波数帯域の試験音の長さが長くなる傾向にあり、それに伴って測定時間が長くなってしまう問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、測定対象の周波数帯域全体の遮音性能を、測定時間を抑制しながら効率よく測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を、建築物内の音源室で出力される試験音を前記音源室と建築物内の受音室との双方で収音した前記試験音の差分を利用して、複数の測定周波数帯域毎に測定して把握する方法であって、前記複数の測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数から少なくとも1組の中心周波数を選定し、該選定した各組に含まれる2つの中心周波数の各々について、対応する測定周波数帯域よりも広い出力用の出力周波数帯域を設定した後、前記2つの中心周波数に対応する2つの前記出力周波数帯域の信号を合成した合成インパルス試験音を出力して、該出力の応答を前記2つの中心周波数に対応する測定周波数帯域毎に分析するインパルス応答測定を含む遮音性能測定方法(請求項1)。
【0008】
本項に記載の遮音性能測定方法は、高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を、複数の測定周波数帯域毎に測定して把握する方法であり、合成インパルス試験音を出力するインパルス応答測定を含んでいる。すなわち、本遮音性能測定方法のインパルス応答測定では、測定対象の複数の測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数から、試験音の合成対象とする少なくとも1組の中心周波数を選定する。そして、選定した各組に含まれる2つの中心周波数の各々について、対応する測定周波数帯域とは別に、試験音として出力するための出力用の出力周波数帯域を設定する。
【0009】
つまり、試験音の合成対象として選定された中心周波数の各々に、測定用の測定周波数帯域に加えて出力用の出力周波数帯域を設定し、この際、測定周波数帯域を包含するような測定周波数帯域よりも広い帯域に出力周波数帯域を設定する。そして、選定した各組に含まれる2つの中心周波数に対応する2つの出力周波数帯域の信号を合成し、上述した合成インパルス試験音として建築物内の音源室で出力して、音源室と建築物内の受音室との双方で収音して測定する。この測定時には、試験音を合成した各組の2つの中心周波数に対応する測定周波数帯域毎に分析を行って単発音圧暴露レベルを算出し、各測定周波数帯域での音源室と受音室との分析結果の差分を利用して、測定周波数帯域毎の遮音性能を把握するものである。
【0010】
これにより、測定対象の全ての測定周波数帯域毎に試験音を出力して測定を行うことなく、選定した組毎に合成した試験音を出力して測定を行うため、従来のインパルス応答測定に基づく手法と比較して、測定時間が短縮されるものとなる。しかも、測定周波数帯域よりも広く出力周波数帯域を設定する際の帯域の調整により、測定周波数帯域毎に行う分析には何ら影響を与えることなく、2つの出力周波数帯域の信号の合成時に弊害が発生することを回避するものである。従って、測定時間が抑制されながら、測定対象の周波数帯域全体の遮音性能が効率よく測定されるものとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記インパルス応答測定が、Swept-sine法を用いたものであり、前記2つの中心周波数に対応する2つの前記出力周波数帯域を、一方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数が、他方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数の3倍の大きさになるように設定する遮音性能測定方法(請求項2)。
本項に記載の遮音性能測定方法は、Swept-sine法を用いてインパルス応答測定を行うものであり、これによって、選定した各組の2つの中心周波数に対応する2つの出力周波数帯域の合成前の各信号は、下限周波数から上限周波数へとシフトする正弦波のような波形が信号の終わりまで連続する態様となる。ここで、そのような2つの信号をそのまま合成すると、信号の山と山とが重なる部分や谷と谷とが重なる部分の振幅が大きくなってしまい、出力時に音が歪んでしまう虞や、出力に使用する装置が破壊される虞がある。更に、これを回避するために合成した試験音の出力ボリュームを小さくすると、空間に放射される試験音の成分が減るため、暗騒音の影響を受け易くなってしまい、遮音性能の評価ができなくなる虞もある。
【0012】
そこで、本項に記載の遮音性能測定方法は、合成対象である各組の2つの中心周波数に対応する2つの出力周波数帯域を、一方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数が、他方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数の3倍の大きさになるように設定する。これにより、そのような2つの出力周波数帯域の信号を合成しても、信号の山と山及び谷と谷が直接的に重なることが回避され、合成した信号の振幅の大きさが抑制されるものである。従って、そのように合成した合成インパルス試験音の出力ボリュームを大きくしても、音の歪みや出力装置の破壊が発生することなく、多くの試験音の成分が空間に放射されるため、問題なく遮音性能が測定されるものとなる。
【0013】
(3)上記(1)(2)項において、前記複数の測定周波数帯域の全てにわたるピンクノイズ試験音を出力し、該出力の収音結果を測定対象の測定周波数帯域毎に分析するピンクノイズ測定を含み、前記複数の測定周波数帯域を低周波数帯域と高周波数帯域との2つに分け、前記低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定を前記ピンクノイズ測定によって実行し、前記高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定を前記インパルス応答測定によって実行する遮音性能測定方法(請求項3)。
【0014】
本項に記載の遮音性能測定方法は、インパルス応答測定に加えてピンクノイズ測定を含むものであり、このピンクノイズ測定では、複数の測定周波数帯域の全てにわたるピンクノイズ試験音を音源室で出力し、この出力を音源室と受音室との双方で収音する。更に、その収音結果をピンクノイズ測定の測定対象の測定周波数帯域毎に分析して音圧レベルを算出し、各測定周波数帯域での音源室と受音室との分析結果の差分を利用して、測定周波数帯域毎の遮音性能を把握するものである。そして、本項に記載の遮音性能測定方法では、測定対象の複数の測定周波数帯域を、暗騒音の影響を受け難い低周波数帯域と、暗騒音の影響を受け易い高周波数帯域との2つに分け、一方をピンクノイズ測定によって、もう一方をインパルス応答測定により測定する。
【0015】
すなわち、低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をピンクノイズ測定によって実行し、高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をインパルス応答測定によって実行する。これにより、暗騒音の影響を受け易い高周波数帯域には不向きであるが、暗騒音の影響を受け難い低周波数帯域の測定は何ら問題なく行えるピンクノイズ測定によって、低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定がまとめて行われるものとなる。更に、暗騒音の影響を受け易い残りの高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定は、上記(1)項に記載したように、選定された組毎に合成インパルス試験音を出力するインパルス応答測定によって行われる。従って、測定対象の測定周波数帯域の遮音性能の測定が、全体の測定時間がより短縮されて、より効率よく実行されるものとなる。
【0016】
(4)上記(3)項において、前記複数の測定周波数帯域として、125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域が含まれ、前記ピンクノイズ測定により、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域との測定を実行し、前記インパルス応答測定により、500Hz及び2000Hzを前記2つの中心周波数とする組と、1000Hz及び4000Hzを前記2つの中心周波数とする組との2組を選定し、該選定した組毎に測定を実行する遮音性能測定方法(請求項4)。
【0017】
本項に記載の遮音性能測定方法は、1オクターブバンド毎の125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域を、測定対象の複数の測定周波数帯域として含むものである。そして、125Hz及び250Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域を、ピンクノイズ測定によって測定する低周波数帯域に分別し、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域を、インパルス応答測定によって測定する高周波数帯域に分別する。これに従い、複数の測定周波数帯域にわたるピンクノイズ試験音の収音結果を、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域との各々で分析して、125Hz及び250Hzの音圧レベルを算出し、低周波数帯域のピンクノイズ測定を実行する。
【0018】
一方、インパルス応答測定では、中心周波数が500Hz及び2000Hzの組を、信号を合成する2つの中心周波数の組として選定すると共に、中心周波数が1000Hz及び4000Hzの組を、信号を合成する2つの中心周波数の組として選定する。又、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々について、対応する測定周波数帯域よりも広い出力周波数帯域を設定する。そして、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の信号と、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の信号とを合成した合成インパルス試験音を出力して、この出力の応答を中心周波数が500Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が2000Hzの測定周波数帯域とによって分析する。
【0019】
同様に、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の信号と、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の信号とを合成した合成インパルス試験音を出力して、この出力の応答を中心周波数が1000Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が4000Hzの測定周波数帯域とによって分析する。このようにして、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々の単発音圧暴露レベルを算出し、高周波数帯域のインパルス応答測定を実行するものである。これにより、中心周波数が1オクターブバンド毎の測定周波数帯域の測定が、ピンクノイズ測定の特徴が活かされる低周波数帯域と、インパルス応答測定の特徴が活かされる高周波数帯域との何れかに分別されて、効率よく短時間で実行されるものとなる。
【0020】
(5)上記(4)項において、中心周波数が500Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を353Hz及び943Hzに設定すると共に、中心周波数が2000Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を1059Hz及び2829Hzに設定し、中心周波数が1000Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を707Hz及び1886Hzに設定すると共に、中心周波数が4000Hzの前記出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を2121Hz及び5658Hzに設定する遮音性能測定方法(請求項5)。
【0021】
本項に記載の遮音性能測定方法は、上記(4)項に記載したようにインパルス応答測定の対象となる、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする出力周波数帯域を、本発明者らの試行錯誤によって見出された適切な範囲に規定するものである。具体的には、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、353Hz及び943Hzに設定すると共に、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、1059Hz及び2829Hzに設定する。これによって、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域は、それと合成される中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の、3倍の大きさになる関係に設定される。
【0022】
更に、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、707Hz及び1886Hzに設定すると共に、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、2121Hz及び5658Hzに設定する。これによって、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域は、それと合成される中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の、3倍の大きさになる関係に設定される。このようにすることで、Swept-sine法などを用いたインパルス応答測定を行う場合でも、合成後の信号の振幅の大きさが抑制されるため、何ら問題なく高周波数帯域の遮音性能が測定されるものとなる。
【0023】
(6)上記(1)(2)項において、前記インパルス応答測定により、前記複数の中心周波数の全てを網羅するように複数組の中心周波数を選定し、該選定した組毎に測定を実行する遮音性能測定方法(請求項6)。
本項に記載の遮音性能測定方法は、測定対象の複数の測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数の全てを網羅するように、信号を合成する中心周波数の組を複数組選定することで、測定対象の全ての測定周波数帯域における遮音性能を、インパルス応答測定によって測定するものである。これにより、測定手法としてインパルス応答測定のみが用いられるにも関わらず、各組の測定において2つの出力周波数帯域の信号が合成された合成インパルス試験音が利用されるため、結果として測定対象の測定周波数帯域全体での測定時間が抑制されるものとなる。
【0024】
(7)上記(3)から(5)項のいずれか1項記載の遮音性能測定方法を利用して、高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を測定するシステムであって、前記音源室に設置され、試験音を出力するための出力装置と、前記音源室と前記受音室との双方に設置され、試験音を収音するための収音装置と、前記出力装置及び前記収音装置に接続される制御装置と、を含み、該制御装置は、前記出力装置から前記合成インパルス試験音を出力させ、前記収音装置から収音した結果を利用して前記インパルス応答測定を行うインパルス応答測定部と、前記出力装置から前記ピンクノイズ試験音を出力させ、前記収音装置から収音した結果を利用して前記ピンクノイズ測定を行うピンクノイズ測定部と、を含む遮音性能測定システム(請求項7)。
【0025】
本項に記載の遮音性能測定システムは、上記(3)から(5)項のいずれか1項の遮音性能測定方法を利用して、高遮音性能仕様が適用される建築物の空気音遮音性能を測定するものであり、出力装置、収音装置、及び制御装置を含んでいる。出力装置は、各測定手法で利用する試験音を出力するためのものであり、測定対象の建築物の音源室に設置される。収音装置は、出力装置から出力された試験音を収音するためのものであり、測定対象の建築物の音源室及び受音室の双方に設置される。制御装置は、出力装置及び収音装置に接続され、インパルス応答測定部及びピンクノイズ測定部を含んでいる。インパルス応答測定部は、インパルス応答測定を行う部位であり、2つの出力周波数帯域の信号が合成された合成インパルス試験音を出力装置から出力させ、収音装置を介して収音されたその応答結果を、合成した信号に対応する2つの測定周波数帯域毎に分析する。
【0026】
又、ピンクノイズ測定部は、ピンクノイズ測定を行う部位であり、複数の測定周波数帯域にわたるピンクノイズ試験音を出力装置から出力させ、収音装置を介して収音されたその収音結果を、ピンクノイズ測定の測定対象の測定周波数帯域毎に分析する。このような構成のため、低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定はピンクノイズ測定部、高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定はインパルス応答測定部といったように、適宜、制御装置によって実行される部位が切り替えられる。これにより、上記(3)から(5)項の遮音性能測定方法と同様の作用を奏しながら、例えば任意的に設定される実行順序などに従って、複数の測定周波数帯域の遮音性能が短時間で効率よく測定されるものとなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記のような構成であるため、測定対象の周波数帯域全体の遮音性能を、測定時間を抑制しながら効率よく測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る遮音性能測定システムの構成の一例を、測定対象の建築物の間取りの一例と共に示すイメージ構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法の手順の一例を示すフロー図である。
図3】測定対象の複数の測定周波数帯域とその中心周波数とを示す表である。
図4】インパルス応答測定において設定する出力周波数帯域とその中心周波数とを示す表である。
図5】インパルス応答測定において出力する合成インパルス試験音の合成例を示す波形図である。
図6】合成インパルス試験音の比較例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分若しくは対応する部分は、同一の符号で示している。
図1は、高遮音性能仕様が適用される建築物50の空気音遮音性能を測定する、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定システム10の構成を概略的に示している。なお、建築物50には、試験音の出力及び収音に使用される音源室52と、試験音の収音に使用される受音室54とが、遮音性能が適切に評価されるような位置に予め選定されているものとする。
【0030】
図示のように、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定システム10は、出力装置12、パワーアンプ14、複数の収音装置20、複数のマイクアンプ24、オーディオインタフェース30、及び制御装置40を含んでいる。パワーアンプ14は、制御装置40から送出された信号を増幅するものであり、出力装置12は、建築物50の音源室52に設置され、パワーアンプ14によって増幅された信号を試験音として音源室52に出力する。パワーアンプ14には任意のパワーアンプ機器が用いられ、出力装置12には任意のスピーカが利用される。
【0031】
複数の収音装置20は、出力装置12から出力された試験音を収音するためのものであって、本実施形態では、2つの収音装置20A及び20Bが音源室52に、2つの収音装置20C及び20Dが受音室54に、合計で4つの収音装置20A~20Dが建築物50内に設置されている。複数のマイクアンプ24は、収音装置20で収音された音を増幅して制御装置40へ送出するものであり、本実施形態では、収音装置20と一対一で接続されるように、4つのマイクアンプ24A~24Dが設置されている。収音装置20には任意のマイクロフォンを用いてよく、マイクアンプ24には任意のマイクアンプ機器を利用してよい。
【0032】
オーディオインタフェース30は、パワーアンプ14及び複数のマイクアンプ24と制御装置40との間に配置され、それらの間の物理的な接続構成などを確保するためのものである。このため、オーディオインタフェース30には、マイクアンプ24(収音装置20)の数量や制御装置40を構成する機器のインタフェース構成などに応じた、任意のインタフェース機器が利用される。なお、パワーアンプ14、複数のマイクアンプ24、オーディオインタフェース30、及び制御装置40は、出力装置12や収音装置20の設置位置などに応じて、任意の位置に設置してよい。
【0033】
制御装置40は、遮音性能測定システム10全体を制御するものであり、上述したように、オーディオインタフェース30、パワーアンプ14、及びマイクアンプ24を介して、出力装置12と収音装置20とに接続されている。又、制御装置40は、インパルス応答測定部42及びピンクノイズ測定部44を含んでいる。インパルス応答測定部42は、詳しくは後述するが、上述した出力装置12や収音装置20などを利用して、インパルス応答測定を実行するための部位である。ピンクノイズ測定部44は、これについても詳しくは後述するが、上述した出力装置12や収音装置20などを利用して、ピンクノイズ測定を実行するための部位である。制御装置40には、パーソナルコンピュータなどの任意のコンピュータ機器が利用される。
【0034】
ここで、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定システム10の構成は、図1の構成に限定されるものではなく、建築物50の間取りや状況等に応じて、図1に示した構成要素の一部が削除、変更、ないし適宜追加された構成であってもよい。例えば、制御装置40の構成に応じてオーディオインタフェース30を使用しなくてもよく、収音装置20及びマイクアンプ24の数量が4つより多くても少なくてもよい。又、図1に示す制御装置40の各部位は、機能的な単位で分けたものであって、実際に使用されるコンピュータ等のハードウェア単位で分けたものではなく、制御装置40に任意のハードウェアやソフトウェアの構成を適用してよい。更に、図1の各構成要素間の接続には、各構成要素を構成する機器に応じた任意の接続方法を用いることができる。
【0035】
続いて、図2に示すフロー図の流れに沿って、図1に示した遮音性能測定システム10を利用する、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法について説明する。遮音性能測定システム10及び建築物50の構成については、適宜、図1を参照のこと。なお、図2に示すフロー図は、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法を説明するための、手順の流れの一例を示したものである。従って、遮音性能測定方法は、このフロー図に限定されるものではなく、例えば、遮音性能測定システム10の構成や状況等に応じて、図2に示したステップの一部が削除、変更、ないし適宜追加されたフローであってもよいものである。
【0036】
S10(測定手法割り当て):測定を実行する作業員などにより、測定対象の複数の測定周波数帯域の各々に、実行する測定手法を割り当てる。すなわち、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、測定手法としてインパルス応答測定及びピンクノイズ測定を含んでおり、これらの何れかの測定手法を測定周波数帯域の各々に割り当てる。ここで、本実施形態では、図3に示すような1オクターブバンド毎の6つの中心周波数(125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hz)を有する6つの測定周波数帯域を測定対象として、遮音性能を測定するものとする。
【0037】
具体的には、まず、6つの測定周波数帯域を低周波数帯域と高周波数帯域とに分け、低周波数帯域に属する測定周波数帯域へピンクノイズ測定を割り当て、高周波数帯域に属する測定周波数帯域へインパルス応答測定を割り当てる。本実施形態では、125Hz及び250Hzを中心周波数とする2つの測定周波数帯域を、ピンクノイズ測定を実行する低周波数帯域へと分別し、残りの500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzを中心周波数とする4つの測定周波数帯域を、インパルス応答測定を実行する高周波数帯域へと分別する。そして、これらの割り当て結果を、作業員などにより制御装置40に対して入力する。なお、図3に示した測定周波数帯域の各々の下限周波数及び上限周波数は、中心周波数などから計測器メーカなどが推奨する式で導かれた値である。
【0038】
S20(実行する測定手法選択):作業員などにより、ピンクノイズ測定とインパルス応答測定とのうち、まだ実行していない何れかの測定手法を実行対象として選択する。すなわち、ピンクノイズ測定を既に実行している場合はインパルス応答測定を選択し、インパルス応答測定を既に実行している場合はピンクノイズ測定を選択し、双方の測定手法を実行していない場合は何れか一方を任意に選択する。その結果、ピンクノイズ測定を選択した場合はS30へ移行(図2の「ピンクノイズ」側の矢印)し、インパルス応答測定を選択した場合はS70へ移行(図2の「インパルス」側の矢印)する。なお、この選択結果を、制御装置40に入力してもよい。
【0039】
S30(ピンクノイズ試験音出力):制御装置40のピンクノイズ測定部44により、オーディオインタフェース30及びパワーアンプ14を介して、音源室52内の出力装置12からピンクノイズ試験音を出力させる。本実施形態では、日本産業規格であるJIS A 1417:2000「建築物の空気音遮断性能の測定方法」に従って、低周波数帯域に分別された測定周波数帯域のピンクノイズ測定を行うものする。このため、図3に示す6つの測定周波数帯域の全体にわたって連続的なスペクトルを有する試験音を、ピンクノイズ試験音として出力装置12から出力させる。なお、本工程S30~後述するS60は、JIS A 1417:2000に従うものとして、詳しい説明を省略する。
【0040】
S40(測定):上記S30で出力したピンクノイズ試験音を、音源室52内の収音装置20A及び20Bと、受音室54内の収音装置20C及び20Dとから、マイクアンプ24A~24D及びオーディオインタフェース30を介して収音し、ピンクノイズ測定部44により測定する。このとき、少なくとも、音源室52内の収音装置20A及び20Bによる収音結果と、受音室54内の収音装置20C及び20Dによる収音結果とを、別個で測定するものとする。
【0041】
S50(測定周波数帯域毎に分析):ピンクノイズ測定部44により、上記S40で測定した結果の各々を、ピンクノイズ測定の測定対象の測定周波数帯域毎に分析する。本実施形態では、上記S10において低周波数帯域に分別した、図3に示すような中心周波数が125Hzの測定周波数帯域(下限周波数が88.4Hz及び上限周波数が176.8Hz)と、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域(下限周波数が176.8Hz及び上限周波数が353.5Hz)との各々によって分析を行う。そして、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域の音圧レベルと、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域の音圧レベルとを、音源室52内と受音室54内との夫々について算出する。
【0042】
S60(遮音性能評価):ピンクノイズ測定部44により、上記S50で算出した音源室52内の音圧レベルと受音室54内の音圧レベルとの差分を、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域と中心周波数が250Hzの測定周波数帯域との夫々について求める。そして、それらの差分に基づいて、測定対象である建築物50の、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域の遮音性能と、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域の遮音性能とを評価する。
【0043】
S70(組選定):作業員などにより、上記S10で高周波数帯域に分別した測定周波数帯域の中心周波数の中から、後述するS90で試験音を合成するための組を選定する。本実施形態では、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの4つの中心周波数の中から、500Hz及び2000Hzを互いに合成する中心周波数の組として選定し、更に、1000Hz及び4000Hzを互いに合成する中心周波数の組として選定する。そして、選定結果を制御装置40のインパルス応答測定部42へ入力する。なお、本実施形態では、後述する合成インパルス試験音を用いる点を除き、所謂Swept-sine法を用いたインパルス応答測定に従って、高周波数帯域に分別された測定周波数帯域のインパルス応答測定を行うものする。
【0044】
S80(出力周波数帯域設定):作業員などにより、上記S70で選定した各組に含まれる2つの中心周波数の各々について、試験音として合成して出力するための出力周波数帯域を設定する。具体的には、図3に示した測定周波数帯域よりも広い帯域になるように、例えば図4に示すような下限周波数及び上限周波数を有する出力周波数帯域を設定する。すなわち、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の下限周波数を353Hz、上限周波数を943Hzへと設定し、それと合成される中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の下限周波数を1059Hz、上限周波数を2829Hzへと設定する。又、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の下限周波数を707Hz、上限周波数を1886Hzへと設定し、それと合成される中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の下限周波数を2121Hz、上限周波数を5658Hzへと設定する。
【0045】
ここで、図4に示した出力周波数帯域は、図3の測定周波数帯域に基づいて本発明者らが見出した値である。例えば、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の下限周波数は、同中心周波数の測定周波数帯域の下限周波数353.5Hzの小数点以下が切り捨てられ、353Hzに設定されている。そして、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の下限周波数は、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の下限周波数353Hzを3倍した大きさである、1059Hzへと設定されている。又、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の上限周波数は、同中心周波数の測定周波数帯域の上限周波数2828.4Hzよりも大きくかつそれに最も近い3の倍数である、2829Hzに設定されている。そして、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の上限周波数は、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の上限周波数2829Hzの1/3の大きさである、943Hzへと設定されている。
【0046】
同様に、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の下限周波数は、同中心周波数の測定周波数帯域の下限周波数707.1Hzの小数点以下が切り捨てられた707Hzに設定され、その3倍の大きさである2121Hzが、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の下限周波数に設定されている。又、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の上限周波数は、同中心周波数の測定周波数帯域の上限周波数5656.8Hzよりも大きくかつそれに最も近い3の倍数である5658Hzに設定され、その1/3の大きさである1886Hzが、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の上限周波数に設定されている。このようにして設定した出力周波数帯域を、インパルス応答測定部42へ入力する。
【0047】
S90(合成インパルス試験音出力):インパルス応答測定部42により、オーディオインタフェース30及びパワーアンプ14を介して、音源室52内の出力装置12から合成インパルス試験音を出力させる。そのために、まず、Swept-sine法を用いたインパルス応答測定で用いるような、下限周波数から上限周波数までの正弦波が連続する如き波形の信号を、図4に示した4つの出力周波数帯域について準備する。そして、例えば中心周波数が500Hz及び2000Hzの組の試験音を出力する場合は、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の信号と、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の信号とを合成して、合成インパルス試験音を出力するための合成信号を作成する。同様に、中心周波数が1000Hz及び4000Hzの組の試験音を出力する場合は、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の信号と、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の信号とを合成して、合成インパルス試験音を出力するための合成信号を作成すればよい。
【0048】
図5には、そのようにして合成した信号波形の例を示しており、合成対象の帯域が小さい方の出力周波数帯域の信号波形を(a)に、合成対象の帯域が大きい方の出力周波数帯域の信号波形を(b)に、それらの信号波形を合成した合成信号波形を(c)に、夫々示している。又、参考として、図4に示した出力周波数帯域と僅かに異なる帯域の信号を合成した比較例を図6(a)に、図3に示した測定周波数帯域の信号を合成した比較例を図6(b)に、夫々示している。図5及び図6を比較すると、図6の合成信号の各波形は、振幅が大きく増幅してしまっているのに対し、図5(c)の合成信号の波形は、振幅の大きさが抑制されていることが分かる。上記のように合成信号を作成した後、作成した合成信号をインパルス応答測定部42から送出して、出力装置12から合成インパルス試験音として出力させる。なお、本工程S90~後述するS130は、上記S70で選定した中心周波数の組毎に行うものとし、又、Swept-sine法を用いたインパルス応答測定に従うものとして、詳しい説明を省略する。
【0049】
S100(測定):上記S90で出力した合成インパルス試験音を、音源室52内の収音装置20A及び20Bと、受音室54内の収音装置20C及び20Dとから、マイクアンプ24A~24D及びオーディオインタフェース30を介して収音し、インパルス応答測定部42により測定する。このとき、少なくとも、音源室52内の収音装置20A及び20Bによる収音結果と、受音室54内の収音装置20C及び20Dによる収音結果とを、別個で測定するものとする。
S110(インパルス応答算出):インパルス応答測定部42により、上記S100で測定した結果の各々に対して、Swept-sine法で利用する信号圧縮処理を施し、インパルス応答を算出する。
【0050】
S120(測定周波数帯域毎に分析):インパルス応答測定部42により、上記S110で算出した結果の各々を、上記S90で信号を合成した2つの中心周波数に対応する2つの測定周波数帯域毎に分析する。すなわち、上記S90で中心周波数が500Hz及び2000Hzの組の試験音を出力した場合は、図3に示すような中心周波数が500Hzの測定周波数帯域(下限周波数が353.5Hz及び上限周波数が707.1Hz)と、中心周波数が2000Hzの測定周波数帯域(下限周波数が1414.2Hz及び上限周波数が2828.4Hz)との各々によって分析を行う。一方、上記S90で中心周波数が1000Hz及び4000Hzの組の試験音を出力した場合は、図3に示すような中心周波数が1000Hzの測定周波数帯域(下限周波数が707.1Hz及び上限周波数が1414.2Hz)と、中心周波数が4000Hzの測定周波数帯域(下限周波数が2828.4Hz及び上限周波数が5656.8Hz)との各々によって分析を行う。そして、中心周波数が500Hz及び2000Hz、或いは1000Hz及び4000Hzの、各測定周波数帯域の単発音圧暴露レベルを、音源室52内と受音室54内との夫々について算出する。
【0051】
S130(遮音性能評価):インパルス応答測定部42により、上記S120で算出した音源室52内の単発音圧暴露レベルと受音室54内の単発音圧暴露レベルとの差分を、中心周波数が500Hz及び2000Hzの測定周波数帯域の夫々について、或いは、中心周波数が1000Hz及び4000Hzの測定周波数帯域の夫々について求める。そして、それらの差分に基づいて、測定対象である建築物50の、中心周波数が500Hz及び2000Hzの測定周波数帯域の遮音性能、或いは、中心周波数が1000Hz及び4000Hzの測定周波数帯域の遮音性能を評価する。
【0052】
S140(測定組判定):作業員などにより、上記S70で選定した全ての中心周波数の組(本実施形態では、中心周波数が500Hz及び2000Hzの組と、中心周波数が1000Hz及び4000Hzの組)について、遮音性能の測定を実行したか否かを判定する。その結果、全ての組の測定を実行していた場合(YES)はS150へ移行し、まだ実行していない組が残っている場合(NO)は上記S90へ復帰する。すなわち、全ての組の測定を実行するまで、上記S90~S130を繰り返し実行する。
S150(測定手法実行判定):作業員などにより、上記S10で測定周波数帯域の各々に割り当てた、ピンクノイズ測定及びインパルス応答測定の双方を実行したか否かを判定する。その結果、双方の測定手法を実行していた場合(YES)は、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法が終了となり、まだ何れかの測定手法を実行していない場合(NO)は、上記S20へ復帰して実行していない測定手法を実行する。
【0053】
ここで、図2に示したS10、S20、S70、S80、S140、及びS150は、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法を用いた測定の度に実行する必要はない。例えば、既に実行したことのある測定周波数帯域についての測定を、別の建築物50や同じ建築物50内の別の部屋で行う場合は、以前に実行した際の選択や設定をそのまま流用してもよい。すなわち、S10での測定手法の割り当て結果、S70での中心周波数の組の選定結果、及びS80での出力周波数帯域の設定結果は、制御装置40へ予め入力するなどして流用してよい。又、所定の実行順序に従ってピンクノイズ測定及びインパルス応答測定を連続して実行するようなソフトウェアを、制御装置40に組み込むなどして、S20やS150を省略してもよい。このとき、S70で選定した全ての組についてのインパルス応答測定を、所定の実行順序に従って連続して実行するようなソフトウェアにすることで、S140を省略してもよい。
【0054】
又、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、ピンクノイズ測定を実行せずにインパルス応答測定のみで測定を行うものであってもよい。例えば、図3に示すような測定周波数帯域が測定対象の場合、中心周波数が500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの測定周波数帯域は、上述したように500Hz及び2000Hzの組と1000Hz及び4000Hzの組とで測定を行い、残りの中心周波数が125Hz及び250Hzの測定周波数帯域は、夫々で単独のインパルス試験音を出力して測定を行ってもよい。又、中心周波数が125Hz及び500Hzの組と、250Hz及び1000Hzの組と、500Hz及び2000Hzの組と、1000Hz及び4000Hzの組とを選定して、夫々の組の合成インパルス試験音を出力して測定を行ってもよい。更に、図3には示されていない63Hzや8000Hzなどを中心周波数とする測定周波数帯域を補助的に利用し、63Hzや8000Hzなどを中心周波数とする出力周波数帯域を設定して、これらを組み合わせた合成インパルス試験音を出力して測定を行ってもよい。何れの場合であっても、同じ組の2つの中心周波数に設定される2つの出力周波数帯域は、一方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数が、他方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数の3倍の大きさになっていることが好ましい。
【0055】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、例えば図1に示すような遮音性能測定システム10を用いて、高遮音性能仕様が適用される建築物50の空気音遮音性能を、複数の測定周波数帯域毎に測定して把握する方法である。具体的には、図2のS70~S130に示すような、合成インパルス試験音を出力するインパルス応答測定を含んでいる。すなわち、本遮音性能測定方法のインパルス応答測定では、測定対象の複数の測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数から、試験音の合成対象とする少なくとも1組の中心周波数を選定する(S70参照)。そして、選定した各組に含まれる2つの中心周波数の各々について、対応する測定周波数帯域とは別に、試験音として出力するための出力用の出力周波数帯域を設定する(S80参照)。
【0056】
つまり、試験音の合成対象として選定された中心周波数の各々に、測定用の測定周波数帯域に加えて出力用の出力周波数帯域を設定し、この際、測定周波数帯域を包含するような測定周波数帯域よりも広い帯域に出力周波数帯域を設定する(例えば図3及び図4参照)。そして、選定した各組に含まれる2つの中心周波数に対応する2つの出力周波数帯域の信号を合成し、上述した合成インパルス試験音として建築物50内の音源室52で出力して(S90参照)、音源室52と建築物50内の受音室54との双方で収音して測定する(S100及びS110参照)。この測定時には、試験音を合成した各組の2つの中心周波数に対応する測定周波数帯域毎に分析を行って単発音圧暴露レベルを算出し(S120参照)、各測定周波数帯域での音源室52と受音室54との分析結果の差分を利用して、測定周波数帯域毎の遮音性能を把握するものである(S130参照)。
【0057】
これにより、測定対象の全ての測定周波数帯域毎に試験音を出力して測定を行うことなく、選定した組毎に合成した試験音を出力して測定を行うため、従来のインパルス応答測定に基づく手法と比較して、測定時間を短縮することができる。しかも、測定周波数帯域よりも広く出力周波数帯域を設定する際の帯域の調整により、測定周波数帯域毎に行う分析には何ら影響を与えることなく、2つの出力周波数帯域の信号の合成時に弊害が発生することを回避することができる。従って、測定時間を抑制しながら、測定対象の周波数帯域全体の遮音性能を効率よく測定することが可能となる。
【0058】
又、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、Swept-sine法を用いてインパルス応答測定を行うものであり、これによって、選定した各組の2つの中心周波数に対応する2つの出力周波数帯域の合成前の各信号は、下限周波数から上限周波数へとシフトする正弦波のような波形が信号の終わりまで連続する態様となる。ここで、そのような2つの信号をそのまま合成すると、例えば図6に示す波形のように、信号の山と山とが重なる部分や谷と谷とが重なる部分の振幅が大きくなってしまい、出力時に音が歪んでしまう虞や、出力に使用する出力装置12が破壊される虞がある。更に、これを回避するために合成した試験音の出力ボリュームを小さくすると、空間に放射される試験音の成分が減るため、暗騒音の影響を受け易くなってしまい、遮音性能の評価ができなくなる虞もある。
【0059】
そこで、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、合成対象である各組の2つの中心周波数に対応する2つの出力周波数帯域を、例えば図4の中心周波数が500Hz及び2000Hzに対応する2つの出力周波数帯域や、中心周波数が1000Hz及び4000Hzに対応する2つの出力周波数帯域のように、一方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数が、他方の出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数の3倍の大きさになるように設定する。これにより、そのような2つの出力周波数帯域の信号を合成しても、図5に示すように、信号の山と山及び谷と谷が直接的に重なることを回避することができ、合成した信号の振幅の大きさを抑制することができる。従って、そのように合成した合成インパルス試験音の出力ボリュームを大きくしても、音の歪みや出力装置12の破壊を発生させることなく、多くの試験音の成分を空間に放射することができるため、問題なく遮音性能を測定することが可能となる。
【0060】
又、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、インパルス応答測定に加えて、図2のS30~S60に示すようなピンクノイズ測定を含むものであり、このピンクノイズ測定では、複数の測定周波数帯域の全てにわたるピンクノイズ試験音を音源室52で出力し(S30参照)、この出力を音源室52と受音室54との双方で収音する(S40参照)。更に、その収音結果をピンクノイズ測定の測定対象の測定周波数帯域毎に分析して音圧レベルを算出し(S50参照)、各測定周波数帯域での音源室52と受音室54との分析結果の差分を利用して、測定周波数帯域毎の遮音性能を把握するものである(S60参照)。そして、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、測定対象の複数の測定周波数帯域を、暗騒音の影響を受け難い低周波数帯域と、暗騒音の影響を受け易い高周波数帯域との2つに分け、一方をピンクノイズ測定によって、もう一方をインパルス応答測定により測定する(図2のS10参照)。
【0061】
すなわち、低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をピンクノイズ測定によって実行し、高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をインパルス応答測定によって実行する。これにより、暗騒音の影響を受け易い高周波数帯域には不向きであるが、暗騒音の影響を受け難い低周波数帯域の測定は何ら問題なく行えるピンクノイズ測定によって、低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をまとめて行うことができる。更に、暗騒音の影響を受け易い残りの高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定は、選定した組毎に合成インパルス試験音を出力するインパルス応答測定によって行うことができる。従って、測定対象の測定周波数帯域の遮音性能の測定を、全体の測定時間を更に短縮して、より一層効率よく実行することができる。
【0062】
更に、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、図3に示すような、1オクターブバンド毎の125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域を、測定対象の複数の測定周波数帯域として含むものである。そして、125Hz及び250Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域を、ピンクノイズ測定によって測定する低周波数帯域に分別し、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々を中心周波数とする測定周波数帯域を、インパルス応答測定によって測定する高周波数帯域に分別する。これに従い、複数の測定周波数帯域にわたるピンクノイズ試験音の収音結果を、中心周波数が125Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が250Hzの測定周波数帯域との各々で分析して、125Hz及び250Hzの音圧レベルを算出し、低周波数帯域のピンクノイズ測定を実行する(図2のS30~S60参照)。
【0063】
一方、インパルス応答測定では、中心周波数が500Hz及び2000Hzの組を、信号を合成する2つの中心周波数の組として選定すると共に、中心周波数が1000Hz及び4000Hzの組を、信号を合成する2つの中心周波数の組として選定する(図2のS70参照)。又、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々について、対応する測定周波数帯域よりも広い出力周波数帯域を設定する(図2のS80参照)。そして、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の信号と、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の信号とを合成した合成インパルス試験音を出力して(図2のS90参照)、この出力の応答を中心周波数が500Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が2000Hzの測定周波数帯域とによって分析する(図2のS100及びS110参照)。
【0064】
同様に、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の信号と、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の信号とを合成した合成インパルス試験音を出力して、この出力の応答を中心周波数が1000Hzの測定周波数帯域と、中心周波数が4000Hzの測定周波数帯域とによって分析する。このようにして、500Hz、1000Hz、2000Hz、及び4000Hzの各々の単発音圧暴露レベルを算出し、高周波数帯域のインパルス応答測定を実行するものである(図2のS120及びS130参照)。これにより、中心周波数が1オクターブバンド毎の測定周波数帯域の測定を、ピンクノイズ測定の特徴を活かす低周波数帯域と、インパルス応答測定の特徴を活かす高周波数帯域との何れかに分別して、効率よく短時間で実行することができる。
【0065】
又、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、図4に示すように、中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、353Hz及び943Hzに設定すると共に、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、1059Hz及び2829Hzに設定する。これによって、中心周波数が2000Hzの出力周波数帯域を、それと合成する中心周波数が500Hzの出力周波数帯域の、3倍の大きさとする関係に設定することができる。更に、中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、707Hz及び1886Hzに設定すると共に、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域の下限周波数及び上限周波数を、2121Hz及び5658Hzに設定する。これによって、中心周波数が4000Hzの出力周波数帯域を、それと合成する中心周波数が1000Hzの出力周波数帯域の、3倍の大きさとする関係に設定することができる。このようにすることで、Swept-sine法などを用いたインパルス応答測定を行う場合でも、合成後の信号の振幅の大きさを抑制することができるため、何ら問題なく高周波数帯域の遮音性能を測定することが可能となる。
【0066】
加えて、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法は、測定対象の複数の測定周波数帯域を規定する複数の中心周波数の全てを網羅するように、信号を合成する中心周波数の組を複数組選定することで、測定対象の全ての測定周波数帯域における遮音性能を、インパルス応答測定のみによって測定してもよい。これにより、測定手法としてインパルス応答測定のみを用いるにも関わらず、各組の測定において2つの出力周波数帯域の信号を合成した合成インパルス試験音を利用するため、結果として測定対象の測定周波数帯域全体での測定時間を抑制することが可能となる。
【0067】
なお、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法が適用される測定周波数帯域は、図3に示したような測定周波数帯域に限定されるものではなく、図3に示されている中心周波数よりも小さい或いは大きい中心周波数を有する測定周波数帯域に適用されてもよい。又、中心周波数が1オクターブバンド毎に設定されたものに限らず、1/3オクターブバンド毎に設定されたものであってもよい。更に、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定方法が適用される建築物50も、図1に示したような間取りに限定されずに任意の間取りであってよく、音源室52や受音室54の位置も任意である。
【0068】
他方、本発明の実施の形態に係る遮音性能測定システム10は、上述したような遮音性能測定方法を利用して、高遮音性能仕様が適用される建築物50の空気音遮音性能を測定するものであり、図1に示すように、出力装置12、複数の収音装置20、及び制御装置40を含んでいる。出力装置12は、各測定手法で利用する試験音を出力するためのものであり、測定対象の建築物50の音源室52に設置される。収音装置20は、出力装置12から出力された試験音を収音するためのものであり、測定対象の建築物50の音源室52及び受音室54の双方に設置される。制御装置40は、出力装置12及び収音装置20に接続され、インパルス応答測定部42及びピンクノイズ測定部44を含んでいる。インパルス応答測定部42は、インパルス応答測定を行う部位であり、2つの出力周波数帯域の信号が合成された合成インパルス試験音を出力装置12から出力させ、収音装置20を介して収音されたその応答結果を、合成した信号に対応する2つの測定周波数帯域毎に分析する。
【0069】
又、ピンクノイズ測定部44は、ピンクノイズ測定を行う部位であり、複数の測定周波数帯域にわたるピンクノイズ試験音を出力装置12から出力させ、収音装置20を介して収音されたその収音結果を、ピンクノイズ測定の測定対象の測定周波数帯域毎に分析する。このような構成のため、低周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をピンクノイズ測定部44、高周波数帯域に属する測定周波数帯域の測定をインパルス応答測定部42といったように、適宜、制御装置40によって実行する部位を切り替えることができる。これにより、上述した遮音性能測定方法と同様の作用効果を奏しながら、例えば任意的に設定される実行順序などに従って、複数の測定周波数帯域の遮音性能を短時間で効率よく測定することができる。
【符号の説明】
【0070】
10:遮音性能測定システム、12:出力装置、20(20A~20D):収音装置、40:制御装置、42:インパルス応答測定部、44:ピンクノイズ測定部、50:建築物、52:音源室、54:受音室
図1
図2
図3
図4
図5
図6