(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020298
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】機能性シート、及びパネル構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/05 20190101AFI20220125BHJP
【FI】
B32B7/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123707
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000101905
【氏名又は名称】イイダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】成田 有季哉
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB02B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100BA25
4F100DB07
4F100DB10
4F100JB13A
4F100JB13B
(57)【要約】
【課題】金属製のパネルの外観への影響を抑えることのできる機能性シート、及びパネル構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】機能性シート11は、加熱により硬化することで硬化層となる熱硬化性層21と、硬化層を拘束する拘束シート31とを備える。機能性シート11は、熱硬化性層21を金属製のパネル51に貼り付けて用いられる。機能性シート11は、熱硬化性層21と拘束シート31とが積層される拘束部12と、拘束シート31が積層されない熱硬化性層21を有する非拘束部13とを備える。拘束部12は、拘束シート31の両主面である第1主面31a及び第2主面31bのうち、第1主面31aに熱硬化性層21が積層されるとともに第2主面31bが露出してなる露出部12aを有する。非拘束部13は、拘束部12の外周に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により硬化することで硬化層となる熱硬化性層と、前記硬化層を拘束する拘束シートとを備え、前記熱硬化性層を金属製のパネルに貼り付けて用いられる機能性シートであって、
前記熱硬化性層と前記拘束シートとが積層される拘束部と、
前記拘束シートが積層されない前記熱硬化性層を有する非拘束部と、を備え、
前記拘束部は、前記拘束シートの両主面のうち、一方の主面に前記熱硬化性層が積層されるとともに他方の主面が露出してなる露出部を有し、
前記非拘束部は、前記拘束部の外周に配置される、機能性シート。
【請求項2】
前記非拘束部は、前記拘束部の外周全体を取り囲むように配置される、請求項1に記載の機能性シート。
【請求項3】
前記拘束シートは、金属材料から構成される拘束シートを含む、請求項1又は請求項2に記載の機能性シート。
【請求項4】
前記金属材料は、鉄を主成分とする、請求項3に記載の機能性シート。
【請求項5】
前記金属材料から構成される拘束シートの外周端面に設けられ、前記外周端面を保護する保護部をさらに有する、請求項3又は請求項4に記載の機能性シート。
【請求項6】
前記保護部は、熱硬化性材料から構成される、請求項5に記載の機能性シート。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の機能性シートを用いて、金属製のパネルと、前記金属製のパネルに積層される機能層とを有するパネル構造体を製造するパネル構造体の製造方法であって、
前記金属製のパネルに前記機能性シートを貼り付けることで積層体を得る積層体形成工程と、
前記積層体を加熱して熱硬化性層を硬化させることで、機能性シートから機能層を形成する機能層形成工程と、を備える、パネル構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性シート、及びパネル構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、ゴム等からなる補強層とガラスクロス等からなる拘束層とを備える補強シートが知られている。この補強シートは、車体の外板パネルの裏側に貼り付けられて用いられる。機能性シートが貼り付けられた外板パネルは、電着塗装され、加熱乾燥される。このとき、機能性シートの補強層は、加熱されることで硬化する。このようにして得られた外板パネルは、硬化された補強層と、補強層に積層される拘束層とによって補強された補強構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような補強性や制振性等の機能性を付与するための機能性シートを金属製のパネルに適用すると、加熱後の金属製のパネルにひずみが発生する場合がある。このように金属製のパネルに発生したひずみの度合いが大きくなるにつれて、ひずみの発生した部分がパネルの外面から視認され易くなる。これにより、例えば意匠性を有する外板パネルでは、機能性シートを要因とした外観不良を招くおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、金属製のパネルの外観への影響を抑えることのできる機能性シート、及びパネル構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する機能性シートは、加熱により硬化することで硬化層となる熱硬化性層と、前記硬化層を拘束する拘束シートとを備え、前記熱硬化性層を金属製のパネルに貼り付けて用いられる機能性シートであって、前記熱硬化性層と前記拘束シートとが積層される拘束部と、前記拘束シートが積層されない前記熱硬化性層を有する非拘束部と、を備え、前記拘束部は、前記拘束シートの両主面のうち、一方の主面に前記熱硬化性層が積層されるとともに他方の主面が露出してなる露出部を有し、前記非拘束部は、前記拘束部の外周に配置される。
【0007】
この構成によれば、機能性シートの拘束部は、拘束シートが露出した露出部を有するため、この露出部によって拘束シートの拘束力が過度とならないように調整可能であり、その結果、拘束部全体を要因として金属製のパネルに発生するひずみの度合いを低下させることができる。また、非拘束部は、拘束シートを有しないため、金属製のパネルに発生するひずみの度合いをさらに低下させることができる。このような非拘束部が拘束部の外周に配置されているため、金属製のパネルにおいて、ひずみが発生しない部分と、機能性シートを要因としてひずみが発生した部分との境界が視認され難くなる。
【0008】
上記機能性シートにおいて、前記非拘束部は、前記拘束部の外周全体を取り囲むように配置されることが好ましい。この構成によれば、金属製のパネルにおいて、ひずみが発生しない部分と、機能性シートを要因としてひずみが発生した部分との境界が機能性シートの全周に相当する箇所で視認され難くなる。
【0009】
上記機能性シートにおいて、前記拘束シートは、金属材料から構成される拘束シートを含むことが好ましい。この構成によれば、金属製のパネルの熱を要因とした膨張及び収縮の度合いに対して、拘束シートの熱を要因とした膨張及び収縮の度合いを近づけることができる。これにより、金属製のパネルに拘束部全体を要因として発生するひずみの度合いをより低下させることができる。
【0010】
上記機能性シートにおいて、前記金属材料は、鉄を主成分とすることが好ましい。この構成によれば、鉄を主成分とするパネルに機能性シートを適用することで、熱を要因としたパネルの膨張及び収縮の度合いに対して、熱を要因とした拘束シートの膨張及び収縮の度合いをより近づけることができる。これにより、鉄を主成分とするパネルに拘束部全体を要因として発生するひずみの度合いをさらに低下させることができる。
【0011】
上記機能性シートは、前記金属材料から構成される拘束シートの外周端面に設けられ、前記外周端面を保護する保護部をさらに有することが好ましい。この構成によれば、例えば、拘束シートの外周端面における錆の発生を保護部によって抑えることができる。
【0012】
上記機能性シートにおいて、前記保護部は、熱硬化性材料から構成されることが好ましい。この構成によれば、加熱により保護部を硬化した硬化保護部によって拘束シートの外周端面を好適に保護することができる。
【0013】
パネル構造体の製造方法は、上記機能性シートを用いて、金属製のパネルと、前記金属製のパネルに積層される機能層とを有するパネル構造体を製造するパネル構造体の製造方法であって、前記金属製のパネルに前記機能性シートを貼り付けることで積層体を得る積層体形成工程と、前記積層体を加熱して熱硬化性層を硬化させることで、機能性シートから機能層を形成する機能層形成工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属製のパネルの外観への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における機能性シートを示す平面図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿った機能性シートと金属製のパネルを示す部分断面図である。
【
図3】機能性シートを分解して示す部分断面図である。
【
図4】(a)は、積層体を示す部分断面図であり、(b)は、パネル構造体を示す部分断面図である。
【
図5】変更例の機能性シートを示す部分断面図である。
【
図6】変更例の機能性シートを分解して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、機能性シート及びパネル構造体の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1~
図3に示すように、機能性シート11は、加熱により硬化することで硬化層となる熱硬化性層21と、硬化層を拘束する拘束シート31とを備えている。機能性シート11は、金属製のパネル51に貼り付けて用いられる。機能性シート11は、熱硬化性層21と拘束シート31とが積層される拘束部12と、拘束シート31と積層されない熱硬化性層21を有する非拘束部13とを備えている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、拘束部12は、拘束シート31の両主面のうち、一方の主面である第1主面31aに熱硬化性層21が積層されるとともに他方の主面である第2主面31bが露出してなる露出部12aを有している。本実施形態の拘束部12は、拘束シート31の第1主面31aに熱硬化性層21が積層され、拘束シート31の第2主面31bに被覆層22が積層されてなる非露出部12bをさらに有している。
【0018】
熱硬化性層21において、拘束シート31に積層される面とは反対側の面は、金属製のパネル51に貼り付けられる面である。熱硬化性層21の一部は、非拘束部13を構成している。非拘束部13は、拘束部12の外周に配置されている。換言すると、拘束シート31の外周端縁が、熱硬化性層21の外周端縁よりも内側に配置されることで、熱硬化性層21の外周端縁は、拘束シート31の外周端縁よりも外方に突出する。このように熱硬化性層21のうち、拘束シート31の外方に突出した部分が非拘束部13となる。本実施形態の非拘束部13は、拘束部12の外周全体を取り囲むように配置されている。すなわち、非拘束部13は、平面視で拘束部12を取り囲む枠状を有している。
【0019】
熱硬化性層21は、熱硬化性材料から構成されている。熱硬化性材料は、例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤、発泡剤、及び充填剤を含有する。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0020】
硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、エチレンジアミン、ポリアミド、メチルイミダゾール、亜鉛華等が挙げられる。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p′-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)等が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ、カーボンブラック、金属材料、タルク、酸化チタン等が挙げられる。熱硬化性組成物は、さらにゴム、可塑剤等を含有していてもよい。ゴムとしては、例えば、NR(天然ゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、L-IR(液状イソプレンゴム)等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、アスファルト、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等が挙げられる。
【0021】
本実施形態の拘束シート31は、金属材料から構成されている。金属材料としては、例えば、鉄を主成分とする金属材料、アルミニウム合金材料等挙げられる。鉄を主成分とする金属材料としては、鋼材が挙げられる。拘束シート31の厚さは、例えば、0.12mm以上、0.20mm以下の範囲内である。ここで、機能性シート11が貼り付けられた金属製のパネル51は、防錆等を目的とした電着塗装が施される場合がある。拘束シート31が金属材料から構成されている場合、電着塗装を利用して、露出部12aの拘束シート31における第2主面31bにも電着塗装を施すことが可能である。この場合、金属製のパネル51と、拘束シート31との間の電気的導通性を確保するために、熱硬化性層21に導電性充填材を含有させればよい。導電性充填材としては、例えば、導電性カーボン粉末等が挙げられる。
【0022】
被覆層22は、拘束シート31において、熱硬化性層21とは反対側となる面に積層されている。被覆層22は、拘束シート31の外周部分を被覆している。本実施形態の被覆層22は、拘束シート31の外縁に沿った枠状に形成されている。
【0023】
本実施形態の機能性シート11は、金属材料から構成される拘束シート31の外周端面31cに設けられ、この外周端面31cを保護する保護部23をさらに有している。保護部23は、熱硬化性層21に設けられている。また、機能性シート11は、保護部23と被覆層22とを連結する連結部24を有している。保護部23は、拘束シート31の外周端面31cの全体にわたって保護するように枠状に形成されている。また、連結部24についても保護部23の全周にわたって連結するように枠状に形成されている。
【0024】
熱硬化性層21、保護部23、連結部24、及び被覆層22は、一体成形品から構成されている。
図2に二点鎖線で示すように、熱硬化性層21、保護部23、連結部24、及び被覆層22は、例えば、一枚のシート材STを曲げることで形成することができる。このようなシート材STは、熱硬化性層21を形成するために熱硬化性材料から構成されている。すなわち、本実施形態の熱硬化性層21、保護部23、連結部24、及び被覆層22は、いずれも同一の熱硬化性材料から構成されている。
【0025】
次に、機能性シート11を用いたパネル構造体の製造方法について説明する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、パネル構造体61の製造方法は、機能性シート11を金属製のパネル51に貼り付けることで積層体52を得る積層体形成工程と、積層体52を加熱して熱硬化性層21を硬化させることで、機能性シート11から機能層62を形成する機能層形成工程とを備えている。
【0026】
金属製のパネル51の金属としては、例えば、鉄を主成分とする金属材料、アルミニウム合金等が挙げられる。鉄を主成分とする金属材料としては、例えば、鋼材が挙げられる。金属製のパネル51の用途としては、例えば、自動車の外板(ドアパネル、クォータパネル等)、自動販売機の外板、建築物の外板等が挙げられる。金属製のパネル51の厚さは、例えば、0.6mm以上、2.0mm以下の範囲内である。
【0027】
積層体形成工程では、例えば、熱硬化性層21の自己粘着性を利用して機能性シート11を金属製のパネル51に貼り付けることができる。本実施形態の積層体52を構成する金属製のパネル51には、電着塗装が施される。パネル51の電着塗装方法は、電着塗装によりパネル51に塗膜を形成する塗膜形成工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程とを備えている。パネル51の電着塗装方法では、パネル51と、拘束シート31との間の電気的導通性を確保することで、上述したように露出部12aの拘束シート31における第2主面31bにも電着塗装を施すことが可能である。また、塗膜を乾燥する乾燥工程を利用して、積層体52を加熱することができる。すなわち、塗膜を乾燥する乾燥工程を利用して機能性シート11から機能層62を形成する機能層形成工程を行うことができる。機能層形成工程では、パネル51と機能層62とを有するパネル構造体61が得られる。パネル構造体61は、機能層62により、補強性や制振性等の機能性が付与される。
【0028】
機能層形成工程では、熱硬化性層21から硬化層63が形成される。本実施形態の機能層形成工程では、被覆層22、保護部23、及び連結部24についても熱硬化性材料から形成されているため、それぞれ硬化被覆層64、硬化保護部65、及び硬化連結部66が形成される。機能層62における拘束シート31の外周端面31cは、機能層62の硬化保護部65により保護される。
【0029】
ここで、上述した機能性シート11の拘束部12は、拘束シート31が露出した露出部12aを有している。この露出部12aによって拘束シート31の拘束力が過度とならないように調整可能であり、その結果、拘束部12全体を要因として金属製のパネル51に発生するひずみの度合いを低下させることができる。また、非拘束部13は、拘束シート31を有しないため、金属製のパネル51に発生するひずみの度合いをさらに低下させることができる。このような非拘束部13が拘束部12の外周に配置されているため、金属製のパネル51において、ひずみが発生しない部分と、機能性シート11を要因としてひずみが発生した部分との境界が視認され難くなる。
【0030】
また、
図4(a)に示される機能性シート11では、拘束シート31における第2主面31bは、露出している部分と、被覆層22で覆われている部分との境界部分が存在する。このような境界部分付近で露出する第2主面31bでは、電着塗装の塗膜形成が不十分になることで、例えば、錆が発生し易くなるおそれがある。この点、被覆層22に発泡剤が含有されることで、機能層形成工程では、被覆層22を拘束シート31に沿って発泡させることができる。すなわち、
図4(a)に示す被覆層22の幅寸法W1よりも、
図4(b)に示す硬化被覆層64の幅寸法W2が大きくなる。これにより、拘束シート31において、塗膜形成が不十分となり易い部分を硬化被覆層64により覆うことができる。
【0031】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)金属製のパネル51に貼り付けて用いられる機能性シート11は、熱硬化性層21と拘束シート31とが積層される拘束部12と、拘束シート31が積層されない熱硬化性層21を有する非拘束部13とを備えている。拘束部12は、拘束シート31の両主面のうち、一方の主面に熱硬化性層21が積層されるとともに他方の主面が露出してなる露出部12aを有している。非拘束部13は、拘束部12の外周に配置されている。この構成によれば、金属製のパネル51において、ひずみが発生しない部分と、機能性シート11を要因としてひずみが発生した部分との境界が視認され難くなる。したがって、金属製のパネル51の外観への影響を抑えることができる。
【0032】
(2)非拘束部13は、拘束部12の外周全体を取り囲むように配置されている。この場合、金属製のパネル51において、ひずみが発生しない部分と、機能性シート11を要因としてひずみが発生した部分との境界が機能性シート11の全周に相当する箇所で視認され難くなる。したがって、金属製のパネル51の外観への影響をより抑えることができる。
【0033】
(3)拘束シート31は、金属材料から構成される拘束シート31を含む。この場合、熱を要因とした金属製のパネル51の熱を要因とした膨張及び収縮の度合いに対して、熱を要因とした拘束シート31の膨張及び収縮の度合いを近づけることができる。これにより、金属製のパネル51に拘束部12全体を要因として発生するひずみの度合いをより低下させることができる。したがって、金属製のパネル51の外観への影響をより抑えることができる。
【0034】
(4)拘束シート31を構成する金属材料が鉄を主成分とする場合、鉄を主成分とするパネル51に機能性シート11を適用することで、熱を要因としたパネル51の膨張及び収縮の度合いに対して、熱を要因とした拘束シート31の膨張及び収縮の度合いをより近づけることができる。これにより、鉄を主成分とするパネル51に拘束部12全体を要因として発生するひずみの度合いをさらに低下させることができる。したがって、鉄を主成分とするパネル51の外観への影響をさらに抑えることができる。
【0035】
(5)金属製のパネル51のひずみの度合いを低減するために、金属材料から構成される拘束シート31を用いた場合、この拘束シート31の外周端面31cは、防錆性能の確保が困難な部分であり、この外周端面31cに錆が発生するおそれがある。本実施形態の機能性シート11は、金属材料から構成される拘束シート31の外周端面31cに設けられ、外周端面31cを保護する保護部23をさらに有している。この場合、例えば、拘束シート31の外周端面31cにおける錆の発生を保護部23によって抑えることができる。
【0036】
(6)拘束シート31の外周端面31cを保護する保護部23は、熱硬化性材料から構成されている。この場合、加熱により保護部23を硬化した硬化保護部65によって拘束シート31の外周端面31cを好適に保護することができる。
【0037】
(7)機能性シート11の被覆層22が発泡剤を含有する熱硬化性材料から構成されることで、被覆層22を拘束シート31に沿って発泡させることができる。これにより、拘束シート31において、塗膜形成が不十分となり易い部分を硬化被覆層64により覆うことができる。このように、硬化被覆層64を利用して拘束シート31を保護することにより、例えば、拘束シート31における錆の発生を抑えることができる。
【0038】
(8)機能性シート11の被覆層22、保護部23、及び連結部24は、熱硬化性材料から構成されている。この場合、パネル構造体61の機能層62において、硬化保護部65は、硬化層63、硬化連結部66、及び硬化被覆層64と一体となった硬化物となることで、拘束シート31から剥離し難くなる。
【0039】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0040】
・機能性シート11の保護部23、被覆層22、及び連結部24は、熱硬化性材料以外の材料から構成することもできる。このような材料としては、熱硬化性を有しない樹脂やゴムを主成分とした材料が挙げられる。
【0041】
・保護部23は、拘束シート31の外周端面31cの全体にわたって保護するように形成されているが、拘束シート31の外周端面31cの一部を保護するように形成されてもよい。
【0042】
・連結部24は、保護部23の全周にわたって連結するように形成されているが、保護部23の一部を連結するように形成されてもよい。
・保護部23及び連結部24を省略してもよい。
【0043】
・被覆層22は、拘束シート31の外縁に沿った枠状に形成されているが、拘束シート31の外周部分の一部を被覆する形状に変更してもよい。
・
図5に示すように、被覆層22及び連結部24を省略してもよい。このように拘束部12における被覆層22を省略し、露出部12aのみから拘束部12を構成することもできる。この変更例の機能性シート11では、例えば、熱硬化性材料から構成されるシート材STに拘束シート31の外周端面31cを埋設することで保護部23を配置することもできる。また、機能性シート11の保護部23は、シート材STから構成せずに、塗料を塗布した塗膜により構成してもよい。保護部23は、拘束シート31の厚さよりも厚く形成されていてもよい。
【0044】
・
図6に示すように、熱硬化性層21を構成する第1シート材ST1と、被覆層22、保護部23、及び連結部24が一体となった第2シート材ST2とを用いて、機能性シート11を製造することもできる。すなわち、この変更例の機能性シート11は、第1シート材ST1、拘束シート31、及び第2シート材ST2の順に積層することで得ることができる。第2シート材ST2は、第1シート材ST1と同じ熱硬化性材料から構成されてもよいし、第1シート材ST1の熱硬化性材料とは異なる種類の熱硬化性材料から構成されてもよい。また、第2シート材ST2は、熱硬化性材料以外の材料から構成されてもよい。
【0045】
・拘束シート31は、金属材料以外の材料から構成することもできる。金属材料以外の材料から構成される拘束シート31としては、例えば、無機繊維製の織布又は不織布等が挙げられる。拘束シート31の具体例としては、例えば、ガラスクロスが挙げられる。また、拘束シート31は、金属材料から構成される拘束シートと、金属材料以外の材料から構成される拘束シートとを含む複数種の拘束シートから構成することもできる。
【0046】
・機能性シート11の非拘束部13は、拘束部12の外周全体を取り囲むように配置されているが、拘束部12の外周の一部に配置することもできる。例えば、平面視で四角形状の拘束部12を有する機能性シート11の場合、拘束部12の各辺のうち少なくとも一辺に非拘束部13を配置することができる。
【符号の説明】
【0047】
11…機能性シート
12…拘束部
12a…露出部
12b…非露出部
13…非拘束部
21…熱硬化性層
22…被覆層
23…保護部
24…連結部
31…拘束シート
31a…第1主面
31b…第2主面
31c…外周端面
51…パネル
52…積層体
61…パネル構造体
62…機能層
63…硬化層
64…硬化被覆層
65…硬化保護部
66…硬化連結部
ST…シート材
ST1…第1シート材
ST2…第2シート材