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  • 特開-飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具 図1
  • 特開-飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020312
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/08 20110101AFI20220125BHJP
   A01M 29/06 20110101ALI20220125BHJP
【FI】
A01M29/08
A01M29/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123730
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】520036721
【氏名又は名称】株式会社グルカン
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥西 穂積
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121AA12
2B121DA27
2B121DA28
2B121DA30
2B121EA21
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】 安価で、設置が容易であって、反射光を安定的に広範囲に拡散でき、害鳥のみならず飛翅害虫に対しても飛来を防止する飛来防止具を提供する。
【解決手段】 本発明の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具は、側面が光反射面を有する三角筒状又は四角筒状の基体と、回転連結具を介して前記基体を吊り下げる吊り下げ部材とを備える飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具であり、風力により前記基体が回転、揺動して飛翅害虫及び/又は害鳥が忌避する反射光を散乱し、これらを追い払うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面が光反射面を有する三角筒状又は四角筒状の基体と、回転連結具を介して前記基体を吊り下げる吊り下げ部材とを備える飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具であり、風力により前記基体が回転、揺動して飛翅害虫及び/又は害鳥が忌避する反射光を広範囲に散乱する、飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具。
【請求項2】
前記光反射面が、金属反射面である、請求項1に記載の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具。
【請求項3】
前記側面が、紫外線吸収面を有する、請求項1又は2に記載の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具。
【請求項4】
前記紫外線吸収面が、前記光反射面の上に紫外線を吸収する層を有する積層面である、請求項3に記載の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具。
【請求項5】
前記基体を構成する素材が合成樹脂板である、請求項1~4の何れか1項に記載の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具。
【請求項6】
前記基体を構成する素材がプラスチックダンボールである、請求項1~4の何れか1項に記載の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
果樹栽培において、果実を腐敗させる雑菌やウイルスを運ぶ飛翅害虫の飛来は軽視できない。中でも、有翅アブラムシ等の吸汁性昆虫は、吸汗口を果実に刺し込み、確実に雑菌やウイルスを伝染させるので、とりわけ忌避すべきである。飛翅害虫の飛来を防止するために、シルバーマルチや、垂下シルバーテープなどが設けられる。しかし、シルバーマルチは、高コストである上に丈のある果樹に対して効果が得られにくく、垂下シルバーテープは、忌避を有効にするためには支柱やネット等を設けて多数を設置する必要がある。
【0003】
一方、果樹栽培において、果実を啄む害鳥の被害も問題であり、大型で知能の高いカラスによる被害は甚大である。害鳥の飛来を防止するために、防鳥網、爆音機、目玉模様バルーン、吹流しなど、従来から様々な器具を用いることが試みられている。しかし、これらには、高価であって、設置に手間が掛かるという問題がある。
【0004】
設置が容易な器具として、例えば特許文献1に、光反射面を有する基盤部材を回転・揺動自在に吊り下げた鳥獣害防止器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録3174723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の鳥獣害防止装置は、表裏に光反射面を有する基盤部材と風受け部材を有し、風を受けて回転・揺動することによって光を乱反射して鳥獣を追い払うものであるが、風力が弱い場合には回転が不十分であり、風力が強い場合には煽られて回転しにくくなるので、反射光を安定定期に広範囲に及ぼすことができなくなり、特に、飛翅害虫に対して満足のゆく飛来防止効果が得られなかった。
【0007】
従って、本発明の目的は、安価で、設置が容易であって、反射光を安定的に広範囲に拡散でき、害鳥のみならず飛翅害虫に対しても飛来を防止する飛来防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、側面が光反射面を有する三角筒状又は四角筒状の基体と、回転連結具を介して上記基体を吊り下げる吊り下げ部材とを備える飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具であり、上記基体が風力により回転、揺動して害鳥及び/又は飛翅害虫が忌避する反射光を広範囲に散乱する、飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具を提供する。
【0009】
上記光反射面は、金属反射面であることが好ましい。
【0010】
上記側面は、紫外線吸収面を有してもよい。
【0011】
上記紫外線吸収面は、上記光反射面の上に紫外線を吸収する層を有する積層面であってもよい。
【0012】
上記基体を構成する素材は、合成樹脂板であることが好ましい。
【0013】
上記基体を構成する素材は、プラスチックダンボールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具は、安価であって、取付けが容易である上に、弱い風力であっても基体が自在に回転し、また、強い風力にも煽られにくく、害鳥と飛翅害虫の両方が忌避する反射光を、安定的に広範囲に散乱するので、害鳥と飛翅害虫の両方の飛来を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具の一例を表す模式的斜視図である。
図2】本発明に係る基体の組立て部材の一例を表す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具]
本発明の飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来防止具(本発明の飛来防止具)は、支柱や架線、あるいは果樹の枝などに吊り下げられる。
【0017】
図1に示すように、本発明の飛来防止具は、側面10が光反射面を有する三角筒状又は四角筒状の基体1と、基体1を回転自在に吊り下げる吊り下げ部材2とを備える。基体1は、基体1の中心軸線が垂直となるように吊り下げられ、風力によって、上記中心軸線を回転軸として回転し、また、基体1自体が揺動する。なお、図1には、三角筒状の場合について図示している。
【0018】
<基体>
本発明に係る基体1の形状は、三角筒状又は四角筒状であって、両端が開放していてもよい。基体1が上記形状であることにより、弱い風力によっても基体が回転しやすく、中でも、より回転しやすい点から、略正三角筒状又は略正四角筒状が好ましく、略正三角筒状がより好ましい。
【0019】
本発明に係る基体1を形成する材料は、紙、合成樹脂板、プラスチックダンボール、金属板等であってよく、基体1が、弱い風力によっても回転、揺動しやすく、強い風力によっても煽られたり吹き流されたりして回転できない状態になりにくい点から、合成樹脂板、プラスチックダンボールであることが好ましく、プラスチックダンボールであることがより好ましい。
【0020】
上記略正三角筒状又は略正四角筒状の基体1について、側面10の長手方向の辺の長さは、好ましくは5~50cm、より好ましくは10~30cmであって、短手方向の辺の長さは、好ましくは3~30cm、より好ましくは5~20cmである。
【0021】
基体1は、三角筒状又は四角筒状となるように部材を組み上げたもの、あるいは、射出成型や押出成形によって合成樹脂材料を三角筒状又は四角筒状に成形したものであってもよいが、流通や保管、使用を容易にできる点から、1枚の組立て用部材3から組み立てられるものが好ましい。
【0022】
両端が開放した略正三角筒状の場合の組立て用部材3は、図2に示すように、3つの側面10を形成する板状部30と、折り返し部31とから構成され、長手方向と平行な折り線32を有する。
【0023】
組立て用部材3の組立ては、例えば、折り線32に沿って板状部30を折り曲げ、折り返し部31を、他方の幅方向端部に設けた接合部33に重ねて接合することよって行う。接合は、例えば、接着剤などによる接着等により行うことができる。
【0024】
側面10が光反射面を有することによって、風力による基体1の回転、不規則な揺動に伴い、反射光が広範囲に拡散される。
【0025】
上記光反射面としては、飛翅害虫について大空や太陽と錯覚させて忌避効果を生じさせると考えられ、害鳥について視覚に優れ強い光に対して警戒心を起こさせて忌避効果を生じさせると考えられる点から、金属反射光を生じる金属反射面(銀色面、金色面等)が好ましく、銀色面であることがより好ましい。
【0026】
側面10を金属反射面にするために、金属反射面形成材料(アルミホイル等の金属材料、アルミホイル等を積層した合成樹脂製シート、アルミ等を蒸着した合成樹脂製シート等)の側面10への貼付、あるいは、基体1自体を上記金属反射面形成材料を用いて形成するなどの手段を用いてもよい。基体1が組立て用部材3を組み立てるものである場合、上記金属反射面形成材料の貼付は、組立て前、組立て後の何れにおいて行ってもよい。
【0027】
側面10は、紫外線吸収面を有するものであってよい。上記紫外線吸収面は、例えば、波長315~450nmの光を吸収する面であることが好ましい。
【0028】
カラス等の害鳥は、可視光(波長400~800nm)に加えて近紫外線UV-A(波長315~400nm)にも視覚領域を有するため、上記のようなUV-A波長を欠く反射光を生じる上記紫外線吸収面に対して、通常の視覚情報を構築できなくなる。そのため、カラス等の害鳥は上記紫外線吸収面を視認できなくなり、強い警戒心を示して忌避するものと考えられる。
【0029】
側面10が上記紫外線吸収面を有する形態としては、側面10が、上記光反射面と上記紫外線吸収面とに分割される形態;又は、側面10が、上記光反射面の上に紫外線を吸収する層を有して光反射面かつ紫外線吸収面となる積層面である形態の何れであってもよい。
【0030】
上記紫外線吸収面は、紫外線を吸収する化合物を含有する合成樹脂シートや塗料を用いることによって形成できる。上記化合物としては、例えば、植物や動物から抽出される、フラボノイド系化合物(アントキサンチン、アントシアニン、カテキン、タンニン、カフェイン等)、ステロイド系化合物(コレステロール、サポニン、β-カロテン等)などが挙げられる。中でも、魚毒作用を有し嗅覚にも忌避効果を発揮しやすいサポニンが好ましい。
【0031】
側面10が、上記光反射面と上記紫外線吸収面とに分割される形態である場合、1つの側面10中の上記光反射面の占める割合は、20~60面積%が好ましく、30~50面積%がより好ましい。分割は、上記割合の範囲内になるようにすればよく、例えば、側面10の長手方向の分割、側面10の短手方向の分割、側面10の対角線による分割、ストライプや水玉等の模様を伴う分割などであってもよい。中でも、金属反射光と、UV-A波長を欠く反射光とが基体1の回転、揺動によって混合することを抑制する点から、全ての側面10を一括して基体1の回転方向に沿った線により分割して2~5、好ましくは2又は3の帯状部分とし、各帯状部分について交互に上記光反射面及び上記紫外線吸収面とすることが好ましい。
【0032】
上記積層面は、上記化合物を含有し透明であるシート又は塗料を用いて上記光反射面の上に、上記紫外線を吸収する層を形成することによって得ることができる。上記積層面は、UV-A波長を欠きつつ、強い光を反射する。側面10は、一部について上記積層面であってよいし、全面について上記積層面であってもよい。
【0033】
<吊り下げ部材>
本発明に係る吊り下げ部材2は、本発明の飛来防止具を吊り下げる係合部材22と、係合部材22に連結した回転連結具20と、回転連結具20と基体10と連結する連結部材21とを有する。このように回転連結具20を介することによって、基体10は回転自在に吊り下げられる。
【0034】
回転連結具20としては、連結部材21と係合部材22とを連結でき、垂直方向の回転軸を有して吊り下げ部材2に捩れを生じさせず基体10を自在に回転させる構造を有していればよく、例えば、サルカンが挙げられる。
【0035】
係合部材22は、本発明の飛来防止具を支柱や架線、あるいは果樹の枝などに係合できればよく、例えば、フックによって引掛けるものや、針金、紐等によって結び付けるものであってよい。
【0036】
連結部材21は、基体10の自在な回転を阻害しないように、基体10の中心軸線と回転軸が一致するように連結できるものであればよく、例えば、フック、針金、紐等により連結するものであってよい。
【0037】
連結部材21と回転連結具20の間、また、回転連結具20と連結部材22の間は、紐やワイヤー等の柔軟な部材によって連結されてもよい。柔軟な部材の長さを調整することによって、風力による上記基体自体の不規則な揺動の程度を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明により飛翅害虫及び/又は害鳥の飛来を防止できるので、本発明を、果実農園、家庭菜園において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 基体
10 側面
2 吊り下げ部材
20 回転連結具
21 連結部材
22 係合部材
3 組立て用部材
30 板状部
31 折り返し部
32 折り線
33 接合部
図1
図2