(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020328
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ドアのシール構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
B60H1/00 102G
B60H1/00 102J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123755
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】秋山 慎吾
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA21
3L211BA52
3L211DA04
3L211DA11
3L211DA13
3L211DA95
(57)【要約】
【課題】隙間量のバラつきを従来よりも抑制する。
【解決手段】車両用空調装置に適用され、両端部が開口の両端に設けられた窪み部によって可動自在に支持されるドアのシール構造であって、両端部には、一方の面に不識布が貼設され、他方の面に可撓性突起が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置に適用され、両端部が開口の両端に設けられた窪み部によって可動自在に支持されるドアのシール構造であって、
前記両端部には、一方の面に不識布が貼設され、他方の面に可撓性突起が設けられていることを特徴とするドアのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、吹出モードドア(摺動ドア)を備える車室内空調ユニットが開示されている。この吹出モードドアは、ドア本体に第1シール材を貼り付けたものであり、第1シール材がケース周壁部に当接することによりシール性能を発揮するものである。また、上記第1 シール材は、弾性パッキン材と表皮材とを積層したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、ケース周壁部と第1シール材との隙間量がバラつくので、高精度で温度を調節することができない。すなわち、上記背景技術では、弾性パッキン材が伸縮性を有しているために当該弾性パッキン材を均一な厚みになるように表皮材に張り付けることができず、以って隙間量のバラつきが発生し易い。また、上記背景技術では、表皮材にギア等の突起が形成されているので、突起の裏面でフィルムの肉厚分ヒケが派生し易く、これによっても隙間量のバラつきが発生し易い。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、隙間量のバラつきを従来よりも抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、ドアのシール構造に係る解決手段として、車両用空調装置に適用され、両端部が開口の両端に設けられた窪み部によって可動自在に支持されるドアのシール構造であって、前記両端部には、一方の面に不識布が貼設され、他方の面に可撓性突起が設けられている、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、窪み部とドアの両端部との隙間量のバラつきが小さくなるので、密閉性を向上させることが可能であり、よって車両用空調装置における高精度な温度調節が可能となる。
また、本発明によれば、従来設けられていたパッキンの厚みを均一にするための工程を廃止することができるため、組立性能を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るドアのシール構造を示す表面斜視図(a)、裏面斜視図(b)及び断面図(a)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るドアのシール構造は、車両用空調装置に適用されるものであり、
図1に示すように装置本体1と当該装置本体1に可動自在に装着されるスライドドア2とに適用されている。
【0010】
装置本体1は、矩形開口部1aを備える。また、この装置本体1は、矩形開口部1aにおいて互いに対向する2辺に沿って窪み部1b、1bが各々設けられている。なお、
図1(a)、(b)では、上記2辺の一方に沿って設けられた窪み部1bのみが示されており、他方の辺に沿って設けられた窪み部1bは便宜的に省略されている。このような他方の辺の窪み部1bの省略は、本実施形態の特徴部であるスライドドア2の構造をより明確に示すためである。
【0011】
これら一対の窪み部1b、1bは、スライドドア2を案内するレールとして機能する。すなわち、一対の窪み部1b、1bは、スライドドア2の両端部2a、2aの厚さよりも所定寸法だけ広い間隔で互いに並行対峙する一対の支持面を各々備え、当該一対の支持面によってスライドドア2の両端部2a、2aを挟み込む。このよな一対の窪み部1b、1bは、スライドドア2を自身の延在方向に沿って可動自在(摺動自在)に支持する。
【0012】
また、装置本体1には、矩形開口部1aにおいて、一対の窪み部1b、1bと交差する一対の辺に沿って端部抑え部材3が各々設けられている。なお、
図1(a)、(c)では、一対の端部抑え部材3のうち、一方の辺近傍に設けられた端部抑え部材3のみを便宜的に示しており、他方の辺近傍に設けられた端部抑え部材3を省略している。
【0013】
上記端部抑え部材3は、スライドドア2の表面(一方の面)に当接することによって矩形開口部1aの端部をシールする。すなわち、矩形開口部1aを閉鎖する場合、スライドドア2は矩形開口部1aに対峙する位置に位置設定される。この状態において、端部抑え部材3は、スライドドア2の表面において端部側に位置する部位が端部抑え部材3と当接し、シール性能を発揮する。
【0014】
また、装置本体1において、矩形開口部1aの中央部には中央部抑え部材4が設けられている。この中央部抑え部材4は、上述した端部抑え部材3と同様にスライドドア2の表面に当接することによって矩形開口部1aをシールする。すなわち、中央部抑え部材4は、矩形開口部1aを閉鎖する場合にスライドドア2の中央部に対峙し、当該中央部に当接することによってシール性能を発揮する。
【0015】
スライドドア2についてさらに説明すると、このスライドドア2は、上述した装置本体1の窪み部1b、1bによって両端部2a、2aが可動自在に支持された矩形状かつ所定の曲率で湾曲した湾曲板である。このスライドドア2は、スライド移動することによって矩形開口部1aを開放/閉鎖するドアであり、車両用空調装置の内部で生成された温風や冷風の通過を許容/あるいは遮断する。
【0016】
このスライドドア2は、所定の曲率で湾曲すると共に外形が略矩形の板状部材である。
図1(a)、(b)に示すように、このスライドドア2において左右方向に並行対峙する両端部2a、2aは、上述したように装置本体1に一対設けられた窪み部1b、1bに各々填まり込んでいる。
【0017】
このスライドドア2は、ドア本体2A及びスキン層2Bから構成されている。また、ドア本体2Aは、所定の曲率で湾曲すると共に外形が略矩形の板状部材(樹脂成型部材)であり、可撓性突起2b、一対のラック構造部2cを備えている。なお、このドア本体2A(スライドドア2)において、表面は比較的緩やかな曲率で突出する突出面(一方の面)であり、裏面は比較的緩やかな曲率で窪む窪み面(他方の面)である。
【0018】
可撓性突起2bは、ドア本体2Aの裏面かつ両端近傍に各々設けられている。すなわち、この可撓性突起2bは、ドア本体2Aの一端部に沿って所定距離を隔てて一対設けられ、またドア本体2Aの他端部にも当該他端部に沿って所定距離を隔てて一対設けられている。このような可撓性突起2bは、ドア本体2Aの延在方向に対して直交する方向つまりスライドドア2の裏面に対して垂直な方向に可撓性を有するループ状の突起である。
【0019】
一対のラック構造部2c、2cは、ドア本体2Aの裏面において可撓性突起2bの内側かつドア本体2Aの両端に沿って、所定ピッチで配列する複数の突条である。これらラック構造部2c、2cは、駆動軸5と係合することによって駆動力を伝達する力伝達機構である。
【0020】
スキン層2Bは、ドア本体2Aの表面に貼設された矩形状の織布である。すなわち、このスキン層2Bは、繊維(糸)が縦横に織り込まれた織布であり、ドア本体2Aの表面全体を覆っている。なお、このスキン層2Bは、
図1(b)、(c)に示されているように、ドア本体2Aの表面だけではなく、裏面の可撓性突起2bの表面までも覆うサイズに設定されている。また、スキン層2Bは、繊維を織らずにシート状に絡ませて成型した不織布であってもよい。
【0021】
ここで、本実施形態におけるスライドドア2の両端部2a、2aは、ドア本体2Aの表面にスキン層2Bが貼設された部位である。すなわち、このような両端部2a、2aは、ドア本体2Aの表面にスキン層2Bが貼設された部位である。
【0022】
最後に、駆動軸5は、棒状の主軸5aに一対のピニオン機構5b、5bが設けられたものである。主軸5aは、図示しないモータ等の駆動機構によって回転駆動される。一対のピニオン機構5b、5bは、各々にドア本体2Aにおける一対のラック構造部2c、2cに係合(噛み合う)歯車である。
【0023】
次に、本実施形態に係るドアのシール構造の作用効果について説明する。
本実施形態におけるスライドドア2は、駆動機構によって駆動軸5が回転駆動され、この回転駆動に起因する駆動力が一対のピニオン機構5b及びラック構造部2c、2cを介して伝達されることによりスライド移動する。
【0024】
また、このスライドドア2は、両端部2a、2aが装置本体1における一対の窪み部1b、1bに挟持された状態でスライド移動する。このようなスライド移動に際して、スライドドア2は、裏面の両端近傍に設けられた可撓性突起2bが一対の窪み部1b、1bにおける一対の支持面の一方に常に当接しているので、表面側に常に付勢されている。
【0025】
すなわち、スライドドア2は、表面に貼設されたスキン層2Bの両端近傍部位が一対の窪み部1b、1bにおける一対の支持面の他方側に常に付勢されている。したがって、装置本体1の矩形開口部1aは、両端がスライドドア2によって確実にシールされた状態となる。
【0026】
さらに、スライドドア2が矩形開口部1aに対峙する位置にある場合、スライドドア2の上記両端部2a、2aに交差する一対の端部の一方が端部抑え部材3に当接し、また両端部2a、2aに交差する一対の端部の他方が中央部抑え部材4に当接する。すなわち、装置本体1の矩形開口部1aにおける残りの2つの端部は、スライドドア2の両端部2a、2aに交差する両端部によって確実にシールされた状態となる。
【0027】
このような本実施形態によれば、スライドドア2の両端部2a、2bには、表面(一方の面)にスキン層2B(不識布)が貼設され、裏面(他方の面)に可撓性突起2bが設けられているので、装置本体1とスライドドア2との隙間量のバラつきを従来よりも抑制することが可能である。したがって、本実施形態によれば、装置本体1の矩形開口部1aにおける4つの端部をスライドドア2によってより確実にシールすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 装置本体
1a 矩形開口部
1b 窪み部
2 スライドドア
ドア本体2A
2a 両端部
2b 可撓性突起
2c ラック構造部
2B スキン層
3 端部抑え部材
4 中央部抑え部材
5 駆動軸
5a 主軸
5b ピニオン機構