IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミクニの特許一覧

<>
  • 特開-圧力センサ 図1
  • 特開-圧力センサ 図2
  • 特開-圧力センサ 図3
  • 特開-圧力センサ 図4
  • 特開-圧力センサ 図5
  • 特開-圧力センサ 図6
  • 特開-圧力センサ 図7
  • 特開-圧力センサ 図8
  • 特開-圧力センサ 図9
  • 特開-圧力センサ 図10
  • 特開-圧力センサ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020330
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 23/10 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G01L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123759
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】兼田 諭志
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA23
2F055BB12
2F055CC02
2F055DD01
2F055EE23
2F055FF04
2F055GG11
(57)【要約】
【課題】高温の圧力媒体からダイヤフラムを保護して、熱歪みを抑制し、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止して、所期のセンサ精度を確保できる圧力センサを提供する。
【解決手段】圧力センサは、筒状に形成されたハウジング10,20と、ハウジング内に収容されると共に圧電体83を含む圧力計測部材80と、ハウジングの先端側に固定された可撓板状部31と圧力計測部材に荷重を伝達するべく軸線S上において突出する伝達部32とを有するダイヤフラム30と、ダイヤフラムを覆うようにハウジングに保持されて伝達部32に対応する中央領域においてダイヤフラムに接触すると共に中央領域以外においてダイヤフラムとの間に環状の空隙Vsを画定する遮熱板40を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を画定する円筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に収容されると共に圧電体を含む圧力計測部材と、
前記ハウジングの先端側に固定される可撓板状部と前記圧力計測部材に荷重を伝達するべく前記軸線上において突出する伝達部とを有するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムを覆うように前記ハウジングに保持され,前記伝達部に対応する中央領域において前記ダイヤフラムに接触すると共に前記中央領域以外において前記ダイヤフラムとの間に環状の空隙を画定する遮熱板と、
を含む、圧力センサ。
【請求項2】
前記伝達部は、前記軸線を中心とする円柱状をなし、
前記遮熱板は、前記軸線を中心とし前記伝達部の外径に対応する領域まで接触する円板状接触部と、前記円板状接触部に連続すると共に前記可撓板状部と離隔して配置され前記空隙を画定する環状離隔部を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記環状離隔部の外周面と隙間を画定するべく、前記環状離隔部の外周エッジ部と線接触して、前記遮熱板を保持するように形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記軸線の方向において前記可撓板状部が固定される端面と、前記端面よりも径方向の外側において前記端面よりも前記軸線の方向の先端側に伸長する先端筒状部を含み、
前記遮熱板は、前記先端筒状部の内側に保持されている、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記先端筒状部は、前記可撓板状部の外周面との間に隙間を画定するように形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記先端筒状部は、前記遮熱板を保持するべくカシメ処理された先端部を有する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記遮熱板よりも前記軸線の方向の先端側に配置されて前記遮熱板を保持するリング部材を含み、
前記リング部材は、前記先端筒状部に固定されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記ハウジングは、外部ハウジングと、前記外部ハウジングの内側に嵌め込まれて固定されるサブハウジングを含み、
前記サブハウジングは、前記圧力計測部材を収容すると共に前記端面を有し、
前記外部ハウジングは、前記先端筒状部を有する、
ことを特徴とする請求項4ないし7いずれか一つに記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記圧力計測部材は、前記圧電体を挟み込むように積層された第1電極及び第2電極を含み、
前記第1電極には、前記ハウジングと絶縁して導出される第1導電体が接続され、
前記第2電極には、前記ハウジングと絶縁して導出される第2導電体が接続されている、ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一つに記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力媒体の圧力を検出する圧力センサに関し、特に、エンジンの燃焼室内における燃焼ガス等の如く、高温圧力媒体の圧力を検出する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧力センサとしては、筒状の筐体、筐体の先端側に接合されて受圧した圧力に応じて撓むダイヤフラム、筐体内に配置されたセンサ部、ダイヤフラムとセンサ部を接続する接続部、ダイヤフラムの外面の全体に接触して配置され、その中央部がダイヤフラムに溶接された遮蔽板としての受熱部を備えた圧力センサが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この圧力センサにおいては、遮熱板の全体がダイヤフラムと接触しているため、遮熱板に伝わった熱はダイヤフラムに伝熱し易い。また、遮熱板の中央領域がダイヤフラムに溶接されているため、ダイヤフラムの外周領域において遮蔽板との間に隙間を生じ易く、生じた隙間を通して、ダイヤフラムは高温の燃焼ガスに直接曝されることになり、熱の影響を抑制ないし防止できない。
そして、ダイヤフラムが熱の影響を受けると、熱膨張による歪みが発生し、センサ部の精度が低下する。また、経年変化で隙間が大きくなると、センサ部の精度はさらに低下し、溶接部の劣化により遮蔽板が脱落する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-40516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、高温圧力媒体からダイヤフラムを保護して熱歪みを抑制し、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止して、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出できる、圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力センサは、軸線を画定する円筒状のハウジングと、ハウジング内に収容されると共に圧電体を含む圧力計測部材と、ハウジングの先端側に固定される可撓板状部と圧力計測部材に荷重を伝達するべく軸線上において突出する伝達部とを有するダイヤフラムと、ダイヤフラムを覆うようにハウジングに保持され伝達部に対応する中央領域においてダイヤフラムに接触すると共に中央領域以外においてダイヤフラムとの間に環状の空隙を画定する遮熱板とを含む、構成となっている。
【0007】
上記圧力センサにおいて、伝達部は、軸線を中心とする円柱状をなし、遮熱板は、軸線を中心とし伝達部の外径に対応する領域まで接触する円板状接触部と、円板状接触部に連続すると共に可撓板状部と離隔して配置され空隙を画定する環状離隔部を含む、構成を採用してもよい。
【0008】
上記圧力センサにおいて、ハウジングは、環状離隔部の外周面と隙間を画定するべく、環状離隔部の外周エッジ部と線接触して遮熱板を保持するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0009】
上記圧力センサにおいて、ハウジングは、軸線の方向において可撓板状部が固定される端面と、端面よりも径方向の外側において端面よりも軸線の方向の先端側に伸長する先端筒状部を含み、遮熱板は、先端筒状部の内側に保持されている、構成を採用してもよい。
【0010】
上記圧力センサにおいて、先端筒状部は、可撓板状部の外周面との間に隙間を画定するように形成されている、構成を採用してもよい。
【0011】
上記圧力センサにおいて、先端筒状部は、遮熱板を保持するべくカシメ処理された先端部を有する、構成を採用してもよい。
【0012】
上記圧力センサにおいて、ハウジングは、遮熱板よりも軸線の方向の先端側に配置されて遮熱板を保持するリング部材を含み、リング部材は、先端筒状部に固定されている、構成を採用してもよい。
【0013】
上記圧力センサにおいて、ハウジングは、外部ハウジングと、外部ハウジングの内側に嵌め込まれて固定されるサブハウジングを含み、サブハウジングは、圧力計測部材を収容すると共に上記端面を有し、外部ハウジングは、先端筒状部を有する、構成を採用してもよい。
【0014】
上記圧力センサにおいて、圧力計測部材は、圧電体を挟み込むように積層された第1電極及び第2電極を含み、第1電極には、ハウジングと絶縁して導出される第1導電体が接続され、第2電極には、ハウジングと絶縁して導出される第2導電体が接続されている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成をなす圧力センサによれば、高温圧力媒体からダイヤフラムを保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出できる圧力センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る圧力センサの第1実施形態を示す外観斜視図である。
図2図1に示す圧力センサの軸線を通る断面図である。
図3図1に示す圧力センサに含まれるセンサモジュール、遮熱板の分解斜視図である。
図4図1に示す圧力センサの部分断面図である。
図5図4に示す断面に対して軸線S回りに90度回転した位置における圧力センサの部分断面図である。
図6】第1実施形態におけるハウジング、ダイヤフラム、及び遮熱板を示す部分断面図である。
図7】本発明に係る遮熱板の遮熱効果を示すものであり、遮熱板とダイヤフラムとの隙間を変化させた場合のダイヤフラムの温度分布を示すグラフである。
図8】第2実施形態におけるハウジング、ダイヤフラム、及び遮熱板を示す部分断面図である。
図9】第3実施形態におけるセンサモジュール、遮熱板、及び環状部材の分解斜視図である。
図10】第3実施形態におけるハウジング、ダイヤフラム、遮熱板、及び環状部材を示す部分断面図である。
図11】本発明に係る圧力センサに含まれる遮熱板の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係る圧力センサは、図2に示すように、エンジンのシリンダヘッドEhに取り付けられて、圧力媒体としての燃焼室内の燃焼ガスの圧力を検出するものである。
【0018】
第1実施形態に係る圧力センサは、図1ないし図3に示すように、軸線Sを画定する円筒状のハウジングHとしての外部ハウジング10及びサブハウジング20、ダイヤフラム30、遮熱板40、保持板50、位置決め部材60、断熱部材70、圧力計測部材80、予荷重付与部材90、第1導電体としてのリード線101、第2導電体としてのリード線102、コネクタ110を備えている。
【0019】
ここで、圧力計測部材80は、ハウジングの先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極81、圧電体82、及び第2電極83により構成されている。
予荷重付与部材90は、固定部材91、及び絶縁部材92により構成されている。
【0020】
外部ハウジング10は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、図1及び図2に示すように、軸線S方向に伸長する円筒状に形成され、先端筒状部11、嵌合内周壁12、段差部13、貫通路14、外周面に形成された雄ネジ部15、フランジ部16、コネクタ連結部17を備えている。
【0021】
先端筒状部11は、図4及び図5に示すように、ダイヤフラム30及び遮熱板40を収容する領域であり、内周壁11aの内径寸法は、サブハウジング20の外周壁21の外径寸法よりも大きく形成されている。
また、先端筒状部11は、軸線S方向においてダイヤフラム30の可撓板状部31が固定されるサブハウジング20の端面23よりも径方向の外側において、端面23よりも軸線S方向の先端側に伸長するように形成されている。
【0022】
サブハウジング20は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、図4及び図5に示すように、軸線S方向に伸長する円筒状に形成され、嵌合内周壁12に嵌合される外周壁21、軸線Sを中心とする内周壁22、端面23、端面24を備えている。
端面23は、ダイヤフラム30の可撓板状部31の外周縁領域が軸線S方向において当接されて固定される領域である。
端面24は、外部ハウジング10の段差部13に当接される領域である。
そして、サブハウジング20は、ダイヤフラム30、保持板50、位置決め部材60、断熱部材70、圧力計測部材80、予荷重付与部材90、リード線101、及びリード線102が組み付けられた状態で、外部ハウジング10の内側に嵌め込まれて溶接等により固定される。
【0023】
ダイヤフラム30は、例えば、板厚が0.2mm~0.4mm程度の析出硬化性を有するステンレス鋼板(SUS630)等の金属材料を用いて形成され、図4ないし図6に示すように、可撓板状部31、可撓板状部31に連続して形成された伝達部32を備えている。
可撓板状部31は、サブハウジング20の外径寸法と同等の外径をなす弾性変形可能な円板状に形成され、その外周縁領域がサブハウジング20の端面23に軸線S方向から当接されて溶接等により固定される。
【0024】
伝達部32は、可撓板状部31の内側において軸線Sを中心としサブハウジング20の軸線S方向の内部に向けて突出する円柱状に形成されている。
伝達部32の外周壁32aは、サブハウジング20の内周壁22と環状の空隙をおいて配置されている。
そして、伝達部32は、ダイヤフラム30が受けた力を、保持板50、断熱部材70及び第1電極81を介して、圧電体82に伝達する役割をなす。
また、伝達部32を設けたことにより、ダイヤフラム30に伝わった熱は、サブハウジング20内に伝わる際に、面積が狭まった伝達部32により伝熱量が制限される。したがって、ダイヤフラム30から内部へ移動する伝熱量を抑えることができる。
【0025】
上記形態をなすダイヤフラム30は、伝達部32の外周壁32aからサブハウジング20の内周壁22までの環状領域が有効に弾性変形する有効部Aを画定し、燃焼ガスの圧力に応じた荷重を受けて軸線S方向に弾性変形するようになっている。
具体的には、有効部Aは、図6に示すように、軸線Sを中心として、伝達部32の外周壁32aの半径をr、サブハウジング20の内周壁22の半径をRとするとき、直径2Rの円領域から直径2rの円領域を除いた円環状領域である。
【0026】
すなわち、有効部Aは、ダイヤフラム30が圧力媒体の圧力を受けた際に、受けた圧力に応じて再現性良く弾性変形し、圧力計測部材80のセンサ精度に直接影響を及ぼす領域である。
一方、有効部Aは、燃焼ガスの熱の影響を受けて熱膨張し、圧力媒体の圧力とは別に、伝達部32に変形力を及ぼす虞がある。したがって、有効部Aは遮熱されるのが望ましい領域でもある。
【0027】
遮熱板40は、例えば、板厚が0.3mm~0.4mm程度のオーステナイト系のステンレス鋼板(SUS304)等の金属材料を用いてプレス成形され、円板状接触部41、環状離隔部42を備えている。
円板状接触部41は、軸線Sを中心とし、軸線Sに垂直な方向において伝達部32の外径(外周壁32a)に対応する領域まで接触する、すなわち、伝達部32に対応する中央領域(直径2rの円形領域)においてダイヤフラム30と接触する円板状に形成されている。
環状離隔部42は、伝達部32に対応する中央領域以外においてダイヤフラム30との間に環状の空隙Vsを画定するべく、すなわち、可撓板状部31と離隔して配置されてダイヤフラム30との間に環状の空隙Vsを画定するように、円板状接触部41に連続して形成されると共に軸線S方向に折り曲げられかつ径方向に拡がる円筒付きの円環板状をなし、可撓板状部31と間隔Lだけ離隔して配置される。
間隔Lは、大きくなるほど空隙Vsが大きくなり、断熱効果が高まるが、小型化、レイアウト上の制約、要求される断熱効果を考慮して、遮熱板40の板厚の1倍~2倍程度の値に設定される。
尚、間隔Lは、上記の値に限定されるものではなく、他の制約が許容される限りその他の値に設定されてもよい。
【0028】
遮熱板40の材料としては、熱伝導率が小さく、耐久性に優れた材料が好ましく、例えば、上記ステンレス鋼の他に、ニッケル合金、鉄系合金、チタン合金等を使用してもよい。熱伝導率としては、例えば15W/m・K以下が好ましく、より好ましくは5W/m・K以下である。
また、遮熱板40の材料として、ダイヤフラム30の熱伝導率よりも小さい材料を用いた場合、高温の圧力媒体から遮熱板40を介してダイヤフラム30へ伝わる伝熱量を有効に抑制することができる。
【0029】
そして、遮熱板40は、図4及び図5に示すように、外部ハウジング10の先端筒状部11の内側に挿入されて、円板状接触部41がダイヤフラム30の中央領域に軸線S方向の外側から接触するように重ね合わされ、先端筒状部11の先端部11bがカシメ処理されて、環状離隔部42の外周面42aが先端筒状部11の内周壁11aと接触した状態で、外周エッジ部42bが外部ハウジング10に保持された状態となる。
すなわち、遮熱板40は、高温圧力媒体(高温燃焼ガス)に曝されるダイヤフラム30を軸線S方向の外側から覆うように配置されて、溶接等により固定されることなく、空隙Vsを密閉しつつ外部ハウジング10に保持される。
【0030】
上記構成をなす遮熱板40は、ダイヤフラム30とは別個の部材として形成されているため、高温圧力媒体から受けた熱により単独で膨張及び収縮を繰り返すと共に放熱し、別部材であるが故にダイヤフラム30との間に熱障壁も形成され、ダイヤフラム30への伝熱を抑制するように機能する。
特に、遮熱板40は、ダイヤフラム30の有効部Aとの間に環状の空隙Vsを画定するように形成されているため、空隙Vs内の空気等の気体層により断熱効果が高められ、ダイヤフラム30に伝わる伝熱量を抑制することができる。
【0031】
また、遮熱板40は、ダイヤフラム30や外部ハウジング10に溶接等により固定されるのではなく、単に接触して保持されているだけであるため、熱変形を生じても、遮熱板40の熱変形がダイヤフラム30や外部ハウジング10に影響を及ぼすのを抑制ないし防止することができる。
これにより、ダイヤフラム30の熱膨張による歪みを抑制でき、熱の影響による圧力計測部材80のセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0032】
保持板50は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、図4及び図5に示すように、伝達部32の外径よりも大きい外径をなす円板状に形成されている。
そして、保持板50は、ダイヤフラム30の伝達部32と断熱部材70の間に挟持されて、位置決め部材60を可撓板状部31から離隔するように保持し、ダイヤフラム30の可撓板状部31と位置決め部材60の間に空隙を画定する役割をなす。
これによれば、上記空隙の存在により、ダイヤフラム30からサブハウジング20の内部に向かう伝熱を効率良く抑制することができる。
尚、保持板50は、機械的剛性が高いものであれば、絶縁材料、その他の材料により形成されてもよい。
【0033】
位置決め部材60は、電気的絶縁性及び熱的絶縁性を有する絶縁材料を用いて、図4及び図5に示すように、軸線S方向に伸長する円筒状に形成され、貫通孔61、嵌合凹部62、外周面63、リード線101,102を通す二つの切り欠き溝64を備えている。
貫通孔61は、軸線Sを中心としかつ軸線S方向に伸長する円形孔をなす。
嵌合凹部62は、保持板50を受け入れるべく、軸線Sを中心とする円形凹部をなす。
外周面63は、サブハウジング20の内周壁22に嵌合されるべく、軸線Sを中心とする円筒面をなす。
二つの切り欠き溝64は、軸線S方向において同一の深さ寸法をなし、かつ、軸線S回りにおいて180度離れた点対称の位置に設けられている。
【0034】
位置決め部材60を形成する絶縁材料としては、熱容量が大きく、熱伝導率の小さいものが好ましい。熱伝導率は、例えば15W/m・K以下が好ましく、より好ましくは5W/m・K以下である。具体的な材料としては、例えば、石英ガラス、ステアタイト、ジルコニア、コージライト、フォルステライト、ムライト、イットリア等のセラミックス、又は、導電性材料に絶縁処理を施したものが挙げられる。
【0035】
そして、位置決め部材60は、伝達部32に当接した保持板50により支持されかつサブハウジング20の内周壁22に嵌合されると共に、貫通孔61内において断熱部材70と、第1電極81、圧電体82及び第2電極83からなる圧力計測部材80と、絶縁部材92とを積層状態で位置決めして保持する。
すなわち、位置決め部材60は、ハウジングの一部をなすサブハウジング20の内側に配置されると共に、断熱部材70、圧力計測部材80及び絶縁部材92を貫通孔61に嵌め込んでハウジングの軸線S上に位置決めする役割をなす。
したがって、位置決め部材60を基準として、断熱部材70、圧力計測部材80を構成する第1電極81、圧電体82、第2電極83を、両電極の絶縁性を確保しつつ軸線S上に位置決めして容易に組み付けることができる。
【0036】
位置決め部材60の熱伝導率は、断熱部材70の熱伝導率と同等で、絶縁部材92の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。これにより、位置決め部材60を断熱部材としても機能させることができる。
さらに、位置決め部材60は、保持板50により支持されてダイヤフラム30の可撓板状部31から離隔して配置され、又、断熱部材70を囲繞するように形成されているため、ダイヤフラム30及びハウジングの壁部から圧電体82に向かう伝熱をより効率良く抑制することができる。
【0037】
断熱部材70は、電気的絶縁性及び熱的絶縁性を有する絶縁材料を用いて、図3ないし図5に示すように、第1電極81の外径と同等の外径をなす円柱状に形成されている。
断熱部材70を形成する絶縁材料としては、熱容量が大きく、熱伝導率の小さいものが好ましい。熱伝導率は、例えば15W/m・K以下が好ましく、より好ましくは5W/m・K以下である。具体的な材料としては、例えば、石英ガラス、ステアタイト、ジルコニア、コージライト、フォルステライト、ムライト、イットリア等のセラミックス、又は、導電性材料に絶縁処理を施したものが挙げられる。
【0038】
そして、断熱部材70は、サブハウジング20の内側において、ダイヤフラム30の伝達部32に当接する保持板50と第1電極81の間に密接して配置される。
これにより、断熱部材70は、ダイヤフラム30から第1電極81への伝熱を抑制するように機能する。
すなわち、ダイヤフラム30が受けた圧力による荷重は、保持板50、断熱部材70及び第1電極81を介して圧電体82に伝達され、一方、ダイヤフラム30から第1電極81への伝熱は、断熱部材70により抑制される。
よって、第1電極81と隣接する圧電体82に対する熱の影響が抑制され、センサ出力の基準点(零点)の変動を防止でき、所期のセンサ精度を得ることができる。
【0039】
圧力計測部材80は、圧力を検出する機能を有するものであり、図3ないし図5に示すように、サブハウジング20の内側において、先端側から軸線S方向に順次積層された、第1電極81、圧電体82、及び第2電極83を備えている。
【0040】
第1電極81は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の導電性の金属材料を用いて、位置決め部材60の貫通孔61に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成されている。
そして、第1電極81は、位置決め部材60の貫通孔61内において、一方の面が断熱部材70と密接し、他方の面が圧電体82と密接するように配置される。
【0041】
圧電体82は、位置決め部材60の貫通孔61に接触しない寸法をなす四角柱状に形成されている。
そして、圧電体82は、位置決め部材60の貫通孔61内において、一方の面が第1電極81と密接し、他方の面が第2電極83と密接するように配置される。
これにより、圧電体82は、軸線S方向において受けた荷重による歪に基づいて電気信号を出力する。
尚、圧電体82としては、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等によるセラミックス、水晶等が適用される。
【0042】
第2電極83は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の導電性の金属材料を用いて、位置決め部材60の貫通孔61に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成されている。
そして、第2電極83は、位置決め部材60の貫通孔61内において、一方の面が圧電体82と密接し、他方の面が絶縁部材92と密接するように配置される。
【0043】
予荷重付与部材90は、図3ないし図5に示すように、ハウジングの一部をなすサブハウジング20の内側に配置されて、ダイヤフラム30に向けて圧力計測部材80を押圧して予荷重を付与し、圧力計測部材80に対してセンサとしての直線特性を与える役割をなすものであり、固定部材91及び絶縁部材92により構成されている。
【0044】
固定部材91は、析出硬化系やフェライト系のステンレス鋼等の金属材料を用いて、軸線Sを中心としかつ貫通孔61と同等以上の面積を占める中央領域において空洞や肉抜きが存在しない中実の略円柱状に形成されている。
また、固定部材91は、中央領域から外れた外周領域において、二つの縦溝91aを備えている。
二つの縦溝91aは、それぞれ、リード線101,102を通すべく、軸線S回りにおいて180度離れた点対称の位置にいて肉抜きされて形成されている。
【0045】
絶縁部材92は、電気的に絶縁性の高い絶縁材料を用いて、位置決め部材60の貫通孔61に嵌め込まれる外径をなす円柱又は円板状に形成されている。
すなわち、絶縁部材92は、貫通孔61と同等の面積を占める全領域において空洞や肉抜きが存在しない中実形状に形成されている。
そして、絶縁部材92は、第2電極83と固定部材91との電気的絶縁を維持すると共に、圧電体82に伝わった熱を固定部材91へ導いて放熱させるように機能する。
尚、この実施形態において、断熱部材70、第1電極81、第2電極83、絶縁部材92は、略同一の外径寸法でかつ略同一の厚さ寸法に、すなわち、略同一形状に形成されている。
【0046】
絶縁部材92の絶縁材料としては、熱容量が小さく、熱伝導率が大きいものが好ましく、具体的な材料としては、例えば、アルミナ、サファイア、窒化アルミニウム、炭化珪素等のセラミックス、又は、導電性材料に絶縁処理を施したものが挙げられる。
また、絶縁部材92としては、断熱部材70の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有するもの、例えば30W/m・K以上のものが好ましい。さらに、絶縁部材92としては、断熱部材70よりも熱容量が小さいものが好ましい。
これによれば、断熱部材70により圧電体82に伝わる伝熱量をできるだけ抑える一方で、圧電体82に伝わった熱は絶縁部材92を通して放熱を促進させることができる。
【0047】
上記構成をなす予荷重付与部材90の組み付けにおいては、図4及び図5に示すように、圧力計測部材80が位置決め部材60内に配置された状態で、絶縁部材92が第2電極83に当接するように貫通孔61に嵌め込まれる。そして、圧力計測部材80を軸線S方向においてダイヤフラム30に向けて押し付けるように、固定部材91が絶縁部材92に当接されて、予荷重が付与された状態で、固定部材91がサブハウジング20に溶接等により固定される。
【0048】
このように、予荷重付与部材90で予荷重を付与することで、圧力計測部材80に対してセンサとしての直線特性を与えることができる。また、絶縁部材92は、第2電極83と固定部材91との電気的絶縁を維持すると共に、圧電体82に伝わった熱を固定部材91へ導いて放熱させるように機能する。したがって、絶縁部材92としては、上記のように熱伝導率が大きく、熱容量が小さいものが好ましい。
【0049】
リード線101は、図2及び図4に示すように、圧力計測部材80の第1電極81に電気的に接続され、位置決め部材60の一方の切り欠き溝64、固定部材91の一方の縦溝91a、及び外部ハウジング10の貫通路14を通り、外部ハウジング10と絶縁して導出された状態でコネクタ110に導かれている。
すなわち、第1電極81は、リード線101を介して、コネクタ110の端子112に接続され、外部コネクタを介して、電気回路に対して電気的にグランド側(マイナス側)に接続される。
【0050】
リード線102は、図2及び図4に示すように、圧力計測部材80の第2電極83に電気的に接続され、位置決め部材60の他方の切り欠き溝64、固定部材91の他方の縦溝91a、及び外部ハウジング10の貫通路14を通り、外部ハウジング10と絶縁して導出された状態でコネクタ110に導かれている。
すなわち、第2電極83は、リード線102を介して、コネクタ110の端子113に接続され、外部コネクタを介して、電気回路に対して電気的に出力側(プラス側)に接続される。
【0051】
コネクタ110は、図2に示すように、外部ハウジング10のコネクタ連結部17に結合される結合部111、結合部111に固定されると共にリード線101と電気接続される端子112、絶縁部材を介して端子112に固定されると共にリード線102と電気接続される端子113を備えている。
端子112,113は、外部コネクタの接続端子とそれぞれ接続されるようになっている。
【0052】
次に、上記構成をなす圧力センサの組み立て作業について説明する。
作業に際して、外部ハウジング10、サブハウジング20、ダイヤフラム30、遮熱板40、環状部材45、保持板50、位置決め部材60、断熱部材70、第1電極81、圧電体82、第2電極83、固定部材91、絶縁部材92、リード線101、リード線102、及びコネクタ110が準備される。
【0053】
先ず、ダイヤフラム30の可撓板状部31が、サブハウジング20の端面23に溶接等により固定される。
次に、保持板50及び位置決め部材60がサブハウジング20内に嵌め込まれ、続いて、位置決め部材60内に、断熱部材70、リード線101が接続された第1電極81、圧電体82、リード線102が接続された第2電極83、及び絶縁部材92が順次積層して嵌め込まれる。
尚、リード線101,102は、後の工程で、第1電極81及び第2電極83にそれぞれ接続されてもよい。
【0054】
その後、固定部材91が、絶縁部材92を押し付けるようにしてサブハウジング20内に嵌め込まれ、予荷重が付与された状態で、固定部材91がサブハウジング20に溶接等により固定される。
これにより、図4及び図5に示すように、センサモジュールMが形成される。
【0055】
尚、センサモジュールMの組付け方法は、上記手順に限るものではなく、予め、位置決め部材60に対して、保持板50、断熱部材70、第1電極81、圧電体82、第2電極83、及び絶縁部材92が組み込まれ、上記種々の部品が組み込まれた位置決め部材60が、サブハウジング20内に嵌め込まれて、固定部材91が予荷重を付与した状態でサブハウジング20に溶接等により固定されてもよい。
【0056】
続いて、センサモジュールMが外部ハウジング10に組み込まれる。すなわち、リード線101,102が外部ハウジング10の貫通路14に通されると共に、サブハウジング20が外部ハウジング10の嵌合内周壁12に嵌め込まれて、端面24が段差部13に当接させられる。その後、サブハウジング20が、外部ハウジング10に対し溶接により固定される。
この状態において、ダイヤフラム30と外部ハウジング10との関係は、図4及び図5に示すように、先端筒状部11の内周壁11aと可撓板状部31の外周面31aとの間に、環状の隙間Cが画定される配置関係となる。
すなわち、先端筒状部11は、径方向において、可撓板状部31の外周面31aとの間に隙間Cを画定するように形成されている。
このように、隙間Cが形成されることにより、外部ハウジング10の先端筒状部11からダイヤフラム30に伝わる熱を効率よく抑制することができる。
【0057】
続いて、遮熱板40が、ダイヤフラム30を軸線S方向の外側から覆うように先端筒状部11の内側に嵌め込まれ、円板状接触部41がダイヤフラム30の伝達部32に対応する中央領域に接触するように配置される。
そして、外部ハウジング10の先端筒状部11において、先端部11bが遮熱板40の外周エッジ部42bを保持するように軸線Sに向けて折り曲げてカシメ処理される。
このように、先端筒状部11を折り曲げることにより、高温圧力媒体が遮熱板40の外周エッジ部42b及び外周面42aの周りから空隙Vs内に入り込むのを防止して、遮熱板40をダイヤフラム30と接触した状態で保持することができる。
これにより、高温圧力媒体からダイヤフラム30を保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0058】
続いて、結合部111が、外部ハウジング10のコネクタ連結部17に固定される。
続いて、リード線101が端子112に接続され、その後、端子112が結合部111に固定される。
続いて、リード線102が端子113に接続され、その後、端子113が絶縁部材を介して端子112に固定される。これにより、コネクタ110が外部ハウジング10に固定される。
以上により、圧力センサの組付けが完了する。
尚、上記組み付け手順は、一例であって、これに限定されるものではなく、その他の組付け手順を採用してもよい。
【0059】
上記第1実施形態に係る圧力センサによれば、ダイヤフラム30とは別個の部材として形成される遮熱板40が、ダイヤフラム30を覆うように外部ハウジング10に保持されて、伝達部32に対応する中央領域においてダイヤフラム30と接触すると共に中央領域以外の可撓板状部31との間に環状の空隙Vsを画定するように配置されるため、ダイヤフラム30の有効部Aへの伝熱を抑制することができる。
具体的には、高温圧力媒体から受けた熱により、遮熱板40が単独で膨張及び収縮を繰り返すと共に放熱し、又、空隙Vsが有効な熱障壁として機能して、ダイヤフラム30への伝熱を有効に抑制することができる。
これにより、ダイヤフラム30の熱膨張による歪みが抑制ないし防止され、圧力計測部材80のセンサ誤差が低減され、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0060】
特に、遮熱板40が、ダイヤフラム30の伝達部32に対応する中央領域と接触し、中央領域以外の領域と非接触で空隙Vsを画定するため、図7に示すように、ダイヤフラム30の高温化を抑制することができる。
図7は、ダイヤフラム30の伝達部32に対応する中央領域(直径2rの円領域)以外の領域と遮熱板40との隙間を、0.0mm、10μm、1.0mmに変化させた場合のダイヤフラム30の温度分布をシミュレーションした結果である。
この結果から明らかなように、隙間が0.0mmの場合は、ダイヤフラム30の有効部Aの温度上昇が大きくなっている。
一方、隙間が10μm、1.0mmの場合は、隙間が0.0mmの場合に比べて、ダイヤフラム30の有効部Aにおいて数百度の範囲で温度が低下している。
すなわち、ダイヤフラム30の伝達部32に対応する中央領域以外の領域において、空隙Vsを画定する遮熱板40を設けることにより、ダイヤフラム30における有効部Aの熱変形を抑制することができる。
【0061】
また、ダイヤフラム30に伝達した熱は、断熱部材70により断熱されて、ダイヤフラム30から第1電極81及び圧電体82への伝熱が抑制される。したがって、圧電体82に対する熱の影響が抑制され、センサ出力の基準点(零点)の変動を防止でき、所期のセンサ精度を得ることができる。
ここでは、断熱部材70が絶縁材料により形成され、第1電極81がリード線101を介して電気回路に直接接続され、第2電極83がリード線102を介して電気回路に直接接続されている。したがって、リーク電流の発生を防止でき、所期のセンサ特性を維持することができる。
【0062】
さらに、ハウジングは、外部ハウジング10と、外部ハウジング10の内側に嵌め込まれて固定されるサブハウジング20を含み、サブハウジング20には、ダイヤフラム30、保持板50、位置決め部材60、断熱部材70、圧力計測部材80、及び予荷重付与部材90が配置される。
これによれば、サブハウジング20に対して、ダイヤフラム30、保持板50、位置決め部材60、断熱部材70、圧力計測部材80、及び予荷重付与部材90を予め組み込んで、センサモジュールMを形成することができる。
したがって、適用対象物に応じて取付け形状等が異なる場合は、外部ハウジング10のみを適用対象毎に設定して、センサモジュールMを共用することができる。
上述のように、第1実施形態に係る圧力センサによれば、高温圧力媒体からダイヤフラム30を保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0063】
図8は、第2実施形態に係る圧力センサを示すものであり、遮熱板40を保持する形態を変更した以外は、第1実施形態と同一であり、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
第2実施形態において、先端筒状部11は、径方向において、環状離隔部42の外周面42aとの間に隙間C2を画定するべく、環状離隔部42の外周エッジ部42bと線接触して、遮熱板40を保持するべく折り曲げられている。
すなわち、先端筒状部11の先端部11cが、遮熱板40の外周面42aに対して傾斜するようにカシメ処理されて、内周壁11aが環状離隔部42の外周エッジ部42bと接触して、遮熱板40が先端筒状部11の内側に保持される。
【0065】
これにより、先端筒状部11の内周壁11aと遮熱板40の外周面42aとの間に隙間C2が画定される。したがって、遮熱板40が熱膨張する際に、膨張した部分を隙間C2に逃がすことで、遮熱板40の変形がダイヤフラム30に直接影響を及ぼすのを抑制ないし防止することができる。
第2実施形態に係る圧力センサによれば、第1実施形態と同様に、高温圧力媒体からダイヤフラム30を保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0066】
図9及び図10は、第3実施形態に係る圧力センサを示すものであり、遮熱板40を保持するべく、ハウジングHの一部をなすリング部材120を採用した以外は、第1実施形態と同一であり、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
第3実施形態に係る圧力センサは、ハウジングHが、外部ハウジング10、サブハウジング20の他に、遮熱板40よりも軸線S方向の先端側に配置されて遮熱板40を保持するリング部材120を備えている。
リング部材120は、遮熱板40と同一の材料、例えばオーステナイト系のステンレス鋼(SUS304)等の金属材料を用いて、軸線S方向から視て円環状の平板に形成され、図10に示すように、開口部121、外周面122を備えている。
【0067】
リング部材120の外径寸法は、外部ハウジング10の先端筒状部11の内側に密接して嵌め込まれる大きさ、すなわち、内周壁11aの内径寸法と同等の外径寸法に形成されている。また、開口部121の内径寸法は、遮熱板40の円板状接触部41を露出させる寸法であればよく、ここでは、サブハウジング20の内周壁22の内径寸法と同等に形成されている。
【0068】
リング部材120は、遮熱板40に軸線S方向の外側から隣接して配置されて、遮熱板40の円板状接触部41をダイヤフラム30に接触させるように押し付けた状態で、外周面122が先端筒状部11の内周壁11aに溶接されて、外部ハウジング10に固定される。
ここで、リング部材120の材料が遮熱板40の材料と同一とされることで、熱的特性が相互間で異なるのを防止して、遮熱板40をダイヤフラム30に安定して接触させて保持することができる。
第3実施形態に係る圧力センサによれば、第1実施形態と同様に、高温圧力媒体からダイヤフラム30を保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0069】
図11は、遮熱板の変形例を示すものである。
この変形例に係る遮熱板140は、前述の遮熱板40と同一の材料により形成され、円板状接触部141、環状離隔部142を備えている。
円板状接触部141は、前述の円板状接触部41と同様に、ダイヤフラム30の伝達部32に対応する中央領域においてダイヤフラム30と接触する、外径が2rをなす円板状に形成されている。
環状離隔部142は、伝達部32に対応する中央領域以外においてダイヤフラム30との間に環状の空隙Vsを画定するべく、すなわち、可撓板状部31と離隔して配置されてダイヤフラム30との間に環状の空隙Vsを画定するように、円板状接触部141に連続して形成されると共に所定の角度で傾斜するように折り曲げられて円錐面の一部を画定する円錐板状をなし、可撓板状部31と最大で間隔L1だけ離隔して配置される。
間隔L1は、大きくなるほど空隙Vsが大きくなり、断熱効果が高まるが、小型化、レイアウト上の制約、要求される断熱効果を考慮して、遮熱板40の板厚の1倍~2倍程度の値に設定される。
尚、間隔L1は、上記の値に限定されるものではなく、他の制約が許容される限りその他の値に設定されてもよい。
【0070】
そして、遮熱板140は、図11に示すように、外部ハウジング10の先端筒状部11の内側に挿入されて、円板状接触部141がダイヤフラム30の中央領域に軸線S方向の外側から接触するように重ね合わされ、先端筒状部11の先端部11bがカシメ処理されて、環状離隔部142の外周面142aが先端筒状部11の内周壁11aと接触した状態で、外周エッジ部142bが外部ハウジング10に保持された状態となる。
すなわち、遮熱板140は、高温圧力媒体(高温燃焼ガス)に曝されるダイヤフラム30を軸線S方向の外側から覆うように配置されて、溶接等により固定されることなく、空隙Vsを密閉しつつ外部ハウジング10に保持される。
【0071】
この変形例に係る遮熱板140を備えた圧力センサによれば、第1実施形態ないし第3実施形態と同様に、高温圧力媒体からダイヤフラム30を保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出することができる。
【0072】
上記実施形態において、遮熱板として、上記の形態をなす遮熱板40,140を示したが、これに限定されるものではなく、ダイヤフラム30の伝達部32に対応する中央領域以外の領域においてダイヤフラム30との間に空隙を画定できる形態であれば、その他の形態をなす遮熱板を採用してもよい。
【0073】
上記実施形態においては、ダイヤフラムとして、可撓板状部31及び伝達部32を一体的に備えたダイヤフラム30を示したが、これに限定されるものではなく、可撓板状部31と伝達部32が別個に形成されて、可撓板状部31がダイヤフラムとして機能し、伝達部32が力伝達部材として機能する構成を採用してもよい。
上記実施形態においては、ハウジングとして、外部ハウジング10と、サブハウジング20を含む構成を示したが、これに限定されるものではなく、一つのハウジングを採用してもよい。
【0074】
上記実施形態においては、ダイヤフラムとして、円柱状の伝達部32を有するダイヤフラム30を示したが、これに限定されるものではなく、圧力計測部材に荷重を伝達するものであれば、円柱状以外の形態をなす伝達部を採用し、当該伝達部に対応する中央領域以外の領域においてダイヤフラムとの間に環状の空隙を画定する遮熱板を採用してもよい。
【0075】
以上述べたように、本発明の圧力センサは、高温圧力媒体からダイヤフラムを保護して熱歪みを抑制でき、熱の影響によるセンサ精度の低下を抑制ないし防止でき、高温圧力媒体の圧力を高精度に検出できるため、特にエンジンの燃焼室内の燃焼ガス等の高温圧力媒体の圧力を検出する圧力センサとして適用できるのは勿論のこと、燃焼ガス以外の高温の圧力媒体あるいはその他の圧力媒体の圧力を検出する圧力センサとしても有用である。
【符号の説明】
【0076】
S 軸線
Vs 空隙
C,C2 隙間
H ハウジング
10 外部ハウジング
11 先端筒状部
11a 内周壁
11b,11c 先端部
20 サブハウジング
22 内周壁
23 端面
30 ダイヤフラム
31 可撓板状部
31a 外周面
31b 外周エッジ部
32 伝達部
32a 外周壁
40 遮熱板
41 円板状接触部
42 環状離隔部
42a 外周面
42b 外周エッジ部
80 圧力計測部材
81 第1電極
82 圧電体
83 第2電極
101 リード線(第1導電体)
102 リード線(第2導電体)
120 リング部材(ハウジング)
140 遮熱板
141 円板状接触部
142 環状離隔部
142b 外周エッジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11