(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020333
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ダクト内面洗浄装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20220125BHJP
B08B 9/032 20060101ALI20220125BHJP
B08B 9/035 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B08B5/00 A
B08B9/032 328
B08B9/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123765
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西山 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA13
3B116AB53
3B116BB22
3B116BB62
3B116BB72
3B116BB77
3B116BB82
3B116CD42
3B116CD43
(57)【要約】
【課題】高濃度PCB油が付着しているダクト内面を低濃度汚染レベルまで低下させることができる簡便な洗浄装置及び方法を提供する。
【解決手段】両端に継目フランジ11a、11bを有するダクト部材11の内面に付着する高濃度PCB油を除去するダクト内面洗浄装置10であって、温風を生成する温風発生器12と、ダクト部材11の一端面からダクト部材11内に挿入され、温風発生器12で生成した温風をダクト部材11の内周面に噴射するエアーノズル14と、ダクト部材11内で発生するPCB含有ガスを吸引するブロワ20と、ダクト部材11の他端面に形成された吸引孔15から吸引されるPCB含有ガスからPCBを除去するフィルタボックス19と、これら各機器を接続する耐熱エアーホース21と、ダクト部材11を加熱する面状電気ヒーター22と、面状電気ヒーター22の外側に配置されてダクト部材11の外周面を覆う保温材23とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に継目フランジを有し、エアー流通路の一部を構成するダクト部材の内面に付着する高濃度PCB油を除去するダクト内面洗浄装置であって、
温風を生成する温風発生器と、
前記ダクト部材の一端面を封止する封止板を貫通して該ダクト部材内に挿入され、前記温風発生器で生成した温風を該ダクト部材の内周面に向けて噴射するエアーノズルと、
前記ダクト部材内で発生するPCB含有ガスを吸引するエアー吸引器と、
前記ダクト部材の他端面を封止する封止板に形成された吸引孔から吸引されるPCB含有ガスからPCBを除去するフィルタボックスと、
前記温風発生器と前記エアーノズル、前記吸引孔と前記フィルタボックス、前記フィルタボックスと前記エアー吸引器を各々接続する耐熱エアーホースと、
前記ダクト部材の外周面に配置され、該ダクト部材を加熱する加熱器と、
前記加熱器の外側に配置されて前記ダクト部材の外周面を覆う保温材とを備えることを特徴とするダクト内面洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載のダクト内面洗浄装置において、前記ダクト部材の外周面を覆う前記保温材の一部が取り外し可能とされていることを特徴とするダクト内面洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のダクト内面洗浄装置において、前記吸引孔から吸引されるPCB含有ガスを冷却する空気を取り込む給気バルブが前記吸引孔と前記フィルタボックスの間の経路上に設置され、前記吸引孔と前記給気バルブ、前記給気バルブと前記フィルタボックスを各々接続する耐熱エアーホースを備えることを特徴とするダクト内面洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のダクト内面洗浄装置において、複数の前記ダクト部材が並列配置され、前記各ダクト部材内に挿入された前記エアーノズルと前記温風発生器が入側エアーヘッダーを介して前記耐熱エアーホースで接続され、前記各ダクト部材に設けられた前記吸引孔と前記フィルタボックスが出側エアーヘッダーを介して前記耐熱エアーホースで接続されていることを特徴とするダクト内面洗浄装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダクト内面洗浄装置を用いて、高濃度PCB油が付着している、前記ダクト部材の内面を洗浄する方法であって、
前記ダクト部材の両端面を前記封止板で封止する第1工程と、
前記ダクト部材の外周面に加熱器を配置した後、該ダクト部材の外周面を保温材で覆う第2工程と、
前記ダクト部材の一端面から該ダクト部材内にエアーノズルを挿入すると共に、一端がフィルタボックスもしくは出側エアーヘッダーに接続された耐熱エアーホースの他端を、該ダクト部材の他端面を封止する封止板に形成された吸引孔に接続する第3工程と、
前記加熱器で前記ダクト部材を加熱しながら、予め設定した吹込み時間が経過するまで、温風発生器で生成した温風を前記エアーノズルから前記ダクト部材の内周面に向けて噴射し、前記吸引孔から吸引されるPCB含有ガスからPCBを前記フィルタボックスにより除去する第4工程と、
前記吹込み時間経過後、前記ダクト部材の最下流位置において該ダクト部材内面のPCB濃度を測定する第5工程と、
前記PCB濃度測定結果が低濃度汚染レベルの場合、前記ダクト部材の洗浄完了とし、前記PCB濃度測定結果が低濃度汚染レベルを超えている場合、再度、前記ダクト部材に対して第4及び第5工程を実施して前記PCB濃度測定結果の評価を行う第6工程とを備えることを特徴とするダクト内面洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度PCB油が付着しているダクト内面を洗浄するダクト内面洗浄装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有する油(以下、「PCB油」と呼ぶ。)が表面に付着しているPCB汚染物は、付着しているPCB油の濃度が低濃度汚染レベル(0.1μg/100cm2超~1000μg/100cm2以下)であれば、低濃度無害化処理施設において無害化処理することができる。しかし、PCB油の濃度が1000μg/100cm2を超える場合(以下、「高濃度PCB油」と呼ぶ。)、低濃度無害化処理施設でPCB汚染物を無害化処理するためにはPCB濃度を低濃度汚染レベルまで低下させる必要がある。
【0003】
PCB汚染物の表面に付着しているPCB油を除去する方法として、特許文献1には、蒸気発生部から供給された蒸気を本体部からPCB汚染物に噴射し、PCB汚染物の表面に付着しているPCB油の温度が基準温度以上になった際、本体部に取り付けられたハンドル部を保持して本体部を移動させ、本体部に設置されたブラシによりPCB汚染物からPCB油を除去する洗浄装置が開示されている。
【0004】
一方、特許文献2には、内部がダイオキシン類で汚染されている汚染装置内に、高温の加熱用ガスを1箇所以上から吹き込むことにより、汚染装置内部に付着したダイオキシン類を熱分解する技術が開示されている。汚染装置から排出された加熱用ガスは、冷却塔及びバグフィルタを経た後、加熱用ガスに含まれる残存ダイオキシン類が活性炭吸着塔によって吸着除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-77538号公報
【特許文献2】特開2003-102864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている洗浄装置は、PCB汚染物の外表面に付着しているPCB油を除去することができる。しかしながら、PCB油に汚染されたダクト内面など長尺物の四方が囲まれた内部を洗浄することは困難である。
特許文献2記載の技術は、廃棄物焼却設備のダイオキシン汚染装置を無害化(ダイオキシン類を加熱分解)する方法である。因って、500℃~700℃の加熱用ガスを汚染装置の内部に吹き込むことに加えて、汚染装置から排出される加熱用ガスを250℃以下に冷却する冷却塔や、粉塵除去用のバグフィルタ及び、完全に熱分解されず残存するダイオキシン類を吸着除去する活性炭吸着塔などが必要となる。このように、特許文献2記載の技術はダイオキシン汚染装置を無害化(ダイオキシン類を加熱分解)する方法であり、また、その方法では大がかりな設備が必要となる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、高濃度PCB油が付着しているダクト内面を低濃度汚染レベルまで低下させることができる簡便な洗浄装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明は、両端に継目フランジを有し、エアー流通路の一部を構成するダクト部材の内面に付着する高濃度PCB油を除去するダクト内面洗浄装置であって、
温風を生成する温風発生器と、
前記ダクト部材の一端面を封止する封止板を貫通して該ダクト部材内に挿入され、前記温風発生器で生成した温風を該ダクト部材の内周面に向けて噴射するエアーノズルと、
前記ダクト部材内で発生するPCB含有ガスを吸引するエアー吸引器と、
前記ダクト部材の他端面を封止する封止板に形成された吸引孔から吸引されるPCB含有ガスからPCBを除去するフィルタボックスと、
前記温風発生器と前記エアーノズル、前記吸引孔と前記フィルタボックス、前記フィルタボックスと前記エアー吸引器を各々接続する耐熱エアーホースと、
前記ダクト部材の外周面に配置され、該ダクト部材を加熱する加熱器と、
前記加熱器の外側に配置されて前記ダクト部材の外周面を覆う保温材とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明に係るダクト内面洗浄装置を用いて、高濃度PCB油が付着している、前記ダクト部材の内面を洗浄する方法であって、
前記ダクト部材の両端面を前記封止板で封止する第1工程と、
前記ダクト部材の外周面に加熱器を配置した後、該ダクト部材の外周面を保温材で覆う第2工程と、
前記ダクト部材の一端面から該ダクト部材内にエアーノズルを挿入すると共に、一端がフィルタボックスもしくは出側エアーヘッダーに接続された耐熱エアーホースの他端を、該ダクト部材の他端面を封止する封止板に形成された吸引孔に接続する第3工程と、
前記加熱器で前記ダクト部材を加熱しながら、予め設定した吹込み時間が経過するまで、温風発生器で生成した温風を前記エアーノズルから前記ダクト部材の内周面に向けて噴射し、前記吸引孔から吸引されるPCB含有ガスからPCBを前記フィルタボックスにより除去する第4工程と、
前記吹込み時間経過後、前記ダクト部材の最下流位置において該ダクト部材内面のPCB濃度を測定する第5工程と、
前記PCB濃度測定結果が低濃度汚染レベルの場合、前記ダクト部材の洗浄完了とし、前記PCB濃度測定結果が低濃度汚染レベルを超えている場合、再度、前記ダクト部材に対して第4及び第5工程を実施して前記PCB濃度測定結果の評価を行う第6工程とを備えることを特徴としている。
なお、第1工程から第6工程の順に実施してもよいが、第1工程と第2工程は順序を逆にしてもよい。また、第6工程の後は、その結果に応じて第4工程及び第5工程を繰り返し実施してもよい。
【0010】
本発明では、高濃度PCB油が付着しているダクト内面を簡便な装置及び方法により洗浄するため、複数のダクト部材が連結して構成されるダクトを、ダクト部材ごとにその内面を洗浄する。ダクト部材の外周面を加熱器で加熱し且つ保温材で保温しているので、ダクト部材全長に亘って温度差を殆ど発生させず、ダクト部材の内面をほぼ均一に加熱することができる。その際、ダクト部材内に挿入したエアーノズルからダクト部材の内周面に温風を吹付け、ダクト部材の吸引孔から吸引することで、継続的にダクト部材の内面に付着している高濃度PCB油を蒸発させることができる。
【0011】
また、第1の発明に係るダクト内面洗浄装置では、前記ダクト部材の外周面を覆う前記保温材の一部が取り外し可能とされていることを好適とする。
PCBはダイオキシンの前駆体(ベンゼン環、塩素)を多く含んでおり、冷却過程でダイオキシンが再合成される懸念がある。従って、ダイオキシンが再合成しない200℃付近にダクト部材の内面温度を維持しておく必要があり、洗浄時におけるダクト部材の温度を定期的に測定するために、保温材の一部が取り外し可能とされていることが望ましい。
【0012】
また、第1の発明に係るダクト内面洗浄装置では、前記吸引孔から吸引されるPCB含有ガスを冷却する空気を取り込む給気バルブを前記吸引孔と前記フィルタボックスの間の経路上に設置し、前記吸引孔と前記給気バルブ、前記給気バルブと前記フィルタボックスを各々接続する耐熱エアーホースを備えるようにしてもよい。
フィルタボックスには、PCB含有ガスを吸着する吸着材(活性炭)が内蔵されているので、吸着材(活性炭)に過剰な負荷が掛からないように、PCB含有ガスの温度を低下させておくことが望ましい。
【0013】
また、第1の発明に係るダクト内面洗浄装置では、複数の前記ダクト部材が並列配置され、前記各ダクト部材内に挿入された前記エアーノズルと前記温風発生器が入側エアーヘッダーを介して前記耐熱エアーホースで接続され、前記各ダクト部材に設けられた前記吸引孔と前記フィルタボックスが出側エアーヘッダーを介して前記耐熱エアーホースで接続されていてもよい。これにより、複数のダクト部材の内面洗浄を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、複数のダクト部材が連結して構成され、内面に高濃度PCB油が付着しているダクトに対して、ダクト部材ごとにその内面を洗浄するので、高濃度PCB油が付着しているダクト内面を簡便な洗浄装置及び方法により洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るダクト内面洗浄装置の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0017】
施設に設置されている給気ダクト及び排気ダクトはエアー流通路を構成するダクト部材を複数連結したものである。本発明では、高濃度PCB油が内面に付着しているダクトを、継目フランジの箇所で切り離して複数のダクト部材に分解し、各ダクト部材の内面をダクト内面洗浄装置により洗浄する。ダクト部材のサイズは様々であり、直径300mm以上の円形断面や400mm×500mmの矩形断面、一辺1000mmの方形断面などがある。一般的なダクト部材の長さは2.5m程度である。
【0018】
本発明の一実施の形態に係るダクト内面洗浄装置10を
図1及び
図2に示す。
ダクト内面洗浄装置10は、外気を取り込んで加熱することにより温風を生成する温風発生器12と、温風発生器12で生成した温風をダクト部材11の内周面に向けて噴射するエアーノズル14と、ダクト部材11内面に付着している高濃度PCB油の蒸発によって発生するPCB含有ガスを吸引するブロワ20(エアー吸引器の一例)と、ダクト部材11から吸引されるPCB含有ガスからPCBを除去するフィルタボックス19とを備え、これら各機器が可撓性を有する耐熱エアーホース21で接続されている。
【0019】
ダクト内面洗浄装置10でダクト部材11の内面を洗浄するに当たって、ダクト部材11の外周面に、ダクト部材11を加熱する面状電気ヒーター22(加熱器の一例)を配置し、ダクト部材11の一端面を封止板24で封止し、ダクト部材11の他端面を封止板25で封止する。封止板24、25の周縁部はダクト部材11の両端に形成された継目フランジ11a、11bにそれぞれ固定する。面状電気ヒーター22及び封止板24、25の外側には保温材23を配置し、ダクト部材11全体を保温材23によって被覆する。なお、ダクト部材11の温度を測定するため、一部の保温材23aを取り外し可能とする。
【0020】
本実施の形態では、3本のダクト部材11を水平面上に並列配置する。各ダクト部材11の封止板24を貫通してダクト部材11内に挿入されたエアーノズル14と温風発生器12は入側エアーヘッダー13を介して耐熱エアーホース21で接続され、各ダクト部材11の封止板25に設けられた吸引孔15とフィルタボックス19は出側エアーヘッダー17を介して耐熱エアーホース21で接続されている。
温風発生器12と入側エアーヘッダー13を繋ぐ耐熱エアーホース21、入側エアーヘッダー13、及び、入側エアーヘッダー13とエアーノズル14を繋ぐ耐熱エアーホース21は保温材23で被覆されている。
【0021】
面状電気ヒーター22にはシリコンラバーヒーターなどを使用することができる。また、保温材23にはグラスウールなどを使用することができる。
【0022】
各ダクト部材11の吸引孔15と出側エアーヘッダー17の間の経路上には、耐熱エアーホース21を介して吸引孔15から吸引されるPCB含有ガスの風量を調節する風量調整ダンパ16が設置され、出側エアーヘッダー17とフィルタボックス19の間の経路上には、耐熱エアーホース21を介して吸引孔15から吸引されるPCB含有ガスを冷却する空気を取り込む給気バルブ18が設置されている。
【0023】
本実施の形態におけるエアーノズル14は棒状とされ、複数の噴射孔が材軸方向に形成されている。エアーノズル14の本数は
図3に示すように4本とされ、ダクト部材11の内面を構成する天面、底面、左右側面にそれぞれ対峙するように配置されている。各エアーノズル14は対峙する面に向けて温風を噴射する。これにより、ダクト部材11の全内周面に温風が供給される。
【0024】
ダクト部材11の外周面を面状電気ヒーター22で加熱し且つ保温材23で保温しているので、ダクト部材11全長に亘って温度差を殆ど発生させず、ダクト部材11の内面をほぼ均一に加熱することができる。その際、ダクト部材11内に挿入したエアーノズル14からダクト部材11の内周面に温風を吹付け、ダクト部材11の吸引孔15から吸引することで、継続的にダクト部材11の内面に付着している高濃度PCB油を蒸発させることができる。
【0025】
吸引孔15から吸引された吸引ガスは給気バルブ18を介して取り込まれた外気と混合して冷却された後、フィルタボックス19に流入する。吸引ガスに含まれているPCBはフィルタボックス19に内蔵されている活性炭に吸着して除去される。フィルタボックス19によって浄化された吸引ガスはブロワ20により大気中に放出される。
なお、エアーノズル14から噴射される温風は、吸引孔15から吸引されるので、エアーノズル14をダクト部材11の全長に渡って挿入する必要はなく、例えば、ダクト部材11の一端側からダクト部材11の全長の一部分迄への挿入でよい。
【0026】
次に、ダクト内面洗浄装置10を用いて、高濃度PCB油が付着しているダクト部材11の内面を洗浄する方法について説明する。
[ステップ0](分解工程)
高濃度PCB油が内面に付着しているダクトを、継目フランジ11a、11bの箇所で切り離して複数のダクト部材11に分解する。
【0027】
[ステップ1](第1工程/封止工程)
エアーノズル14の貫通孔が中央部に形成された封止板24の周縁部をダクト部材11の継目フランジ11aに固定して一方のダクト部材端面を封止すると共に、PCB含有ガスを吸引する吸引孔15が中央部に形成された封止板25の周縁部をダクト部材11の継目フランジ11bに固定して他方のダクト部材端面を封止する。
【0028】
[ステップ2](第2工程/被覆工程)
ダクト部材11の外周面に面状電気ヒーター22を取り付けた後、ダクト部材11の外周面を保温材23で覆う。ダクト部材11の外周面に面状電気ヒーター22を取り付ける際は、ダクト部材11の外周面に接するヒーター面に耐熱性のシリコン系両面テープを貼着してダクト部材11の外周面に貼り付ける。また、アルミテープを用いて面状電気ヒーター22の周縁部をダクト部材11の外周面に固定する。
【0029】
[ステップ3](第3工程/接続工程)
封止板24に形成されている貫通孔からダクト部材11内にエアーノズル14を挿入すると共に、一端が出側エアーヘッダー17に接続された耐熱エアーホース21の他端を、封止板25に形成された吸引孔15に接続する。
【0030】
[ステップ4](第4工程/PCB除去工程)
面状電気ヒーター22でダクト部材11を加熱しながら、予め設定した吹込み時間が経過するまで、温風発生器12で生成した温風をエアーノズル14からダクト部材11の内周面に向けて噴射し、吸引孔15から吸引されるPCB含有ガスからPCBをフィルタボックス19により除去し、浄化された吸引ガスを大気中に放出する。その際、ダイオキシンが再合成しない200℃付近にダクト部材11の内面温度を維持する必要がある。そのため、ダクト部材11から保温材23aを定期的に取り外して非接触式放射温度計26でダクト部材11の温度を測定する。
【0031】
温風温度は100℃以上200℃以下、吹込み時間は20分以上30分以下、面状電気ヒーター22の温度は180℃以上200℃以下とする。温風の吹込量は、ダクト部材内面のPCB汚染度、ダクト部材11の内表面の面積に応じて適宜設定する。
また、給気バルブ18を調節して、フィルタボックス19に流入するPCB含有ガスの温度が40℃~50℃程度となるようにする。
【0032】
[ステップ5](第5工程/PCB濃度測定工程)
吹込み時間経過後、ダクト部材11の最下流位置においてダクト部材11の内面のPCB濃度を測定する。
【0033】
[ステップ6](第6工程/PCB濃度評価工程)
PCB濃度の測定結果が低濃度汚染レベル(0.1μg/100cm2超~1000μg/100cm2以下)の場合、ダクト部材11の洗浄完了とし、PCB濃度の測定結果が低濃度汚染レベルを超えている場合、再度、ダクト部材11に対してステップ4及びステップ5を実施してPCB濃度測定結果の評価を行う。
【0034】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、3本のダクト部材を並列配置しているが、これに限るものではなく、2本以下又は4本以上としてもよい。また、上記実施の形態では、ダクト部材に挿入するエアーノズルの本数を4本としているが、これに限るものではなく、3本以下又は5本以上としてもよい。例えば、エアーノズルの本数を1本とし、エアーノズルの軸回りに回転させながら温風を噴射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10:ダクト内面洗浄装置、11:ダクト部材、11a、11b:継目フランジ、12:温風発生器、13:入側エアーヘッダー、14:エアーノズル、15:吸引孔、16:風量調整ダンパ、17:出側エアーヘッダー、18:給気バルブ、19:フィルタボックス、20:ブロワ(エアー吸引器)、21:耐熱エアーホース、22:面状電気ヒーター(加熱器の一例)、23、23a:保温材、24、25:封止板、26:非接触式放射温度計