(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020435
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】偏光回転角抽出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220125BHJP
G01N 21/00 20060101ALI20220125BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01L21/66 N
G01N21/00 B
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123920
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】502093771
【氏名又は名称】セラミックフォーラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100199808
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 昌代
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】230116643
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】服部 亮
【テーマコード(参考)】
2G059
4M106
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB08
2G059BB16
2G059EE01
2G059EE05
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH02
2G059HH06
2G059JJ19
2G059KK04
2G059MM01
4M106AA01
4M106BA04
4M106CB19
4M106DH12
4M106DH31
(57)【要約】
【課題】本発明は、半導体ウェハの結晶性を定量的に評価できる偏光回転角抽出方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の偏光回転角抽出方法は、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を垂直とした場合に撮像部で計測される強度分布I
v
W(x,y)を計測する第1計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を平行とした場合に撮像部で計測される強度分布I
p
W(x,y)を計測する第2計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を垂直とし、かつ半導体ウェハを取り除いた場合に撮像部で計測される強度分布I
v
B(x,y)を計測する第3計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を平行とし、かつ半導体ウェハを取り除いた場合に撮像部で計測される強度分布I
p
B(x,y)を計測する第4計測工程と、第1計測工程から第4計測工程で計測された強度分布から下記式1により偏光回転角θ(x,y)を算出する算出工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの結晶欠陥を検出する結晶欠陥検出装置を用いて上記半導体ウェハの偏光回転角を抽出する方法であって、
上記結晶欠陥検出装置が、
上記半導体ウェハへの照射光を出射する光源と、
上記光源及び上記半導体ウェハの間に配置され、上記照射光を直線偏光に変換する第1偏光子と、
上記半導体ウェハを透過した透過光を直線偏光に偏光する第2偏光子と、
上記第2偏光子を通過した透過光の強度分布を計測する撮像部と
を備えており、
第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに垂直とした場合に上記撮像部で計測される強度分布I
v
W(x,y)を計測する第1計測工程と、
第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに平行とした場合に上記撮像部で計測される強度分布I
p
W(x,y)を計測する第2計測工程と、
第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに垂直とし、かつ上記半導体ウェハを取り除いた場合に上記撮像部で計測される強度分布I
v
B(x,y)を計測する第3計測工程と、
第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに平行とし、かつ上記半導体ウェハを取り除いた場合に上記撮像部で計測される強度分布I
p
B(x,y)を計測する第4計測工程と、
上記第1計測工程、上記第2計測工程、上記第3計測工程及び上記第4計測工程で計測された強度分布から下記式1により偏光回転角θ(x,y)を算出する算出工程と
を備える偏光回転角抽出方法。
【数1】
【請求項2】
上記光源から出射される照射光がライン状であり、
上記照射光がそのラインと垂直方向に上記半導体ウェハの表面をスキャンする請求項1に記載の偏光回転角抽出方法。
【請求項3】
上記半導体ウェハを上記垂直方向に移動させることで上記照射光のスキャンを行う請求項2に記載の偏光回転角抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光回転角抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスが様々な分野で用いられている。この半導体デバイスは半導体ウェハ上に絶縁膜や電極等を積層することで形成される。
【0003】
半導体デバイスの性能は、主として半導体ウェハ自体の持つ特性により決まる。この半導体ウェハに結晶欠陥があると、この結晶欠陥により、例えば半導体中の電子や正孔の移動が阻害され、半導体ウェハが本来持つ特性を発揮できなくなる。このため、半導体ウェハの結晶欠陥を含む領域に形成された半導体デバイスは、所望の特性を得られないおそれがある。従って、半導体デバイスの製造にあたっては、まず基板となる半導体ウェハの結晶欠陥の有無が検査される。
【0004】
半導体ウェハの結晶欠陥を検出する装置としては、直交偏光を用いたものが公知である(例えば特開2018-198293号公報参照)。この従来の結晶欠陥検出装置では、第1の偏光子で直線偏光とした照射光を半導体ウェハに照射し、その反射光を第2の偏光子を通過させて撮像した画像を観察する。上記第1の偏光子及び第2の偏光子は、その偏光方向が直交する、いわゆるクロスニコルに配置される。
【0005】
上記従来の結晶欠陥検出装置では、半導体ウェハの欠陥がない位置で反射した反射光は、偏光方向が第2の偏光子と直交するため、第2の偏光子を通過する成分がなく、観察される画像は暗いものとなる。一方、半導体ウェハの欠陥がある位置で反射した反射光は、偏光方向が変化し、第2の偏光子を通過する成分を含むようになる。このため、撮像した画像上に明るい部分が生じる。従って、第2の偏光子を通過した反射光を撮像した画像を観察することでその明部に欠陥があると分かるので、結晶欠陥を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、結晶欠陥は、撮像した画像の観察、つまり目視により判断され、散点状に観察される明部の数や明るさにより、いわゆる半導体ウェハの結晶性が評価される。このため、半導体ウェハの結晶性評価は定性的なものであり、定量性に欠けている。
【0008】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、半導体ウェハの結晶性を定量的に評価できる偏光回転角抽出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、第1偏光子で直線偏光とした照射光を半導体ウェハに照射し、その透過光を、第1偏光子とは偏光方向が直交する第2偏光子を通過させた透過光の強度分布に加え、さらに3種類の条件での強度分布を測定するのみで、半導体ウェハの各場所における偏光回転角が算出可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の一実施形態に係る偏光回転角抽出方法は、半導体ウェハの結晶欠陥を検出する結晶欠陥検出装置を用いて上記半導体ウェハの偏光回転角を抽出する方法であって、上記結晶欠陥検出装置が、上記半導体ウェハへの照射光を出射する光源と、上記光源及び上記半導体ウェハの間に配置され、上記照射光を直線偏光に変換する第1偏光子と、上記半導体ウェハを透過した透過光を直線偏光に偏光する第2偏光子と、上記第2偏光子を通過した透過光の強度分布を計測する撮像部とを備えており、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに垂直とした場合に上記撮像部で計測される強度分布I
v
W(x,y)を計測する第1計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに平行とした場合に上記撮像部で計測される強度分布I
p
W(x,y)を計測する第2計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに垂直とし、かつ上記半導体ウェハを取り除いた場合に上記撮像部で計測される強度分布I
v
B(x,y)を計測する第3計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに平行とし、かつ上記半導体ウェハを取り除いた場合に上記撮像部で計測される強度分布I
p
B(x,y)を計測する第4計測工程と、上記第1計測工程、上記第2計測工程、上記第3計測工程及び上記第4計測工程で計測された強度分布から下記式1により偏光回転角θ(x,y)を算出する算出工程とを備える。
【数1】
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光回転角抽出方法は、半導体ウェハの結晶性を定量的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る偏光回転角抽出方法を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、
図1の偏光回転角抽出方法で用いる結晶欠陥検出装置の光学系を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例で用いた結晶欠陥検出装置の光学系を示す模式的斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例における回転角ψと、本発明の偏光回転角抽出方法により抽出された偏光回転角θ(x,y)との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る偏光回転角抽出方法は、半導体ウェハの結晶欠陥を検出する結晶欠陥検出装置を用いて上記半導体ウェハの偏光回転角を抽出する方法であって、上記結晶欠陥検出装置が、上記半導体ウェハへの照射光を出射する光源と、上記光源及び上記半導体ウェハの間に配置され、上記照射光を直線偏光に変換する第1偏光子と、上記半導体ウェハを透過した透過光を直線偏光に偏光する第2偏光子と、上記第2偏光子を通過した透過光の強度分布を計測する撮像部とを備えており、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに垂直とした場合に上記撮像部で計測される強度分布I
v
W(x,y)を計測する第1計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに平行とした場合に上記撮像部で計測される強度分布I
p
W(x,y)を計測する第2計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに垂直とし、かつ上記半導体ウェハを取り除いた場合に上記撮像部で計測される強度分布I
v
B(x,y)を計測する第3計測工程と、第1偏光子及び第2偏光子の偏光方向を互いに平行とし、かつ上記半導体ウェハを取り除いた場合に上記撮像部で計測される強度分布I
p
B(x,y)を計測する第4計測工程と、上記第1計測工程、上記第2計測工程、上記第3計測工程及び上記第4計測工程で計測された強度分布から下記式1により偏光回転角θ(x,y)を算出する算出工程とを備える。
【数2】
【0015】
当該偏光回転角抽出方法によれば、第1偏光子と第2偏光子との偏光方向を直交させた場合の半導体ウェハの透過光の強度分布Iv
W(x,y)に加え、第1偏光子と第2偏光子との偏光方向を平行とした場合の透過光の強度分布Ip
W(x,y)、半導体ウェハを除いた状態でのそれぞれの透過光の強度分布Iv
B(x,y)及びIp
B(x,y)を測定するのみで、上記式1により各位置における偏光回転角θ(x,y)を算出できる。この偏光回転角は、結晶欠陥が存在すると非0となるため、偏光回転角θ(x,y)の大小により結晶欠陥を定量的に評価することが可能となる。
【0016】
上記光源から出射される照射光がライン状であり、上記照射光がそのラインと垂直方向に上記半導体ウェハの表面をスキャンするとよい。このようにライン状の照射光を、半導体ウェハの表面をスキャンさせて強度分布を取得することにより、半導体ウェハ全体で偏光回転角を精度良く抽出することができる。
【0017】
上記半導体ウェハを上記垂直方向に移動させることで上記照射光のスキャンを行うとよい。このように半導体ウェハを移動させることで、光源と撮像部とを同期して移動させる必要がなくなるため、装置構成を簡単化できる。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る偏光回転角抽出方法について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1に示す偏光回転角抽出方法は、第1計測工程S1と、第2計測工程S2と、第3計測工程S3と、第4計測工程S4と、算出工程S5とを備える。当該偏光回転角抽出方法は、
図2に示す光学系を有する半導体ウェハWの結晶欠陥を検出する結晶欠陥検出装置を用いて半導体ウェハWの偏光回転角を抽出する方法である。
【0020】
<結晶欠陥検出装置>
上記結晶欠陥検出装置は、半導体ウェハWへの照射光L1を出射する光源1と、光源1及び半導体ウェハWの間に配置され、照射光L1を直線偏光に変換する第1偏光子2と、半導体ウェハWを透過した透過光L2を直線偏光に偏光する第2偏光子3と、第2偏光子3を通過した透過光L2の強度分布を計測する撮像部4とを備える。
【0021】
(半導体ウェハ)
測定対象となる半導体ウェハWは特に限定されないが、当該偏光回転角抽出方法は、六方晶系の半導体ウェハ、特にそのC面の検査に好適に用いることができる。また、半導体ウェハWは、複屈折性を有し、可視光に対して透明であるものが好ましい。このような半導体ウェハWとしては、六方晶系のもの、例えばSiC(4H-SiC、6H-SiC、8H-SiC)、GaN、AlN等を挙げることができる。
【0022】
特にSiC、GaN、AlNのように開発途上にある半導体ウェハにおいては、Si単結晶基板のように極めて単結晶性の高い半導体ウェハとは異なり、結晶欠陥が様々な結晶方位異方性を有する。当該偏光回転角抽出方法は、様々な結晶方位異方性を有する結晶欠陥に対して定量的な評価が可能であるので、このような開発途上にある半導体ウェハに対して特に有効である。
【0023】
半導体ウェハWの直径としては、必ずしも限定されるものではないが、半導体ウェハWの直径の下限としては、0.5インチが好ましく、1インチがより好ましい。一方、半導体ウェハWの直径の上限としては、8インチが好ましく、6インチがより好ましい。半導体ウェハWの直径が上記下限未満であると、1枚の半導体ウェハWに対して検査コストが高くなり過ぎるおそれがある。逆に、半導体ウェハWの直径が上記上限を超えると、上記結晶欠陥検出装置が大型化するため、上記結晶欠陥検出装置の製造コストが高くなり過ぎるおそれがある。
【0024】
半導体ウェハWの平均膜厚としては、必ずしも限定されるものではないが、半導体ウェハWの平均膜厚の下限としては、200μmが好ましく、350μmがより好ましい。一方、半導体ウェハWの平均膜厚の上限としては、700μmが好ましく、500μmがより好ましい。半導体ウェハWの平均膜厚が上記下限未満であると、半導体ウェハWの取扱いが困難となるおそれがある。一方、半導体ウェハWの平均膜厚が上記上限を超えると、半導体ウェハWへの照射光L1に対する透過光L2の減衰が大きくなり易く、上記結晶欠陥検出装置の測定感度が低下するおそれがある。なお、半導体ウェハWの平均膜厚の上限は、測定対象とする半導体ウェハWの透明度にも依存し、半導体ウェハWが透明度の高いものであれば膜厚が上述の上限よりも大きいものであっても、高い精度で測定することが可能である。ここで、「平均膜厚」とは、任意の10点で測定した膜厚の平均値を指す。
【0025】
(光源)
光源1は、半導体ウェハWへの照射光L1を出射する。なお、照射光L1は、この光源1から出射される段階では、時間平均や空間平均として特定の偏光状態とはなっていない自然光である。また、光源1には比較的指向性の低い、例えば指向角2θ1/2が30°以上の指向特性を有する光源を用いることが好ましい。例えばレーザ光のように指向性の高い光源を用いると、可干渉性が高くなり過ぎ、結晶欠陥以外の要因でも明るさの違い(干渉縞)が発生し易くなる。このため、結晶欠陥を精度良く検出できないおそれがある。
【0026】
光源1としては、LED、ハロゲンランプ等公知の光源を用いることができる。光源1として点光源を用いることもできるが、光源1から出射される照射光L1がライン状であるライン光源であるとよく、特にLEDライン光源であることが好ましい。半導体ウェハWは通常円形であるため、点光源を用いると、2次元平面の広い範囲をスキャンする必要が生じる。これに対し、ライン光源を用いることで、一方向のみスキャンすれば半導体ウェハW全体を観察できるので、効率的に結晶欠陥の検出を行うことができる。光源1がライン光源である場合、そのライン長は、
図2に示すように半導体ウェハWの直径以上とされる。以降、本実施形態では光源1がライン光源である場合を例にとり説明するが、光源1が点光源である場合についてもスキャンが2次元となる点を除き同様である。
【0027】
光源1から出射される照射光L1が波長400nm以上800nm以下の範囲の光を含むとよい。つまり、光源1から出射される照射光L1が白色光であるとよい。半導体ウェハWの種類、不純物に関連した準位や欠陥等に起因して、光学吸収や発光は可視光領域であっても様々な波長で観察される。このため、種々の種類の結晶欠陥を観察する場合にあっては、照射光L1が波長400nm以上800nm以下の範囲に分布する光を含むようにすると、より確実に結晶欠陥を検出することができる。
【0028】
一方、光源1から出射される照射光L1を単一波長の光とすることもできる。半導体ウェハWを通過した透過光L2が受ける偏光状態には波長依存性がある。このため波長が帯状に分布した光を用いると、透過光L2の偏光状態の波長依存性により結晶欠陥を撮像部4で鮮明に撮像できなくなるおそれがある。これに対し、単一波長の光を用いることで透過光L2の偏光状態の波長依存性の影響を排除できるので、結晶欠陥を撮像部4で鮮明に撮像し易くなる。光源1から出射される照射光L1を単一波長の光とする場合、光源1自体を単一波長のみを出射する光源としてもよいが、光源1と第1偏光子2との間に例えば特定の波長のみを透過するフィルタを配置してもよい。
【0029】
照射光L1を単一波長の光とする場合、直線偏光子の偏光方向に対し直交する偏光方向の光に対する消光比に優れる500nm(緑)の光を用いるとよい。ただし、波長500nmの光が半導体ウェハWに吸収され易い場合は、半導体ウェハWの通過により光の強度が減衰してしまうため、他の減衰しない波長の照射光L1を用いる必要がある。ここで、「消光比」とは、直線偏光子の偏光方向に対し直交する偏光方向の光がこの直線偏光子を通過した際の入射光の強度に対する透過光L2の強度の比を表す。
【0030】
光源1は、半導体ウェハW全体をスキャンできるように構成される。具体的には、照射光L1がそのラインと垂直方向に半導体ウェハWの表面をスキャンするとよい。このようにライン状の照射光L1を、半導体ウェハWの表面をスキャンさせて強度分布を取得することにより、半導体ウェハW全体で偏光回転角を精度良く抽出することができる。
【0031】
例えば
図2の場合では、図面で半導体ウェハWの上下方向に照射光L1が照射されているので、左右方向に光源1をスキャンすることで照射光L1が半導体ウェハWの全面に照射されるようにする。半導体ウェハWを固定し、光源1自体をスキャンさせることもできるが、その場合撮像部4等も連動してスキャンする必要が生じるため、半導体ウェハWを上記垂直方向に移動させることで照射光L1のスキャンを行うとよい。このように半導体ウェハWを移動させることで、光源1と撮像部4とを同期して移動させる必要がなくなるため、装置構成を簡単化できる。半導体ウェハWをスキャンする構成としては、特に限定されないが、例えば半導体ウェハWを支持するホルダー(不図示)を、モーター等を用いて左右方向にスキャンする構成とすることができる。
【0032】
(第1偏光子)
第1偏光子2は、照射光L1を自然光から直線偏光に変換する。つまり、第1偏光子2を通過した照射光L1は、光の進行方向に直交する1つの平面(偏光面)上でのみ振動する横波となる。
【0033】
第1偏光子2としては、公知のフィルム偏光子やプリズム偏光子等を用いることができる。
【0034】
第1偏光子2の偏光方向は、半導体ウェハWの結晶のオフ角方位と複屈折効果の現れ方に応じて、結晶欠陥が観測され易くなる方向に適宜決定される。例えば4H-SiC、6H-SiC等のSiCであれば、半導体ウェハWのOF(Orientation Flat)方向である(11-20)方向に対して垂直な(1-100)方向とされる。
【0035】
(第2偏光子)
第2偏光子3は、半導体ウェハWを透過した透過光L2を直線偏光に変換する。この第2偏光子3は、半導体ウェハWを透過した透過光L2を直接受光する。
【0036】
第2偏光子3としては、第1偏光子2と同様のものを用いることができる。
【0037】
半導体ウェハWの結晶欠陥を観察する場合において、第2偏光子3の偏光方向は、第1偏光子2の偏光方向と直交するように配置される。例えば4H-SiC、6H-SiC等のSiCであれば、第1偏光子2の偏光方向は(1-100)方向とされているので、第2偏光子3の偏光方向は、これに直交する(11-20)方向とされる。
【0038】
第2偏光子3と第1偏光子2との距離の下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましい。一方、第2偏光子3と第1偏光子2との距離の上限としては、10mmが好ましく、7mmがより好ましい。第2偏光子3と第1偏光子2との距離が上記下限未満であると、測定対象である半導体ウェハWを配置し難くなるおそれや光源光の平行光束性の限界による光の散逸が生じるおそれがある。逆に、第2偏光子3と第1偏光子2との距離が上記上限を超えると、上記結晶欠陥検出装置が不要に大型化するおそれや撮像部4で焦点を合わせることが困難となるおそれがある。ここで、「第2偏光子3と第1偏光子2との距離」とは、第2偏光子3の入射面と第1偏光子2の出射面との間の距離を指す。
【0039】
(撮像部)
撮像部4は、第2偏光子3を通過した透過光L2を受光し、その強度を出力する。
【0040】
撮像部4は、透過光L2を同時に受光でき、かつその強度を計測し出力できるものであれば特に限定されず、公知のデジタルカメラ等を用いることができる。
【0041】
撮影部4としては、撮影部4へ入射する照射光量と計測される強度とが線形の相関を有することが好ましい。このように照射光量と強度とが線形の相関を有することで、当該偏光回転角抽出方法の測定精度が高まる。
【0042】
一方、撮影部4がガンマ補正等の補正機能を有し、照射光量と強度とが線形の相関を有していない場合は、第1計測工程S1から第4計測工程S4の前に、線形化工程を備えるとよい。上記線形化工程では、撮影部4が有する補正機能に対応する逆変換により照射光量と強度との関係が線形となるように撮像部で計測される各強度分布を変換する。このように上述の線形化工程を備えることで、補正機能を有する撮影部4を用いた場合であっても、測定精度を高めることができる。
【0043】
以下、当該偏光回転角抽出方法の各工程について説明する。なお、当該偏光回転角抽出方法は、例えば撮像部4の透過光L2の強度を取り込めるパーソナルコンピュータ等を用いて行うことができる。
【0044】
<第1計測工程>
第1計測工程S1では、第1偏光子2及び第2偏光子3の偏光方向を互いに垂直とした場合に撮像部4で計測される強度分布Iv
W(x,y)を計測する。
【0045】
第1計測工程S1では、第1偏光子2の偏光方向と第2偏光子3の偏光方向とが、直交するように第1偏光子2及び第2偏光子が配置される。従って、Iv
W(x,y)は、上記結晶欠陥検出装置で、半導体ウェハWの結晶欠陥を観察する場合の設定とした場合の強度分布に相当する。ここで、(x,y)は半導体ウェハW上の座標を意味し、Iv
W(x,y)は、半導体ウェハWの位置ごとに値が異なり得る。(x,y)を連続的に計測し、強度分布を取得することは困難であるため、離散的に強度分布を取得することが好ましい。例えば半導体ウェハW上に仮想の格子点を設け、この格子点での強度分布を計測することができる。なお、この計測点は、第1計測工程S1から第4計測工程S4で同じ位置とすることが好ましい。
【0046】
<第2計測工程>
第2計測工程S2では、第1偏光子2及び第2偏光子3の偏光方向を互いに平行とした場合に撮像部4で計測される強度分布Ip
W(x,y)を計測する。
【0047】
具体的には、上記結晶欠陥検出装置で、半導体ウェハWの結晶欠陥を観察する場合の設定、すなわち第1計測工程S1での設定から、第2偏光子3を90度回転させて、その偏光方向を第1偏光子2の偏光方向と平行とする。この設定で、強度分布Ip
W(x,y)を計測すればよい。
【0048】
<第3計測工程>
第3計測工程S3では、第1偏光子2及び第2偏光子3の偏光方向を互いに垂直とし、かつ半導体ウェハWを取り除いた場合に撮像部4で計測される強度分布Iv
B(x,y)を計測する。
【0049】
具体的には、半導体ウェハWの結晶欠陥を観察する場合の設定、すなわち第1計測工程S1での設定から、半導体ウェハWを取り除いた状態で、強度分布Iv
B(x,y)を計測すればよい。
【0050】
<第4計測工程>
第4計測工程S4では、第1偏光子2及び第2偏光子3の偏光方向を互いに平行とし、かつ半導体ウェハWを取り除いた場合に撮像部4で計測される強度分布Ip
B(x,y)を計測する。
【0051】
具体的には、第2計測工程S2での設定から、半導体ウェハWを取り除いた状態で、強度分布Ip
B(x,y)を計測すればよい。
【0052】
なお、第1計測工程S1から第4計測工程S4は、同一の結晶欠陥検出装置で行うため、同時に行うことはできず、順に行われる。
図1では、第1計測工程S1から第4計測工程S4をこの順に行う場合を示しているが、その順序は問われず、任意の順序で行ってもよい。
【0053】
<算出工程>
算出工程S5では、第1計測工程S1、第2計測工程S2、第3計測工程S3及び第4計測工程S4で計測された強度分布から下記式1により偏光回転角θ(x,y)を算出する。
【数3】
【0054】
上記式1で偏光回転角θが算出できる理由について説明する。半導体ウェハWに照射される照射光L1の強度をI0(x,y)とする。なお、この照射光L1は、第1偏光子2により直線偏光されている。
【0055】
半導体ウェハWの厚さをt、照射光L1に対する吸収係数をα、上記結晶欠陥検出装置の測定ロス係数をε、第1偏光子2の偏光方向に対して、平行方向の偏光透過率をk
p、垂直方向の偏光透過率をk
vとすると、この照射光L1が半導体ウェハWを透過することで発生する偏光回転角θ(x,y)を用いて、強度分布I
v
W(x,y)、I
p
W(x,y)は、下記式2及び下記式3で表される。
【数4】
【0056】
また、半導体ウェハWが存在しない場合の強度分布I
v
W(x,y)、I
p
B(x,y)は、上記式2及び上記式3においてt=0、θ=0として算出され、下記式4及び下記式5で表される。
【数5】
【0057】
上記式2から上記式5よりθ(x,y)は、Iv
W(x,y)、Ip
W(x,y)、Iv
W(x,y)及びIp
B(x,y)を用いて、上記式1で表される。従って、上記式1により各位地における偏光回転角θ(x,y)を算出することができる。
【0058】
<利点>
当該偏光回転角抽出方法によれば、第1偏光子2と第2偏光子3との偏光方向を直交させた場合の半導体ウェハWの透過光L2の強度分布Iv
W(x,y)に加え、第1偏光子2と第2偏光子3との偏光方向を平行とした場合の透過光L2の強度分布Ip
W(x,y)、半導体ウェハWを除いた状態でのそれぞれの透過光L2の強度分布Iv
B(x,y)及びIp
B(x,y)を測定するのみで、上記式1により各位置における偏光回転角θ(x,y)を算出できる。この偏光回転角θ(x,y)は、結晶欠陥が存在すると非0となるため、偏光回転角θ(x,y)の大小により結晶欠陥を定量的に評価することが可能となる。
【0059】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0060】
上記結晶欠陥検出装置で、光源から出射される照射光の波長は、以下の手順により決定してもよい。まず、波長400nm以上800nm以下の範囲の光を含む光を照射光とし、半導体ウェハへの入射光に対する半導体ウェハからの透過光の透過率の波長依存性を測定する。この測定結果から透過率が最大、あるいは最大付近となる波長を選択し、照射光の波長とする。なお、半導体ウェハの種類によっては波長依存性が認められない場合があるが、その場合は例えば消光比が最小となる500nmを選択するとよい。この決定は、同一の種類の半導体ウェハに対しては一度行えばよく、半導体ウェハごとに行う必要はない。
【実施例0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
偏光回転角θ(x,y)が既知である結晶欠陥を再現するため、
図3に示すように半導体ウェハWに代えてサンプルSを評価対象として準備した。
【0063】
サンプルSは、位相差板S1及び第3偏光子S2を照射光L1側からこの順に有する。位相差板S1は、1/4波長板であり、直線偏光されている照射光L1を円偏光に変換する。第3偏光子S2は、位相差板S1で円偏光とされた照射光L1を再び直線偏光に変換する。このとき、第3偏光子S2の偏光方向を第1偏光子S1の偏光方向に対して回転角ψとなるように設定する。
【0064】
このように構成することで、サンプルSに照射される照射光L1は、回転角ψだけ回転した透過光L2となる。これは、半導体ウェハWの結晶欠陥を通過した透過光L2と同等であり、その偏光回転角θ(x,y)はψに等しいものとなる。
【0065】
このサンプルSに対する透過光L2について、回転角ψを変えながら、本発明の偏光回転角抽出方法を用いて偏光回転角θ(x,y)を算出した。結果を
図4に示す。
【0066】
図4のグラフから、回転角ψと偏光回転角θ(x,y)とは、ほぼ一致しており、本発明の偏光回転角抽出方法を用いることで、精度よく偏光回転角θ(x,y)を算出できることが分かる。