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特開2022-20469ラケット用グロメット及びこれを装着したラケット
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  • 特開-ラケット用グロメット及びこれを装着したラケット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020469
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ラケット用グロメット及びこれを装着したラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/022 20150101AFI20220125BHJP
   A63B 51/10 20150101ALI20220125BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220125BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20220125BHJP
   A63B 102/04 20150101ALN20220125BHJP
   A63B 102/06 20150101ALN20220125BHJP
【FI】
A63B49/022
A63B51/10
C08J5/04 CFG
A63B102:02
A63B102:04
A63B102:06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123982
(22)【出願日】2020-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】504094660
【氏名又は名称】株式会社ゴーセン
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】岸本 紘和
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昭宏
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB14
4F072AB15
4F072AD44
4F072AG05
4F072AK02
4F072AK15
4F072AL04
(57)【要約】
【課題】高いテンションで繰り返し張り上げても破損せず、耐久性の高いラケット用グロメット及びこれを装着したラケットを提供する。
【解決手段】ラケットにストリングを張設するためのラケット用グロメット40であって、ピッチ系炭素繊維を10~40質量%、及びポリアミド樹脂を60~90質量%含む炭素繊維補強樹脂で成形されている。本発明のラケットは、前記ラケット用グロメット40をストリング挿入孔に複数個所装着したラケットである。前記ポリアミド樹脂は、とくにポリ(メタキシリレンアジパミド)が好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラケットにストリングを張設するためのラケット用グロメットであって、
前記グロメットはピッチ系炭素繊維を10~40質量%、及びポリアミド樹脂を60~90質量%含む炭素繊維補強樹脂で成形されていることを特徴とするラケット用グロメット。
【請求項2】
前記ピッチ系炭素繊維の繊維長は0.1~2mmである請求項1に記載のラケット用グロメット。
【請求項3】
前記炭素繊維の平均直径は7~10μmである請求項1又は2に記載のラケット用グロメット。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド12及びポリ(メタキシリレンアジパミド)から選ばれる少なくとも一つの樹脂である請求項1~3のいずれかに記載のラケット用グロメット。
【請求項5】
前記ラケット用グロメットは、インジェクション成形によって成形されている請求項1~4のいずれかに記載のラケット用グロメット。
【請求項6】
前記ラケット用グロメットは、バドミントンラケット用グロメットである請求項1~5のいずれかに記載のラケット用グロメット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のラケット用グロメットをグロメット挿入孔に複数個所装着したラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バドミントン、硬式テニス、ソフトテニス、スカッシュ等に用いられるラケット用グロメット及びこれを装着したラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
テニス、バドミントン、スカッシュなどのラケットにストリングを張設するにはグロメットが必要である。高いテンションでストリングを張り上げると、負荷のかかる部分でグロメットの破損、ラケットフレームの変形や破損を生じやすい等の問題を生じる。従来のバドミントンラケット用グロメットは、張力のかかる部分では数回の張り上げでグロメットが破損したり、ラケットフレームの変形を生じてしまうという問題があった。特許文献1には、ストリングがグロメットおよびねじ式シリンダを通して挿入され、凹型の内向きヘッドが外側孔内にねじ込まれる。このシリンダはストリングに張力がかかった後でねじ込まれ、それによりグロメットが中央円錐孔セクション内へと前方に押圧され、挿入されたストリング上でグロメットを圧縮してグロメットを定位置でロックすることが提案されている。特許文献2には、ストリングを張架するヘッド部の少なくとも一部のストリング孔またはストリングに接触する部分に、振動減衰材を装着することが提案されている。本出願人は、グロメットヘッド部は長円形状または長方形状であり、前記グロメットレッグ部は、貫通孔を有し、前記グロメットヘッド部の上面には、長軸方向でかつ前記貫通孔を通る位置に溝が形成されているバドミントンラケット用グロメットを提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-503996号公報
【特許文献2】特開2002-065903号公報
【特許文献3】特開2013‐226298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のラケット用グロメットは、高いテンションで張り上げると破損し、耐久性に問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、高いテンションで繰り返し張り上げても破損せず、耐久性の高いラケット用グロメット及びこれを装着したラケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラケット用グロメットは、ラケットにストリングを張設するためのラケット用グロメットであって、前記グロメットはピッチ系炭素繊維を10~40質量%、及びポリアミド樹脂を60~90質量%含む炭素繊維補強樹脂で成形されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のラケットは、前記のラケット用グロメットをグロメット挿入孔に複数個所装着したラケットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラケット用グロメットは、ピッチ系炭素繊維を10~40質量%、及びポリアミド樹脂を60~90質量%含む炭素繊維補強樹脂で成形されていることにより、高いテンションで繰り返し張り上げても破損せず、耐久性の高いラケット用グロメット及びこれを装着したラケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施形態のグロメットの斜視図である。
図2図2A-Fは同、グロメットの断面図である。
図3図3A,Cは同、2連結グロメットの上面図、図3B,Dは同断面図である。
図4図4Aは同、6連結グロメットの側面図、図4Bは同断面図である。
図5図5は同、バドミントン用ラケットのグロメット挿入孔にグロメットを挿入し、ストリングを張設した模式的説明正面図である。
図6図6は同、バドミントン用ラケットにストリングを張設した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のラケット用グロメットは、ラケットフレームのグロメット挿入孔に挿入し、ストリングを張設するために使用する。このグロメットはピッチ系炭素繊維を10~40質量%、及びポリアミド樹脂を60~90質量%含む炭素繊維補強樹脂で成形されている。好ましくはピッチ系炭素繊維20~40質量%、及びポリアミド樹脂60~80質量%、より好ましくはピッチ系炭素繊維25~35質量%、及びポリアミド樹脂65~75質量%の割合である。これにより、高いテンションで繰り返し張り上げても破損せず、耐久性の高いグロメットが得られる。
【0011】
ピッチ系炭素繊維は等方性ピッチ系とメソフェーズピッチ系があるが、いずれも使用できる。PAN系炭素繊維は長繊維として有用であるが、インジェクション成形するには繊維長2mm以下が好ましく、繊維長2mm以下にするには困難である。
【0012】
前記ピッチ系炭素繊維の繊維長は0.1~2mmが好ましく、さらに好ましくは0.1~1mmである。これにより、インジェクション成形するのに好適となる。また前記炭素繊維の平均直径は7~10μmが好ましい。前記平均直径であればグロメットの補強に十分である。
【0013】
前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド及びポリ(メタキシリレンアジパミド)(以下、ポリアミドMXD6)から選ばれる少なくとも一つの樹脂が好ましい。これらの樹脂は機械的強度、弾性率、剛性、引っ張り強さなどが高く、高いテンションで繰り返し張り上げても破損せず、耐久性を上げることができる。
【0014】
前記ラケット用グロメットは、インジェクション成形によって成形するのが好ましい。インジェクション成形は成形サイクルが短く、かつ精度の高いグロメットを成形できる。
【0015】
前記ラケット用グロメットは、バドミントン、硬式テニス、ソフトテニス、スカッシュ等のラケットに有用である。とくにバドミントンラケット用グロメットに適用するのが好ましい。バドミントンラケットは高いテンションで張り上げることを要求されるからである。
【0016】
本発明のラケットは、前記のラケット用グロメットをグロメット挿入孔に複数個所装着したラケットである。バドミントンラケットの場合、一例として76個のグロメット挿入孔があり、この一部または全部に本発明のグロメットを挿入するのが好ましい。
【0017】
本発明で使用するポリアミド樹脂にピッチ系炭素繊維を混合した炭素繊維補強樹脂は、例えば三菱ケミカル社製、商品名”パイロフィルペレット”シリーズ、品番N66-C-10(ポリアミド66にピッチ系炭素繊維10質量部混合)、N66-C-20(ポリアミド66にピッチ系炭素繊維20質量部混合)、N66-C-30(ポリアミド66にピッチ系炭素繊維30質量部混合)、N66-C-40(ポリアミド66にピッチ系炭素繊維40質量部混合)、N66MR-C-40A(ポリアミド66にピッチ系炭素繊維40質量部混合)、NX-C-30(ポリアミドMXD6にピッチ系炭素繊維30質量部混合)、NXMR-C40B(ポリアミドMXD6にピッチ系炭素繊維40質量部混合)などがある。
【0018】
次に図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。図1は本発明の一実施形態のグロメット40の斜視図である。このグロメット40は、ヘッド部41とこの下側に一体としてつながるレッグ部42があり、上下方向に貫通する中空部43がある。ストリングは中空部43を通過してラケットに張設される。このグロメットの1個当たりの重量は、例えば、0.040g~0.100g、好ましくは0.050g~0.080gである。
【0019】
図2A-Fは同、グロメットの断面図である。図2A-Dのグロメット40a-40dの一例の寸法は表1に示すとおりである。
【0020】
【表1】
【0021】
図3A,Cは同、2連結グロメットの上面図、図3B,Dは同断面図である。図3A-Bのグロメット40eの一例の寸法は表2に示すとおりである。
【0022】
【表2】
【0023】
図4Aは同、6連結グロメットの側面図、図4B断面図である。この6連結グロメットは、一例として図5に示すグロメット挿入孔1~3と左側の対称の位置の合計6個のグロメット挿入孔に挿入するためのものである。
【0024】
図5は同、バドミントン用ラケット44のグロメット挿入孔(図示せず)にグロメットを挿入し、ストリング45を張設した模式的説明正面図である。ここで図5に示すグロメット挿入孔の番号1-38(その対称位置を含む)と挿入するグロメットとの位置関係を図3にまとめて示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3において、6連結グロメットを挿入する場合は、グロメット挿入孔1~3と左側の対称の位置の合計6個のグロメット挿入孔に挿入し、その挿入孔にはグロメット40dは使用しない。
【0027】
図6は同、バドミントン用ラケットにストリングを張設した正面図である。
【実施例0028】
以下実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、評価は下記の方法で行った。
(実施例1)
ポリアミドMXD6にピッチ系炭素繊維30質量部混合した三菱ケミカル社製、商品名”パイロフィルペレット”シリーズ、品番NX-C-40を用いて射出成型し、図1図3のグロメットを得た。
【0029】
(比較例1)
従来のグロメット(製品名:AC43、株式会社ゴーセン製、N12樹脂の射出成型品、補強繊維なし)を使用した。
【0030】
(評価方法)
バドミントンラケットとして、ゴーセン社製、商品名”GRAVITAS 7.0SR”(フェイス面積が51.5平方インチ、ストリンギングパターンがメイン22本、クロス21本)のラケットを用いた。ラケットはフルカーボン製であり、重量は83~85gである。このラケットに従来のグロメット(製品名:AC45N、株式会社ゴーセン製)を装着したもの(比較例)と本発明グロメットを装着したもの(実施例)を準備した。グロメットとラケットへの装着位置は、図2,3,5と前記した説明のとおりである。
張設したストリングは、市場で流通している実ゲージ0.65mmのナイロンマルチフィラメント構造を持った一般的なバドミントンストリング(ゴーセン社製、商品名”ジー・トーン ファイブ”)を使用して、電動式のストリンギングマシンによって張り上げた。
通常の張り上げ推奨テンションはメインストリング(以下M)とクロスストリング(C)がM26、C28lbs程度であるが、この評価方法においてはグロメットとラケットの強度を調べることを目的とするため、張り上げ強さとしてそれぞれM26lbs(11.8kg)、C28lbs(12.7kg)(高校生級)、M30lbs(13.6kg)、C32lbs(14.5kg)(オリンピック選手級)、M34lbs(15.4kg)、C36lbs(16.3kg)(促進試験レベル)の3水準で張り上げた。検証手法として、ストリング張り上げ後に競技暦10年以上の2名のプレイヤーによるシャトルコックを使用した試し打ちを各ラケット毎に30分ずつ交換して行い、終了後にストリングの張替を行った。この行程を繰り返し、グロメットもしくはフレームが破損して使用不能なるまでの回数を数えた。実施例及び比較例の条件と結果をまとめて表4に示す。
【0031】
【表4】
【0032】
表1に示すとおり、実施例1のグロメットは、高いテンションで繰り返し張り上げても破損せず、耐久性が高いことが確認できた。また、実施例1のグロメットは比較例1の重量と同一であった。さらに、実施例1のグロメットを装着したラケットは、打球感および打球音の両方とも比較例1のラケットとほとんど差が認められなかった。また、実施例1グロメットは、単孔型であるため、バドミントンラケットの品番やメーカーに左右されず、汎用性が高いことも確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のラケット用グロメットは、バドミントン、硬式テニス、ソフトテニス、スカッシュ等のラケットに有用である。とくにバドミントンラケット用グロメットに適用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0034】
1-38 グロメット挿入孔番号
40,40a-40f グロメット
41 ヘッド部
42 レッグ部
43 中空部
44 バドミントン用ラケット
45 ストリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
図5は同、バドミントン用ラケット44のグロメット挿入孔(図示せず)にグロメットを挿入し、ストリング45を張設した模式的説明正面図である。ここで図5に示すグロメット挿入孔の番号1-38(その対称位置を含む)と挿入するグロメットとの位置関係を3にまとめて示す。