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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020494
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20220125BHJP
   E05F 7/04 20060101ALI20220125BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F7/04
B60J1/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124020
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 亘
【テーマコード(参考)】
2E050
3D127
【Fターム(参考)】
2E050NA06
2E050PA02
2E050PB05
2E050PD03
3D127AA19
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF03
3D127DF09
3D127DF15
3D127DF19
3D127GG03
(57)【要約】
【課題】キャリアプレートの組付け異常が生じることがなく、且つフランジ部の幅が狭い場合にも当接部をフランジ部に適切に押圧接触させることができるウインドレギュレータを提供する。
【解決手段】ガイドレール2と、ガイドレール2に摺動するキャリアプレート3と、を備え、キャリアプレート3には、ガイドレール2のフランジ部23の表面23bに摺動する表面摺動ヒレ111、112と、フランジ部23の裏面23aに摺動する裏面摺動ヒレ113と、が形成され、裏面摺動ヒレ113は、上記裏面23aに当接する当接部131と、当接部131を上記裏面23aに押圧する胴部132と、を有し、当接部131は、上記裏面23aに向かって延在すると共に、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付けるときの、延在方向側方からのフランジ部23の進入を許容するように先側が湾曲して弾性変形する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスの昇降方向に沿って設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに摺動して前記窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、
前記キャリアプレートを前記ガイドレールに沿って昇降させる昇降手段と、を備え、
前記キャリアプレートには、前記ガイドレールのフランジ部の表面に摺動する表面摺動部材と、前記フランジ部の裏面に摺動する裏面摺動部材と、が形成され、
前記裏面摺動部材は、前記裏面に当接する当接部と、その弾性変形の復元力によって前記当接部を前記裏面に押圧する胴部と、を有し、
前記当接部は、前記裏面に向かって延在すると共に、前記キャリアプレートを前記ガイドレールに組み付けるときの、延在方向側方からの前記フランジ部の進入を許容するように先側が湾曲して弾性変形することを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記当接部は、前記フランジ部が進入したとき、弾性変形の復元力によって、前記胴部を弾性変形の状態にさせつつ、自然状態に戻ることを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【請求項3】
前記当接部の、前記フランジ部が進入して来る側の側面には、先側に向かって、前記フランジ部が進入して来る方向に傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインドレギュレータとして、例えば、キャリアプレートを昇降自在に支持するガイドレールを有し、キャリアプレートをガイドレールに沿って昇降させて、窓ガラスを昇降するシングルレール式のウインドレギュレータがある(特許文献1参照)。このウインドレギュレータでは、キャリアプレート(スライダ)が、ガイドレールのフランジ部の裏面に弾接する第1の摺動ヒレ(弾性リップ)と、ガイドレールのフランジ部の表面に弾接する第2及び第3の摺動ヒレと、を有し、3つの摺動ヒレでフランジ部を挟持することで、キャリアプレートのガタつきを抑えている。また、第1の摺動ヒレは、円状断面の当接部を有し、第2及び第3の摺動ヒレは、フランジ部に当接する当接部分と、当接部分からフランジ部とは逆側へ折り返された折返し部分とからなる円弧状の当接部を有している。この第2及び第3の摺動ヒレでは、当接部に、上記折返し部分が形成されていることで、キャリアプレートをガイドレールに側方から組み付けるとき、第1の摺動ヒレと第2及び第3の摺動ヒレとの間に進入するフランジ部の端部が当接部に引っかからないようになっている。これにより、組付け異常が生じるのを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-139706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のウインドレギュレータでは、キャリアプレートをガイドレールに側方から組み付けるとき、第1の摺動ヒレと第2及び第3の摺動ヒレとの間に進入して来るフランジ部の先端が、第1の摺動ヒレの当接部に引っかかり、組付け異常が生じてしまうという問題があった。これに対し、第2及び第3の摺動ヒレの形状を、第1の摺動ヒレに採用することも考えられるが、かかる構成では、フランジ部に隣接する側板部に、折返し部分が干渉するため、フランジ部の幅が狭い場合、当接部をフランジ部に適切に押圧接触されることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、キャリアプレートの組付け異常が生じることがなく、且つフランジ部の幅が狭い場合にも当接部をフランジ部に適切に押圧接触させることができるウインドレギュレータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、窓ガラスの昇降方向に沿って設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに摺動して前記窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、前記キャリアプレートを前記ガイドレールに沿って昇降させる昇降手段と、を備え、前記キャリアプレートには、前記ガイドレールのフランジ部の表面に摺動する表面摺動部材と、前記フランジ部の裏面に摺動する裏面摺動部材と、が形成され、前記裏面摺動部材は、前記裏面に当接する当接部と、その弾性変形の復元力によって前記当接部を前記裏面に押圧する胴部と、を有し、前記当接部は、前記裏面に向かって延在すると共に、前記キャリアプレートを前記ガイドレールに組み付けるときの、延在方向側方からの前記フランジ部の進入を許容するように先側が湾曲して弾性変形することを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るウインドレギュレータは、キャリアプレートの組付け異常が生じることがなく、且つフランジ部の幅が狭い場合にも当接部をフランジ部に適切に押圧接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ及び窓ガラスを示した全体概略図である。
図2】ウインドレギュレータを示した正面図(a)及び裏面図(b)である。
図3】(a)は、ガイドレールを示したA‐A´線断面図であり、(b)は、キャリアプレート及びガイドレールを示したA‐A´線断面図である。
図4】キャリアプレートを示した正面図(a)、平面図(b)及び裏面図(c)である。
図5】(a)は、キャリアプレート及びガイドレールを示したB‐B´線断面図であり、(b)は、キャリアプレート及びガイドレールを示したC‐C´線断面図であり、(c)は、キャリアプレート及びガイドレールを示したD‐D´線断面図であり、(d)は、キャリアプレート及びガイドレールを示したE‐E´線断面図であり、(e)は、キャリアプレート及びガイドレールを示したF‐F´線断面図である。
図6】キャリアプレートをガイドレールに組み付けるときの裏面摺動ヒレの挙動を示したA‐A´線断面図である。
図7】(a)は、従来のウインドレギュレータにおける裏面摺動ヒレを示した断面図であり、(b)は、従来のウインドレギュレータにおけるガイドレール及び裏面摺動ヒレを示した断面図である。
図8】(a)は、裏面摺動ヒレの第1変形例を示した平面図であり、(b)は、裏面摺動ヒレの第2変形例を示した断面図であり、(c)は、裏面摺動ヒレの第3変形例を示した断面図である。
図9】(a)は、裏面摺動ヒレの第4変形例を示した断面図であり、(b)は、裏面摺動ヒレの第5変形例を示した断面図であり、(c)は、裏面摺動ヒレの第6変形例を示した断面図であり、(d)は、裏面摺動ヒレの第7変形例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータについて説明する。このウインドレギュレータは、自動車(車両)のドアパネルに取り付けられ、自動車に設けられたドアの窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、ガイドレールに対するキャリアプレートの摺動構造を改良し、組付け異常が生じず且つフランジ部の幅が狭いガイドレールに対応できるようにしたものである。なお、以下、窓ガラスの昇降方向、上昇方向及び下降方向を、単に昇降方向、上昇方向及び下降方向と呼称する。また、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。
【0010】
図1及び図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、ドアパネル(不図示)の内部に取り付けられており、窓ガラスGの昇降方向に沿って設けられた樹脂製のガイドレール2と、ガラスホルダHを介して窓ガラスGが取り付けられ、ガイドレール2と摺動して窓ガラスGと共に移動するキャリアプレート3と、キャリアプレート3を牽引する上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5と、ガイドレール2の上下端に配設され、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5を方向転換する上下一対のプーリー6、7と、ベースプレート8を介してガイドレール2の上下中間位置に支持され、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の巻き取り及び繰り出しを行う駆動部9と、を備えている。すなわち、このウインドレギュレータ1は、いわゆるワイヤ式且つシングルレール式のウインドレギュレータ1である。また、駆動部9がガイドレール2の上下中間位置に支持された、いわゆるバンジョー型のウインドレギュレータ1である。なお、キャリアプレート3をガイドレール2に沿って昇降させる昇降手段は、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5、プーリー6、7及び駆動部9により構成されている。
【0011】
上昇側ワイヤ4は、一端部がキャリアプレート3に取り付けられ、上側のプーリー6を介して、他端部が駆動部9のドラム92(後述する)に連結されている。一方、下降側ワイヤ5は、一端部がキャリアプレート3に取り付けられ、下側のプーリー7を介して、他端部がドラム92に連結されている。
【0012】
駆動部9は、樹脂製のベースプレート8を介してガイドレール2に支持されており、減速機付きのモータ91と、モータ91によって回転駆動され、回転することにより上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の巻き取り及び繰り出しを行う円筒状のドラム92と、モータ91を保持すると共に、ドラム92を覆うモーターハウジング93と、を有している。なお、ガイドレール2とベースプレート8とは、一体成型されている。
【0013】
モータ91を正転駆動すると、ドラム92が正転し、これに伴って、下降側ワイヤ5が繰り出されつつ上昇側ワイヤ4が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が上昇側ワイヤ4に引っ張られ上昇方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスGが上昇する。一方、モータ91を逆転駆動すると、ドラム92が逆転し、これに伴って、上昇側ワイヤ4が繰り出されつつ下降側ワイヤ5が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が下降側ワイヤ5に引っ張られ下降方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスGが下降する。これにより、キャリアプレート3及び窓ガラスGを、ガイドレール2に沿って昇降させる。
【0014】
図2及び図3に示すように、ガイドレール2は、車幅方向における車室外方向に向かって突出するように僅かに湾曲した長尺な樹脂製の部材であり、長手方向に沿って延在する平板部21と、平板部21の短手方向における右端から前側に立ち上がるように形成された側板部22と、側板部22の前端から右側に突出し、平板部21と平行に形成されたフランジ部23と、を有している。側板部22は、平板部21の右端から前側に立ち上がる第1側板22aと、第1側板22aの前端から右側に延在する平板22bと、平板22bの右端から後側に立ち上がる第2側板22cとから成る。図3(b)に示すように、側板部22及びフランジ部23は、ウインドレギュレータ1の昇降動作においてキャリアプレート3が摺動する被摺動部であり、キャリアプレート3の昇降範囲の全域に亘って延在している。なお、以下、フランジ部23の後面、すなわち、側板部22が隣接する面を、フランジ部23の裏面23aとし、フランジ部23の前面、すなわち、側板部22が隣接しない面を、フランジ部23の表面23bとする。
【0015】
次に図4乃至図6を参照して、キャリアプレート3について説明する。なお、図5は、図4に示すキャリアプレート3の各断面線における断面図に、ガイドレール2を追加して図示している。図4に示すように、キャリアプレート3は、樹脂製(例えばポリアセタール樹脂製)の部材で構成されており、キャリアプレート3には、窓ガラスGを取り付けるための左右2つの取付け孔31、31と、後面側(図4(a)中奥側)の左右方向略中央に配設されたレール取付け部32と、レール取付け部32の左側に隣接して配設され下降側ワイヤ取付け部33と、下降側ワイヤ取付け部33の左側に配設された上昇側ワイヤ取付け部34と、が形成されている。
【0016】
取付け孔31、31は、窓ガラスGに固定されたガラスホルダH(図1参照)を取り付けるためのものである。取付け孔31、31にガラスホルダHを取り付けることで、窓ガラスGがガラスホルダHを介して、キャリアプレート3に取り付けられている。
【0017】
下降側ワイヤ取付け部33は、下降側ワイヤ5の一端が取り付けられている。一方、上昇側ワイヤ取付け部34は、上昇側ワイヤ4の一端が取り付けられている。すなわち、キャリアプレート3は、この下降側ワイヤ取付け部33を介して、下降側ワイヤ5に下降方向に引っ張られ、この上昇側ワイヤ取付け部34を介して、上昇側ワイヤ4に上昇方向に引っ張られる構成になっている。
【0018】
レール取付け部32は、キャリアプレート3の上下端部に配設され、ガイドレール2の側板部22に摺動する上下一対の側板摺動部101と、キャリアプレート3の上下中間位置に配設され、ガイドレール2のフランジ部23に摺動するフランジ摺動部102と、を有している。図5(a)及び(e)に示すように、各側板摺動部101は、ガイドレール2の側板部22の右面及び左面に摺動し、ガイドレール2の側板部22を挟持している。これにより、キャリアプレート3の左右方向のガタつきを抑制している。
【0019】
図4に示すように、フランジ摺動部102は、フランジ部23の表面23b(前面)に摺動する第1の表面摺動ヒレ111及び第2の表面摺動ヒレ112(表面摺動部材)と、フランジ部23の裏面23a(後面)に摺動する裏面摺動ヒレ113(裏面摺動部材)と、を有している。第1の表面摺動ヒレ111、第2の表面摺動ヒレ112及び裏面摺動ヒレ113は、キャリアプレート3の上下中間位置において、上から、第1の表面摺動ヒレ111、裏面摺動ヒレ113、第2の表面摺動ヒレ112の順で、上下に並んで配設されている。すなわち、上下方向において、第1の表面摺動ヒレ111と第2の表面摺動ヒレ112との間に、裏面摺動ヒレ113が配設されている。フランジ摺動部102は、表面摺動ヒレ111、112及び裏面摺動ヒレ113が、ガイドレール2のフランジ部23の表面23b及び裏面23aに押圧接触することで、表面摺動ヒレ111、112及び裏面摺動ヒレ113でガイドレール2のフランジ部23を挟持している。これにより、キャリアプレート3の前後方向のガタつきを抑制している。これによって、ドアの開閉時におけるキャリアプレート3のバタつきを抑止し、キャリアプレート3のバタつきによる異音の発生を抑制している。
【0020】
図5(b)及び(d)に示すように、各表面摺動ヒレ111、112は、キャリアプレート3に形成された開口部の左内側面から突出する部材であり、フランジ部23の表面23bに当接する当接部121と、当接部121を支持し、当接部121をフランジ部23の表面23bに押圧する胴部122と、を有している。胴部122は、弾性変形の復元力によって当接部121をフランジ部23の表面23bに押圧している。すなわち、胴部122が自然状態のときには、当接部121の後端が、フランジ部23の表面23bによりも後方に位置する。そして、キャリアプレート3がガイドレール2に組み付けられた状態では、フランジ部23の表面23bによって当接部121が前方に押され、胴部122が弾性変形した状態になる。この弾性変形の復元力によって、当接部121が、フランジ部23の表面23bに押圧され、フランジ部23の表面23bに押圧接触した状態になっている。
【0021】
当接部121は、胴部122の先端から、フランジ部23に近接した後、フランジ部23とは逆側に折り返すように湾曲した形状となっている。
【0022】
図5(c)に示すように、裏面摺動ヒレ113は、キャリアプレート3に形成された開口部の右内側面から突出する部材であり、フランジ部23の裏面23aに当接する当接部131と、当接部131を支持し、当接部131をフランジ部23の裏面23aに押圧する胴部132と、を有している。胴部132は、上記開口部の右内側面から左側に延びた後、フランジ部23とは逆側に湾曲し、その後、フランジ部23側に湾曲した「S」字状の形状を有している。また、胴部132は、その弾性変形の復元力によって当接部131をフランジ部23の裏面23aに押圧している。すなわち、胴部132が自然状態のときには、当接部121の先端(前端)が、フランジ部23の裏面23aによりも前方に位置する。そして、キャリアプレート3がガイドレール2に組み付けられた状態では、当接部131が後方に押され、胴部132が弾性変形した状態になっている。
【0023】
当接部131は、胴部132の先端から、フランジ部23の裏面23aに向かって前方に延在した(延びた)形状を有している。そして、当接部131は、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付けるときの延在方向側方(左側)からのフランジ部23の進入を許容するように、当該当接部131の先側が右側に湾曲して弾性変形する構成となっている。すなわち、当接部131は、キャリアプレート3の組付け時に、フランジ部23の進入方向に湾曲して、フランジ部23が、表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入するのを許容する。これにより、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付けるとき、フランジ部23の端部が、当接部131に引っかからないようになっている。また、当接部131は、フランジ部23が表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入したとき、弾性変形の復元力によって、胴部132を後方に押圧し胴部132を弾性変形の状態にしつつ、自然状態に戻るように形成されている。フランジ部23が表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入し、胴部132が弾性変形し、当接部131が自然状態に戻った状態では、胴部132の弾性変形の復元力によって、当接部131が非変形の状態でフランジ部23の裏面23aに押圧された状態になり、当接部131がフランジ部23の裏面23aに押圧接触した状態となる。このように、裏面摺動ヒレ113は、当接部131が、キャリアプレート3組付け時にフランジ部23の進入を許容するための第1の弾性変形部として機能し、胴部132が、当接部131をフランジ部23の裏面23aに押圧接触させるための第2の弾性変形部として機能する。
【0024】
また、当接部131の、フランジ部23が進入して来る側の側面(左側面)には、当該当接部131の元側から先側に向かって、フランジ部23の進入方向(右方向)に傾斜した傾斜面131aが形成されている。この傾斜面131aによって、フランジ部23の端部がガイドされることで、フランジ部23が、表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入しやすくなっている。
【0025】
ここで図6を参照して、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付ける組付け動作における、裏面摺動ヒレ113の挙動について説明する。本組付け動作では、ガイドレール2のフランジ部23をキャリアプレート3のレール取付け部32に回し入れ、フランジ部23を表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入させる形で、キャリアプレート3がガイドレール2に側方から組み付けられる。なお、図6では、キャリアプレート3を固定とし、ガイドレール2を動かして組付けを行っているが、相対的に、ガイドレール2のフランジ部23をキャリアプレート3のレール取付け部32に回し入れ、フランジ部23を表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入させる構成であれば、ガイドレール2を固定とし、キャリアプレート3を動かして組付けを行う構成であっても良い。
【0026】
図6(a)に示すように、ガイドレール2のフランジ部23をキャリアプレート3のレール取付け部32に回し入れていくと、まず、フランジ部23の先端が当接部131の傾斜面131aに左方向から当接する。その後、ガイドレール2の回し入れが進むと、図6(b)に示すように、フランジ部23の先端に押されて、裏面摺動ヒレ113の当接部131の先側が、フランジ部23の進入を許容するように右側に湾曲して弾性変形する。その後、更に回し入れが進むと、図6(c)に示すように、フランジ部23が当接部131の上に乗り上げ、フランジ部23が表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に進入する。このとき、当接部131は、その弾性変形の復元力によって、胴部132先端を後方に押し下げて弾性変形させつつ、フランジ部23に向かって延在した自然状態に戻る。これにより、胴部132の弾性変形の復元力によって、当接部131が非変形の状態でフランジ部23の裏面23aに押圧され、当接部131がフランジ部23の裏面23aに押圧接触した状態になる。なお、当接部131が自然状態に戻るとき、当接部131の先側が側板部22に当接して装着音が発生すると共に、クリック感が生じる。
【0027】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態によれば、裏面摺動ヒレ113の当接部131が、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付けるときの、フランジ部23の進入を許容するように、弾性変形するため、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付けるときに、フランジ部23の先端が当接部131に引っかかって組付け異常が生じることがない。また、従来のウインドレギュレータでは、図7(a)に示すように、裏面摺動ヒレ113の当接部131が、フランジ部23に当接する当接部分141と、当接部分141からフランジ部23とは逆側へ折り返された折返し部分142とによって構成されていたため、図7(b)に示すように、フランジ部23の幅が狭い場合、折返し部分142が、側板部22に干渉してしまうという問題があったが、上記実施形態によれば、側板部22と干渉する部分がないため、フランジ部23に対する当接位置を側板部22に近づけることができ、フランジ部23の幅が狭い場合にも、当接部131をフランジ部23に適切に押圧接触させることができる。これにより、フランジ部23の幅を狭くすることができるため、ガイドレール2の軽量化を図ることができると共に、フランジ部23の強度を向上させることができる。これによって、樹脂製のガイドレール2であっても、金属製のガイドレールと同等以上の強度が得られ、金属製のガイドレールと同等以下の重量にすることができる。
【0028】
また、キャリアプレート3をガイドレール2に組み付けるとき、裏面摺動ヒレ113を後方に押し開いて、フランジ部23を表面摺動ヒレ111、112と裏面摺動ヒレ113との間に入れ込む構成ではないため、キャリアプレート3の組付け時に胴部132を過度に変形させることがなく、胴部132に過度な負担がかかるのを防止することができる。よって、胴部132の破損を防止することができる。
【0029】
(その他の実施形態について)
なお、上記実施形態においては、裏面摺動ヒレ113の幅(上下方向の寸法)が、左右方向で同一である構成であったが、図8(a)に示すように、裏面摺動ヒレ113の幅が、右側から左側に向かって徐々に狭くなるように(先細り状に)形成されている構成であっても良い。すなわち、当接部131の幅を、胴部132の幅よりも狭くする構成であっても良い。また、上記実施形態においては、裏面摺動ヒレ113の厚さが、当接部131と胴部132とで同一である構成であったが、図8(b)に示すように、胴部132の厚さに対し当接部131の厚さを薄くする構成であっても良い。これらの構成によれば、当接部131をより変形しやすくすることができ、キャリアプレート3組付け時にフランジ部23の先端が当接部131に引っかかるのをより防止することができる。
【0030】
また、図8(c)に示すように、当接部131の先端を、傾斜面131aに面する断面円形状にし、当接部131の先端を、丸みを帯びたものにする構成であっても良い。かかる構成によれば、キャリアプレート3組付け時にフランジ部23の先端が当接部131に引っかかるのをより防止することができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、胴部132が、「S」字状に形成された構成であったが、図9(a)に示すように、胴部132を、フランジ部23とは逆側(後方)を頂部とする半円弧状に形成しても良い。
【0032】
また、図9(b)に示すように、胴部132を、左方向にまっすぐ延びるストレート状に形成しても良いし、図9(c)に示すように、胴部132を、左方向にまっすぐ延びるストレート状であり、且つ厚さが元側から先側に向かって徐々に薄くなる先細り状としても良い。また、図9(d)に示すように、胴部132を、左方向且つ前方に斜めにまっすぐ延びるストレート状に形成しても良い。
【0033】
なお、上記実施形態においては、樹脂製のガイドレール2を備えたウインドレギュレータ1に本発明を適用したが、金属製のガイドレールを備えたウインドレギュレータに本発明を適用しても良い。
【0034】
また、上記実施形態においては、シングルレール式のウインドレギュレータ1に本発明を適用したが、2本のガイドレールを備えたダブルレール式のウインドレギュレータに本発明を適用しても良い。
【0035】
また、上記実施形態においては、自動車の窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータに本発明を適用したが、車両の窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータであれば、鉄道車両の窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータに本発明を適用しても良い。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:ウインドレギュレータ、 2:ガイドレール、 3:キャリアプレート、 4:上昇側ワイヤ、 5:下降側ワイヤ、 6、7:プーリー、 9:駆動部、 23:フランジ部、 23a:裏面、 23b:表面、 111:第1の表面摺動ヒレ、 112:第2の表面摺動ヒレ、 113:裏面摺動ヒレ、 131:当接部、 131a:傾斜面、 132:胴部、 G:窓ガラス
図1
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図9