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特開2022-20508回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システム
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  • 特開-回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020508
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/024 20210101AFI20220125BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220125BHJP
   H01L 35/30 20060101ALI20220125BHJP
   G01K 1/02 20210101ALI20220125BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20220125BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20220125BHJP
【FI】
G01K1/02 E
H02N11/00 A
H01L35/30
G01K1/02 L
G01K1/14 L
G01K7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124045
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】寺島 和希
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056AE03
2F056AE05
2F056AE07
2F056CL07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回転機や減速機内部の発熱を検出し、これを外部電源は用いずに自己発電によって表示、発報することを可能とする回転機用熱検出構造を提供する。
【解決手段】回転機用熱検出構造10は、外部電源またはバッテリーのいずれも用いずに回転機の所定部位における発熱を検出する構造であり、かかる所定部位は該回転機20の出力側に設けられる減速機30であり、減速機30に備えられた熱電変換素子(ゼーベック素子)3と、熱電変換素子3により発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段5とからなる構成とする。なお、回転機20とこれに備えられている減速機30を合わせて、ここでは回転機/減速機連結体60とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源またはバッテリーのいずれも用いずに回転機の所定部位における発熱を検出する構造であって、該所定部位は該回転機の出力側に設けられる減速機であり、該減速機に備えられた熱電変換素子と、該熱電変換素子により発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段とからなることを特徴とする、回転機用熱検出構造。
【請求項2】
前記熱電変換素子は前記減速機の筐体に設置されることを特徴とする、請求項1に記載の回転機用熱検出構造。
【請求項3】
前記所定部位は前記回転機自体の発熱を検出する部位であることを特徴とする、請求項1に記載の回転機用熱検出構造。
【請求項4】
前記熱電変換素子は前記回転機と前記減速機との接合部に設置されることを特徴とする、請求項3に記載の回転機用熱検出構造。
【請求項5】
外部電源またはバッテリーのいずれも用いずに回転機の所定部位における発熱を検出する構造であって、該所定部位は該回転機の出力側に設けられる減速機、および該回転機自体の発熱を検出する部位であり、該各部位に備えられた熱電変換素子と、該熱電変換素子により発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段とからなることを特徴とする、回転機用熱検出構造。
【請求項6】
前記熱電変換素子により得られる電圧が一定以上の場合に前記発報手段において発報信号を生成するよう制御する制御手段が設けられていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の回転機用熱検出構造。
【請求項7】
前記発報手段が下記<H>記載のいずれかの発報信号を用いるものであることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の回転機用熱検出構造。
<H> 点灯信号、視覚的信号(点灯信号を除く)、ブザー音信号、音声信号(ブザー音信号を除く)
【請求項8】
前記発報手段は、前記熱電変換素子が発電した電気により発報信号を生成する信号生成部と、該信号生成部により生成された発報信号を無線または有線によって後記受信部あて送信する送信部と、該送信部から該発報信号を受信して出力する受信部とからなることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の回転機用熱検出構造。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載の回転機用熱検出構造を備えていることを特徴とする、下記<M>記載のいずれかの回転構造。
<M> 回転機、回転機に設けられる減速機、減速機付き回転機
【請求項10】
請求項8に記載の回転機用熱検出構造を備えた回転機における熱検出システムであって、前記受信部が該回転機から離れて設けられていることを特徴とする、回転機の熱検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システムに係り、特に回転機の減速機などの回転構造における熱検出技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転機やそれに付属する減速機などの回転構造において、たとえば内部オイルの劣化など、メンテナンス作業をすべき時期や異常の発生を適切に予測することは重要である。異常発生の有無やメンテナンス時期を診断するために、内部の温度や振動の有無・程度を検出することも有用である。温度を検出したい場合には回転機等にサーミスタや熱電対を接続して検出する方法が考えられるが、これが多用されているというわけではない。
【0003】
回転構造における異常発生診断技術については従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、設計諸元が異なった回転部品が任意の部位に組込まれていても、装置を分解することなく実稼動状態で回転部品の異常有無や異常部品を特定できる異常診断装置として、軸受箱に固定される振動センサと、回転速度信号により算出される回転部品の損傷に起因する周波数成分および振動センサにより検出される実測データの周波数成分を設計諸元が異なる複数の回転部品毎に比較する比較照合部と、比較照合部での比較結果に基づき回転部品の異常有無や異常部位を特定する異常判定部とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-77945号公報「異常診断装置及び異常診断方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、回転機や減速機の異常発生の有無やメンテナンス時期を診断する目的で内部の温度を検出する場合は、サーミスタや熱電対を用いることが考えられる。しかしサーミスタ等は、電気式の温度センサないしは素子そのものであり、検出された温度ないしは発熱状況を表示するためには外部電源を使用した表示手段ないしは発報手段が必要である。従来、かかる外部電源を使用せず、自己発電による発熱状況の表示・発報機能を備えている減速機や回転機は未だ存在しない。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、回転機や減速機内部の発熱を検出し、これを外部電源は用いずに自己発電によって表示、発報することを可能とする回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システムを提供することである。また本発明の課題は、それによって回転機等の異常発熱や故障およびその前兆を早期に検出し、故障を有効に予防し、さらにメンテナンス時期を判断することのできる、回転機用熱検出構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、熱電変換素子を内蔵するかまたは外部に取り付け、回転構造の動作により生じた熱を電気に変換し、発電された電気を利用して信号を発する方式とすることによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 外部電源またはバッテリーのいずれも用いずに回転機の所定部位における発熱を検出する構造であって、該所定部位は該回転機の出力側に設けられる減速機であり、該減速機に備えられた熱電変換素子と、該熱電変換素子により発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段とからなることを特徴とする、回転機用熱検出構造。
〔2〕 前記熱電変換素子は前記減速機の筐体に設置されることを特徴とする、〔1〕に記載の回転機用熱検出構造。
〔3〕 前記所定部位は前記回転機自体の発熱を検出する部位であることを特徴とする、〔1〕に記載の回転機用熱検出構造。
〔4〕 前記熱電変換素子は前記回転機と前記減速機との接合部に設置されることを特徴とする、〔3〕に記載の回転機用熱検出構造。
〔5〕 外部電源またはバッテリーのいずれも用いずに回転機の所定部位における発熱を検出する構造であって、該所定部位は該回転機の出力側に設けられる減速機、および該回転機自体の発熱を検出する部位であり、該各部位に備えられた熱電変換素子と、該熱電変換素子により発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段とからなることを特徴とする、回転機用熱検出構造。
【0009】
〔6〕 前記熱電変換素子により得られる電圧が一定以上の場合に前記発報手段において発報信号を生成するよう制御する制御手段が設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の回転機用熱検出構造。
〔7〕 前記発報手段が下記<H>記載のいずれかの発報信号を用いるものであることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の回転機用熱検出構造。
<H> 点灯信号、視覚的信号(点灯信号を除く)、ブザー音信号、音声信号(ブザー音信号を除く)
〔8〕 前記発報手段は、前記熱電変換素子が発電した電気により発報信号を生成する信号生成部と、該信号生成部により生成された発報信号を無線または有線によって後記受信部あて送信する送信部と、該送信部から該発報信号を受信して出力する受信部とからなることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の回転機用熱検出構造。
〔9〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の回転機用熱検出構造を備えていることを特徴とする、下記<M>記載のいずれかの回転構造。
<M> 回転機、回転機に設けられる減速機、減速機付き回転機
〔10〕 〔8〕に記載の回転機用熱検出構造を備えた回転機における熱検出システムであって、前記受信部が該回転機から離れて設けられていることを特徴とする、回転機の熱検出システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システムは上述のように構成されるため、これらによれば、回転機や減速機内部の発熱を検出し、これを、外部電源やバッテリーを用いることなく自己発電によって表示、発報することができる。またそれにより、回転機等の異常発熱や内部オイルの劣化等の不具合、故障およびその前兆を早期に、かつ自動的に知ることができ、故障を有効に予防し、さらにメンテナンス時期を良好に判断することができる。したがって、保守上極めて有効である。
【0011】
本発明の回転機用熱検出構造等によれば、外部電源が不要であるため、外部にケーブルを配線する煩雑さや必要が無く、取扱い性がよい。また、回転機と減速機内部、双方における発熱を検出する構成の本発明回転機用熱検出構造では、それぞれにおける発熱の有無を検出することができる。
【0012】
なお、上記先行技術は、振動センサと回転速度信号、場合によってそれらに加えて温度情報から故障を診断するシステムである。一方、本願発明は、外部電源を使用せずに自己発電により熱電変換素子から信号を送るシステムである。外部電源を用いず、熱電変換素子を用いる熱検出機能を備えた回転構造は、従来存在しない発明である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の回転機用熱検出構造の基本構成を示す概念図である。
図2】本発明の回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子の具体的配置例を示す要部断面図である(その1)。
図3】本発明の回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子の具体的配置例を示す要部断面図である(その2)。
図4】本発明の回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子の具体的配置例を示す要部断面図である(その3)。
図4-2】図4に示した例における回転機用熱検出構造の構成例を示す概念図である。
図5】制御手段を備えた本発明の回転機用熱検出構造の構成を示す概念図である。
図6】本発明の回転機用熱検出構造に係る発報手段の構成例を示す概念図である。
図7】本発明の回転機の熱検出システムの構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の回転機用熱検出構造の基本構成を示す概念図である。図示するように本回転機用熱検出構造10は、外部電源またはバッテリーのいずれも用いずに回転機の所定部位における発熱を検出する構造であって、かかる所定部位は回転機20の出力側に設けられる減速機30であり、減速機30に備えられた熱電変換素子(ゼーベック素子)3と、熱電変換素子3により発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段5とからなることを、主たる構成とする。なお、回転機20とこれに備えられている減速機30を合わせて、ここでは広義の「回転機」(回転機/減速機連結体)60とする。
【0015】
熱電変換素子(ゼーベック素子)は熱と電力を変換する素子であり、異なる2種類の金属または半導体を接合して、両端に温度差を生じさせることにより起電力が生じるゼーベック効果を利用するものである。半導体を用いる場合大きな電位差を得るためにp型半導体、n型半導体を組み合わせて構成される。従来、熱電変換素子による熱電発電が、地上用発電や人工衛星用の電源として利用されている。本発明は、かかる熱電素子を回転機用の熱検出方式として利用するものである。熱電変換素子は表面と裏面の温度差により発電する仕組みであり、温度差が大きくなるにつれ、発生する電圧も増加する。
【0016】
かかる構成の本回転機用熱検出構造10では、発熱検出対象の所定部位である減速機30に備えられた熱電変換素子3において、当該減速機30における発熱がある場合にはその熱が電気に変換され、ついで発報手段5において、熱電変換素子3により発電された電力が用いられて、当該減速機30における発熱が発報される。このようにして本回転機用熱検出構造10では、外部電源やバッテリーを用いることなく自己発電によって、広義の回転機(回転機/減速機連結体)60中の所定部位たる減速機30における発熱を検出し、それを発報することができる。これにより使用者は、広義の回転機(回転機/減速機連結体)60における異常発熱等を早期にかつ自動的に知ることができる。
【0017】
なお、図1の概念図を用いて説明した上記回転機用熱検出構造10では、熱電変換素子3が備えられる所定部位は減速機30であるが、本発明における「所定部位」はこれに限定されない。具体的には図2以降を用いて説明するが、要するに本発明回転機用熱検出構造10における発熱検出対象は、広義の回転機(回転機/減速機連結体)60中における発熱可能性のある部位である。そして、広義の回転機(回転機/減速機連結体)60中のいずれかの部位における発熱検知およびその発報を外部電源等を用いることなく行えるということが、本発明の特徴である。
【0018】
熱電変換素子3を備え付ける形態は、広義の回転機(回転機/減速機連結体)60内部への内蔵でも、また外部への取り付けでも、いずれでもよい。要するに、検出対象たる所定部位における発熱を良好に、可能な限り高感度で検知できる形態であればよい。これは、減速機30に備え付ける場合だけでなく、また後述する回転機20に備え付ける場合も同様である。
【0019】
図2は、本発明の回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子の具体的配置例を示す要部断面図(その1)である。図示するように本回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子23は、減速機230の筐体231に設置するものとすることができる。筐体231には設置容易であり、また、筐体231への設置であっても熱電変換素子23は減速機230内部の発熱を良好に検知できるからである。しかしながら熱電変換素子23は、可能な限り内部に、すなわち熱源付近に設置することが望ましい。
【0020】
図3は、本発明の回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子の具体的配置例を示す要部断面図(その2)である。図示するように本回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子33は、回転機320自体の発熱を検出する部位に設置するものとすることができる。回転機320自体の発熱検出のためには、回転機320内部や筐体を熱電変換素子33設置箇所としてもよいが、図示する配置例のように、回転機320と減速機330との接合部329に設置してもよい。熱電変換素子33は、可能な限り内部、すなわち熱源付近にあることが好望ましいが、回転機320内部には設置しにくいこともある。したがって、回転機320由来の発熱を検出する場合には、図示する配置例のように減速機330との接合部に設けることでよい。
【0021】
図4は、本発明の回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子の具体的配置例を示す要部断面図(その3)である。図示するように本回転機用熱検出構造に係る熱電変換素子は2箇所の所定部位に設置するものとすることができる。すなわち、回転機420出力側の減速機430に設置される熱電変換素子43r、および回転機420自体の発熱を検出する部位に設置される熱電変換素子43mである。それぞれの熱電変換素子43m、43rを備え付ける位置は、回転機420や減速機430の内部でも、あるいは外部でもよい。
【0022】
したがって図示するように、減速機430の発熱検出用の熱電変換素子43rは筐体431上に、また回転機420の発熱検出用の熱電変換素子43mは回転機420と減速機430との接合部429に、それぞれ設置する形態とすることもできる。各部位に備えられた熱電変換素子43m、43rと、これらにより発電される電気を用いて発熱を発報する発報手段とから構成される本回転機用熱検出構造によれば、回転機420または減速機430の少なくともいずれかで発熱した場合には少なくとも発報手段による発熱の発報がなされるが、発熱検知とその発報の形態は他にもあり得る。それについて説明する。
【0023】
図4-2は、図4に示した熱電変換素子配置例における回転機用熱検出構造の構成例を示す概念図である。図中(a)は、回転機420用の熱電変換素子43m、減速機430用の熱電変換素子43rともに、単一の発報手段45に接続する例である。本例では、回転機420または減速機430のいずれかにおいて発熱が検出された場合には、発報手段45による発報がなされる。つまり、発熱の位置に関わらず、回転機420および減速機430からなる全体の中のいずこかで発熱があった場合に、発報がなされる。もっとも、発報手段45が、熱電変換素子43m、43rそれぞれからの電力を区別して処理し、区別して発報する構成としてもよい。
【0024】
図中(b)は、回転機420用の熱電変換素子43m、減速機430用の熱電変換素子43rそれぞれに、発報手段45、45bが接続している例である。本例では、回転機420、減速機430それぞれにおいて発熱が検出された場合には、それぞれの発報手段45、45bによる発報が個別になされる。つまり、回転機420の発熱か、減速機430の発熱かを識別することが可能である。
【0025】
図中(c)は、回転機420用の熱電変換素子43m、減速機430用の熱電変換素子43rともに、制御手段44を介して単一の発報手段45cに接続する例である。制御手段44は、熱電変換素子43m等において熱から変換された電力に何らかの処理を施して、あるいは何らかの処理を伴わせて、その結果を発報手段45cへと伝達、出力する。たとえば、入力された電力の電源(熱電変換素子43mか、43rか)を識別処理し、それに基づき発報手段45cには発熱部位が回転機420、減速機430のいずれであるかを表示する発報をなさしめる、等である。
【0026】
図5は、制御手段を備えた本発明の回転機用熱検出構造の構成を示す概念図である。図4-2の(c)で示したように、制御手段54は熱電変換素子53において熱から変換された電力に何らかの処理を施して、あるいは何らかの処理を伴わせて、その結果を発報手段55へと伝達、出力するものであるが、特に、熱電変換素子53により得られる電圧が一定以上となった場合に発報手段55における発報信号が生成されるよう制御する手段とすることができる。これにより、たとえば、あらかじめ設定した温度(電圧)を上回ると、あるいは当該設定温度(電圧)以上となると、発報がなされるよう制御することが可能である。
【0027】
すなわち、熱電変換素子53では温度差増加により発生電圧も増加するため、たとえば回転機等の発熱の管理として一定の温度以上(一定の電圧以上)を検知したい場合などに、上述のような構成の制御手段54は有用である。具体的には、たとえばローパスフィルタ回路を用いて閾値を設ける構成により、容易に可能である。ローパスフィルタ回路は、抵抗、コンデンサ、オペアンプにより構成される。ローパスフィルタにより一定電圧以下をカットして伝わらないようにすることで、設定した電圧(=温度)以上の場合に発報手段55に伝達され、発報される。
【0028】
本発明回転機用熱検出構造の発報手段が用いる発報信号としては、LED等の点灯信号等の視覚的信号、ブザー音信号等の音声信号のいずれか、または双方を好適に用いることができる。かかる発報信号により、回転機等の発熱の情報が外部に通知される。
【0029】
図6は、本発明の回転機用熱検出構造に係る発報手段の構成例を示す概念図である。図中の(a)に示すように本回転機用熱検出構造に係る発報手段65は、熱電変換素子が発電した電気により発報信号を生成する信号生成部65pと、信号生成部65pにより生成された発報信号を無線または有線によって後記受信部65rあて送信する送信部65tと、送信部65tから発報信号を受信して出力する受信部65rとからなる構成とすることができる。
【0030】
かかる構成により本回転機用熱検出構造に係る発報手段65は、熱電変換素子が発電した電気により、信号生成部65pにおいて発報信号が生成され、生成された発報信号は送信部65tにより無線または有線によって受信部65rあて送信され、受信部65rは発報信号を受信してこれを出力する。なお、図中の(b)に示すように、送信部75tと受信部75rは離隔されていて、無線または有線により接続される構成とすることもできる。
【0031】
以上説明したいずれかの構成の回転機用熱検出構造10等を備えている回転機20等、回転機に設けられる減速機30等、減速機付き回転機(広義の回転機)60等もまた、本発明の範囲内であり、これらをまとめて本願では「回転構造」と称する。
【0032】
図7は、本発明の回転機の熱検出システムの構成例を示す概念図である。図に例示するように本回転機の熱検出システム890は、図6で説明した構成の発報手段85を有する回転機用熱検出構造810を備えた回転構造860における熱を検出するシステムであり、受信部85rが回転構造860から離れて設けられている構成である。
【0033】
なお、制御手段84は特に、上述した発報すべき温度(電圧)を設定する制御手段として、備えることが望ましい。また、本図に示す例は、発報手段85の送信部85tと受信部85rの間の接続を電気通信回線(インターネット)Wにより行っているシステム例であるが、本発明がこれに限定されるものではなく、ケーブル等の有線による接続や、他の無線形式・ネットワークによる構成であってもよい。また、回転構造860は、回転機、回転機に設けられる減速機、減速機付き回転機(広義の回転機)のいずれであっても該当する。
【0034】
かかる構成の本回転機の熱検出システム890によれば、回転構造860から離れた場所にある受信部85rにおいて、回転構造860での発熱が発報される。すなわち、回転構造860における発熱により熱電変換素子83において電気が発生し、発報手段85の信号生成部85pで生成された発報信号は、送信部85tから、離れて設けられている受信部85rに送信され、発報がなされる。本例のように電気通信回線(インターネット)Wを介してかかる作用がなされることで、回転構造860の発熱管理、保守管理、故障診断や予知をIoTにより行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の回転機用熱検出構造、回転構造、および回転機の熱検出システムによれば、回転機や減速機内部の発熱を検出し、これを外部電源やバッテリーを用いることなく自己発電によって表示、発報することができ、回転機等の異常発熱や故障およびその前兆を早期に、かつ自動的に知ることができる。したがって、モータを初めとする回転機や減速機の製造・使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0036】
3、23、33、43m、43r、53、83…熱電変換素子(ゼーベック素子)
5、45、45b、45c、55、65、75、85…発報手段
10、410、410b、410c、510、810…本回転機用熱検出構造
20、220、320、420、820…回転機
30、230、330、430、830…減速機
54、84…制御手段
60…広義の回転機(回転機/減速機連結体)
65p、75p、85p…信号生成部
65t、75t、85t…送信部
65r、75r、85r…受信部
231、431…減速機の筐体
237…減速機本体
238、338、438…軸
329、429…回転機と減速機の接合部
860…回転構造
890…回転機の熱検出システム
W…インターネット等の電気通信回線
図1
図2
図3
図4
図4-2】
図5
図6
図7