(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020524
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】清掃用シート
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20220125BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
A47L13/16 C
B32B5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124088
(22)【出願日】2020-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】520034174
【氏名又は名称】高野 朗
(72)【発明者】
【氏名】高野 朗
【テーマコード(参考)】
3B074
4F100
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AB01
3B074BB01
4F100AJ04A
4F100BA02
4F100DC15A
4F100DD01A
4F100DD19A
4F100EJ39
4F100GB71
4F100JC00B
(57)【要約】
【課題】環境面にも配慮しつつ、かつ使用時に破れが生じない強度を有し、かつ塵埃をより捕捉しやすく汚れも拭き取りやすいといった、使い勝手がよく塵埃の捕集能力も高い清掃用物品を提供する。
【解決手段】パルプ系繊維シート2と、天然分解性フィルム3とを有し、パルプ系繊維シート2と前記天然分解性フィルム3とを接合した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ系繊維シートと、天然分解性フィルムとを有し、前記パルプ系繊維シートと前記天然分解性フィルムとが接合されている清掃用シート。
【請求項2】
前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが複数の接合部で部分的に接合されている請求項1記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが、少なくとも清掃用シートの清掃方向と直交する方向に向かう複数の接合部によって部分的に接合されている請求項1記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが、エンボス加工によって接合されている請求項1記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記パルプ系繊維シートがパルプシートを粉砕した粉砕パルプを含む請求項1記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記パルプ系繊維シートがエアレイドシートである請求項1記載の清掃用シート。
【請求項7】
前記パルプ系繊維シートには凹凸面が形成されている請求項1記載の清掃用シート。
【請求項8】
前記凹凸面が、大きさの異なる凹凸よりなる請求項7記載の清掃用シート。
【請求項9】
前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが複数の接合部で部分的に接合され、
前記接合部と非接合部との間には凹凸が形成されている請求項7記載の清掃用シート。
【請求項10】
前記天然分解性フィルム面側に、刷毛部が形成されている請求項1から8のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項11】
前記刷毛部が複数設けられており、これら前記刷毛部は相互に独立している請求項9記載の清掃用シート。
【請求項12】
前記天然分解性フィルムは、第1の天然分解性フィルムと第2の天然分解性フィルムとからなり、前記第1の天然分解性フィルムが前記パルプ系繊維シートの表面又は裏面のいずれか一方の面に接合されており、前記第2の天然分解性フィルムが前記パルプ系繊維シートの表面又は裏面のいずれか他方の面に接合されており、
前記刷毛部は、前記第1の天然分解性フィルム面側に形成されている請求項8又は9記載の清掃用シート。
【請求項13】
前記刷毛部は、前記第2の天然分解性フィルム面側にも形成されている請求項10記載の清掃用シート。
【請求項14】
前記パルプ系繊維シートは縮織状部を有しており、
前記天然分解性フィルムは、前記縮織状部を覆うように配置されて前記パルプ系繊維シートに接合される請求項1記載の清掃用シート。
【請求項15】
前記天然分解性フィルムの幅は、前記パルプ系繊維シートの幅よりも小さく形成されている請求項1記載の清掃用シート。
【請求項16】
前記パルプ系繊維シートは、前記縮織状部において前記天然分解性フィルムと接合されている請求項14記載の清掃用シート。
【請求項17】
パルプ系繊維シートと、前記パルプ系繊維シートと接合された天然分解性の繊維材料を含む刷毛部を有する清掃用シート。
【請求項18】
前記刷毛部は、高融点の天然分解性樹脂から形成された繊維材料を前記パルプ系繊維シートに接合してなる請求項17記載の清掃用シート。
【請求項19】
前記刷毛部は、前記高融点の天然分解性樹脂と低融点の天然分解性樹脂により形成される繊維材料を前記パルプ系繊維シートを接合してなる請求項17記載の清掃用シート。
【請求項20】
前記刷毛部は、芯部と鞘部とを有する芯鞘構造を有する繊維材料で形成されており、前記芯部を構成する繊維の融点と前記鞘部を構成する繊維の融点とが異なるように構成されている請求項17記載の清掃用シート。
【請求項21】
前記芯部を構成する繊維材料は、前記鞘部を構成する繊維材料よりも融点が高い材料で形成されている請求項17記載の清掃用シート。
【請求項22】
前記パルプ系繊維シートがパルプシートを粉砕した粉砕パルプを含む請求項17記載の清掃用シート。
【請求項23】
前記パルプ系繊維シートがエアレイドシートである請求項17記載の清掃用シート。
【請求項24】
前記凹凸面が、大きさの異なる凹凸よりなる請求項17記載の清掃用シート。
【請求項25】
前記刷毛部が複数設けられており、これら前記刷毛部は相互に独立している請求項17記載の清掃用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
清掃用シートは、床面やテーブル面といった被清掃面の清掃をするためのものとして、従来から広く利用されている。この清掃用シートは、一般的には、清掃具に形成されているヘッド部に取り付けて使用されることが多く、清掃用シートに形成されている清掃面で被清掃面を拭くことにより、被清掃面に落ちている毛髪や綿埃、塵と言った異物を捕捉したり、被清掃面に付着した汚れを拭き取って、被清掃面を異物や汚れのないきれいな状態にすることができる。
【0003】
このような清掃用シートは従来から種々検討されてきている。たとえば、下記に示す特許文献1においては、帯電性の短繊維を絡合した不織布をポリオレフィンフィルムの両面又は片面に熱融着してなる積層シートに構成した使い捨て掃除用積層シートが開示されている。また、特許文献2においては、熱捲縮性の疎水性合成繊維からなる第1のウエブと親水性繊維からなる第2のウエブを重ね合わせて積層体をつくり、この積層体に高圧水を噴射して第1のウエブを構成する繊維と第2のウエブを構成する繊維とを交絡させて形成された不織布を用いるワイパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-261899号公報
【特許文献2】特開平08-060509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、清掃用シートは、被清掃面の異物や汚れを除去するための拭き取りに使用される。そのため、被清掃面を清掃した後は汚れが清掃面に付着したり、異物が清掃用シート内に捕捉される。このような状態の清掃用シートは衛生的ではないため、通常は一度使用した清掃用シートは再利用せずに廃棄するというように、使い捨てとして用いるのが前提で利用されている。
【0006】
しかし、従来から存在する清掃用シートのように使い捨てにした場合には、使用済みの清掃用シートが大量に発生することになる。しかしながら、上記した特許文献1,2に記載されている掃除用積層シート等は、合成繊維を用いて形成されているために環境への負荷が大きくなりがちであり、しかも使い捨て製品として廃棄される量が増加すると、その環境負荷はさらに大きくなる。一方で、近年は環境問題について触れられることが増加しており、環境面にも配慮することが重要視される傾向にある。したがって、清掃用物品においても、環境面に配慮することが強く望まれている。
【0007】
また、上記した特許文献1,2に記載されている掃除用積層シート等は水流で交絡させているため不織布で形成されたシートを全体的に嵩高にすることが難しく、クッション性が乏しくなりがちであるという問題もあった。そのため、清掃時に清掃面が被清掃面の形状を追随できなかったために塵埃の捕集能力が低く、異物を捕捉することができなかったり、汚れを落としきれなかったりするおそれも生じていた。
【0008】
このように、環境面に配慮した清掃用物品を製造する場合には、天然分解性の材料を用いれば、土中や水中などで分解されるので、環境への負担も軽減することができる。しかしながら、天然分解性を有する材料からなるシートは、従来から用いられている合成樹脂等の材料からなるシートに比べて強度が弱く、製造した清掃用シートも清掃具への取付時に破れてしまったり、清掃中でも力のかけ具合によっては清掃用シートに過剰な力が加わり、該清掃用シートに破れが生じやすいという問題があった。特に、エアレイド法により得られるシートは、嵩高でクッション性、集塵性に優れる反面、水交絡不織布のシートに比べて強度が低く、清掃用シートとしての利用には問題があった。
【0009】
本発明は、上記した問題点について鑑みてなされたものであり、環境面にも配慮しつつ、かつ使用時に破れが生じない強度を有し、かつ塵埃をより捕捉しやすく汚れも拭き取りやすいといった、使い勝手がよく塵埃の捕集能力も高い清掃用物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)パルプ系繊維シートと、天然分解性フィルムとを有し、前記パルプ系繊維シートと前記天然分解性フィルムとが接合されている清掃用シート、
(2)前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが複数の接合部で部分的に接合されている上記(1)記載の清掃用シート、
(3)前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが、少なくとも清掃用シートの清掃方向と直交する方向に向かう複数の接合部によって部分的に接合されている上記(1)記載の清掃用シート、
(4)前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが、エンボス加工によって接合されている上記(1)記載の清掃用シート、
(5)前記パルプ系繊維シートがパルプシートを粉砕した粉砕パルプを含む上記(1)記載の清掃用シート、
(6)前記パルプ系繊維シートがエアレイドシートである上記(1)記載の清掃用シート、
(7)前記パルプ系繊維シートには凹凸面が形成されている上記(1)記載の清掃用シート、
(8)前記凹凸面が、大きさの異なる凹凸よりなる上記(7)記載の清掃用シート、
(9)前記パルプ系繊維シートと天然分解性フィルムとが複数の接合部で部分的に接合され、前記接合部と非接合部との間には凹凸が形成されている上記(7)記載の清掃用シート、
(10)前記天然分解性フィルム面側に、刷毛部が形成されている上記(1)から(8)のいずれかに記載の清掃用シート、
(11)前記刷毛部が複数設けられており、これら前記刷毛部は相互に独立している上記(9)記載の清掃用シート、
(12)前記天然分解性フィルムは、第1の天然分解性フィルムと第2の天然分解性フィルムとからなり、前記第1の天然分解性フィルムが前記パルプ系繊維シートの表面又は裏面のいずれか一方の面に接合されており、前記第2の天然分解性フィルムが前記パルプ系繊維シートの表面又は裏面のいずれか他方の面に接合されており、前記刷毛部は、前記第1の天然分解性フィルム面側に形成されている上記(8)又は(9)記載の清掃用シート、
(13)前記刷毛部は、前記第2の天然分解性フィルム面側にも形成されている上記(10)記載の清掃用シート、
(14)前記パルプ系繊維シートは縮織状部を有しており、前記天然分解性フィルムは、前記縮織状部を覆うように配置されて前記パルプ系繊維シートに接合される上記(1)記載の清掃用シート、
(15)前記天然分解性フィルムの幅は、前記パルプ系繊維シートの幅よりも小さく形成されている上記(1)記載の清掃用シート、
(16)前記パルプ系繊維シートは、前記縮織状部において前記天然分解性フィルムと接合されている上記(14)記載の清掃用シート、
(17)パルプ系繊維シートと、前記パルプ系繊維シートと接合された天然分解性の繊維材料を含む刷毛部を有する清掃用シート。
(18)前記刷毛部は、高融点の天然分解性樹脂から形成された繊維材料を前記パルプ系繊維シートに接合してなる上記(17)記載の清掃用シート、
(19)前記刷毛部は、前記高融点の天然分解性樹脂と低融点の天然分解性樹脂により形成される繊維材料を前記パルプ系繊維シートを接合してなる上記(17)記載の清掃用シート、
(20)前記刷毛部は、芯部と鞘部とを有する芯鞘構造を有する繊維材料で形成されており、前記芯部を構成する繊維の融点と前記鞘部を構成する繊維の融点とが異なるように構成されている上記(17)記載の清掃用シート、
(21)前記芯部を構成する繊維材料は、前記鞘部を構成する繊維材料よりも融点が高い材料で形成されている上記(17)記載の清掃用シート、
(22)前記パルプ系繊維シートがパルプシートを粉砕した粉砕パルプを含む上記(17)記載の清掃用シート、
(23)前記パルプ系繊維シートがエアレイドシートである上記(17)記載の清掃用シート、
(24)前記凹凸面が、大きさの異なる凹凸よりなる上記(17)記載の清掃用シート、
(25)前記刷毛部が複数設けられており、これら前記刷毛部は相互に独立している上記(17)記載の清掃用シートを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る清掃用シートによれば、パルプ系繊維シートや天然分解性フィルム等の天然分解性材料を使用していることから環境負荷も大きく軽減でき、環境面にも配慮した清掃用シートを提供することができる。また、清掃用シート全体の強度を向上させることができ、特にパルプ系繊維シートがエアレイドシートのように嵩高なシートとすることができる。また、特に強度が低いパルプ系繊維シートであっても清掃用シート全体の強度が向上し、シートを清掃具に取付る際や清掃時に清掃用シートに破れが生じたりすることを防止することができる。さらに、天然分解性フィルムを有することにより、清掃時の摩擦によって帯電しやすくなり、静電気による作用でより効率良く集塵して清掃もスムーズに行うことができる。また、製造コスト等も低く抑えることができ、環境にも優しくかつ優れた集塵性を有する清掃用シートを安価に効率良く提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る清掃用シートの第1の実施の形態に係る断面図である。
【
図2】清掃用シートを清掃具に取り付けた状態を説明する説明図である。
【
図3】清掃用シートの第2の実施の形態に係る断面図である。
【
図4】清掃用シートの第3の実施の形態に係る断面図である。
【
図5】清掃用シートの第4の実施の形態に係る断面図である。
【
図6】清掃用シートの第5の実施の形態に係る断面図である。
【
図7】清掃用シートの第6の実施の形態に係る断面図である。
【
図8】第6の実施の形態に係る清掃用シートにおいて、パルプ系繊維シートと刷毛部との接合態様を説明するための説明図である。
【
図9】刷毛部を構成する繊維材料の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る清掃用シートの構成について詳細に説明する。なお、本明細書における「天然分解性」とは、空中、土中、水中のいずれにおいても、微生物、紫外線、気候の変化等によって分解されて、環境負荷を少なくすることができる性質をいう。また、本発明に係る清掃用シートは、乾式の清掃用シートとしても、湿式の清掃用シートとしても用いることができ、湿式の清掃用シートとして用いる場合には任意の薬剤を含浸させて用いられる。また、清掃用シートで清掃される対象は限定されるものではない。
なお、本明細書においては、清掃用シートは、清掃具101(
図2参照)に取り付けられた場合には、
図2中に示している清掃具101が清掃するときに移動し被清掃面を拭き取る拭き取り方向(清掃方向)をX方向とし、
図1においてX方向に直交し紙面の奥側に向かう方向をY方向とする。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、本発明に係る清掃用シートの概略について説明する。この清掃用シート1は、パルプ系繊維シート2と、天然分解性フィルム3とを有し、このパルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とが接合されて清掃用シート1が形成されている。
【0015】
(パルプ系繊維シート)
パルプ系繊維シートは、パルプ又はパルプを主原料とする材料からなり天然分解性を有する繊維シートである。パルプ系繊維シート2における、パルプの含有割合は30%以上が好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。パルプの配合をこのようにすることで、パルプ系繊維シート2の全体的な柔軟性を向上させたり、製造コスト及び生産効率をより向上させることが可能になる。パルプ系繊維シート2を構成するパルプとしては、例えば、木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、トイレットペーパー材料等が挙げられる。また、木材パルプとしては、例えば、赤松、エゾ松、トド松、ダグラスファー、ヘムロック、スプルースなどの針葉樹から得られる針葉樹晒クラフトパルプ、ブナ、ナラ、カバ、ユーカリ、オーク、アルダーなどの広葉樹から得られる広葉樹晒クラフトパルプをそれぞれ別個に用いることもでき、またこれら針葉樹晒クラフトパルプと広葉樹晒クラフトパルプとを所定の割合で配合してなるパルプを用いることもできる。ただし、針葉樹晒クラフトパルプからなるパルプを用いることが製造上の観点からは好ましい。また、パルプ系繊維シート2を構成するパルプ以外の原料としては、例えば、ケナフ、竹繊維、藁、綿、繭糸、サトウキビの繊維等や、天然分解性樹脂(グリーンプラスチック)の繊維や、バイオマスプラスチック繊維等の天然分解性樹脂等が挙げられる。尚、パルプ系繊維シート2の天然分解性を阻害しない範囲であれば、少量の合成繊維等を含有していても良い。パルプ系繊維シート2は、パルプシートを粉砕機等によって細かく粉砕した粉砕パルプを含むものが好ましい。
【0016】
パルプ系繊維シート2は、粉砕パルプ又は粉砕パルプを主原料とするパルプ系繊維を、エアレイド製法によりシート状としたエアレイドシートが好ましい。エアレイド製法とは、パルプ系繊維を空気流によって積繊させた積繊体にエンボス等の種々の加工を行って繊維シートを製造する方法である。粉砕パルプを含むパルプ系繊維でエアレイド製法によりパルプ系繊維シート2を構成すると、それぞれの繊維同士の間に多数の空間が形成され易くパルプ系繊維シート2をより嵩高にすることができ、パルプ系繊維相互を結合させるためのバインダーや架橋剤の浸透性を向上させることもできる。またこのように、粉砕パルプからエアレイド製法でパルプ系繊維シート2を形成することにより、積繊された繊維同士の間の空間の存在により各繊維が動く自由度を大きくすることができる。これにより、パルプ系繊維シート2の柔軟性を向上させることができ、かつ生産効率を向上させることもできる。なお、パルプ系繊維シート2は、エアレイド製法とは異なる方法で製造することもできるが、パルプ系繊維シート2は、嵩高性を発揮できる乾式法により製造することが好ましく、特にエアレイド法により製造することが好ましい。パルプ系繊維シート2におけるパルプ系繊維は、バインダーあるいはバインダーと架橋剤とにより相互に結合されている。
【0017】
(バインダー)
バインダーは、パルプ系繊維を結着するためのものである。このバインダーとしては、天然分解性のものであって、所定の接着力を有しており、かつ上記した素材を所定の強度で接合できるものが好ましい。バインダーとしては、例えば多糖誘導体、天然多糖類、高分子等、又はタンパク質、アルギン酸、キトサン等が挙げられる。多糖誘導体としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンプン又はその塩、デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。また、天然多糖類としては、グアーガム、トラントガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。さらに、高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルアルコール誘導体、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体、その塩等が挙げられ、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。これらのバインダーは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合したりして併用してもよい。バインダーとしては、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、エステル化デンプン等のデンプン系樹脂、酢酸セルロース、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、キトサン/セルロース/デンプン、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等の天然分解性樹脂や天然分解性樹脂混合物;天然分解性バイオマス樹脂等の天然分解性のものが好ましい。これらのうち、特にカルボキシルメチルセルロース(CMC)及びポリビニルアルコール(PVA)が望ましい。
【0018】
なお、CMCにはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の種類がある。これらのCMCのうち、アンモニウムCMCは熱を加えると架橋をする、いわゆる自己架橋する性質を有する。そのため、バインダーとしてアンモニウムCMCを用いる場合には、他の種類のCMCをバインダーとして使用する場合と比較して、架橋剤の含浸量を少なくするか、又は架橋剤を含浸させなくてもよい。また、PVAの中にも、架橋剤が必要なものと架橋剤が不要なものとが存在するので、バインダーとして架橋剤が不要なPVAを使用する場合には、架橋剤を含浸させなくてもよい。
【0019】
(架橋剤)
架橋剤は、バインダーと架橋反応を起こしてバインダーを架橋構造とする薬剤である。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のようなカルボキシル基を有するバインダーを用いる場合には、価数が2価以上の多価金属イオンを用いることが望ましい。この多価金属イオンとしては、例えばマグネシウム、カルシウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、銀、スズ等の金属イオンが挙げられる。また、多価金属イオンを供給する化合物としては、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、カオリン、ステアリン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムカリウム(別名:ミョウバン)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミニウムグリシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸亜鉛、塩化第二銅、塩化スズ、硝酸銀等の一種単独又は二種以上の任意に組み合わせて使用してよい。架橋剤としては、特にミョウバン及び硫酸銅を用いることが好ましい。ミョウバンとしては、ナトリウムアルミニウムミョウバン、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムクロムミョウバン、カリウムクロムミョウバン、アンモニウムクロムミョウバン、ナトリウム鉄ミョウバン、カリウム鉄ミョウバン、アンモニウム鉄ミョウバンなどがある。ミョウバンとしては無色なものが好ましいので、ナトリウムアルミニウムミョウバン、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバンを用いることが好ましい。例えば、ミョウバンとしてアンモニウムミョウバンを用いる際には、アンモニウムミョウバン溶液の濃度は1%~20%程度が好ましく、結晶化しないように、アンモニウムミョウバン溶液の温度は、10℃から60℃を保つようにすることが好ましい。
【0020】
(バインダー、架橋剤の供給)
パルプ系繊維を結合するためのバインダーや架橋剤の供給法としては、エアレイド法等により形成したパルプ系繊維の積繊体に、例えばスプレーによる噴霧、ロールコーターや刷毛等による塗布により供給する方法、積繊体をバインダーや架橋剤中に浸漬する方法等が挙げられる。スプレーとしては、一流体式スプレー、二流体式スプレーがあり、架橋剤の噴霧には一流体式スプレー、二流体式スプレーを用いることができるが、粘度の高いCMC等のバインダーを噴霧する場合には一流体式スプレーであることが好ましい。一流体式スプレーを用いるとバインダーや架橋剤に直接圧力を加えて噴射させることができるので、バインダーや架橋剤の飛散によるロスが少なく、添着率を向上させることができる。
【0021】
パルプ系繊維の積繊体に、バインダーあるいはバインダーと架橋剤とを含浸させた状態で加熱処理が行われている。このように加熱処理を行うことによって、バインダーを架橋させてパルプ系繊維同士を結合させることができ、また、結合強度を大きく向上させることができる。また、この加熱は直接加熱、間接加熱のいずれの方法で行っても良いが、循環する熱風により加熱することが好ましい。
【0022】
また、原紙シートは、加熱処理が行われた状態、又は柔軟剤を含浸させた状態のものを洗浄すると、柔らかさをより得ることができる。原紙シートを洗浄するに当たっては、水等の液体を使って洗浄することが好ましい。洗浄する方法としては、例えば洗浄液をスプレーやシャワーによって塗布して湿潤させる方法や、また刷毛などを用いて順次塗布する方法など、原紙シートを湿潤させることができる方法であればどのような方法でもよい。また、洗浄するのは、架橋剤を塗布した直後であってもよい。
【0023】
パルプ系繊維シート2は、バインダーを含浸させた状態で更に架橋剤を含浸させ、その後に加熱処理を行うことで、柔らかさと強度とを併せ持つパルプ系繊維シート2を得ることができる。
【0024】
なお、このパルプ系繊維シート2は、加熱処理によりパルプ系繊維を結合させた後、柔軟剤の塗布・含浸化処理を行うことが好ましい。柔軟剤としては、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、流動パラフィン等が挙げられる。柔軟剤を用いて柔軟化処理を行うことで、パルプ系繊維シート2の硬さを柔らかくすることができ、強さと柔らかさを併せ持つパルプ系繊維シート2を得ることが可能になる。なお、柔軟剤を付加する方法は従来から公知の方法を任意に選択して適用してよい。例えば柔軟剤(例えばグリセリン)をスプレーにより塗布する態様であってもよいし、別の態様であっても良い。
【0025】
(天然分解性フィルム)
清掃用シート1における天然分解性フィルム3は、パルプ系繊維シート2に天然分解性樹脂のフィルムを貼着したり、天然分解性樹脂のエマルジョンや溶液を塗工して硬化させる等により形成される。天然分解性樹脂としては、天然樹脂、天然分解性プラスチックやバイオマスプラスチック等が挙げられる。天然分解性プラスチック、バイオマスプラスチックとしては、例えばポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、エステル化デンプン等のデンプン系樹脂、酢酸セルロース、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、キトサン/セルロース/デンプン、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等の天然分解性樹脂や天然分解性樹脂混合物が挙げられる。
【0026】
天然分解性フィルム3は、単層フィルムを貼着しても複層フィルムを貼着しても良く、複数のフィルムを順次貼着しても良い。また一種類の塗工剤を塗工して形成するのみならず、2種類以上の塗工剤を重ね塗工して形成しても良い。尚、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等のテレフタレートを含むものでも、40%程度であれば天然分解性を有する。
【0027】
パルプ系繊維シート2に、天然分解性フィルムを貼着して清掃用シート1を形成する場合、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とは、複数の接合部で部分的に接合されていても良い。パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とを複数の接合部で部分的に接合する場合、少なくともパルプ系繊維シート側が凹凸のエンボスロールによって、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルムとを押圧して両者を接合し、少なくともパルプ系繊維シート2の表面側に凹凸が形成されるようにすると、パルプ系繊維シート2の凹凸部(特に凹部)にゴミが捕集されるため集塵性が向上する。大きさの異なる凹凸部(特に凹部の大きさの異なる)をパルプ系繊維シート2の表面に形成すると、異なる大きさのゴミに対する集塵性が向上する。なお、この天然分解性フィルム3は、パルプ系繊維シート2に対して全体に積層しても良いし、又はパルプ系繊維シート2に対して部分的に積層してもよい。また、天然分解性フィルム3を部分的に設ける場合には、複数の天然分解性フィルム3をパルプ系繊維シート2に対して積層してもよく、またこれら複数の天然分解性フィルムは、パルプ系繊維シートに対して表面又は裏面のどちらに積層されていてもよい。
【0028】
(第1の実施の形態)
次に、本発明に係る清掃用シートの第1の実施の形態について、
図1及び
図2に基づいて説明する。まず、
図2に基づいて、本発明に係る清掃用シート1を取り付けた清掃具101の概略構成を説明する。この清掃具101は、ヘッド部102、柄103及びヘッド部102に柄103を取付固定する固定具104を備えている。この清掃具101は、ヘッド部102の外周面に清掃用シート1を巻き付けるとともに端部をヘッド部102に取付固定する。清掃用シート1をヘッド部102に取り付ける構造は従来から公知の方法を任意に選択して適用してよい。例えば、ヘッド部102の所定箇所に、清掃用シート1を取り付ける取付部として、溝を予め形成しておき、この溝に清掃用シート1の端部をくいこませることにより取り付ける構成でもよいし、これ以外の方法でもよい。
【0029】
図2に示すように、清掃用シート1のパルプ系繊維シート2の表面側を清掃面1aとしている。この清掃面1aは、ヘッド部102へ清掃用シート1を取付固定したときに、被清掃面である床面Fと対峙する面である。この清掃面1aは、清掃時には床面Fと接触しており、
図2中のX方向へ清掃具101が移動することによって、床面Fと接触している清掃面1aが該床面Fの汚れを取り除き、かつ床面F上に存在している各種の異物を捕捉するようになっている。パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とを、凹凸エンボスロール等で押圧して、複数の接合部で部分的に接合する場合、清掃具101の移動方向(
図2のX方向)と直交する方向(
図2のY方向)に向かう接合部が形成されるように接合することが好ましい。このような部分的な複数の接合部を形成することで、清掃時に清掃用シート1のパルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3との接合が破壊されるのを防止でき、強度の低いエアレイドシートよりなるパルプ系繊維シート2と、天然分解性フィルム3とを接合した清掃用シート1の場合でも、清掃時の清掃用シート1にかかる負荷に対し、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3との間の接合強度を保つことができ、シート1が破損したりする虞を防止することができる。なお、
図2に示すY方向に移動させて清掃する清掃具101の場合には、
図2中のY方向と直交する、X方向と平行な方向にも接合部を形成してもよい。
【0030】
図1に示すように、清掃用シート1は、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3と接合部4において接合されて形成されている。パルプ系繊維シート2は表面2a及び裏面2bを有している。また、天然分解性フィルム3は表面3a及び裏面3bを有している。清掃用シート1は、パルプ系繊維シート2の表面2aと天然分解性フィルム3の裏面3bとが接合されている。
【0031】
また、
図1において拡大して示すように、天然分解性フィルム2の裏面2bは凹凸が形成された凹凸面となっている。この凹凸は従来から公知の方法により任意に形成することができるが、例えばエンボス加工によりこの凹凸を形成することが好ましい。またエンボス加工をする際には、パルプ系繊維シート2に熱を加えて行う熱エンボス加工を行うことがより好ましい。
【0032】
さらに、天然分解性フィルム3の表面は凹凸が形成された凹凸面となっている。この凹凸は従来から公知の方法により任意に形成することができるが、例えばエンボス加工によりこの凹凸を形成することが好ましい。また、エンボス加工をする際は、天然分解性フィルム3に熱を加えて行う熱エンボス加工を行うことがより好ましい。パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とが熱を加えて接合することにより、それぞれの繊維が融着するので、より強固に接合することができる。なお、この接合部4は清掃用シート1におけるパルプ系繊維シート2の表面2a及び天然分解性フィルム3の裏面3bの全体に亘って形成しても良いし、一部分のみに形成しても良い。また、接合部4を部分的に配置する場合、パルプ系繊維シート2の表面2a及び天然分解性フィルム3の裏面3bのどの位置に配置するかは任意に決定してよい。
【0033】
また、清掃用シート1において、これらパルプ系繊維シート2においてエンボス加工が行われる場所と天然分解性フィルム3においてエンボス加工が行われる場所は任意に決定してよく、さらには清掃用シート1におけるパルプ系繊維シート2の裏面2a全体や天然分解性フィルム3の表面3a全体に亘ってエンボス加工を行ってもよいし、部分的にエンボス加工を行ってもよい。
【0034】
接合部4が部分的に形成される場合であって該接合部4が複数形成されるときは、互いに隣接する接合部4の間には、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とが接合されていない非接合部5が形成されている。この非接合部5は、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3との間に所定の空間が形成されていても良いし、空間が形成されておらず、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とが接触し合っていてもよい。この非接合部5は、清掃用シート1に対してX方向又はY方向に力が加わった時に、パルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とが独立して伸縮したりすることができるようにしたものである。
【0035】
なお、
図1においては図示していないが、接合部4と非接合部5との間には、凹凸が形成されていることが好ましい。このように、接合部4と非接合部5との間に凹凸があると、清掃時などのように清掃用シート1が清掃具101に取付固定されて動くときなどにパルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3との間に位置ずれが生じるのを防止することができる。そのため、清掃時に異物や汚れを除去する清掃能力が使用の仕方によって著しく軽減することを防止でき、当初の清掃能力を常に維持することができる。
【0036】
(第1の実施の形態に係る清掃用シートの作用効果)
次に、本実施の形態に係る清掃用シートの作用効果について説明する。この清掃用シートは、接合部4においてパルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3とを接合している。これにより、強度が弱く引っ張る方向に力が加わった場合に破れやすかったパルプ系繊維シート2の強度が接合部4を介して天然分解性フィルム3により補強される。したがって、環境面にも配慮した天然分解性の清掃用シートにおいても、十分な強度を確保して清掃具への取り付けを行うことができるのみならず、清掃時においても清掃用シート1の清掃面を被清掃面である床面Fに接触させて拭き取っているときにも、摩擦力をはじめとする各種の抵抗力を受けて破れるといったことを確実に防止して、被清掃面の清掃をストレスなく快適に行うことができる。
【0037】
また、本実施の形態に係る清掃用シート1は、接合部4および非接合部5が形成されており、接合部4と非接合部5が交互に配置されている。これにより、接合部4においてはパルプ系繊維シート2と天然分解性フィルム3との接合強度を大きく向上させ、清掃用シート1の全体的な強度を向上させることができ、かつ非接合部5ではパルプ系繊維シート2が持つ柔軟性を維持することができる。そのため、本実施の形態に係る清掃用シート1では、全体的な強度と柔軟性を併せ持ち、より拭き取り清掃をしやすくすることができる。
【0038】
さらに、本実施の形態に係る清掃用シート1は、パルプ系繊維シート2にパルプシートを粉砕して形成したエアレイドシートを用いるので、該パルプ系繊維シート2を嵩高にしやすくすることができる。これにより、清掃用シート1を全体的に嵩高にすることができ、クッション性も向上させることができる。また、クッション性を向上させることにより、被清掃面である床面Fに若干の起伏や凹凸があったとしても、その起伏や凹凸等に対して柔軟に変形し、塵埃や異物などを確実に捕捉することができ、捕捉能力を大きく向上させることもできる。
【0039】
また、本実施の形態に係る清掃用シート1においては、パルプ系繊維シート2を構成するパルプ繊維は、清掃時に被清掃面とこすれ合うと摩擦が生じ、これによりパルプ繊維及び天然分解性フィルム3が静電気により帯電する。そのため、清掃面で掻き取った異物や塵埃を静電気によってより天然分解性フィルム3の裏面3bに近づく方向まで浸入させることができ、塵埃の捕捉性能をより向上させることができる。
【0040】
(第2の実施の形態に係る清掃用シート)
次に、本発明に係る清掃用シートの第2の実施の形態について、
図3に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る清掃用シートの構成等について、先の実施の形態においてすでに説明した箇所については説明を省略する。
【0041】
本実施の形態に係る清掃用シート21は、パルプ系繊維シートが第1のパルプ系繊維シート23及び第2のパルプ系繊維シート24とからなり、天然分解性フィルム25の表面25a側には第1のパルプ系繊維シート23が積層され、天然分解性フィルム25の裏面25b側には第2のパルプ系繊維シート24が積層されている。維シート22に薬剤が移行して、第1のパルプ系繊維シート22側での清掃効果を持続させることができる。
【0042】
(第3の実施の形態に係る清掃用シート)
次に、本発明に係る清掃用シートの第3の実施の形態について、
図4に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る清掃用シートの構成等について、先の実施の形態ですでに説明した箇所については、説明を省略する。
【0043】
本実施の形態に係る清掃用シート31は、パルプ繊維シート32と天然分解性フィルム33が接合されており、かつ天然分解性フィルム33の表面33aに刷毛部34が接合により形成されている。刷毛部34は、天然分解性を有する繊維材料を含む繊維材料により構成されている。この繊維材料としては、例えば、綿、毛等の天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアクリル等の合成繊維や、天然分解性樹脂としては天然樹脂、天然分解性プラスチックやバイオマスプラスチック等が挙げられる。天然分解性プラスチック、バイオマスプラスチックとしては、例えばポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、エステル化デンプン等のデンプン系樹脂、酢酸セルロース、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、キトサン/セルロース/デンプン、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等の天然分解性樹脂や天然分解性樹脂混合物が挙げられる。
【0044】
また、刷毛部34を構成する繊維材料としては、芯鞘型繊維、海島型繊維、サイドバイサイド型繊維等の複合繊維等が用いられるが、繊維相互を部分的に熱融着して結合する場合には、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維が、鞘を構成するポリエチレンの優れた熱融着性と、芯を構成するポリプロピレンの腰の強さとを併せ持つため好ましい。また、この繊維材料は、材質、太さ、色等が同一の繊維のみで構成されていても、これらの異なる2種類以上の繊維で構成されていてもよい。
【0045】
また、天然分解性フィルム33と刷毛部34との接合は、ヒートシールによる接合や超音波融着による接合、接着剤による接着、高周波による接合などといった各種の方法などで行われる。接着剤としては、例えば二液効果型接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤、熱硬化樹脂系接着剤、瞬間接着型接着剤、ホットメルト型接着剤等を用いることができるが、接着剤を用いる場合には、加熱・冷却による迅速な接着作業が可能である観点からはホットメルト型接着剤が好ましく、また繊維への浸透性が良く、深い接着層を得られる観点からは溶液型又はエマルジョン型の熱可塑性樹脂系接着剤又はエラストマー系接着剤が好ましい。なお、上記した接合方法においては、接合のしやすさ等の観点からはヒートシールによる接合を用いることが好ましい。
【0046】
本実施の形態に係る清掃用シート31によれば、上記した効果に加えて、刷毛部34側と、パルプ系繊維シート32側の両方を清掃面として利用でき、種々の大きさ、種類のゴミの清掃を行うことができる。また、刷毛部34側が清掃具のヘッド102(
図2参照)側となるように取り付けた場合、パルプ系繊維シート32の表面には、エンボス等によって形成された凹凸に加えて、刷毛部34による凹凸形状が形成され、異なる大きさのゴミに対応可能となる。なお、本実施の形態では刷毛部34が複数個配置されている例を示したが、刷毛部34を配置する個数は限定されるものではない。また、刷毛部34を構成する材料は天然分解性を有する材料であれば任意に選択して用いてよい。さらには、刷毛部34の大きさや形状についても、特に限定はされない。
【0047】
(第4の実施の形態に係る清掃用シート)
次に、本発明に係る清掃用シートの第4の実施の形態について、
図5に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る清掃用シートの構成等について、先の実施の形態ですでに説明した箇所については、その説明を省略する。
【0048】
本実施の形態に係る清掃用シート41は、天然分解性フィルムが第1の天然分解性フィルム43と第2の天然分解性フィルム44とからなる。また、第1の天然分解性フィルム43の表面43aに第1刷毛部45が接合されており、第2の天然分解性フィルム44の裏面44bに第2刷毛部46が接合されている。また、これら第1天然分解性フィルム43と第2天然分解性フィルム44の間には、パルプ系繊維シート47が積層されており、パルプ系繊維シート47と第1の天然分解性フィルム42との間、及びパルプ系繊維シート47と第2の天然分解性フィルム43との間には、接合部及び非接合部が形成されている。本実施の形態に係る清掃用シート41によっても、先に説明した上記効果に加えて、第1刷毛部45又は第2刷毛部46のいずれか一方で捕捉した異物が第1刷毛部46又は第2刷毛部45のいずれか他方に突き抜けて、他方の刷毛部を使用前に汚すといったことも確実に解消することができる。
【0049】
(第5の実施の形態に係る清掃用シート)
次に、本発明に係る清掃用シートの第5の実施の形態について、
図6に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る清掃用シートの構成等について、先の実施の形態ですでに説明した箇所については、その説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、本実施の形態に係る清掃用シート51は、パルプ系繊維シート52の上に天然分解性フィルム53が接合されており、この天然分解性フィルム53の上に刷毛部54が接合されている。
【0051】
パルプ系繊維シート52は、清掃用シート51の基材となるシート状の部材である。このパルプ系繊維シート52は、X方向における両側の端部55a,55bが平面状に形成されるとともに、端部55a,55bにおいては、上記した天然分解性フィルム53と接合する接合部55c,55dが形成されている。また、これらX方向における両側の端部55a,55bの間に縮織状部56が形成されている。縮織状部56は、下端部57と上端部58とを有する波型形状に形成されており、パルプ系繊維シート52単体としては伸縮性(縮織性)を有するように形成されている。ここで、「縮織状」とは、全体的にシボや皺を生じさせながらパルプ系繊維シート52を縮ませることを意味する概念である。この縮織状を有する態様としては、
図6に示しているような波形状のほか、パルプ系繊維シート52の繊維密度が密となる部分と疎となる部分を有するような、繊維密度に粗密を有する態様であってもよい。または、これら以外の態様であってもよい。
特に、本実施の形態のように縮織状部56の態様を波形状にすると、ゴミや塵といった各種の塵埃を捕捉する捕捉能力を向上させることができ、清掃用シート51全体の清掃能力を向上させることができるような構成となる。
【0052】
なお、パルプ系繊維シート52において、X方向における両側の端部55a,55bは、清掃具101(
図2参照)のヘッド部102に取り付ける際に用いられるようになっている。この端部55a,55bは、ヘッド部102に取り付けられればよく、この部分における厚さや幅の広さ等については任意に決定してよい。
【0053】
下端部57は、清掃時に清掃面F(
図2参照)と接触する接触面として形成されており、互いに隣接する下端部57及び下端部57の間には空間部57aが形成されている。これら下端部57及び空間部57aは、清掃時に当該清掃用シート51がX方向に移動すると、空間部57aが形成されていることによって下端部57を有する縮織状部56におけるパルプ系繊維シート52が動く自由度を向上させることができ、かつ清掃時において下端部57におけるパルプ系繊維シート52と床面F(
図2参照)との接触面積を増やすこともできる。そのため、塵埃の捕捉性能を大きく向上させることができるようになっている。
【0054】
上端部58は、縮織状部56に形成されており、パルプ系繊維シート52の上面側に位置するように形成されている。この上端部58は、天然分解性フィルム53の裏面53cに近接するか、又は天然分解性フィルム53の裏面53cと接するように形成されている。これにより、清掃時に縮織状部56における波形状が崩れてしまい、塵埃の捕捉能力が低下するようなことを防止することができる。なお、縮織状部56における所定の形状、具体的には本実施の形態では波形状が崩れて塵埃の捕捉能力が低下しないようにするため、上端部58において、パルプ系繊維シート52と天然分解性フィルム53とをヒートシールやホットメルト、超音波接合等のような従来から知られている任意の方法を用いて、パルプ系繊維シート52及び天然分解性フィルム53を接合してもよい。このように接合することで、縮織状部56におけるパルプ系繊維シート52の移動について規則性を出すことができ、より塵埃を効率的に捕捉することもでき得る。
【0055】
天然分解性フィルム53は、パルプ系繊維シート52の上側に位置しており、
図6中におけるX方向の両端部に、パルプ系繊維シート52の端部55a,55bに形成された接合部55c,55dと接合する非接合部55a,55bが形成されている。即ち、天然分解性フィルム53は、非接合部53a,53bにおいてパルプ系繊維シート52と接合されており、この場合においては縮織状部を覆うように配置されている。また、
図6に示すように、この天然分解性フィルム53は、X方向における幅がパルプ系繊維シート52のX方向における幅よりも小さく形成されている。この天然分解性フィルム53は、本実施の形態においては、少なくとも縮織状部56を覆うように配置されていればよく、例えば、X方向における幅がパルプ系繊維シート52のX方向における幅と同じになるように形成されていても良い。
【0056】
この天然分解性フィルム53は、縮織状部56の状態、即ち本実施の形態においては波形状である状態を維持するためのものである。つまり、縮織状部56は、上記した通り波形状をしており、それ単体では縮織状部56の波形状がX方向に広がって波形状を維持することができなくなるおそれがあるところ、この天然分解性フィルム53が縮織状部56を覆うように配置されてパルプ系繊維シート52に接合されていることによって、縮織上部56における波形状を維持させることができるようになる。なお、天然分解性フィルム53は、パルプ系繊維シート52の上端部58においてヒートシール等のような任意の方法によって接合されていても良い。この場合には、天然分解性フィルム53の非接合部は該天然分解性フィルム53のX方向における両端部のみならず、これら両端部よりも中心寄りに設けられる。
【0057】
なお、天然分解性フィルム53は、パルプ系繊維シート52における縮織状部56の態様を維持することができれば、例えば天然分解性の不織布など、天然分解性フィルムとは別の材質のものを任意に選択して用いてもよい。この場合においても、環境に配慮する観点においては、天然分解性のものを用いることが好ましい。
【0058】
刷毛部54は、天然分解性フィルム53の表面53dに接合されている。なお、
図6においては、刷毛部54はX方向に4か所設けた例を用いて説明したが、この刷毛部54を設ける個数などは4つに限定されず、任意の数を選択して適用してよい。
【0059】
本実施の形態に係る清掃用シート51によれば、上記した各実施の形態に係る清掃用シートにおいて述べた効果に加えて、該清掃用シート51の清掃能力を大きく向上させることができる。即ち、この清掃用シート51は、表面側に刷毛部54が配置されており、この刷毛部54が天然分解性フィルム53の所定箇所に接合されている。そのため、塵埃の捕捉能力を向上させることができるとともに、清掃時における摩擦により静電気を発生させて刷毛部54のみならず天然分解性フィルム53をも帯電させることができる。そのため、拭き取り時において物理的に掻き取り等して塵埃を捕捉することだけでなく塵埃を電気的に吸引することができ、かつ捕捉した塵埃が外部に放出されたりすることも低減し、又は防止することもできる。
【0060】
上記した効果に加えて、本実施の形態に係る清掃用シート51においては、パルプ系繊維シート52に縮織状部56が形成されており、本実施の形態ではこの縮織状部56が波形状に形成されていることから、拭き取り清掃時における塵埃の捕捉能力を大きく向上させることができる。また、それに加えて、清掃時に清掃用シート51を移動させる際に生じる摩擦によって静電気が発生し、この静電気によってパルプ系繊維シート52のみならず天然分解性フィルム53が帯電する。そのため、パルプ系繊維シート52による塵埃の捕捉能力に加えて、これらパルプ系繊維シート52及び天然分解性フィルム53における静電気による帯電効果により、塵埃を電気的に吸引することができ、さらにより清掃用シート51における塵埃の清掃能力を向上させることができる。また、このように清掃能力を向上させるとともに、本実施の形態に係る清掃用シート51においては、捕捉した塵埃をパルプ系繊維シート52内に維持することができるため、捕捉した塵埃をこぼしたり、拭き残しを生じたりすることをより抑えることも可能になる。また、本実施の形態に係る清掃用シート51においても、環境に配慮する観点においては、天然分解性のものを用いることが好ましく、このような材料を用いることで環境負荷を大きく低減できる。
【0061】
(第6の実施の形態に係る清掃用シート)
次に、本発明に係る清掃用シートの第6の実施の形態について、
図7に基づいて説明する。なお、本実施の形態に係る清掃用シートの構成等について、先の実施の形態ですでに説明した箇所については、その説明を省略し、符号も同じものを使用する。
【0062】
図7に示すように、本実施の形態に係る清掃用シート71は、パルプ系繊維シート72と、このパルプ系繊維シート72の一方の面(
図7においては上面)に刷毛部73が接合部73aにおいて接合されている。これらパルプ系繊維シート72の構成及び刷毛部73の構成は上記した通りである。また、これらパルプ系繊維シート72と刷毛部73との接合部73aにおける接合については、
図8に示すように例えばある所定の箇所において、パルプ系繊維シート72と、刷毛部73を構成する繊維材料73bとが接合されている。これらパルプ系繊維シート72と、刷毛部73を構成する繊維材料73bとの接合に関しては、上記した通り、ヒートシールによる接合や超音波融着による接合、接着剤による方法などで行われる。
【0063】
また、本実施の形態においては、刷毛部73を構成する繊維材料73bとしては、融点が200℃以上である高融点の繊維材料を用いることが好ましい。また、加えて、この高融点の繊維材料のみならず、融点が200℃以下である低融点の樹脂材料をも用いられることがより好ましい。さらに好ましくは、刷毛部73を構成する繊維材料73bとしては、
図9に示すように芯部75及び鞘部76を有する芯鞘構造を有する繊維材料で形成されており、芯部75を構成する繊維の融点と鞘部76を構成するいわゆる芯鞘構造を有する繊維材料で形成されているとよい。
【0064】
これら芯鞘構造を有する繊維材料を用いて刷毛部73を形成する場合、芯部75を構成する繊維材料と鞘部76を構成する繊維材料とでは、それぞれ互いに融点が異なるものを用いることが好ましく、芯部75を構成する繊維材料の融点が鞘部76を構成する繊維材料の融点よりも高い材料で形成されていることがより好ましい。このような構成の繊維材料を用いることにより、接合時に鞘部76を形成する繊維材料のみが加えられた熱により溶けてパルプ系繊維シート72と接合され、芯部75を構成する繊維材料がパルプ系繊維シート72と接合されるように構成されている。なお、この場合においては、芯部75を構成する繊維材料がパルプ系繊維シート72と接合されていればよく、その際に鞘部76を形成するすべての繊維材料が溶けても良いし、この鞘部76を形成する繊維材料の一部のみが溶けて残りが芯部75を構成する繊維材料とともに残存していてもよい。
【0065】
このような構成を備えた本実施の形態に係る清掃用シート71においても、上記した塵埃の捕捉性能や清掃用シート71の清掃能力を向上させる効果や、刷毛部73及びパルプ系繊維シート72における拭き取り清掃時の摩擦により生じる静電気の発生に伴う帯電効果による、電気的な作用に基づく塵埃の捕捉能力や清掃能力の向上といった効果を得ることが可能になる。また、本実施の形態に係る清掃用シート71においても、環境に配慮する観点においては、天然分解性のものを用いることが好ましく、このような材料を用いることで環境負荷を大きく低減できる。
【0066】
以上、本発明に係る清掃用シートについて詳細に説明したが、上記した説明は本発明に係る清掃用シートの例を示したに過ぎないものである。したがって、本発明に係る清掃用シートは上記した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜構成を変更してよい。
【符号の説明】
【0067】
1,21,31,41,51 清掃用シート
2,32,52 パルプ系繊維シート
3,25,33,53 天然分解性フィルム
4,55c,55d 接合部
5 非接合部
23 第1のパルプ系繊維シート
24 第2のパルプ系繊維シート
34,54 刷毛部
43 第1の天然分解性フィルム
44 第2の天然分解性フィルム
45 第1刷毛部
46 第2刷毛部
55a,55b 端部
56 縮織状部