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特開2022-20567ケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを備えた船舶及び前記船舶を建造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020567
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを備えた船舶及び前記船舶を建造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/32 20060101AFI20220125BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20220125BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B63H21/32 A
F16F15/02 C
F16F15/02 A
B63H21/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021110440
(22)【出願日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】102020000016102
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】514146829
【氏名又は名称】フィンカンティエリ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】プニェッティ,ロベルタ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを備えた船舶及び前記船舶を建造するための方法を提供すること。
【解決手段】ケーシング20の内部に設置され、集中質量構成要素及び長さに分布した質量を有する構成要素を備える排気煙道30と、ケーシング20の内部の構成要素を支持する構造体とを備える。支持構造体は、それぞれが、空洞21の内部に主支持基部を画定し、主弾性サスペンションの介在によって船舶のデッキ10でケーシング20の壁に接続されている、主プラットフォームを備える。集中質量構成要素は、各主プラットフォーム上に配置されている。各主プラットフォームの主弾性サスペンションは、エンジンによって発生し、排気煙道30によってケーシング20の内部に伝達される低周波振動の伝達を削減する大きさを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体(2)と、
前記船体(2)の内部に配置された複数のデッキ(10)と、
少なくとも1つのエンジンルーム(22)からファンネル(23)まで、前記複数のデッキ(10)を横切って垂直に延びる空洞(21)を区画する少なくとも1つのケーシング(20)と、
前記ケーシング(20)の内部に設置され、集中した質量を有する複数の構成要素(31,32,33,34)と、長さに分布した質量を有する複数の構成要素(35,36)とを備え、前記少なくとも1つのエンジンルーム(22)に配置された1つ以上の内燃機関(24)によって生成されたヒュームの少なくとも1つの排気煙道(30)と、
質量が集中した複数の前記構成要素(31,32,33,34)と長さに分布した質量を有する複数の前記構成要素(35,36)とを前記ケーシング(20)の内部で支持するのに適した複数の構造体(51,52,53)と
を備え、
前記支持構造体は、
それぞれが、前記空洞(21)の内部に主支持基部を画定し、主弾性サスペンション(61)の介在によって船舶のデッキ(10)で前記ケーシング(20)の壁に接続されている、複数の主プラットフォーム(51)と、
それぞれが、前記主プラットフォーム(51)の1つによってのみ直接的又は間接的に支持され、対応する前記主プラットフォーム(51)によって画定される前記主支持基部に対して異なる高さに配置された副支持基部を画定する、複数の副プラットフォーム(52)と
を備えることを特徴とし、
前記集中質量構成要素(31,32,33,34)の少なくとも1つが、各主プラットフォーム(51)上に配置されており、
主プラットフォーム(51)と、対応する少なくとも1つの前記集中質量構成要素(31,32,33,34)と、場合によっては前記主プラットフォームによって支持される1つ以上の副プラットフォーム(52)と、前記主プラットフォーム(51)及び/又は場合によっては1つ以上の副プラットフォーム(52)に接続された、長さに分布した質量を有する1つ以上の構成要素(35;36)とから成るアセンブリが、構造的に独立したモジュール(50a,50b,50c,50d,50e)を構成し、
各主プラットフォーム(51)の前記主弾性サスペンション(61)は、前記各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)の総質量を利用して、前記エンジンによって発生し、前記排気煙道(30)によって前記ケーシング(20)の内部に伝達される低周波振動の、前記各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)から前記ケーシング(20)への伝達を削減する大きさを有する、船舶(1)。
【請求項2】
前記振動は、前記エンジンの前記基本回転周波数での振動と、前記エンジンの前記発射周波数での振動とを備え、
好ましくは、前記エンジンの前記基本回転周波数は7から30Hzであり、前記エンジンの前記発射周波数は40から150Hzである、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
少なくとも1つのモジュール(50a,50c)が2つ以上の集中質量構成要素(31,32,33,34)を備え、
前記2つ以上の集中質量構成要素は、前記モジュールの前記主プラットフォーム(51)上に配置されている、請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
モジュール(50c)の前記主プラットフォーム(51)は、同一平面上にない部分を備えてもよい、請求項1から3のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項5】
前記排気煙道の前記複数の集中質量構成要素は、少なくとも1つのSCR装置(31)を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項6】
前記排気煙道の前記複数の前記集中質量構成要素は、少なくとも1つの排気ガスボイラ(32)を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項7】
前記排気煙道の前記複数の前記集中質量構成要素は、少なくとも1つのスクラバ(33)を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項8】
前記排気煙道の前記複数の集中質量構成要素は、少なくとも1つのサイレンサ(34)を備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項9】
前記排気煙道の長さに分布した質量を有する前記複数の前記構成要素は、排気ガスの通過のためのパイプライン(35)の部分を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項10】
サービス流体の通過のための1つ以上のラインを備え、
前記サービス流体の通過のための前記1つ以上のラインのパイプライン(36)の部分は、前記ケーシング(20)の内部に設置され、長さに分布した質量を有する追加の構成要素として前記支持構造(51,52,53)に接続され、
好ましくは、各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)は、前記パイプライン(36)の1つ以上の部分を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項11】
第1モジュールに配置された、排気ガスの通過のためのパイプライン(35)の部分と、提供されているのであれば、前記サービス流体の通過のための1つ以上のラインのパイプライン(36)の部分とは、フレキシブルな接続部(37)によって、前記第1モジュールに隣接する第2モジュールに配置されたそれぞれのラインのパイプラインの部分に流体的に接続されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項12】
各主プラットフォーム(51)の前記主弾性サスペンション(61)は、それぞれのモジュール(50a,50b,50c,50d,50e)の前記重心に対して対称に配置されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項13】
前記支持構造体は、モジュールの前記主プラットフォーム(51)と、同じモジュール(50a,50b,50c,50d,50e)の各副プラットフォーム(52)との間に複数の構造的相互接続部(53)を備え、
前記構造的相互接続部(53)は、好ましくは垂直で、前記副プラットフォーム(52)を前記主プラットフォーム(51)に直接接続するか、又は少なくとも1つの中間副プラットフォームを介して前記主プラットフォーム(51)に間接的に接続する、請求項1から12のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項14】
モジュールの前記副プラットフォーム(52)は、前記それぞれの主プラットフォーム(51)より上及び/又は下に配置されている、請求項1から13のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項15】
モジュールの前記副プラットフォーム(52)はそれぞれ、前記それぞれの主プラットフォーム(51)を構成する前記構造体よりも薄くて軽い構造体で構成されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項16】
モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)において、前記それぞれの主プラットフォーム(51)の質量と、少なくとも1つの集中質量構成要素(31,32,33,34)の質量との合計は、前記モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)全体の質量の50%以上、好ましくは75%から90%を構成する、請求項1から15のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項17】
モジュールの重心は、前記それぞれの主プラットフォーム(51)の近くに位置している、請求項1から16のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項18】
前記集中質量構成要素(31,32,33,34)のうちの1つ又は複数、及び/又は、長さに分布した質量を有する前記構成要素(35;36)のうちの1つ又は複数は、1つ以上の副弾性サスペンション(62)によって、前記支持構造体(51,52,53)に接続されている、請求項1から17のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項19】
前記主弾性サスペンション(61)及び存在する場合には前記副弾性サスペンション(62)は、好ましくはエラストマー材料、特にゴム又はシリコーンから成る本体で作られたデカップリング構成要素、金属バネ、金属マトリクスを有する弾性構成要素、及び/又は空気バネからなるパッシブ弾性サスペンションから成る、請求項1から18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項20】
前記主弾性サスペンション(61)及び存在する場合には前記副弾性サスペンション(62)は、セミアクティブ弾性サスペンションから成る、請求項1から18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項21】
前記主弾性サスペンション(61)及び存在する場合には前記副弾性サスペンション(62)は、アクティブ弾性サスペンションから成る、請求項1から18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項22】
各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)は、他のモジュールから構造的に独立しており、前記主弾性サスペンション(61)によってのみ前記ケーシング(20)に機械的に接続されている、請求項1から21のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項23】
各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)は、好ましくは船外で組立てられた自己支持構造体である、請求項1から22のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項24】
(a)船体(2)の内部に配置された複数のデッキ(10)と、少なくとも1つのエンジンルーム(22)からファンネル(23)まで前記複数のデッキ(10)を横切って垂直に延びる空洞(21)を区画する少なくとも1つのケーシング(20)とを有する船体(2)を建造するステップと、
(b)前記ケーシング(20)の内部に、前記少なくとも1つのエンジンルーム(22)に配置された1つ以上の内燃機関(24)によって生成されたヒュームの少なくとも1つの排気煙道(30)を設置するステップと
を備え、
前記排気煙道(30)は、複数の構造体(51,52,53)によって前記ケーシングの内部に支持されている、集中した質量を有する複数の構成要素(31,32,33,34)と、長さに分布した質量を有する複数の構成要素(35,36)とを備え、
前記支持構造体(51,52,53)は、
それぞれが、前記空洞(21)の内部に主支持基部を画定し、主弾性サスペンション(61)の介在によって船舶のデッキ(10)で前記ケーシング(20)の壁に接続されている、複数の主プラットフォーム(51)と、
それぞれが、前記主プラットフォーム(51)の1つによってのみ直接的又は間接的に支持され、対応する前記主プラットフォーム(51)によって画定される前記主支持基部に対して異なる高さに配置された副支持基部を画定する、複数の副プラットフォーム(52)と
を備えることを特徴とし、
前記設置ステップ(b)において、前記支持構造体(51,52,53)及び前記排気煙道の構成要素(31,32,33,34;35;36)は、構造的に独立したモジュール(50a,50b,50c,50d,50e)を形成するために集約され、
各構造的に独立したモジュールは、主プラットフォーム(51)と、前記主プラットフォーム上に配置された少なくとも1つの集中質量構成要素(31,32,33,34)と、場合によっては前記主プラットフォームによって支持された1つ以上の副プラットフォーム(52)と、前記主プラットフォーム(51)及び/又は場合によっては前記1つ以上の副プラットフォーム(52)に接続された、長さに分布した質量を有する1つ以上の構成要素(35;36)とを備え、
各主プラットフォーム(51)の前記主弾性サスペンション(61)は、前記各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)の総質量を利用して、前記エンジンによって生成され、前記排気煙道(30)によって前記ケーシング(20)の内部に伝達される低周波振動の、前記各モジュール(50a,50b,50c,50d,50e)から前記ケーシング(20)への伝達を削減する大きさを有する、船舶(1)を建造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の対象は、ケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを備えた船舶及び前記船舶を建造するための方法である。
【0002】
特に、この発明の対象となる船舶は、クルーズ船である。
【背景技術】
【0003】
図1に示されているように、船舶NのエンジンMによって生成された燃焼ヒュームのための排気煙道Eは、エンジンルームSからファンネルFまで延び、船のデッキPのすべてを通過する1つ以上の垂直な空洞の内部に配置されている。これらの空洞はそれぞれ、通常、長方形の断面を有しており、前記空洞を船の残りの部分から分離するのに適した閉鎖構造Cによって、断面の端部周りに区切られている。技術的名称が「エンジンケーシング」又は「ケーシング」であるこの閉鎖構造Cは、船舶のデッキPに構造的に接続されている。ケーシングCは、船舶の構造の不可欠な部分であり、重要な構造的機能を果たしている。
【0004】
クルーズ船では、ケーシングは船舶の中央に組み込まれている。そのため、ケーシングは他の空間に囲まれており、貨物船のように独立した構造体や付属品ではない。従って、クルーズ船では、ケーシングの壁は、船舶の内部の居住可能な領域に隣接していることが多い。
【0005】
一般に、上述の垂直な空洞は、他のダクト、例えば換気ダクトV(特にエンジンルームを換気するため)、蒸気ライン、ベントダクト、圧縮空気ダクトなどの通過のためにも使用される。
【0006】
排気煙道Eから換気ダクトまで、垂直な空洞内に設置された全ての構成要素は、各船舶デッキでケーシングの壁に固定され、一連の格子状のプラットフォームを形成する水平支持ビームTによって、前記空洞内に支持される。
【0007】
近年、ますます厳しい環境基準に応じる必要があるため、排気煙道には、非常に重くて大きい構成要素を備えるヒューム処理プラントが設けられている。
【0008】
特に図2及び図3に示されているように、現在、排気煙道は、ヒューム通路ラインTEに加えて、エンジンルームSから順に記載されている以下の構成要素、すなわち、NOx排出を制御するためのシステム(SCR、Selective Catalytic Reduction)、蒸気を生成するための排気ガスボイラEGB、SOx排出を制御するためのシステムSCB(又は「スクラバ」)、及び1以上のサイレンサを備える。
【0009】
NOx排出を制御するためのシステム。
IMOの新Tier3規制は、ECAs(Emission Control Areas)における排出限度をさらに制限している。この場合、彼らは、NOx排出において80%削減を確立することを目標としている。NOxを削減するために艦艇業界で最も一般的に使用されている装置は、排気ガスボイラの上流側に排気煙道における最初の要素として配置される副SCR(Selective Catalytic Reduction)システムである。SCRは、化学的プロセスに基づいていることに加えて、押出成形されたハニカム触媒にガスを通すことを使用する。この触媒は、ヒュームの自由な通過に対して障壁を構成し、従って、振動及び音の形でヒュームから周囲の構造体にエネルギーが伝達されるゾーンとなる。
【0010】
排気ガスボイラ。
燃焼ガスの熱の一部は、蒸気を生成するために排気ガスボイラ内の管束で取り戻される。管束は、熱交換に必要なガスの流れに対して実質的な障壁を構成するが、振動及び騒音を発生させる。その結果、エネルギーは、大きな構造的騒音の形で、排気ガスボイラの基部によって支持構造体に伝達される。従って、適切な弾性支持体を用いてこの伝達を制限することが必要である。
【0011】
SCRと排気ガスボイラは、ケーシング内で最も重い要素である。使用されるサイズを考慮した近似値として、単一のSCR/排気ガスボイラの重量範囲は、10,900のGRTを有する船舶の3.2tから、134,000のGRTを有する船舶の24tまでである可能性がある。
【0012】
サイレンサ。
サイレンサは、その機能を果たすために、吸収材でできた表面と交換することによって発生する圧力降下の原理(抵抗性サイレンサ)、又は、特別に設計された空洞に閉じ込められた音波を反射する原理(反応性サイレンサ)に従って動作する必要もある。圧力降下は、大きさの順序において、排気ガスボイラの圧力降下と似ており、そのため、構造的騒音の好ましい伝達点を構成する可能性もある。個々のサイレンサの重量は、大きさに依存し、1tから10tの範囲内である。
【0013】
SOx排出を制御するためのシステム。
大気中に排出されるNOxを削減する要求に並んで、SOxの排気ガスの脱硫における新しい限度が継続的に更新されている。この新しいルールに対応するために、船主は「スクラバ」として知られるヒューム洗浄塔で構成される処理システムにますます依存するようになっている。スクラバは、ヒュームの圧力低下をほとんど引き起こさないため、排気ガスボイラ及びSCRsより低い程度ではあるが、ケーシングに振動を伝えるゾーンでもあり、従って、実際にはパイプラインの一部に似ている。しかし、スクラバは、ケーシングの最上部に設置され、単なるパイプラインよりもかなり重いため、船舶の安定性における大きな影響を有する。平均的なスクラバは約20tの重量を有する。
【0014】
すでに指摘したように、ケーシング内に配置された構成要素のいくつかは、騒音及び振動を前記ケーシングに、従って、それを取り囲む構造体に移す。そのため、デッキに続くケーシング内のすべての構造体は、ケーシングを取り囲む領域で放射される騒音を伝達するための潜在的なキャリアである。
【0015】
特に、排気煙道の構成要素は、船舶の内燃機関によって発生する低周波数の振動をケーシングに伝達する。これらの振動は、本質的に、エンジンの基本回転周波数(fundamental rotation frequency)における振動と、エンジンの発射周波数(firing frequency)における振動とによって構成されている。
【0016】
騒音及び振動のケーシング内に配置された構成要素からケーシングへの伝達を制限するために、現在、構成要素(スクラバ、排気ガスボイラ、SCRs、ラインなど)がケーシング内の支持プラットフォームに取り付けられる箇所に、(ゴム体又はゴム製のブラケットなどによって構成された)弾性サスペンションが配置されている。これらの解決策は、ヒューム処理プラントとパスラインの両方に採用されている。
【0017】
しかし、いくつかの場合では、弾性サスペンションを使用しても、少なくともケーシングの近傍では、振動を十分に低減することができない。特に、これらの弾性サスペンションは、低周波の振動をカットすることができない。従って、少なくとも客船では、船舶の中心に配置されていることから一般的に貴重な領域である、ケーシングに隣接する空間は、例えばクローゼット及び/又は戸棚として使用される緩衝空間の介在によってケーシングから分離されている。
【0018】
しかし、前記緩衝空間の配置は、常に振動の効果的な削減を保証するとは限らないだけでなく、船舶の貴重なゾーンの有用な空間を奪うため、完全に満足のいく解決策ではない。この問題は、平均的な、又は小さなトン数の船舶では、より一層当てはまる。
【0019】
従って、艦艇業界、及び特にクルーズ船の分野では、緩衝空間を介さずに、ケーシングに隣接する船の構造体への騒音及び振動の伝達をさらに低減することに依然として満足する必要性がある。
【発明の概要】
【0020】
従って、この発明の目的は、緩衝空間の介在がなく、ケーシングに隣接する構造体への騒音及び振動の伝達をさらに低減することを可能にする、ケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを有する船舶を提供することによって、上記に引用された先行技術の欠点を解消するか、又は少なくとも低減することである。
【0021】
本発明の他の目的は、従来の解決策と実質的に同様の製造コストで、製造するのに構造的に単純であるケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを有する船舶を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
上述の目的に従った本発明の技術的特徴は、後述の特許請求の範囲の内容に明確に見出すことができ、その利点は、純粋に非限定的な例として、その1つ以上の実施形態を描いた添付の図面を参照して与えられる以下の詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【0023】
図1】ケーシングに設置された排気煙道を強調するために、ケーシングに対応するクルーズ船の断面図。
図2】ケーシング及び排気煙道のみに関連する図1の詳細図。
図3】排気煙道の設備のみが描かれており、関連するラインは描かれていない図2と同様の図。
図4】本発明によるケーシングに起因する振動を低減するシステムを有する船舶の一例の断面図であって、断面はケーシングに対応して作られている断面図。
図5】ケーシング及びケーシングに設置された排気煙道のみに関する図4の詳細図。
図6】排気煙道の集中質量構成要素のみが示されており、分布質量構成要素は示されていない、図5と同様の図。
図7図5に示されたケーシングの断面平面VII-VIIによる平面図。
図8図4図5、及び図6に示したケーシング内の排気煙道が分割された第1モジュールの斜視図。
図9図4図5、及び図6に示したケーシング内の排気煙道が分割された第2モジュールの斜視図。
図10図4図5、及び図6に示したケーシング内の排気煙道が分割された第3モジュールの斜視図。
図11図4図5、及び図6に示したケーシング内の排気煙道が分割された第4及び第5モジュールの透視図。
図12】集中質量構成要素を支持するための構造のみが示された、図5同様の図。
図13】1自由度を有する防振装置の図。
図14】減衰比ζの値の関数としての伝達率Tに対する周波数比f/f0の傾向を示す図。
図15】2段式防振装置の図。
図16】使用されるデカップリング装置のタイプに基づく、ある種のパッシブサスペンションの動作範囲を示す概略図。
【0024】
以下に説明する実施形態が共通に有する要素又は要素の一部は、同じ符号で示される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の対象は、ケーシングに起因する振動を低減するためのシステムを備えた船舶、及び前記船舶を建造するための方法である。
【0026】
特に、この発明の対象である船舶は、クルーズ船であってもよい。
【0027】
添付図面を参照すると、符号1は、全体として、本発明による船舶を示す。
【0028】
図4に示す本発明の一般的な実施形態によれば、船舶1は以下を備える。
【0029】
船体2。
【0030】
船体2の内部に配置された複数のデッキ10。
【0031】
エンジンルーム22からファンネル23まで、上記複数のデッキ10を横切って垂直に延びる空洞21を区画する少なくとも1つのエンジンケーシング20。
【0032】
及び上記エンジンルーム22に配置された1つ以上の内燃機関24によって生成されたヒュームのための少なくとも1つの排気煙道30。
【0033】
特に、上記内燃機関24は、ディーゼルエンジン又はディーゼル/ガスエンジンであってもよい。
【0034】
上記排気煙道30は、ケーシング20の内部に設置され、複数の集中質量構成要素31,32,33,34と、長さに分布した質量を有する複数の構成要素35,36とを備える。
【0035】
「集中質量構成要素」は、当該システムに関連しても相当な質量を有する排気煙道30の構成要素を意味し、質量は、相対的な重量が掛かるが制限された領域内にある1つ以上の接触点によって支持されている。
【0036】
特に、100kg/m3以上の質量/体積比を有する構成要素は、集中質量構成要素として分類されてもよい。
【0037】
特に、前記排気煙道30の複数の集中質量構成要素は、以下を備える。
【0038】
NOx排出を制御するための触媒システムである、少なくとも1つのSCR(Selective Catalytic Reduction)システム31。
【0039】
及び/又は蒸気を生成するための少なくとも1つの排気ガスボイラ32。
【0040】
及び/又はSOx排出を制御するためのシステムである、少なくとも1つのヒューム洗浄塔又はスクラバ33。
【0041】
及び/又は少なくとも1つのサイレンサ34。
【0042】
図5に示されているように、上記の排気煙道30は、好ましくは、1以上のSCR(Selective Catalytic Reduction)システム31と、蒸気を生成するための1つ以上の排気ガスボイラ32と、1つ以上のヒューム洗浄塔又はスクラバ33と、1つ以上のサイレンサ34とを備える。
【0043】
近似値として、SCRは、約220kg/m3の平均質量/体積比を有してもよく、排気ガスボイラは、約650kg/m3の平均質量/体積比を有してもよく、ヒューム洗浄塔(スクラバ)は、約130kg/m3の平均質量/体積比を有してもよく、サイレンサは、100から220kg/m3の平均質量/体積比を有してもよい。
【0044】
「長さに分布した質量を有する構成要素」とは、長さ方向に拡張された展開を有する当該システムに関連しても、控えめな質量を有する排気煙道30の構成要素を意味する。
【0045】
特に、ダクト又はパイプラインの部分は、長さに分布した質量を有する構成要素として分類されてもよい。より詳細には、50kg/m3未満の質量/体積比を有するラインの構成要素は、長さに分布した質量を有する構成要素として分類されてもよい。
【0046】
特に、長さに分布した質量を有する構成要素は、排気煙道の様々な集中質量構成要素を互いに流体的に接続する、排気煙道30のパイプライン35の部分であり、従って、エンジン排気からファンネルまでの必要な流体的連続性を形成する。
【0047】
特に、ケーシング20によって区画された空洞21は、エンジンルーム22からファンネル23までの単一の空洞であってもよい。より複雑な実施形態が提供されてもよい。例えば、図4図5、及び図6に示されているように、空洞21は、(例えば、2つの別々のエンジンルームを受け持つために、)ファンネル23まで延びる単一の上部部分21cで上流に接続する2つの開始部分21a及び21bに基部で分岐されてもよい。
【0048】
ケーシング20は、ファンネルまで別個のままであってもよいし、共通の末端部で再接続してもよい、2つ以上の異なる排気煙道を含んでいてもよい。
【0049】
説明を容易にするために、以下の説明では、1つの排気煙道について言及するが、それによって必ずしも単一の排気煙道の場合に限定されることを望むものではない。
【0050】
船舶1は、有利には、換気ライン、エアベントライン、蒸気を通すためのライン、及び油圧ラインなどのサービス流体の通過のための1つ以上のラインを備えてもよい。
【0051】
サービス流体の通過のための前記1つ以上のラインのパイプライン36のいくつかの部分は、有利には、ケーシング20の内部に設置されていてもよい。パイプライン36のこれらの部分は、排気煙道20の分布質量構成要素35に対して長さに分布した質量を有する追加の構成要素であると考えられる。
【0052】
特に図5図6、及び図12に示されているように、船舶1は、複数の前記集中質量構成要素31,32,33,34と、長さに分布した質量を有する複数の前記構成要素35,36とをケーシング20の内部で支持するのに適した複数の構造体51,52,53をさらに備える。
【0053】
この発明によれば、上記支持構造体は、複数の主プラットフォーム51から構成されており、各主プラットフォーム51は、空洞21の内部に主支持基部を画定し、主弾性サスペンション61の介在によって船舶のデッキ10においてケーシング20の壁に接続されている。
【0054】
各主プラットフォーム51は、好ましくは、特に図8図9図10、及び図11に示されているように、格子状の構造を形成するために構造的に一方から他方に相互接続されたビームの骨組みによって構成されている。
【0055】
この発明によれば、上記の支持構造体は、複数の副プラットフォーム52をさらに含み、各副プラットフォームは、前記主プラットフォーム51のうちの1つだけによって直接的又は間接的に支持され、対応する主プラットフォーム51によって画定される主支持基部に対して異なる高さに配置された副支持基部を画定する。
【0056】
特に図7図8図9図10、及び図11に示されているように、各副プラットフォーム52は、好ましくは、格子状の構造を形成するために構造的に一方から他方に相互接続されたビームの骨組みによって構成されている。
【0057】
主プラットフォーム51及び副プラットフォーム52は、ケーシングの断面に相当する周囲の形状、例えば、長方形の形状を有していてもよい。また、プラットフォーム51及び52が、ケーシングの断面に対して異なる形状を有する実施形態が提供されてもよい。プラットフォームの周囲の形状は、排気煙道の構成要素の位置に関連する要件に基づいて、プラットフォームがケーシングの壁と幾何学的に干渉しないように選択される。
【0058】
本発明によれば、排気煙道30の前記集中質量構成要素31,32,33,34のうちの少なくとも1つが、各主プラットフォーム51上に配置されている。
【0059】
2つ以上の前記集中質量構成要素が、主プラットフォーム51上に配置されることも可能である。
【0060】
アセンブリは、
主プラットフォーム51と、
対応する少なくとも1つの集中質量構成要素31,32,33,34と、
前記主プラットフォームによって支持された1つ以上の可能な副プラットフォーム52と、
前記主プラットフォーム51及び/又は前記1つ以上の可能な副プラットフォーム52に接続された、長さに分布した質量を有する1つ以上の構成要素35,36と
によって構成され、
構造的に独立したモジュール50a,50b,50c,50d,50eを構成する。
【0061】
従って、有利には、排気煙道30は、ケーシング20の垂直方向の伸長に沿って順に配置される2つ以上の構造的に独立したモジュール50に分割される。
【0062】
添付図面に示されている実施形態によれば、3つの別々の排気煙道30がケーシング20に設置されている。各排気煙道30は、エンジンルームから始まって、SCRシステム31、排気ガスボイラ32、ヒューム洗浄塔又はスクラバ33、及びサイレンサ34を順次備え、これらはパイプライン35の部分によって結合されている。図に示された例では、3つの排気煙道30は、同じヒューム洗浄塔又はスクラバ33を共有している。上述の3つの排気煙道30の構成要素は、構造的に互いに独立している5つのモジュール50a,50b,50c,50d,50eに分けられる。第1モジュール50aは、3つのサイレンサ34及び洗浄塔33を含み、第2モジュール50bは、排気ガスボイラ32を含み、第3モジュール50cは、2つの排気ガスボイラ32及びSCRシステム31を含み、(ケーシングの2つの別々の部分に配置されている)第4モジュール50d及び第5モジュール50eはそれぞれ、SCRシステム31を含む。
【0063】
好ましくは、各排気煙道30は、ケーシング20の上部で、ファンネル23の近くに、少なくとも1つのファン(添付図面には示されていない)を含んでいる。
【0064】
より具体的には、ファンは、第1モジュール50aに組み込まれ、相互接続構造によって前記第1モジュール50aの主プラットフォームに重量を載せる1つ以上の副トッププラットフォームによって支持されてもよい。あるいは、添付図面に示されているように、ファンは、ケーシングを上部で閉じるように意図された構造的に独立した別のモジュール50f(エンド又はトップモジュール)に配置されてもよく、モジュール50fは、(それ自体の主弾性サスペンション61によってケーシング20に接続されている)それ自体の主プラットフォーム51及び1つ以上の副プラットフォーム52を備える。この場合、ファンは、副集中質量構成要素として扱われる。
【0065】
特に、モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、2つ以上の船舶のデッキの間の間隔に相当する範囲に垂直に延びていてもよい。モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、異なる垂直の伸長を有していてもよい。1つのモジュールの垂直の伸長は、本質的に、前記モジュールに配置されたパイプラインの部分の縦の伸長と同様に、前記モジュールの内部に配置された1つ以上の集中質量構成要素の寸法によって決定される。
【0066】
モジュールは、(添付図面のモジュール50eの場合のように)単一の排気煙道の構成要素を含んでいてもよいし、又は、(例えば、添付図面のモジュール50a又は50dの場合のように)同じケーシング部20を通過する2つ以上の異なる排気煙道の構成要素を含んでいてもよい。
【0067】
本発明によれば、各主プラットフォーム51の上記主弾性サスペンション61は、前記エンジンによって発生し、前記排気煙道30によってケーシング20内に伝達される低周波振動の、モジュール50a,50b,50c,50d,50eのそれぞれからケーシング20への伝達を削減する大きさを有する。上記主弾性サスペンション61は、モジュール50a,50b,50c,50d,50eのそれぞれの高い総質量を利用することによって、上述の低周波振動を削減する。
【0068】
有利には、振動を削減することは、振動によって発生する厄介な構造的騒音を低減する。「構造的騒音」とは、構造体を振動させる原因によって発生する、船舶の構造体を介して伝達される騒音を意味する。
【0069】
特に図6に示されているように、特に、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、ケーシング内に突出し、船舶のデッキと構造的に一体化された複数の突出部25上に、それぞれのメインプラットフォーム51に対応して支持されている、及び/又はケーシング20内に支持されている。これらの突出部25の全てのセットは、モジュール50a,50b,50c,50d,50e全体の重量を、前記突出部からケーシングに及び/又は船舶のデッキに排出する大きさである。各突出部25には、前記主弾性サスペンション61の1つが配置されており、従って、前記主弾性サスペンション61は、モジュール50a,50b,50c,50d,50eと個々の突出部25との間に介在している。
【0070】
先行技術の解決策と比較して、本発明により、排気煙道からケーシングへの低周波振動及び超低周波振動の伝達を低減又は削減するために相乗的に働き合う次の2つの結果が得られる。
【0071】
支持構造体がケーシングに接続する箇所の減少、つまり、排気煙道は、もはや船舶のデッキごとに接続されず、主プラットフォームの高さに配置された船舶のデッキでのみ接続される。
【0072】
排気煙道の高い質量、及びいくつかのモジュール50a,50b,50c,50d,50eに分布された支持構造体51,52,53の質量は、低周波数及び超低周波数の振動の削減を増加させるために利用されるように、(より大きな慣性を有する)より高い質量を画定するように一緒に集合され、これは特に、高い効率と低周波数を有する弾性サスペンションを主な弾性サスペンションとして使用することも可能にする。
【0073】
換言すれば、排気煙道及び相対的な支持構造体をいくつかの構造的に独立したモジュール50a~eとして設計することにより、エンジンの動作によって引き起こされる特性周波数(characteristic frequency)である基本周波数(fundamental frequency)及び発射周波数が可能な限り最大の減衰のゾーンに落ちるように、単一の構造的に独立したモジュール50a,50b,50c,50d,50eとして意図されたシステムの固有周波数(natural frequency)fを低減するために、関係する高い質量を利用することが可能になり、それによって船舶の構造体に伝達される振動を低減する効果を最大化することができる。
【0074】
好ましくは、関係する質量を考慮して、質量の点でそのような重要なシステム(すなわち、プラント、ライン、主プラットフォーム及び副プラットフォームからなるそれぞれ構造的に独立したモジュール50a,50b,50c,50d,50e)を複数吊り下げることができるようにするために、使用される高効率かつ低周波数の主弾性サスペンションは、主エンジンとして、大型プラント用に開発されたものである。これらのサスペンションは、実際に必要な機能を有しており、個々の集中質量構成要素を吊り下げるために先行技術で使用されているものとは異なり、非常に低い剛性度kを確保するように最適化されており、これにより、弾性構成要素の非常に低い固有周波数(最大4/5Hz)が得られ、モジュールの質量mと相まって、システムの固有周波数f0を非常に低く保ち、励起周波数(exciting frequency)(主周波数及び発射周波数)から切り離すことが可能となり、これにより効果的に削減されることになる。
【0075】
特に、エンジンによって発生し、排気煙道30によってケーシング20の内部に伝達される低周波振動は、以下のものを含む。
【0076】
エンジンの基本回転周波数、すなわち、駆動軸の回転に関する周波数での振動。
【0077】
及びエンジンの発射周波数、すなわち、エンジンのシリンダが点火する周波数での振動。
【0078】
好ましくは、エンジンの基本回転周波数は7から30Hzであり、一方、エンジンの発射周波数は、好ましくは、40から150Hzである。
【0079】
好ましくは、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eの主弾性サスペンション61は、7Hz未満の固有周波数を有する。
【0080】
より具体的には、各モジュール50a~eは、1自由度を有するシステムとみなすことができ、このシステムは、主弾性サスペンション61の剛性kと、振動子(吊り下げられたモジュール)の質量mとの両方に依存する固有共振周波数(natural resonant frequency)を有し、次の等式に従う。
【0081】
【数1】
【0082】
ここで、mは吊り下げられた質量であり、kは弾性サスペンションの剛性を表す。
【0083】
概念を明確にするために、基礎(船舶の構造体又はケーシング20)に伝達される力Fと、力F0、すなわち、励起力(exiting force)との間の比率を表す伝達率Tを考慮に入れることが有用である。
【0084】
本発明によって考慮される具体的なケースは、排気ガスの流れと相互作用することによって、排気ガスからエネルギーを得て、サスペンション箇所を介して船舶の構造体に排出する、主に、SCRs、排気ガスボイラ、サイレンサ、スクラバによるエンジンからの伝達に関するものである。
【0085】
本発明によれば、質量mは、モジュール全体(集中質量構成要素及び分布質量構成要素、主プラットフォーム及び副プラットフォーム)によって構成されている。
【0086】
また、伝達率は、次の等式により表されてもよいことが知られている。
【0087】
【数2】
【0088】
ここで、X=f/f0であり、fは励振周波数であり、Cは減衰係数である。
【0089】
従って、1自由度を有するシステムの振幅は、質量m、剛性k、及び減衰係数に依存する。
【0090】
上記のTの等式から次のことが示されてもよい。
【0091】
Xが0に傾くと、伝達率Tは1に傾き、従って、比率は剛性kによって制御される。
【0092】
Xが1より大きい値に傾くと、伝達性Tは0に傾き、比率は質量mによって制御される。
【0093】
図14は、伝達率Tに対する周波数比f/f0の傾向を、C/Cc比に相当する減衰比ζの値の関数として示し、Ccは臨界減衰係数である。ζ<0のとき、システムの過渡応答は周期的であり、ζ>=1のとき、システムの応答はもはや周期的ではない。ζ=0のとき、システムは減衰しない。ζ=0に関する場合は、1自由度を持つ振動子の運動方程式my’’+Cy’+ky=F(t)に由来し、1自由度を持つシステムの固有非減衰周波数(natural non-damped frequency)f0がF(t)=C=0の場合に得られる。典型的なζの値は、ゴムでは0.05~0.1で、鉄では0.005~0.01である。
【0094】
次に図14に言及すると、共振(f/f0=1)未満の値では、分離がないだけでなく、増幅もないが、共振(f/f0=1)付近では、増幅があり、1.4Xより大きいと、分離要素の存在が、分離を大幅に増加させることが分かり得る。従って、システムの周波数f0が、少なくとも励起周波数の1.4分の1である際、弾力性の存在は有効である。
【0095】
このため、最小値が約7Hzである上記の関係する周波数を考慮すると、免震効果を最大限に発揮するためには、非常に低い固有周波数(約5Hz、低いk)を有する主弾性サスペンションを有することが好ましい。さらに、伝達率の等式Tによって表されているように、共振に加え、応答は質量によって制御され、従って、質量を増加させることで、f0を減少させることが可能となり、それ故、システムを隔離し、その結果、船舶の構造体への振動の伝達を減少させるという利点のために、f/f0比を増加させることが可能となる。
【0096】
従って、本発明のために、ケーシング及びケーシングに隣接する構造体に干渉することなく、排気煙道からケーシング及び前記ケーシングに隣接する船舶の構造体への低周波及び超低周波の振動の伝達を大幅に削減することが可能である。
【0097】
特に、ケーシングの周囲に緩衝空間を配置する必要がもはやない。このようにして、ケーシングから発生する振動の強さのために、従来技術の解決策では貴重な目的地として使用され得なかった容積が、ケーシングの周りで自由になる。
【0098】
さらに、本発明の対象である技術的解決策は、従来の解決策と実質的に同様のコストで製造され得る。特に、船舶の構造体における介入は必要ではなく、ケーシング内の構造体の再構成のみでよい。以下の説明で強調されるように、構造体を構造的に独立したモジュール50a~eに分割することで、組立及び設置コストを削減する組立工法を適用することが可能になる。
【0099】
先に既に強調されているように、船舶1は、サービス流体の通過のための1つ以上のラインを備えてもよい。前記サービス流体の通過のための1つ以上のラインのパイプライン36のいくつかの部分は、ケーシング20の内部に設置されていてもよい。パイプライン36のこれらの部分は、排気煙道20の分布質量構成要素に関する長さに分布した質量を有する追加の構成要素であると考えられる。前記サービス流体の通過のための1つ以上のラインのパイプライン36のいくつかの部分は、ケーシング20の内部に設置されてもよい。
【0100】
有利には、ケーシング20の内部に設置された前記サービス流体の通過のための1つ以上のラインのパイプライン36のいくつかの部分は、長さに分布した質量を有する追加の構成要素として、上記の支持構造体51,52,53に接続されていてもよい。この場合、構造的に独立した各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、前記パイプライン36の1つ以上の部分を備えてもよい。
【0101】
好ましくは、換気ライン、エアベントライン、蒸気の通過のためのライン、及び油圧ラインに属するパイプライン36の部分は、支持構造体51,52,53に接続されているが、耐火性ラインのパイプラインは、安全上の理由からケーシング20の壁に直接取り付けられている。
【0102】
好ましくは、排気ガスの通過のためのパイプライン35の部分と、提供されているのであれば、サービス流体の通過のための1つ以上のラインのパイプライン36の第1モジュールに配置されている部分は、フレキシブルな接続部37によって、第1モジュールに隣接する第2モジュールに配置されているそれぞれのラインのパイプラインの部分に流体的に接続されている。このようにして、異なるモジュール50a~eを互いに構造的に固定することなく、様々なラインの流体的な連続性を確保することができる。
【0103】
好ましくは、添付図面、特に図12に示されているように、上記の支持構造体は、モジュールの主プラットフォーム51と、同じモジュール50a,50b,50c,50d,50eの各副プラットフォーム52との間の複数の構造的相互接続部53を備える。
【0104】
特に、好ましくは垂直であるこれらの構造的相互接続部53は、(モジュール50bに示すように)副プラットフォーム52を主プラットフォーム51に直接接続してもよいし、(例えば、モジュール50a及び50cに示すように)副プラットフォーム52を少なくとも1つの中間副プラットフォームを介して主プラットフォーム51に間接的に接続してもよい。
【0105】
有利には、図8~11に示すように、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eの支持構造体51,52,53は、内部に前記モジュールに属する集中質量構成要素と長さに分布した質量を有する構成要素とが配置されている、特にケージの形状である構造的に統合された支持フレームを形成する。
【0106】
1つのモジュールの副プラットフォーム52は、それぞれの主プラットフォーム51より上及び/又は下に配置されてもよい。
【0107】
好ましくは、1つのモジュールのすべての副プラットフォーム52は、モジュール50a,50b,50cに設けられているように、主プラットフォーム51より上に配置されてもよい。この場合、構造的相互接続部53は、主に圧縮下で動作する。しかし、モジュール50d及び50eで提示されているように、1つ以上の副プラットフォーム52が主プラットフォーム51より下に配置されてもよい実施形態が提供されてもよい。この場合、いくつかの構造的相互接続部53は、引張下でも動作し得る。
【0108】
好ましくは、1つのモジュールの各副プラットフォーム52は、それぞれの主プラットフォーム51を構成する構造体よりも薄くて軽い構造体で構成される。
【0109】
より具体的には、モジュールの主プラットフォーム51は、それぞれの全体のモジュール50a,50b,50c,50d,50eの全重量を支えるように構造的な大きさを有する。副プラットフォーム52は、代わりに、副次的な構造的機能を果たし、従って、実質的に以下に適している。
【0110】
ライン(より軽く、長さに分布した質量を有する構成要素)の支持を確保すること。
【0111】
ケーシングの垂直な伸長全体に沿って移動する可能性があり、メンテナンスの目的のためのプラントへのアクセスがあることを確保すること。
【0112】
これらの理由から、副プラットフォーム52を形成する構造体は、反対に、船舶のデッキと同様の構造体を有する各船舶のデッキでケーシング内部にプラットフォームを提供する先行技術の解決策と比較して、はるかに薄くて軽い構造体に減らすことができる。
【0113】
この好ましい構成は、ケーシング内の支持構造体に対して軽量化の大きな余地がある。例えば、20デッキの船舶では、排気煙道が4つのモジュールに分けられたと想定すると、約16デッキ分軽くできることを直接法で意味する。一般的に、ケーシング内の構造体の全体的な重量に対する低減の影響は、少なくとも40%のオーダーで見積もられ得る。
【0114】
好ましくは、モジュール50a,50b,50c,50d,50eにおける、それぞれの主プラットフォーム51の質量と、少なくとも1つの集中質量構成要素31,32,33,34の質量(存在する場合には2つ以上の集中質量構成要素の質量)との合計は、モジュール全体の質量の50%以上を構成し、さらに好ましくはモジュール全体の質量の75%から90%を構成する。
【0115】
好ましくは、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、その重心がそれぞれの主プラットフォーム51の近くに位置されるように構成されている。換言すると、各モジュールは、その重心が、主弾性体サスペンション61を通過する平面に可能な限り近く配置されるように構成されている。これにより、ケーシング内の前記モジュール50a,50b,50c,50d,50eの安定性がさらに促進される。従って、このようにして、船舶の動きによって前記モジュールに引き起こされるどんな振動でも減衰させるために、主プラットフォームに対して異なる高さでモジュールをケーシングに接続する安定化要素を使用する必要なく、モジュールの垂直な伸長を増加させることが可能である。
【0116】
有利には、添付図面に示されているように、モジュール50cの場合、主プラットフォーム51は、前記モジュール内部の異なる高さにいくつかの集中質量構成要素を配置するために、複数の平面にわたって延びてもよい。換言すると、主プラットフォーム51は、互いに同一平面上にない部分を備えてもよい。
【0117】
好ましくは、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、他のモジュールから構造的に独立しており、上記の主弾性サスペンション61によってのみケーシング20に機械的に接続されている。
【0118】
好ましくは、各主プラットフォーム51の主弾性サスペンション61は、それぞれのモジュールの重心に対して対称に配置されている。
【0119】
好ましい実施形態によれば、上記の集中質量構成要素31,32,33,34のうちの1つ又は複数、及び/又は、上記の長さに分布した質量を有する構成要素35,36のうちの1つ又は複数は、1つ以上の副弾性サスペンション62によって、支持構造体51,52,53に接続されていてもよい。好ましくは、特に図5及び図6に示されているように、集中質量構成要素31,32,33,34は、1つ以上の前記副弾性サスペンション62によって支持構造体51,52,53に接続され、一方、長さに分布した質量を有する構成要素35,36は、支持構造体51,52,53に直接接続されている。
【0120】
動作的には、排気煙道30からケーシング、従って、前記ケーシングに隣接する船舶の構造体への振動及び騒音の伝達をさらに削減するように、上記の副弾性サスペンション62の作用は、主弾性サスペンションの作用を合計する。従って、図15に模式的に示されている二段式インシュレータに類似していると見なすことができる、デュアルサスペンションシステムが形成される。
【0121】
好ましくは、デュアルサスペンションは、シングルサスペンションの効率が適していないとき、又は、非常に低い周波数だけでなく、別の周波数も減衰させる必要があるときのいずれかに使用される。これはまさに、主周波数と発射周波数の両方が考慮されるディーゼルエンジンの場合である。
【0122】
より具体的には、図15に模式的に示されているように、2自由度を有するデュアルサスペンションは、実際には、m1及びm2という2つの質量が関与する、2つの固有周波数を有し、本発明では、m1は、主プラットフォームの質量に、副プラットフォームの質量を加えた質量と、剛体的に接続されているすべてのパイプラインの質量(分布質量)との合計から成る中間質量である。この質量m1は、個々の吊り下げられた集中質量構成要素の質量m2と比較して、可能な限り大きくなければならず、必要ならば、その70%に達してもよい。
【0123】
従って、この具体的なケースでは、システムに関連して、共振周波数f1及びf0の組み合わせである下側fl及び上側fbの2つの周波数が存在することになる。
【0124】
f1は、固定されていると考えられる質量m2を有する、質量m1の共振周波数である。
【0125】
f0は、質量m1を考慮しない、質量m2の1自由度を有するシステムの共振周波数である。
【0126】
システムを説明するための2つの周波数の組み合わせにより、計算することが可能になる。
【0127】
f1は常にf1又はf0より小さい。
【0128】
より高い周波数fbについては2周波で、fbは常にf1又はf0より大きい。
【0129】
好ましくは、上記の主弾性サスペンション61及び存在する場合には上記の副弾性サスペンション62は、パッシブ弾性サスペンションによって構成される。特に、これらのパッシブ弾性サスペンションは、好ましくは、エラストマー材料、特にゴム又はシリコーンから成る本体から成るデカップリング構成要素(decoupling component)、金属バネ、金属マトリックスを備える弾性構成要素、及び/又は空気バネを備える。図16は、使用されるデカップリング装置(decoupling device)のタイプに基づいて、いくつかのタイプのパッシブサスペンションの動作範囲を模式的に示している。
【0130】
特定の実施形態によれば、主弾性サスペンション61及び存在する場合には副弾性サスペンション62は、以下によって構成されていてもよい。
【0131】
質量ダンパによって構成されているセミアクティブ弾性サスペンション。
【0132】
又はアクティブ弾性サスペンション。
【0133】
特に、「アクティブ弾性サスペンション」とは、サスペンションと共に、センサ(例えば、圧電加速度計又は受振器)、コントローラ及びアクチュエータによって構成されるフィードバックループを含む、振動を分離するためのアクティブシステム(AVC)を意味する。非常に感度の高い振動センサによって得られた信号は、振動を補う反力を瞬時に発生させる電気力学的アクチュエータを駆動する電子回路によって解析される。このアクティブ防振システムは、共振を有さず、どの周波数でも振動の増幅を有さない。
【0134】
有利には、パッシブ、セミアクティブ及びアクティブな弾性サスペンションの組み合わせが同じモジュール内で使用され得る実施形態が提供されてもよい。
【0135】
本発明のどちらかといえば好ましい一実施形態によれば、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、好ましくは船外で組立てられた自己支持構造体である。動作的には、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、上方からケーシング内に設置するために、船外で完全に形成される。
【0136】
次に、本発明による前記船舶1を建造するための方法について説明する。
【0137】
説明を簡単にするために、船舶1の全体の説明は再び繰り返さないが、先に提供された説明を参照する。
【0138】
本発明による前記船舶1を建造するための方法は、少なくとも以下の動作ステップを含む。
a)船体の内部に配置された複数のデッキ10を有し、少なくとも1つのエンジンルーム22からファンネル23まで前記複数のデッキ10を横切って垂直に延びる空洞21を区画する少なくとも1つのケーシング20を有する船体2を建造するステップ。
b)前記ケーシング20の内部に、前記少なくとも1つのエンジンルーム22に配置された1つ以上の内燃機関24によって生成されたヒュームのための少なくとも1つの排気煙道30を設置し、前記排気煙道30は、複数の構造体51,52,53によって前記ケーシングの内部に支持されている、複数の集中質量構成要素31,32,33,34と、長さに分布した質量を有する複数の構成要素35;36とを備るステップ。
【0139】
本発明によれば、上記の支持構造体51,52,53は、以下を備える。
【0140】
それぞれが、前記空洞21の内部に主支持基部を画定し、主弾性サスペンション61の介在によって船舶のデッキ10でケーシング20の壁に接続されている、複数の主プラットフォーム51。
【0141】
それぞれが、前記主プラットフォーム51の1つによってのみ直接的又は間接的に支持され、対応する主プラットフォーム51によって画定される主支持基部に対して異なる高さに配置された副支持基部を画定する、複数の副プラットフォーム52。
【0142】
上記の設置ステップであるステップb)において、支持構造体51,52,53及び排気煙道の構成要素31,32,33,34及び35;36は、構造的に独立したモジュール50a,50b,50c,50d,50eを形成するように集約されている。
【0143】
各構造的に独立したモジュールは、主プラットフォーム51と、前記主プラットフォーム上に配置された少なくとも1つの集中質量構成要素31,32,33,34と、前記主プラットフォームによって支持された1つ以上の可能な副プラットフォーム52と、前記主プラットフォーム51及び/又は前記1つ以上の可能な副プラットフォーム52に接続された長さに分布した質量を有する1つ以上の構成要素35;36とを備える。
【0144】
各主プラットフォーム51の主弾性サスペンション61は、前記それぞれのモジュール50a,50b,50c,50d,50eの総質量を利用して、前記エンジンによって生成され、前記排気煙道30によってケーシング20内に伝達される低周波振動の、前記それぞれのモジュール50a,50b,50c,50d,50eからケーシング20への伝達を削減するように大きさを有する。
【0145】
本発明のむしろ好ましい一実施形態によれば、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、好ましくは船外で組立てられた自己支持構造体である。動作的には、各モジュール50a,50b,50c,50d,50eは、上方からケーシング内に設置されるために、完全に船外で作られる。
【0146】
本発明は、本明細書中に示されている多くの利点を得ることを可能にする。
【0147】
本発明により、ケーシングやケーシングに隣接する船舶の構造体に干渉することなく、排気煙道からケーシング、従って、ケーシングに隣接する船舶の構造体への低周波及び超低周波振動の伝達を大幅に削減することも可能である。
【0148】
特に、ケーシングの周りに緩衝空間を配置する必要はもはやない。このようにして、従来技術の解決策では、ケーシングから発生する振動の強さと、振動によって発生する構造的な騒音のために、価値のある目的地(例えば、共同領域、レストランなど)から撤退していた、ケーシングの周りの容積が解放される。
【0149】
加えて、本発明の対象である技術的解決策は、従来の解決策と実質的に同様のコストで実施され得る。特に、船舶の構造体に干渉する必要はなく、ケーシング内の構造体を再構成するだけでよい。
【0150】
有利なことに、本発明、特にケーシング内の支持構造体及び排気煙道のモジュールへの分割により、排気煙道の設計は、船舶のデッキへの拘束が少なくなることによって、より大きな自由度を得ることができる。
【0151】
好ましい実施形態によれば、ケーシング内部の構造体を構造的に依存したモジュールとして構成することにより、船上重量を低減でき、重心高さを低減でき、船舶の安定性に利益をもたらす。
【0152】
ケーシング内の構造体を構造的に独立したモジュールに分割することにより、組立及び設置コストを削減する組立工法を適用することできる。
【0153】
従って、このようにして考えられた本発明は、設定された目的を達成する。
【0154】
もちろん、実際に実施される場合、前記発明は、それによって現在の保護範囲から逸脱することなく、上記で図示されたものとは異なる実施形態及び構成を想定することも可能である。
【0155】
さらに、すべての詳細は、技術的に同等の要素で代替することができ、要件に応じて、任意の寸法、形状、及び材料を使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】