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特開2022-20577架台、移動筐体システム、筐体自立支持方法および筐体積載方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020577
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】架台、移動筐体システム、筐体自立支持方法および筐体積載方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 3/08 20060101AFI20220125BHJP
   B66F 3/36 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B66F3/08 B
B66F3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115832
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2020123482
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517345683
【氏名又は名称】JUSETZマーケティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135002
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 直之
(72)【発明者】
【氏名】武智 剛
(72)【発明者】
【氏名】車 泳録
(57)【要約】
【課題】運搬可能な筐体を簡単に昇降させる技術を提供する。
【解決手段】移動筐体システムにおいて、車両や貨車などに搭載することによって運搬可能な筐体と、筐体を支持する架台とを設ける。そして、移動筐体システムの架台に、筐体を支持する支持部材12と、支持部材12と一体的に昇降する昇降部13と、昇降部13を昇降させるジャッキ15とを設ける。さらに、架台の支持部材12に、筐体と嵌合する第1嵌合部121を設ける。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬可能な筐体を支持する架台であって、
前記筐体を支持する支持部材と、
前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、
前記昇降部を昇降させるジャッキと、
を備え、
前記支持部材は、前記筐体と嵌合する第1嵌合部を備える架台。
【請求項2】
請求項1に記載の架台であって、
前記第1嵌合部は、前記昇降部の昇降方向と略垂直な方向に挿入されることにより前記筐体と嵌合する架台。
【請求項3】
請求項1または2に記載の架台であって、
前記支持部材と前記昇降部とは、着脱不能の状態で一体化されている架台。
【請求項4】
請求項1または2に記載の架台であって、
前記昇降部は、昇降部側嵌合部を備え、
前記支持部材は、前記昇降部側嵌合部と嵌合する第2嵌合部を備える架台。
【請求項5】
請求項4に記載の架台であって、
前記第2嵌合部は、前記昇降部の昇降方向と略垂直な方向に挿入されることにより前記昇降部側嵌合部と嵌合する架台。
【請求項6】
請求項4または5に記載の架台であって、
前記支持部材は、前記第1嵌合部が前記筐体と嵌合した状態で前記筐体内に格納される架台。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の架台であって、
前記ジャッキは、
長手方向に延びる支柱部と、
前記支柱部が螺入されるナット部材と、
前記ナット部材と前記昇降部との間に配置されるベアリング部と、
を備え、
前記ナット部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記ナット部材が前記長手方向に前記昇降部と一体的に昇降する架台。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の架台であって、
前記ジャッキは、
長手方向に延びるとともに、前記長手方向を中心軸として回転可能な支柱部と、
前記支柱部を回転可能に支持する基台と、
を備え、
前記支柱部は、前記昇降部に螺入されており、
前記昇降部は、前記支柱部の回転により前記長手方向に沿って昇降する架台。
【請求項9】
請求項8に記載の架台であって、
前記基台は、前記長手方向に延びる軸部材を備え、
前記軸部材が、前記支柱部と連結することにより、前記支柱部を支持する架台。
【請求項10】
請求項8に記載の架台であって、
前記基台は、
長手方向に延びるとともに、前記長手方向を中心軸として回転可能な軸部材と、
前記支柱部が回転可能な状態で、前記支柱部を支持する支柱支持部材と、
を備え、
前記軸部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記支柱支持部材が前記長手方向に前記支柱部と一体的に昇降する架台。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の架台であって、
前記第1嵌合部は、前記筐体のフレーム部材と嵌合する架台。
【請求項12】
運搬可能な筐体を支持する支持部材を備える架台であって、
長手方向に延びる支柱部と、
前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、
前記支柱部が螺入されるナット部材と、
前記ナット部材と前記昇降部との間に配置されるベアリング部と、
を備え、
前記ナット部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記ナット部材が前記長手方向に前記昇降部と一体的に昇降する架台。
【請求項13】
運搬可能な筐体と、
前記筐体を支持する架台と、
を備える移動筐体システムであって、
前記架台は、
前記筐体を支持する支持部材と、
前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、
前記昇降部を昇降させるジャッキと、
を備え、
前記支持部材は、前記筐体と嵌合する第1嵌合部を備える移動筐体システム。
【請求項14】
請求項13に記載の移動筐体システムであって、
前記筐体は、前記筐体のフレームを構成するフレーム部材を備え、
前記フレーム部材の一部は、筐体側嵌合部を構成しており、
前記第1嵌合部は、前記筐体側嵌合部と嵌合する移動筐体システム。
【請求項15】
請求項14に記載の移動筐体システムであって、
前記フレーム部材は、貫通孔が形成された鋼管であり、
前記筐体側嵌合部は、前記鋼管の端部であり、
前記第1嵌合部が前記鋼管の貫通孔に挿入されることにより、前記第1嵌合部と前記筐体側嵌合部とが嵌合する移動筐体システム。
【請求項16】
運搬可能な筐体と、
前記筐体を支持する架台と、
を備える移動筐体システムであって、
前記架台は、
前記筐体を支持する支持部材と、
長手方向に延びる支柱部と、
前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、
前記支柱部が螺入されるナット部材と、
前記ナット部材と前記昇降部との間に配置されるベアリング部と、
を備え、
前記ナット部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記ナット部材が前記長手方向に前記昇降部と一体的に昇降する移動筐体システム。
【請求項17】
請求項13ないし16のいずれかに記載の移動筐体システムであって、
前記筐体は、キャンピングハウスを構成している移動筐体システム。
【請求項18】
請求項13ないし16のいずれかに記載の移動筐体システムであって、
前記筐体は、キッチンユニットを構成する移動筐体システム。
【請求項19】
請求項13ないし16のいずれかに記載の移動筐体システムであって、
前記筐体は、貨物を収納するコンテナを構成する移動筐体システム。
【請求項20】
請求項13ないし19のいずれかに記載の移動筐体システムを用いて、運搬可能な筐体を自立させる筐体自立支持方法。
【請求項21】
請求項13ないし19のいずれかに記載の移動筐体システムを用いて、運搬可能な筐体を移動体に積載する筐体積載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体を支持しつつ、昇降させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運搬可能な筐体を、必要に応じて積み下ろしする技術が知られている。例えば、特許文献1には、筐体(車載用ハウス)を貨物自動車に対して脱着可能とすることにより、車載用ハウスを移動させる必要がないときには、当該車載用ハウスを取り外して貨物自動車の荷台から下ろす技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、車載用ハウスが備える複数のジャッキによって車載用ハウスの筐体を昇降させることにより、車載用ハウスを貨物自動車の荷台に積み下ろしする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2019-182172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の技術では、係合部材本体をジャッキ本体に固定金具によって装着する構成であり、固定金具はボルトとナットによってジャッキ本体に固定される構造である。したがって、特許文献1に記載のジャッキを使用する場合には、少なくとも固定金具のボルトを締めるためのスパナやレンチ等の工具が必要であった。また、当該ジャッキは、ハンドルを回転操作してリフト部を昇降させる機構であるが、一般的な車載用ハウスの重量を考慮すると、てこの原理を用いた工具(長い棒状の工具等)を用いなければ、当該ハンドルを手動で回転操作することは困難という問題もあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、可能であれば工具などを用いることなく、用いるとしても簡単に筐体を昇降させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、運搬可能な筐体を支持する架台であって、前記筐体を支持する支持部材と、前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、前記昇降部を昇降させるジャッキとを備え、前記支持部材は、前記筐体と嵌合する第1嵌合部を備える。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る架台であって、前記第1嵌合部は、前記昇降部の昇降方向と略垂直な方向に挿入されることにより前記筐体と嵌合する。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係る架台であって、前記支持部材と前記昇降部とは、着脱不能の状態で一体化されている。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1または2の発明に係る架台であって、前記昇降部は、昇降部側嵌合部を備え、前記支持部材は、前記昇降部側嵌合部と嵌合する第2嵌合部を備える。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る架台であって、前記第2嵌合部は、前記昇降部の昇降方向と略垂直な方向に挿入されることにより前記昇降部側嵌合部と嵌合する。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項4または5の発明に係る架台であって、前記支持部材は、前記第1嵌合部が前記筐体と嵌合した状態で前記筐体内に格納される。
【0012】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る架台であって、前記ジャッキは、長手方向に延びる支柱部と、前記支柱部が螺入されるナット部材と、前記ナット部材と前記昇降部との間に配置されるベアリング部とを備え、前記ナット部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記ナット部材が前記長手方向に前記昇降部と一体的に昇降する。
【0013】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る架台であって、前記ジャッキは、長手方向に延びるとともに、前記長手方向を中心軸として回転可能な支柱部と、前記支柱部を回転可能に支持する基台とを備え、前記支柱部は、前記昇降部に螺入されており、前記昇降部は、前記支柱部の回転により前記長手方向に沿って昇降する。
【0014】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る架台であって、前記基台は、前記長手方向に延びる軸部材を備え、前記軸部材が、前記支柱部と連結することにより、前記支柱部を支持する。
【0015】
また、請求項10の発明は、請求項8の発明に係る架台であって、前記基台は、長手方向に延びるとともに、前記長手方向を中心軸として回転可能な軸部材と、前記支柱部が回転可能な状態で、前記支柱部を支持する支柱支持部材とを備え、前記軸部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記支柱支持部材が前記長手方向に前記支柱部と一体的に昇降する。
【0016】
また、請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかの発明に係る架台であって、前記第1嵌合部は、前記筐体のフレーム部材と嵌合する。
【0017】
また、請求項12の発明は、運搬可能な筐体を支持する支持部材を備える架台であって、長手方向に延びる支柱部と、前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、前記支柱部が螺入されるナット部材と、前記ナット部材と前記昇降部との間に配置されるベアリング部とを備え、前記ナット部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記ナット部材が前記長手方向に前記昇降部と一体的に昇降する。
【0018】
また、請求項13の発明は、運搬可能な筐体と、前記筐体を支持する架台とを備える移動筐体システムであって、前記架台は、前記筐体を支持する支持部材と、前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、前記昇降部を昇降させるジャッキとを備え、前記支持部材は、前記筐体と嵌合する第1嵌合部を備える。
【0019】
また、請求項14の発明は、請求項13の発明に係る移動筐体システムであって、前記筐体は、前記筐体のフレームを構成するフレーム部材を備え、前記フレーム部材の一部は、筐体側嵌合部を構成しており、前記第1嵌合部は、前記筐体側嵌合部と嵌合する。
【0020】
また、請求項15の発明は、請求項14の発明に係る移動筐体システムであって、前記フレーム部材は、貫通孔が形成された鋼管であり、前記筐体側嵌合部は、前記鋼管の端部であり、前記第1嵌合部が前記鋼管の貫通孔に挿入されることにより、前記第1嵌合部と前記筐体側嵌合部とが嵌合する。
【0021】
また、請求項16の発明は、運搬可能な筐体と、前記筐体を支持する架台とを備える移動筐体システムであって、前記架台は、前記筐体を支持する支持部材と、長手方向に延びる支柱部と、前記支持部材と一体的に昇降する昇降部と、前記支柱部が螺入されるナット部材と、前記ナット部材と前記昇降部との間に配置されるベアリング部とを備え、前記ナット部材を前記長手方向を中心軸として回転させることによって、前記ナット部材が前記長手方向に前記昇降部と一体的に昇降する。
【0022】
また、請求項17の発明は、請求項13ないし16のいずれかの発明に係る移動筐体システムであって、前記筐体は、キャンピングハウスを構成している。
【0023】
また、請求項18の発明は、請求項13ないし16のいずれかの発明に係る移動筐体システムであって、前記筐体は、キッチンユニットを構成する。
【0024】
また、請求項19の発明は、請求項13ないし16のいずれかの発明に係る移動筐体システムであって、前記筐体は、貨物を収納するコンテナを構成する。
【0025】
また、請求項20の発明は、請求項13ないし19のいずれかの発明に係る移動筐体システムを用いて、運搬可能な筐体を自立させる筐体自立支持方法。
【0026】
また、請求項21の発明は、請求項13ないし19のいずれかの発明に係る移動筐体システムを用いて、運搬可能な筐体を移動体に積載する筐体積載方法。
【発明の効果】
【0027】
請求項1ないし11、13ないし15に記載の発明は、筐体を支持する支持部材と、支持部材と一体的に昇降する昇降部と、昇降部を昇降させるジャッキとを備え、支持部材は、前記筐体と嵌合する第1嵌合部を備える。これにより、筐体を支持させるときに、筐体側嵌合部と第1嵌合部とを嵌合させるだけでよい。したがって、工具あるいは複雑な作業が必要なく、作業効率が向上する。
【0028】
また、請求項12および16に記載の発明は、筐体を支持する支持部材と、長手方向に延びる支柱部と、支持部材と一体的に昇降する昇降部と、支柱部が螺入されるナット部材と、ナット部材と昇降部との間に配置されるベアリング部とを備える。そして、ナット部材を長手方向を中心軸として回転させることによって、ナット部材が長手方向に昇降部と一体的に昇降する。これにより、小さな力でナット部材を回すことが可能となる。したがって、筐体を昇降させるときの作業負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施の形態における移動筐体システムの概略の外観図である。
図2】第1の実施の形態における架台の支持部材と、昇降部と、接続部材とを示す図である。
図3】第1の実施の形態における架台が備えるジャッキを示す図である。
図4】昇降部をジャッキに嵌合させた状態を示す図である。
図5】筐体において外壁側嵌合部を取り除いた状態を示す部分概略図である。
図6】外壁の外壁側嵌合部を示す部分図である。
図7】外壁側嵌合部とフレーム部材との位置関係を示す概略図である。
図8】第1の実施の形態における架台が筐体に装着される様子を示す部分断面図である。
図9】第2の実施の形態における移動筐体システムを示す図である。
図10】第2の実施の形態における架台が備える支持部を示す図である。
図11】第2の実施の形態における接続部を示す図である。
図12】第2の実施の形態における架台が筐体に装着される様子を示す部分断面図である。
図13】第3の実施の形態における移動筐体システムを示す図である。
図14】第3の実施の形態における支持部を示す図である。
図15】第3の実施の形態における外壁側嵌合部を示す図である。
図16】第3の実施の形態における筐体に支持部材を挿入することによって、支持部を格納した状態を示す断面図である。
図17】第3の実施の形態における架台が筐体に装着される様子を示す部分断面図である。
図18】第4の実施の形態における移動筐体システムを示す部分断面図である。
図19】第4の実施の形態におけるベアリング部を示す図である。
図20】第4の実施の形態におけるベアリング部の斜視図である。
図21】第5の実施の形態における移動筐体システムを示す部分断面図である。
図22】第6の実施の形態における移動筐体システムを示す部分断面図である。
図23】連結部材の断面を示す図である。
図24】第7の実施の形態における移動筐体システムを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該説明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
【0031】
<1. 第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における移動筐体システム1の概略の外観図である。移動筐体システム1は、4つの架台10および筐体11から構成されている。なお、図1は、筐体11が自立している状態を示している。
【0032】
本実施の形態では、4つの架台10は、概ね筐体11の四隅に取り付けられており、筐体11を安定して自立するように支持する機能を有している。すなわち、架台10は、いわゆる自立架台を構成している。
【0033】
なお、筐体11を架台10のみで自立させるためには、3つ以上の架台10が必要である。すなわち、移動筐体システム1が備える架台10の数は、図1に示すように、4つに限定されるものではなく、3以上の数であればよい。移動筐体システム1が備える架台10の数は、筐体11の重量や強度、架台10の強度、各架台10の位置、あるいは、支持されたときの筐体11のバランス等に応じて、適宜決定することが好ましい。以下の実施の形態においても同様である。
【0034】
外壁110は、それぞれが、筐体11の内部と外部とを隔てる壁部材として機能する板状の部材である。すなわち、図1において図示を省略しているが、筐体11は、複数の外壁110が適宜配置されることによって、内部が空洞の略箱状の構造物となっている。各外壁110は、一般的には、板状あるいはシート状の様々な材料を積層することよって製造される部材である。ただし、各外壁110の材質や構造は、配置される位置や用途に応じて、互いに異なっていてもよい。
【0035】
図1に示す外壁側嵌合部111は、外壁110の一部分である。本実施の形態における外壁側嵌合部111は、いずれも外壁110の角端部に形成されている。ただし、外壁側嵌合部111の位置は、外壁110の角端部に限定されるものではない。
【0036】
外壁側嵌合部111の詳細は後述するが、外壁側嵌合部111は、架台10と嵌合する機能を提供する。したがって、本実施の形態における移動筐体システム1は、4つの外壁側嵌合部111を備えている。しかし、外壁側嵌合部111の数は、架台10の数に限定されるものではない。例えば、予備的な外壁側嵌合部111が外壁110の適当な位置に設けられていてもよい。すなわち、架台10によって筐体11を自立させるときにおいて、筐体11が備える全ての外壁側嵌合部111が利用されなければならないわけではない。
【0037】
図1に示すように、筐体11の外壁110には、扉112および窓113が取り付けられている。したがって、移動筐体システム1の利用者は、扉112を開放することにより、筐体11の内部に立ち入ることが可能となっている。また、利用者は、窓113によって、内部から外の景色を楽しんだり、内部の空気を換気することができる。また、ここでは図示を省略しているが、筐体11の内部には、家具類(例えば、椅子、机、ベッド、収納箱)や、電化製品(例えば、音響設備、ランプ、空調設備、冷蔵設備、ポンプ)などが必要に応じて備え付けられている。このように、第1の実施の形態における筐体11の内部空間は人の居住空間を形成しており、筐体11は、いわゆるキャンピングハウスを構成している。
【0038】
詳細は後述するが、筐体11は、移動体(トラックや貨車など)に搭載することが可能である。そして、移動体に搭載された状態で、当該移動体を移動させることにより、筐体11は容易に運搬可能である。例えば、筐体11を、トラックの荷台に搭載すれば、居住空間を備えた筐体11を任意の場所に移動させることができる。このように、筐体11の利用者は、当該トラックを簡単にキャンピングカーとして構成し、利用することが可能である。
【0039】
図2は、第1の実施の形態における架台10の支持部材12と、昇降部13と、接続部材14とを示す図である。なお、図2は、X軸およびZ軸を示している。X軸は、Z軸に略垂直な軸である。図1に示すように、架台10が筐体11を支持するときにおいて、Z軸は、理想的には、鉛直方向に平行となるように配置される。したがって、理想的に配置された場合、X軸は、水平方向に略平行となる。以下の説明では、特に断らない限り、Z軸は鉛直方向に平行となるように配置されており、上向きを正とするものとする。さらに、図2には、各部材の寸法が記載されている。しかし、図2に示す寸法は、あくまでも例示であって、ここに示す寸法に限定されるものではない。
【0040】
第1の実施の形態における支持部材12は、長手方向に延びる金属製の角材である。図2に示すように、支持部材12の内部には空洞120が形成されている。支持部材12としては、例えば、市販の角形鋼管を用いることができる。
【0041】
支持部材12の長手方向は、X軸方向である。したがって、空洞120は、X軸方向に延びるように配置され、X軸方向の両端部において外部に開口する。支持部材12に空洞120を形成して鋼管(パイプ)とする理由は、主に、重量とコストとを抑制するためである。したがって、本発明を実施するためには、空洞120は必須の条件ではない。
【0042】
支持部材12の(+X)側の端部は、第1嵌合部121を形成している。詳細は後述するが、少なくとも第1嵌合部121の上面((+Z)側の面)は、筐体11に当接し、筐体11を(-Z)側から支持する支持面としての機能を有している。
【0043】
支持部材12の(-X)側の端部122は、下面((-Z)側の面)が接続部材14に固設されている。本実施の形態における端部122は、接続部材14に溶接によって強固に固定されており、着脱不能に一体化されている。
【0044】
昇降部13は金属製の円筒状の鋼管である。したがって、昇降部13の内部には挿入孔130(図4参照)が形成されている。昇降部13は、Z軸方向を長手方向とする。したがって、挿入孔130は、Z軸方向に延びるように配置され、昇降部13の両端部において外部に開口する。第1の実施の形態における昇降部13の(+Z)側の端部は、接続部材14に溶接によって強固に固定されており、着脱不能に一体化されている。すなわち、挿入孔130の(+Z)側の開口部は、接続部材14によって閉じられており、結果として挿入孔130の(+Z)側は外部に開口していない。
【0045】
第1の実施の形態における架台10において、接続部材14は、支持部材12および昇降部13に固設されている。したがって、支持部材12、昇降部13、および、接続部材14は、一体的な構造物(逆L字状の構造物)を構成している。詳細は後述するが、昇降部13は、支持部材12と一体的に移動(昇降)する。したがって、移動筐体システム1は、筐体11を架台10によって支持するときに、支持部材12に昇降部13を取り付ける作業を必要としない。これにより、例えば、特開2019-182172号公報に記載されている技術に比べて、作業負担を軽減することができる。
【0046】
接続部材14は、薄板状の部材であって、すでに説明したように、(+Z)側の面が支持部材12に固設され、(-Z)側の面が昇降部13に固設されている。すなわち、接続部材14は、支持部材12と昇降部13とを接続する機能を有する部材である。ただし、接続部材14を用いることなく、支持部材12と昇降部13とを直接固設してもよい。あるいは、支持部材12の一部が昇降部13を形成する構造を採用してもよい。
【0047】
図2から明らかなように、支持部材12、昇降部13、および、接続部材14は、いずれも単純な形状および構造を有する部材である。したがって、これらの部材を製造する工程において、複雑な加工等を必要としない。さらに、これらの部材としては、例えば、市場に流通している市販品を部品として流用することも容易に可能である。したがって、移動筐体システム1は、専用部品を別途製造する場合に比べて、架台10の製造コストを抑制することができる。
【0048】
図3は、第1の実施の形態における架台10が備えるジャッキ15を示す図である。
【0049】
図3に示すジャッキ15は、支柱部16、基台17およびナット部材18を備えており、詳細は後述するが、一般的な手動式ジャッキを構成している。
【0050】
支柱部16は、長手方向に延びる丸棒状の部材部分であって、表面には、螺旋状のネジ山が形成されている。これにより、支柱部16は、いわゆるボルト部材を形成しており、後述するように、ナット部材18に螺入することが可能とされている。また、支柱部16の長手方向は、Z軸と平行である。
【0051】
ジャッキ15の基台17は、平坦面を有する板状の部材である。基台17の(+Z)側の面の中央部には、支柱部16の(-Z)側の端部が固設される。一方で、基台17の(-Z)側の面は、筐体11を支持するときに、地面等に接地する。
【0052】
架台10によって筐体11を支持するときにおいて、基台17が接地する地面が水平面であれば、基台17に固設された支柱部16の長手方向(Z軸方向)は鉛直方向となる。しかしながら、一般に、地面は水平面ではなく、多少の歪みや傾斜が存在する。したがって、実際には、Z軸方向は鉛直方向に完全に一致するとは限らず、多少のズレを生じることもある。しかし、重量物である筐体11を安定して支持するためには、水平な地面を選ぶことが好ましい。したがって、利用者は、可能な限り、水平な地面を選んで架台10を設置することが期待される。すなわち、Z軸方向は、概ね鉛直方向であるとみなすことができる。
【0053】
ナット部材18は、本体部と、本体部から外部に突出する一対のハンドル部とを備える。ナット部材18の本体部は、円筒状の部分であり、当該本体部の内部には貫通孔が形成されている。ナット部材18の本体部に形成される貫通孔は、貫通方向がZ軸方向である。図示を省略するが、ナット部材18の本体部において貫通孔を形成する内面には、支柱部16の表面に形成されたネジ山に対応したネジ溝が形成されている。すなわち、当該貫通孔は、いわゆる「ネジ穴」を構成している。
【0054】
ナット部材18の一対のハンドル部は、Z軸と略垂直方向に延びるように角柱状に突出する。ナット部材18は、利用者がナット部材18のハンドル部を操作することによって、支柱部16の長手方向の中心軸(Z軸と平行な軸)を中心として回転することが可能である。したがって、支柱部16をナット部材18の貫通孔に挿入した状態で、ナット部材18を回転させると、支柱部16が当該貫通孔に徐々に螺入されることとなる。
【0055】
ナット部材18の支柱部16に対する長手方向の位置(Z軸方向の位置)は、支柱部16がナット部材18に螺入される距離によって調整される。さらに、支柱部16がナット部材18に螺入される距離は、ナット部材18の回転方向および回転量によって決定することができる。
【0056】
図4は、昇降部13をジャッキ15に嵌合させた状態を示す図である。架台10では、丸形鋼管である昇降部13の挿入孔130に、ジャッキ15の支柱部16を挿入させることにより、昇降部13とジャッキ15とが嵌合する。
【0057】
このように、移動筐体システム1では、昇降部13の挿入孔130に支柱部16が挿入可能となるように、当該挿入孔130の開口部のサイズ(昇降部13を構成する鋼管の内径サイズ)と、支柱部16のサイズ(支柱部16を構成する丸棒部材の外径サイズ)とが決定されている。
【0058】
また、昇降部13の内面(挿入孔130を形成する面)には、ネジ溝は形成されていない。すなわち、昇降部13の挿入孔130は、支柱部16に対して、いわゆる「バカ穴」となっている。したがって、支柱部16が挿入された状態(支柱部16と昇降部13とが嵌合した状態)において、昇降部13は、支柱部16に沿って、支柱部16の長手方向に、摺動することが可能である。
【0059】
すでに説明したように、支柱部16の長手方向はZ軸方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。したがって、架台10が筐体11を支持するときにおいて、昇降部13が支柱部16の長手方向に摺動することは、昇降部13が支柱部16に沿って、上下方向に摺動することに相当する。以下の説明では、昇降部13が支柱部16に沿って摺動する方向を、図4に示すように、「昇降方向」と称する。
【0060】
ここで、架台10が筐体11を支持するときにおいて、支柱部16の長手方向はZ軸方向に略平行となるように配置される。すなわち、ナット部材18の支柱部16に対する長手方向の位置は、ナット部材18の高さ位置に相当する。したがって、利用者は、ハンドル部を操作して、ナット部材18を回転させるときに、その回転方向および回転量を調整することによって、ナット部材18の高さ位置を任意の位置となるように決定することができる。
【0061】
昇降部13は円筒状のパイプ部材であるため、昇降部13の開口側の端面は、リング形状である。そして、当該端面の外径サイズは、ナット部材18の貫通孔の(+Z)側の開口径サイズより大きい。したがって、昇降部13の開口側の端面は、ナット部材18の本体部の上面((+Z)側の面)に当接する。言い換えれば、昇降部13は、ナット部材18に挿入されることはない。すなわち、ナット部材18は、昇降部13の(-Z)方向へのストッパーとして機能する。したがって、ナット部材18の高さ位置は、昇降部13の高さ位置を規定する。
【0062】
したがって、ナット部材18が昇降方向に沿って上昇する方向に移動すると、昇降部13も同様の方向に上昇する。一方で、ナット部材18が昇降方向に沿って下降する方向に移動すると、昇降部13も同様の方向に下降する。
【0063】
以下の説明では、利用者が、ナット部材18を(+Z)方向に移動させる操作を「上昇操作」と呼ぶこととする。また、利用者が、ナット部材18を(-Z)方向に移動させる操作を「下降操作」と呼ぶこととする。なお、ナット部材18の内面にネジ山を形成し、支柱部16の表面にネジ溝を形成してもよい。
【0064】
図5は、筐体11において外壁側嵌合部111を取り除いた状態を示す部分概略図である。なお、図5に示すX軸およびY軸は、互いに略垂直な軸であり、かつ、いずれもZ軸に略垂直な軸である。また、図5において、説明の都合上、筐体11の内部の構成(例えば、内壁や床材等)などを省略している。
【0065】
筐体11は、図1に示す構成以外に、底部材114、および、フレーム部材115,116を備えている。
【0066】
底部材114は、筐体11の内部と外部とを隔てる板状の部材である。底部材114は、XY平面と略平行となるように配置されている。
【0067】
フレーム部材115,116は、図示しない他のフレーム部材とともに、筐体11のフレーム(骨格)を形成する部材である。第1の実施の形態におけるフレーム部材115,116は、長手方向に延びる金属製の角材(角形鋼管)である。
【0068】
このように、角形鋼管のフレーム部材115,116を採用してフレームを構成し、当該フレームに外壁110や底部材114などを取り付けることによって、重量を軽くするとともに、コストを抑制しつつ、筐体11の強度を高めることができる。
【0069】
フレーム部材116の(-X)側の端部は、筐体側嵌合部117を形成している。また、筐体側嵌合部117には、貫通孔117aが形成されている。貫通孔117aは、フレーム部材116を貫通する空洞のうちの、筐体側嵌合部117に存在する部分である。
【0070】
すでに説明したように、フレーム部材116は、角形鋼管である。したがって、筐体側嵌合部117は、単に角形鋼管の端部として形成された部分であって、その意味では特別な構造物ではない。言い換えれば、フレーム部材115の端部やフレーム部材116の(+X)側の端部にも、筐体側嵌合部117と同様の構造が存在する。すなわち、移動筐体システム1は、角形鋼管であるフレーム部材116が備える一般的な構造部分を、筐体側嵌合部117として兼用するものである。
【0071】
図5において、フレーム部材116は、X軸方向を長手方向とする。したがって、貫通孔117aは、X軸方向に延びるように配置される。これにより、筐体側嵌合部117の貫通孔117aは、筐体側嵌合部117(フレーム部材116)の内部から外部に向けて開口する。
【0072】
移動筐体システム1において、貫通孔117aのY軸方向のサイズ(フレーム部材116の開口の横サイズ)は、支持部材12(第1嵌合部121)の横サイズ(図2において、X軸およびZ軸に垂直な方向のサイズ)より大きい。また、貫通孔117aのZ軸方向のサイズ(フレーム部材116の開口の縦サイズ)は、支持部材12(第1嵌合部121)の縦サイズ(図2において、第1嵌合部121のZ軸方向のサイズ)より大きい。このように、移動筐体システム1において、各部材の形状およびサイズが決定されているため、後述するように、支持部材12の第1嵌合部121を、筐体側嵌合部117の貫通孔117aに挿入して、嵌め込むことが可能である。
【0073】
図6は、外壁110の外壁側嵌合部111を示す部分図である。なお、図6に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図5に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。
【0074】
外壁側嵌合部111は、すでに説明したように、外壁110の一部分である。外壁側嵌合部111の一部は矩形に切り取られており、貫通孔111aが形成されている。これにより、貫通孔111aは、外壁110において、外壁側嵌合部111に設けられた窓のようになっている。
【0075】
移動筐体システム1において、外壁側嵌合部111(外壁110)の貫通孔111aの開口の横サイズ(図6において、貫通孔111aのY軸方向のサイズ)は、支持部材12(第1嵌合部121)の横サイズ(図2において、X軸およびZ軸に垂直な方向のサイズ)より大きい。また、貫通孔111aの開口の縦サイズ(図6において、貫通孔111aのZ軸方向のサイズ)は、支持部材12(第1嵌合部121)の縦サイズ(図2において、第1嵌合部121のZ軸方向のサイズ)より大きい。このように、移動筐体システム1において、各部材の形状およびサイズが決定されているため、後述するように、支持部材12の第1嵌合部121を、外壁側嵌合部111の貫通孔111aに挿入することが可能である。
【0076】
外壁側嵌合部111には、蓋部材111bおよび回動部111cが取り付けられている。
【0077】
蓋部材111bは、薄板状の部材であって、回動部111cによってY軸方向を中心軸として回動する。より詳細には、蓋部材111bは、YZ平面に略平行な位置(以下、「閉じ位置」と称する。)と、XY平面に略平行な位置(限界開放位置)との間で回動する。なお、図6には、蓋部材111bが、閉じ位置と限界開放位置との間の位置に存在している状態を示している。
【0078】
回動部111cは、例えば、蝶番機構によって構成することができ、蓋部材111bを外壁側嵌合部111の所定の位置に回動可能に取り付ける機能を有している。
【0079】
図示を省略しているが、蓋部材111bが閉じ位置にある状態では、貫通孔111aの(-X)側には蓋部材111bが配置される。すなわち、蓋部材111bが閉じ位置に配置されている状態では、貫通孔111aは、(-X)側に向けて開放されることはなく、閉じられた状態となる。
【0080】
一方で、蓋部材111bが閉じ位置から限界開放位置に向けて回動すると、貫通孔111aの(-X)側の開口が徐々に開放される。少なくとも限界開放位置まで蓋部材111bが回動すると、(-X)側から(+X)方向に見たときに、貫通孔111aの(-X)側の開口が全露出する。このように、貫通孔111aの(-X)側の開口が全露出するときの蓋部材111bの回動位置を「開放位置」と称する。
【0081】
このような構成により、蓋部材111bおよび回動部111cは、貫通孔111aに対する蓋機構として機能する。なお、本実施の形態における蓋部材111bは、通常状態では、自重によって閉じ位置に配置されるものとする。
【0082】
したがって、筐体11が蓋部材111bおよび回動部111cを備えることにより、例えば、利用者が蓋部材111bを操作しない限り、貫通孔111aが外部に開放しないようにされている。これにより、移動筐体システム1は、貫通孔111aへの異物の混入を防止することができる。
【0083】
また、例えば、蓋部材111bの外面を、外壁110の外面と同色で塗装すれば、貫通孔111aを目立たなくすることもできる。すなわち、移動筐体システム1は、目隠しの機能も有しており、筐体11の美感を向上させることができる。
【0084】
なお、蓋機構は、板状の蓋部を1つのボルトで外壁に取り付け、当該ボルトを軸に蓋部をスライド回動させる構造であってもよい。すなわち、蓋機構は、貫通孔111aを外部に対して容易に開閉することができる機構であれば、ここに示した構造に限定されるものではない。
【0085】
また、蓋部材111bには、利用者が操作しやすいように、ツマミ部材が取り付けられていてもよい。また、蓋機構は、蓋部材111bを貫通孔111a側に押しつける付勢力を発生させるバネを備えていてもよい。また、蓋部材111bは、貫通孔111aに嵌め込まれる嵌合部を備えていてもよい。さらに、蓋部材111bは、閉じ位置において、貫通孔111aを密閉するシール部材を備えていてもよい。
【0086】
図7は、外壁側嵌合部111とフレーム部材116との位置関係を示す概略図である。なお、図7に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図5および図6に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。
【0087】
すでに説明したように、外壁110は、フレーム(フレーム部材115,116など)に固定される。フレームに外壁110を固定したときに、外壁側嵌合部111(外壁110)の貫通孔111aのYZ平面内における位置は、筐体側嵌合部117(フレーム部材116)の貫通孔117aのYZ平面内における位置に一致する。逆に言えば、そのような位置関係となるように、外壁側嵌合部111に貫通孔111aが形成されている。したがって、外壁110がフレームに固定されると、筐体11において、貫通孔111aと貫通孔117aとが連通するように接続される。
【0088】
図8は、第1の実施の形態における架台10が筐体11に装着される様子を示す部分断面図である。なお、図8に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図5ないし図7に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図8において、筐体11を構成する部材および支持部材12については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0089】
すでに説明したように、通常状態において、貫通孔111aの(-X)側の開口は、蓋部材111bによって閉じられている。一方で、利用者が蓋部材111bを操作して、蓋部材111bを開放位置に移動させると、貫通孔111aの(-X)側の開口は、全て露出する。
【0090】
蓋部材111bが開放位置にあるときに、貫通孔117aには、支持部材12の第1嵌合部121が外部から挿入され、嵌め込まれる。すなわち、第1の実施の形態において、貫通孔117aを形成する筐体側嵌合部117は、第1嵌合部121と嵌合する筐体側嵌合部を構成する。
【0091】
なお、第1嵌合部121と筐体側嵌合部117とが嵌合するとき、第1嵌合部121は、貫通孔111aにも挿入されており、第1嵌合部121は外壁側嵌合部111とも嵌合している。すなわち、本実施の形態では、貫通孔111aを形成する外壁側嵌合部111も、筐体側嵌合部の一部を構成している。
【0092】
移動筐体システム1は、架台10を筐体11に取り付けるときに、筐体側嵌合部117(外壁側嵌合部111を含む。)と、第1嵌合部121とを嵌合させるだけでよい。また、この作業は、いわば、大経の角形鋼管(フレーム部材116)の内部に、小経の角形鋼管(支持部材12)を挿入するだけの極めて簡単な作業であり、大きな力も工具類も不要である。したがって、作業効率が向上する。
【0093】
また、架台を筐体に挿入する場合、その挿入方向が昇降方向であれば、当該挿入に必要な距離だけ余分にジャッキを縮めておく必要がある。また、架台を昇降方向に移動させて筐体から取り外す場合、架台(ジャッキ)と地面との間に、充分な距離をとらなければ架台を下方に移動させることができず、取り外すことができない。すなわち、架台の着脱方向が昇降方向である場合には、着脱時に、例えば、ジャッキの操作量が増大する。したがって、利用者の作業負担が増大するという問題がある。
【0094】
これに対して、第1の実施の形態における第1嵌合部121は、昇降部13の昇降方向(Z軸方向)と略垂直な方向(X軸方向)に着脱される。したがって、例えば、地面と基台17とが、わずかでも離間していれば、それだけで架台10を筐体11に対して着脱することができる。したがって、着脱時のジャッキ15の操作量を抑制することができるため、利用者の作業負担を軽減することができる。
【0095】
また、支持部材12の第1嵌合部121は、筐体11のフレーム部材116の一部である筐体側嵌合部117と嵌合する。フレーム部材116は、筐体11を補強するための部材であるため、外力に対して強く、破損するおそれの低い強靱な部材として構成されている。このように、強靱な部材と嵌合して支持することにより、移動筐体システム1は、筐体11が破損することを抑制することができる。したがって、架台10は、安定して筐体11を支持することができる。
【0096】
また、フレーム部材116は、筐体を補強する部材として普通に用いられる部材である。すなわち、補強材であるフレーム部材116の一部を筐体側嵌合部117としても兼用することにより、筐体11に特別な嵌合部を設ける必要がない。したがって、移動筐体システム1は、筐体11のコストを抑制することができる。
【0097】
次に、トラックの荷台に積載された筐体11を積み下ろして、架台10によって自立させる筐体自立支持方法について説明する。
【0098】
まず、利用者は、蓋部材111bを上方に持ち上げて、貫通孔111aの外部側の開口を空ける(開放する)。そして、蓋部材111bを持ち上げた状態で、架台10を(+X)方向に移動させることによって、支持部材12の第1嵌合部121を貫通孔111aから挿入する。これによって、第1嵌合部121と筐体側嵌合部117とが嵌合する。次に、利用者は、嵌合させた架台10に上昇操作をすることにより当該架台10のジャッキ15を伸長させて、基台17を地面に接地させる。これによって、架台10が筐体11を支持することができる状態となる。
【0099】
4つの架台10に対して、上記の装着操作を完了すると、利用者は、トラックの荷台に筐体11を取り付けている固定具(図示せず)などを全て外す。これによって、トラックの荷台に締結されていた筐体11が開放される。ただし、このときの筐体11は、まだトラックの荷台に載置された状態である。
【0100】
4つのジャッキ15で上昇操作を行って、筐体11を上昇させ、トラックの荷台と筐体11とを離間させる。これによって、筐体11は、4つの架台10によって支持された状態となる。このときの状態は、厳密に言えば、自立状態である。
【0101】
次に、トラックを移動させて、トラックの荷台を筐体11の下方から外す。この状態のままで、筐体11を自立させておいてもよいが、一般に、筐体11は、低い位置に支持した方がより安定する。したがって、4つのジャッキ15で下降操作を行って、筐体11を可能な限り下降させることが好ましい。
【0102】
なお、トラックを移動した後には、必要に応じて、移動したトラックに、幌やあおり等の部品を取り付ける作業を行ってもよい。これによって、移動に使用したトラックは、元通りの状態に復帰する。したがって、当該トラックを別の用途に使用することができる。
【0103】
次に、架台10によって支持された状態の筐体11をトラックの荷台に積載する筐体積載方法について説明する。なお、筐体積載方法が実行されるまでに、筐体11が積載されるトラックについて、幌やあおり等の部品(筐体11を積載するために不要な部品)の取り外し作業は終了しているものとする。また、筐体11の下方(トラックと接触する位置)に補助的な架台や支柱といった構成を配置している場合は、これらを取り除いてから筐体積載方法を開始するものとする。
【0104】
まず、4つのジャッキ15で上昇操作を行って、筐体11を上昇させ、積載するトラックの荷台よも高い位置となるように筐体11を上昇させる。なお、架台10が、トラックの荷台よも高い位置に筐体11を自立支持している場合は、この工程は必要ない。
【0105】
次に、トラックを移動させて、トラックの荷台を筐体11の下方に配置する。その状態で、4つのジャッキ15で下降操作を行って、筐体11を下降させ、筐体11をトラックの荷台に載置する。
【0106】
載置を完了すると、トラックの荷台に載置された筐体11を、固定具(図示せず)によって当該トラックの荷台に固定する。これによって、筐体11は、トラックの荷台に締結される。
【0107】
ジャッキ15で下降操作を行って、ジャッキ15を縮めることにより、基台17を地面から離間させる。そして、架台10を(-X)方向に移動させることによって、支持部材12の第1嵌合部121を貫通孔111aから抜き取る。これによって、架台10が筐体11から取り外される。
【0108】
筐体11から架台10が取り外されると、筐体11はトラックとともに一体的に移動することができる状態となる。すなわち、筐体11は、トラックの荷台に積載された状態となる。
【0109】
以上のように、運搬可能な筐体11を支持する架台10は、筐体11を支持する支持部材12と、支持部材12と一体的に昇降する昇降部13と、昇降部13を昇降させるジャッキ15とを備える。そして、支持部材12は、筐体11と嵌合する第1嵌合部121を備える。これにより、筐体11を支持するときに、筐体11と第1嵌合部121とを嵌め込むだけでよい。したがって、工具や複雑な作業が必要なく、作業効率が向上する。
【0110】
また、第1嵌合部121は、昇降部13の昇降方向と略垂直な方向に挿入されることにより筐体11と嵌合する。これにより、昇降方向に嵌合する場合に比べて、筐体11に支持部材12を取り付ける作業が容易になる。
【0111】
また、支持部材12と昇降部13とは、着脱不能の状態で一体化されている。これにより、支持部材12を昇降部13に取り付ける作業が不要となる。したがって、作業負担が軽減される。
【0112】
また、筐体11は、筐体11のフレームを構成するフレーム部材115,116を備え、フレーム部材116の一部は、筐体側嵌合部117を構成しており、第1嵌合部121は、筐体側嵌合部117と嵌合する。このように、強靱な部材であるフレーム部材116に嵌合することにより、筐体11が破損することを抑制することができる。
【0113】
また、フレーム部材116は、貫通孔117aが形成された角形鋼管であり、筐体側嵌合部117は、角形鋼管の端部であり、第1嵌合部121が角形鋼管の貫通孔117aに挿入されることにより、第1嵌合部121と筐体側嵌合部117とが嵌合する。これにより、特殊な構造を設けなくても、第1嵌合部121と筐体側嵌合部117とを嵌合させることができる。
【0114】
なお、本実施の形態における外壁側嵌合部111(外壁110)は、挿入された第1嵌合部121(支持部材12)と接触する(そのようなサイズおよび配置位置となるように外壁側嵌合部111が設計されている。)。しかし、一般に、外壁110を構成する素材は、フレーム部材115を構成する素材に比べれば外力に対して弱く、筐体11の荷重が外壁110に過大に作用すると破損するおそれもある。したがって、外壁側嵌合部111と第1嵌合部121とが接触しないように、例えば、貫通孔111aのサイズをさらに大きくしてもよい。
【0115】
また、筐体11側において、外壁側嵌合部111および筐体側嵌合部117が筐体側嵌合部を構成する説明した。しかし、外壁110は、必ず第1嵌合部121と嵌合しなければならないものではない。例えば、フレーム部材116を(-X)軸方向にさらに延ばして、筐体側嵌合部117を貫通孔111aに挿入する構造にしてもよい。このような構造を採用することにより、第1嵌合部121は、外壁110と嵌合しない構成とすることができる。あるいは、外壁110において外壁側嵌合部111に相当する部分を取り除いてもよい。すなわち、第1嵌合部121(支持部材12)と筐体側嵌合部117(フレーム部材116)との嵌合を、外壁110が妨げない構造であれば、どのような構造が採用されてもよい。
【0116】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態における移動筐体システム1では、支持部材12と昇降部13とが接続部材14を介して溶接によって固設されていた。しかし、本発明は、このような構造に限定されるものではない。
【0117】
図9は、第2の実施の形態における移動筐体システム2を示す図である。
【0118】
第2の実施の形態における移動筐体システム2は、架台10の代わりに架台20を備える点が第1の実施の形態における移動筐体システム1と異なっている。以下の説明では、移動筐体システム2について、移動筐体システム1と同様の構成については、適宜、同符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0119】
図10は、第2の実施の形態における架台20が備える支持部22を示す図である。なお、図10に示すX軸およびZ軸は、図2ないし図4に示すX軸およびZ軸にそれぞれ対応する。第2の実施の形態における架台20は、支持部材12の代わりに、図10に示す支持部22を備えている。
【0120】
支持部22は、ストッパー220と、金属製の角形鋼管で構成される支持部材221とを有している。
【0121】
ストッパー220は、金属製の直方体形状の部材であって、図示を省略しているが、内部にX軸方向に貫通する空洞が形成されている。このようなストッパー220を構成する部材としては、例えば、フレーム部材116と同一の部材を、X軸方向の長さが所定のサイズとなるように切断した部材を用いることができる。ただし、このような部材に限定されるものではない。
【0122】
支持部材221は、すでに説明したように、金属製の角形鋼管である。第2の実施の形態における支持部材221として、例えば、第1の実施の形態における支持部材12と同様の部材を採用することができる。ただし、支持部材12と同様の部材に限定されるものではない。
【0123】
支持部材221の(+X)側の端部は、第1嵌合部222を形成している。詳細は後述するが、第1嵌合部222は、第1の実施の形態における第1嵌合部121と同様に、筐体11側の筐体側嵌合部117および外壁側嵌合部111と嵌合する。
【0124】
図10に示すように、支持部材221は、ストッパー220を貫通するように配置されている。支持部材221とストッパー220とは、例えば、溶接により固設されている。すなわち、ストッパー220は、支持部材221に対して固定されており、位置決めされている。
【0125】
支持部材221において、ストッパー220から(-X)側に突出した部分は、第2嵌合部223を形成している。第2嵌合部223の上面((+Z)側の面)には、支持部材221の内部に形成された空洞と、外部とを連通する貫通孔224が形成されている。貫通孔224の貫通方向は、Z軸と略平行方向である。なお、貫通孔224の機能については後述する。
【0126】
図11は、第2の実施の形態における接続部24を示す図である。なお、図11に示すX軸およびZ軸は、図10に示すX軸およびZ軸にそれぞれ対応する。
【0127】
接続部24は、昇降部側嵌合部241および接続部材242を備えている。
【0128】
昇降部側嵌合部241は、金属製の角形鋼管で構成される部材であり、内部に空洞240が形成されている。昇降部側嵌合部241の空洞240は、X軸方向に延びるように配置され、X軸方向の両端部において外部に開口している。言い換えれば、空洞240は、昇降部側嵌合部241をX軸方向に貫通している。
【0129】
昇降部側嵌合部241の空洞240には、(+X)側からX軸方向に沿って、支持部材221の第2嵌合部223が挿入される。すなわち、空洞240は、第2嵌合部223が挿入可能なサイズおよび形状とされており、昇降部側嵌合部241は、第2嵌合部223と嵌合する。また、昇降部側嵌合部241と嵌合した第2嵌合部223は、(+X)方向に移動させることによって、容易に、昇降部側嵌合部241から取り外すことが可能である。すなわち、支持部22は、接続部24に対して着脱自在である。
【0130】
このような昇降部側嵌合部241を構成する部材としては、例えば、フレーム部材116と同一の部材を、X軸方向の長さが比較的短くなるように(例えば、外観形状が略立方体となるように)切断した部材を用いることができる。あるいは、ストッパー220と同じ部材を適宜流用してもよい。ただし、このような部材に限定されるものではない。
【0131】
昇降部側嵌合部241は、下面((-Z)側の面)が接続部材242に固設されている。本実施の形態における接続部24では、昇降部側嵌合部241および接続部材242は溶接によって強固に固設されており、着脱不能に一体化されている。
【0132】
接続部材242は、薄板状の部材であって、すでに説明したように、(+Z)側の面が昇降部側嵌合部241に固設されている。一方、図11において図示を省略しているが、接続部材242の(-Z)側の面は、接続部材14と同様に昇降部13に固設されている。すなわち、接続部材242は、接続部24と昇降部13とを接続する機能を有する部材である。接続部材242は、例えば、接続部材14と同様の部材を採用することができる。ただし、接続部材242を用いることなく、昇降部側嵌合部241と昇降部13とを直接固設してもよい。
【0133】
図12は、第2の実施の形態における架台20が筐体11に装着される様子を示す部分断面図である。なお、図12に示すX軸およびZ軸は、図10および図11に示すX軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図12に示すY軸は、図8に示すY軸に対応する。図12において、筐体11を構成する部材、支持部22および接続部24については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0134】
図12に示すように、支持部材221の第2嵌合部223は、接続部24の昇降部側嵌合部241を貫通するように、X軸に平行な方向に沿って挿入されている。
【0135】
ストッパー220のYZ平面におけるサイズは、昇降部側嵌合部241の空洞240のYZ平面におけるサイズよりも大きい。すなわち、ストッパー220が空洞240に挿入されることはない。したがって、第2嵌合部223が所定の位置まで移動すると、ストッパー220の(-X)側の端部は、昇降部側嵌合部241の(+X)側の端部に当接する。また、ストッパー220は、すでに説明したように支持部材221に固設されており、第2嵌合部223との位置関係は変化しない。すなわち、ストッパー220は、昇降部側嵌合部241と嵌合した状態の第2嵌合部223の(-X)方向への移動の限界位置を規定する。
【0136】
また、支持部材221の第2嵌合部223において、ストッパー220側の端部から、貫通孔224の(+X)側の端部までの距離(サイズ)は、昇降部側嵌合部241のX軸方向のサイズよりも大きくなるように設計されている。したがって、例えば、ストッパー220と昇降部側嵌合部241とが当接するまで第2嵌合部223を、昇降部側嵌合部241の空洞240に挿入させると、第2嵌合部223は昇降部側嵌合部241の空洞240から、さらに(-X)側に突出し、貫通孔224が完全に露出する。
【0137】
貫通孔224を空洞240の(-X)側に露出させた状態で、(+Z)方向から、ボルト225を貫通孔224に挿入すると、ボルト225の頭の部分(貫通孔224に挿入されない部分)が(+Z)側に残る。(+Z)側に貫通孔224から突出したボルト225の頭の部分は、昇降部側嵌合部241の(-X)側の端部に当接し、第2嵌合部223が(+X)方向に移動することを規制する。すなわち、ボルト225は、ストッパー部材として機能する。
【0138】
このように、支持部22は、ストッパー220およびボルト225を備えることにより、第2嵌合部223と昇降部側嵌合部241とが嵌合した状態において、第2嵌合部223が、昇降部側嵌合部241から脱落することを防止することができる。
【0139】
なお、架台20を収納するときなどにおいて、支持部22を接続部24から取り外すときには、貫通孔224に挿入されているボルト225を(+Z)方向に抜き取ってから、第2嵌合部223を昇降部側嵌合部241から抜き取ればよい。
【0140】
貫通孔224は、ボルト225に対しては、いわゆる「バカ穴」として形成されており、ボルト225の貫通孔224への挿入、および、貫通孔224からの抜き取りは、工具などを必要としない簡単な作業である。したがって、架台10に比べて、架台20は、支持部22と接続部24との脱着という作業が増えるものの、利用者の作業負担を著しく増大させるほどのものではない。
【0141】
第1の実施の形態における移動筐体システム1では、支持部材12と昇降部13とが接続部材14を介して溶接によって固設されていた。このような構成を採用すれば、架台10を組み立てるときに、昇降部13に支持部材12を取り付ける必要がない。したがって、利用者の作業負担は軽減される。その一方で、支持部材12は、Z軸方向と垂直な方向に大きく突出する部材である。したがって、支持部材12と昇降部13とが固設されていると、架台10を収納するときに比較的大きなスペースを必要とする。
【0142】
これに対して、第2の実施の形態における移動筐体システム1は、支持部材221(支持部22)が、接続部24との間で着脱可能とされている。すなわち、架台20を自立架台として使用しないときには、支持部材221を接続部24から取り外しておくことができる。したがって、架台20は、架台10に比べてコンパクトに収納することができる。
【0143】
ボルト225が貫通孔224に挿入され、支持部22が接続部24に嵌合して一体化されると、その後、架台20は、架台10と同等に扱うことが可能となる。すなわち、移動筐体システム2の利用者は、第1嵌合部222(支持部材221)を、第1嵌合部121と同様に、外壁110の外壁側嵌合部111、および、フレーム部材116の筐体側嵌合部117と嵌合させることができる。したがって、架台20は、第1の実施の形態と同様に、筐体11に容易に取り付けることができる。
【0144】
また、架台20を自立架台として使用しないときには、第1の実施の形態と同様に、第1嵌合部222を貫通孔111aから抜き取るだけで、架台20を筐体11から容易に取り外すことができる。
【0145】
また、第2の実施の形態における第1嵌合部222が筐体11に対して着脱される方向は、第1の実施の形態と同様に、昇降方向に垂直なX軸方向である。
【0146】
ここで、第2の実施の形態における移動筐体システム2の利用者は、支持部22を筐体11に取り付けるときにおいて、支持部22のストッパー220が、外壁110の外壁側嵌合部111の外面に当接するまで、第1嵌合部222を(+X)方向に移動させる。
【0147】
図10において説明を省略したが、ストッパー220のYZ平面におけるサイズは、外壁110に形成された貫通孔111aのYZ平面におけるサイズよりも大きい。すなわち、ストッパー220が貫通孔111aに挿入されることはない。すでに説明したように、ストッパー220は、支持部材221に対して固設されている。したがって、第1嵌合部222(支持部材221)が貫通孔111aに挿入されつつ所定の位置まで移動すると、ストッパー220の(+X)側の端部が外壁110の外面に当接し、それ以上、支持部材221が(+X)方向に移動することはない。
【0148】
このように、ストッパー220は、第1嵌合部222の挿入深度(第1嵌合部222が筐体11に挿入される距離)の最大値を規定する。
【0149】
第1嵌合部222の挿入深度が大きいほど、ジャッキ15が(+X)側に配置されることになる。ジャッキ15が(+X)側に配置され過ぎると、例えば、基台17やナット部材18が、トラック(筐体11の下方に配置される荷台や車輪など)と干渉するおそれが生じる。基台17やナット部材18が筐体11の下方に配置されている状態で、利用者が気づかずにトラックを移動させると、トラックが架台20と接触して倒れ、大事故になるおそれもある。
【0150】
支持部22において、ストッパー220の(+X)側の端部の位置は、第1嵌合部222の挿入深度が適切な値となるように位置決めされている。そのため、架台20では、利用者が、作業時に特別意識しなくても、第1嵌合部222の挿入深度が大きくなり過ぎることはない。したがって、移動筐体システム2は、利用者に意識させる必要がないので、作業負担を軽減することができる。
【0151】
なお、ストッパー220を備えていても、第1嵌合部222の挿入深度を浅くすることは支持部22の構造上可能である。第1嵌合部222の挿入深度が浅いと、筐体11の重さが支持部材221の先端部分に集中することになり、架台20が破損するおそれがある。したがって、利用者は、第1嵌合部222の挿入深度が浅すぎることのないように架台20を設置する必要がある。
【0152】
しかしながら、支持部22において、ストッパー220の(+X)側の端部の位置は、第1嵌合部222の挿入深度が適切な値となるように位置決めされている。言い換えれば、ストッパー220の(+X)側の端部の位置は、当該位置まで第1嵌合部222が挿入されたならば、第1嵌合部222の挿入深度が浅すぎることのない位置(強度設計上、架台20が破損することがない位置)として規定されている。したがって、利用者は、第1嵌合部222の挿入深度が浅すぎないか否かを意識しなくても、単純に、ストッパー220が外壁110と当接するまで挿入するだけでよい。したがって、移動筐体システム2は、利用者の作業負担を軽減することができる。
【0153】
以上のように、第2の実施の形態における移動筐体システム2は、架台20を備えており、架台20は、昇降部側嵌合部241を備え、支持部材221は、昇降部側嵌合部241と嵌合する第2嵌合部223を備える。これにより、支持部材221と昇降部13とを着脱自在に構成することができる。これにより、架台20の収納性能が向上する。また、昇降部13が支持部材221に単に当接する場合に比べて、例えば、作業中の昇降部13のズレを抑制することができる。
【0154】
また、第2嵌合部223は、昇降部13の昇降方向と略垂直な方向に挿入されることにより昇降部側嵌合部241と嵌合する。これにより、昇降方向に嵌合する場合に比べて、昇降部13に支持部材221を取り付ける作業が容易になる。
【0155】
なお、第2の実施の形態における支持部22において、ストッパー220と支持部材221とは、別部材であると説明した。しかし、これらの構成を1つの部材として製造してもよい。
【0156】
また、ストッパー220は金属製として説明したが、例えば、硬質ゴムなどでもよい。金属よりも柔らかい素材でストッパー220を構成することにより、ストッパー220が外壁110(外壁側嵌合部111)に当接するときに、外壁110が傷つくことを抑制することができる。
【0157】
また、ストッパー部材は、ボルト225に限定されるものではない。例えば、ボルト225の代わりに、Z軸方向のサイズが第2嵌合部223のZ軸方向のサイズより充分に長い棒状部材を用いてもよい。このような棒状部材を用いれば、(-Z)側の端部が第2嵌合部223の内面に当接するまで最大限に貫通孔224に挿入したとしても、Z軸方向のサイズが大きいために、(+Z)側の端部が貫通孔224から(+Z)側に突出する。
【0158】
また、支持部22は、適当な長さのチェーン部材を備えていてもよい。そして、当該チェーン部材の一端を第2嵌合部223の内面(あるいはストッパー220の外面)に溶接等により固定するとともに、他端をボルト225の頭に溶接等により固定する。このような構成により、ボルト225の紛失を防止することができる。ボルト225は、容易に調達可能な部材で代用することも可能であるが、ボルト225がチェーン部材によって支持部材221に固定されていれば、利用者は、必要なときに確実にボルト225を使用することができる。
【0159】
また、ストッパー220に相当する構造は、第1の実施の形態における支持部材12にも容易に適用することができる。その場合には、支持部材12(架台10)を筐体11に取り付ける作業において、本実施の形態と同様に、作業負担を軽減することができる。
【0160】
さらに、第1嵌合部222を貫通孔111aに挿入することによって支持部22を筐体11に取り付けてから、支持部22に接続部24を取り付けてもよい。
【0161】
<3. 第3の実施の形態>
第2の実施の形態における移動筐体システム2は、支持部22と昇降部13(接続部24)とを取り外し可能な構造とすることによって、架台20の収納時のスペースを抑制する構成であった。しかし、収納時のスペースを抑制する構成は移動筐体システム2の構成に限定されるものではない。
【0162】
図13は、第3の実施の形態における移動筐体システム3を示す図である。
【0163】
第3の実施の形態における移動筐体システム3は、架台30および筐体31を備える。以下の説明では、移動筐体システム3について、第2の実施の形態における移動筐体システム2と同様の構成については、適宜、同符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0164】
筐体31は、外壁110の代わりに、外壁310を備えている点が筐体11と異なっている。また、外壁310は、外壁側嵌合部111の代わりに外壁側嵌合部311が形成されていることが外壁110と異なっている。
【0165】
図14は、第3の実施の形態における支持部32を示す図である。なお、図14に示すX軸およびZ軸は、図10および図11に示すX軸およびZ軸にそれぞれ対応する。
【0166】
第3の実施の形態における支持部32は、ストッパー220を備えていないことと、壁部材326およびツマミ327を備えていることが第2の実施の形態における支持部22と異なっている。
【0167】
第3の実施の形態における支持部材221は、所定の位置に着色領域328が定義されている。支持部材221は、着色領域328が塗料で着色されている一方で、他の部分は少なくとも着色領域328とは異なる色(例えば、部材の色)となっている。これにより、利用者が一見して着色領域328の位置を把握することができるようになっている。
【0168】
壁部材326は、板状の部材であって、第2嵌合部223の(-X)側に固設されている。ツマミ327は、長手方向に延びる棒状の部材であって、壁部材326に取り付けられている。
【0169】
図15は、第3の実施の形態における外壁側嵌合部311を示す図である。なお、図15に示すX軸およびZ軸は、図14に示すX軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図15に示すY軸は、図6に示すY軸に対応する。
【0170】
外壁側嵌合部311は、蓋部材111bおよび回動部111cの代わりに、嵌合部312,313を備える点が外壁側嵌合部111と異なっている。したがって、図15において図示されていないが、外壁側嵌合部311には、外壁側嵌合部111と同様に、貫通孔111aが形成されている。
【0171】
すでに説明したように、支持部32は、ストッパー220に相当する部材を備えていない。したがって、移動筐体システム3では、貫通孔111aおよび貫通孔117aが連通することによって形成される空洞内に、支持部32の全体を挿入させることが可能である。図15は、外壁側嵌合部311に支持部材32が挿入された状態を図示している。
【0172】
図15において矢印で示すように、支持部材32のツマミ327は、壁部材326に対して回動可能に取り付けられている。すなわち、利用者がツマミ327を操作することにより、ツマミ327は、図15において実線で示す位置(以下、「施錠位置」と称する。)と、図15において仮想線(二点鎖線)で示す位置(以下、「解錠位置」と称する。)との間で回動する。
【0173】
外壁側嵌合部311の嵌合部312,313は、金属製の板状の部材を、適宜、折り曲げた形状の部材である。嵌合部312は、(+Z)側に配置される。また、嵌合部313は、(-Z)側に配置される。嵌合部312,313は、いずれも、外壁側嵌合部311(外壁310)の外面に、例えば溶接などによって固設される。
【0174】
図16は、第3の実施の形態における筐体31に支持部材221を挿入することによって、支持部32を格納した状態を示す断面図である。なお、図16に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図15に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。
【0175】
ツマミ327が施錠位置に配置されると、ツマミ327の両端部は、図16に示すように、嵌合部312,313と外壁側嵌合部311(外壁310)との間に形成された隙間に嵌め込まれる。すなわち、ツマミ327と嵌合部312,313とが嵌合する。
【0176】
ツマミ327と嵌合部312,313とが嵌合すると、ツマミ327が嵌合部312,313に当接するために、支持部32の(-X)方向への移動を妨げる。このように、ツマミ327および嵌合部312,313は、筐体31内に収納された支持部32が筐体11から抜け落ちることを防止する脱落防止機構として機能する。
【0177】
また、ツマミ327が施錠位置に配置されると、ツマミ327のZ軸方向のサイズは、貫通孔111aのZ軸方向のサイズよりも大きくなる。すなわち、ツマミ327が外壁310に干渉する状態となるために、支持部32の(+X)方向への移動を妨げる。これにより、ツマミ327は、支持部32が筐体31内に完全に埋没することを防止する埋没防止機構として機能する。
【0178】
一方で、ツマミ327を解錠位置に配置すると、ツマミ327は、嵌合部312,313との嵌合が解消される。したがって、利用者は、支持部32を筐体31から引き出す((-X)方向に移動させる)ことが可能となる。
【0179】
図17は、第3の実施の形態における架台30が筐体31に装着される様子を示す部分断面図である。なお、図17に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図15および図16に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。図17において、筐体31を構成する部材、支持部32および接続部24については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0180】
支持部32(第2嵌合部223)を接続部24(昇降部側嵌合部241)に嵌合させるときには、ツマミ327を解除位置に配置する。ツマミ327を解錠位置としたときのツマミ327のZ軸方向のサイズは、図15に示すように、支持部材221のZ軸方向のサイズよりも小さい。したがって、ツマミ327を解除位置に配置することにより、第2嵌合部223が昇降部側嵌合部241と干渉することを避けることができる。すなわち、架台30において、第2嵌合部223を昇降部側嵌合部241と嵌合させることにより、支持部32を、第2の実施の形態と同様に、接続部24に取り付けることができる。
【0181】
このように、支持部32を筐体31から引き出して、接続部24に取り付けることにより、架台30は、筐体31を支持することができる状態となる。
【0182】
ここで、第3の実施の形態において、利用者が、第1嵌合部222(支持部材221)の挿入深度を適切に決定する手法について説明する。
【0183】
第2の実施の形態における移動筐体システム1では、ストッパー220を設けることによって、第1嵌合部222の最大挿入深度を決定する構成であった。しかし、支持部32にストッパー220のように外壁310と干渉する部材を設けると、支持部32を筐体31に格納できなくなる。したがって、すでに説明したように、支持部32はストッパー220に相当する構成を備えていない。
【0184】
第3の実施の形態における利用者は、支持部32を引き出すときに、支持部材221の着色領域328を目印とする。
【0185】
支持部32において、着色領域328が全て筐体31に埋没して、着色領域328が視認できないときは、第1嵌合部222の挿入深度が深すぎることを示している。また、着色領域328が全露出して、さらに(+X)側の無塗装領域が露出して視認できるときは、第1嵌合部222の挿入深度が浅すぎることを示している。したがって、着色領域328が視認でき、かつ、着色領域328の(+X)側の領域が視認できない位置まで、支持部32を引き出すことにより、利用者は第1嵌合部222の挿入深度を適切に決定することができる。
【0186】
以上の構成により、第3の実施の形態における移動筐体システム3は、第2の実施の形態における移動筐体システム2と同様の効果を得ることができる。
【0187】
また、支持部材221は、第1嵌合部222が筐体31と嵌合した状態で筐体31内に格納されることにより、支持部材221の格納スペースを確保することができる。特に、フレーム部材116の空洞(貫通孔117a)を、支持部材221の収納スペースとして使用することにより、デッドスペースを有効に活用することができる。さらに、支持部32を架台30として使用するときには、支持部材221を引き出すだけでよいため、例えば、支持部材221を格納庫等から所定の位置まで持参する必要がなく、作業負担が軽減される。
【0188】
また、支持部材221に取り付けられた壁部材326が、第1および第2の実施の形態における蓋部材111bと同様の効果を奏するため、筐体11内への異物の進入を防止することができる。
【0189】
なお、着色領域328は、帯状の領域として定義されていた。この場合、着色領域328のX軸方向の幅は、第1嵌合部222の挿入深度の許容範囲を示していると言える。ただし、着色領域328は、このような形状の領域に限定されるものではなく、例えば、線状の領域として定義されてもよい。
【0190】
また、例えば、筐体31をクレーンなどで吊り下げて移動させるときには、筐体31から引き出した支持部32に吊り下げ用のケーブルなどを装着することもできる。
【0191】
<4. 第4の実施の形態>
図18は、第4の実施の形態における移動筐体システム4を示す部分断面図である。図18では、第4の実施の形態における架台40が筐体側嵌合部117に装着される様子を示す。なお、図18に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図8に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図18において、筐体11を構成する部材および支持部材12については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0192】
第4の実施の形態における移動筐体システム4は、架台10の代わりに架台40を備える点が、第1の実施の形態における移動筐体システム1と異なっている。以下の説明では、移動筐体システム4について、移動筐体システム1と同様の構成については、適宜、同符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0193】
架台40は、ベアリング部49を備えている点が架台10と異なっている。ベアリング部49は、昇降部13の下方、ナット部材18との間に配置されている。
【0194】
図19は、第4の実施の形態におけるベアリング部49を示す図である。なお、図19において、転動体490以外の部材は、Z軸方向に平行な面における断面を示す。また、図19において、2個の転動体490のみを図示しているが、ベアリング部49はさらに多くの転動体490を備えている。
【0195】
ベアリング部49は、複数の転動体490、保持器491、および、一対の軸軌道板492を備えている。これにより、ベアリング部49は、一般的なスラストボールベアリングを構成している。
【0196】
転動体490は、金属製の球体である。また、保持器491は、リング状の金属製部材であって、複数の転動体490を回転自在に保持する機能を有している。軸軌道板492は、リング状の金属製部材であって、転動体490と当接する溝が円周状に形成されている。一対の軸軌道板492は、図19に示すように、上下方向から保持器491を挟むように配置される。複数の転動体490、保持器491、および、一対の軸軌道板492は、いずれも互いに固定されることはない。なお、ベアリング部49の構造は、一般的な構造であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0197】
図20は、第4の実施の形態におけるベアリング部49の斜視図である。なお、図20において、保持器491の図示を省略している。
【0198】
すでに説明したように、保持器491および軸軌道板492はリング状の部材である。したがって、これらの部材が同心状に積層されることによって、ベアリング部49には、Z軸方向に貫通する貫通孔493が形成される。
【0199】
架台10では、ベアリング部49の貫通孔493に対して、(-Z)側から支柱部16を挿入することによって、ベアリング部49を取り付ける。より詳しくは、まず、支柱部16をナット部材18に螺入させて、支柱部16をナット部材18から(+Z)側に突出させる。次に、支柱部16に、下側の軸軌道板492、保持器491、上側の軸軌道板492の順で、嵌め込む。これにより、ナット部材18の上方にベアリング部49が配置される。次に、利用者は、昇降部13の空洞130に支柱部16を嵌め込む。
【0200】
したがって、(-Z)側の軸軌道板492の(-Z)側の面にはナット部材18が当接する。また、(+Z)側の軸軌道板492の(+Z)側の面には昇降部13が当接する。
【0201】
第1の実施の形態における架台10について、利用者は、ナット部材18を操作して筐体11を昇降させると説明した。しかしながら、一般的に想定され筐体11の重量からすれば、筐体11を支持した状態でナット部材18を、直接、人の手で操作することは困難である。したがって、その場合には、ナット部材18に長い棒状の工具を嵌め込んで、当該工具を操作してナット部材18を回転させる。
【0202】
しかし、第4の実施の形態における架台40は、ベアリング部49を備えている。したがって、昇降部13に対して(-Z)方向に大きな力が加わったとしても、比較的小さな力でナット部材18を回転させることができる。
【0203】
発明者達が行った実験では、架台10を用いた場合にはレンチなどの長尺工具を使わなければナット部材18を回転させることができなかった状況であっても、架台40を用いた場合には指一本でナット部材18を回転させることができた。
【0204】
以上のように、第4の実施の形態における架台40は、長手方向に延びる支柱部16と、支柱部16に螺入されることにより長手方向に沿って昇降するナット部材18と、ナット部材18が長手方向に昇降することによって、ナット部材18および支持部材12と一体的に昇降する昇降部13と、ナット部材18と昇降部13との間に配置されるベアリング部49とを備える。これにより、小さな力でナット部材18を回すことが可能となる。したがって、筐体11を昇降させるときの作業負担が軽減される。
【0205】
なお、第4の実施の形態では、架台10にベアリング部49を設ける例で説明したが、架台20,30においてもベアリング部49を取り付けることは可能である。すなわち、昇降部13の(+Z)側の構造にかかわらず、ベアリング部49を設けることによって作業負担を軽減することができる。
【0206】
<5. 第5の実施の形態>
上記実施の形態では、ナット部材18を操作することによって筐体11,31を昇降させる例について説明した。しかし、操作対象は、ナット部材18に限定されるものではない。
【0207】
図21は、第5の実施の形態における移動筐体システム5を示す部分断面図である。図21では、第5の実施の形態における架台50が筐体側嵌合部117に装着される様子を示す。なお、図21に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図8に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図21において、筐体11を構成する部材および支持部材12については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0208】
第5の実施の形態における移動筐体システム5は、架台10の代わりに架台50を備える点が、第1の実施の形態における移動筐体システム1と異なっている。以下の説明では、移動筐体システム5について、移動筐体システム1と同様の構成については、適宜、同符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0209】
第5の実施の形態における架台50は、昇降部13、接続部材14およびジャッキ15の代わりに、昇降部53、接続部材54およびジャッキ55を備える点が、第1の実施の形態における架台10と異なっている。
【0210】
本実施の形態における昇降部53は、一般的な六角ナットを流用することによって実現される部材である。このように、市場に流通する既製品を使用することによって昇降部53の製造コストを抑制することができる。ただし、昇降部53は、既製品の流用に限定されるものではなく、専用品であってもよい。
【0211】
図示は省略するが、昇降部53には、Z軸方向に貫通する孔が形成されており、当該孔の内面にはネジ溝が形成されている。昇降部53のネジ溝は、後述する支柱部56の表面に形成されたネジ山に対応したネジ溝となっている。したがって、本実施の形態における移動筐体システム5において、ボルト部材としての構造を有する支柱部56を、昇降部53に螺入することができる。
【0212】
接続部材54は、例えば、第1の実施の形態における接続部材14と同様の部材(プレート状の部材であって、第1面および第2面を有する。)を用いることができる。本実施の形態における接続部材54の第1面は、昇降部53の側面(Z軸と平行な面)に溶接により固設されている。また、接続部材54の第2面は、支持部材12の端部122に空洞120を塞ぐように溶接により固設されている。このように、昇降部53および支持部材12が接続部材54を介して固設されることにより、昇降部53と支持部材12とを強固に固設することができる。ただし、昇降部53および支持部材12を一部材として製造してもよい。例えば、支持部材12の端部122に、直接、支柱部56を螺入するための貫通孔を設けてもよい。
【0213】
第1の実施の形態における架台10では、昇降部13の上端部(上面)に接続部材14の裏面が固設され、当該接続部材14の上面に支持部材12の端部底面が固設されていた。しかし、第5の実施の形態における架台50では、昇降部53の側面に接続部材54が固設され、支持部材12の端部122の側面に接続部材54が固設されている。このように、互いの位置関係は異なっているが、第5の実施の形態における移動筐体システム5においても、昇降部53および支持部材12は、接続部材54を介して、互いに固設されている。
【0214】
ジャッキ55は、支柱部16および基台17の代わりに、支柱部56および基台57を備えている点が、第1の実施の形態におけるジャッキ15と異なっている。また、ジャッキ55は、操作部59を備えている。
【0215】
支柱部56は、長手方向(Z軸方向)に延びる円柱部に、操作部59が固設された構造である。支柱部56の円柱部は、表面にネジ山が形成されている。すなわち、支柱部56の円柱部は、ボルトの軸部材(ネジ部材)を構成している。
【0216】
本実施の形態における操作部59は、一般的な長ナット(六角ナット)として、円柱部とは別に製造された部材を流用している。操作部59は、すでに説明したように、支柱部56において、円柱部の(+Z)側の端部に固設されている。操作部59は、一般的な六角ナットと同様に、外周側面が六角形状となっている。したがって、操作部59をレンチやスパナで操作することにより、支柱部56(円柱部)を長手方向を中心軸として回転させることができる。上記実施の形態におけるジャッキ15は、ナット部材18を回転させることによって昇降部13を昇降させる構成であった。しかし、ジャッキ55は、支柱部56を回転させることによって昇降部53を昇降させる構成である。
【0217】
なお、支柱部56は、複数部材(操作部59と円柱部)を互いに固設する構造ではなく、一部材から構成される構造としてもよい。例えば、支柱部56は、円柱部の上端部の外面形状が六角形状になるように削って製造してもよい。また、本実施の形態における操作部59の外径サイズは、支柱部56の円柱部の外径サイズより小さい。これは、操作部59が、昇降部53に形成された貫通孔を通過できるようにするためである。しかし、支柱部56の下端を昇降部53の上部から螺入させるように作業するとすれば、操作部59が昇降部53を通過できるように設計する必要はない。したがって、例えば、支柱部56が、頭部(操作部59に相当する。)を有する巨大な六角ボルトとして一体的に製造されてもよい。すなわち、支柱部56を長手方向を中心軸として回転させることができる構造であれば、支柱部56の構造やサイズはここに示した例に限定されるものではない。
【0218】
図21に示すように、基台57は、板状部材570および取付部571を有する。
【0219】
板状部材570の(-Z)側の面は、基台17と同様に、地面等に当接する接地面を構成している。したがって、ジャッキ55が基台57を備えることにより、ジャッキ55を安定的に地面に設置することができる。
【0220】
取付部571は、円筒のパイプ部材であって、Z軸方向に沿う向きに配置される。取付部571の(-Z)側の端部は、板状部材570の中央部に固設されている。これにより、取付部571の内部(パイプ部材の空洞部)は、(+Z)側に開口するとともに、(-Z)側は板状部材570により閉じられている。
【0221】
取付部571の内部空間は、Z軸方向に延びる円柱形状である。そして、取付部571の内径は、支柱部56の外径より大きい。したがって、取付部571の内部には、(+Z)側から支柱部56の(-Z)側の端部を挿入することができる。
【0222】
なお、取付部571の内径が大きすぎると、支柱部56が安定しない。すなわち、取付部571の内径のサイズは、支柱部56の外径に応じて、挿入可能であり、かつ、安定するサイズとなるように決定される。また、支柱部56の(-Z)側の端部において、外周角部を適宜削っておくことが好ましい。これにより、支柱部56の最先端部を多少細くすることができ、取付部571に支柱部56を容易に挿入することができる。
【0223】
取付部571は、すでに説明したように、一般的な円筒パイプ部材であるため、取付部571の内面にネジ溝は形成されていない。したがって、支柱部56が回転したとしても、支柱部56が取付部571に対して螺入されることはなく、支柱部56と基台57とのZ軸方向の位置関係は変化しない。すなわち、取付部571の内部空間は、支柱部56に対する、いわゆるバカ穴として形成されている。
【0224】
上記実施の形態におけるジャッキ15では、支柱部16が、直接、基台17に固設されていた。しかし、第5の実施の形態におけるジャッキ55では、支柱部56が取付部571によって板状部材570(基台57)に取り付けられる。このような構造により、基台57は、支柱部56を回転可能に支持する。
【0225】
第5の実施の形態における移動筐体システム5においても、第1の実施の形態と同様に、工具を用いることなく、支持部材12を筐体11に挿入するだけで嵌合させることができる。そして、支持部材12を筐体11に嵌合させた状態では、当該支持部材12と一体的な構造物を構成する昇降部53はZ軸方向を中心軸として回転することはない。したがって、支持部材12と筐体11とが嵌合し、支柱部56が昇降部53に螺入した状態(例えば、図21に示す状態)において、支柱部56を支柱部56の長手方向(Z軸方向)を中心軸として回転させると、昇降部53は支柱部56の長手方向(Z軸方向)に沿って昇降する。そして、昇降部53が昇降すると、支持部材12も昇降部53と一体的に昇降する。
【0226】
第1の実施の形態における架台10では、昇降部13の昇降可能距離(最高高さ位置と最低高さ位置との距離)は、昇降部13のZ軸方向のサイズに依存する。したがって、架台10において、昇降可能距離を充分に設けるためには、昇降部13のZ軸方向のサイズを大きくする必要がある。一方で、昇降部13のZ軸方向のサイズを大きくすると、昇降部13の最低の高さ位置が比較的高い位置となり、筐体11を下ろすことができる最低の高さ位置が比較的高い位置となる。
【0227】
これに対して、第5の実施の形態における架台50では、昇降部53の昇降可能距離を充分に設けるために、昇降部33のZ軸方向のサイズを大きくする必要はない。したがって、昇降部33の最低の高さ位置が比較的低い位置となり、筐体11を下降させることができる最低の高さ位置も比較的低い位置とすることができる。これにより、架台50は、架台10に比べて筐体11の重心を低く支持することができるため、架台50によって筐体11を自立させたときに、筐体11が高い位置に支持される場合よりも安定する。
【0228】
以上のように、第5の実施の形態における移動筐体システム5においても、運搬可能な筐体11を支持する架台50を備え、架台50は、筐体11を支持する支持部材12と、支持部材12と一体的に昇降する昇降部53と、昇降部53を昇降させるジャッキ55とを備え、支持部材12は、筐体11と嵌合する第1嵌合部121を備えている。これにより、移動筐体システム5は、上記実施の形態と同様に作業の負担を軽減する効果を得ることができる。
【0229】
また、第5の実施の形態における架台50では、ジャッキ55が、長手方向に延びるとともに、長手方向を中心軸として回転可能な支柱部56と、支柱部56を回転可能に支持する基台57とを備え、支柱部56は、昇降部53に螺入され、昇降部53は、支柱部56の回転により当該支柱部56の長手方向に沿って昇降して、支持部材12と一体的に昇降する。これによって、筐体11を低い位置まで降下させることができ、より安定的に自立させることができる。
【0230】
なお、取付部571の内部空間の底部に、ベアリング部49に相当する部材を設けることによって、回転する支柱部56と、基台57との摩擦を減らすように構成してもよい。これによって、さらに作業負担を軽減してもよい。
【0231】
<6. 第6の実施の形態>
図22は、第6の実施の形態における移動筐体システム6を示す部分断面図である。図22では、第6の実施の形態における架台60が筐体側嵌合部117に装着される様子を示す。なお、図22に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図8に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図22において、筐体11を構成する部材および支持部材12については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0232】
第6の実施の形態における移動筐体システム6は、架台50の代わりに架台60を備える点が、第5の実施の形態における移動筐体システム5と異なっている。以下の説明では、移動筐体システム6について、移動筐体システム5と同様の構成については、適宜、同符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0233】
第6の実施の形態における架台60は、ジャッキ55の代わりに、ジャッキ65を備えている点が、第5の実施の形態における架台50と異なっている。ジャッキ65は、基台57の代わりに、基台67を備えている点が、第5の実施の形態におけるジャッキ55と異なっている。さらに、基台67は、基台57が備える構成の他に、支柱部572、操作部573および連結部材574をさらに備える点が、第5の実施の形態における基台57と異なっている。すなわち、架台60は、架台50の基台57に、支柱部572、操作部573および連結部材574を追加した構成となっている。
【0234】
支柱部572は、長手方向(Z軸方向)に延びる軸部材であって、(+Z)側端部に操作部573が固設された構造である。また、支柱部572の円柱部は、表面にネジ山が形成されている。すなわち、支柱部572の円柱部は、ボルトの軸部材(ネジ部材)を構成している。
【0235】
操作部573は、操作部59と同様に、一般的な長ナット(六角ナット)として、円柱部とは別に製造された部材を流用している。操作部573は、すでに説明したように、支柱部572において、円柱部の(+Z)側の端部に固設されている。操作部573は、一般的な六角ナットと同様に、外周側面が六角形状となっている。したがって、操作部573をレンチやスパナで操作することにより、支柱部572(円柱部)を長手方向を中心軸として回転させることができる。
【0236】
なお、第6の実施の形態における支柱部572および操作部573は、支柱部56および操作部59と略同一の部材を採用する。このように部品を共通化することによってコストを抑制することができる。また、操作部59を操作する工具も共通して操作部573に用いることができる。ただし、支柱部572および操作部573は、支柱部56および操作部59と同一でなくてもよい。例えば、支柱部572の長手方向のサイズが支柱部56と異なっていてもよい。
【0237】
図23は、連結部材574の断面図である。図23に示すように、連結部材574は、円筒状の外周部575およびストッパー576とから構成されている。連結部材574は、竹の節に類似した構造物となっている。
【0238】
外周部575は、取付部571と同様に、Z軸方向に沿う向きに配置される。外周部575の内部空間の中央部には、ストッパー576が形成されている。これにより、外周部575の内部(外周部575の空洞部)は、(+Z)側と(-Z)側とに開口するとともに、ストッパー576によって2室に隔離されている。
【0239】
外周部575の(+Z)側の空間には、図23に示すように、支柱部56が挿入される。そして、連結部材574に挿入された支柱部56は、連結部材574に固定されてはいない。したがって、支柱部56は連結部材574に挿入された状態でも、架台50における場合と同様にZ軸方向を中心軸として回転可能である。すなわち、連結部材574は、支柱部56に対して、第5の実施の形態における取付部571と同様の機能を提供する。
【0240】
一方、外周部575の(-Z)側の開口部には、図23に示すように、支柱部572(操作部573)が挿入される。なお、連結部材574に挿入された操作部573は、連結部材574に固定されてはいない。したがって、支柱部572は連結部材574に挿入された状態でも、Z軸方向を中心軸として回転可能である。ただし、本実施の形態では、支柱部572を回転させることはない。
【0241】
ストッパー576は、連結部材574における円盤状の部分であって、外周部575の内部空間を上下に隔離する。連結部材574において支柱部56,572がストッパー576に当接することによって、これらの部材の例えば一方が連結部材574を貫通することはない。すなわち、ストッパー576は、支柱部56,572のZ軸方向の移動を規制する部分として機能し、支柱部56,572および連結部材574の相対位置を決定する機能を有している。なお、連結部材574に対する支柱部56,572のZ軸方向の移動を規制することができる構造であれば、ストッパー576が外周部575の内部空間を完全に隔離していなくてもよい(一部連通していてもよい。)。
【0242】
以上のように、第6の実施の形態における移動筐体システム6においても、運搬可能な筐体11を支持する架台60は、筐体11を支持する支持部材12と、支持部材12と一体的に昇降する昇降部53と、昇降部53を昇降させるジャッキ65とを備え、支持部材12は、筐体11と嵌合する第1嵌合部121を備える。これにより、上記実施の形態と同様に作業効率が向上する。
【0243】
また、第6の実施の形態における架台60においては、基台67は、長手方向に延びる支柱部572(軸部材)を備えている。そして、支柱部572が支柱部56と長手方向に連結することにより、支柱部572が当該支柱部56を支持する。すなわち、支柱部572が、支柱部56と接地面(地面)との間のスペーサーとして機能する。これによって、簡単な部材を追加するだけで、架台60は、第5の実施の形態における架台50に比べて、筐体11を高い位置にまで上昇させることができる。
【0244】
なお、本実施の形態では、支柱部572および操作部573が支柱部56および操作部59と同一のものであるとして説明した。しかし、架台60では、操作部573は連結部材574の内部に収容されており、操作部573が操作されることはない。すなわち、架台60において支柱部572が回転することはない。したがって、架台60においては、支柱部572および操作部573は、例えば、単なる丸棒部材であってもよい。
【0245】
<7. 第7の実施の形態>
第6の実施の形態における移動筐体システム6の架台60の昇降距離は、支柱部56の長手方向のサイズに依存し、架台50と同等である。したがって、架台60は、筐体11を高い位置に上昇させることはできるものの、支柱部572を取り除かない限り、筐体11を低い位置にまで下降させることはできない。しかし、昇降距離を長くすることも可能である。
【0246】
図24は、第7の実施の形態における移動筐体システム7を示す部分断面図である。図24では、第7の実施の形態における架台70が筐体側嵌合部117に装着される様子を示す。なお、図24に示すX軸、Y軸およびZ軸は、図8に示すX軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ対応する。また、図24において、筐体11を構成する部材および支持部材12については、貫通孔117aの中央部を通り、XZ平面に平行な面における断面を示す。
【0247】
第7の実施の形態における移動筐体システム7は、架台60の代わりに架台70を備える点が、第7の実施の形態における移動筐体システム7と異なっている。以下の説明では、移動筐体システム7について、移動筐体システム6と同様の構成については、適宜、同符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0248】
第7の実施の形態における架台70は、ジャッキ65の代わりに、ジャッキ75を備えている点が、第6の実施の形態における架台60と異なっている。ジャッキ75は、基台67の代わりに、基台77を備えている点が、第6の実施の形態におけるジャッキ65と異なっている。さらに、基台77は、連結部材574の代わりに、支持部材770、取付部771、昇降部772、接続部材773を備える点が、第6の実施の形態における基台67と異なっている。
【0249】
支持部材770は、支持部材12と同様に、長手方向に延びる金属製の角材である。したがって、支持部材770の(+Z)側の面(上面)は、水平方向に配置される平坦面である。支持部材770としては、例えば、市販の角形鋼管を用いることができる。ただし、第7の実施の形態における支持部材770のX軸方向のサイズは、支持部材12よりも短く設計されている。なお、支柱部56は、支持部材770の上面に当接し、支持される。したがって、第7の実施の形態における支持部材770は支柱支持部材に該当する。
【0250】
取付部771は、取付部571と同様に、円筒のパイプ部材であって、Z軸方向に沿う向きに配置される。取付部771の(-Z)側の端部は、支持部材770の上面に固設されている。これにより、取付部771の内部(パイプ部材の空洞部)は、(+Z)側に開口するとともに、(-Z)側は支持部材770により閉じられている。
【0251】
取付部771の内部空間は、Z軸方向に延びる円柱形状である。そして、取付部771の内径は、支柱部56の外径より大きい。したがって、取付部771の内部には、(+Z)側から支柱部56の(-Z)側の端部を挿入することができる。
【0252】
取付部771は、すでに説明したように、一般的な円筒パイプ部材であるため、取付部771の内面にネジ溝は形成されていない。したがって、支柱部56が回転したとしても、支柱部56が取付部771に対して螺入されることはない。また、支柱部56の端部は、支持部材770に当接することにより支持される。このような構造により、基台77は、支柱部56を回転可能に支持する。
【0253】
すなわち、架台70の支柱部56を回転させると、架台60と同様に、当該昇降部53は支柱部56の回転により長手方向に沿って昇降して、支持部材12と一体的に昇降する。これによって、架台70においても、上記実施の形態と同様に、支持部材12と嵌合した筐体11を昇降させることができる。
【0254】
昇降部772は、昇降部53と同様に、一般的な六角ナットを流用することによって実現される部材である。このように、市場に流通する既製品を使用することによって昇降部772の製造コストを抑制することができる。ただし、昇降部772は、既製品の流用に限定されるものではなく、専用品であってもよい。
【0255】
図示は省略するが、昇降部772には、昇降部53と同様に、Z軸方向に貫通する孔が形成されており、当該孔の内面にはネジ溝が形成されている。昇降部772のネジ溝は、支柱部572の表面に形成されたネジ山に対応したネジ溝となっている。したがって、本実施の形態における移動筐体システム7において、ボルト部材としての構造を有する支柱部572を、昇降部772に螺入することができる。
【0256】
接続部材773は、接続部材54と同様の部材(プレート状の部材であって、第1面および第2面を有する。)を用いることができる。本実施の形態における接続部材773の第1面は、昇降部772の側面(Z軸と平行な面)に溶接により固設されている。また、接続部材773の第2面は、支持部材770の(-X)側端部に空洞を塞ぐように溶接により固設されている。
【0257】
以上のように、第7の実施の形態における移動筐体システム7においても、運搬可能な筐体11を支持する架台70が、筐体11を支持する支持部材12と、支持部材12と一体的に昇降する昇降部53と、昇降部53を昇降させるジャッキ75とを備え、支持部材12は、筐体11と嵌合する第1嵌合部121を備える。これにより、上記実施の形態と同様に作業効率が向上する。
【0258】
また、架台70では、操作部59だけでなく、操作部573に対しても操作が可能である。すなわち、操作部573を操作して昇降部772を昇降させることによっても、筐体11を昇降させることができる。したがって、架台60の構成よりも筐体11の昇降距離が長くなる。例えば、架台60では、支柱部572は脚部(あるいはスペーサー)として機能しており、筐体11を操作部573よりも下方に降下させることはできないが、架台70では、昇降部53だけでなく昇降部772を降下させることにより、筐体11を操作部573よりもさらに下方に降下させることができる。
【0259】
なお、架台70は、取付部771の代わりに、板状部材570および取付部571をさらにもう1組備えていてもよい。すなわち、板状部材570を支持部材770の上面に当接させて上方に支持する構成であってもよい。また、そのような場合において、支持部材770の代わりに、支持部材12を用いてもよい。すなわち、ジャッキ75は、2組のジャッキ55を備える構成であってもよい。
【0260】
<8. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0261】
例えば、上記実施の形態では、いずれも筐体11,31がキャンピングハウスを構成する例について説明した。しかし、筐体11,31は、キャンピングハウスを構成するものに限定されるものではない。例えば、キッチンユニットを構成する筐体11や、単に貨物を収納するコンテナを構成する筐体11,31であっても本発明を適用することができる。
【0262】
また、上記実施の形態では、いずれもフレーム部材116が筐体側嵌合部117を構成する例で説明した。しかし、強度設計上許容される場合は、他の部材が筐体側嵌合部を構成してもよい。例えば、底部材114と図示しない床部材との隙間に第1嵌合部121,222が挿入される構造であってもよい。あるいは、外壁側嵌合部111,311のみが筐体側嵌合部を構成してもよい。
【0263】
また、第6の実施の形態では、連結部材574によって支柱部56と支柱部572とが連結されていた。しかし、架台60において連結部材574は必須の部材ではない。例えば、支柱部56の(-Z)側端部に、操作部573を挿入する円筒形状の空洞を形成し、当該空洞に操作部573を挿入することによって支柱部56に、直接、支柱部572を連結してもよい。また、支柱部56の上記空洞を、六角柱形状(長ナットの外観形状)とし、支柱部572(操作部573)を嵌め込むようにしてもよい。これにより、支柱部56だけが回転するのではなく、支柱部572が支柱部56と一体的に回転する。さらに、支柱部56と支柱部572とを連結したときに、支柱部56のネジ山と、支柱部572のネジ山とが滑らかに連続するように形成すれば、昇降部53が支柱部56と支柱部572とを連続して昇降する構造とすることができる。
【符号の説明】
【0264】
1,2,3,4,5,6,7 移動筐体システム
10,20,30,40,50,60,70 架台
11,31 筐体
110,310 外壁
111,311 外壁側嵌合部
111a,117a,224,493 貫通孔
111b 蓋部材
111c 回動部
112 扉
113 窓
114 底部材
115,116 フレーム部材
117 筐体側嵌合部
12,221,770 支持部材
120,130,240 空洞
121,222 第1嵌合部
122 端部
13,53,772 昇降部
130 挿入孔
14,54,242,773 接続部材
15,55,65,75 ジャッキ
16,56,572 支柱部
17,57,67,77 基台
18 ナット部材
59,573 操作部
22,32 支持部
220,576 ストッパー
223 第2嵌合部
225 ボルト
24 接続部
240 空洞
241 昇降部側嵌合部
312,313 嵌合部
326 壁部材
327 ツマミ
328 着色領域
49 ベアリング部
490 転動体
491 保持器
492 軸軌道板
570 板状部材
571,771 取付部
574 連結部材
575 外周部
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