IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ムール ウント ベンダー コマンディートゲゼルシャフトの特許一覧

特開2022-20591ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置
<>
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図1
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図2
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図3
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図4
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図5
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図6
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図7
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図8
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図9
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図10
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図11
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図12
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図13
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図14
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図15
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図16
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図17
  • 特開-ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020591
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ベルトテンショナおよびこのようなベルトテンショナを備えたベルト伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
F16H7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021118492
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】10 2020 004 335.6
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】596179058
【氏名又は名称】ムール ウント ベンダー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Muhr und Bender KG
【住所又は居所原語表記】Mubea-Platz 1, D-57439 Attendorn,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュターダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ユート
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン プファイファー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ユング
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049BB05
3J049BB08
3J049BB15
3J049BB23
3J049BB25
3J049CA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異なる運転状態において良好な減衰特性を有するベルトテンショナを提供する。
【解決手段】ベルトテンショナ1であって、基体11と、基体に第1の旋回軸線S1を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第1の張力調整ローラ8を有する第1の張力調整アーム13と、基体に対して第2の旋回軸線S2を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第2の張力調整ローラ9を有する第2の張力調整アーム14と、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間に配置されていて、両アームを周方向で互いにばね弾性的に支持するばね15と、第1の張力調整アームと基体との間に配置され互いの相対的な回動運動を減衰する減衰手段と、を備え、減衰手段は、基体に対する第1の張力調整アームの旋回時に、第1の張力調整アームの回動位置および/または回動方向に関連して変化する減衰モーメントを生じさせる、ベルトテンショナ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトテンショナ(1)であって、
基体(11)と、
前記基体(11)に第1の旋回軸線(S1)を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第1の張力調整ローラ(8)を有する第1の張力調整アーム(13)と、
前記基体(11)に対して第2の旋回軸線(S2)を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第2の張力調整ローラ(9)を有する第2の張力調整アーム(14)と、
前記第1の張力調整アーム(13)と前記第2の張力調整アーム(14)との間に配置されていて、前記第1の張力調整アーム(13)と前記第2の張力調整アーム(14)とを周方向で互いにばね弾性的に支持するばね装置(15)と、
を備える、ベルトテンショナ(1)において、
前記ベルトテンショナは、前記第1の張力調整アーム(13)と前記基体(11)との間の相対的な回動運動を減衰するために、前記基体(11)と前記第1の張力調整アーム(13)との間に有効に配置された減衰手段(33)をさらに有し、
前記減衰手段(33)は、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の旋回時に、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の回動位置および/または回動方向に関連して変化する減衰モーメント(M)を生じさせる
ことを特徴とする、ベルトテンショナ(1)。
【請求項2】
前記減衰手段(33)は、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の旋回時の、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の中間の回動位置において、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の、前記中間の回動位置とは異なる外方旋回した少なくとも1つの回動位置における前記減衰モーメント(M)よりも小さい減衰モーメント(M)を生じさせる、請求項1記載のベルトテンショナ。
【請求項3】
前記基体(11)の支承面(27)と前記第1の張力調整アーム(13)の支承面(29)との間に、全周にわたって異なる摩擦値が存在している、請求項1または2記載のベルトテンショナ。
【請求項4】
ばね要素(31)が、半径方向で前記基体(11)と前記第1の張力調整アーム(13)との間に配置されていて、前記基体(11)および前記第1の張力調整アーム(13)のうちの一方に相対回動不能に保持されており、
前記ばね要素(31)は、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の前記中間の回動位置で、周方向において、前記基体(11)および前記第1の張力調整アーム(13)のうちの他方に設けられた凹部(34)に重なり合って配置されており、
前記ばね要素(31)は、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の、前記中間の回動位置とは異なる外方旋回した回動位置で付勢されていて、前記基体(11)の支承面と前記第1の張力調整アーム(13)の支承面との間で半径方向力を加えるように配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のベルトテンショナ。
【請求項5】
前記基体(11)の支承面(27)と前記第1の張力調整アーム(13)の支承面(29)とが、周方向で互いに同じ横断面経過を有し、横断面が円形とは異なっている、請求項1から4までのいずれか1項記載のベルトテンショナ。
【請求項6】
前記減衰手段(33)は、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の中間の回動位置から出発して、前記中間の回動位置とは異なる外方旋回した回動位置に向かう方向への、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の旋回時に、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の外方旋回した回動位置から出発して、前記中間の回動位置に向かう方向への、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の旋回時よりも高い減衰モーメント(M)を生じさせる、請求項1から4までのいずれか1項記載のベルトテンショナ。
【請求項7】
ばね要素(31)が、半径方向で前記基体(11)と前記第1の張力調整アーム(13)との間に配置されていて、前記基体(11)および前記第1の張力調整アーム(13)のうちの一方に相対回動不能に保持されており、
前記ばね要素(31)は、前記基体(11)に対する前記第1の張力調整アーム(13)の第1の旋回方向において半径方向で緊張し、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向において半径方向で弛緩して配置されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のベルトテンショナ。
【請求項8】
前記第2の張力調整アーム(14)は、前記第1の張力調整アーム(13)に前記第2の旋回軸線(S2)を中心として旋回可能に支持されており、
前記第1の張力調整アーム(13)と前記第2の張力調整アーム(14)との間の相対的な回動運動を減衰するために、前記第1の張力調整アーム(13)と前記第2の張力調整アーム(14)との間に減衰手段(43)が有効に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のベルトテンショナ。
【請求項9】
ベルト伝動装置であって、
複数のプーリ(5,6,7)を駆動するように該プーリ(5,6,7)に巻き掛けられているベルト(4)と、
前記ベルト(4)を張力調整するための、請求項1から8までのいずれか1項記載のベルトテンショナ(1)と、
を備え、
基体(11)に対する第1の張力調整アーム(13)の中間の回動位置が、取付け状態における静止時に、前記ベルトテンショナ(1)に作用する力の力バランスに基づいて生じる回動位置である、
ベルト伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に引張り手段伝動式のスタータジェネレータを備える引張り手段伝動装置用のベルトテンショナであって、基体と、基体に第1の旋回軸線を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第1の張力調整ローラを有する第1の張力調整アームと、を備える、ベルトテンショナに関する。さらに、ベルトテンショナは、基体に対して第2の旋回軸線を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第2の張力調整ローラを有する第2の張力調整アームを有する。第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間にベルトテンショナのばね装置が配置されており、このばね装置を介して、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとが、周方向で互いにばね弾性的に支持されている。
【背景技術】
【0002】
このようなベルトテンショナは、独国特許出願公開第102015212084号明細書に基づいて公知であり、同明細書に記載されたベルトテンショナは、2つの別個の減衰装置を有している。一方の減衰装置は、両張力調整アームの間で有効な減衰装置である。他方の減衰装置は、張力調整アーム付勢ばねにおける滑りシェルを備えた減衰装置である。これによって、両減衰装置が両張力調整アームの間で有効である。
【0003】
独国特許出願公開第102012209028号明細書に基づいて公知のベルトテンショナも同様に2つの別個の減衰装置を有している。一方では、湾曲ばねにおける滑りシェルを備えた減衰装置が設けられており、この減衰装置によって、両張力調整アームの間の運動が減衰される。騒音または作業領域の端部における張力調整アームの当接を阻止するために、非線形のばね特性を有するばねを設けるかまたは減衰力を走入時に作業領域の端部に向かって高めることが提案される。このことは、両張力調整アーム相互の運動に対して言える。他方では、ベルトテンショナと機械ハウジングとの間に、摩擦ライニングおよび一定の減衰作用を有する別の減衰装置が設けられていてよい。
【0004】
欧州特許出願公開第3431815号明細書に基づいて、スタータジェネレータを備えたベルト伝動装置のための、2つの張力調整アームを備えたベルトテンショナが公知である。このベルトテンショナは、スリーブ付設部を備えた基体を有しており、スリーブ付設部には、第1の張力調整アームが、半径方向弾性の支承ブシュを用いて旋回可能に支持されている。支承ブシュは、複数の部材のうちの一方の部材に、つまり基体または第1の張力調整アームに相対回動不能に結合されていて、複数の部材のうちの他方の部材に対して回動可能である。第2の張力調整アームは、基体に旋回可能に支持されている。両張力調整アームは、ばね装置によって周方向で互いに付勢される。板ばねの形態の付勢手段が設けられており、この付勢手段は、半径方向で支承ブシュの周面と、支承ブシュに相対回動不能に結合された部材の周面との間に配置されている。付勢手段によって、僅かな位置誤差と良好な減衰特性とが得られる。
【0005】
独国特許発明第102017124783号明細書に基づいて、引張り手段伝動装置の引張り手段を張力調整するためのテンショナが公知である。このテンショナは、基体と、それぞれ1つの張力調整ローラを備えた2つの張力調整アームと、2つの張力調整アームの間で作用するように配置された第1のばねおよび第2のばねを備えたばね装置とを備えている。第1の張力調整角度範囲内での相対的な旋回時には、両張力調整アームに、単に第1のばねによってしか相互に力が加えられない。第2の張力調整角度範囲内での相対的な旋回時には、両張力調整アームに、第1のばねと付加的に第2のばねとによって相互に力が加えられる。
【0006】
国際公開第2014/100894号に基づいて、基体と、基体に回動可能に支持された第1の張力調整アームと、第1の張力調整アームに旋回可能に支持された第2の張力調整アームとを備えたベルトテンショナが公知である。このベルトテンショナでは、第1の張力調整アームを基体に対して減衰するために、減衰構造体が設けられている。この減衰構造体は、1つの実施形態では皿ばねを備えており、この皿ばねは、第1の張力調整アームと基体との間で軸線方向の付勢を伴って配置されている。別の実施形態では、第1の環状ブシュと第2の環状ブシュとが設けられており、両環状ブシュは、ハウジングに対する第1の張力調整アームの回動運動を減衰するために、軸線方向に付勢可能である。
【0007】
自動車用のベルト伝動装置の形態の引張り手段伝動装置は、走行状態または運転状況(部分負荷、全負荷、始動、ブースト、回生、セーリングなど)に応じて、ベルト伝動装置の個々の側においてそれぞれ異なるベルト側力(Trumkraft)を有している。このことは、特にスタータジェネレータ機能を備えたハイブリッド車両におけるベルト伝動装置に対して言える。これによって、ベルトテンショナの旋回運動および振動が生じる。
【0008】
運転状況に応じて、ベルトテンショナは、様々な技術的な要求を満たす必要がある。始動時には、ベルトテンショナの過剰振動またはオーバシュートを回避することが望ましい。さらに、通常運転時には、スタータジェネレータの良好な切離し作用が保証されていることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底にある課題は、それぞれ異なる運転状態において良好な減衰特性を有するベルトテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、ベルトテンショナであって、
基体と、
基体に第1の旋回軸線を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第1の張力調整ローラを有する第1の張力調整アームと、
基体に対して第2の旋回軸線を中心として旋回可能に支持されていて、回動可能な第2の張力調整ローラを有する第2の張力調整アームと、
第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間に配置されていて、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとを周方向で互いにばね弾性的に支持するばね装置と、
第1の張力調整アームと基体との間の相対的な回動運動を減衰するために、基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面との間に有効に配置された減衰手段と、
を備え、
減衰手段は、基体に対する第1の張力調整アームの旋回時に、基体に対する第1の張力調整アームの回動位置および/または回動方向に関連して変化する減衰モーメントを生じさせる、
ベルトテンショナによって解決される。
【0011】
基体に対する第1の張力調整アームの回動位置および/または回動方向に関連して変化する減衰モーメントに基づいて、減衰手段は、ベルト伝動装置のそれぞれの運転状態に適合した減衰作用を提供するように設計することができる。
【0012】
ベルトテンショナの1つの構成では、減衰手段は、基体に対する第1の張力調整アームの旋回時の、基体に対する第1の張力調整アームの中間の回動位置において、基体に対する第1の張力調整アームの、中間の回動位置とは異なる外方旋回した少なくとも1つの回動位置における減衰モーメントよりも小さい減衰モーメントを生じさせるように設計されていてよい。
【0013】
基体に対する第1の張力調整アームの中間の回動位置は、例えば、特にベルト伝動装置が駆動されていない場合に、ベルト伝動装置におけるベルトテンショナの取付け状態で、ベルトテンショナに作用する力の力バランスに基づいて生じる回動位置として求めるかまたは定義することができる。この回動位置は、相応して、通常のまたは中立の回動位置とも呼ぶことができる。スタータジェネレータのためのベルト伝動装置では、スタータジェネレータは、通常運転時にベルト伝動装置から切り離されていてよく、これによって、燃費を高める原因となるドラッグモーメントを可能な限り僅かにすることができる。この通常運転において、張力調整アームは、少なくともほぼ各々の中間の回動位置をとる。
【0014】
この中間の回動位置、特にスタータジェネレータの切離し時における通常運転で、可能な限り僅かなモーメントしか生じさせないようにするために、基体に対する第1の張力調整アームの旋回時に生じた中間の回動位置における減衰モーメントは、中間の回動位置とは異なる外方旋回した回動位置における減衰モーメントよりも小さい。
【0015】
外方旋回した回動位置は、特に機関の始動時に、またはスタータジェネレータが電気モータとして運転され、付加的なエネルギを提供するブースト運転時に、またはスタータジェネレータが発電機として運転される回生運転時に、ベルトテンショナによってとられる。
【0016】
ベルトテンショナの1つの実施例では、基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面との間に、全周にわたって異なる摩擦値が存在している。
【0017】
ベルト伝動装置におけるベルトテンショナの取付け状態で、摩擦力が第1の張力調整アームからハウジングに第1の旋回軸線に対して半径方向で作用する。基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面とが、第1の旋回軸線を中心にした円筒面である限り、第1の張力調整アームの旋回時に生じる減衰モーメントは、摩擦力によって最も高く荷重が加えられる領域における支承面の摩擦ペアによって決定される。基体の支承面は不動に配置されている。例えば、基体は、例えばスタータジェネレータのようなアセンブリに固定されていてよい。したがって、基体の支承面は、ベルト伝動装置に対してその位置が変化しないままである。これに対して、第1の張力調整アームの支承面の回動位置は、第1の張力調整アームが旋回すると変化する。第1の張力調整アームによって加えられる半径方向力は、基体を中心にして相対的に第1の張力調整アームと共に回動するので、基体に対する第1の張力調整アームの異なる回動位置で基体の支承面の異なる領域に最も高い荷重が加えられている。全周にわたって異なる摩擦値が存在しているので、これによって、基体に対する第1の張力調整アームの異なる回動位置に対して、異なる摩擦値を実現することができ、これによって、異なる減衰モーメントが発生する。
【0018】
異なる摩擦値は、全周にわたって異なる材料を基体の支承面および/または第1の張力調整アームの支承面に沿って使用することによって得ることができる。また、代替的または付加的には、支承面の表面特性、例えば粗さ値が、全周にわたって異なっていてよい。
【0019】
基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面とは、第1の旋回軸線に対して横方向の1つの平面に配置されていてもよい。ベルト伝動装置におけるベルトテンショナの取付け位置において、軸線方向力も基体に加えられ、この軸線方向力は、第1の旋回軸線に対して平行に延び、これによって、第1の旋回軸線に対して横方向の傾倒モーメントを発生させる。この傾倒モーメントは、軸線方向力が周範囲において、第1の旋回軸線に対して平行な第1の方向で支持され、第1の旋回軸線に対して直径方向で反対に位置している側では、第2の支持力が逆方向で支持されることによって、第1の旋回軸線に対して横方向に方向付けられた支承面によって支持される。高い荷重が加えられるこの両領域において、基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面との表面ペアが、発生する減衰モーメントを規定するので、ここでも、円筒形に形成されかつ配置されている支承面の場合と同じことが言える。
【0020】
ベルトテンショナの1つの別の実施例では、ばね要素が、半径方向で基体と第1の張力調整アームとの間に配置されていて、基体および第1の張力調整アームうちの一方に相対回動不能に保持されていることが特定されている。ばね要素は、基体に対する第1の張力調整アームの中間の回動位置で、周方向において、基体および第1の張力調整アームのうちの他方に設けられた凹部に重なり合って配置されている。さらに、ばね要素は、基体に対する第1の張力調整アームの、中間の回動位置とは異なる外方旋回した回動位置で付勢されていて、基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面との間で半径方向力を加えるように配置されている。
【0021】
ばね要素は、第1の張力調整アームの中間の回動位置では、凹部に重なり合って配置されているので、ばね要素によって、基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面との間に加えられる半径方向の緊張力は、ばね要素が凹部に部分的にしか重なり合っていないかまたはまったくに重なり合っていない、中間の回動位置とは異なる外方旋回した回動位置よりも僅かである。凹部は、ばね要素を、第1の張力調整アームの中間の回動位置でまったく付勢しないかまたは中間の回動位置とは異なる回動位置よりも僅かしか付勢しないようにする働きをする。また、凹部は、中間の回動位置を含む中間の回動位置領域にわたってまったく付勢が生じないかまたは中間の回動位置領域外の回動位置よりも僅かな付勢しか生じないように構成されていることも可能である。
【0022】
ばね要素は、半径方向でばね弾性的に形成されていてよい。ばね要素は、さらに張力調整アセンブリの構成部材であってもよく、ばね要素は、減衰要素を半径方向でばね弾性的に支持しており、減衰要素は、支承面のうちの1つの支承面の少なくとも一部を形成している。
【0023】
全周にわたって、複数の減衰手段が配置されていてもよい。
【0024】
1つの実施形態では、基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面とが、周方向で互いに同じ横断面経過を有し、横断面が円形とは異なっていてよい。
【0025】
第1の張力調整アームの中間の回動位置で基体の支承面と第1の張力調整アームの支承面とは、互いに対応する回動位置に配置されていてよく、このとき、予め設定された支承遊びが生じている。基体に対する第1の張力調整アームの回動時に、支承遊びは、全周にわたる非円形の横断面に基づいて減少し、摩擦力が高くなり、これによって、高められた減衰モーメントが生じる。このとき、支承面は所定の楕円率を有していてよい。
【0026】
また、支承面の間に、第1の張力調整アームの旋回時に支承遊びを減少させる傾斜面を設けることも可能である。
【0027】
減衰手段は、この減衰手段が、基体に対する第1の張力調整アームの中間の回動位置から出発して、中間の回動位置とは異なる外方旋回した回動位置に向かう方向への、基体に対する第1の張力調整アームの旋回時に、基体に対する第1の張力調整アームの外方旋回した回動位置から出発して、中間の回動位置に向かう方向への、基体に対する第1の張力調整アームの旋回時よりも高い減衰モーメントを生じさせるように構成されていてもよい。
【0028】
したがって、中間の回動位置からの第1の張力調整アームの外方旋回時に、外方旋回した回動位置から出発して中間の回動位置に向かう方向への戻り旋回時よりも高い減衰モーメントが生じることが保証される。これによって、外方旋回した回動位置に向かう方向での第1の張力調整アームのオーバシュートが阻止されるのに対して、中間の回動位置への戻り旋回に対しては、減衰モーメントは僅かしか(またはまったく)生じなくなる。
【0029】
1つの別の実施例では、減衰要素が、半径方向で基体と第1の張力調整アームとの間に配置されていて、基体および第1の張力調整アームのうちの一方に相対回動不能に保持されており、減衰要素は、基体に対する第1の張力調整アームの第1の旋回方向において半径方向で緊張し、第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向において半径方向で弛緩して配置されていることが特定されている。
【0030】
したがって、基体に対する第1の張力調整アームの回動方向に関連して、互いに異なる減衰モーメントが得られる。
【0031】
減衰モーメントの、回動方向に関連した変化を可能にするこのような減衰要素は、回動位置に関連した減衰モーメントを有する上述した実施例に加えて使用することもできる。
【0032】
第2の張力調整アームは、第1の張力調整アームに対応して基体に旋回可能に支持されていてよく、第2の張力調整アームと基体との間の相対的な回動運動を減衰するために、基体と第2の張力調整アームとの間に別の減衰手段が有効に配置されている。
【0033】
基本的に、これらの減衰手段は、第1の張力調整アームに関連して上述した減衰手段と同一に構成されていてよい。
【0034】
代替的に、第2の張力調整アームは、第1の張力調整アームに第2の旋回軸線を中心として旋回可能に支持されていてよく、これによって、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとは、構造ユニットとして一緒に第1の張力調整アームを介して基体に旋回可能に支持されている。この実施形態では、別の減衰手段が、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間の相対的な回動運動を減衰するために、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間に有効に配置されていてよい。第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間の減衰手段は、第1の張力調整アームと基体との間の上述した減衰手段とまったく同じに構成されていてよい。
【0035】
これによって、第1の張力調整アームと基体との間の減衰手段は、基体に対する第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとから成る構造ユニットの旋回運動を、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間で相対的な回動運動が行われるか否かに左右されることなく減衰する。このようにして、始動運転、通常運転および回生運転のような様々な運転状態において、基体に対する両張力調整アームの回動運動および振動が減衰する。
【0036】
第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間の別の減衰手段は、緊張力の変化または緊張力の振動の発生時に、第1の張力調整アームと第2の張力調整アームとの間の相対的な回動運動を減衰する。
【0037】
さらに、課題は、ベルト伝動装置であって、複数のプーリを駆動するようにプーリに巻き掛けられているベルトと、ベルトを張力調整するための、上述した実施形態のうちの1つの実施形態によるベルトテンショナとを備え、基体に対する第1の張力調整アームの中間の回動位置が、取付け状態における静止時に、ベルトテンショナに作用する力の力バランスに基づいて生じる回動位置である、ベルト伝動装置によって解決される。
【0038】
好適な実施例を図面に基づき以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】取付け状態におけるベルトテンショナを備えたベルト伝動装置を示す斜視図である。
図2】始動運転時における、図1に示したベルト伝動装置を概略的に示す正面図である。
図3】通常運転時における、図1に示したベルト伝動装置を概略的に示す正面図である。
図4】回生運転時における、図1に示したベルト伝動装置を概略的に示す正面図である。
図5】第1の張力調整アームの回動位置に関する減衰モーメントの経過を示す線図である。
図6】ベルトテンショナの第1の実施形態を分解して示す斜視図である。
図7図6に示したベルトテンショナの横断面図である。
図8図7に示したベルトテンショナの、中間の回動位置における減衰手段の領域を拡大して示す横断面図である。
図9図7に示したベルトテンショナの、中間の回動位置とは異なる回動位置における減衰手段の領域を拡大して示す横断面図である。
図10】ベルトテンショナの第2の実施形態を分解して示す斜視図である。
図11図10に示したベルトテンショナの横断面図である。
図12図10に示したベルトテンショナの、中間の回動位置における減衰手段の領域を拡大して示す横断面図である。
図13】ベルトテンショナの第3の実施形態を分解して示す斜視図である。
図14図13に示したベルトテンショナを概略的に示す横断面図である。
図15】ベルトテンショナの第4の実施形態の横断面図である。
図16】ベルトテンショナの第5の実施形態を分解して示す斜視図である。
図17図16に示したベルトテンショナの部分横断面図である。
図18】ベルトテンショナの第6の実施形態を概略的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、本発明に係るベルトテンショナ1が、概略的にかつ簡単に示したベルト伝動装置2に取り付けられた状態で示してある。そのためにベルトテンショナ1は、固定の部材、本実施例ではスタータジェネレータ3(ここでは部分的に図示)の形態のアセンブリに固定される。ベルト伝動装置2のベルト4が、プーリ5,6,7に巻き掛けられている。張力調整ローラ8,9は、ばね予荷重下またはばね付勢下でベルト4に押圧されている。ベルトテンショナ1は、スタータジェネレータ3の端面に取り付けられている。これは、基体11の周囲に分配された固定ラグ10を用いて行われており、ねじ12が、固定ラグ10の孔を通して差し込まれ、スタータジェネレータ3にねじ結合されている。
【0041】
基体11には、第1の張力調整アーム13が、旋回軸線S1を中心として旋回可能に支持されており、第1の張力調整アーム13は、第1の張力調整ローラ8を第1の旋回軸線S1に対して半径方向間隔を置いて支持している。さらに、ベルトテンショナ1は、第2の張力調整アーム14を有しており、この第2の張力調整アーム14は、基体11に対して第1の張力調整アーム13に第2の旋回軸線S2を中心として旋回可能に支持されており、第2の張力調整ローラ9を第2の旋回軸線S2に対して半径方向間隔を置いて支持している。図示の実施例では、第1の旋回軸線S1と第2の旋回軸線S2とは、互いに同軸に配置されている。さらに、プーリのうちの、スタータジェネレータ3によって駆動されるかまたはスタータジェネレータ3を駆動するプーリ5が、旋回軸線S1,S2に対して同軸に回動可能に支持されている。
【0042】
第1の張力調整アーム13と第2の張力調整アーム14との間には、ばね15を備えたばね装置が配置されており、このばね装置を介して、第1の張力調整アーム13と第2の張力調整アーム14とは、旋回軸線S1,S2を中心とした周方向で互いにばね弾性的に支持されている。図1の取付け状態で、張力調整ローラ8,9は、ベルト4の互いに異なる側16,17で内側に向かって力を加えており、これによって、ベルト4を張力調整することができる。
【0043】
図2には、始動運転時における図1に示したベルト伝動装置2が、概略的に正面図で示してある。始動運転時には、ここでは図示されていないスタータジェネレータが、ベルト伝動装置2を、ベルト伝動装置2の3つのプーリ5,6,7のうちの第1のプーリ5を介して時計回り方向で駆動する。ベルト4の、第1の張力調整ローラ8によって張力調整される第1の側16が張り側であり、第2の張力調整ローラ9によって張力調整される第2の側17が緩み側である。
【0044】
図3には、通常運転時における、図2と同じベルト伝動装置が示してある。通常運転時には、スタータジェネレータが駆動に関してベルト伝動装置2から切り離されており、ゆえにベルト伝動装置2に外部からのトルクを加えない。この通常運転時に、ベルトテンショナ1の、ここでは図示されていない張力調整アームはそれぞれ、力バランスに基づいて生じる中間の回動位置をとる。第1の張力調整ローラ8を備えた第1の張力調整アームに関しては、図3に示した例では、第1の旋回軸線S1から第1の張力調整ローラ8の回動軸線Dへの接続直線と、図3に示した水平線との間に、第1の旋回アームの中間の回動位置に相当する角度αが生じている。
【0045】
これに対して、図2に示した始動運転時には、第1の旋回アームは時計回り方向で回動している。なぜなら、張り側である第1の側16における相対的に高いベルト側力に基づいて、第1の張力調整アームは、第1の張力調整ローラ8によって時計回り方向で、図3に示した中間の回動位置から、図2に示した外方旋回した回動位置に旋回するからである。このとき、接続線と水平線との間には、通常運転時よりも小さな角度αが生じる。ベルト4を緊張させるための付勢力は変わらないままなので、両張力調整アームの間の角度が変化することなしに、第2の張力調整ローラ9を備えた第2の張力調整アームも時計回り方向に回動する。
【0046】
図4には、回生運転時におけるベルト伝動装置2が示してあり、回生運転時に、スタータジェネレータは発電機として働き、ベルト伝動装置2によって駆動される。回生運転時に、第2の側17は張り側であり、第1の側16は緩み側である。したがって、両張力調整アームは、第2の側17の内部における、第1の側16に比べて高いベルト側力に基づいて、反時計回り方向に回動し、これによって角度αが生じる。この角度αは、第1の張力調整アームの、図4に示した外方旋回した別の回動位置に相当し、通常運転時における角度αよりも大きい。
【0047】
図5には、第1の張力調整アームの回動位置の角度αに関する減衰モーメントMの経過が線図で示してある。第1の張力調整アームの中間の回動位置における通常運転時には、減衰モーメントが最小値を有する角度αが生じる。通常運転時には振動が発生するので、第1の張力調整アームは、中間の回動位置領域の内部では、角度範囲Δαにわたって、中間の回動位置を中心として角度αで振動する。回動位置領域の内部における、中間の回動位置とは異なる回動位置で、減衰モーメントは既に上昇する。始動運転時における角度αを有する回動位置で、減衰モーメントMは、中間の回動位置領域よりもさらに大きく高められている。同じことは、回生運転時における角度αを有する回動位置に対しても当てはまる。
【0048】
以下に一緒に説明する図6図9には、ベルトテンショナ1の第1の実施形態が異なる図で示してある。ベルトテンショナ1は、基体11と、第1の張力調整ローラ8を備えた第1の張力調整アーム13と、第2の張力調整ローラ9を備えた第2の張力調整アーム14と、ばね15を備えたばね装置とを備えており、ばね装置を介して両張力調整アーム13,14は、周方向で互いにばね弾性的に支持されている。ばね15は、第1の張力調整アーム13の第1のばね支持部18と第2の張力調整アーム14の第2のばね支持部19との間で、周方向においてベルトテンショナ1の軸線Aを中心として延在している。
【0049】
基体11は、例えば自動車のメインモータのスタータジェネレータの形態のアセンブリのような固定の部材に固定されてよい。このアセンブリは、原則的に、ベルト伝動装置の一部である機械であってよく、すなわち、特に発電機、ウォータポンプ、またはこれに類したもののような、自動車のメインモータによって駆動されるそれぞれの二次アセンブリである。固定の部材との結合のために、基体11は固定ラグ10を有しており、これらの固定ラグ10は、孔を備えて形成されており、これらの孔を通して、固定の部材における固定のためにねじを差し込むことができる。
【0050】
ベルトテンショナ1の両張力調整アーム13,14は、相応の支承手段を介して、互いにまたは基体11に対して、それぞれ第1の旋回軸線S1または第2の旋回軸線S2を中心として旋回可能または回動可能に支持されている。基体11、第1の張力調整アーム13および/または第2の張力調整アーム14は、特に金属薄板から変形加工して製造することができる鋼部材として製造されていてもよいし、特にアルミニウム鋳造合金製の軽金属部材として製造されていてもよいし、プラスチック、特に繊維強化プラスチックから製造されていてもよい。
【0051】
第1の張力調整アーム13は、第1の支承体を用いて第1の旋回軸線S1を中心として旋回可能に支持されている。第2の張力調整アーム14は、第2の支承体を用いて第2の旋回軸線S2を中心として旋回可能に支持されている。本実施例では、両支承体は互いに同軸に配置されており、つまり、両旋回軸線S1,S2は互いに合致している。しかしながら、基本的に特定の使用例では、両旋回軸線が互いに平行にまたは偏心して配置されていてよいことも可能である。
【0052】
周方向で旋回軸線S1,S2を中心として延在しているばね15は、両張力調整アーム13,14の相対的な旋回運動に抗して作用する。両張力調整アーム13,14は、相互間に配置されたばね15によって互いに相対的に一定範囲で回動可能であり、ばね15と一緒に基体11に対して旋回軸線S1,S2を中心として自由に回動することができ、つまり、360°以上自由に回動することができる。旋回軸線S1,S2は、ベルトテンショナ1の組み立てられた状態で、基体11の開口20の内部に位置していることが特定されている。
【0053】
張力調整アーム13,14は、それぞれ支持区分21,22を有しており、この支持区分21,22は、それぞれの張力調整アーム13,14の環状区分23,24から半径方向外側に突出している。支持区分21,22には、それぞれ1つの張力調整ローラ8,9が、少なくとも実質的に平行な回動軸線D1,D2を中心として回動可能に支持されている。
【0054】
基体11は、実質的にスリーブ状の中央の付設部25を有しており、この付設部25は、基体11の軸線Aに対して同軸に配置されている。中央の付設部25は、軸線Aの方向に延在している。中央の付設部25には支承スリーブ26が配置されており、この支承スリーブ26は、中央の付設部25に相対回動不能に結合されている。支承スリーブ26は、中央の付設部25の、外側に向いている外側の支承面27を形成している。
【0055】
基体11の中央の付設部25および支承スリーブ26には、第1の張力調整アーム13の環状区分23が、減衰要素28を介して第1の旋回軸線S1を中心として旋回可能に支持されており、第1の旋回軸線S1は、軸線Aと合致している。減衰要素28は、スリーブ状に形成され、第1の張力調整アーム13の環状区分23に相対回動不能に結合されている。減衰要素28は、第1の張力調整アーム13の、内側に向いている内側の支承面29を形成しており、内側の支承面29によって減衰要素28は、支承スリーブ26の外側の支承面27に滑り接触し、ひいては、支承装置を形成している。
【0056】
支承装置には、一定の周範囲にわたって減衰手段33が設けられている。そのために、支承スリーブ26と中央の付設部25とは、全周にわたって一定範囲で延ばされた凹部30を形成しており、この凹部は、中央の付設部25および支承スリーブ26の、半径方向内側に向かってずらされた区分によって形成されている。凹部30内には、半径方向で弾性的なばね要素31が位置しており、このばね要素31は、半径方向で支承スリーブ26と減衰金属薄板32との間にばね弾性的に支持されている。減衰金属薄板32は、その周囲延在長さにわたって、減衰要素28の内側の支承面29に接触する外側の支承面27の一部を形成している。
【0057】
図8には、ベルトテンショナ1が中立位置で示してある。第1の張力調整アーム13のこの中間の回動位置において、減衰要素28は、半径方向で凹部30の周囲延在長さにわたって、残りの領域よりも薄く形成されており、これによって、内側の支承面29に対して後退した凹部34を形成している。第1の張力調整アーム13の、図8に示した中間の回動位置において、減衰要素28の凹部34は、支承スリーブ26の凹部30に重なり合っている。これによって、ばね要素31は最大に弛緩され、減衰金属薄板32に、半径方向外側に向かって減衰要素28に向かう方向で力を加える。図示の実施例では、減衰金属薄板32は、2つの周端部で保持凹部35内に収容されており、保持凹部35は、減衰金属薄板32の半径方向の移動を制限する。図示の実施例では、第1の張力調整アーム13の中間の回動位置で、減衰金属薄板32は、減衰要素28に接触しないように設計されている。しかしながら、また基本的には、この中間の回動位置で、既に減衰金属薄板32と減衰要素28との間の接触が行われることも可能であり、このような場合には、押付け力は保持凹部35によって制限される。
【0058】
第1の張力調整アームの、図9に示した外方旋回した回動位置において、第1の張力調整アーム13の環状区分23は、中央の付設部25に対して時計回り方向で回動している。この外方旋回した回動位置で、支承スリーブ26の凹部30と減衰要素28の凹部34とは単になお部分的にしか重なり合っておらず、これによって、減衰要素28のより厚い領域も支承スリーブ26の凹部30に重なり合っている。減衰要素28のこの厚い領域は、減衰金属薄板32をばね要素31のばね力に抗して内側に向かって押圧し、減衰金属薄板32の外側の支承面は、減衰要素28の内側の支承面29に接触し、ばね要素31によって押し込まれ、これによって、図8に示した回動位置に対して摩擦力が高まり、ひいては減衰モーメントが増大する。
【0059】
第2の張力調整アーム14の環状区分24は、第1の張力調整アーム13の環状区分23に対して支持されており、支承装置は、ここでは詳細に示されていない。この支承装置にも同様に減衰手段が設けられていてよい。基体11の中央の付設部25と第1の張力調整アーム13の環状区分23との間の図示の減衰手段33は、基体11に対する、第1の張力調整アーム13と第2の張力調整アーム14とから成る構造ユニットの振動を減衰するための減衰モーメントを生じさせる。第1の張力調整アーム13と第2の張力調整アーム14との間に場合によって減衰手段が設けられていると、この減衰手段は、両張力調整アーム13,14の間の振動を抑制する減衰モーメントを生じさせる。
【0060】
以下で一緒に説明する図10図12には、ベルトテンショナ1の第2の実施形態が異なる図で示してある。第1の実施形態の部材および細部と同一である部材および細部には、同一符号が付されており、第1の実施形態と関連させて記載されている。以下では、第1の実施形態に対する第2の実施形態の主要な相違点について記載する。
【0061】
実質的に、ベルトテンショナ1の第2の実施形態の構造は、第1の実施形態の構造に相当している。第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態は、軸線Aの軸線方向で互いに並んで配置されている2つのばね15を有している。基体11のスリーブ状の中央の付設部25には、軸線Aに対して直径方向で互いに反対側に位置している2つの凹部30が設けられており、両凹部30は、それぞれ一定の周範囲にわたって延在している。凹部30内には、それぞればね要素31が位置していて、このばね要素31は、半径方向でばね弾性的に中央の付設部25と支承スリーブ26との間に配置されている。これによって、支承スリーブ26には、ばね要素31の領域で半径方向外側に向かって力が加えられる。
【0062】
これに対して、第1の張力調整アーム13の環状区分23は、第1の実施形態とは異なり、減衰要素を有しておらず、内側の支承面29を直接形成している。内側の支承面29は、支承スリーブ26の外側の支承面27と接触状態に保たれている。
【0063】
第1の張力調整アーム13の環状区分23は、2つの凹部34を有しており、両凹部34は、内側に向かって外側の支承面27に向かう方向に向いている。凹部34は、軸線Aに対して直径方向で、第1の張力調整アーム13の環状区分23の互いに反対に位置する側に配置されている。第1の張力調整アーム13の、図11および図12に示した中間の回動位置で、凹部34はそれぞれ、ばね要素31のそれぞれのばね要素と軸線Aを中心として同じ角度位置にある。これによって、支承スリーブ26は、第1の張力調整アーム13の中間の回動位置で凹部34内に押し込まれるかまたは僅かに変形する。図示の実施例では、外側の支承面27は、ばね要素31の領域において内側の支承面29に接触していない。
【0064】
第1の張力調整アーム13の外方旋回した回動位置(図示せず)で、凹部34は、ばね要素31とは別の角度位置にあり、これによって、支承スリーブ26には、ばね要素31の領域でこれらのばね要素31によって力が外側の支承面27に向かって加えられ、これによって摩擦力が高まり、ひいては減衰モーメントが増大する。
【0065】
以下に一緒に説明する図13および図14には、ベルトテンショナ1の第3の実施形態が異なる図で示してある。第1の実施形態および第2の実施形態の部材および細部と同一である部材および細部には、同一符号が付されており、第1の実施形態および第2の実施形態と関連させて記載されている。以下では、第1の実施形態および第2の実施形態に対する第3の実施形態の主要な相違点について記載する。
【0066】
実質的に、ベルトテンショナ1の第3の実施形態の構造は、第2の実施形態の構造に相当している。第3の実施形態は2つのばね要素31を有しており、両ばね要素31は、第2の実施形態に比べて周方向で短く形成されている。その他、基体11と第1の張力調整アーム13との間の減衰手段33の機能は、第2の実施形態の減衰手段と同一である。
【0067】
第1の張力調整アーム13の環状区分23は、中央のスリーブ区分36を有しており、このスリーブ区分36は、基本的に基体11の中央の付設部25と同等である。スリーブ区分36は、軸線Aおよび両旋回軸線S1,S2に対して同軸に配置されている。スリーブ区分36は、外側に向いている凹部37を備えており、この凹部37は、全周の一部にわたって延在している。凹部37内には、ばね要素38が位置している。
【0068】
スリーブ区分36には支承スリーブ39が位置しており、ばね要素38は、第1の張力調整アーム13のスリーブ区分36と支承スリーブ39との間に付勢されて位置している。これによって、第1の張力調整アーム13のばね要素38は、支承スリーブ39に半径方向外側に向かって力を加える。これは、基体11におけるばね要素31と同等である。
【0069】
支承スリーブ39の外側の支承面40が、第2の張力調整アーム14の環状区分24の内側の支承面41に滑り接触している。第2の張力調整アーム14の環状区分24は、凹部42を有しており、この凹部42は、内側の支承面41から出発しており、第1の張力調整アーム13の中間の回動位置において、第2の張力調整アーム14に対して所定の角度位置で配置されており、この角度位置で凹部42は、第1の張力調整アーム13のばね要素38に重なり合っている。これによって支承スリーブ39の、ばね要素38によって半径方向でばね弾性的に力が加えられる領域は、第2の張力調整アーム14の環状区分24の凹部42に向かう方向に変形される。中間の回動位置とは異なる位置で、支承スリーブ39には、第1の張力調整アーム13のばね要素38の領域で、内側の支承面41に向かって力が加えられ、これによって、支承スリーブ39は摩擦力が高まり、ひいては減衰モーメントを増大させる。
【0070】
これによって、図14中の詳細図Iに示した減衰手段33と、直径方向で反対側に位置する減衰手段33とは、基体11に対する、第1の張力調整アーム13と第2の張力調整アーム14とから成るユニットの振動を減衰する。図14中の詳細図IIに示した減衰手段43は、両張力調整アーム13,14相互の間の振動運動を減衰する。
【0071】
図15には、ベルトテンショナ1の第4の実施形態が概略的な横断面図で示してある。上述した実施形態の部材および細部と同一である部材および細部には、同一符号が付されており、上に述べた実施形態と関連させて記載されている。以下では、上に述べた実施形態に対する第4の実施形態の主要な相違点について記載する。
【0072】
上述した実施形態とは異なり、基体11と第1の張力調整アーム13との間にはばね要素が設けられていない。それに対して、中央の付設部25の外側の支承面27と第1の張力調整アーム13の環状区分23の内側の支承面29とは、楕円形を有しており、これによって、外側の支承面27と内側の支承面29とは、図15に示した鉛直方向で長さL1を有しており、この長さL1は、それぞれ軸線Aに対して横方向で見て、水平方向の長さL2よりも大きい。第1の張力調整アーム13の中間の回動位置で、外側の支承面27と内側の支承面29とは、互いに同一に方向付けられている。中間の回動位置とは異なる回動位置で、楕円形に成形された支承面27,29は互いに回動し、これによって、部分的に支承遊びが減少し、摩擦力が高まる。これによって、減衰モーメントが増大する。
【0073】
同じ結果を生じさせる代替的な可能性は、少なくとも実質的に円筒状の支承面における互いに逆向きの傾斜面であってよい。傾斜面は、基体11の端面および第1の張力調整アーム13の環状区分23の端面にも配置されていてよく、両端面は互いに接触する。
【0074】
以下に一緒に説明する図16および図17には、ベルトテンショナ1の第5の実施形態が異なる図で示してある。第1の実施形態または第2の実施形態の部材および細部と同一である部材および細部には、同一符号が付されており、第1の実施形態および第2の実施形態と関連させて記載されている。以下では、主要な相違点について述べる。
【0075】
中央の付設部25は凹部30を有しており、この凹部30内には、ばね要素31が位置している。ばね要素は、半径方向でばね弾性的に支承スリーブ26に支持されており、この支承スリーブ26は、外側の支承面27で第1の張力調整アーム13の環状区分23の内側の支承面29に摩擦接触している。
【0076】
ばね要素31は、周方向で見たその両端部に、それぞれ傾斜区分44,45を有しており、これらの傾斜区分44,45は、中央の付設部25の凹部30の傾斜面46,47に滑り接触している。傾斜区分44,45と傾斜面46,47とは、図17において反時計回り方向での第1の張力調整アーム13の旋回運動時に、ばね要素31が凹部30内により深く押し込まれ、時計回り方向での回動運動時に凹部30から引き出され、半径方向内側で支承スリーブ26に押圧され、これによって、反時計回り方向での回動運動に比べて、内側の支承面29と外側の支承面27との間で支承力が高まるように構成されている。これによって、減衰モーメントが増大する。したがって、異なる旋回方向で異なる減衰モーメントを得ることができる。
【0077】
図18には、ベルトテンショナの第6の実施形態が概略的な横断面で示してある。上に述べた実施形態の部材および細部と同一である部材および細部には、同一符号が付されており、上に述べた実施形態と関連させて記載されている。以下では、主要な相違点について述べる。
【0078】
第6の実施形態は、その構造に関してほぼ第4の実施形態に相当しており、支承面27,29は、円筒状に形成されている。中央の付設部25の外側の支承面27および/または第1の張力調整アーム13の内側の支承面29または第1の張力調整アーム13の支承スリーブは、全周にわたって変化する表面特性を有しており、これによって、支承面の間で変化する摩擦値が発生する。これは、例えば変化する材料または表面粗さによって得ることができる。
【0079】
ベルトテンショナ1の取付け状態で、力矢印Fの方向の半径方向力が生じ、この半径方向力は、支承面27,29に作用する。これは、力Fの方向に方向付けられた支承面27,29の領域が、力方向に対して横方向の領域よりも摩擦力に大きな影響を与えることを意味している。本実施例では、力方向Fを中心とした所定の角度範囲にわたって、摩擦値μ1が実現されている。この角度範囲に続いて左右では、摩擦値μ1よりも高い摩擦値μ2が設定されている。さらにその外側に続いて、さらに高い摩擦値μ3を備えた領域が設けられている。第1の旋回アーム13が、図18に示した中間の回動位置から外方旋回した回動位置に旋回すると、領域のうちの、摩擦値μ2またはμ3を備えた領域が、力Fの方向付けに位置し、これによって、より高い摩擦力ひいてはより高い減衰モーメントが得られる。
【符号の説明】
【0080】
1 ベルトテンショナ
2 ベルト伝動装置
3 スタータジェネレータ
4 ベルト
5 プーリ
6 プーリ
7 プーリ
8 張力調整ローラ
9 張力調整ローラ
10 固定ラグ
11 基体
12 ねじ
13 第1の張力調整アーム
14 第2の張力調整アーム
15 ばね
16 第1の側
17 第2の側
18 第1のばね支持部
19 第2のばね支持部
20 開口
21 支持区分
22 支持区分
23 環状区分
24 環状区分
25 中央の付設部
26 支承スリーブ
27 外側の支承面
28 減衰要素
29 内側の支承面
30 凹部
31 ばね要素
32 減衰金属薄板
33 減衰手段
34 凹部
35 保持凹部
36 スリーブ区分
37 凹部
38 ばね要素
39 支承スリーブ
40 外側の支承面
41 内側の支承面
42 凹部
43 減衰手段
44 傾斜区分
45 傾斜区分
46 傾斜面
47 傾斜面
A 軸線
D 回動軸線
D1 第1の張力調整ローラの回動軸線
D2 第2の張力調整ローラの回動軸線
S1 第1の旋回軸線
S2 第2の旋回軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】