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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020598
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】落橋防止装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20220125BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
E01D19/04 101
E01D1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118878
(22)【出願日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2020124022
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391051256
【氏名又は名称】株式会社美和テック
(71)【出願人】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビー・ビー・エム
(71)【出願人】
【識別番号】503121077
【氏名又は名称】株式会社カイモン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 彰則
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059AA05
2D059GG05
2D059GG30
2D059GG35
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】 即応性を備え、温度依存性等を有さず、撃吸収性能が高く、維持管理が容易であり、簡易な構造かつ安価な落橋防止装置を提供する。
【解決手段】
橋台P(下部構造)に取り付けるための第1支持部材10と、第1支持部材10に対向して設けられる、橋桁G(上部構造)に取り付けるための第2支持部材20と、を有し、第1支持部材10と第2支持部材20は、PC鋼棒31に対して回動自在であり、水平方向に、摺動可能かつ接離可能に接合されており、第1支持部材10と第2支持部材20との間に、介装板30(介装部材)がPC鋼棒31により、挟着力を付与された状態で設けられている落橋防止装置S1とした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造又は下部構造の一方に取り付けるための第1支持部材と、
前記第1支持部材に対向して設けられる、下部構造又は上部構造の他方に取り付けるための第2支持部材と、を有し、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、摺動可能かつ接離可能に接合されており、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との相対的な変位に対応して摩擦力を発生させる、摩擦力発生手段が設けられていること、を特徴とする落橋防止装置。
【請求項2】
前記摩擦力発生手段は、
前記第1支持部材と前記第2支持部材の摺動面において、摩擦力増強手段が設けられる構成であること、を特徴とする請求項1に記載の落橋防止装置。
【請求項3】
前記摩擦力発生手段は、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを所定の挟着力により挟持することにより、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に前記摩擦力を発生させる構成であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の落橋防止装置。
【請求項4】
さらに、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に介設された介装部材を備え、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを所定の挟着力により挟持することにより、前記第1支持部材又は前記第2支持部材と、前記介装部材との間に前記摩擦力を発生させる構成であること、を特徴とする請求項3に記載の落橋防止装置。
【請求項5】
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記第1支持部材と前記第2支持部材を貫通する緊締手段により、前記所定の挟着力が付与されていること、を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の落橋防止装置。
【請求項6】
複数の前記介装部材が、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材における長手方向に、連設され又は所定間隔を有して並設されていること、を特徴とする請求項4に記載の落橋防止装置。
【請求項7】
複数の前記介装部材が、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材における間隔方向に並設されていること、を特徴とする請求項4に記載の落橋防止装置。
【請求項8】
前記第1支持部材又は前記第2支持部材における前記介装部材との当接面の一部に、衝撃吸収部材が設けられていること、を特徴とする請求項4に記載の落橋防止装置。
【請求項9】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材の少なくとも一方における前記上部構造又は前記下部構造との取付面に、衝撃吸収部材が設けられていること、を特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
【請求項10】
前記摩擦力発生手段の摩擦力発生範囲は、前記第1支持部材と前記第2支持部材の変位範囲と比較して大きいこと、を特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
【請求項11】
前記摩擦力発生手段は、前記第1支持部材の摺動面に設けた前記第1支持部材と異なる金属材料で形成された第1金属面と、前記第2支持部材の摺動面に設けた前記第2支持部材と異なる金属材料で形成された第2金属面とを備え、
前記第1金属面及び前記第2金属面は、成分組成の異なる金属材料の金属系摺動材により形成されている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の落橋防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁の落下を防止するための落橋防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁では、地震時において、橋桁(上部構造)が橋台及び橋脚(下部構造)から落下すること防止するために、橋桁と橋台等を連結する落橋防止装置が設けられている。
【0003】
ところで、従来の落橋防止装置において、地震力等による過大な外力が加えられた場合には多大な衝撃力が作用することがあり、損傷等が懸念されていた。そのための対策として、例えば、橋桁と橋台等との間に、それぞれブラケットを介在して粘性体を用いたダンパの両端部を連結してなる3次元ブラケット付き落橋防止装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-52532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の落橋防止装置では、オイルダンパが用いられることが通常であることから、以下のような課題を有していた。すなわち、オイルダンパは、内部に封入されているオイルを移動させることによりエネルギーを吸収する構造であるため、動作に時間を要するとともに、温度依存性を有するという課題を有していた。また、落橋防止装置の本来の機構の他に、オイルダンパを設ける必要があるため、構造が複雑かつ装置全体が大型化して、製造費用も高価とならざるを得ず、点検を含めた維持管理も煩雑であった。
【0006】
このような観点から、本発明は、即応性を備え、温度依存性等を有さず、撃吸収性能が高く、維持管理が容易であり、簡易な構造かつ安価である落橋防止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の落橋防止装置は、上部構造又は下部構造の一方に取り付けるための第1支持部材と、前記第1支持部材に対向して設けられる、下部構造又は上部構造の他方に取り付けるための第2支持部材とを有し、前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、摺動可能かつ接離可能に接合されており、前記第1支持部材と前記第2支持部材との相対的な変位に対応して摩擦力を発生させる、摩擦力発生手段が設けられている構成としている。
【0008】
また、本発明の落橋防止装置において、前記摩擦力発生手段は、前記第1支持部材と前記第2支持部材の摺動面において、摩擦力増強手段が設けられる構成とするものであってもよい。
【0009】
また、本発明の落橋防止装置において、前記摩擦力発生手段は、前記第1支持部材と前記第2支持部材とを所定の挟着力により挟持することにより、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に前記摩擦力を発生させる構成とするものであってもよい。
【0010】
また、本発明の落橋防止装置において、前記摩擦力発生手段は、さらに、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に介設された介装部材を備え、前記第1支持部材と前記第2支持部材とを所定の挟着力により挟持することにより、前記第1支持部材又は前記第2支持部材と、前記介装部材との間に前記摩擦力を発生させる構成とするものであってもよい。
【0011】
また、本発明の落橋防止装置において、前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記第1支持部材と前記第2支持部材を貫通する緊締手段により、前記所定の挟着力が付与されている構成とするものであってもよい。
【0012】
また、本発明の落橋防止装置において、前記第1支持部材又は前記第2支持部材における前記介装部材との当接面の一部に、衝撃吸収部材が設けられている構成とするものであってもよい。
【0013】
また、本発明の落橋防止装置において、前記第1支持部材及び前記第2支持部材の少なくとも一方における前記上部構造又は前記下部構造との取付面に、衝撃吸収部材が設けられている構成とするものであってもよい。
【0014】
また、本発明の落橋防止装置において、複数の前記介装部材が、前記第1支持部材及び前記第2支持部材における長手方向に、連設され又は所定間隔を有して並設されている構成とすれば、介装部材の長手方向の変形性能を効果的に抑制し、摩擦力発生効果を向上させることができるため好適である。
【0015】
また、本発明の落橋防止装置において、前記第1支持部材及び前記第2支持部材における間隔方向に並設されている構成とすれば、介装部材の幅方向の変形性能を効果的に抑制し、摩擦力発生効果を向上させることができるため好適である。
【0016】
また、本発明の落橋防止装置において、前記摩擦力発生手段の摩擦力発生範囲は、前記第1支持部材と前記第2支持部材の変位範囲と比較して大きい構成とすることにより、落橋防止機能が失われる前に、摩擦力発生手段が損傷することを防止できるため好適である。さらに、本発明の落橋防止装置において、前記摩擦力発生手段は、前記第1支持部材の摺動面に設けた前記第1支持部材と異なる金属材料で形成された第1金属面と、前記第2支持部材の摺動面に設けた前記第2支持部材と異なる金属材料で形成された第2金属面とを備え、前記第1金属面及び前記第2金属面は、成分組成の異なる金属材料の金属系摺動材により形成されていることとしてもよい。
【0017】
本発明によれば、摩擦力発生手段が設けられていることから、第1支持部材と第2支持部材の相対的な変位に応じて摩擦力を発生させて、地震力等の外力が作用した際に、落橋防止装置の動作を緩やかとし、第1支持部材と第2支持部材が変位した場合において、摩擦力により外力を吸収し、減衰させることが可能となる。したがって、地震エネルギー吸収をしながら落橋を防止する装置とすることができるため、本落橋防止装置に対して突発的に衝撃力が作用して、橋げたや橋台の損傷等することを防止することができる。
【0018】
なお、道路橋示方書によれば、一方の機能の喪失が他方の機能の喪失に結び付くことを避け、それぞれの機能を確保させるため、原則として、落橋防止構造と変位制限構造を兼用してはならないことが定められている。しかし、道路橋示方書には、両者の機能を独立して確保できる構造を採用する場合には、これらを兼用してもよいことを定めた例外規定が存在しており、本落橋防止装置は、落橋防止構造と変位制限構造の機能を独立して確保できる構造となっていることから問題が生じることはない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の落橋防止装置によれば、即応性を備え、温度依存性等を有さず、撃吸収性能が高く、維持管理が容易であり、簡易な構造かつ安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の落橋防止装置(第1実施形態)を橋梁に適用した場合を示す側面図である。
図2図1におけるII-II断面図である。
図3】本発明の落橋防止装置(第1実施形態)を示す側面図である。
図4】本発明の落橋防止装置(第1実施形態)を示す平面図である。
図5】本発明の落橋防止装置(第1実施形態)において、地震力が作用した場合を示す側面図である。
図6】本発明の落橋防止装置(第1実施形態)が想定限界となる範囲で変位した場合を示す側面図である。
図7】本発明の落橋防止装置(第1実施形態)が想定限界となる範囲で変位した場合を示す平面図である。
図8】本落橋防止装置の変位量と橋梁に作用する衝撃力の関係を示すグラフである。
図9】本発明の落橋防止装置を他の橋梁に適用した場合を示す側面図である。
図10図9におけるX―X断面図である。
図11】本発明の落橋防止装置(第2実施形態)を示す側面図である。
図12】本発明の落橋防止装置(第3実施形態)を示す平面図である。
図13】本発明の落橋防止装置(第4実施形態)を示す側面図である。
図14】本発明の落橋防止装置(第5実施形態)を示す平面図である。
図15】本発明の落橋防止装置(第6実施形態)を示す平面図である。
図16図15の落橋防止装置の側面図である。
図17図15の落橋防止装置の分解した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の落橋防止装置S1(以下、「本落橋防止装置」という。)の一実施形態について、詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
(本落橋防止装置の構成)
本落橋防止装置S1は、橋梁B(第1実施形態)の橋桁Gと、橋台Pの間に設けられ、当該橋桁Gと橋台Pを連結することにより橋桁Gの落下を防止するために用いられるものであり、所定の複数個所に設けられている。
図1及び図2に示す本実施形態では、本落橋防止装置S1は、橋桁Gの端部における支承部Jの近傍の下面に突設されているコンクリート壁G1と、橋台Pにおける対向する上部側面の間に介設されている。そして、後記第1支持部材10及び第2支持部材20の各取付部15,25において、アンカーボルト41により取り付けられている箇所に関して、ここでは例示している。
【0023】
まず、本落橋防止装置S1の構成について説明する。
図3及び図4に示すように、本落橋防止装置S1は、第1支持部材10と、水平方向(X方向)において、当該第1支持部材10に対向して設けられる第2支持部材20と、摩擦力発生手段である介装板30(介装部材)及びPC鋼棒31(緊結手段)を主要部としている。
【0024】
第1支持部材10は、幅方向(Y方向)に形成されたベースプレート11と、当該ベースプレート11と直行する方向に設けられている2枚の側面プレート12と、当該ベースプレーと11に設けられた取付部15とを備えている。そして、両側面プレート12は、ベースプレート11と直行する方向(X方向)に互いに間隔を空けて形成されている。両側の側面プレート12における中央部から、ベースプレート11と反対側の対向する側(以下、「先端側」という。)にやや離れた位置には、PC鋼棒31を挿通するための鋼棒挿通孔12aが形成されている。また、側面プレート12には鋼棒挿通孔12aを中央にして、等間隔位置には、介装板30の取付ボルト32を挿通するためのボルト小孔12bが形成されているとともに、基端部側には、側面止めボルト33を挿通するためのボルト孔12cが形成されている。
【0025】
第2支持部材20は、長手方向の中央プレート22と、当該中央プレート22における第1支持部材10側の端部に設けられる端部プレート21と、中央プレート22の端部に設けた取付部25を備えている。そして、中央プレート22の中央部には、長手方向に長孔22aが形成されており、端部プレート21の内側である介装板30との当接面には、衝撃吸収体23(衝撃吸収部材)が設けられている(以下、端部プレート21、中央プレート22及び衝撃吸収体23から形成されるT字形状の部材を「T字形状部24」という場合がある。)。
なお、第1支持部材10と第2支持部材20は、同一鋼種の鋼板として形成されている。
【0026】
また、第1支持部材10と第2支持部材20の各取付部15,25は、一例として同一形状に形成されている。
第1支持部材10の取付部15は、垂直板16と、当該垂直板16の高さ方向において、水平方向に、所定間で横設されている水平板17から形成されている。そして、各水平板17の中央部に、中央孔17aが形成されている。2枚の水平板17の間に、ベースプレート11が固定されている。また、中央孔17aには、円筒18が挿設されており、当該円筒18内にピン19が嵌挿されている。
【0027】
また、第2支持部材20の取付部25は、垂直板26と、当該垂直板26の高さ方向において、水平方向に、所定間で横設されている水平板27から形成されている。そして、各水平板27の中央部に、中央孔27aが形成されている。2枚の水平板27の間に、中央プレート22の端部が固定されている。また、中央孔27aには、円筒28が挿設されており、当該円筒28内にピン29が嵌挿されている。
【0028】
介装板30は、略正方形形状の鋼板である。この介装板30は、一面の中央部において、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)により、円形状の範囲において被覆され、円形被覆部30aを形成している。また、この円形被覆部30aの中心部に、PC鋼棒31を挿通するための中央孔30bが形成されている。円形被覆部30aの直径は、第2支持部材20の中央プレート22の長孔22aの長さと比較して長く形成されており、摩擦力発生手段の摩擦力発生範囲(動作範囲)は、第1支持部材10及び第2支持部材20の変位範囲と比較して大きくなっている。
【0029】
介装板30は、その一端が各側面プレート12の先端側に略揃うように側面プレート12に対向して配置されている。さらに、介装板30は、円形被覆部30aが中央プレート22を介して対向するように配置されている。介装板30は、側面プレート12の4か所のボルト小孔12bに、連通する取付ボルト32が挿通されることにより、側面プレート12に一体的に取り付けられている。
第2支持部材20は、両第1支持部材10の側面プレート12、あるいは、中央プレート22が移動端に位置すると、端部プレート21の端面が衝撃を吸収して当接するように設けられている。
【0030】
また、第1支持部材10の側面プレート12の鋼棒挿通孔12aと、各介装板30の中央孔30bと、第2支持部材20の中央プレート22の長孔22aの位置を一致させ、各孔にPC鋼棒31を挿通させている。そして、PC鋼棒31を用いて、所定の緊張力により緊結することにより、第1支持部材10と第2支持部材20が介装板30を介して、接合されている。また、2枚の側面プレート12のボルト孔12cには、側面止めボルト33が挿通されており、両側面プレート12間に挟着力が付与されている。なお、符号14は、側面プレート12に側面止めボルト33を締結するために、当該側面止めボルト33の頭部と側面プレート12間に介装される当て板を示す。
【0031】
上記構成により、第1支持部材10の側面プレート12と第2支持部材20の中央プレート22は、水平方向の回動軸であるPC鋼棒31に対して回動可能に支承されるとともに、第2支持部材20の中央プレート22に形成されている長孔22aの範囲で水平方向に、摺動可能かつ接離可能となっている。
なお、介装板30の円形被覆部30aの動摩擦係数は、第2支持部材20の中央プレート22の動摩擦係数と比較して小さい。しかし、PC鋼棒31の緊張力により、側面プレート12と介装板30と中央プレート22が挟着されており、介装板30に所定の挟着力が付与されているため、第1支持部材10の側面プレート12と、第2支持部材20の中央プレート22が変位する場合に、所定の大きさの摩擦力が生じることになる。また、円形被覆部30aの形成されている領域の範囲は、長孔22aの領域の範囲より広くなっている。
【0032】
(本落橋防止装置の作用及び効果)
続いて、本落橋防止装置S1の作用について説明する。
例えば、地震時において、橋桁G及び橋台Pに地震力(外力)が作用した場合には、当該地震力の大きさ及び作用方向に応じて、橋桁G及び橋台Pに変位が生じる。このとき、本落橋防止装置S1は、PC鋼棒31の中心を回動中心として、第1支持部材10の側面プレート12及び第2支持部材20の中央プレート22を鉛直方向に変位させて回転する(図5)。さらに、本落橋防止装置S1は、第2支持部材20の中央プレート22の長孔22aの範囲で、当該第1支持部材10の側面プレート12と第2支持部材20の中央プレート22とを水平方向に離反させることで、地震力に追従して変位し、橋桁Gが橋台Pから落下することを防止する(図6及び図7)。
【0033】
このとき、本落橋防止装置S1では、PC鋼棒31の軸力により介装板30が挟持されており、当該介装板30は第2支持部材20の中央プレート22との摺動面(当接面)となる円形被覆部30aでの移動が拘束されている。そのため、本落橋防止装置S1では、第2支持部材20の中央プレート22が変位する際に、円形被覆部30aを介して摩擦力が生じることになり、当該摩擦力が地震力に起因して、本落橋防止装置S1に作用する衝撃力を吸収し、減衰させることができる。
【0034】
このように、本落橋防止装置S1によれば、第1支持部材10と第2支持部材20との相対的な変位に応じて、円形被覆部30aを備える介装板30とPC鋼棒31の作用により摩擦力を発生させる、減衰機構としての摩擦力発生手段が設けられている。したがって、地震力等の外力が発生して、本落橋防止装置S1が動作し、第1支持部材10と第2支持部材20が変位した場合において、摩擦力によって外力を減衰可能となり、本落橋防止装置S1に、突発的に衝撃力が作用することを防止することができる。そのため、簡易かつ安価な構造を実現可能であり、従来のダンパを利用した落橋防止装置と比べて、即応性に優れ、温度依存性を有さない構造とするとともに、衝撃吸収性能を高めることが可能となる。
【0035】
図8は、本落橋防止装置S1の変位量と橋梁(橋桁又は橋台等等)に作用する衝撃力の関係を示すグラフである。同図によれば、摩擦力発生手段を有していない落橋防止装置の場合には、想定限界の変位量となった場合に、衝撃力が突発的に作用することになる。一方、本落橋防止装置S1の場合には、衝撃力が緩やかに作用することになるため、橋梁の損傷を効果的に防止することができることが理解される。
【0036】
また、本落橋防止装置S1において、第2支持部材20の端部プレート21の内側である介装板30の端部の当接面において、衝撃吸収体23が設けられている。したがって、第1支持部材10と第2支持部材20が、想定限界となる範囲で離反した場合であっても、衝撃吸収体23の作用により、本落橋防止装置S1に衝撃力が作用することを効果的に防止することが可能となり、その損傷を防止することができる(図8)。
【0037】
また、本落橋防止装置S1において、円形被覆部30aの直径が第2支持部材20の中央プレート22の長孔22aの長さと比較して長く形成されている。そのため、本落橋防止装置S1において、摩擦力発生手段の摩擦力発生範囲(動作範囲)は、第1支持部材10及び第2支持部材20の変位範囲と比較して大きくなっている。このように構成することで、本落橋防止装置S1では、部材構成を複雑化させず、過大な製作費用をかけることなく、摩擦減衰作用を落橋防止機能が失われた後でも影響させて、摩擦力発生手段の作用を長く継続させるとともに、損傷することを防止することが可能となる。
【0038】
(本落橋防止装置の他の実施形態等)
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0039】
例えば、第1支持部材及び第2支持部材は、いずれか一方を上部構造又は下部構造に取り付け、他方を、下部構造又は上部構造に取り付けることにより、上部構造と下部構造の間に介設されていればよい。
【0040】
この点に関し、上記実施形態では、本落橋防止装置S1は、第1支持部材10の取付部15を第1実施形態の橋台Pに取り付けるとともに、第2支持部材20の取付部25を橋桁Gに取り付けられる場合を例として説明した。
しかし、床版GG2と、端部における横桁GG1の間に空間部を有する第2実施形態の橋梁BBに本落橋防止装置S1を適用する場合において(図9及び図10)、第2支持部材20の取付部25を橋台PPの端部に取り付けるとともに、第1支持部材10の取付部15を横桁GG1に取り付けることもできる。すなわち、第2実施形態の橋梁BBでは、第2支持部材20の取付部25が、橋台PPの上部から突出したコンクリート壁部PP1に取り付けられ、第1支持部材10の取付部15が横桁GG1の内側における下端部に取り付けられる構造とすることも可能である。
【0041】
また、請求項に記載する、第1支持部材、第2支持部材、摩擦力発生手段、摩擦力増強手段及び衝撃吸収部材は、基本的な構成を備え、その作用効果を奏するものであれば、種々の構成要素を用いることができ、その形態(形状、寸法、材質等)は適宜定めることができる。
【0042】
特に、第1支持部材と前記第2支持部材は、地震力等に起因する外力の作用により、水平方向の回動軸に対して回動可能に支承されるとともに、水平方向に、近接及び離反可能となるように、適切に変位自在に構成されていればよく、想定外力の大きさにより、変位形態及び変位量等は適宜に定めることができる。
なお、第1支持部材と第2支持部材とは、ユニバーサルジョイントを使用することにより、任意の方向に回動する構造とすることもできる。加えて、第1支持部材と前記第2支持部材とは、直接に当接しながら、摺動可能となっていることの他、本実施形態のように、間接的に介装部材を介して、摺動可能とすることもできる。
【0043】
また、摩擦力発生手段は、第1支持部材と第2支持部材との任意の方向への相対的な変位に対応して摩擦力を発生させる手段であればよく、第1支持部材と第2支持部材に関して、動摩擦係数の大きい部材を用いること、若しくは、少なくとも一方を適宜材料で被覆すること、並びに、第1支持部材と第2支持部材との間に介装部材を介装すること等、種々の手段を用いることができる。
特に、第1支持部材又は第2支持部材の摺動面に粗面或いは複数の凹凸部を形成すること等による摩擦力増強手段を設けることも好適である。
【0044】
なお、第2実施形態乃至第6実施形態に係る落橋防止装置について図11乃至図17を参照して以下に説明する。以下に示す実施形態において既に説明した同じ構成の部材は、第1実施形態に係る落橋防止装置と同じ符号を付して適宜説明を省略する。
第2実施形態の本落橋防止装置S2に示すように(図11)、複数の摩擦力発生手段である、介装板30(介装部材)及びPC鋼棒31(緊結手段)を、第1支持部材210における側面プレート212の長手方向に連設する構成(隣接する介装板30と間隔を有さずに並設する構成)とすることもできる(符号222aは、第2支持部材220の中央プレート222において、所定位置に形成される長孔を示す)。このように、上記構成を採用することにより、介装板30の長手方向の変形を効果的に抑制し、摩擦力発生効果を向上させることができる。
【0045】
さらに、複数の摩擦力発生手段を第1支持部材及び第2支持部材の間隔方向に並設する構成とすることもできる。
例えば、第3実施形態の本落橋防止装置S3に示すように(図12)、第1支持部材310及び第2支持部材320の幅方向に複数枚の介装板330を設ける構成とする場合を説明する。
【0046】
この場合において、第1実施形態の本橋桁落下防止装置S1における第1支持部材10における両側の側面プレート12に相当する2枚の側面プレート312の間に、中央プレート313が設けられている(符号311はベースプレートを示す)。また、第2支持部材20を構成するT字形状部24と同様の構造である、2本のT字形状部324(符号321は端部プレート、323は衝撃吸収体323をそれぞれ示す)が取付部325から延設されている。
【0047】
そして、第1支持部材310における各側面プレート312と中央プレート313の間に、それぞれ、各T字形状部324がスライド可能となるように挿設されている。また、各第1支持部材310の側面プレート312及び第2支持部材320の中央プレート322の間と、各第1支持部材310の中央プレート313及び第2支持部材320の中央プレート322の間には、合計4枚の介装板330が介装されることにより、第1支持部材310と第2支持部材320の間において、幅方向に介装板330が並設されている(符号331は、各部材に挟着力を付与するためのPC鋼棒であり、322aは、中央プレート322に形成されている長孔をそれぞれ示す)。上記構成により、介装板330の円形被覆部330aと各中央プレート313,322が摺動する場合において、円形被覆部330aを介して摩擦力が発生するようになっている。
【0048】
なお、第1支持部材310及び第2支持部材320の各取付部315,325の構造は、第1実施形態の本落橋防止装置S1における各取付部15,25の構造と同様である。また、介装板については、積層構造とする等、適切な寸法に分割して形成して、複数を配設することや、全体が被覆材料により被覆されているものとすることもできる。また、円形被覆部30a,330aは、形状を矩形や楕円形等になるように被覆するようにしてもよい。…さらに、円形被覆部30a,330aの構成方法は、ステンレス鋼(SUS)と四フッ化エチレン樹脂(PTFE)・ポリアミド(polyamide)を組み合わせることなど性能の異なる金属と樹脂を組み合わせること、また性状の異なる鉄鋼材料を組み合わせること、並びに高力黄銅鋼とステンレス鋼、PEEKとステンレス鋼、PBNとステンレス鋼とを組み合わせること等、種々の組み合わせの構成材料を使用することができる。
このように、第3実施形態の本落橋防止装置S3によれば、介装板330の幅方向の変形を効果的に抑制し、摩擦力発生効果を向上させることができる。
【0049】
また、摩擦力発生手段の安定した動作を行わせるためには、動摩擦係数を一定とすることが望ましい。但し、介装部材には、必ずしも第1支持部材又は第2支持部材と比べて、動摩擦係数の大きい材料を使用する必要はなく、上記実施形態のように、制御を容易に行うために、介装部材に第1支持部材及び第2支持部材と比べて、動摩擦係数の小さい材料を使用した場合には、適切な挟着力を付与することで、発生する摩擦力の大きさを設定することにより対応することができる。
【0050】
また、本落橋防止装置は、取付位置、取付数及び取付方法等は、取り付けられる橋梁の態様により適宜定めることができる。
【0051】
また、第1支持部材又は第2支持部材における介装部材との当接面の一部、及び当該第1支持部材及び第2支持部材の少なくとも一方における前記上部構造又は前記下部構造との取付面に設けられる衝撃吸収部材についても、各種弾性体(低反発性ゴム、ポリウレタン等)等、所望の材質、形状の部材として構成することができる。
【0052】
この点に関し、例えば、第4実施形態の本落橋防止装置S4に示すように(図13)、第1支持部材10及び第2支持部材20における各取付部15,25と橋桁G及び橋台Pの間に、衝撃吸収体42を介装する構成とすることもできる。上記構成とすることにより、衝撃吸収体42の作用により、本落橋防止装置S4に衝撃力が作用することを効果的に防止することが可能となり、その損傷を防止することができる(図8)。
【0053】
さらに、第5実施形態について図14に示すように、本落橋防止装置S5は、介装板30Bの一端30B1を円弧状に形成する構成としてもよい。また、本落橋防止装置S5は、第2支持部材20の表裏面で円形被覆部30a,30aに対面する位置に面状に形成された金属系摺動材としてステンレス板20b,20bを、金属系手動材の円形被覆部30a,30aの相手板材として張り付けている構成としてもよい。つまり、ステンレス板20bと介装板30の円形被覆部30aとが対面して摺動面となるようにそれぞれ異なる金属系摺動部材で形成されていてもよい。なお、介装板30Bの一端30B1を円弧状に形成することで、第1支持部材10及び第2支持部材20が、例えば、図6で示すように、初期の状態から移動した状態となっても、衝撃吸収体23が介装板30Bの一端30B1に均等に当接することができる。また、衝撃吸収体23及び端部プレート21は、介装板30Bの一端30B1の形状に合わせて、円弧状になるように形成することがより好ましい。さらに、摩擦発生手段としての摺動面を異なる成分組成の金属系摺動部材で形成することで、摺動時の焼き付きをなくすことができる。
【0054】
また、第6実施形態について、図15乃至図17を参照して説明する。本落橋防止装置S6では、摩擦力発生手段として、第1支持部材10の摺動面に設けた第1支持部材10と異なる成分組成の金属材料で形成された第1金属面である被覆部30cと、第2支持部材20の摺動面に設けた第2支持部材20と異なる成分組成の金属材料で形成された第2金属面である相手板材とを、PC鋼棒31と共に備えるように形成されている。そして、本落橋防止装置S6は、介装板30Cの形状を平面視において、一端30C1が円弧状で他端が矩形になるように形成されている。ここでは、被覆部30c、30cが平面視において矩形に形成される構成としてもよい。この被覆部30c,30cは、金属系摺動材で形成され、長穴22aを挟んで一方と他方に設置されている。つまり、被覆部30c,30cは、一方の介装板30に2枚、他方の介装板30Cに2枚となるように配置されている。また、被覆部30c,30cに対面する第2部材20の表面及び裏面には、金属系摺動材に対して、耐凝着性、親和性等が良い金属材料、例えば、ステンレス板20cのような金属系摺動材となる相手板材が設定されることが好ましい。
【0055】
被覆部30c,30cにおける金属系摺動材としては、固定潤滑剤分散型焼結材や、銅系粉末焼結材などを使用することができる。被覆部30c,30cは、溶接や焼結することで介装板30C,30Cに摺動面として接続されている。被覆部30c、30cは、矩形に形成されることで、円形に形成する場合に比較して一定の間隔で薄板を直線的に切断すれば準備できるため取扱いが容易となる。なお、被覆部30c,30cは、介装板30C,30Cで使用される金属材料と組成成分が異なる金属材料で形成されてる。また、ステンレス板20cも第2支持部材20の端部プレート21の金属材料と組成成分が異なる金属材料で形成されている。つまり、被覆部30c、30cと介装板30C,30Cとは、役割が異なるため、その役割に適した成分組成の金属材料が選択されることが好ましい。同様に、第2支持部材20の端部プレート21と、ステンレス板20cのような相手板材とでは、役割が異なるため、その役割に適した成分組成の金属材料が選択されることが好ましい。なお、成分組成が異なる金属材料とは、含有成分が異なるものは勿論のこと、同じ含有成分の金属材料でも含有量が異なることで機能が変わる金属材料をもいうものとする。
【0056】
なお、金属系摺動材は、既に説明した第1実施形態及び第4実施形態にも適用することができる。また、被覆部30c,30cは、矩形として説明したが、台形や、平行四辺形、あるいは、円弧形状、小判型等、摺動面として使用することができる形状であれば、一方の介装板30Cに長孔22aを挟んで2枚を設置する構成として用いることができる。さらに、第1実施形態で説明したように、円形被覆部30aとして、中央に長孔22aに対応する長孔を形成して一方の介装板30Cに1枚を設置する構成とした場合、その外形形状を介装板30に併せて相似形とすることとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
S1~S6 落橋防止装置
B,BB 橋梁
G,GG 橋桁
P,PP 橋台
10,210,310 第1支持部材
11,311 ベースプレート
12,212,312 側面プレート
313 中央プレート
15 取付部
20,220,320 第2支持部材
20b,20c ステンレス板(第2金属面:摩擦発生手段)
21,321 端部プレート
22,222,322 中央プレート
322 側面プレート
22a,222a,322a 長孔
23,42 衝撃吸収体(衝撃吸収部材)
25 取付部
30,330 介装板(介装部材:摩擦力発生手段)
30a,330a 円形被覆部
30c 被覆部(第1金属面:摩擦発生手段)
31,331 PC鋼棒(緊締手段:摩擦力発生手段)
図1
図2
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