(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020710
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】基板を表面処理するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176389
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2019020770の分割
【原出願日】2014-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴィンプリンガー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板を互いに接合するための技術において、できる限り低い温度で、特に貼り合わせ界面に関してできるだけ高い純度で最適な接合を達成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】基板(1,1′)の少なくともほぼ結晶質の基板表面を、基板表面の非晶質化により、基板表面に非晶質層2,2′を、厚みd>0nmで形成することにより表面処理する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1,1′)の少なくともほぼ結晶質の基板表面(1o,1o′)を、前記基板表面(1o,1o′)の非晶質化により、貼り合わせのために前記基板表面(1o,1o′)に非晶質層(2,2′,2″)を前記非晶質層(2,2′,2″)の厚みd>0nmで形成することにより、表面処理する方法。
【請求項2】
前記非晶質化を、前記非晶質層(2,2′,2″)の厚みd<100nm、特にd<50nm、好ましくはd<10nm、更に好ましくはd<5nm、更に好ましくはd<2nmまで行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o′)の算術平均粗さが低下するように、特に10nm未満、好ましくは8nm未満、更に好ましくは6nm未満、更に好ましくは4nm未満、更に好ましくは2nm未満の算術平均粗さに低下するように実施する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非晶質化を、粒子、特にイオンを用いた前記基板表面(1o,1o′)との粒子衝突により、特に前記粒子の加速により引き起こす、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子の運動エネルギーを、1eV~1000keV、好ましくは1eV~100keV、更に好ましくは1eV~10keV、更に好ましくは1eV~200eVに調節する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子の電流密度を、0.1mA/cm2~1000mA/cm2、好ましくは1.0mA/cm2~500mA/cm2、更に好ましくは50mA/cm2~100mA/cm2、特に好ましくは70mA/cm2~80mA/cm2、最も好ましくは75mA/cm2に調節する、
請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを非晶質化の前に真空引きする、特に、1bar未満、好ましくは10-3bar未満、より好ましくは10-5bar未満、更により好ましくは10-7bar未満、更に特に10-8barの圧力に真空引きする、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により処理された第1の基板(1)を、特に請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により処理された第2の基板(1′)と貼り合わせる方法。
【請求項9】
前記貼り合わせの間及び/又は前記貼り合わせの後に熱処理を実施する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
- 基板(1)を収容するためのプロセスチャンバと、
- 前記基板表面(1o)に、非晶質層(2,2′,2″)を、前記非晶質層(2,2′,2″)の厚みd>0nmで形成させながら、前記基板表面(1o)を非晶質化する手段とを備えた、
基板(1)の基板表面(1o)を表面処理する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は8に記載の方法並びに請求項10に記載の対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業において、既に数年来、基板を互いに接合するために多様な貼り合わせ技術が用いられている。この接合プロセスは、貼り合わせと言われる。大まかに、一時的貼り合わせ法と、恒久的貼り合わせ法とに区別される。
【0003】
一時的貼り合わせ法の場合、製品基板と支持基板とを加工後に再び引き離しができるように貼り合わせる。一時的貼り合わせ法によって、製品基板を機械的に安定化することができる。この機械的な安定化は、湾曲、変形又は破損することなく製品基板を取り扱えることを保証する。支持基板による安定化は、特に裏面薄化の間に又はその後に必要である。裏面薄化プロセスは、製品基板の厚みを数マイクロメートルに低減することを可能にする。
【0004】
恒久的貼り合わせ法の場合には、2枚の基板を互いに永久的に、つまり恒久的に貼り合わせる。2枚の基板の恒久的貼り合わせは、多層構造の製造も可能にする。この多層構造は、同じ材料から又は異なる材料からなっていてよい。多様な恒久的貼り合わせ法が存在する。
【0005】
イオンを含む基板を互いに恒久的に接合するために陽極接合の恒久的貼り合わせ法を使用する。たいていの場合に、この両方の基板の一方はガラス基板である。第2の基板は、好ましくはシリコン基板である。この方法の場合に、互いに貼り合わせるべき両方の基板に沿って電場を印加する。この電場は、好ましくは基板の両方の表面と接触する2つの電極間で生じさせられる。この電場は、ガラス基板内でイオン移動を生じさせ、かつ両方の基板間の空間電荷区域を形成する。この空間電荷区域は、両方の基板表面の強い引力を生じさせ、この基板表面は近接した後に互いに接触し、それにより永続的な接合が形成される。この貼り合わせプロセスは、それゆえ、主に両方の表面の接触面の最大化に基づいている。
【0006】
別の恒久的貼り合わせ法は、共晶接合である。共晶接合の場合、共晶濃度を示す合金を生じるか又は貼り合わせの間に調節される。液相が、共融混合物の固相と共に平衡状態にある共晶温度を超えることにより、この共融混合物は完全に溶融する。形成された共晶濃度の液相は、まだ液化していない領域の表面を濡らす。凝固プロセスの場合に、この液相は共融混合物に凝固し、両方の基板の間に接合層が形成される。
【0007】
別の恒久的貼り合わせ法は、溶融接合である。溶融接合の場合に、2つの平坦な清浄な基板表面を、互いに接触させることにより貼り合わせる。この貼り合わせプロセスは、この場合に2つの段階に分けられる。第1の段階では、両方の基板の接触が行われる。この場合、両方の基板の固定は、主にファン・デル・ワールス力によって行われる。この固定は、仮接合(英語:pre-bond)と言われる。この力は、これらの基板を、著しい力の消費による場合にだけ、特に剪断力をかけることで互いににずらすことができる程度に互いに強固に貼り合わせるために十分に、強い固定を作り出すことができる。他方で、両方の基板は、特に垂直抗力をかけることにより、また互いに比較的容易に引き剥がすことができる。この場合、垂直抗力は、好ましくは周辺部に作用し、両方の基板の界面内にくさび効果を生じさせ、このくさび効果が継続した裂け目を生じさせ、それにより両方の基板はまた互いに離れる。恒久的な溶融接合を生じさせるために、基板積層体を熱処理にかける。この熱処理は、両方の基板の表面の間に共有結合を形成させる。このように形成された恒久的貼り合わせは、たいていの場合に基板の破壊を伴う、相応して高い力を用いて可能なだけである。
【0008】
刊行物の米国特許第5441776号(US 5441776)は、第1の電極を水素化された非晶質シリコン層に貼り合わせる方法を記載している。この非晶質シリコン層は、基板表面に堆積プロセスによって堆積される。
【0009】
刊行物の米国特許第7462552号(US 7462552 B2)は、非晶質シリコン層を基板の表面に堆積するために化学気相堆積(英語:chemical vapour deposition、CVD)を使用する方法を示している。この非晶質層は、0.5~10μmの厚みを示す。
【0010】
Suga等は、自身の刊行物の米国特許第7550366号(US 7550366 B2)で、故意にではなく形成された、約100nmの厚みの非晶質層を報告している。この非晶質層は、表面活性化プロセスにより準備された両方の基板表面間に存在する。この非晶質層は、不活性ガス原子及び金属原子による基板表面のイオン衝撃の副産物である。従って、本来の貼り合わせプロセスは、非晶質層を覆う鉄原子間で行われる。
【0011】
別の技術的問題は熱処理である。この貼り合わせられた基板は、既に、温度敏感性である機能的ユニット、例えばマイクロチップ、MEM、センサ、LEDを備えていることが極めて多い。特に、マイクロチップは、比較的著しくドーピングされている。このドーピング元素は、高温で高められた拡散能力を示し、この拡散能力は、基板内でのドーパントを望ましくない不都合な分配を引き起こすことがある。更に、この熱処理は、常に高められた温度と結びつき、かつそれにより比較的高いコスト、熱応力の発生、及び加熱及び冷却のための比較的長いプロセス時間とも結びつく。更に、異なる材料からなりかつそれにより一般に異なる熱膨張係数を示す異なる基板領域のすべりを回避するために、できる限り低い温度で、貼り合わせるべきである。
【0012】
基板表面を清浄化及び活性化するためのプラズマ処理は、比較的低い温度での貼り合わせを可能にするかもしれない。この種のプラズマ法は、酸素親和性の表面の場合、特に金属表面の場合に、機能しないか又は極めて悪く機能するにすぎない。この酸素親和性の表面は酸化し、かつ一般的に比較的安定な酸化物を形成する。この酸化物は、また、貼り合わせプロセスのために妨げになる。この種の金属は、拡散接合によっても互いに貼り合わせることが比較的困難である。それに対して、二酸化ケイ素層を形成する、プラズマにより活性化された、特に単結晶のシリコンの貼り合わせは、極めて良好に機能する。この二酸化ケイ素層は、貼り合わせのために抜群に適している。ここに挙げた酸化物の不利な作用は、必ずしも全ての種類の金属に当てはまるものではない。
【0013】
文献中には、低温での直接接合を記載する多くの取り組みが存在する。PCT/EP2013/064239での取り組みは、犠牲層を施すことにあり、この犠牲層は貼り合わせプロセスの間及びその後に基板材料中に溶解する。PCT/EP2011/064874での別の取り組みは、相変換による恒久的接合の製造を記載している。上述の文献は、特に、共有結合によってではなくむしろ金属結合によって貼り合わせられた金属表面に関している。PCT/EP2014/056545には、表面清浄化によるシリコンの最適化された直接接合プロセスが記載されている。
他の問題は、貼り合わせるべき表面/接触面の表面粗さである。特に、互いに貼り合わせるべき基板表面から、公知の方法で酸化物及び不純物を除去する際に、頻繁に比較的高い粗さが生じる。この粗さは、顕微鏡的な尺度で、貼り合わせプロセスの間の両方の表面の完全な接触を妨げ、これが効果的な貼り合わせ強度に不利に作用する。この両方の基板表面は、主にそれ自体が接触する表面極大位置で実際に貼り合わせられる。従って、特に良好な清浄化とできる限り理想的な表面の作製との間に対立が生じる。
【0014】
半導体工業の場合に、特に、同種の素材及び材料が互いに接合されるべきである。この同種性は、接合箇所に関して同じ物理特性及び化学特性が存在することを考慮する。これは、特に、わずかな腐食傾向及び/又は同じ機械特性を示すべきである電流を通すべき接合のために重要である。この同種の素材の中には、特に次のものが存在する:
・ 銅-銅
・ アルミニウム-アルミニウム
・ タングステン-タングステン
・ シリコン-シリコン
・ 酸化ケイ素-酸化ケイ素
【0015】
半導体工業において使用されるいくつかの金属は酸素親和性である。このように、アルミニウムは酸素含有雰囲気下で比較的強固な酸化アルミニウムを形成する。この種の酸化物は、貼り合わせの際に、貼り合わせ結果に不利な影響を及ぼす、というのもこの酸化物は互いに貼り合わせられるべき両方の材料の間に閉じ込められるためである。極端な条件下で、この種の酸化物は貼り合わせプロセスを完全に妨げることがあり、最適な条件下で、この酸化物は閉じ込められる。埋め込みの前の酸化物層の機械的破壊も考えられる。この酸化物は、熱力学的に十分に安定であり、分解されず又は固溶体にもならない。これは、貼り合わせ界面内で酸化物として残り、その箇所で機械特性に不利な影響を及ぼす。タングステンの貼り合わせ及び/又は銅の貼り合わせについても同様の問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の課題は、できる限り低い温度で、特に貼り合わせ界面に関してできるだけ高い純度で最適な接合を達成する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、請求項1、8及び10の特徴によって解決される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に記載されている。明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載された特徴の少なくとも2つからなる全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。値の範囲が記載されている場合には、挙げられた限界内にある値は限界値として開示されたものとしても見なされ、かつ任意の組み合わせも利用することができる。
【0018】
本発明の基本思想は、特に主に非晶質化された層を、定義された厚みdで、貼り合わせるべき基板表面に作製することである。この非晶質化された層は、この場合、特に化学的堆積プロセス及び/又は物理的堆積プロセス、好ましくはスパッタリングによって、基板に施すか又は基板から直接作製することができる。本発明の主要な態様は、ただし、非晶質化された層を、物理的プロセス及び/又は化学的プロセスによって施される材料によるのではなく、基板材料の相変換によって行うことにある。それにより、特に望ましくない又は有害な材料の堆積を完全に省くことができる。従って、更なる経過で、主に第2の方法が取り上げられる。
【0019】
特に、本発明は、少なくとも一方の、好ましくは両方の基板が貼り合わせの前に次に記載するように処理された2つの基板を恒久的に貼り合わせる方法に関する。2つの基板の両方又は少なくとも一方の表面領域、特に接触側(好ましくは全体)を、貼り合わせプロセスの前に非晶質化する。本明細書の更なる経過において、全体の基板表面は非晶質化された表面領域と記載するが、本発明の場合に、基板よりも小さい表面積の表面領域、特に互いに別々の表面領域の非晶質化も考えられる。この非晶質化により、ナノメートルの厚みの層が形成され、この層内では、貼り合わせられる表面(接触側)の少なくとも一方の側の原子が不規則に配列される。この不規則な配列により、特に比較的低い温度で、改善された貼り合わせ結果が生じる。本発明による貼り合わせを作製するために、特に表面(少なくとも接触側)の清浄化が、特に酸化物の除去のために実施される。好ましくは、清浄化と非晶質化は同時に行われ、更に好ましくは同じ処理により行われる。本発明の本質的な本発明による態様は、特に低エネルギーの粒子、特にイオンの使用であり、このイオンのエネルギーは比較的低いが、ただし本発明による非晶質化を引き起こすために十分である。
【0020】
基板表面からの酸化物の除去は、最適な貼り合わせプロセスのため及び相応する高い貼り合わせ強度を示す基板積層体のために好ましい。このことは、特に、酸素含有雰囲気下で、望ましくない自然酸化物を形成する全ての材料に当てはまる。このことは、例えば酸化ケイ素のような、故意に作製された酸素基板表面については必ずしも当てはまらない。特に、本発明の場合に、好ましくは少なくとも主に、更に好ましくはもっぱら、有害な、不必要な及び/又は自然酸化物、特に金属酸化物は除去される。好ましくは、上述の酸化物は、貼り合わせプロセスの前に、十分に、特に完全に除去され、貼り合わせ界面(2つの基板の接触面)内には組み込まれない。この種の酸化物の組み込みは、機械的な不安定化及び極めて低い貼り合わせ強度を引き起こしかねない。酸化物の除去は、物理的又は化学的方法により行われる。特に好ましい本発明による実施形態の場合に、望ましくない酸化物の除去は、本発明による方法を実施する装置と同じ装置を用いて行われる。それにより、特に最適な状況下で:
・ 酸化物除去
・ 表面平滑化
・ 非晶質化
を同時に実施することができる。これとは別の本発明の実施形態の場合に、酸化物除去は同じ装置内で行われない。この場合、特に、両方の装置間で基板を輸送する際に基板表面の新たな酸化が起こらないことが保証されなければならない。
【0021】
本発明による思想は、換言すると、非晶質化により、特に2つの基板表面間での貼り合わせ強さを高めることにある。この場合、非晶質化は複数の問題を解決する。
【0022】
第1は、本発明による非晶質化の前に、好ましくは基板表面の清浄化を行う。特に、基板表面の清浄化及び非晶質化は、同時に実施され、更に好ましくは同じプロセスにより実施される。
【0023】
第2に、本発明による非晶質化は、基板表面の平坦化を引き起こす。この場合、この平坦化は、非晶質化の間に、特に付加的に貼り合わせプロセスの間に作用する力の作用によって行われる。
【0024】
第3に、この非晶質化により、基板表面(貼り合わせ界面)の熱力学的に準安定状態が生じる。この準安定状態は、更なるプロセス段階で(特に貼り合わせるべき表面の接触後に)非晶質層の部分領域の結晶状態への(再)転位を引き起こす。理想的な場合に、非晶質層の完全な転位が行われる。非晶質層の接触及び引き続く熱処理の後の生じる層厚は、特にゼロより大である。
【0025】
本発明による思想は、特に、基板の存在する基本材料から、特に粒子衝撃により、非晶質層を作製することにある。好ましくは、基板の貼り合わせの前に接触されるべき基板表面上に材料を施さない。
【0026】
本発明による方法は、少なくとも一方が、好ましくは両方が本発明により非晶質化されている2つの基板表面の、完全な及び/又は全面積の、特に単一種の接触の製造を可能にする。完全な接触により、不純物、封入物、空間及びボイドは完全に避けられる。
【0027】
本発明による方法は、特に、2つの、好ましくは異なる基板表面の、完全な及び/又は全面積の及び/又は単一種でない接触の製造のために使用される。特に、次の材料を任意な組み合わせで互いに貼り合わせることができる。
・ 金属、特に
Cu、Ag、Au、Al、Fe、Ni、Co、Pt、W、Cr、Pb、Ti、Te、Sn、Zn
・ 合金
・ 半導体(相応するドーパントを含む)、特に
元素半導体、特に
・ Si、Ge、Se、Te、B、□-Sn
化合物半導体、特に
・ GaAs、GaN、InP、InxGa1-xN、InSb、InAs、GaSb、AlN、InN、GaP、BeTe、ZnO、CuInGaSe2、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x)Cd(x)Te、BeSe、HgS、AlxGa1-xAs、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、CuInSe2、CuInS2、CuInGaS2、SiC、SiGe
有機半導体、特に
・ フラバントロン、ペリノン、Alq3、ペリノン、テトラセン、キナクリドン、ペンタセン、フタロシアニン、ポリチオフェン、PTCDA、MePTCDI、アクリドン、インダントロン。
【0028】
好ましくは、本発明の場合に、次の材料の組み合わせが使用される:
- GaN-Cu、
- GaAs-SiO2
- Cu-Al。
【0029】
本発明の実施形態は、とりわけ、異なる材料からなる2つの基板表面を接合するために適しているが、本特許の更なる経過で、簡素化のために、主に、同種の2つの基板表面の接合に関する。本発明は、換言すると、特に直接接合する方法に関する。この場合、本発明は、好ましくは、基板の(特に接触側に配置された)少なくとも1つの表面を貼り合わせ工程の前に非晶質化するという思想を基礎とする。非晶質化は、好ましくは、所定の堆積パラメータで基板表面に非晶質に昇華・蒸着(resublimiert)又は凝縮する材料を堆積させることによるのではなく、特に基板表面での非晶質層の変化、変成及び/又は相変換により行われる。これは、特に、粒子衝撃、特にイオン衝撃による、最も好ましくは低エネルギーイオン衝撃による運動エネルギーの導入により行われる。
【0030】
非晶質化
非晶質化とは、結晶中での原子の明確に定義された配列とは反対に、原子の不規則な配列であると解釈される。この原子は、単一原子の単一成分系の原子、多原子の単一成分系の原子、単一原子の多成分系の原子又は多原子の多成分系の原子であってよい。成分とは、一つの相の、独立して変化可能な物質的な構成要素であると解釈される。非晶質相は、特に短距離秩序及び/又は長距離秩序を示さない。本発明により形成された非晶質層の少なくとも部分的に非晶質の組織とは、少なくとも非晶質相と結晶質相とからなる相の混合形であると解釈される。非晶質相と全体積との間の体積比率は、非晶質化度と言われる。本発明の場合に、非晶質化度は、特に10%より高く、好ましくは25%より高く、更に好ましくは50%より高く、特に好ましくは75%より高く、最も好ましくは99%より高い。
【0031】
本発明による非晶質化は、好ましくは、非晶質化の間で、プロセスパラメータの温度、圧力、イオンエネルギー及び/又はイオンビーム密度を選択することにより、特に、互いに貼り合わせられるべき基板の表面近傍領域に限定される。特に、この場合、基板材料は、本発明による非晶質化層を除いて、少なくともほとんど、好ましくは完全に結晶質のままである。
【0032】
本発明による第1の実施形態の場合に、第1の基板の基板表面だけが非晶質化される。基板表面内で本発明による作製の直後の非晶質層の厚みdは、特に100nm未満、好ましくは50nm未満、更に好ましくは10nm未満、特に好ましくは5nm未満、最も好ましくは2nm未満である。
【0033】
本発明の態様の場合に、第1の基板の基板表面と、第2の基板の基板表面とが非晶質化される。本発明による特別な実施形態の場合に、同じプロセスパラメータの下で同じ非晶質層を作製するために、両方の基板表面の非晶質化は同じ装置内で、特に同時に行われる。作製された非晶質層は、好ましくは第1の基板の第1の非晶質層の厚みd1と第2の基板の第2の非晶質層の厚みd2とが同じである。両方の、特に同時に作製された非晶質層の厚みの比率d1/d2は、0.6<d1/d2<1.4、好ましくは、0.7<d1/d2<1.3、更に好ましくは0.8<d1/d2<1.2、特に好ましくは0.9<d1/d2<1.1、最も好ましくは0.99<d1/d2<1.01である。
【0034】
基板表面は、非晶質化の前、その間及びその後に、わずかであるが、特に無視できない程度の粗さを示す。特別な実施形態の場合に、基板表面の粗さは非晶質化の間に低減され、非晶質化の後に最小値を示す。この粗さは、算術平均粗さ、二乗平均平方根高さ、又は十点平均粗さとして示される。算術平均粗さ、二乗平均平方根高さ及び十点平均粗さについての平均値は、一般にその測定区域又は測定面積で区別されるが、同じオーダーの範囲にある。表面粗さの測定は、(当業者に公知の)測定機器の一つを用いて、特にプロフィルメータ及び/又は原子間力顕微鏡(英語:atomic force microscope、AFM)を用いて行われる。この場合、測定面積は、特に200μm×200μmである。従って、粗さについての次の数値範囲は、算術平均粗さ、二乗平均平方根高さ又は十点平均粗さについての値として解釈される。非晶質化の前の基板表面の粗さは、本発明の場合に、特に10nm未満、好ましくは8nm未満、更に好ましくは6nm未満、特に好ましくは4nm未満、最も好ましくは1nm未満である。非晶質化の後の基板表面の粗さは、特に10nm未満、好ましくは8nm未満、更に好ましくは6nm未満、特に好ましくは4nm未満、最も好ましくは1nm未満である。
【0035】
非晶質化は、好ましくは基板表面との粒子の衝突によって行われる。この粒子は、帯電した粒子であるか又は帯電していない粒子である。加速は、好ましくは帯電した粒子(イオン)によって行われる、というのも帯電した粒子は技術的に容易に加速することができるためである。
【0036】
イオンは、本発明の場合に好ましくは、表面基板の清浄化のためにも役立つ。従って、本発明の場合に、基板表面の清浄化、特に酸化物除去を、非晶質化と組み合わせる。基板が、非晶質化の前、特に非晶質化の直前に清浄化されている場合には、本発明による方法は、確かに非晶質層の製造のためだけにも使用することができる。基板の全体の表面積Fと清浄化された表面積fとの比率は、清浄化度rとして表される。清浄化度は、本発明による貼り合わせプロセスの前に、特に0より大きく、好ましくは0.001より大きく、更に好ましくは0.01より大きく、特に好ましくは0.1より大きく、最も好ましくは1である。
r=f/F
【0037】
清浄化及び/又は非晶質化は、好ましくはプロセスチャンバとして真空チャンバ内で行われる。真空チャンバは、この場合、1bar未満、好ましくは1mbar未満、更に好ましくは10-3mbar未満、特に好ましくは10-5mbar未満、最も好ましくは10-8mbar未満に真空引きすることができる。真空チャンバは、特にイオンを非晶質化のために使用する前に、好ましくは上述の圧力に、更に好ましくは完全に真空引きされる。特に、プロセスチャンバ内の酸素割合は、基板表面の新たな酸化が不可能なほど著しく低減される。
【0038】
本発明の場合に、特に非晶質化のために次のガス及び/又はガス混合物を電離する:
・ 単原子ガス、特に
・ Ar、He、Ne、Kr、
・ 分子ガス、特に
・ H
2、N
2、CO、CO
2、
・ ガス混合物、特に
・ フォーミングガスFG(アルゴン+水素)及び/又は
・ フォーミングガスRRG(水素+アルゴン)及び/又は
・ フォーミングガスNFG(アルゴン+窒素)及び/又は
・ 水素及び/又は
使用されるガス混合物は、特に次の組成を示す。
【表1】
【0039】
イオンは、電離プロセスにおいて生成される。電離プロセスは、好ましくはイオンチャンバ内で行われる。生成されたイオンは、イオンチャンバを離れ、好ましくは電場及び/又は磁場によって加速される。電場及び/又は磁場によるイオンの変向も考えられる。イオンは、イオンビーム内で基板表面に衝突する。イオンビームは、平均イオン密度により特徴付けられる。
【0040】
本発明の一実施形態の場合に、基板表面とイオンビームとの間の入射角は、自由に選択かつ調節可能である。入射角は、基板表面とイオンビームとの間の角度として定義される。入射角は、特に0°~90°、好ましくは25°~90°、更に好ましくは50°~90°、特に好ましくは75°~90°、最も好ましくは精確に90°である。イオンビームの入射角により、基板表面へのイオンの衝突エネルギーを調節することができる。衝突エネルギーにより非晶質化を調節可能である。更に、入射角(及びそれと関連する、基板表面へのイオンの衝突エネルギー)により、不純物、特に酸化物の除去を調節することができる。更に、入射角の精確な選択は、除去率及びそれによる表面粗さの調節を可能にする。従って、入射角は、特に、非晶質化、不純物、特に酸化物の除去、及び表面平滑化を、所望な結果のために最大化されるように選択される。この最大化とは、特に、不純物、特に酸化物の完全な除去、更に、表面の平滑化、特に完全な平滑化(つまり粗さ値をゼロにまで低減)、並びに最適な非晶質層、特に厚い非晶質層であると解釈される。
【0041】
非晶質化の調節は、本発明の別の実施形態の場合に、加速された粒子、特にイオンの運動エネルギーの調整により行われる。粒子の運動エネルギーは、特に1eV~1000keV、好ましくは1eV~100keV、更に好ましくは1eV~10keV、特に好ましくは1eV~1keV、最も好ましくは1eV~200eVに調節される。
電流密度(単位時間及び単位面積当たりの粒子、特にイオンの数)は、特に0.1mA/cm2~1000mA/cm2、好ましくは1.0mA/cm2~500mA/cm2、更に好ましくは50mA/cm2~100mA/cm2、特に好ましくは70mA/cm2~80mA/cm2、最も好ましくは75mA/cm2に選択される。
【0042】
処理時間は、特に1s~200s、好ましくは10s~200s、更に好ましくは50s~200s、最も好ましくは100s~200sに選択される。
【0043】
貼り合わせ
貼り合わせは、特に別個の貼り合わせチャンバ内で行われ、この場合、貼り合わせチャンバは、好ましくはクラスター装置内に組み込まれて非晶質化するプロセスチャンバに接続されていて、更に好ましくは、真空引きを継続的に維持しながらプロセスチャンバから貼り合わせチャンバに移送可能である。
【0044】
両方の基板表面の少なくとも一方の、本発明による非晶質化の後に、特に両方の基板の相互のアライメントが行われる。好ましくは、アライメントは、アライメント装置(英語:aligner)により及びアライメントマークに基づいて行われる。
【0045】
両方の基板を相互にアライメントした後に、特に接触が行われる。この接触は、好ましくは中心で始められ、完全に接触するまで半径方向に外側に続けられる。この接触様式の場合、ガスの排除が保証される。更に、両方の基板を互いにできる限りわずかなゆがみで接触させる。
【0046】
この接触は、好ましくは仮固定、特に仮接合を生じさせる。この仮接合は、0.01J/m2~2.5J/m2、好ましくは0.1J/m2~2J/m2、更に好ましくは0.5J/m2~1.5J/m2、最も好ましくは0.8J/m2~1.2J/m2の結合強度により特徴付けられる。この仮接合は、必ずしも両方の基板表面の完全な接触を生じさせる必要はない。
【0047】
本発明による更なる段階で、仮接合された基板の本来の貼り合わせプロセスが行われる。本来の貼り合わせプロセスは、特に力及び温度の作用からなる。本発明による貼り合わせ温度は、特に200℃未満、好ましくは150℃未満、更に好ましくは100℃未満、特に好ましくは100℃未満、最も好ましくは50℃未満である。本発明による貼り合わせ力は、特に0.01kNより高く、好ましくは0.1kNより高く、更に好ましくは1kNより高く、特に好ましくは10kNより高く、最も好ましくは100kNより高い。相応する圧力範囲は、本発明による貼り合わせ力を基板面積に対して標準化することにより得られる。基板は、任意の形状を有していてよい。特に、基板は円形であり、かつ直径については工業基準に従って特徴付けられている。この基板は、全ての任意の形状を有していてよいが、好ましくは円形である。基板、特にいわゆるウェハについて、工業的に通常の直径は、1インチ、2インチ、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、12インチ及び18インチである。しかしながら、本発明による実施形態は、これらの直径とは無関係に基本的に全ての基板を取り扱うことができる。
【0048】
本発明の場合に、圧力負荷は、(基板表面の接触面に沿って形成される)仮接合によってまだ接触が行われていない境界層内で基板表面の近接を引き起こす。基板表面の近接は、連続的な縮小を引き起こし、かつキャビティは最終的に塞がれる。この場合、本発明により非晶質化は重要な役割を演じる、というのも非晶質の状態によって表面等方的な静電気的な引きつけが行われるためである。基板表面の互いに接触する非晶質層は、両方とも結晶質でないため、結晶格子を継続しかつ適合した接触に関して考慮する必要もない。非晶質層を備えた2つの基板表面の接触は、従って、新たにより大きな非晶質層の形成を引き起こす。移行部分は流動的になり、かつ本発明の場合にとりわけ、境界層の完全な消失により特徴付けられる。
【0049】
本発明による貼り合わせプロセスの後の、特に直後の貼り合わせられた全体の非晶質層の厚さは、特に100nm未満、好ましくは50nm未満、更に好ましくは10nm未満、特に好ましくは5nm未満、最も好ましくは2nm未満である。
【0050】
貼り合わせ強度は、特に3つの重要なパラメータ、つまり
・ 非晶質層の厚み、
・ 粗さ
・ 不利な影響を及ぼす組み込まれたイオンの数及び
・ 貼り合わせ力
により影響を受ける。
【0051】
本発明の場合に、この貼り合わせ強度は、非晶質層の厚みの増加と共に特に増大する。非晶質層が厚ければそれだけ、不規則に配列した原子の数が多くなる。不規則に配列した原子は、長距離秩序及び/又は短距離秩序の影響下になく、かつ上述のプロセスによって、特に圧力負荷による拡散及び近接により、キャビティは相応して容易に充填される、というのも、これらの原子は秩序ある格子に適合する必要がないためである。この充填により、接触表面積が高まり、かつそれにより貼り合わせ強度も高まる。接触面積の向上は、貼り合わせ強度のための重要なパラメータとして確認される。非晶質層の平均厚さが、算術平均粗さよりも小さい場合には、キャビティを塞ぐために非晶質相の十分な原子が提供されない。他方で、極めてわずかな粗さを示す基板表面は、相応して小さなキャビティを提供することも言及しなければならない。基板表面の粗さが小さくなればそれだけ、所望な貼り合わせ結果を達成するために非晶質層の厚みもより薄くなることができる。相応して厚い非晶質層は、本発明の場合に、相応して高いイオンエネルギーにより達成され、この相応して高いイオンエネルギーは、イオンを基板内にできる限り深く侵入させることができる。
粗さの効果も同様のこととして解釈することができる。粗さが大きくなればそれだけ、基板表面の近接もより困難となり、かつキャビティを充填しかつそれにより接触面積を最大化するために、非晶質の基板表面の原子はより多くのエネルギーを消費しなければならない。
【0052】
この貼り合わせ強度は、非晶質層の純度の関数でもある。導入された全ての原子又はイオンは、特に不安定化、特に貼り合わせ強さの低下を引き起こしかねない。非晶質化のために利用されるイオンは、従って、特にこのイオンが非晶質化の後に非晶質層内に残留する場合に、貼り合わせ強度に関して不利な影響も及ぼしかねない。従って、相応して低いイオンエネルギーの他に、できる限り低い電流密度及び処理時間となるように努める。
【0053】
電流密度に処理時間を掛けた場合に、処理時間内で単位面積区分当たり基板表面に当たるイオンが得られる。この数を最小化するために、電流密度を低く及び/又は処理時間を短くすることができる。基板表面に単位面積当たり、よりわずかなイオンが当たればそれだけ、よりわずかなイオンが非晶質層内に組み込まれる。非晶質化されるべき材料と結合することができずかつ欠陥として、特に点欠陥として存在する粒子は、とりわけ貼り合わせ強度に不利な影響を及ぼす。これには、とりわけ希ガス、更に分子ガスも挙げられる。
【0054】
特に、本発明の場合に、イオンが特に新たな相の形成により、貼り合わせインターフェースの強化を行えるようなガス又はガス混合物の使用が考えられる。好ましい可能性は、非晶質層を窒化する電離した窒素の使用であると考えられる。
【0055】
同様の考察が、非晶質層の材料と結合する、特に金属結合、共有結合又はイオン結合する、他の全ての種類の元素についても当てはまる。電流密度を低くするために、特に既に最小の粗さを提供する基板表面が好ましい。基板表面がより平滑であればそれだけ、本発明の場合に粗さの低減のために、よりわずかでかつより低いエネルギーのイオンが必要なだけである。それにより、イオンエネルギー及び/又はイオン電流の低減及びそれによる単位面積当たりのイオンの数の低減が可能であり、これによりまた組み込まれるイオンの数が少なくなりかつその結果、欠陥の数も少なくなり、最終的に貼り合わせ強さが向上する。
【0056】
貼り合わせ強度は、貼り合わせ力の関数である、というのもより高い貼り合わせ力は、基板表面のより強い近接を引き起こし、かつそれにより、より良好な接触面が生じるためである。貼り合わせ力がより高くなればそれだけ、より容易に基板表面は互いに近接され、それにより局所的に変形した領域によってキャビティは塞がれる。
【0057】
熱処理
特に非晶質化プロセスとは別個の熱処理は、特にボンダ中での貼り合わせの間及び/又は貼り合わせの後に又は極端な(特にクラスター内に組み込まれた)熱処理モジュール内での貼り合わせの後に行われる。熱処理モジュールは、ホットプレート、加熱塔、炉、特に連続炉又は他の種類の熱発生装置であってよい。
【0058】
熱処理は、特に500℃未満、好ましくは400℃未満、更に好ましくは300℃未満、特に好ましくは200℃未満、最も好ましくは100℃未満の温度で行われる。
【0059】
熱処理の時間は、特に、熱処理後の本発明による非晶質の残留層の厚みが、50nm未満、好ましくは25nm未満、更に好ましくは15nm未満、特に好ましくは10nm未満、最も好ましくは5nm未満となるように選択される。この残留層の厚みは、特に大抵の試験の場合には決して完全には消失しない、というのも非晶質層の完全な変換は、両方の基板表面の変換された結晶格子の完全な適合によってのみ可能であるためである。この完全な適合は、エネルギー的及び幾何学的な理由からありえないため、大抵の本発明により記載された場合にはゼロではない残留層の厚みが残る。
【0060】
特に、貼り合わせの際及び/又は貼り合わせの後及び/又は熱処理の際に、非晶質状態から結晶質状態への相変換が行われる。
【0061】
更に好ましい本発明の実施形態の場合に、上述のプロセスパラメータは、非晶質層の結晶質相への完全な変換が行われるように選択される。
【0062】
本発明の場合に、好ましい実施形態によると、変換される材料の純度は、質量百分率(m%)で示して、特に95m%より大きく、好ましくは99m%より大きく、更に好ましくは99.9m%より大きく、特に好ましくは99.99m%より大きく、最も好ましくは99.999%よりも大きく選択される。基板材料の高い純度により、更に良好な貼り合わせ結果が達成される。
【0063】
本発明の他の利点、特徴及び細部は、好ましい実施例の次の記載から並びに図面により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明による方法の一実施形態の第1の方法段階(非晶質化)での本発明により処理された基板の一実施形態の寸法通りではない略示断面図を示す。
【
図2】本発明による方法の一実施形態の第2の方法段階(接触/仮接合)の、寸法通りでない略示断面図を示す。
【
図3】第3の方法段階(貼り合わせ)の、寸法通りでない略示断面図を示す。
【
図4】第4の方法段階(熱処理)の、寸法通りでない略示断面図を示す。
【
図5】非晶質層を作製するための設備/装置の、寸法通りでない略示断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図中で、同様の特徴又は同様に作用する特徴は、同じ符号で表されている。
【0066】
図1は、基板表面1oに本発明により作製された非晶質層2を備えた第1の基板1の寸法通りでない略示断面図を示す。非晶質層2は、一般に、まだ粗い表面2oを示す。この粗さは、好ましくは、酸化物又は他の生成物の除去の間に最小値に低減される。この非晶質層2は、基板表面1oから基板1内へ深さ(厚みd)にわたって延びている。
【0067】
図2は、
図1により処理された2枚の基板1,1′の仮接合の寸法通りでない略示断面図を示す。この仮接合プロセスは、非晶質層2,2′の表面2o,2o′に沿った基板表面1o,1o′(接触面)の接触により特徴付けられる。この接触は、この場合、特に表面2o,2o′の極大位置2eで行われる。ゼロではないが、しかしながら特に
図1による非晶質化により著しく低下した粗さにより、この場合、キャビティ3の形成が生じる。更に特に好ましい場合には、できる限り多くの極大位置2eが部分的に,特に完全に極小位置2m内に入り込み、形成されたキャビティ3の数又はその容積を仮接合プロセスの間に既に最小化する。
【0068】
本発明による貼り合わせプロセスにより、特に基板1,1′の裏面1r,1r′から基板表面1o,1o′に対して横断方向に力を加えることにより、表面2o,2o′の接触は完全になり、非晶質層2,2′から形成される合わせた非晶質層2″の(合計の)厚みdは、(一緒になった)層の厚みd′に低減される(
図3参照)。この時点で、好ましくは、互いに貼り合わせられた基板1,1′の貼り合わせられた表面1o,1o′の間はもはや区別することはできない。この特徴は、本発明による実施形態の特別な特徴としても述べられ、他の技術との区別のために用いる。今日の技術的な知識水準によれば、イオンの移動路内に(結晶質)組織の変化を生じさせることなく、基板内部に非晶質層を製造することは不可能である。非晶質の(残留)層の前後の組織の調査により、本発明によるプロセスを一義的に同定することが考えられる。非晶質の残留層の前後の組織が、イオン衝撃によって一義的に変化されていない場合には、埋め込まれた非晶質層の作製は本発明による貼り合わせプロセスによって行われたことに違いないと考えられる。
【0069】
力を加えることは、特に、非晶質相中に存在する、表面1o,1o′に配置された原子の近接を引き起こす。既に(特に非晶質化により低減された)比較的小さな寸法のキャビティ3のために、極大位置2eの変形は、特に拡散プロセスにより支援されて原子の単なるすべりによって、キャビティ3を実際に完全に塞ぐために十分である。従って、組織の塑性変形は、塑性変形理論から公知の塑性変形プロセス、例えば転位移動又は双晶形成によるのではなく、少なくとも主に、好ましくはもっぱら、個々の原子の、近接及び/又はすべり及び/又は拡散により引き起こされたか又は支援された運動により行われる。
【0070】
図4による、本発明の更なるプロセス段階において、非晶質層2″の変換、特に少なくとも主に再結晶化により生じる変換が行われる。この変換、特に再結晶化は、層の厚みのd′の本発明による最終的な層の厚みd″までの連続的な低下を引き起こし、この最終的な層の厚みd″は、本発明による全く好ましい実施形態の場合に0(ゼロ)に等しくなる。d″/d及び/又はd″/d′の比率は、1以下、好ましくは0.5未満、更に好ましくは0.25未満、特に好ましくは0.1未満であり、最も好ましくは0に等しい。このことから、特に、完全に、ほぼ無欠陥の結晶質の移行部が両方の基板1,1′の間に生じる。これは、貼り合わせの間に既に及び/又は貼り合わせの直後に、特に貼り合わせチャンバ内で既に生じることがある。この場合、特に、ボンダの加熱装置が、貼り合わせの際に基板積層体の加熱のために使用される(熱処理)。
【0071】
図5は、イオン源4を示し、このイオン源4は、イオンビーム5のイオンを、基板表面1oに対して入射角αで、基板表面2oに向けて加速する。
【符号の説明】
【0072】
1,1′ 基板
1o,1o′ 基板表面
1r,1r′ 裏面
2,2′,2″ 非晶質層
2o,2o′ 表面
2e 極大位置
2m 極小位置
3 キャビティ
4 イオン源
5 イオンビーム
d,d′,d″ 厚み
α 入射角
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1、1’)の少なくともほぼ結晶質の基板表面(1o,1o’)を表面処理するための方法であって、
材料を堆積させずに前記基板表面(1o,1o’)を非晶質化することにより、厚みd>0nmの非晶質層(2,2’,2”)は、前記基板表面(1o,1o’)に貼り合わせるために形成され、
ガスおよび/またはガス混合物は、非晶質化のためにイオン化され、金属粒子を含まないイオンビームを有する粒子を形成し、
前記ガスは、Ar、He、Ne、Kr、H
2
、N
2
、COおよびCO
2
から成る群から選択され、
前記ガス混合物は、フォーミングガスFG、フォーミングガスRRGおよびフォーミングガスNFGから成る群から選択され、
前記フォーミングガスFGは、50%以上のアルゴンと残りの量の水素とから成り、
前記フォーミングガスRRGは、50%以上の水素と残りの量のアルゴンとから成り、
前記フォーミングガスNFGは、50%以上のアルゴンと残りの量の窒素とから成り、
前記非晶質層(2,2’,2”)は、基板材料の相変換によって生じ、
力を加えることにより前記基板表面(1o,1o’)を貼り合わせる際に、キャビティ(3)は、塞がれる、
方法。
【請求項2】
前記非晶質化を、前記非晶質層(2,2’,2”)の厚みd<100nmまで行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質化を、前記非晶質層(2,2’,2”)の厚みd<50nmまで行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非晶質化を、前記非晶質層(2,2’,2”)の厚みd<10nmまで行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非晶質化を、前記非晶質層(2,2’,2”)の厚みd<5nmまで行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非晶質化を、前記非晶質層(2,2’,2”)の厚みd<2nmまで行う、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)の平均粗さが低下するように実施する、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)の平均粗さが10nm未満の平均粗さに低下するように実施する、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)の平均粗さが8nm未満の平均粗さに低下するように実施する、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)の平均粗さが6nm未満の平均粗さに低下するように実施する、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)の平均粗さが4nm未満の平均粗さに低下するように実施する、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)の平均粗さが2nm未満の平均粗さに低下するように実施する、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)と粒子との粒子衝突によりより引き起こす、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記非晶質化を、前記基板表面(1o,1o’)とイオンとの粒子衝突によりより引き起こす、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記非晶質化を、粒子を加速することによる前記基板表面(1o,1o’)と粒子との粒子衝突によりより引き起こす、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記粒子の運動エネルギーを、1eV~1000keVに調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子の運動エネルギーを、1eV~200keVに調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子の運動エネルギーを、1eV~100keVに調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子の運動エネルギーを、1eV~10keVに調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記粒子の電流密度を、0.1mA/cm2~1000mA/cm
2
に調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子の電流密度を、1.0mA/cm
2
~500mA/cm
2
に調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記粒子の電流密度を、50mA/cm
2
~100mA/cm
2
に調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記粒子の電流密度を、70mA/cm
2
~80mA/cm
2
に調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記粒子の電流密度を、75mA/cm
2
に調節する、
請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを前記非晶質化の前に真空引きする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを前記非晶質化の前に、1bar未満の圧力に真空引きする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを前記非晶質化の前に、10
-3
bar未満の圧力に真空引きする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを前記非晶質化の前に、10
-5
bar未満の圧力に真空引きする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを前記非晶質化の前に、10
-7
bar未満の圧力に真空引きする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記非晶質化をプロセスチャンバ内で実施し、前記プロセスチャンバを前記非晶質化の前に、10
-8
bar未満の圧力に真空引きする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
請求項1から30のいずれかに記載の方法により処理された第1の基板(1)を、第2の基板(1’)と貼り合わせる方法。
【請求項32】
請求項1から30のいずれかに記載の方法により処理された第1の基板(1)を、請求項1から30のいずれかに記載の方法により処理された第2の基板(1’)と貼り合わせる方法。
【請求項33】
前記貼り合わせの間および/または前記貼り合わせの後に熱処理を実施する、
請求項31または32に記載の方法。
【外国語明細書】