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特開2022-20873撮像装置及び撮像装置を有する表面検査装置、撮像方法及びプログラム
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  • 特開-撮像装置及び撮像装置を有する表面検査装置、撮像方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020873
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置を有する表面検査装置、撮像方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124094
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000177058
【氏名又は名称】三友工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】東谷 力雄
(72)【発明者】
【氏名】今田 宗利
(72)【発明者】
【氏名】篠田 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】浅井 元輝
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB01
2G051AB02
2G051AB07
2G051BB01
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB01
2G051EA08
2G051EB01
2G051EB05
(57)【要約】
【課題】対象物の表面の汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方の欠陥を検出することが可能となる。
【解決手段】対象物10を搬送する搬送ベルト22と、搬送ベルト22の上方に位置し、対象物10の表面に光を照射する光源24と、対象物10の表面を撮像するカメラ26と、カメラ26で撮像された撮像情報の処理や各種制御を行う中央演算ユニットと、を備えており、対象物10の表面における光の照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下であるため、対象物10の表面に汚れ欠陥がある場合も、凹凸欠陥がある場合も、いずれの場合も欠陥を撮像することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を搬送する搬送手段と、
前記対象物の表面の少なくとも一部に光を照射する光源と、
前記光が照射された前記対象物の表面を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
を備え、
前記対象物の表面における前記光の照射幅は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする、
撮像装置。
【請求項2】
対象物の表面の少なくとも一部に光を照射する光源と、
前記光が照射された前記対象物の表面を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
前記光源及び前記撮像手段を前記対象物の表面に沿って移動する移動手段と、
を備え、
前記対象物の表面における前記光の照射幅は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする、
撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撮像装置において、
前記照射幅は、1ミリメートル以上5ミリメートル以下であることを特徴とする、
撮像装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置において、
前記撮像手段の撮像面の中心は、前記光源の中心から照射された光が前記対象物の表面で正反射した際の光路上に位置することを特徴とする、
撮像装置。
【請求項5】
前記光源はLED光源であることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像情報に基づいて、輝度差及びエッジ強度を算出し、前記輝度差及び前記エッジ強度に基づいて前記対象物の表面状態を検査する検査手段と、
を備えたことを特徴とする、
表面検査装置。
【請求項7】
対象物を搬送する搬送手段と、前記対象物の表面の少なくとも一部に光を照射する光源と、前記光が照射された前記対象物の表面を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、を備えた撮像装置を用いて前記対象物の表面を検査する撮像方法であって、
前記対象物の表面に、照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下で前記光を照射する光照射ステップと、
前記光が照射された領域の少なくとも一部を撮像し、前記撮像情報を出力する撮像ステップと、
を含むことを特徴とする、
撮像方法。
【請求項8】
請求項7に記載の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置を有する表面検査装置、撮像方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射光量の大きなキズ欠陥とそれが小さいシミ欠陥とを明確に区別して検査できるようにする金属表面の検査方法及び装置が知られている。例えば、特許文献1には、金属製品の表面を斜光照明する照明装置と、斜光照明下にある金属の表面を撮像するCCDカメラと、該表面を撮像して得られる画像に基づいて金属の表面状態を検査する画像処理装置とを備えた検査装置において、画像上でキズ欠陥のみが識別できる第1照明光量と、キズ欠陥とシミ欠陥とが識別できる第2照明光量とに、それぞれ前記照明装置からの光量を調整する手段を備えていると共に、画像処理装置が、撮像された第1画像と第2画像の同一箇所の輝度を比較することでそれぞれ画像処理を行って金属の表面状態を検査することができる金属表面の検査方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-266686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した金属表面の検査方法では、キズ欠陥とシミ欠陥のそれぞれに対応した光量を照射する必要があるため、キズ欠陥とシミ欠陥の両方を同時に検査することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、キズ欠陥を含む凹凸欠陥とシミ欠陥を含む汚れ欠陥の両方を同時に撮像する撮像装置、撮像方法及びプログラムを提供することを主目的とする。また、この撮像装置を用いて対象物の表面を検査する表面検査装置を提供することも、目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の撮像装置は、
対象物を搬送する搬送手段と、
前記対象物の表面の少なくとも一部に光を照射する光源と、
前記光が照射された前記対象物の表面を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
を備え、
前記対象物の表面における前記光の照射幅は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする、
ものである。
【0008】
この撮像装置は、搬送手段で搬送される対象物の表面に光源から光を照射し、光が照射された対象物の表面を撮像手段で撮像し、撮像情報を取得する。こうすることにより、搬送手段によって対象物が搬送されるにともなって、対象物の表面を撮像することができる。このとき、対象物の表面における光の照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下とすることにより、対象物の表面の汚れからなる汚れ欠陥と表面のキズや凹み、突起からなる凹凸欠陥の両方の欠陥のいずれの欠陥がある場合であっても、欠陥を撮像情報として撮像することができる。
【0009】
このような効果が得られる理由は明らかではないが、光の照射幅を10ミリメートル以下とすることで、光の照射幅が広い場合と比較して、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)によって反射した光が撮像手段に到達しにくくなるため、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)によって反射した光と正常な表面によって反射した光との明るさの違いをより明確に撮像手段が撮像することができ、汚れ欠陥を撮像可能な明るさの光を照射した場合でも、凹凸欠陥を撮像可能にすることができ、汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方を撮像することができると考えている。すなわち、光源から照射される光を強くすると汚れ欠陥は検出しやすくなる一方、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)以外から反射した光の影響で凹凸欠陥は検出しにくくなるが、光の照射幅を10ミリメートル以下とすることで、凹凸欠陥を精度良く撮像することが可能となり、汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方を撮像することができると考えている。なお、光の照射幅を1ミリメートル未満とすると、光が照射されている領域を撮像手段で撮像することが難しくなるため、好ましくない。
【0010】
本発明の撮像装置は、
対象物の表面の少なくとも一部に光を照射する光源と、
前記光が照射された前記対象物の表面を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、
前記光源及び前記撮像手段を前記対象物の表面に沿って移動する移動手段と、
を備え、
前記対象物の表面における前記光の照射幅は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする、
撮像装置。
【0011】
この撮像装置は、光源から光が照射された対象物の表面を撮像手段で撮像し、撮像情報を取得する。この撮像装置では、光源及び撮像手段が移動手段によって対象物の表面に沿って移動することで、対象物の表面を撮像することができる。このとき、対象物の表面における光の照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下とすることにより、対象物の表面の汚れからなる汚れ欠陥と表面のキズや凹み、突起からなる凹凸欠陥の両方の欠陥のいずれの欠陥がある場合であっても、欠陥を撮像情報として撮像することができる。
【0012】
このような効果が得られる理由は明らかではないが、光の照射幅を10ミリメートル以下とすることで、光の照射幅が広い場合と比較して、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)によって反射した光が撮像手段に到達しにくくなるため、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)によって反射した光と正常な表面によって反射した光との明るさの違いをより明確に撮像手段が撮像することができ、汚れ欠陥を撮像可能な明るさの光を照射した場合でも、凹凸欠陥を撮像可能にすることができ、汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方を撮像することができると考えている。すなわち、光源から照射される光を強くすると汚れ欠陥は検出しやすくなる一方、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)以外から反射した光の影響で凹凸欠陥は検出しにくくなるが、光の照射幅を10ミリメートル以下とすることで、凹凸欠陥を精度良く撮像することが可能となり、汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方を撮像することができると考えている。なお、光の照射幅を1ミリメートル未満とすると、光が照射されている領域を撮像手段で撮像することが難しくなるため、好ましくない。
【0013】
本発明の撮像装置において、前記照射幅は、1ミリメートル以上5ミリメートル以下であることを特徴としてもよい。こうすることにより、対象物の表面に汚れ欠陥がある場合と凹凸欠陥がある場合にいずれの欠陥がある場合であっても、より鮮明に欠陥を撮像情報として撮像することができる。
【0014】
本発明の撮像装置において、前記撮像手段の撮像面の中心は、前記光源の中心から照射された光が前記対象物の表面で正反射した際の光路上に位置することを特徴としてもよい。こうすることにより、対象物の表面に凹凸欠陥を有する場合には、対象物の表面で反射した光が正反射とは異なる角度で反射することになるため、撮像手段で撮像する際、暗く撮像されることになる。このため、撮像情報の明るさで凹凸欠陥の有無を検出する際、より高い精度で欠陥を検出することができる。
【0015】
本発明の撮像装置において、前記光源はLED光源であることを特徴としてもよい。光源にLED光源を用いることにより、LED光源から照射される光は直進性が高いため、蛍光灯等の照射された光が拡散される光源を用いる場合と比較して、凹凸欠陥の壁面(傾斜面)によって反射した光が撮像手段により到達し難くなり、より鮮明に凹凸欠陥を撮像情報として撮像することができる。
【0016】
本発明の表面検査装置は、
上述した撮像装置と、
前記撮像情報に基づいて、輝度差及びエッジ強度を算出し、前記輝度差及び前記エッジ強度に基づいて前記対象物の表面状態を検査する検査手段と、
を備えたことを特徴とする、
ものである。
【0017】
この表面検査装置では、撮像手段から出力された撮像情報に基づいて、所定の大きさに区分した領域毎の輝度差及び各領域の境界における輝度差であるエッジ強度を算出し、輝度差及びエッジ強度に基づいて表面に欠陥を有するか否かを検査する検査手段を有しているため、撮像情報に基づいて対象物の表面状態を検査することができる。このとき、撮像情報は上述した撮像装置の撮像手段によって撮像されるため、上述した撮像装置と同様の効果、例えば、汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方の欠陥を検出することができる。なお、ここで「輝度差」とは、所定の大きさに区分した領域の平均輝度値の差を意味し、「エッジ強度」とは、隣接する領域の輝度値の差を意味する。この差が大きいほど、輝度値が大きく変化していることを意味し、撮像情報における輝度値の変化は対象物の表面の欠陥が原因で生じるため、輝度値の変化から対象物の表面状態、対象物の表面の欠陥の有無を検査することができる。
【0018】
本発明の撮像方法は、
対象物を搬送する搬送手段と、前記対象物の表面の少なくとも一部に光を照射する光源と、前記光が照射された前記対象物の表面を撮像し、撮像情報を出力する撮像手段と、を備えた撮像装置を用いて前記対象物の表面を検査する撮像方法であって、
前記対象物の表面に、照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下で前記光を照射する光照射ステップと、
前記光が照射された領域の少なくとも一部を撮像し、前記撮像情報を出力する撮像ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0019】
この撮像方法は、光源から光が照射された対象物の表面を撮像手段で撮像し、撮像情報を取得する。このとき、対象物の表面における光の照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下とすることにより、対象物の表面に汚れ欠陥がある場合と凹凸欠陥がある場合のいずれの欠陥がある場合であっても、欠陥を撮像情報として撮像することができる。
【0020】
本発明のプログラムは、上述した撮像方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVD、コンパクトメモリなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した撮像方法の各ステップが実行されるため、上述した撮像方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、表面検査装置20の構成の概略を示す説明図である。
図2図2は、表面検査装置20の電気的な接続を示すブロック図である。
図3図3は、撮像情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、深い凹み欠陥を有する対象物の照射幅と評価値の関係を示したグラフである。
図5図5は、浅い凹み欠陥を有する対象物の照射幅と評価値の関係を示したグラフである。
図6図6は、大きな汚れ欠陥を有する対象物の照射幅と評価値の関係を示したグラフである。
図7図7は、小さな汚れ欠陥を有する対象物の照射幅と評価値の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態の一例として、表面検査装置20について、詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、表面検査装置20の使用方法の一例を明らかにすることにより、本発明の表面検査装置及び撮像装置の使用方法の一例を明らかにすると共に、本発明の撮像方法及びプログラムの一例も明らかにする。
【0023】
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態の一例である表面検査装置20の構成の概略について詳しく説明する。ここで、図1は、表面検査装置20の構成の概略を示す説明図である。図1に示すように、表面検査装置20は、対象物10を搬送する搬送ベルト22と、搬送ベルト22の上方に位置し、対象物10の表面に所定の照射幅で光を照射する光源24と、光源24から所定の照射幅で光が照射された領域を含む対象物10の表面を撮像するカメラ26(本発明の撮像手段に相当)と、カメラ26で撮像された撮像情報から欠陥の有無を検出する制御ユニット30(本発明の検査手段に相当,図2参照)と、を備えており、搬送ベルト22によって搬送される対象物10の表面に所定の照射幅で光源24から光が照射され、光が照射された領域を含む対象物10の表面をカメラ26で撮像することで、撮像情報を取得することができる。このとき、光源24から照射される光の照射幅を所定の照射幅とすることにより、対象物10の表面に汚れ欠陥及び凹凸欠陥のいずれの欠陥を有する場合であっても、欠陥を撮像情報として捉えることができる。この撮像情報を用いることで、対象物10の表面の欠陥を容易に検出することができる。
【0024】
搬送ベルト22は、公知の搬送ベルトであり、本発明の搬送手段に相当する。この搬送ベルト22は、複数のローラの回転に伴い、対象物10が一方側から他方側(図1中、右側から左側)に対象物10を搬送することができる。なお、搬送ベルト22は、複数のローラによりベルトが回転する搬送ベルトとしたが、対象物10を搬送可能な形態であればこの態様に限定されるものではなく、例えば、ローラのみにより搬送するものであってもよいし、ベルトのみによって搬送されるものであってもよいし、種々の態様を採用することができる。
【0025】
光源24は、公知のライン照明であり、複数のLEDが対象物10の搬送方向に直交する方向(図1中、前後方向)に配置されていることにより、対象物10の表面を所定の照射幅で光を照射することができる。このとき、対象物10が一方側から他方側に搬送される際、対象物10の全体に同じ強さの光を所定の照射幅で照射することができるため、対象物10の表面に汚れや凹凸を有する場合には、汚れや凹凸の位置にかかわらず、撮像情報に同様の変化が現れることになる。このとき、所定の照射幅は、1ミリメートル以上10ミリメートル以下が好ましく、1ミリメートル以上5ミリメートル以下がより好ましい。照射幅を1ミリメートル以上とすることにより、光が照射された領域をカメラ26で撮像しやすくなるため好ましく、照射幅を10ミリメートル以下とすることで、汚れ欠陥と凹凸欠陥の両方を撮像しやすくなるため好ましい。こうすることにより、対象物10の表面に汚れ欠陥及び凹凸欠陥のいずれの欠陥が存在する場合であっても、容易に欠陥を撮像することができる。
【0026】
カメラ26は、公知のデジタルカメラである。このカメラ26は、対象物10の両側方向全体(図1中、前方側の側面から後方側の側面)を撮像可能な公知のエリアカメラである。このカメラ26は、光源24から光が照射された対象物10の表面を撮像する際、光が照射された領域を撮像可能なエリアカメラであり、カメラ26によって撮像された撮像情報には、光源24から光が照射された領域が含まれる。この撮像情報を用いることで、対象物10の表面に汚れ欠陥及び凹凸欠陥のいずれの欠陥が存在する場合であっても、容易に欠陥を撮像することができる。
【0027】
また、カメラ26の撮像面(レンズの表面)27の中心は、光源24の中心から照射された光が対象物10の表面で正反射した際の光路上に位置する。言い換えると、カメラ26の撮像面27の中心は、光源24の中心から照射された光が正反射した際の光を撮像する位置に位置し、対象物10の表面から垂直方向に伸ばした仮想線と光源24の中心との角度(図1中θ1,光の入射角に相当)と、仮想線と撮像面27の中心との角度(図1中θ2,光の反射角に相当)とが等しくなる位置に位置する。こうすることにより、対象物10の表面に凹凸を有する場合には、表面に凹凸を有しない対象物10の表面から正反射した位置と異なる位置に光が反射されることになるため、光源24の中心から照射された光は撮像面27の中心に反射されず、凹凸を有しない場合と比較して暗くなることになる。このため、対象物10の表面の凹凸を高精度で撮像することができる。このような効果は、光源24としてLED光源を使用した場合に特に効果が高い。LED光源から照射された光は直進性が高いため、直進性が低い光源を利用している場合と比較して、対象物10の表面における反射角の変化が撮像情報の明暗として現れやすいためである。
【0028】
中央演算ユニット30は、CPU31を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、撮像情報を解析や、搬送ベルト22及びカメラ26の動作を制御するための各種処理プログラム等を記憶したROM32と、一時的に各種データを記憶するRAM33と、搬送ベルト22や記憶手段28等と接続を可能とするインタフェース34(以下、「I/F34」と言う。)と、を備え、これらはバス35を介してお互いに信号のやりとりが可能に接続されている。この中央演算ユニット30は、カメラ26から入力された撮像情報から所定の範囲で区分した各領域の輝度値の差である輝度差を算出すると共に、隣接する各領域の輝度値の差であるエッジ強度を算出する。この輝度差及びエッジ強度を用いることにより、対象物10の表面に欠陥が存在する場合に、欠陥を検出することができる。
【0029】
次に、こうして構成された本実施の形態の表面検査装置20の動作、特に、撮像情報の処理方法について、図3を用いて詳しく説明する。ここで、図3は、撮像情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この撮像情報処理ルーチンは、ROM32に予め記憶されており、図示しない開始ボタンを押圧されることにより発信される開始信号を受信した際に、実行される。
【0030】
この撮像処理ルーチンが実行されると、CPU31は、搬送ベルト22によって対象物10の搬送を開始すると共に、光源24から所定の照射幅で光が照射された領域を含む対象物10の表面をカメラ26で連続的に撮像する(ステップS110)。具体的には、CPU31からカメラ26に撮像開始信号が発信されると、カメラ26は一定間隔(搬送ベルト22の搬送速度に応じて、対象物10の全体を所定の領域で撮像可能な間隔)で対象物10の表面を撮像し、カメラ26から発信された撮像情報は、記憶手段28に記憶される。
【0031】
続いて、CPU31は、記憶手段28に記憶された撮像情報から、輝度差を算出する(ステップS120)。具体的には、まず、記憶手段28から撮像情報を読み出し、RAM33に一時的に記憶する。次に、撮像情報を所定の大きさの領域に分割し、それぞれの領域の平均輝度を算出し、この平均輝度の差を輝度差として算出する。このように、周囲の領域より平均輝度が変化している領域は、欠陥が位置する可能性が高いため、このような領域は、欠陥を有する可能性が高い。
【0032】
続いて、CPU31は、記憶手段28に記憶された撮像情報から、エッジ強度を算出する(ステップS130)。具体的には、まず、記憶手段28から撮像情報を読み出し、RAM33に一時的に記憶する。次に、撮像情報を所定の大きさの領域(例えば、ピクセル毎)に分割し、隣接するピクセルの輝度値の差の最も大きな値をエッジ強度の値とする。こうすることにより、輝度値が大きく変化している領域を抽出することができる。このように、輝度値が大きく変化している領域は、欠陥の外縁に位置する可能性が高いため、このような領域は、欠陥を有する可能性が高い。
【0033】
次に、CPU31は、輝度差及びエッジ強度の値から評価値を算出し(ステップS140)、評価値が予め定めた所定の値(例えば、値0)より大きいの場合に、欠陥を有すると判定する(ステップS140)。こうすることにより、対象物10の表面に欠陥を有するか否かを容易に判定することができる。具体的には、輝度差及びエッジ強度の値が0以上10未満を値0、値が10以上20未満を値1、20以上30未満を値2、30以上40未満を値3、40以上50未満を値4、50以上60未満を値5、60以上70未満を値6、70以上80未満を値7、80以上90未満を値8、90以上100未満を値9、100を値10とし、輝度差の値及びエッジ強度の値の平均を評価値とし、この評価値が値0より大きいか否かを判定することで、欠陥の有無を判定した。
【0034】
続いて、この表面検査装置20で表面検査を行った実験結果について、詳しく説明する。表面検査装置20において、光源24から照射される照射幅を変更し、表面に深い凹みを有する対象物について、照射幅と評価値の関係を示したグラフを図4に示す。図4に示すように、照射幅を10ミメートルより小さい幅とした場合には評価値が0より大きくなり、深い凹みを撮像情報として検出できていることが分かる。このことから、照射幅を10ミリメートルより小さい幅とすることにより、表面に存在する深い凹みを撮像情報として明確に撮像することができ、表面の凹みによる欠陥を容易に検出することができたと言える。なお、図4のグラフにおいて、縦軸は評価値を、横軸は対象物10の表面における照射幅を、それぞれ示し、同一の条件で3回行った平均値を示す。
【0035】
次に、表面に浅い凹みを有する対象物について、照射幅と評価値の関係を示したグラフを図5に示す。図5に示すように、照射幅を5ミメートルより小さい幅とした場合には評価値が大きく上昇していることが分かる。このことから、照射幅を5ミリメートルより小さい幅とすることにより、表面に存在する浅い凹みを撮像情報として明確に撮像することができ、表面の凹みによる欠陥を容易に検出することができたと言える。なお、図5のグラフにおいて、縦軸は評価値を、横軸は対象物10の表面における照射幅を、それぞれ示し、同一の条件で3回行った平均値を示す。
【0036】
次に、表面に市販の印鑑の朱肉を付着させた大きな汚れ欠陥を有する対象物について、照射幅と評価値の関係を示したグラフを図6に示す。図6に示すように、照射幅が狭くなるにつれて評価値が上昇していることが分かる。このことから、照射幅を狭くすることで、汚れを撮像情報として明確に撮像することができ、表面の汚れによる欠陥を容易に検出することができたと言える。なお、図6のグラフにおいて、縦軸は評価値を、横軸は対象物10の表面における照射幅を、それぞれ示し、同一の条件で3回行った平均値を示す。
【0037】
次に、表面に市販の印鑑の朱肉を付着させた小さな汚れ欠陥を有する対象物について、照射幅と評価値の関係を示したグラフを図7に示す。図7に示すように、照射幅が狭くなるにつれて評価値が上昇していることが分かる。このことから、照射幅を狭くすることで、汚れを撮像情報として明確に撮像することができ、表面の汚れによる欠陥を容易に検出することができたと言える。なお、図7のグラフにおいて、縦軸は評価値を、横軸は対象物10の表面における照射幅を、それぞれ示し、同一の条件で3回行った平均値を示す。
【0038】
以上詳述した本実施の形態の表面検査装置20によれば、光源24から光が照射された対象物10の表面をカメラ26で撮像し、撮像情報を取得する。このとき、対象物10の表面における光の照射幅が1ミリメートル以上10ミリメートル以下であるため、対象物10の表面に汚れ欠陥がある場合も、凹凸欠陥がある場合も、いずれの場合も欠陥を撮像することができる。
【0039】
また、カメラ26の撮像面27の中心が、光源24の中心から照射された光が対象物10の表面で正反射した際の光路上に位置するため、対象物10の表面に凹凸欠陥がある場合には、対象物10の表面で反射した光が撮像面27の中心から離れた位置に反射することになり、凹凸欠陥の位置が比較的暗く撮像され、凹凸欠陥を検出しやすい。
【0040】
更に、光源24はLED光源であるため、光源から照射される光の直進性が高いため、対象物の表面の凹凸によって反射される光の直進性が低い場合と比較して、正反射の際の反射角度から変化しやすい。言い換えると、微細な凹凸によって撮像手段の中心位置に光が反射しなくなるため、凹凸欠陥を検出しやすい。
【0041】
更にまた、撮像情報から算出した輝度差の値及びエッジ強度の値に基づいて評価値を算出することで、凹凸欠陥や汚れ欠陥によって撮像情報が暗くなる欠陥領域を高精度で検出することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0043】
例えば、上述した実施の形態では、搬送ベルト22によって対象物10が搬送されることで、光源24から光が照射される位置及びカメラ26が撮像する位置を変更するものとしたが、搬送ベルト22で対象物10を搬送することに替えて、光源24及びカメラ26を動かすことにより、撮像する位置を変更するものとしてもよい。例えば、光源24及びカメラ26の相対位置を固定した状態で、対象物10の表面に沿って移動させる移動手段(例えば、表面に沿って移動可能なジャッキやキャリッジ等)で光源24及びカメラ26を移動させてもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0044】
上述した実施の形態では、光源24は複数のLEDからなるライン照明であるとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、LEDのバー照明であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0045】
上述した実施の形態では、複数のLEDが対象物10の搬送方向に直交する方向に配置することで所定の照射幅で光を照射するものとしたが、例えば、光源24の一部を遮蔽することで照射される光の一部を遮蔽し、所定の照射幅で光を照射してもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0046】
上述した実施の形態では、カメラ26は公知のエリアカメラであるものとしたが、ラインカメラであってもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上述した実施の形態で示すように、品質検査分野、特に、表面検査装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10…対象物、20…表面検査装置、22…搬送ベルト、24…光源、26…カメラ、27…撮像面、28…記憶手段、30…中央演算ユニット、31…CPU、32…ROM、33…RAM、34…インタフェース、35…バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7