(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020895
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】空気紡績装置、空気紡績機、及び紡績方法
(51)【国際特許分類】
D01H 1/115 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
D01H1/115 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124136
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】岡 正毅
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA19
4L056BC00
4L056BD12
4L056BD13
4L056CA04
4L056CA06
4L056EA04
4L056EA12
4L056EC03
(57)【要約】
【課題】高品質の紡績糸を紡績できる空気紡績装置を提供する。
【解決手段】空気紡績装置4は、旋回空気流によって、繊維束Fに撚りを与えて紡績糸Yを生成する。この空気紡績装置4は、ファイバーガイド41aと、ノズルブロック41bと、ノズルヘッド41cと、を備える。ファイバーガイド41aは、繊維束Fを案内する。ノズルブロック41bには、ファイバーガイド41aにより案内された繊維束Fに作用する旋回空気流を発生させるための圧縮空気が通過するノズルが形成されている。ノズルヘッド41cには、繊維束Fを紡績するための流入室7が形成されている。流入室7は、紡績糸Yの走行方向と垂直に流入室7を切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下となる部分を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回空気流によって、繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置であって、
繊維束を案内するファイバーガイドと、
前記ファイバーガイドにより案内された繊維束に作用する旋回空気流を発生させるための圧縮空気が通過するノズルが形成されたノズルブロックと、
前記旋回空気流が流入する流入室が形成される流入室形成ブロックと、
を備え、
前記流入室は、糸の走行方向と垂直に当該流入室を切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下となる部分を有することを特徴とする空気紡績装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気紡績装置であって、
前記流入室は、糸の走行方向と垂直に当該流入室を切断した場合に、切断面の円の直径が28mm以上34mm未満となる部分を有することを特徴とする空気紡績装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気紡績装置であって、
糸の走行方向での前記流入室の長さは、前記流入室の直径の38%以上75%以下であることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項4】
請求項3に記載の空気紡績装置であって、
糸の走行方向での前記流入室の長さは、14mm以上25mm以下であることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の空気紡績装置であって、
前記流入室は、前記流入室形成ブロックに形成された接続開口を介して、前記旋回空気流を排出する排気路に接続されることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項6】
請求項5に記載の空気紡績装置であって、
前記接続開口において、前記流入室の周方向一側に位置する端部と、周方向他側に位置する端部と、の間の距離は、前記流入室の直径より小さいことを特徴とする空気紡績装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の空気紡績装置であって、
前記流入室は、当該流入室を前記接続開口が形成されていない箇所で糸の走行方向と垂直に切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下となる部分を有していることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の空気紡績装置であって、
前記ファイバーガイドから離れるに従って、前記流入室の前記切断面の円の直径が大きくなることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項9】
請求項8に記載の空気紡績装置であって、
糸の走行方向と垂直な任意の面で前記流入室を切断した場合に、切断面の円の直径の最大値が、25mm以上36mm以下であり、
前記切断面の円の直径の最大値と最小値との差は、5mm以下であることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の空気紡績装置であって、
前記流入室の容積は、3000mm3以上8000mm3以下であることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の空気紡績装置であって、
糸を外部に導出する中空ガイド軸体を更に備えることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項12】
請求項11に記載の空気紡績装置であって、
前記中空ガイド軸体は、前記流入室内に挿入される部分において、糸の走行方向に対して37度以上70度以下の角度で傾斜する斜面を有することを特徴とする空気紡績装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の空気紡績装置であって、
前記ノズルブロックには、前記旋回空気流を発生させる旋回空気流発生室が形成されており、
前記旋回空気流発生室は、前記ファイバーガイドから離れるに従って径が大きくなるテーパ状に形成され、
前記旋回空気流発生室内に挿入された前記中空ガイド軸体の部分の外周面は、前記旋回空気流発生室の内壁面と平行又は略平行であることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載の空気紡績装置であって、
前記流入室内の圧力を検出する圧力センサを備えることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載の空気紡績装置と、
スライバをドラフトして繊維束とするドラフト装置と、
を備え、
前記ドラフト装置において繊維束を最下流で送り出す部分から前記空気紡績装置が備える中空ガイド軸体の上流側端面までの距離であるノズル距離は、前記流入室の直径の1.5倍より大きく2.0倍より小さいことを特徴とする空気紡績機。
【請求項16】
請求項15に記載の空気紡績機であって、
前記空気紡績装置により生成された糸のテンションを検出するテンションセンサを更に備えることを特徴とする空気紡績機。
【請求項17】
請求項1から14までの何れか一項に記載の空気紡績装置を用いて紡績を行う空気紡績方法であって、
紡績する繊維束の種類に応じて前記流入室の形状を変更しながら、前記空気紡績装置を用いて紡績を行うことを特徴とする空気紡績方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、空気を用いて紡績を行う空気紡績装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績室に形成した旋回空気流の作用によって繊維に撚りを加え、紡績糸を生成する空気紡績装置が知られている。特許文献1は、この種の空気紡績装置を開示する。
【0003】
特許文献1の空気紡績装置は、ファイバーガイドとノズルブロックをノズルホルダに固定するノズルキャップを設けることにより、ファイバーガイドとノズルブロックの取付け位置の偏移を防止することで、紡績室の形状のバラツキを低減する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より高品質の紡績糸を紡績できる空気紡績装置、当該空気紡績装置を備えた空気紡績機、及び当該空気紡績装置を用いた紡績方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の空気紡績装置が提供される。即ち、この空気紡績装置は、旋回空気流によって、繊維束に撚りを与えて糸を生成する。この空気紡績装置は、ファイバーガイドと、ノズルブロックと、流入室形成ブロックと、を備える。前記ファイバーガイドは、繊維束を案内する。前記ノズルブロックには、前記ファイバーガイドにより案内された繊維束に作用する旋回空気流を発生させるための圧縮空気が通過するノズルが形成されている。前記流入室形成ブロックには、前記旋回空気流が流入する流入室が形成されている。前記流入室は、糸の走行方向と垂直に当該流入室を切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下となる部分を有する。
【0007】
これにより、ファイバー屑を容易に収集可能な流入室を構成することができる。この結果、繊維束に含まれた各繊維が旋回空気流の作用によってスムーズに旋回でき、高品質の糸を生成することができる。
【0008】
前記の空気紡績装置において、前記流入室は、糸の走行方向と垂直に当該流入室を切断した場合に、切断面の円の直径が28mm以上34mm未満となる部分を有することが好ましい。
【0009】
これにより、ファイバー屑を一層容易に収集することができる。
【0010】
前記の空気紡績装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸の走行方向での前記流入室の長さは、前記流入室の直径の38%以上75%以下である。
【0011】
これにより、好適な形状の流入室を実現することができる。
【0012】
前記の空気紡績装置において、糸の走行方向での前記流入室の長さは、14mm以上25mm以下であることが好ましい。
【0013】
これにより、適度な大きさの流入室を形成することができる。
【0014】
前記の空気紡績装置において、前記流入室は、前記流入室形成ブロックに形成された接続開口を介して、前記旋回空気流を排出する排気路に接続されることが好ましい。
【0015】
これにより、流入室内の空気を排出することができる。また、流入室で収集されたファイバー屑を容易に排出することができる。
【0016】
前記の空気紡績装置において、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記接続開口において、前記流入室の周方向一側に位置する端部と、周方向他側に位置する端部と、の間の距離は、前記流入室の直径より小さい。
【0017】
これにより、コンパクトな構成で、流入室の空気を外部に排出することができる。
【0018】
前記の空気紡績装置において、前記流入室は、当該流入室を前記接続開口が形成されていない箇所で糸の走行方向と垂直に切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下となる部分を有していることが好ましい。
【0019】
これにより、流入室の大きさを適切な範囲内にすることができる。
【0020】
前記の空気紡績装置において、前記ファイバーガイドから離れるに従って、前記流入室の前記切断面の円の直径が大きくなることが好ましい。
【0021】
これにより、ノズルブロックのノズルから噴射された圧縮空気をスムーズに排出することができる。
【0022】
前記の空気紡績装置は、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸の走行方向と垂直な任意の面で前記流入室を切断した場合に、切断面の円の直径の最大値が、25mm以上36mm以下である。前記切断面の円の直径の最大値と最小値との差は、5mm以下である。
【0023】
これにより、流入室の形状が急激に変化しない構成を実現することができる。従って、流入室における空気の流れを円滑にすることができる。
【0024】
前記の空気紡績装置において、前記流入室の容積は、3000mm3以上8000mm3以下であることが好ましい。
【0025】
これにより、紡績に適した流入室の空間を形成することができる。
【0026】
前記の空気紡績装置は、糸を外部に導出する中空ガイド軸体を更に備えることが好ましい。
【0027】
これにより、旋回空気流により紡績された糸を、空気紡績装置の外部に向かって容易に案内することができる。
【0028】
前記の空気紡績装置において、前記中空ガイド軸体は、前記流入室内に挿入される部分において、糸の走行方向に対して37度以上70度以下の角度で傾斜する斜面を有することが好ましい。
【0029】
これにより、中空ガイド軸体が挿入された状態で、流入室において空気が流れる空間がある程度の大きさを有することを確保できる。
【0030】
前記の空気紡績装置は、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ノズルブロックには、前記旋回空気流を発生させる旋回空気流発生室が形成されている。前記旋回空気流発生室は、前記ファイバーガイドから離れるに従って径が大きくなるテーパ状に形成される。前記旋回空気流発生室内に挿入された前記中空ガイド軸体の部分の外周面は、前記旋回空気流発生室の内壁面と平行又は略平行である。
【0031】
これにより、糸を形成する繊維の旋回空間を、旋回空気流が円滑に流れるように適切に形成することができる。
【0032】
前記の空気紡績装置は、前記流入室内の圧力を検出する圧力センサを備えることが好ましい。
【0033】
これにより、従来のように排気の影響により流入室内の圧力を適切に検出できなかったり、流入室内に異物が堆積し始めてから圧力変化が生じるまでに時間が掛かることにより流入室内の異常の検出が遅れたりすることがなくなり、流入室内の圧力を適切に検出することができる。
【0034】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の空気紡績機が提供される。即ち、前記空気紡績機は、前記空気紡績装置と、ドラフト装置と、を備える。前記ドラフト装置は、スライバをドラフトして繊維束とする。前記ドラフト装置において繊維束を最下流で送り出す部分から前記空気紡績装置が備える中空ガイド軸体の上流側端面までの距離であるノズル距離は、前記流入室の直径の1.5倍より大きく2.0倍より小さい。
【0035】
これにより、適切に延ばされた繊維束を空気紡績装置内に導入して紡績することができる。
【0036】
前記の空気紡績機は、前記空気紡績装置により生成された糸のテンションを検出するテンションセンサを更に備えることが好ましい。
【0037】
これにより、圧力センサでは紡績異常を検出しにくいケースであっても、テンションセンサにより糸のテンションに関する情報を得ることができ、紡績異常を適切に検出することができる。
【0038】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の空気紡績方法が提供される。即ち、この空気紡績方法では、紡績する繊維束の種類に応じて前記流入室の形状を変更しながら、前記空気紡績装置を用いて紡績を行う。
【0039】
これにより、旋回空気流が流れる流入室のサイズを繊維束の種類に適したサイズにすることで、旋回空気流発生室内の圧力を紡績に適した圧力にすることができる。従って、繊維束に含まれたファイバー屑等の異物を容易に排出でき、紡績された糸の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気紡績装置を備える空気紡績機の全体的な構成を示す正面図。
【
図5】紡績ブロック及び中空ガイド軸体の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る空気紡績装置4を備える空気紡績機1について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0042】
図1に示す空気紡績機1は、ブロアボックス11と、原動機ボックス12と、複数の紡績ユニット2と、糸継台車8と、を備える。複数の紡績ユニット2は、所定の方向に並べて配置されている。
【0043】
ブロアボックス11内には、負圧源として機能するブロア13等が配置されている。
【0044】
原動機ボックス12には、図略の駆動源と、中央制御装置14と、表示部15と、操作部16と、が配置されている。原動機ボックス12に設けられる駆動源には、複数の紡績ユニット2で共通で利用されるモータが含まれる。
【0045】
中央制御装置14は、空気紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。中央制御装置14は、
図2に示すように、各紡績ユニット2が備えるユニット制御部20に、図略の信号線を介して接続されている。本実施形態では、それぞれの紡績ユニット2がユニット制御部20を備えているが、所定数(例えば、2つ又は4つ)の紡績ユニット2が1つのユニット制御部20を共用しても良い。
【0046】
表示部15は、紡績ユニット2に対する設定内容及び又は紡績ユニット2の状態に関する情報等を表示することができる。表示部15がタッチパネルディスプレイである場合、表示部15と操作部16は一体的に構成されていても良い。
【0047】
各紡績ユニット2は、主として、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置3と、空気紡績装置4と、糸貯留装置5と、巻取装置6と、を備えている。ここでの「上流」及び「下流」とは、紡績糸(糸)Yの巻取時における、スライバS、繊維束F、及び紡績糸Yの走行方向での上流及び下流を意味する。
【0048】
ドラフト装置3は、空気紡績機1が備えるフレーム10の上端近傍に設けられている。
図2に示すように、ドラフト装置3は、4つのドラフトローラ対を備えている。4つのドラフトローラ対は、上流から下流へ向かって順に配置された、バックローラ対31、サードローラ対32、ミドルローラ対33、及びフロントローラ対34である。ミドルローラ対33には、エプロンベルト35が各ローラに対して設けられている。
【0049】
ドラフト装置3は、図略のスライバケースから供給されるスライバSを、各ドラフトローラ対のローラ同士の間で挟み込んで搬送することによって、所定の繊維量(又は太さ)となるまで引き伸ばして(ドラフトして)、繊維束Fを生成する。ドラフト装置3で生成された繊維束Fは、空気紡績装置4に供給される。
【0050】
空気紡績装置4は、ドラフト装置3で生成された繊維束Fに旋回空気流を作用させることにより、撚りを加えて紡績糸Yを生成する。空気紡績装置4の詳細な構成は後述する。
【0051】
糸貯留装置5には、空気紡績装置4で生成された紡績糸Yが供給される。糸貯留装置5は、
図2に示すように、糸貯留ローラ51と、モータ52と、を備える。
【0052】
糸貯留ローラ51は、モータ52により回転駆動される。糸貯留ローラ51は、その外周面に紡績糸Yを巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ51は、外周面に紡績糸Yを巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することによって、空気紡績装置4から紡績糸Yを所定の速度で引き出して下流側に搬送する。
【0053】
このように、糸貯留装置5は、糸貯留ローラ51の外周面に紡績糸Yを一時的に貯留することができるので、紡績糸Yの一種のバッファとして機能する。これにより、空気紡績装置4における紡績速度と、巻取速度(後述のパッケージ60に巻き取られる紡績糸Yの走行速度)と、が何らかの理由により一致しないことによる不具合(例えば、紡績糸Yの弛み等)を解消することができる。
【0054】
空気紡績装置4と糸貯留装置5との間には、糸監視装置50及びテンションセンサ53が設けられている。空気紡績装置4で生成された紡績糸Yは、糸貯留装置5で貯留される前に糸監視装置50及びテンションセンサ53を通過する。
【0055】
糸監視装置50は、走行する紡績糸Yの品質を光センサによって監視し、紡績糸Yに含まれる糸欠陥を検出する。糸欠陥としては、例えば、紡績糸Yの太さの異常、及び、紡績糸Yに含まれる異物等が考えられる。糸監視装置50は、紡績糸Yの糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部20へ糸欠陥検出信号を送信する。糸監視装置50は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて紡績糸Yの品質を監視しても良い。これらの例に代えて、あるいはこれらの例に加えて、糸監視装置50は、紡績糸Yの品質として、紡績糸Yのテンションを測定するように構成されても良い。
【0056】
テンションセンサ53は、空気紡績装置4と糸貯留装置5との間において、走行する紡績糸Yのテンションを測定する。テンションセンサ53は、測定されたテンション値をユニット制御部20に送信する。
【0057】
ユニット制御部20は、糸監視装置50から糸欠陥検出信号、又はテンションセンサ53から異常のテンション値を受信すると、空気紡績装置4及び/又はドラフト装置3の駆動を停止させることによって紡績糸Yを切断する。即ち、空気紡績装置4は、糸監視装置50が糸欠陥を検出したときに紡績糸Yの切断する切断部として機能する。なお、紡績糸Yを切断するためのカッタを紡績ユニット2が備えても良い。
【0058】
巻取装置6は、クレードルアーム61と、巻取ドラム62と、トラバースガイド63と、を備える。クレードルアーム61は、支軸64まわりに揺動可能に支持されており、紡績糸Yを巻き取るためのボビン65(即ちパッケージ60)を回転可能に支持することができる。巻取ドラム62は、ボビン65又はパッケージ60の外周面に接触した状態で回転することでパッケージ60を巻取方向に回転駆動させる。巻取装置6は、トラバースガイド63を図略の駆動手段によって往復動させながら、巻取ドラム62を図略の電動モータによって駆動する。これにより、巻取装置6は、紡績糸Yを綾振りしつつ、紡績糸Yをパッケージ60に巻き取る。
【0059】
図1に示すように、空気紡績機1のフレーム10には、複数の紡績ユニット2が並ぶ方向に沿ってレール81が配置されている。糸継台車8は、レール81の上を走行可能に構成されている。これにより、糸継台車8は、複数の紡績ユニット2に対して移動することができる。糸継台車8は、糸切れ又は糸切断が発生した紡績ユニット2まで走行して、当該紡績ユニット2に対する糸継作業を行う。
【0060】
糸継台車8は、
図1に示すように、走行車輪82と、糸継装置83と、サクションパイプ84と、サクションマウス85と、を備える。糸継台車8は更に、
図2に示す台車制御部80を備える。
【0061】
サクションパイプ84は、糸出し紡績時に空気紡績装置4で生成された紡績糸Yを捕捉可能である。具体的には、サクションパイプ84は、その先端に吸引空気流を発生させることによって、空気紡績装置4から送り出される紡績糸Yを吸い込んで捕捉することができる。サクションマウス85は、巻取装置6のパッケージ60に巻き取られた紡績糸Yを捕捉可能である。具体的には、サクションパイプ84は、その先端に吸引空気流を発生させることによって、巻取装置6に支持されたパッケージ60から紡績糸Yを吸い込んで捕捉することができる。サクションパイプ84とサクションマウス85とは、紡績糸Yを捕捉した状態で回動することによって、当該紡績糸Yを糸継装置83に導入することができる位置まで案内する。
【0062】
糸継装置83は、サクションパイプ84によって案内された空気紡績装置4からの紡績糸Yと、サクションマウス85によって案内されたパッケージ60からの紡績糸Yと、を糸継ぎする。本実施形態において、糸継装置83は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置83は上記スプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等を採用することもできる。
【0063】
台車制御部80(
図2を参照)は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。台車制御部80は、糸継台車8が備える各部の動作を制御することによって、糸継台車8が行う糸継作業を制御する。
【0064】
次に、
図3等を参照して、空気紡績装置4の構成について詳しく説明する。
【0065】
図3に示すように、空気紡績装置4は、主として、紡績ブロック41と、中空ガイド軸体42と、を備える。
【0066】
紡績ブロック41では、ドラフト装置3から供給された繊維束Fがその内部へ案内され、繊維束Fに旋回空気流が作用させられる。旋回空気流の発生及び停止は、ユニット制御部20により制御される。紡績ブロック41は、
図3及び
図4に示すように、主として、ファイバーガイド41aと、ノズルブロック41bと、ノズルヘッド(流入室形成ブロック)41cと、ノズルキャップ41dと、を備える。
【0067】
ファイバーガイド41aは、ドラフトされた繊維束Fを後述の旋回空気流発生室40へ案内する部材である。
図4に示すように、ファイバーガイド41aには、当該ファイバーガイド41aを繊維束走行方向(
図4では上下方向)に貫通する案内孔41eが形成されている。繊維束Fは、当該案内孔41eを通過して、旋回空気流発生室40内に導入される。
【0068】
旋回空気流発生室40は、ノズルブロック41bの内部に形成される。旋回空気流発生室40は、
図3に示すように、上流から下流に行くに従って径が増加するテーパ状に形成されている。旋回空気流発生室40内では、図略のノズルから圧縮空気(空気)が噴射されることにより、繊維束Fに作用する旋回空気流が発生する。この旋回空気流の作用を受けて、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。
【0069】
ノズルブロック41bには、旋回空気流発生室40に噴射される空気が通過する複数のノズル(図略)が設けられている。このノズルは、例えば、ノズルブロック41b(旋回空気流発生室40を構成する壁)に形成された細長い孔として構成されている。それぞれのノズルは、長手方向が糸送り方向下流側に若干傾斜して設けられている。複数のノズルは、旋回空気流発生室40の周囲に等角度間隔で配列される。図略の圧縮空気源から供給された圧縮空気は各ノズルを介して旋回空気流発生室40に噴射される。ノズルから噴射された空気は、旋回空気流発生室40内に挿入された後述の中空ガイド軸体42の周囲を旋回しつつ、下流側に向かって流れる。このようにして、上流から下流へ向かう方向で見たときに反時計回りとなる旋回空気流が、旋回空気流発生室40内に発生する。この旋回空気流は、下流(流入室7)に向かって螺旋状に流れる。
【0070】
ノズルヘッド41c及びノズルキャップ41dは、ファイバーガイド41a及びノズルブロック41bを保持する。ノズルヘッド41c及びノズルキャップ41dは、ファイバーガイド41aの一部及びノズルブロック41bを収容するケーシングとして機能する。
【0071】
ノズルヘッド41cは、一定の厚みを有するブロック状に形成されている。ノズルヘッド41cは、
図4に示すように、厚み方向で見た場合、長方形の1辺に、当該辺の長さを直径とする半円が接続された形状となっている。なお、以下の説明においては、上記の長方形と半円とが並ぶ方向をノズルヘッド41cの長手方向と称することがある。ノズルヘッド41cには、流入室7及び空気排出通路(排気路)70が形成されている。
【0072】
流入室7は、ノズルヘッド41cの長手方向一方側に、概ね円柱状に形成されている。流入室7の中心軸は、ノズルヘッド41cの半円の中心と一致するように配置される。流入室7は、旋回空気流発生室40と接続している。流入室7の大部分が、ファイバーガイド41aから見て旋回空気流発生室40よりも遠い側に位置する。
【0073】
詳細は後述するが、流入室7の中心には、後述の中空ガイド軸体42が差し込まれる。流入室7の内壁と中空ガイド軸体42との間には、リング状の隙間が形成される。流入室7の内部空間のうち中空ガイド軸体42が配置されていないリング状の部分が、空気の通過経路として実質的に機能する。
【0074】
紡績糸Yの走行方向と垂直に流入室7を切った場合、その断面は円状となる。本実施形態において、流入室7の外周の直径は、ファイバーガイド41aから離れるに従って徐々に大きくなるように形成される。従って、流入室7を切断する位置が下流側となるにつれて、上記の断面の円の直径(流入室7の外周の直径に相当する)は緩やかに増加する。
【0075】
図5には、流入室7の外周が最も大きい部分(言い換えれば、旋回空気流発生室40から最も離れた部分)における直径である最大直径D1と、流入室7の最も小さい部分における最小直径D2とが、白抜き矢印により示されている。本実施形態において、最大直径D1及び最小直径D2の何れも、28mm以上34mm未満である。しかし、本発明は、この範囲に限定されない。最大直径D1は、紡績する繊維束Fの種類に応じて、25mm以上36mm以下の範囲内で設定することができる。
【0076】
上記のように、本実施形態において、流入室7の直径は一様ではない。以下では、流入室7の平均的な直径を、単に流入室7の直径Dと呼ぶことがある。この直径Dは、
図3に示されている。流入室7の直径Dは、例えば、上述の最大直径D1と最小直径D2の加算平均とすることができる。流入室7の直径Dは、最小直径D2より大きく、最大直径D1より小さい。
【0077】
詳細は後述するが、流入室7の外周には、接続開口71を介して空気排出通路70に接続されている部分がある。この部分を含むように流入室7を切った場合、断面は円状とはならない。しかしながら、この断面は円弧状の部分を有しているので、当該円弧の直径を考えれば良い。あるいは、接続開口71が形成されていない箇所で流入室7を上記と同様に切った場合に、断面の円の直径が、25mm以上36mm以下の範囲内となっている部分を流入室7が有していればよい。
【0078】
流入室7の軸方向は、繊維束F又は紡績糸Yが空気紡績装置4を通過する方向で見たときに、手前と奥とを結ぶ方向である。このことを考慮して、以下では、流入室7の軸方向での長さを奥行と呼ぶ。奥行は、
図3及び
図5に符号L1で示されている。本実施形態において、この奥行L1は、流入室7の直径Dの38%以上75%以下である。
【0079】
流入室7の奥行L1の大きさは、流入室7の直径D、及び、後述の軸体ホルダ42bのテーパ面43の傾斜角度に応じて設定されている。本実施形態において、流入室7の奥行L1は14mm以上25mm以下である。これにより、流入室7の十分な容積を確保することができる。
【0080】
本実施形態の流入室7においては、外周が最も大きい部分の直径(前述の最大直径D1)と、外周が最も小さい部分の直径である最小直径D2と、の差が5mm以内である。本実施形態においては、当該最大直径D1と最小直径D2との差は、3mmである。上記のように形成された流入室7は、3000mm3以上8000mm3以下の容積を有する。
【0081】
流入室7は、後述の中空ガイド軸体42と対面する側が開放するように形成されている。言い換えれば、流入室7において、ノズルブロック41bが挿入される側とは反対側が開放されている。この開放側から、中空ガイド軸体42を流入室7の内部に挿入することができる。
【0082】
流入室7には、空気排出通路70に向かって開口する接続開口71が形成されている。流入室7は、当該接続開口71を介して、空気排出通路70と接続される。流入室7内の空気は空気排出通路70を介して外部に排出される。
【0083】
空気排出通路70は、直線状に細長く形成されている。空気排出通路70の長手方向は、ノズルヘッド41cの長手方向と平行であり、紡績糸Yの走行方向と垂直である。空気排出通路70は、その長手方向に垂直に切った断面が矩形状となっている。空気排出通路70は、ノズルヘッド41cの長手方向において、流入室7が形成されている側とは反対側に開口するように形成される。即ち、空気排出通路70は、流入室7と空気紡績装置4の外部とを接続する。空気紡績装置4の外部とは、具体的には、弱い力で吸引する、ブロア13等からなる負圧源である。空気排出通路70は、例えば紡績ユニット2の並列方向に沿って配置された図略のダクト等を介してブロア13に接続されている。
【0084】
流入室7は、旋回空気流の流れにおいて、旋回空気流発生室40よりも下流側に位置している。また、流入室7は、旋回空気流発生室40より相対的に大きい空間を有する。従って、流入室7内の圧力は、旋回空気流発生室40内の圧力より低くなる。流入室7の圧力が旋回空気流発生室40の圧力よりもどの程度低くなるかは、流入室7の大きさによって大きく影響を受ける。
【0085】
この点、本実施形態では、流入室7を繊維束Fの種類に応じたサイズに形成することで、流入室7内の圧力を適切にすることができる。例えば、上述の最大直径D1、最小直径D2及び奥行L1等を様々に異ならせた複数の紡績ブロック41を予め用意しておき、使用する繊維束Fに応じて紡績ブロック41を交換することが考えられる。これにより、旋回空気流発生室40内の空気流が適切な速度で流入室7に流れることができ、繊維束Fから脱落したファイバー屑が当該空気流に乗って、容易に流入室7内に導入される。
【0086】
流入室7内のファイバー屑は、負圧源による吸引力により、流入室7内に滞留せずに、空気紡績装置4から空気排出通路70を介して容易に排出される。この結果、旋回空気流発生室40内において、紡績糸Yを生成するための繊維束Fにファイバー屑が残留せず、スムーズに排出されるので、品質が高い紡績糸Yを生成することができる。このように流入室7内にファイバー屑等が滞留しにくくなるので、ファイバー屑等の異物が、繊維束Fにおいて反転しながら回転する繊維に接触しにくくなる。従って、繊維束Fのテンションを安定させることができる。
【0087】
接続開口71は、
図5に示すように略矩形状(角部が丸みを帯びている矩形状)に構成されている。この接続開口71において、流入室7の周方向一側に位置する端部と、周方向他側に位置する端部と、の間の距離L2は、最大直径D1よりも小さい。これにより、コンパクトな構成で、流入室7から空気流をスムーズに排出することができる。
【0088】
ノズルヘッド41cのノズルキャップ41dと対面する側には、ノズルブロック41bの一部を挿入するための挿入孔41fが形成されている。当該挿入孔41fを介して、ノズルブロック41bの一部は、流入室7内に挿入される。
【0089】
紡績ブロック41を組み立てるとき、
図4等に示すように、ノズルブロック41bの一部が、上記挿入孔41fを介して流入室7内に挿入される。これにより、ノズルブロック41b内に形成された旋回空気流発生室40と、ノズルヘッド41c内に形成された流入室7と、が接続される。従って、旋回空気流発生室40内に形成された旋回空気流が流入室7へ流れることができる。
【0090】
本実施形態の紡績ユニット2においては、
図3に示すように、流入室7内の圧力を検出する圧力センサ9が設けられている。圧力センサ9は、例えば、流入室7の壁を貫通する圧力検出孔に挿入された図略のチューブ等を介して、流入室7内の圧力を検出する。圧力センサ9はユニット制御部20に電気的に接続されている。圧力センサ9は、検出した圧力を示す信号をユニット制御部20に送信する。ユニット制御部20は、圧力センサ9から取得した圧力に基づいて、流入室7の詰まり等の異常が発生しているか否かを判定する。
【0091】
本実施形態の空気紡績装置4において、上記のように流入室7の最大直径D1が25mm以上、好ましくは28mm以上となっており、流入室7がある程度大きく形成されている。従って、流入室7内の圧力を検出するための上記圧力検出孔を、接続開口71から離れた位置に設けることが可能になる。この結果、圧力の検出が排気の影響を受けにくくなるので、流入室7内の圧力の変化を精度良く検出することができる。
【0092】
ただし、本実施形態では、上述の最大直径D1が36mm以下、好ましくは34mm未満となっており、流入室7が大き過ぎることもない。従って、ファイバー屑等の異物が流入室7内に堆積した場合に、流入室7内の圧力変化が生じ易い。このため、ファイバー屑等の異物が流入室7内に大量に堆積する前に、圧力検知に基づく適宜の動作(例えば、自動クリーニング動作)によって、ファイバー屑等の異物を排出することができる。この結果、ファイバー屑等の異物が紡績糸Yに付着することを回避できる。
【0093】
ノズルキャップ41dは、ノズルヘッド41cの上に配置されている。ノズルキャップ41dは、例えば、ボルト等を介して、ノズルヘッド41cに着脱可能に取り付けられている。
図4に示すように、ノズルキャップ41dは、繊維束Fの走行方向に垂直に切った断面形状が円形である板状に形成されている。ノズルキャップ41dの中央には、ファイバーガイド41aの一部が通過可能な貫通孔が形成されている。
【0094】
紡績ブロック41を構成するとき、
図3又は
図5に示すように、ファイバーガイド41aは、ノズルキャップ41dの下側(紡績時の糸走行方向下流側)から上記貫通孔を介して、ノズルキャップ41dを通過し、頭部がファイバーガイド41aから上方(糸走行方向上流側、ドラフト装置3側)に露出する。
【0095】
ノズルキャップ41dがノズルヘッド41cの上に取り付けられることによって、ファイバーガイド41a及びノズルブロック41bは、ノズルヘッド41cとノズルキャップ41dとの間に挟まれ、その位置が固定される。このようにして、紡績ブロック41が構成される。
【0096】
中空ガイド軸体42は、紡績ブロック41の下流側に設けられる。中空ガイド軸体42は、紡績ブロック41に対して接触する接触位置と、紡績ブロック41から離間する離間位置と、の間で切換可能に設けられている。中空ガイド軸体42の位置の切換は、図略の移動機構によって実現される。中空ガイド軸体42が接触位置にある場合、中空ガイド軸体42によって流入室7の開放側が閉じられ、密閉状の流入室7が形成される。中空ガイド軸体42が離間位置にある場合、流入室7が外部に開放される。流入室7が閉じられている状態では、図略の吸引装置により、流入室7の内部のファイバー屑を取り除くことができる。流入室7が開放されている状態では、例えばノズルブロック41bのノズルから空気を噴射することにより、旋回空気流発生室40や中空ガイド軸体42の先端に残留しているファイバー屑を取り除くことができる。
【0097】
中空ガイド軸体42は、図略の中空ガイド軸体保持部に固定されている。当該中空ガイド軸体保持部と中空ガイド軸体42とから、ガイド軸体ブロックが構成される。中空ガイド軸体42は、軸本体42aと、軸体ホルダ42bと、を備える。
【0098】
軸本体42aの内部には、円筒状の糸通路が形成されている。当該糸通路は、旋回空気流発生室40で紡績された紡績糸Yを外部に導出する。糸通路内には、図略のノズルから空気を噴射することで、上流から下流に向かって流れる旋回空気流を発生させても良い。上流から下流へ向かう方向で見たときに、糸通路内において発生する旋回空気流の方向は、旋回空気流発生室40の旋回空気流の方向とは逆になっている。
図3では、旋回空気流発生室40の一部を構成する軸本体42aの先端(糸通路の入口)と、糸通路全体が一体的に構成されている。前記図略のノズルを軸本体42aとは別の筒状部材に形成し、当該筒状部材を軸本体42aの内部に配置しても良い。糸通路は、複数の部材により形成されていても良い。
【0099】
軸本体42aの上流部分は、円錐状に形成されている。軸本体42aの円錐状の上流部分は、旋回空気流発生室40のテーパ形状の空間より若干小さく形成されている。当該上流部分は、旋回空気流発生室40の内部に挿入される。
【0100】
図3に示すように、旋回空気流発生室40内に挿入された軸本体42aの上流部分の外周面は、ノズルブロック41bにおいて旋回空気流発生室40を構成する内壁の壁面と略平行に形成されている。即ち、旋回空気流発生室40内に挿入された軸本体42aの上流部分の外壁面と、この外壁面と対面する旋回空気流発生室40の内壁面と、の距離がほぼ一定である。これにより、旋回空気流の流通路における空気の流れ易さが急激に変化するのを回避することができる。従って、旋回空気流発生室40内において、空気流の速度の急激な変化を防止して、紡績を安定して行うことができる。ただし、軸本体42aの上流部分の形状、及び/又は旋回空気流発生室40の内壁面の形状は他の形状であっても良い。上記距離は一定でなくても良く、例えば、上流側での距離が下流側での距離よりも大きかったり、小さかったりしても良い。
【0101】
紡績ブロック41と中空ガイド軸体42とが接触している状態では、軸本体42aの上流側の部分は、流入室7を通過して、旋回空気流発生室40内に突出する。これにより、軸本体42aと旋回空気流発生室40との間に、テーパ筒状の空間が形成される。この空間において、繊維束Fに含まれる繊維が旋回空気流の作用によって旋回する。
【0102】
軸体ホルダ42bは、軸本体42aを保持するために用いられる。軸体ホルダ42bは、上流から下流に行くに従って次第に外径が大きくなるテーパ状に形成される。軸体ホルダ42bには、紡績糸Yの走行方向と平行に当該軸体ホルダ42bを貫通する保持孔が形成されている。軸体ホルダ42bは、軸本体42aの下流部分を保持孔の内部に挿入することにより、軸本体42aを保持する。
【0103】
軸体ホルダ42bの上側の部分は、ノズルブロック41bから離れるに従って径が大きくなる円錐状に形成されている。以下の説明においては、軸体ホルダ42bにおける上側の部分に形成されたテーパ状の外周面を、テーパ面(斜面)43と称することがある。テーパ面43が中空ガイド軸体42の軸に対してなす傾斜角(内側の角度)θは、37度以上70度以下である。これにより、中空ガイド軸体42と流入室7の壁との間に、空気の流れ及び排出のための十分な空間を形成することができる。従って、ファイバー屑を空気流に乗せてスムーズに排出することができる。
【0104】
本実施形態の空気紡績装置4は、
図3に示すように、ドラフト装置3の下流側に設けられている。具体的には、ドラフト装置3のフロントローラ対34から繊維束Fを排出する位置(フロントローラ対34によるニップ点)と、空気紡績装置4の中空ガイド軸体42の上流側端面(先端)と、の間の距離であるノズル距離L3が、流入室7の直径Dの1.5倍より大きく、かつ2.0倍より小さくなるように、空気紡績装置4がドラフト装置3の下流側に設けられている。これにより、繊維束Fが適切に延ばされ、安定した状態で空気紡績装置4内に導入されるので、良好な品質の紡績糸Yを生成することができる。
【0105】
以上に説明したように、本実施形態の空気紡績装置4は、旋回空気流によって、繊維束Fに撚りを与えて紡績糸Yを生成する。この空気紡績装置4は、ファイバーガイド41aと、ノズルブロック41bと、ノズルヘッド41cと、を備える。ファイバーガイド41aは、繊維束Fを案内する。ノズルブロック41bには、ファイバーガイド41aにより案内された繊維束Fに作用する旋回空気流を発生させるための圧縮空気が通過するノズルが形成されている。ノズルヘッド41cには、旋回空気流が流入する流入室7が形成されている。流入室7は、紡績糸Yの走行方向と垂直に流入室7を切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下となる部分を有している。
【0106】
これにより、ファイバー屑を容易に収集可能な流入室7を構成することができる。この結果、繊維束Fに含まれた各繊維が旋回空気流の作用によってスムーズに旋回でき、高品質の紡績糸Yを生成することができる。
【0107】
本実施形態の空気紡績装置4において、流入室7は、紡績糸Yの走行方向と垂直に流入室7を切断した場合に、切断面の円の直径が28mm以上34mm未満となる部分を有している。
【0108】
これにより、ファイバー屑を一層容易に収集することができる。
【0109】
本実施形態の空気紡績装置4において、紡績糸Yの走行方向での流入室7の長さ(前記奥行L1)は、流入室7の直径Dの38%以上75%以下である。
【0110】
これにより、中空ガイド軸体42の形状に適した流入室7を形成することができる。
【0111】
本実施形態の空気紡績装置4において、紡績糸Yの走行方向での流入室7の長さ(前記奥行L1)は、14mm以上25mm以下である。
【0112】
これにより、適度な大きさの流入室7を形成することができる。
【0113】
本実施形態の空気紡績装置4において、ノズルヘッド41cには、接続開口71が形成されている。流入室7は、接続開口71を介して、旋回空気流を排出する空気排出通路70に接続される。
【0114】
これにより、流入室7内の空気を排出することができる。また、流入室7で収集されたファイバー屑を容易に排出することができる。
【0115】
本実施形態の空気紡績装置4において、接続開口71において、流入室7の周方向一側に位置する端部と、周方向他側に位置する端部と、の間の距離L2は、流入室7の直径Dより小さい。
【0116】
これにより、コンパクトな構成で、流入室7の空気を外部に排出することができる。
【0117】
本実施形態の空気紡績装置4において、流入室7は、当該流入室7を接続開口71が形成されていない箇所で紡績糸Yの走行方向と垂直に切断した場合に、切断面の円の直径が25mm以上36mm以下である部分を有している。
【0118】
これにより、流入室7の大きさを適切な範囲内にすることができる。
【0119】
本実施形態の空気紡績装置4において、ファイバーガイド41aから離れるに従って、流入室7の前記切断面の円の直径が大きくなる。
【0120】
これにより、ノズルブロック41bのノズルから噴射された圧縮空気をスムーズに排出することができる。
【0121】
本実施形態の空気紡績装置4において、紡績糸Yの走行方向と垂直な任意の面で流入室7を切断した場合に、切断面の円の最大直径D1が、25mm以上36mm以下である。切断面の円の最大直径D1と最小直径D2との差は、5mm以下である。
【0122】
これにより、流入室7の形状が急激に変化しない構成を実現することができる。従って、流入室7における空気の流れを円滑にすることができる。
【0123】
本実施形態の空気紡績装置4において、流入室7の容積は、3000mm3以上8000mm3以下である。
【0124】
これにより、紡績に適した流入室7の空間を形成することができる。
【0125】
本実施形態の空気紡績装置4は、紡績糸Yを外部に導出する中空ガイド軸体を更に備える。
【0126】
これにより、旋回空気流により紡績された紡績糸Yを、空気紡績装置4の外部に向かって容易に案内することができる。
【0127】
本実施形態の空気紡績装置4において、中空ガイド軸体42は、流入室7内に挿入される部分において、紡績糸Yの走行方向に対して37度以上70度以下の角度で傾斜するテーパ面43を有する。
【0128】
これにより、中空ガイド軸体42が挿入された状態で、流入室7において空気が流れる空間がある程度の大きさを有することを確保できる。
【0129】
本実施形態の空気紡績装置4のノズルブロック41bには、旋回空気流を発生させる旋回空気流発生室40が形成されている。旋回空気流発生室40は、ファイバーガイド41aから離れるに従って径が大きくなるテーパ状に形成される。旋回空気流発生室40内に挿入された中空ガイド軸体42の部分の外周面は、旋回空気流発生室40の内壁面と平行又は略平行である。
【0130】
これにより、紡績糸Yを形成する繊維の旋回空間を、旋回空気流が円滑に流れるように適切に形成することができる。
【0131】
本実施形態の空気紡績装置4は、流入室7内の圧力を検出する圧力センサ9を備える。
【0132】
これにより、従来のように排気の影響により流入室7内の圧力を適切に検出できなかったり、流入室7内に異物が堆積し始めてから圧力変化が生じるまでに時間が掛かることにより流入室7内の異常の検出が遅れたりすることがなくなり、流入室7内の圧力を圧力センサ9により適切に検出することができる。
【0133】
以上に説明したように、本実施形態の空気紡績機1は、空気紡績装置4と、ドラフト装置3と、を備える。ドラフト装置3は、スライバをドラフトして繊維束Fとする。ドラフト装置3において繊維束Fを最下流で送り出す部分(フロントローラ対34による保持部分)から中空ガイド軸体42の上流側端面までの距離であるノズル距離L3は、流入室7の直径Dの1.5倍より大きく2.0倍より小さい。
【0134】
これにより、適切に延ばされた繊維束Fを空気紡績装置4内に導入して紡績することができる。
【0135】
本実施形態の空気紡績機1は、空気紡績装置4により生成された紡績糸Yのテンションを検出するテンションセンサ53を更に備える。
【0136】
これにより、圧力センサ9では紡績異常を検出しにくいケースであっても、テンションセンサ53により紡績糸Yのテンションに関する情報を取得することで、紡績異常を適切に検出することができる。
【0137】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0138】
空気紡績装置4と糸貯留装置5との間に、デリベリローラ対を設け、当該デリベリローラ対により紡績糸Yを空気紡績装置4から引き出しても良い。この場合、デリベリローラ対の下流には、糸貯留装置5、吸引空気流を用いるスラックチューブ、及び機械式のコンペンセータの少なくとも何れか1つが設けられていても良い。
【0139】
糸継台車8は、スプライサ装置の代わりに、ノッタ装置、ピーシング等により紡績糸Yを連続状態にしても良い。また、糸継台車8を省略し、各紡績ユニット2が糸継ぎに必要な装置を備えていても良い。
【0140】
紡績ユニット2では、高さ方向において、下側から供給された紡績糸Yが上側で巻き取られるように各装置が配置されても良い。
【0141】
図3等では、ファイバーガイド41aに針状部材が設けられている構成が図示されているが、空気紡績装置4は針状部材を備えていなくても良い。ファイバーガイド41aとノズルブロック41bは別部材ではなく、1つの部材で構成されていても良い。
【0142】
上記実施形態では、紡績ユニット2は、圧力センサ9とテンションセンサ53の両方を備えているが、紡績ユニット2は、圧力センサ9とテンションセンサ53の何れかのみを備えるように構成されていても良い。
【0143】
上記実施形態では、紡績ユニット2の特定の装置は、原動機ボックス12に設けられた駆動源により、複数の紡績ユニット2で一斉に駆動されていた。これらの特定の装置の一部又は全部が各紡績ユニット2で独立して駆動されるように、各紡績ユニット2が構成されていても良い。
【符号の説明】
【0144】
4 空気紡績装置
7 流入室
41a ファイバーガイド
41b ノズルブロック
41c ノズルヘッド
F 繊維束
Y 紡績糸(糸)