(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020904
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】電気錠
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
E05B47/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124153
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】391020322
【氏名又は名称】東海理研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明広
(72)【発明者】
【氏名】梅村 正美
(72)【発明者】
【氏名】瀬木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】坂上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】権藤 雅彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消費電力を抑制しつつ、ロック解除動作を安定して行うことができる電気錠を提供する。
【解決手段】電気錠に用いられ、受座に係合するロック位置と受座に係合しないロック解除位置との間でフックレバー11を変位させる装置3において、フックレバー11と解除用形状記憶合金31との間にロッキングレバー22を揺動可能に配設し、施錠用トーションバネ24を用いてロッキングレバー22を第1位置方向K21に付勢することで、フックレバー11をロック位置に配置している。解除用形状記憶合金31は、第1電極端子32と第2電極端子33とに接続する状態で可動プーリ34とプーリ35に掛止されている。可動プーリは、ロッキングレバー22に連結されている。解除形状記憶合金は、通電によって縮み変形すると、施錠用トーションバネ24に抗してロッキングレバー22を第2位置方向K22に引っ張り、フックレバー11をロック解除位置に変位させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解除用形状記憶合金の通電状態に応じてロック部材をロック位置とロック解除位置との間で変位させるロック駆動装置を備える電気錠において、
前記解除用形状記憶合金は、通電によって縮み変形するワイヤ状の形状記憶合金であり、
前記ロック駆動装置は、
前記ロック部材と前記解除用形状記憶合金との間に介在し、前記ロック部材を前記ロック位置に配置させる第1位置と、前記ロック部材を前記ロック解除位置に配置させる第2位置との間で変位可能な変位部材と、
前記変位部材を第1位置方向に付勢するロック用付勢部材と、
前記解除用形状記憶合金と接続する一対の電極端子と、
前記一対の電極端子の間に設けられ、前記解除用形状記憶合金が掛止される1又は2以上のプーリと、
を有し、
前記1又は2以上のプーリの1つが前記変位部材に連結されており、
前記解除用形状記憶合金は、通電によって縮み変形する場合に、前記ロック用付勢部材に抗して前記変位部材を前記第2位置に変位させる張力を発生すること、
を特徴とする電気錠。
【請求項2】
請求項1に記載する電気錠において、
前記ロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で回動可能なレバーであり、従動部を有し、
前記変位部材は、前記第1位置と前記第2位置との間で回動可能なレバーであり、前記従動凸部と係合可能な押圧カムを有し、
前記押圧カムは、前記解除用形状記憶合金が縮み変形しない場合には、前記従動凸部と係合し、前記ロック用付勢部材の付勢力を前記従動凸部に伝達し、前記ロック部材をロック位置方向に押圧し、前記解除用形状記憶合金が縮み変形する場合には、前記従動凸部との係合を解除して前記ロック部材を前記ロック位置方向に押圧しないこと、
を特徴とする電気錠。
【請求項3】
請求項2に記載する電気錠において、
前記ロック駆動装置は、前記ロック部材をロック解除位置方向に付勢するロック解除用付勢部材を有し、
前記ロック解除用付勢部材は、前記ロック用付勢部材より付勢力が小さいこと、
を特徴とする電気錠。
【請求項4】
請求項1に記載する電気錠において、
前記変位部材は、
前記第1位置と前記第2位置との間でスライド可能に配設されており、
前記解除用形状記憶合金が非通電で縮み変形しない場合、前記ロック用付勢部材の付勢力で前記第1位置方向に押圧され、前記ロック部材を前記ロック位置に配置する一方、前記解除用形状記憶合金が通電によって縮み変形する場合、前記ロック用付勢部材の付勢力に抗して第2位置方向に引っ張られ、前記ロック部材を前記ロック解除位置に配置すること、
を特徴とする電気錠。
【請求項5】
請求項4に記載する電気錠において、
前記ロック駆動装置は、前記変位部材のスライド方向に沿ってストッパ部が突設されたケーシングを有し、
前記変位部材は、
前記1又は2以上のプーリと連結される連結部と、
前記連結部に揺動可能に軸支され、前記ロック用付勢部材に付勢されており、前記ストッパ部と係合可能なカムを有するスライドカムと、を有し、
前記カムは、揺動制限カム面と揺動許容カム面とが段差部を介して接続されており、
前記揺動制限カム面は、前記変位部材が前記第1位置と前記第2位置との間でスライドする間、前記ロック用付勢部材の付勢力によって前記ストッパ部に当接し、前記変位部材をスライド方向に案内し、
前記制限揺動カム面は、前記揺動制限カム面と前記ストッパ部との係合が解除された場合に、前記ロック用付勢部材の付勢力によって前記スライドカムを揺動させ、
前記段差部は、前記解除用形状記憶合金の通電が停止された後、前記ストッパ部に係止され、前記変位部材を第2位置に配置する状態を維持すること、
を特徴とする電気錠。
【請求項6】
請求項5に記載する電気錠において、
前記ロック駆動装置は、
通電によって縮み変形するワイヤ状の復帰用形状記憶合金と、
前記復帰用形状記憶合金に接続する一対の復帰用電極端子と、を有し、
前記復帰用形状記憶合金は、通電時に前記一対の復帰用電極端子の間で縮み変形し、前記ロック用付勢部材に抗して前記変位部材を揺動させ、前記変位部材を前記第2位置に配置する状態を解除すること、
を特徴とする電気錠。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つに記載する電気錠において、
ロック駆動装置は、
前記第1位置に配置される前記変位部材に係合する第1姿勢と、前記第1位置に配置される前記変位部材に係合しない第2姿勢との間で変位するブロックレバーと、
加熱によって縮み変形するワイヤ状の阻止用形状記憶合金と、
を有し、
前記阻止用形状記憶合金が縮み変形する場合、前記ブロックレバーが前記第1姿勢となり、前記阻止用形状記憶合金が縮み変形しない場合、前記ブロックレバーが前記第2姿勢となること、
を特徴とする電気錠。
【請求項8】
請求項7に記載する電気錠において、
前記ロック駆動装置は、前記阻止レバーが前記変位部材の変位を阻止している状態で、前記解除用形状記憶合金が縮み変形した場合に、前記解除用形状記憶合金の変形に応じて前記1又は2以上のプーリの少なくとも1つを変位させる緩衝機構を有すること、
を特徴とする電気錠。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1つに記載する電気錠において、
前記解除用形状記憶合金は、線径が0.1mm以上0.2mm以下の形状記憶合金であること、
を特徴とするロック駆動装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか1つに記載する電気錠において、
前記ロック部材が、施解錠を行う施解錠部材であり、
前記ロック位置は、前記施解錠部材が施錠を行う施錠位置であり、
前記ロック解除位置は、前記施解錠部材が解錠を行う解錠位置であること、
を特徴とする電気錠。
【請求項11】
請求項1から請求項9の何れか1つに記載する電気錠において、
前記ロック部材が、施解錠に用いる鍵と係合可能であり、
前記ロック位置は、前記ロック部材が前記鍵と係合する位置であり、
前記ロック解除位置は、前記鍵と係合しない位置であること、
を特徴とする電気錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金の通電状態に応じてロック部材をロック位置とロック解除位置との間で変位させるロック駆動装置を備える電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、合鍵を使用せずに、電気状態によって施解錠を可能とする施解錠装置が開示されている。この施解錠装置では、シリンダ錠が固定筒に回転自在に嵌挿されている。シリンダ錠の外筒の外周面には、係合凹部が形成され、係合凹部にロックピンを嵌入させることで、シリンダ錠が固定筒に対して回転することを阻止し、施錠を行う。
【0003】
ロックピンは、揺動片を備える。圧縮コイルバネは、ロックピンを係合凹部に嵌入させる方向に揺動片を常時付勢している。揺動片には、ロックピンを係合凹部から後退させるための解除用形状記憶合金が掛止されている。解除用形状記憶合金は、通電によって加熱されると軸線長さが短縮変形するワイヤ状の形状記憶合金からなる。解除用形状記憶合金は、固定筒の周囲を外周面からやや離間した位置で略3/4周となって配設されている。解除用形状記憶合金が通電によって長さ方向に収縮すると、ロックピンが圧縮コイルバネの付勢力に抗して係合凹部から後退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には以下のような問題があった。従来技術では、シリンダ錠を操作する際の外力が直接作用するロックピンに、解除用形状記憶合金が掛止されていた。そのため、解除用形状記憶合金がロックピンに作用する外力によって損傷した場合、ロックピンが係合凹部から適切に後退しない虞があった。
【0006】
解除用形状記憶合金の損傷を抑制するには、例えば線径1.0mmの形状記憶合金を、解除用形状記憶合金として使用することが考えられる。しかし、ワイヤ状の形状記憶合金は、線径が大きいほど、消費電力が大きくなる。施錠と解錠を繰り返す電気錠では、細い形状記憶合金を使用して、ロック解除動作1回当たりの消費電力を小さくしてランニングコストを抑えることが望ましい。
【0007】
ところが、形状記憶合金は、線径が細いほど、通電時の縮み変形量が小さい。例えば線径0.15mmの形状記憶合金は、通電時に、全長の4~5%しか縮み変形しない。特許文献1に記載される形状記憶合金は、固定筒の周囲を外周面からやや離間した位置で略3/4周となって配設される長さしかない。この長さでは、線径0.15mmの形状記憶合金が、通電時に、ロックピンを係合凹部から後退させるほど縮み変形ことはできない。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、形状記憶合金の通電状態に応じてロック部材を変位させるロック駆動装置を備える電気錠において、消費電力を抑制しつつ、ロック解除動作を安定して行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における電気錠は、(1)解除用形状記憶合金の通電状態に応じてロック部材をロック位置とロック解除位置との間で変位させるロック駆動装置を備える電気錠において、前記解除用形状記憶合金は、通電によって縮み変形するワイヤ状の形状記憶合金であり、前記ロック駆動装置は、前記ロック部材と前記解除用形状記憶合金との間に介在し、前記ロック部材を前記ロック位置に配置させる第1位置と、前記ロック部材を前記ロック解除位置に配置させる第2位置との間で変位可能な変位部材と、前記変位部材を第1位置方向に付勢するロック用付勢部材と、前記解除用形状記憶合金と接続する一対の電極端子と、前記一対の電極端子の間に設けられ、前記解除用形状記憶合金が掛止される1又は2以上のプーリと、を有し、前記1又は2以上のプーリの1つが前記変位部材に連結されており、前記解除用形状記憶合金は、通電によって縮み変形する場合に、前記ロック用付勢部材に抗して前記変位部材を前記第2位置に変位させる張力を発生すること、を特徴とする。
【0010】
上記構成の電気錠では、ロック部材と解除用形状記憶合金との間に変位部材が介在し、解除用形状記憶合金がロック部材に直結されていない。そのため、解除用形状記憶合金がロック部材に作用する外力によって損傷しにくい。解除用形状記憶合金は、一対の電極端子の間で1又は2以上のプーリに掛止されることで、全長が長くされている。そのため、ロック解除時の消費電力を抑制するために、例えば線径0.2mm以下の細い形状記憶合金を解除用形状記憶合金として使用する場合でも、解除用形状記憶合金の縮み変形量を大きくできる。このような解除用形状記憶合金は、通電によって縮み変形する場合に、ロック用付勢部材に抗して変位部材を第2位置に変位させる張力を発生し、ロック部材をロック位置からロック解除位置に変位させることができる。よって、上記構成の電気錠によれば、消費電力を抑制しつつ、ロックを安定して解除することができる。
【0011】
(2)(1)に記載する電気錠において、前記ロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で回動可能なレバーであり、従動部を有し、前記変位部材は、前記第1位置と前記第2位置との間で回動可能なレバーであり、前記従動凸部と係合可能な押圧カムを有し、前記押圧カムは、前記解除用形状記憶合金が縮み変形しない場合には、前記従動凸部と係合し、前記ロック用付勢部材の付勢力を前記従動凸部に伝達し、前記ロック部材をロック位置方向に押圧し、前記解除用形状記憶合金が縮み変形する場合には、前記従動凸部との係合を解除して前記ロック部材を前記ロック位置方向に押圧しないこと、が好ましい。
【0012】
上記構成の電気錠は、従動部と押圧カムからなるカム機構で、解除用形状記憶合金の変形に応じてロック部材をロック位置とロック解除位置との間で変位させるので、コンパクトな構造でロックとロック解除とを行うことができる。
【0013】
(3)(2)に記載する電気錠において、前記ロック駆動装置は、前記ロック部材をロック解除位置方向に付勢するロック解除用付勢部材を有し、前記ロック解除用付勢部材は、前記ロック用付勢部材より付勢力が小さいこと、が好ましい。
【0014】
上記構成の電気錠によれば、解除用形状記憶合金に通電したときにロック部材をロック位置からロック解除位置まで素早く回動させることができる。
【0015】
(4)(1)に記載する電気錠において、前記変位部材は、前記第1位置と前記第2位置との間でスライド可能に配設されており、前記解除用形状記憶合金が非通電で縮み変形しない場合、前記ロック用付勢部材の付勢力で前記第1位置方向に押圧され、前記ロック部材を前記ロック位置に配置する一方、前記解除用形状記憶合金が通電によって縮み変形する場合、前記ロック用付勢部材の付勢力に抗して第2位置方向に引っ張られ、前記ロック部材を前記ロック解除位置に配置すること、が好ましい。
【0016】
上記構成の電気錠は、解除用形状記憶合金の変形に応じて変位部材をスライドさせ、ロック部材をロック位置とロック解除位置との間で変位させるので、コンパクトな構造でロックとロック解除とを行うことができる。
【0017】
(5)(4)に記載する電気錠において、前記ロック駆動装置は、前記変位部材のスライド方向に沿ってストッパ部が突設されたケーシングを有し、前記変位部材は、前記1又は2以上のプーリと連結される連結部と、前記連結部に揺動可能に軸支され、前記ロック用付勢部材に付勢されており、前記ストッパ部と係合可能なカムを有するスライドカムと、を有し、前記カムは、揺動制限カム面と揺動許容カム面とが段差部を介して接続されており、前記揺動制限カム面は、前記変位部材が前記第1位置と前記第2位置との間でスライドする間、前記ロック用付勢部材の付勢力によって前記ストッパ部に当接し、前記変位部材をスライド方向に案内し、前記制限揺動カム面は、前記揺動制限カム面と前記ストッパ部との係合が解除された場合に、前記ロック用付勢部材の付勢力によって前記スライドカムを揺動させ、前記段差部は、前記解除用形状記憶合金の通電が停止された後、前記ストッパ部に係止され、前記変位部材を第2位置に配置する状態を維持すること、が好ましい。
【0018】
上記構成の電気錠によれば、解除用形状記憶合金への通電を停止した後、ケーシングとスライドカムとの間に設けたカム機構でロック解除状態を維持できるので、コンパクトな構造でラッチング機能を実現できる。
【0019】
(6)(5)に記載する電気錠において、前記ロック駆動装置は、通電によって縮み変形するワイヤ状の復帰用形状記憶合金と、前記復帰用形状記憶合金に接続する一対の復帰用電極端子と、を有し、前記復帰用形状記憶合金は、通電時に前記一対の復帰用電極端子の間で縮み変形し、前記ロック用付勢部材に抗して前記変位部材を揺動させ、前記変位部材を前記第2位置に配置する状態を解除すること、が好ましい。
【0020】
上記構成の電気錠によれば、復帰用形状記憶合金への通電状態によってスライドカムを揺動させ、ラッチングとラッチング解除を自動で行うことができる。
【0021】
(7)(1)から(6)の何れか1つに記載する電気錠において、ロック駆動装置は、前記第1位置に配置される前記変位部材に係合する第1姿勢と、前記第1位置に配置される前記変位部材に係合しない第2姿勢との間で変位するブロックレバーと、加熱によって縮み変形するワイヤ状の阻止用形状記憶合金と、を有し、前記阻止用形状記憶合金が縮み変形する場合、前記ブロックレバーが前記第1姿勢となり、前記阻止用形状記憶合金が縮み変形しない場合、前記ブロックレバーが前記第2姿勢となること、が好ましい。
【0022】
上記構成の電気錠では、ロック部材がロック位置に配置された状態で不正加熱されると、阻止用形状記憶合金が縮み変形する。この場合、ブロックレバーが第1姿勢となり、変位部材が第2位置方向に変位することを阻止する。よって、上記構成の電気錠によれば、コンパクトな構造で、不正加熱によってロック解除が行われることを回避できる。
【0023】
(8)(7)に記載する電気錠において、前記ロック駆動装置は、前記阻止レバーが前記変位部材の変位を阻止している状態で、前記解除用形状記憶合金が縮み変形した場合に、前記解除用形状記憶合金の変形に応じて前記1又は2以上のプーリの少なくとも1つを変位させる緩衝機構を有すること、が好ましい。
【0024】
上記構成の電気錠は、不正加熱によって阻止用形状記憶合金だけでなく、解除用形状記憶合金も縮み変形した場合、緩衝機構が1又は2以上のプーリの少なくとも1つを解除用形状記憶合金の縮み変形に応じて変位させる。これにより、不正加熱時に解除用形状記憶合金が過負荷によって損傷することを防止できる。
【0025】
(9)(1)から(8)の何れか1つに記載する電気錠において、前記解除用形状記憶合金は、線径が0.1mm以上0.2mm以下の形状記憶合金であること、が好ましい。
【0026】
上記構成の電気錠は、線径が細い形状記憶合金を解除用形状記憶合金に使用することで、ロック解除時の消費電力を抑制できる。
【0027】
(10)(1)から(9)の何れか1つに記載する電気錠において、前記ロック部材が、施解錠を行う施解錠部材であり、前記ロック位置は、前記施解錠部材が施錠を行う施錠位置であり、前記ロック解除位置は、前記施解錠部材が解錠を行う解錠位置であること、が好ましい。
【0028】
上記構成の電気錠によれば、低電力で解錠動作を安定して行うことができる。
【0029】
(11)(1)から(9)の何れか1つに記載する電気錠において、前記ロック部材が、施解錠に用いる鍵と係合可能であり、前記ロック位置は、前記ロック部材が前記鍵と係合する位置であり、前記ロック解除位置は、前記鍵と係合しない位置であること、が好ましい。
【0030】
上記構成の電気錠によれば、低電力で鍵のロックとロック解除を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
上記構成によれば、形状記憶合金の通電状態に応じてロック部材を変位させるロック駆動装置を備える電気錠において、消費電力を抑制しつつ、ロック解除動作を安定して行うことができる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】
図1に示す施解錠装置を図中左側から見た側面図である。
【
図3】施錠時における施解錠装置の内部構成を示す図である。
【
図4】解錠時における施解錠装置の内部構成を示す図である。
【
図5】ロッキングレバーの周辺構造を説明する図である。
【
図6】不正加熱時における施解錠装置の内部構成を示す図である。
【
図9】ラッチングアクチュエータユニットの正面図である。
【
図10】ラッチングアクチュエータユニットの下面図である。
【
図11】ラッチングアクチュエータユニットの背面図である。
【
図12】
図11に示すラッチングアクチュエータユニットを図中右側から見た内部構造を示す図である。
【
図13】
図11に示すラッチングアクチュエータユニットを図中左側から見た内部構造を示す図である。
【
図14】ロック時のラッチングアクチュエータユニットの内部構成を示す図である。
【
図15】ロック解除時のラッチングアクチュエータユニットの内部構成を示す図である。
【
図16】ラッチングアクチュエータユニットの分解斜視図である。
【
図17】ラッチング時のラッチングアクチュエータユニットの内部構成を示す図である。
【
図18】阻止時のラッチングアクチュエータユニットの内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の電気錠を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0034】
(第1実施形態)
第1実施形態は、ロッカーの開閉扉に設けられる電気錠に、本発明の電気錠を適用したものである。
【0035】
<電気錠の概略構成>
図1は、第1実施形態の電気錠1の正面図である。
図1に示す電気錠1は、受座2と、受座2に係合するフックレバー11を駆動させる施解錠装置3と、を備える。受座2とフックレバー11は、ステンレスなどの強度がある金属で設けられている。フックレバー11は「ロック部材」、「施解錠部材」の一例である。施解錠装置3は「ロック駆動装置」の一例である。
【0036】
施解錠装置3は、ロッカーの開閉扉に取り付けられ、受座2は、ロッカー本体に取り付けられる。施解錠装置3は、配線7を介して、ロッカーを管理する図示しない制御装置に電気的に接続されている。
【0037】
電気錠1は、図示しない制御装置から施解錠装置3に電力が供給されない場合、ロック片11aを受座2の係合穴2aに係合させる施錠位置にフックレバー11が配置される。フックレバー11が受座2に係合することで、電気錠1は、開閉扉の開閉を許可しない施錠状態となる。
【0038】
一方、電気錠1は、図示しない制御装置から施解錠装置3に電力が供給された場合、ロック片11aを受座2の係合穴2aに係合させない解錠位置にフックレバー11が配置される。フックレバー11と受座2との係合が解除されることで、電気錠1は、開閉扉の開閉を許可する解錠状態になる。施錠位置は「ロック位置」の一例である。解錠位置は「ロック解除位置」の一例である。
【0039】
なお、図示しない制御装置は開閉扉の開閉を検知する開閉センサに接続されている。図示しない制御装置は、解錠した開閉扉が閉じられたことを検知すると、当該開閉扉の施解錠装置3への電力供給を停止する。これにより、電気錠1は施錠状態に戻る。
【0040】
<施解錠装置の構成>
図2は、
図1に示す施解錠装置3を図中左側から見た側面図である。施解錠装置3は、一方に開口する箱形のケース4にカバー5を取り付けることにより、直方体形状のケーシング6が形成されている。ケース4とカバー5は絶縁性を有する樹脂で形成されている。
【0041】
図3は、施錠時における施解錠装置3の内部構成を示す図である。
図4は、解錠時における施解錠装置3の内部構成を示す図である。施解錠装置3は、解除用形状記憶合金31の通電状態に応じてフックレバー11を
図3に示す施錠位置と
図4に示す解錠位置との間で変位させるように構成されている。解除用形状記憶合金31は、通電によって縮み変形するワイヤ状の形状記憶合金である。解除用形状記憶合金31は、消費電力を抑制するために、線径が0.1mm以上0.2mm以下の形状記憶合金であることが好ましい。
【0042】
図3に示すように、施解錠装置3は、図中左側から順に、フックレバー11と、ロッキングレバー22と、ブロックレバー55が隣設されている。フックレバー11と、ロッキングレバー22と、ブロックレバー55は、それぞれ、第1支軸15と第2支軸23とレバー用支軸部4cに回動可能に軸支されている。第1支軸15と第2支軸23はケース4とカバー5との間に架設され、レバー用支軸部4cはケース4に凸設されている。第2支軸23は、解除レバー25も回動可能に軸支している。ロッキングレバー22は「変位部材」の一例である。
【0043】
ロッキングレバー22は、
図3に示すように、フックレバー11を施錠位置に配置させる第1位置と、
図4に示すように、フックレバー11を解錠位置に配置させる第2位置との間で揺動するように、設けられている。
【0044】
図3に示すように、解除用形状記憶合金31は、ロッキングレバー22を挟んでフックレバー11と反対側(ロッキングレバー22の図中右側)に、配設されている。つまり、ロッキングレバー22は、フックレバー11と解除用形状記憶合金31との間に介在している。解除レバー用作動ピン26は、解除レバー25に固定され、ロッキングレバー22に連結されている。施錠用トーションバネ24は、解除レバー用作動ピン26をフックレバー11側に押圧することで、ロッキングレバー22を第1位置方向K21(図中時計回り)に付勢している。施錠用トーションバネ24は「ロック用付勢部材」の一例である。
【0045】
フックレバー11は、第1支軸15を挟んでロック片11aと反対側に従動凸部11bが設けられている。従動凸部11bは、フックレバー11の外縁部から外向きに突出している。従動凸部11bは、フックレバー11の回動方向にて第1受圧面11bxと第2受圧面11byとが対向しており、それらが先端面11bzを介して連結されている。
【0046】
ロッキングレバー22は、解除レバー用作動ピン26を挟んで第2支軸23と反対側に位置する下端部に、施錠用カム面22bが設けられている。施錠用カム面22bは、従動凸部11bの第1受圧面11bxに当接して、施錠用トーションバネ24の付勢力をフックレバー11に伝達するように設けられている。フックレバー11は、従動凸部11bに伝達される施錠用トーションバネ24の付勢力によって、施錠位置方向K11(図中時計回り)に押圧される。なお、従動凸部11bは「従動部」の一例であり、施錠用カム面22bは「押圧カム」の一例である。施錠位置方向K11は「ロック位置方向」の一例である。
【0047】
解錠用トーションバネ21は、従動凸部11bの第2受圧面11byに係合し、フックレバー11に解錠位置方向K12(図中反時計回り)の付勢力を付与している。解錠用トーションバネ21は、施錠用トーションバネ24より付勢力が小さい。フックレバー11は、従動凸部11bの第1受圧面11bxと第2受圧面11byに作用する力のバランスに応じて、
図3に示す施錠位置と
図4に示す解錠位置との間で回動する。解錠用トーションバネ21は「ロック解除用付勢部材」の一例である。解錠位置方向K12は「ロック解除位置方向」の一例である。
【0048】
図3に示すように、解除用形状記憶合金31は、第1電極端子32と第2電極端子33とに接続した状態で、固定ネジ38と固定ネジ39を用いてケース4に固定されている。第1電極端子32は、ケース4の図中右端に固定され、第2電極端子33は、ロッキングレバー22付近でケース4に固定されている。第1電極端子32と第2電極端子33は「一対の電極端子」の一例である。
【0049】
第1電極端子32と第2電極端子33との間には、可動プーリ34とプーリ35が配設されている。可動プーリ34は、解除レバー用作動ピン26に回転可能に軸支されている。可動プーリ34は、解除レバー用作動ピン26を介してロッキングレバー22に連結し、ロッキングレバー22と一体的に変位する。プーリ35は、ケース4のプーリ用支軸部4bに回動可能に軸支され、定位置に配置されている。可動プーリ34とプーリ35は「2以上のプーリ」の一例である。
【0050】
解除用形状記憶合金31は、第1電極端子32と第2電極端子33との間で可動プーリ34とプーリ35に掛止されることによりジグザグ状に配設されている。第1電極端子32と第2電極端子33は、配線7の第1電力線7aと第2電力線7bとを介して図示しない制御装置に電気的に接続されている。解除用形状記憶合金31は、第1電極端子32と第2電極端子33に電圧が印加されると、通電によって加熱され、縮み変形する。解除用形状記憶合金31は、縮み変形した場合に、ロッキングレバー22をフックレバー11と反対側に引っ張って、施錠用カム面22bと従動凸部11bとの係合を解除する張力を発生するように、全長を設定されている。
【0051】
ロッキングレバー22は、フックレバー11側に位置する図中左端部に、解錠用カム面22cが形成されている。解錠用カム面22cは、施錠用カム面22bと接続している。解錠用カム面22cは、施錠用カム面22bと従動凸部11bとの係合が解除された場合にフックレバー11の回動を許容するように、フックレバー11と反対側に凹状に湾曲する円弧面により形成されている。
【0052】
フックレバー11は、フック片11aと従動凸部11bとの間に操作凸部11cが設けられている。ケース4は、操作凸部11cの図中右側に、スライド溝4aが図中左右方向Xに沿って形成されている。スイッチバー37は、スライド溝4aにスライド可能に保持されている。スイッチバー37の図中右側には、施解錠検出回路36のスイッチ部36aが配設されている。操作凸部11cは、スイッチバー37を介してスイッチ部36aを操作する。施解錠検出回路36は、配線7の通信線7cを介して図示しない制御装置に接続され、スイッチ部36aの操作に応じて施解錠を示す検出信号を図示しない制御装置に送信する。
【0053】
図5は、ロッキングレバー22の周辺構造を説明する図である。ロッキングレバー22と解除レバー25は、図中上端付近に設けられた挿通穴22h,25hに第2支軸23が挿通され、第2支軸23に回動可能に軸支される。ロッキングレバー22と解除レバー25は、薄い板状のレバーであり、ステンレスなどの剛性がある金属で形成されている。ロッキングレバー22は、挿通穴22hと施錠用カム面22bとの間に窓部22aが形成されている。
【0054】
解除レバー用作動ピン26は、ロッキングレバー22の窓部22aに貫き通され、解除レバー25の固定孔25iに固定される。窓部22aは、解除レバー用作動ピン26の移動方向に沿って長く形成され、解除レバー25がロッキングレバー22に対して相対的に回動できるようにしている。解除レバー用作動ピン26は、窓部22aから解除レバー25と反対側に突き出す部分に、可動プーリ34が回転可能に取り付けられる。
【0055】
ロッキングレバー22と解除レバー25との間には、緩衝バネ27が配設される。緩衝バネ27は、ロッキングレバー22のバネ受け部22jと、解除レバー25のバネ受け部25jとの間に伸縮自在に配設されている。緩衝バネ27は、位置決め支持部22kによって、伸縮時の位置ずれが防止される。緩衝バネ27は「緩衝機構」の一例である。
【0056】
図6は、不正加熱時における施解錠装置3の内部構成を示す図である。施解錠装置3は、第1位置に配置されるロッキングレバー22が第2位置方向K22(図中反時計回り)に回動することを阻止する阻止機構14が、ロッキングレバー22を挟んでフックレバー11と反対側(ロッキングレバー22の図中右側)に設けられている。阻止機構14は、ブロックレバー55と阻止用形状記憶合金51とを備える。ブロックレバー55は、阻止部55aと、変形伝達部55bと、バネ部55cとを備える。ブロックレバー55は、
図16に示すように、第1位置に配置されるロッキングレバー22に係合する第1姿勢と、
図3に示すように、第1位置に配置されるロッキングレバー22に係合しない第2姿勢との間で、揺動する。
【0057】
なお、阻止部55aは「阻止部」の一例である。バネ部55cは「阻止用付勢部」の一例である。なお、バネ部55cを省略し、ブロックレバー55と別個に設けた付勢部材によりブロックレバー55を付勢してもよい。阻止用形状記憶合金51は「阻止用形状記憶合金」の一例である。
【0058】
図3に示すように、阻止用形状記憶合金51は、固定ネジ39と固定ネジ52とを介してケース4に固定されている。阻止用形状記憶合金51は、非加熱時に固定ネジ39と固定ネジ52と間で弛んだ状態となり、加熱によって縮み変形した場合に固定ネジ39と固定ネジ52との間で縮み変形して直線状となるように、全長が設定されている。本実施形態では、固定ネジ39を共通化して施解錠装置3をコンパクトにするために、解除用形状記憶合金31と阻止用形状記憶合金51とを一連の形状記憶合金16で設けている。尚、解除用形状記憶合金31と阻止用形状記憶合金51は別個に設けてもよい。
【0059】
ブロックレバー55は、固定ネジ52の図中左上に設けられたケース4のレバー用支軸部4cに、回動可能に軸支されている。阻止部55aとバネ部55cは、レバー用支軸部4cを挟んで反対向きに設けられている。変形伝達部55bは、阻止部55aと阻止用形状記憶合金51との間に配置されるように、ブロックレバー55に設けられている。バネ部55cは、プーリ用支軸部4bに係止され、変形伝達部55bを阻止用形状記憶合金51に押し付けるようにブロックレバー55を第2姿勢方向K32(図中反時計回り)に付勢している。
【0060】
ロッキングレバー22は、ブロックレバー55と対向する部分に、阻止部55aに係止される係止部22dが設けられている。
図6に示すように、阻止用形状記憶合金51は、縮み変形した場合に、バネ部55cに抗して変形伝達部55bを押圧し、ブロックレバー55を第1姿勢方向K31(図中時計回り)に回動させる。これにより、ブロックレバー55は、第2姿勢から第1姿勢に変位する。
【0061】
<電気錠の動作説明>
続いて、電気錠1の動作について、施錠状態、解錠動作、施錠動作、不正解錠防止動作に分けて説明する。
【0062】
<施錠状態>
電気錠1は、施錠状態のとき、図示しない制御装置から施解錠装置3の第1電極端子32と第2電極端子33に電圧が印加されない。この場合、
図3に示すように、解除用形状記憶合金31は、通電されず、伸張している。
【0063】
施錠用トーションバネ24は、解除レバー用作動ピン26を窓部22aのフックレバー11側の内縁部に押し付け、ロッキングレバー22に第1位置方向K21の付勢力を付与する。ロッキングレバー22は、施錠用カム面22bを従動凸部11bの第1受圧面11bxに当接させ、フックレバー11を施錠位置方向K11に押圧する。
【0064】
施錠用トーションバネ24は、解錠用トーションバネ21より付勢力が大きい。フックレバー11は、操作凸部11cがスイッチバー37を介してスイッチ部36aに係止される位置で保持され、施錠位置に配置される。フックレバー11のロック片11aが受座2の係合穴2aに係合することで、電気錠1は開閉扉の開閉を阻止する施錠状態となる。施解錠検出回路36は、スイッチ部36aが押圧されることで施錠位置を検出し、図示しない制御装置に、施錠を示す検出信号を送信する。
【0065】
なお、阻止用形状記憶合金51は、施錠状態のとき、通電によって加熱されない。そのため、ブロックレバー55は、バネ部55cに付勢されて第2姿勢となる。
【0066】
<解錠動作>
電気錠1は、解錠動作を行う場合、図示しない制御装置から施解錠装置3の第1電極端子32と第2電極端子33に電圧が印加される。この場合、
図4に示すように、解除用形状記憶合金31は、通電によって加熱され、縮み変形する。なお、阻止用形状記憶合金51は、通電によって加熱されないので、縮み変形しない。そのため、ブロックレバー55は、解錠動作時も第2姿勢を維持し、ロッキングレバー22の回動を邪魔しない。
【0067】
解除用形状記憶合金31は、全長方向に縮み変形することによって、施錠用トーションバネ24に抗して解除レバー用作動ピン26をフックレバー11と反対向きに引っ張る。解除レバー用作動ピン26は、施錠用トーションバネ24を圧縮しながら、窓部22aに沿って解除レバー25と一体的に図中右方向に変位する。これにより、ロッキングレバー22は、解除レバー用作動ピン26との連結を解除され、施錠用トーションバネ24の付勢力が作用しなくなる。よって、ロッキングレバー22は、施錠用カム面22bから第1受圧面11bxに施錠用トーションバネ24の付勢力を伝達しなくなる。
【0068】
フックレバー11は、第1受圧面11bxに施錠用トーションバネ24の付勢力が作用しなくなると、解錠用トーションバネ21に付勢されて第1受圧面11bxで施錠用カム面22bを解錠位置方向K12に押圧する。施錠用カム面22bは、第1受圧面11bx側に凸状に湾曲する円弧状をなす。そのため、ロッキングレバー22は、施錠用カム面22bに作用する解錠位置方向K12の力によって第2位置方向K22に回動し、施錠用カム面22bと従動凸部11bとの係合を解除する。フックレバー11は、さらに、従動凸部11bの先端面11bzを解錠用カム面22cに摺接させ、ロッキングレバー22をフックレバー11と反対向きに押しながら、解錠位置方向K12に回動する。
【0069】
解除レバー用作動ピン26は、縮み変形した解除用形状記憶合金31の張力と施錠用トーションバネ24のバネ力とがバランスする位置で停止している。
図4に示すように、ロッキングレバー11は、窓部22aのフックレバー11側に位置する内縁部(図中左側内縁部)が解除レバー用作動ピン26に係止されると、それ以上、第2位置方向K22に回動できなくなる。これにより、フックレバー11は、先端面11bzが解錠用カム面22cに係止されて解錠位置方向K12に回動しなくなり、解錠位置に配置される。
【0070】
このとき、操作凸部11cがスイッチバー37から離間し、スイッチバー37を介してスイッチ部36aを押圧しなくなる。施解錠検出回路36は、スイッチ部36aが押圧されなくなることで解錠位置を検出し、解錠を示す検出信号を図示しない制御装置に送信する。
【0071】
<施錠動作>
電気錠1は、解錠状態から施錠動作を行う場合、図示しない制御装置から第1電極端子32と第2電極端子33に電圧が印加されなくなる。解除用形状記憶合金31は、通電状態から非通電状態にされると、
図3に示すように、伸張して元の形状に戻る。これにより、解除用形状記憶合金31は、解除レバー用作動ピン26を介してロッキングレバー22を第2位置方向K22に引っ張らなくなる。
【0072】
すると、解除レバー用作動ピン26は、施錠用トーションバネ24によってフックレバー11側に押圧され、窓部22aのフックレバー11側に位置する内縁部(図中左側内縁部)を介してロッキングレバー22を第1位置方向K21に押圧する。ロッキングレバー22は、解錠用カム面22cを従動凸部11bの先端面11bzに押しつけながら、第1位置方向K21に回動する。これに伴い、フックレバー11が解錠用トーションバネ21に抗して施錠位置方向K11に回動し始める。
【0073】
第1受圧面11bxが施錠用カム面22bまで移動すると、ロッキングレバー22が、第1位置方向K11にさらに回動して、施錠用カム面22bを第1受圧面11bxに当接させ、施錠用トーションバネ24の付勢力が第1受圧面11bxに伝達する。フックレバー11は、第1受圧面11bxに作用する施錠用トーションバネ24の付勢力によって施錠位置方向K11に回動する。操作凸部11cがスイッチバー37を介してスイッチ部36aに係止されることで、フックレバー11は施錠位置方向K11に回動できなくなり、施錠位置に配置される。フックレバー11が受座2と係合することで、電気錠1は施錠状態となる。
【0074】
このとき、施解錠検出回路36は、スイッチ部36aが非押圧状態か押圧状態になることで、施錠位置を再検出し、施錠を示す検出信号を図示しない制御装置に送信する。
【0075】
なお、解除用形状記憶合金31への通電を停止するタイミングは、開閉扉を閉じる前でも、開閉扉を閉じた後でもよい。前者の場合、解除用形状記憶合金31への通電時間を短くして、消費電力を抑制できるメリットがある。この場合、解錠用形状記憶合金21に抗して受座2でロック片11aを施錠位置方向K11に押圧してフックレバー11を回動させることで、ロック片11aを係合穴2aに係合させ、施錠状態とすることができる。後者の場合、施錠不良を防止できるメリットがある。
【0076】
<不正解錠防止動作>
例えば、電気錠1は、ドライヤで加熱されたりして、不正に加熱された場合、施解錠装置3の阻止機構14によって不正解錠が阻止される。
【0077】
すなわち、電気錠1は、第1電極端子32と第2電極端子33に電圧を印加されない状態で外部加熱されると、阻止用形状記憶合金51が縮み変形する。これにより、ブロックレバー55は、バネ部55cの付勢力に抗して第1姿勢方向K31に回動し、
図16に示す第1姿勢となる。
【0078】
解除用形状記憶合金31も、不正加熱によって縮み変形し、ロッキングレバー22を第1位置から第2位置に変位させる張力を発生する。しかし、阻止用形状記憶合金51は、解除用形状記憶合金31より短尺である。そのため、解除用形状記憶合金31が縮み変形して施錠用カム面22bと従動凸部11bとの係合を解除する前に、阻止用形状記憶合金51は、ブロックレバー55を第1姿勢とするように縮み変形する。ロッキングレバー22は、係止部22dが阻止部55aに係止されることにより第2位置方向K22に回動できなくなり、第1位置に配置され続ける。よって、電気錠1は、不正加熱時にフックレバー11を施錠位置に配置し続け、不正解錠を防止することができる。
【0079】
解除用形状記憶合金31は、不正加熱によって、解錠動作時と同様に縮み変形することがある。ロッキングレバー22は、係止部22dが阻止部55aに係止されて第2位置方向K22に回動できないが、解除レバー25は、窓部22aの範囲で第2位置方向K22に単独で回動できる。解除レバー25は、解除レバー用作動ピン26が窓部22aのフックレバー11と反対側に位置する内縁部(
図16において右側内縁部)に当接した後も、解除用形状記憶合金31の縮み変形に応じて緩衝バネ27を圧縮しながら単独で回動する。よって、ロッキングレバー22の回動を阻止部55aによって制限した状態で、解除用形状記憶合金31が通電時と同程度に縮み変形しても、解除用形状記憶合金31にかかる負荷が緩衝バネ27によって吸収される。そのため、解除用形状記憶合金31が過負荷によって損傷することを防止できる。
【0080】
不正加熱が止められると、
図3に示すように、阻止用形状記憶合金51と解除用形状記憶合金31は、元の形状に戻る。ブロックレバー55は、バネ部55cに付勢されて第2姿勢方向K32に回動し、
図3に示す第2姿勢に自動的に戻る。また、ロッキングレバー22とフックレバー11は、施錠用トーションバネ24によって第1位置と施錠位置にそれぞれ配置される。よって、電気錠1は、不正加熱終了後に施解錠装置3の部品交換等しなくても、上記施錠状態、解錠動作、施錠動作を行うことができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の電気錠1では、フックレバー11と解除用形状記憶合金31との間にロックレバー22が介在し、解除用形状記憶合金31がフックレバー11に直結されていない。そのため、フックレバー11に作用する外力は、ロッキングレバー22や施錠用トーションバネ24や解錠用トーションバネ21によって吸収され、解除用形状記憶合金31がフックレバー11に作用する外力によって損傷しにくい。解除用形状記憶合金31は、第1電極端子32と第2電極端子33との間で可動プーリ34とプーリ35に掛止されることで、全長が長くされている。そのため、ロック解除時の消費電力を抑制するために、例えば線径0.2mm以下の細い形状記憶合金を解除用形状記憶合金31として使用する場合でも、解除用形状記憶合金31の縮み変形量を大きくできる。このような解除用形状記憶合金31は、通電によって縮み変形する場合に、施錠用トーションバネ24に抗してロッキングレバー22を第2位置に変位させる張力を発生し、フックレバー11を施錠位置から解錠位置に変位させることができる。よって、本実施形態の電気錠1によれば、消費電力を抑制しつつ、安定して解錠動作を行うことができる。
【0082】
B.第2実施形態
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、施解錠に用いる鍵をロックする機能を有する電気錠に、本発明の電気錠を適用したものである。
【0083】
<電気錠の概略構成>
図7は、第2実施形態の電気錠200の正面図である。電気錠200は、例えば、キャビネットの開閉扉や引き出しなどに取り付けられる。電気錠200は、錠本体201にキーガイド202が設けられている。キーガイド202は、鍵穴202aの両側に一対の接続端子203,203が配設されている。
【0084】
図示しない電子キーは、鍵穴202aに挿入されると、一対の接続端子203,203に接触して内蔵するICチップにデータを読み書きされる。電気錠200は、例えば、図示しない電子キーから権限情報を読み取って権限認証に成功すると、解錠動作を行う。その後、電気錠200は、施錠条件を満たすと、施錠動作を行う。電気錠200は、鍵穴202aに差し込まれた図示しない電子キーに、使用履歴を書き込む。電気錠200は、使用履歴の書き込みが完了するまで、鍵穴202aに差し込まれた図示しない電子キーをロックする。
【0085】
図8は、電子キーロック機構210を示す図である。電子キーロック機構210は、ロックプレート205と、一対の係止ボール206,206と、ラッチングアクチュエータユニット103とを備える。
【0086】
一対の係止ボール206,206は、鍵穴202a内に進退できるようにキーガイド202に設けられている。キーガイド202は、ロックプレート205の収容穴205cに配置されている。収容穴205cは、図中上下方向に長く形成されている。収容穴205cの内縁部には、一対の係止ボール206,206を鍵穴202aから後退させるための一対の退避用凹部205a,205aが設けられている。ロックプレート205が図中上下方向に移動することで、一対の係止ボール206,206は、図示しない電子キーと係合するロック位置と、図示しない電子キーと係合しないロック解除位置との間で変位する。
【0087】
ラッチングアクチュエータユニット103は、連結ピン129がロックプレート205の嵌合穴205bに嵌合され、ロックプレート205と連結されている。ラッチングアクチュエータユニット103は、図示しない制御装置に電気的に接続される。図示しない制御装置は、電気錠200の外部に設けられてよいし、電気錠200の内部にもうけられてもよい。ラッチングアクチュエータユニット103は、図示しない制御装置からの命令に応じて、ロックプレート205を図中上下方向にスライドさせ、一対の係止ボール206,206をロック位置とロック解除位置との間で変位させる。
【0088】
なお、一対の係止ボール206,206は、「ロック部材」の一例である。ラッチングアクチュエータユニット103は「ロック駆動装置」の一例である。
【0089】
<ラッチングアクチュエータユニットの構成>
図9は、ラッチングアクチュエータユニット103の正面図である。
図10は、ラッチングアクチュエータユニット103の下面図である。
図11は、ラッチングアクチュエータユニット103の背面図である。
【0090】
図9~
図11に示すように、ラッチングアクチュエータユニット103は、ケース104とカバー105とを連結ネジ118,119を用いて結合することにより、直方体形状のケーシング106が形成されている。ケース104とカバー105は、絶縁性のある樹脂で形成されている。
【0091】
図12は、
図11に示すラッチングアクチュエータユニット103を図中右側から見た内部構造を示す図である。
図13は、
図11に示すラッチングアクチュエータユニット103を図中左側から見た内部構造を示す図である。ラッチングアクチュエータユニット103は、吸引用形状記憶合金130の通電状態に応じて一対の係止ボール206,206をロック位置とロック解除位置との間で変位させることができるように構成されている。吸引用形状記憶合金130は「解除用形状記憶合金」の一例である。
【0092】
図12~
図13に示すように、連結ピン129は、ケーシング106の図中下端部付近にてケース104とカバー105との間に架設されている。連結ピン129は、図中上下方向にスライド可能に設けられている。連結ピン129は、ロックプレート205と連結できるように、カバー105の外側に突出している。
【0093】
図14は、ラッチングアクチュエータユニット103の内部構成を示す図であって、ロック状態を示す。
図15は、ラッチングアクチュエータユニット103の内部構成を示す図であって、ロック解除状態を示す。
図14~
図15に示すように、連結ピン129は、スライドカム122を備え、スライドカム122と一体的に
図14に示す第1位置と
図15に示す第2位置との間でスライドすることができる。第1位置は、一対の係止ボール206,206をロック位置に配置させる位置である。第2位置は、一対の係止ボール206,206をロック解除位置に配置させる位置である。連結ピン129とスライドカム122は、「変位部材」の一例である。連結ピン129は「連結部」の一例である。スライドカム122は「スライドカム」の一例である。
【0094】
カムバネ124は、連結ピン129とスライドカム122を第1位置方向K41(図中下向き)に付勢している。カムバネ124は「ロック用付勢部材」の一例である。
【0095】
吸引用形状記憶合金130は、共通端子132と吸引用端子133に接続する状態で、固定ネジ138と固定ネジ139を用いてケース104に固定されている。第1可動プーリ135と第2可動プーリ136と第3可動プーリ137は、共通端子132と吸引用端子133との間に配設されている。第1可動プーリ135は、連結ピン129に回動可能に軸止され、連結ピン129と一体的に変位する。第2可動プーリ136と第3可動プーリ137は、ケース104の図中上端部に配設されたプーリホルダ142に回転可能に保持されている。共通端子132と吸引用端子133は「一対の電極端子」の一例である。第1~第3可動プーリ135~137は「2以上のプーリ」の一例である。
【0096】
吸引用形状記憶合金130は、共通端子132と吸引用端子133との間で第1可動プーリ135と第2可動プーリ136と第3可動プーリ137とに掛止され、ジグザグ状に配設されている。よって、吸引用形状記憶合金130は、第1可動プーリ135を介して連結ピン129に連結されている。共通端子132と吸引用端子133は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。吸引用形状記憶合金130は、共通端子132と吸引用端子133に電圧が印加されると、通電によって加熱され、縮み変形する。吸引用形状記憶合金130は、縮み変形した場合、連結ピン129を第2位置方向K42(図中上向き)に引っ張って、一対の係止ボール206,206をロック解除位置に配置する張力を発生するように、全長を設定されている。
【0097】
図16は、ラッチングアクチュエータユニット103の分解斜視図である。カバー105には、カバー側案内溝105dが図中上下方向に沿って所定の長さで形成されている。ケース104には、ケース側案内溝104bが図中上下方向に沿って所定の長さで形成されている。連結ピン129は、第1可動プーリ135と、スライドカム122の図中下端部付近に設けられた軸穴122hとに貫き通され、両端部がカバー側案内溝105dとケース側案内溝104bにスライド可能に保持される。
【0098】
スライドカム122は、ケース104側に位置する側面に、カムバネ124の一端124aが装着されるカム側ボス部122gが突設されている。
図14に示すように、ケース104には、カムバネ124の他端124bが装着されるケース側ボス部104eが突設されている。カムバネ124は、カム側ボス部122gとケース側ボス部104eとの間に弾性変形可能に配設され、スライドカム122をラッチング方向K51(図中反時計回り)に付勢している。
【0099】
吸引用形状記憶合金130は、復帰用形状記憶合金131と阻止用形状記憶合金151と共に、一連の形状記憶合金116により形成されている。形状記憶合金116は、加熱によって縮み変形するワイヤ状の形状記憶合金である。形状記憶合金116は、消費電力を抑制するために、線径が0.15mm以上0.2mm以下の形状記憶合金であることが好ましい。
【0100】
図14及び
図16に示すように、形状記憶合金116は、共通端子132と吸引用端子133と復帰用端子134に接続する状態で、固定ネジ138,139,140,156を介してケース104に固定される。固定ネジ138と固定ネジ139は、ケース104の側面に締結され。固定ネジ140と固定ネジ156は、ケース104のスライドカム122等が取り付けられる面に固定されている。
【0101】
図12~
図13、
図16に示すように、形状記憶合金116は、固定ネジ138と固定ネジ139に対してカバー105側からケース104側へ巻くように配設され、復帰用形状記憶合金131と阻止用形状記憶合金151が吸引用形状記憶合金130とケース104との間に配置されている。これにより、形状記憶合金116を固定する固定ネジの数を減らしたり、復帰用形状記憶合金131や阻止用形状記憶合金151に専用のスペースを省いたりすることができ、ラッチングアクチュエータユニット103のサイズがコンパクトになる。復帰用形状記憶合金131と阻止用形状記憶合金151については、後述する。
【0102】
図16に示すように、プーリホルダ142は、カバー105側に位置する面に、第2可動プーリ136と第3可動プーリ137を回転可能に軸止する第1支軸部142aと第2支軸部142bが突設されている。プーリホルダ142は、ケース104側に位置する面に、ガイド部142jが突設されている。また、プーリホルダ142は、スライドカム122側に位置する面(図中下面)に、緩衝バネ143を収容する収容孔部142cが円柱状に開設されている。
【0103】
図14に示すように、プーリホルダ142は、ケース104に形成された収容凹部104gに図中上下方向にスライド可能に収容されている。
図14及び
図16に示すように、ケース104は、収容凹部104g内に、ガイド穴104jが図中上下方向に長く設けられている。また、
図16に示すように、カバー105は、ホルダ案内溝105a,105bが図中上下方向に長く形勢されている。プーリホルダ142は、ガイド部142jをガイド穴104jにスライド可能に嵌め合わせ、第1支軸部142aと第2支軸部142bをホルダ案内溝105a,105bにスライド可能に嵌め合わせることで、図中上下方向に安定したスライドできる。
【0104】
図14に示すように、緩衝バネ143は、プーリホルダ142とケース104との間に縮設され、プーリホルダ142を連結ピン129と反対向き(図中上向き)に付勢している。緩衝バネ143の付勢力は、吸引用形状記憶合金130が縮み変形する際にカムバネ124に抗して連結ピン129を第2位置方向K42に引っ張る張力より大きく設定されている。このように、プーリホルダ142と緩衝バネ143により、緩衝機構141が設けられている。
【0105】
図17は、ラッチング時のラッチングアクチュエータユニット103の内部構成を示す図である。ラッチングアクチュエータユニット103は、連結ピン129を第2位置に配置する状態を維持するラッチング機構を備える。ラッチング機構は、カム122fと、ストッパ部104cとにより構成されている。
【0106】
図16に示すように、スライドカム122は、ケース104側に位置する側面に、カム122fが設けられている。
図14、
図15、
図17に示すように、カム122fは、ケース104に突設されたストッパ部104cと係合可能に設けられている。カム122fは、揺動制限カム面122cと、揺動許容カム面122dと、段差部122eとを備える。
【0107】
図14、
図15、
図17に示すように、ストッパ部104cは、長方形状をなし、連結ピン129のスライド方向に沿って長く設けられている。
【0108】
図14に示すように、揺動制限カム面122cは、ストッパ部104cを挟んでカム側ボス部122gと反対側となる位置にスライドカム122のスライド方向に沿って平坦に設けられている。揺動制限カム面122cは、連結ピン129が第1位置と第2位置との間でスライドする間、ストッパ部104cに係止され、スライドカム122がカムバネ124に付勢されて連結ピン129を中心にラッチング方向K51に揺動することを制限する。
【0109】
図15に示すように、揺動許容カム面122dは、揺動制限カム面122cより図中右側に設けられている。揺動制限カム面122cは、揺動制限カム面122cとストッパ部104cとの係合が解除された場合に、スライドカム122がカムバネ124に付勢されて連結ピン129を中心にラッチング方向K51に揺動することを許容する。
【0110】
図17に示すように、段差部122eは、揺動制限カム面122cと揺動許容カム面122dとの間に設けられ、ストッパ部104cに係止されることで、スライドカム122が第1位置方向K41に変位することを制限する。
【0111】
図14に示すように、復帰用形状記憶合金131は、共通端子132と復帰用端子134とに接続する状態でケース104に固定されている。共通端子132と復帰用端子134は、図示しない制御装置に接続され、復帰用形状記憶合金131に通電することができる。復帰用形状記憶合金131は、非通電時において、スライドカム122と反対向きに屈曲した形状をなし、スライドカム122に非接触である。復帰用形状記憶合金131は、通電時に、共通端子132と復帰用端子134との間で直線状となるように縮み変形し、カムバネ124に抗してスライドカム122をラッチング解除方向K52(図中時計回り)に押圧できるように、全長が設定されている。共通端子132と復帰用端子134は「一対の復帰用電極端子」の一例である。
【0112】
図18は、阻止時のラッチングアクチュエータユニット103の内部構成を示す図である。ラッチングアクチュエータユニット103は、第1位置に配置されるスライドカム122が第2位置方向K42にスライドすることを阻止する阻止機構114を備える。阻止機構114は、ブロックレバー155と阻止用形状記憶合金151とを備える。
【0113】
ブロックレバー155は、阻止用形状記憶合金151の変形に応じて、
図18に示す第1姿勢と
図14に示す第2姿勢との間で揺動するように設けられている。第1姿勢は、
図18に示すように、ブロックレバー155が第1位置に配置されるスライドカム122に係合する姿勢である。第2姿勢は、
図14の示すように、ブロックレバー155が第1位置に配置されるスライドカム122に係合しない姿勢である。ブロックレバー155は、弾性変形可能なナイロンで形成されている。ブロックレバー155は、阻止部155aとバネ部155dとを備える。
【0114】
図16に示すように、ブロックレバー155は、薄いプレート状のレバーであり、長手方向の一端に、レバー用支軸部104k(
図14参照)が挿通される軸穴155gが設けられている。ブロックレバー155は、長手方向の他端に阻止部155aが設けられ、阻止部155aからバネ部155dが延設されている。また、ブロックレバー155は、ケース104側に位置する面に、係止凹部155fが形成されている。
【0115】
図14及び
図18に示すように、スライドカム122は、ブロックレバー155側に位置する部分に切欠部122aが設けられている。阻止部155aは、阻止用当接面155bと伝達用当接面155cとを備える。阻止用当接面155bは、切欠部122aに当接して、スライドカム122が第2位置方向K42に移動することを阻止する。
【0116】
阻止用形状記憶合金151は、ブロックレバー155を挟んでスライドカム122と反対側に配設されている。阻止用形状記憶合金151は、固定ネジ156と固定ネジ139を用いてケース104に固定されている。阻止用形状記憶合金151は、固定ネジ156側の端部が図中しない制御装置に接続されないため、通電されない。阻止部155aは、阻止用形状記憶合金151と対向する位置に伝達用当接面155cが設けられている。
【0117】
図14に示すように、バネ部155dは、円弧状に形成されている。ブロックレバー155は、バネ部155dの先端部をケース104の隔壁部104aに係止させて配置され、バネ部155dによって第2姿勢方向K62(図中反時計回り)に付勢されている。ブロックレバー155は、係止凹部155fがケース104のブロックレバー用係止部104fに係止されることで、第2姿勢方向K62への回動が制限されている。
【0118】
なお、
図9に示すように、ラッチングアクチュエータユニット103は、カバー105に設けられた非常用窓部105cから、スライドカム122に設けた非常時操作部122bを露出させ、スライドカム122を外部操作できるようにしている。
【0119】
<電気錠の動作説明>
続いて、電気錠200の動作を説明する。電気錠200の施解錠動作は上述したので、ここでは、図示しない電子キーのロックに関連する動作について説明する。以下、待機状態、ロック解除動作、ラッチング動作、復帰動作、阻止動作について説明する。
【0120】
<待機状態>
電気錠200は、例えば待機状態の場合、ラッチングアクチュエータユニット103の共通端子132と吸引用端子133と復帰用端子134の何れにも電圧が印加されない。そのため、
図14に示すように、吸引用形状記憶合金130は、非通電で、伸張している。スライドカム122は、揺動制限カム面122cがストッパ部104cに係止され、カムバネ124の付勢力が第1位置方向K41(図中下向き)に作用する。よって、スライドカム122と連結ピン129は、カムバネ124に押圧されて第1位置に配置される。これにより、
図8に示すように、ロックプレート205が、退避用凹部205a,205aを一対の係止ボール206,206からずらすように押し下げられ、一対の係止ボール206,206を鍵穴202a側に押し出す。この状態では、一対の係止ボール206,206によって図示しない電子キーを鍵穴202aに差し込むことができない。
【0121】
<ロック解除動作>
電気錠200は、例えば権限認証に成功した場合、ラッチングアクチュエータユニット103の共通端子132と吸引用端子133との間に電圧が印加され、一対の係止ボール206,206をロック解除位置に変位させる。
【0122】
すなわち、ラッチングアクチュエータユニット103は、吸引用形状記憶合金130が通電によって縮み変形する。このとき、共通端子132と復帰用端子134に電圧が印加されないので、復帰用形状記憶合金131と阻止用形状記憶合金151は縮み変形しない。
【0123】
吸引用形状記憶合金130は、縮み変形によって、カムバネ124に抗して第1可動プーリ135を第2位置方向K42に引っ張る。このとき、プーリホルダ142は、緩衝バネ143に付勢されて動かない。
【0124】
揺動制限カム面122cがストッパ部104cに係止されているので、連結ピン129とスライドカム122は、第2位置方向K42にスライドし、第2位置に配置される。これにより、ロックプレート205が退避用凹部205a,205aを一対の係止ボール206,206に対応する位置までずらすようにスライドし、一対の係止ボール206,206が鍵穴202aから後退する。これにより、図示しない電子キーを鍵穴202aに差し込むことができるようになる。
【0125】
<ラッチング動作>
図17に示すように、吸引用形状記憶合金130の縮み変形により、揺動制限カム面122cとストッパ部104cとの係合が解除されると、スライドカム122は、カムバネ124に付勢されて連結ピン129を中心にラッチング方向K51に揺動する。スライドカム122は、揺動許容カム面122dがストッパ部104cに係止される位置まで揺動し、復帰用形状記憶合金131に押し当てられる。
【0126】
この状態で、共通端子132と吸引用端子133に電圧が印加されなくなると、吸引用形状記憶合金130は、通電されなくなって伸張し、連結ピン129を第2位置方向K42に引っ張らなくなる。スライドカム122は、カムバネ124に付勢されて第1位置方向K41にスライドしようとするが、段差部122eがストッパ部104cに係止される。これにより、スライドカム122は、それ以上、第1位置方向K41へスライドできず、連結ピン129と共に第2位置に配置され続ける。よって、電気錠200は、吸引用形状記憶合金130に一時的に通電しても、一対の係止ボール206,206を鍵穴202aから後退させたロック解除状態を維持できる。
【0127】
<復帰動作>
電気錠200は、例えば、一対の接続端子203,203を介して図示しない電子キーと通信すると、共通端子132と復帰用端子134に電圧が印加される。すると、復帰用形状記憶合金131が縮み変形して、カムバネ124に抗してスライドカム122をラッチング解除方向K52に回動させる。
【0128】
段差部122eとストッパ部104cとの係合が解除されると、スライドカム122は、カムバネ124に付勢されて第1位置方向K41にスライドし、揺動制限カム面122cがストッパ部104cに係止される。スライドカム122は、ストッパ部104cに案内されながら第1位置方向K41にスライドし、第1連結ピン129と共に第1位置に戻る。ロックプレート205は、第1連結ピン129によって押し下げられ、一対の係止ボール206,206を鍵穴202aに押し出す。一対の係止ボール206,206が図示しない電子キーと係合することで、電気錠200は図示しない電子キーを鍵穴202aから抜くことができなくなる。
【0129】
尚、電気錠200は、例えば開閉扉などが開閉され、図示しない電子キーに使用履歴を書き込むと、上述したロック解除動作とラッチング動作を行い、一対の係止ボール206,206と図示しない電子キーとの係合を解除する。これにより、電気錠200は、図示しない電子キーを鍵穴202aから抜くことができるようになる。電気錠200は、例えば、図示しない電子キーと通信できなくなると、上述した復帰動作を行い、待機状態に戻る。本実施形態の電気錠200は、ラッチング機能を有するので、吸引用形状記憶合金130への通電時間を短くして消費電力を抑え、ランニングコストを低減させることができる。
【0130】
<阻止動作>
例えば、電気錠200は、熱湯やドライヤなどで不正に加熱されると、
図18に示すように、阻止機構114によって不正なロック解除を阻止する。
【0131】
すなわち、ラッチングアクチュエータユニット103は、共通端子132と吸引用端子133と復帰用端子134に電圧が印加されない状態で不正に加熱されると、形状記憶合金116が縮み変形する。
【0132】
阻止用形状記憶合金151は、縮み変形すると、ブロックレバー155の伝達用当接面155cをスライドカム122側に押圧し、バネ部155dに抗してブロックレバー155を第1姿勢方向K61(図中時計回り)に回動させる。これにより、ブロックレバー155は、スライドカム122の切欠部122aの上方に阻止用当接面155bを配置し、第1姿勢となる。
【0133】
吸引用形状記憶合金130は、縮み変形すると、第1可動プーリ135を介して連結ピン129を第2位置方向K42(図中上向き)に引っ張る。しかし、阻止用形状記憶合金151が吸引用形状記憶合金130より短尺である。そのため、連結ピン129が第2位置方向K42に引っ張られる前に、ブロックレバー155が第1姿勢となる。よって、連結ピン129は、吸引用形状記憶合金130によって第2位置方向K42に引っ張られても、スライドカム122の切欠部122aが阻止用当接面155bに係止されることにより、第2位置方向K42へスライドしない。よって、電気錠200は、不正加熱時にロックプレート205がスライドせず、一対の係止ボール206,206を鍵穴202a内に突出するロック位置に配置し続けることができる。
【0134】
ブロックレバー155によってスライドカム122が第2位置方向K42にスライドすることを阻止する状態で、吸引用形状記憶合金130が縮み変形すると、プーリホルダ142が緩衝バネ143に抗してスライドカム122側にスライドする。よって、吸引用形状記憶合金130は、不正加熱時に縮み変形しても、緩衝バネ143によって負荷を吸収され、過負荷による損傷が回避される。
【0135】
また、不正加熱時にはスライドカム122が揺動制限カム面122cをストッパ部104cに当接させて揺動を制限されている。そのため、復帰用形状記憶合金131は、不正加熱によって縮み変形しても、負荷がかからず、損傷しにくい。
【0136】
電気錠200は、不正加熱が止められると、吸引用形状記憶合金130と復帰用形状記憶合金131と阻止用形状記憶合金151が伸張し、
図14に示す状態に戻る。阻止用形状記憶合金151が伸張することにより、ブロックレバー155は、バネ部155dに付勢され、係止凹部155fをブロックレバー用係止部104fに係合させる位置まで第2姿勢方向K62に回動し、阻止用当接面155bと切欠部122aとの係合を解除する。また、復帰用形状記憶合金131は、共通端子132と復帰用端子134との間で伸張し、スライドカム122と非接触となる。さらに、吸引用形状記憶合金130が伸張し、プーリホルダ142が緩衝バネ143に付勢されて元の位置に戻される。
【0137】
よって、電気錠200は、不正加熱がされなくなった後も、通常時と同様に図示しない電子キーのロックやロック解除を行うことができる。
【0138】
以上説明したように、本実施形態の電気錠200では、一対の係止ボール206,206と吸引用形状記憶合金130との間に変位部材(連結ピン129、スライドカム122、ロックプレート205)が介在し、吸引用形状記憶合金130が一対の係止ボール206,206に直結されていない。そのため、吸引用形状記憶合金130が一対の係止ボール206,206に作用する外力によって損傷しにくい。吸引用形状記憶合金130は、共通端子132と吸引用端子133の間で第1~第3可動プーリ135~137に掛止されることで、全長が長くされている。そのため、ロック解除時の消費電力を抑制するために、例えば線径0.2mm以下の細い形状記憶合金を吸引用形状記憶合金130として使用する場合でも、吸引用形状記憶合金130の縮み変形量を大きくできる。このような吸引用形状記憶合金130は、通電によって縮み変形する場合に、カムバネ124に抗して変位部材を第2位置に変位させる張力を発生し、一対の係止ボール206,206をロック位置からロック解除位置に変位させることができる。よって、本実施形態の電気錠200によれば、消費電力を抑制しつつ、ロックを安定して解除することができる。
【0139】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で色々な応用が可能である。上記実施形態の電気錠1,200は、出入口用の扉や可搬ボックスなど、ロッカーやキャビネット以外のものに適用してもよい。
【0140】
一対の電極端子の間に配設されるプーリの数は、上記実施形態に限定されず、1個でも、4個以上でもよい。
【0141】
解除用形状記憶合金31と吸引用形状記憶合金130をケース4,104に固定する位置や方法は、上記実施形態に限定されない。
【0142】
解錠用トーションバネ21は省略してもよい。但し、上記第1実施形態のように解錠用トーションバネ21を設けることで、解除用形状記憶合金31に通電したときにフックレバー11をロック位置からロック解除位置まで素早く回動させることができる。
【0143】
電気錠200のカム122fやストッパ部104cと復帰用形状記憶合金131を省略してもよい。但し、これらを設けることにより、ラッチングとラッチング解除を自動的に行うことができる。また、カム122fとストッパ部104cのカム機構でラッチングを行うことで、コンパクトな構造でラッチング機能を電気錠に付加できる。
【0144】
阻止機構14,114はなくてもよい。但し、これらを設けることで、不正加熱による解錠やロック解除を防止でき、セキュリティが向上する。また、上記実施形態のように、ブロックレバー55,155と阻止用形状記憶合金51,151を用いた阻止機構14,114を備えることにより、コンパクトな構造で、不正加熱によって解錠やロック解除が行われることを回避できる。
【0145】
緩衝バネ27や緩衝機構141は省略してもよい。但し、これらを備えることで、不正加熱時に解除用形状記憶合金31や吸引用形状記憶合金130が過負荷によって損傷することを防止できる。
【0146】
解除用形状記憶合金31と吸引用形状記憶合金130の線径は、0.15mm未満、あるいは、0.2mm超であってもよい。但し、線径が0.15mm以上であることで、解除用形状記憶合金31と吸引用形状記憶合金130が伸縮時に摩耗等で損傷しにくくなる。また、線径が0.2mm以下であることで、解除用形状記憶合金31と吸引用形状記憶合金130に通電して縮み変形させるときの消費電力を抑制できる。
【0147】
例えば、電気錠1,200は、ストライク等の係合部材にデッドボルト等の施解錠部材を係合させることで施解錠を行う電気錠でもよい。この場合、例えば、施解錠装置3のフックレバー11の代わりに、施解錠部材をケーシング6にスライド可能に取り付け、ロッキングレバー22の回動に応じて施解錠部材をロック位置とロック解除位置との間でスライドさせてもよい。
【0148】
フックレバー11は、施解錠装置3の外部に設けられていてもよい。電気錠を施解錠する鍵は、メカニカルなキーであってもよい。
【0149】
操作凸部11cとスライドバー37と施解錠検出回路36を省略し、別機構で施解錠を検出してもよい。
【0150】
施解錠装置3の機構を電気錠の鍵用ロック機構に適用し、フックレバー11で鍵のロックとロック解除を行ってもよい。また、ラッチングアクチュエータユニット103の連結ピン129を施解錠部材に連結させ、連結ピン129のスライドに応じて施解錠を行ってもよい。
【符号の説明】
【0151】
1,200 電気錠
3 施解錠装置(ロック駆動装置の一例)
11 フックレバー(ロック部材の一例)
22 ロッキングレバー(変位部材の一例)
24 施錠用トーションバネ(ロック用付勢部材の一例)
31 解除用形状記憶合金
32 第1電極端子(一対の電極端子の一例)
33 第2電極端子(一対の電極端子の一例)
34 可動プーリ(1又は2以上のプーリの一例)
35 プーリ(1又は2以上のプーリの一例)
103 ラッチングアクチュエータユニット(ロック駆動装置の一例)
122 スライドカム(変位部材の一例)
124 カムバネ(ロック用付勢部材の一例)
129 連結ピン(変位部材の一例)
130 吸引用形状記憶合金(解除用形状記憶合金の一例)
132 共通端子(一対の電極端子の一例)
133 吸引用端子(一対の電極端子の一例)
135~137 第1~第3可動プーリ(1又は2以上のプーリの一例)
206.206 一対の係止ボール(ロック部材の一例)