(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020906
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】手首用サポータ及びサポータ製造装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/08 20060101AFI20220126BHJP
【FI】
A41D13/08 108
A41D13/08 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124155
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】308019874
【氏名又は名称】株式会社TOSCOM
(71)【出願人】
【識別番号】500309964
【氏名又は名称】有限会社サンエスケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 俊
(72)【発明者】
【氏名】坂井 一仁
(72)【発明者】
【氏名】北原 亮
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA06
3B011AA10
3B011AB18
3B011AC17
(57)【要約】
【課題】 手首及び親指の双方に対する相乗的なサポート効果により関節全体を安定に保護するとともに、使用時の快適性及び使用感、更には使い勝手及び利便性を高める。
【解決手段】 手首Hwの少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部2w,及び人体の親指Htの少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部2tを一体に形成してなるサポータ基部2と、このサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により形成するとともに、親指覆部2tから手首覆部2wに至り、親指Htを動かした際に当該親指Htの動きに対して所定の荷重を付与可能な親指荷重付加メンバ部3tを少なくとも有してなる荷重付加パターン部3とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の手首に装着して使用する手首用サポータにおいて、前記手首の少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部,及び人体の親指の少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部を一体に形成してなるサポータ基部と、このサポータ基部の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材の塗布により形成するとともに、前記親指覆部から前記手首覆部に至り、前記親指を動かした際に当該親指の動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能な親指荷重付加メンバ部を少なくとも有してなる荷重付加パターン部とを備えることを特徴とする手首用サポータ。
【請求項2】
前記荷重付加パターン部は、前記サポータ基部の表面に、前記弾性付着材の塗布により形成するとともに、前記手首覆部に位置する前記親指荷重付加メンバ部の左右の端辺部から周方向へそれぞれ所定幅で延設した一対の手首荷重付加メンバ部を有することを特徴とする請求項1記載の手首用サポータ。
【請求項3】
前記手首荷重付加メンバ部は、前記親指荷重付加メンバ部に対して塗布密度を小さく形成することにより、前記手首の動きに対して付与可能な荷重を前記主荷重よりも小さく設定することを特徴とする請求項2記載の手首用サポータ。
【請求項4】
前記手首荷重付加メンバ部は、メッシュ形状部により形成することを特徴とする請求項3記載の手首用サポータ。
【請求項5】
前記弾性付着材には、シリコンゴム素材を用いることを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の手首用サポータ。
【請求項6】
人体の手首の少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部,及び人体の親指の少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部を一体に形成してなるサポータ基部と、このサポータ基部の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材の塗布により形成するとともに、前記親指覆部から前記手首覆部に至り、前記親指を動かした際に当該親指の動きに対して所定の荷重を付与可能な親指荷重付加メンバ部を少なくとも有してなる荷重付加パターン部とを備える手首用サポータを製造するサポータ製造装置であって、筒状に形成したプラテン本体部の外周面の一部にコの字形の切込部を形成することにより軸方向に突出する突起部を形成し、前記外周面上に、前記手首覆部をセッティング可能にするとともに、前記突起部に、前記親指覆部をセッティング可能にしたプラテン部と、このプラテン部に装着した前記サポータ基部の表面に、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材の塗布により前記荷重付加パターン部を形成するスクリーン印刷部とを具備してなることを特徴とするサポータ製造装置。
【請求項7】
前記スクリーン印刷部は、前記弾性付着材としてシリコンゴム素材を塗布する機能を備えることを特徴とする請求項6記載のサポータ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手首に装着して使用する手首用サポータ及び同サポータを製造する際に用いて好適なサポータ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手の指は複数の小骨で形成されるとともに、手首も主根骨,橈骨及び尺骨を含む大小様々な骨により構成され、さらに、これらの骨は多くの筋肉や腱で支えられることにより複雑な動きを可能にしている。また、日常生活やスポーツ時などにおいて、疲労や捻挫が発生し易い部位でもあるため、これらの部位を保護するための手首用サポータも提案されている。
【0003】
従来、この種の手首用サポータとしては、特許文献1で開示されるCM関節用サポータ,特許文献2で開示されるサポータ,及び特許文献3で開示される作業用サポーターが知られている。特許文献1のCM関節用サポータは、サポータを手首に巻回する際、従来のサポータでは引っ張りながら巻回するため、本体がずれ、CM関節部を的確に圧迫固定しながら巻回できない問題の解消を目的としたものであり、具体的には、伸縮性部材からなる略逆T字状を有し、立ち上がった部分に手の親指が挿入できる円筒状部を有する親指キャップを設け、横に平行な部分は、一方が手首に巻回できる部分を有し、その端部に面ファスナーが設けられており、さらに他方は装着する手の親指の他の指で押さえることができる押さえ部分を有し、さらに親指の付け根にあるCM関節を圧迫固定するクッション材を円筒状部の下方斜めに取り付けた手の親指の付け根に設けと構成したものである。
【0004】
また、特許文献2のサポータは、手の親指を内側に曲げることに起因する肩周辺筋の緊張をなくし、身体能力の低下を抑制するサポータの提供を目的としたものであり、具体的には、手の親指を挿通させる親指環と、前記親指環から手の平側に延び、小指球又は手首に掛け回して手の甲側に及ぶ掛け回しフラップと、前記親指環から手の甲側に延びる引っ張りフラップとから構成され、掛け回しフラップの手の甲に及ぶ部分と、前記掛け回しフラップの手の甲に及ぶ部分に重なる引っ張りフラップとにそれぞれ割り当てた面ファスナーにより、掛け回しフラップ及び引っ張りフラップを着脱自在に掛合してなり、面ファスナーは、親指環から伸展及び外転した親指に連続する延長線方向に延びるベルト状であるサポータを構成したものである。
【0005】
さらに、特許文献3の作業用サポーターは、親指の関節における疾患の発生を防止するとともに作業性に優れた作業用手袋の提供を目的としたものであり、具体的には、手の親指の付け根部分から指節間関節を覆う筒状の筒部及び親指の付け根部分から手首までの領域に配される非伸縮性の本体部を有するサポーター本体と、親指の付け根部分を側面側から挟持する挟持部、及び挟持部から連なり挟持部により挟持された親指を掌側に寄せた状態で保持する保持部を有する非伸縮性の保持部材と、親指の人差し指側の付け根部分から母指球を交差して親指の手首側の付け根部分にわたって取り付けられ、親指の関節の過伸展を規制する非伸縮性の規制部材とを設けて構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-69362号公報
【特許文献2】特開2015-34360号公報
【特許文献3】特開2012-57286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した手首の保護を目的とする従来の手首用サポータは、次のような問題点があった。
【0008】
第一に、主に手首等に巻き付けたり面ファスナにより固定するタイプにより構成されるため、装着部位へのバラつきを生じやすい。したがって、サポータの一部に伸縮部位を設けた場合、手首等に付与される荷重の大きさや方向にバラつきを生じやすいなど、サポータ効果が不安定になり、本来のサポータ効果を得にくい難点がある。しかも、全体の形状や構造が必ずしもシンプルとは言えないため、手首等に対する装着(着脱)が面倒であり、使い勝手や利便性に劣るとともに、固定具等を設ける必要があるため、部品点数が多くなる傾向があり、コスト面でも不利になる。
【0009】
第二に、指(親指)と手首の双方に対する相乗的なサポート効果が十分に考慮されていないとともに、手首等へ装着した際のフィット感やダイレクト感に欠けるため、実際の使用時における快適性や使用感に劣る。したがって、例えば、パソコン等のキーボードを操作する際の操作性や工場等における手作業のしやすさ等の観点からは不利となり、操作能率や作業能率を低下させるマイナス要因となる。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した手首用サポータ及びサポータ製造装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る手首用サポータ1は、上述した課題を解決するため、人体の手首Hwに装着して使用するサポータを構成するに際して、手首Hwの少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部2w,及び人体の親指Htの少なくとも一部を覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部2tを一体に形成してなるサポータ基部2と、このサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により形成するとともに、親指覆部2tから手首覆部2wに至り、親指Htを動かした際に当該親指Htの動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能な親指荷重付加メンバ部3tを少なくとも有してなる荷重付加パターン部3とを備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、本発明の好適な態様により、荷重付加パターン部3には、サポータ基部2の表面2fに、弾性付着材Rの塗布により形成するとともに、手首覆部2wに位置する親指荷重付加メンバ部3tの左右の端辺部3tp,3tqから周方向Ffへそれぞれ所定幅Lw,Lwで延設した一対の手首荷重付加メンバ部3wp,3wqを設けることができる。また、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、親指荷重付加メンバ部3tに対して塗布密度を小さく形成することにより、手首Hwの動きに対して付与可能な荷重を、親指荷重付加メンバ部3tによる主荷重よりも小さく設定することができ、一例として、メッシュ形状部Ssにより形成することができる。なお、弾性付着材Rには、シリコンゴム素材Rsを用いることが望ましい。
【0013】
一方、本発明に係るサポータ製造装置Mは、上述した手首用サポータ1を製造する製造装置であって、特に、筒状に形成したプラテン本体部51の外周面51fの一部にコの字形の切込部51sを形成することにより軸方向Fsに突出する突起部52を形成し、外周面51f上に、手首覆部2wをセッティング可能にするとともに、突起部52に、親指覆部2tをセッティング可能にしたプラテン部50と、このプラテン部50に装着したサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs等)の塗布により荷重付加パターン部3を形成するスクリーン印刷部60とを具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような構成を有する本発明に係る手首用サポータ1(サポータ製造装置M)によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0015】
(1) 手首用サポータ1は、弾性伸縮する筒状の手首覆部2wと弾性伸縮する筒状の親指覆部2tを一体に形成したサポータ基部2を備えるため、装着時には、荷重付加パターン部3による親指Ht等に付与される荷重の大きさや方向にバラつきが生じにくく、安定した本来のサポータ効果を得ることができる。特に、手首Hwと親指Htの双方に対する相乗的なサポート効果により、関節全体を安定に保護できるため、日常生活やスポーツ時における複雑な動きによる疲労を効果的に低減できるとともに、捻挫等の関節トラブルを有効に防止できる。
【0016】
(2) 手首等へ装着した際のフィット感やダイレクト感に優れるため、実際の使用時における快適性や使用感にも優れる。したがって、例えば、パソコン等のキーボードを操作する際の操作性や工場等における手作業のしやすさ等に優れ、操作能率や作業能率を飛躍的に高めることができる。加えて、全体の形状や構造がシンプルとなるため、手首Hw等に対する装着(着脱)が容易であり、使い勝手や利便性に優れるとともに、固定具等が不要なため、部品点数が少なく、コスト面でも有利になる。
【0017】
(3) サポータ製造装置Mは、筒状に形成したプラテン本体部51の外周面51fの一部にコの字形の切込部51sを形成することにより軸方向Fsに突出する突起部52を形成し、外周面51f上に、手首覆部2wをセッティング可能にするとともに、突起部52に、親指覆部2tをセッティング可能にしたプラテン部50と、このプラテン部50に装着したサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs等)の塗布により荷重付加パターン部3を形成するスクリーン印刷部60とを具備してなるため、上述した手首用サポータ1の製造に最適であり、品質及び均質性の高い手首用サポータ1を容易かつ確実に製造することができる。
【0018】
(4) 好適な態様により、手首用サポータ1を構成するに際し、荷重付加パターン部3に、サポータ基部2の表面2fに、弾性付着材Rの塗布により形成するとともに、手首覆部2wに位置する親指荷重付加メンバ部3tの左右の端辺部3tp,3tqから周方向Ffへそれぞれ所定幅Lw,Lwで延設した一対の手首荷重付加メンバ部3wp,3wqを設ければ、特に、親指荷重付加メンバ部3tに、長手方向に対する垂直方向の荷重を付与可能になるため、親指荷重付加メンバ部3tの作用を補助することにより同作用を安定化させることができる。
【0019】
(5) 好適な態様により、手首用サポータ1を構成するに際し、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqを、親指荷重付加メンバ部3tに対して塗布密度を小さく形成することにより、手首Hwの動きに対して付与可能な荷重を、親指荷重付加メンバ部3tによる主荷重よりも小さく設定すれば、手首Hwの前後左右の動きを、適度の大きさの荷重により抑制できるため、特に、関節の負担を軽減することができる。
【0020】
(6) 好適な態様により、手首用サポータ1を構成するに際し、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqをメッシュ形状部Ssにより形成すれば、弾性付着材Rの塗布により形成した場合であっても、手首Hw等に付与される荷重の大きさや方向を広い範囲で容易に設定できるため、使用感を含めた、より細かな調整を的確に行うことができる。しかも、ハニカム形状のメッシュも容易に形成できるため、特に、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した荷重を作用させることができる。
【0021】
(7) 好適な態様により、手首用サポータ1を構成するに際し、弾性付着材Rに、シリコンゴム素材Rsを用いれば、汎用的な素材の利用により低コストに実施できるとともに、シリコンゴム素材Rsの物性により、前述した本発明に係る作用効果を十分に発揮できる良好な荷重付加パターン部3を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る手首用サポータの一部抽出拡大図を含む使用状態を示す外観斜視図、
【
図8】本発明の好適実施形態に係るサポータ製造装置の一部を構成するプラテン部を示す平面図、
【
図9】同プラテン部にサポータ基部を装着する方法を説明するための一部断面を含む側面図、
【
図10】同プラテン部にサポータ基部を装着した状態の一部を拡大して示す断面側面図、
【
図11】同サポータ製造装置の一部を構成するスクリーン印刷部によりプラテン部にセッティングしたサポータ基部に弾性付着材を塗布する工程を示す断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る手首用サポータ1の構成について、
図1-
図7を参照して説明する。
【0025】
手首用サポータ1は、
図1に示すように、人体の手首Hwに装着して使用するものであり、手首Hwを覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部2w及び親指Htを覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部2tを一体に形成したサポータ基部2を備える。この場合、サポータ基部2の全体形状は、
図2等に示すように、筒状に形成した手首覆部2wの軸方向Fsにおける中間部位から小径となる筒状に形成した親指覆部2tを分岐させた形状を有しており、形成に際しては、全体を連続形成してよいし、分割した部品として形成した複数の部位を組合わせて形成してもよい。例示のサポータ基部2は、分割した二つの部位を繋ぎ合わせることにより形成した。
【0026】
サポータ基部2は、ポリウレタン,ポリエステル,ナイロン,アクリル等の化学繊維、及び絹,木綿等の天然繊維の、一又は二以上の繊維素材を用いて弾性伸縮可能に縫製したものである。また、2wsは手首覆部2wの先端側(指側)の開口部に設けたズレ防止用に縫製した口ゴム部、2tsは親指覆部2tの先端側の開口部に設けたズレ防止用に縫製した口ゴム部、2wbは手首覆部2wの後端側(腕側)の開口部に設けたバンド状に縫製したズレ防止用の口ゴム部をそれぞれ示す。なお、標準サイズのサポータ基部2は、手首覆部2wの全長が120mm程度であり、手首Hwへの装着時には、
図1に示すように、手首覆部2wの口ゴム部2wsが手の甲の先端付近に位置するとともに、親指覆部2tの口ゴム部2tsは親指Htの爪付近に位置する。この場合、サポータ基部2は、手首用サポータ1のいわばニュートラルゾーンとして機能するため、親指Htや手首Hwを無用に締め付けることがなく、手(指)全体の動き(可動域)の筋肉や関節の機能を邪魔することがないように考慮することが望ましい。
【0027】
一方、サポータ基部2の表面2fには、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材Rの塗布により形成する荷重付加パターン部3を設ける。荷重付加パターン部3は、親指荷重付加メンバ部3tと一対の手首荷重付加メンバ部3wp,3wqを備える。なお、図面において、親指荷重付加メンバ部3tは、細かい(小さい)メッシュ形状により表し、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、粗い(大きい)メッシュ形状により表している。また、弾性付着材Rには、例示の場合、シリコンゴム素材Rsを用いた。このように、弾性付着材Rに、シリコンゴム素材Rsを用いれば、汎用的な素材の利用により低コストに実施できるとともに、シリコンゴム素材Rsの物性により、前述した本発明に係る作用効果を十分に発揮できる良好な荷重付加パターン部3を形成できる利点がある。
【0028】
親指荷重付加メンバ部3tは、
図1及び
図2に示すように、親指覆部2tから手首覆部2wに至り、親指Htを動かした際に当該親指Htの動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能な機能を備える。親指荷重付加メンバ部3tは、相対的に強い着圧領域を構成するため、領域全体をいわゆるベタ塗り部Smにより形成することが望ましい。
【0029】
このように形成される親指荷重付加メンバ部3tは、
図1に示すように、装着時において、親指Htの外側面を覆うように位置するとともに、さらに、この親指Htの外側面に沿って手首Hwの横側面を覆う位置に至る。この結果、
図7に示すように、親指Htの外側面から手首Hwの横側面に至るリニア状の主ラインKmとなる荷重付加プレートとして機能することなり、親指Htを動かした際には、当該親指Htの動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能になる。特に、主ラインKmは、親指Htの外側面に位置するため、主ラインKmにより親指Htを締め付けることはなく、親指Htの外側を強力にサポートすることができる。
【0030】
また、各手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、
図3-
図5に示すように、手首覆部2wに位置する親指荷重付加メンバ部3tの左右の端辺部3tp,3tqから周方向Ffへそれぞれ所定幅Lw,Lw(
図3参照)で延設させて形成する。なお、
図4及び
図5は、手首用サポータ1を偏平に畳んだ(潰した)状態であり、
図4は親指覆部2tが中央に位置する平面図を示し、
図5は底面図を示す。したがって、
図4に現れる手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、
図5に現れる手首荷重付加メンバ部3wp,3wqにそれぞれ連続する単一の連続パターンとして形成される(
図3参照)。
【0031】
なお、一対の手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、親指荷重付加メンバ部3tに対して対称形に形成してもよいし非対称形に形成してもよい。この場合、対称形に形成すれば、基本的に左右共用として利用できるとともに、非対称形に形成すれば、手の平と手の甲のそれぞれにマッチングさせた最適な着圧力(荷重)を設定できる。例示の実施形態は、対称形に形成した。
【0032】
さらに、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、親指荷重付加メンバ部3tに対して塗布密度を小さく形成することにより、手首Hwの動きに対して付与可能な荷重を、親指荷重付加メンバ部3tによる主荷重よりも小さく設定する。このように設定すれば、手首Hwの前後左右の動きを、適度の大きさの荷重により抑制できるため、特に、関節の負担を軽減することができる。
【0033】
このため、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、
図1に示すように、メッシュ形状部Ss、具体的には、ハニカム形状を用いたメッシュ形状部Ssにより形成することが望ましい。このように、各手首荷重付加メンバ部3wp,3wqをメッシュ形状部Ssにより形成すれば、弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs)の塗布により形成した場合であっても、手首Hw等に付与される荷重の大きさや方向を広い範囲で容易に設定できるため、使用感を含めた、より細かな調整を的確に行うことができる。しかも、ハニカム形状のメッシュも容易に形成できるため、特に、3次元方向(X方向,Y方向及びZ方向)に対して的確かつ安定した荷重を作用させることができる。
【0034】
このように形成される手首荷重付加メンバ部3wp,3wqは、手首覆部2wに位置する親指荷重付加メンバ部3tの左右の端辺部3tp,3tqから周方向Ffへそれぞれ所定幅Lw,Lwで延設するため、
図3に示すように、手首HwをC形に握るように位置する。この結果、親指荷重付加メンバ部3tの手首Hwの部位,一対の手首荷重付加メンバ部3wp,3wq及び手首覆部2wは、
図7に示すように、周方向Ffに組合わさり、手首Hwをリング状に覆う補助ラインKs、即ち、親指荷重付加メンバ部3tに対して周方向から作用する荷重付加プレートとして機能するため、手首Hwの前後左右の動きを抑制し、関節の負担を軽減することができる。これにより、特に、親指荷重付加メンバ部3tに、長手方向に対する垂直方向の荷重を付与可能になるため、親指荷重付加メンバ部3tの作用を補助することにより同作用を安定化させることができる。
【0035】
なお、荷重付加パターン部3を設けるに際し、メッシュ形状部Ssとベタ塗り部Smを組合わせることにより塗布密度を異ならせれば、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqと親指荷重付加メンバ部3tの双方の層厚を同一に設定できるため、荷重付加パターン部3の全領域にわたって表面の平坦性を確保できるとともに、目的とする所定の荷重を容易に設定できる。
【0036】
よって、このような本実施形態に係る手首用サポータ1によれば、基本構成として、手首Hwを覆う弾性伸縮する筒状の手首覆部2w,及び人体の親指Htを覆う弾性伸縮する筒状の親指覆部2tを一体に形成してなるサポータ基部2と、このサポータ基部2の表面2fに、シリコンゴム素材Rsの塗布により形成するとともに、親指覆部2tから手首覆部2wに至り、親指Htを動かした際に当該親指Htの動きに対して所定の荷重(主荷重)を付与可能な親指荷重付加メンバ部3tを少なくとも有してなる荷重付加パターン部3とを備えるため、装着時には、荷重付加パターン部3による親指Ht等に付与される荷重の大きさや方向にバラつきが生じにくく、安定した本来のサポータ効果を得ることができる。特に、手首Hwと親指Htの双方に対する相乗的なサポート効果により、関節全体を安定に保護できるため、日常生活やスポーツ時における複雑な動きによる疲労を効果的に低減できるとともに、捻挫等の関節トラブルを有効に防止できる。
【0037】
また、手首等へ装着した際のフィット感やダイレクト感に優れるため、実際の使用時における快適性や使用感にも優れる。したがって、例えば、パソコン等のキーボードを操作する際の操作性や工場等における手作業のしやすさ等に優れ、操作能率や作業能率を飛躍的に高めることができる。加えて、全体の形状や構造がシンプルとなるため、手首Hw等に対する装着(着脱)が容易であり、使い勝手や利便性に優れるとともに、固定具等が不要なため、部品点数が少なく、コスト面でも有利になる。
【0038】
次に、このような構成を有する手首用サポータ1の製造に用いて好適なサポータ製造装置Mの構成について、
図8-
図11を参照して説明する。
【0039】
サポータ製造装置Mは、大別して、
図8及び
図9に示すプラテン部50と
図11に示すスクリーン印刷部60を備えて構成する。プラテン部50は、全体を硬質合成樹脂素材等により筒状に形成したプラテン本体部51を備える。例示の場合、プラテン本体部51の外径は80mm程度に選定した。また、
図8に示すように、プラテン本体部51における軸方向Fsの中間位置における外周面51fの一部にコの字形の切込部51sを設けることにより、軸方向Fsに突出する突起部52を形成する。これにより、
図10に示すように、プラテン部50に対してサポータ基部2をセッティングすることができる。即ち、プラテン本体部51の外周面51f上に、手首覆部2wをセッティングすることができるとともに、同時に、突起部52に、親指覆部2tをセッティングすることができる。
【0040】
なお、プラテン本体部51の一端面の中心位置には、取付部51cを一体に備えており、この取付部51cは、
図8に示すように、仮想線で示した回転駆動部55の回転出力軸55cに取付けて使用することができる。また、回転駆動部55は不図示のコントローラに接続されることにより駆動制御される。
【0041】
一方、スクリーン印刷部60は、プラテン部50に装着したサポータ基部2の表面2fに、弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs等)の塗布により荷重付加パターン部3を形成する機能を備える。この場合、スクリーン印刷部60には、円筒形の曲面に印刷可能な曲面印刷用スクリーン印刷ユニットを使用する。これにより、上述したプラテン部50にセッティングしたサポータ基部2の表面2fに対して、弾性付着材Rを印刷(塗布)することができる。したがって、スクリーン印刷部60は、前述した荷重付加パターン部3を印刷する版形成されたスクリーン61を備える。なお、
図11において、62はスクリーン印刷部60のスキージ、Rsは固化前の粘性を有するスクリーン61上のシリコンゴム素材を示す。
【0042】
次に、このようなサポータ製造装置Mを用いた手首用サポータ1の製造方法について、
図8-
図11を参照して説明する。
【0043】
最初に、別途の縫製工程によりサポータ基部2の製作を行う。そして、製作したサポータ基部2は、セッティング工程によりプラテン部50に対してセッティングを行う。この場合、口ゴム部2wbを引張ることにより大径化するように拡げ、
図9に示す矢印Fa方向に従ってプラテン本体部51の外周面51f上における定位置(印刷位置)に装着する。これにより、サポータ基部2は外周面51f上にセッティングされる。即ち、この状態では、
図10及び
図11に示すように、プラテン本体部51の外周面51fを覆うように手首覆部2wが弾性圧接するとともに、親指覆部2tに突起部52が圧入して親指覆部2tが突起部52を覆うように弾性圧接する。
【0044】
次いで、
図11に示すように、印刷工程(塗布工程)において、スクリーン印刷部60を用いて荷重付加パターン部3の印刷を行う。この場合、プラテン部50上のサポータ基部2の印刷開始位置に、荷重付加パターン部3が版形成されたスクリーン61の印刷開始位置を当接させ、この後、プラテン部50を回転させるとともに、スクリーン61を当該回転に同期させて移動させる。これにより、スクリーン61上のシリコンゴム素材Rsは、スクリーン61上に当接させたスキージ62により刷り込まれ、サポータ基部2の表面2f上に、シリコンゴム素材Rsによる荷重付加パターン部3が形成(塗布)される。したがって、得られる荷重付加パターン部3の厚さ(層厚)Ld(
図6参照)はいずれの部位においても一定となる。
【0045】
そして、印刷工程が終了したなら、塗布されたサポータ基部2をプラテン部50に装着したまま、荷重付加パターン部3に対する乾燥処理を行う。この場合、乾燥処理は、自然乾燥処理であってもよいし、加熱による強制乾燥処理であってもよい。また、自然乾燥処理と強制乾燥処理を組み合わせた段階的な乾燥処理であってもよい。乾燥処理によりシリコンゴム素材Rsが硬化したなら、プラテン部50からサポータ基部2を離脱させる。これにより目的とする手首用サポータ1を得ることができる。
【0046】
このように、本実施形態に係るサポータ製造装置Mによれば、筒状に形成したプラテン本体部51の外周面51fの一部にコの字形の切込部51sを形成することにより軸方向Fsに突出する突起部52を形成し、外周面51f上に、手首覆部2wをセッティング可能にするとともに、突起部52に、親指覆部2tをセッティング可能にしたプラテン部50と、このプラテン部50に装着したサポータ基部2の表面2fに、ゴム素材又は弾性樹脂素材を用いた弾性付着材R(シリコンゴム素材Rs等)の塗布により荷重付加パターン部3を形成するスクリーン印刷部60とを具備してなるため、上述した手首用サポータ1の製造に最適であり、品質及び均質性の高い手首用サポータ1を容易かつ確実に製造することができる。
【0047】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0048】
例えば、弾性付着材Rとしてシリコンゴム素材Rsを例示したが、同様の機能を有する各種ゴム素材或いは各種弾性樹脂素材を利用することができるとともに、塗布密度を異ならせるに際しては、厚さ(層厚)を変えるなどの他の手法により塗布密度を異ならせる場合を排除するものではない。また、親指覆部2tを形成するに際しては、親指Htの一部を覆う形態であってもよいし全部を覆う形態であってもよい。一方、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqを設けることが望ましいが必須の構成要件となるものではない。さらに、手首荷重付加メンバ部3wp,3wqのメッシュ形状部Ssの形状は、例示したハニカム形状が望ましいが、各種多角形などの他の形状により形成する場合を排除するものではない。また、本発明における荷重とは、荷重付加パターン部3を形成する形成面に対して面方向の荷重のみならず面垂直方向の荷重(着圧)を含むとともに、面方向の荷重は特定の面方向に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る手首用サポータは、手首に装着して使用するサポータとして利用できるとともに、本発明に係るサポータ製造装置は、この手首用サポータの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1:手首用サポータ,2:サポータ基部,2w:手首覆部,2t:親指覆部,2f:サポータ基部の表面,3:荷重付加パターン部,3t:親指荷重付加メンバ部,3tp:荷重付加メンバ部の端辺部,3tq:荷重付加メンバ部の端辺部,3wp:手首荷重付加メンバ部,3wq:手首荷重付加メンバ部,50:プラテン部,51:プラテン本体部,51f:プラテン本体部の外周面,51s:切込部,52:突起部,60:スクリーン印刷部,M:サポータ製造装置,Hw:人体の手首,Ht:人体の親指,R:弾性付着材,Rs:シリコンゴム素材,Ff:周方向,Fs:軸方向,Lw:所定幅,Ss:メッシュ形状部