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特開2022-20920自律走行式作業装置及び自律走行作業システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020920
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】自律走行式作業装置及び自律走行作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220126BHJP
   A01D 34/86 20060101ALI20220126BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220126BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01D34/86
A01B69/00 303M
G05D1/02 H
G05D1/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124180
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】520271300
【氏名又は名称】K-robot株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】緒方 正典
【テーマコード(参考)】
2B043
2B083
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA09
2B043BB11
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA32
2B043EB05
2B043EC02
2B043EC14
2B043EC16
2B083HA59
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC08
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301GG06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG16
(57)【要約】
【課題】走行路面が傾斜地形を有する場合や段差がある場合であっても、転倒を回避し自走させることが可能な自律走行式作業装置を備えた自律走行作業システムを提供する。
【解決手段】自律走行作業システム1は、GPS衛星10と、GPS衛星10からのGPS電波をGPSアンテナを介し受信する固定局20と、GPS衛星10からのGPS電波信号をGPS受信機にて受信し、自律走行する自律走行式作業装置30と、を主要部として構成される。自律走行式作業装置30は、二台の草刈車両31a,31bが棒状の連結部材32を介して並列に連結されて構成され、連結部材32には衝撃を吸収する緩衝手段が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な二台以上の作業車両と、前記二台以上の作業車両を連結する連結部材と、を備えることを特徴とする自律走行式作業装置。
【請求項2】
前記連結部材が緩衝手段を有する請求項1に記載の自律走行式作業装置。
【請求項3】
前記連結部材が、前記二台以上の作業車両に着脱自在に係合可能である請求項1または2に記載の自律走行式作業装置。
【請求項4】
並列に連結された二台の作業車両からなる請求項1から3のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
【請求項5】
作業車両が三台以上であり、並列に連結された二台以上の作業車両を含む請求項1から3のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
【請求項6】
前記作業車両が、走行機体と草刈装置とを備える作業車両である請求項1から5のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
【請求項7】
前記作業車両の少なくとも一台が、外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両である請求項1から6のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
【請求項8】
前記外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両が、衛星測位システムを利用して自律走行する作業車両である請求項7に記載の自律走行式作業装置。
【請求項9】
前記衛星測位システムを利用して自律走行する作業車両が、RTK-GPS機能に基づいて現在位置を検出するGPS装置を備え、RTK測位をしながら自律走行する作業車両である請求項8に記載の自律走行式作業装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の自律走行式作業装置と、前記自律走行式作業装置を制御する制御手段とを備える自律走行作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行して作業を行う自律走行式作業装置及びこれを運用する作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者が乗車せずに無人で走行する自律走行によって各種作業を行う作業車両が提案されている。自律走行の方法としては、物理的な接触センサや光学センサなどセンサ類を用いるものや、撮像装置によって撮像した画像を用いるもの、GPS衛星からのGPS電波信号を利用するものなどが挙げられる。
【0003】
このような自律走行式作業装置として、自律的に走行して草刈を行う自律走行式草刈機が各種提案されている。例えば、GPS電波信号を利用する自律走行式草刈機として、特許文献1には、GPS衛星からのGPS電波信号を利用して自律走行する電動ローンモアを用いた自律走行作業システムの一例が開示されている。このシステムでは、基地局と電動ローンモアとの間で無線通信を行いながら自律走行にて芝刈りを行うことができる。
また、特許文献2には、位置検出手段を含む各種センサを有し、無線通信により演算ユニット及び走行制御ユニットを介して走行車両を遠隔操作するための無線通信手段を備えた芝刈り状況監視機能を有する自動芝刈り機が開示されている。
【0004】
また、自律走行式作業装置は、走行地形が傾斜している場合や段差がある場合には転倒が起こることがあり、使用用途(典型的には草刈り用途)によってはこれを回避することが課題となっていた。
この課題に対し、転倒防止機構を備えた自律制御型作業装置も開発されている。例えば、特許文献3には、当該草刈機は、転倒の危険性が増加する斜面での走行において、傾斜角センサの検知情報に基づき、斜面を登っているときにトラバース走行に移行した場合は、走行方向を斜面上側へ変更して転倒を回避し、斜面を下っているときにトラバース走行に移行した場合は、走行方向を斜面下側へ変更して転倒を回避するように操舵を実施するように構成された自律制御型草刈機が報告されている。また、特許文献4には少なくとも位置検出手段を含む各種センサとモータ制御の駆動輪とを有し、学習機能を担う制御ユニットを備え、制御ユニットは、センサの情報を基に駆動輪を制御して目標地点に移動させるためのドラム制御部と、走行路面の傾斜に応じて車軸を動かし車体の平衡を保つ車体平衡部と、走行路面に沿ってカッティングユニットを追従させて芝刈りを行うカッティング部と、センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び該演算に対応する処理を行う演算処理部と、を有する自律走行型の自動芝刈り機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-25872号公報
【特許文献2】特開2012-235712号公報
【特許文献3】特開2020-25495号公報
【特許文献4】特開2012-105557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2の従来の自律走行式草刈機は、主に平坦なゴルフ場等の芝刈りを想定しており、走行路面が傾斜地形を有する場合や段差がある場合等には転倒するリスクがあった。また、特許文献3,4の自律制御型草刈機は、転倒防止機構を備えるが、一台の装置に転倒防止機構を搭載する構成であるため、実際の転倒防止効果には限界があった。
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、走行路面が傾斜地形を有する場合や段差がある場合であっても、転倒を回避し自走させることが可能な自律走行式作業装置及びこれを備えた自律走行作業システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、以下の自律走行式作業装置に係るものである。
<1> 自律走行可能な二台以上の作業車両と、前記二台以上の作業車両を連結する連結部材と、を備える自律走行式作業装置。
<2> 前記連結部材が緩衝手段を有する<1>に記載の自律走行式作業装置。
<3> 前記連結部材が、前記二台以上の作業車両に着脱自在に係合可能である<1>または<2>に記載の自律走行式作業装置。
<4> 並列に連結された二台の作業車両からなる<1>から<3>のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
<5> 作業車両が三台以上であり、並列に連結された二台以上の作業車両を含む<1>から<3>のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
<6> 前記作業車両が、走行機体と草刈装置とを備える作業車両である<1>から<5>のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
【0010】
また、本発明は、以下の自律走行式作業装置に係るものである。
<7> 前記作業車両の少なくとも一台が、外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両である<1>から<6>のいずれかに記載の自律走行式作業装置。
<8> 前記外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両が、衛星測位システムを利用して自律走行する作業車両である<7>に記載の自律走行式作業装置。
<9> 前記外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両が、RTK-GPS機能に基づいて現在位置を検出するGPS装置を備え、RTK測位をしながら自律走行する作業車両である<8>に記載の自律走行式作業装置。
【0011】
すなわち、本発明の自律走行式作業装置は、自律走行可能な二台以上の作業車両と、前記二台以上の作業車両を連結する連結部材と、を備えることを特徴とする。
このような構成であれば、二台以上の作業車両が連結部材によって連結されるため、作業車両が一台である場合と比較して、作業場の形状に由来して発生する車両揺れを吸収することができ、起伏、傾斜、段差等を有し平坦でない作業場であっても作業車両が安定して走行でき、転倒が生じづらくなる。
【0012】
本明細書において、「自律走行」とは人間が運転操作を行わなくとも自律制御して走行することをいう。自律走行の方法としては、物理的な接触センサや光学センサなどセンサ類を用いるものや、撮像装置によって撮像した画像を用いるもの、衛星測位システムを利用するもの等の公知の自律走行方法及びこれらの組み合わせを含む。
【0013】
本明細書において、「作業車両」とは、走行機体と作業機とを備え、走行しながら作業を行うことが可能な車両をいう。作業車両として、作業機が草刈装置である作業車両(以下、「草刈車両」と称す場合がある)、作業機が掃除機である作業車両、物流倉庫等で使用される自律走行式の運搬台車、等が挙げられる。
【0014】
本発明の自律走行式作業装置の好適な構成の一つは、前記作業車両が、走行機体と草刈装置とを備える作業車両である構成である。このような構成であれば、自律走行式草刈機とすることができ、土手などの起伏や傾斜のある地形や、段差を有する地形であっても転倒を回避して草刈りができるため好適である。
【0015】
「連結部材」は、作業車両を連結する部材であり、作業車両同士は連結部材によって所定の間隔をおいて連結される。連結部材として典型的には棒状の連結部材が挙げられるが、その他の形状(例えば、板状)の連結部材を使用してもよい。
【0016】
本発明の自律走行式作業装置において、前記連結部材が緩衝手段を有することが好ましい。連結部材が緩衝手段を有していると、起伏や段差等を有する作業場(地面)で走行中の場合等において、自律走行式作業装置を構成するそれぞれの作業車両が作業場(地面)の形状に追従して走行でき、起伏や段差等に起因する振動が軽減されるため、自律走行式作業装置の走行が安定する。緩衝手段は、例えば、衝撃を関節機構やユニバーサルジョイント等を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の自律走行式作業装置において、前記連結部材が、前記二台以上の作業車両に着脱自在に係合可能であることが好ましい。このような構成であれば、二台以上の作業車両を任意の配列にすることができる。
【0018】
本発明の自律走行式作業装置の好適な構成の一例は、並列に連結された二台の作業車両からなる構成である。
【0019】
また、本発明の自律走行式作業装置の好適な構成の一例は、並列に連結された二台以上の作業車両を含む構成である。
【0020】
また、本発明の自律走行式作業装置は、前記作業車両の少なくとも一台が、外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両であることが好ましい。また、外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両には、自律走行の補完用操作機能(例えば、ラジコン操作機能)を搭載していることが好ましい。
【0021】
前記外部機器と無線通信しながら自律走行する作業車両が、衛星測位システムを利用して自律走行する作業車両であることがより好ましい。このような作業車両であると、後述する自律走行作業システムによって、衛星測位システムを利用した位置情報に基づいた作業が可能となる。
「衛星測位システム」とは、人工衛星から発射される信号を用いて位置測定・航法・時刻配信を行うシステムをいう。衛星測位システムは、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例である周知のGPS(Global Positioning System)の他、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等であってもよい。
【0022】
衛星測位システムの中でも、cm級の高精度衛星測位システムを使用することが好ましい。このような高精度衛星測位システムとして、RTK-GPS方式や、みちびきの測位補強サービス方式が挙げられる。精度及びコスト面ではRTK-GPS方式が好ましい。
【0023】
高精度衛星測位システムを使用した好適例は、前記衛星測位システムを利用して自律走行する作業車両が、RTK-GPS機能に基づいて現在位置を検出するGPS装置を備え、RTK測位をしながら自律走行する作業車両である自律走行式作業装置である。このような自律走行式作業装置では、GPS衛星からのGPS電波を受信し、RTK測位に取得される情報に基づいて自律走行式作業装置(GPS装置を備えた作業車両)の現在位置を演算して測位しながら走行させることができるので、より正確な自律走行が可能となる。
【0024】
また、本発明は、以下の自律走行作業システム及びこれを使用した作業方法に係るものである。
<1A> <7>から<9>のいずれかに記載の自律走行式作業装置と、前記自律走行式作業装置を制御する制御手段とを備える自律走行作業システム。
<2A> <1A>に記載の自律走行作業システムを使用した作業方法であって、
前記自律走行式作業装置における作業車両が、指定された作業対象範囲を塗りつぶす方法で自律走行することで目的とする作業を行う作業方法。
<3A> 目的とする作業が草刈である<2A>に記載の作業方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、走行路面が傾斜地形を有する場合や段差がある場合であっても、転倒を回避し自走させることが可能な自律走行式作業装置及びこれを備えた自律走行作業システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る自律走行作業システムの概念説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る自律走行式作業装置の模式図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る自律走行式作業装置の走行時の様子を示す正面図であり、(a)は凸状地面、(b)凹状地面を走行している様子である。
図4】本発明の他の実施形態に係る自律走行式作業装置の模式図(平面図)である。
図5】本発明の他の実施形態に係る自律走行式作業装置の模式図(平面図)である。
図6】本発明の他の実施形態に係る自律走行式作業装置の模式図(平面図)である。
図7】本発明の他の実施形態に係る自律走行式作業装置の模式図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、本発明の自律走行式作業装置の一例として、当該自律走行式作業装置における作業車両が、走行機体と草刈装置とを備える作業車両(以下、「草刈車両」)であって、GPS衛星からのGPS電波信号を利用し、RTK-GPS方式による位置情報に基づいて自律走行する例で説明を行うが、本発明は、本実施形態に示すこの態様に限定されない。
【0028】
[本発明の実施形態1]
図1は本発明の実施形態に係る自律走行作業システム1の概念説明図である。
自律走行作業システム1は、GPS衛星10と、GPS衛星10からのGPS電波をGPSアンテナを介し受信する固定局20と、GPS衛星10からのGPS電波信号をGPS受信機にて受信し、自律走行する自律走行式作業装置30と、を主要部として構成される。なお、図1におけるGPS衛星10、固定局20及び自律走行式作業装置30の数は例示であり、図示した数に限定されない。
【0029】
本実施形態の自律走行式作業装置30は、指定領域内を自律走行可能な草刈機であり、二台の草刈車両31a,31bと、これらを連結する棒状の連結部材32を主要部として構成される。草刈車両31aにはRTK-GPSに基づいて現在位置を検出するGPS装置が搭載され、マイクロコンピュータとセンサにより自律制御されている。自律走行式作業装置30の詳細な構成は後述する。
【0030】
本実施形態の自律走行作業システム1では、GPS装置を備えた作業車両(草刈車両31a)を有する自律走行式作業装置30と共に、固定局20を設置し、使用前に静止測位を行い、その後、固定局20から作業車両(草刈車両31a)に無線送信する位置補正データを用い作業車両(草刈車両31a)の位置をリアルタイムに測位する方式を採用しており、この方式を用いれば、cmオーダーの測位精度がリアルタイムで求められる。
【0031】
自律走行式作業装置30を構成する草刈車両31a,31bはそれぞれ走行機体と草刈装置(図示せず)とを備え、走行しながら草刈りを行う車両である。走行機体及び草刈装置については後述する。
【0032】
草刈車両31aはマスター機であり、GPS衛星10からのGPS電波を受けるGPSアンテナA1を介しGPS電波が入力されるGPS受信機等を有するGPS装置が搭載されている。草刈車両31aはGPS衛星10からのGPS電波と、固定局20からの電波を受け、自動運転する電波航法装置(GPS装置)及び自律走行に必要なセンサ装置を備え自立走行用型となっており、GPS衛星10からの位置情報等を基にRTK測位し、リアルタイムでのcmオーダーの測位精度で走行することができる。
【0033】
GPS装置は、電波航法装置とも呼ばれ、この装置は、GPSアンテナA1やGPS受信機等を包有してなり、GPS衛星10からのGPS電波を受信し、作業車両(本実施形態では草刈車両31a)の現在位置を演算して測位し、電波航法による無人運転を行う装置である。
【0034】
本実施形態の草刈車両31aでは、搭載しているGPS装置は1周波方式であるが、2周波方式、3周波以上を利用する多周波方式であってもよい。なお、GPS衛星10は、周波数の異なるL1波(1575.42MHZ)とL2波(1227.60MHZ)を発信しており、L1波のみを受信するものを1周波方式という。
【0035】
草刈車両31aは、固定局20に設けられた無線通信アンテナB1から発せられる無線通信を受ける無線通信アンテナA2を有し、GPS衛星10からの位置情報等を基にRTK測位しながら走行する。
【0036】
また、固定局20には、作業車両(草刈車両31a)への補正データ送信に使用される無線通信アンテナB1の他に、GPS電波受信用のGPSアンテナB2が設けられており、GPS衛星10からのGPS電波をアンテナB2で受信し、固定局が位置する正確な緯度,経度と補正用のデータを送信し、アンテナB1で受信した作業車両(草刈車両31a)が自己の位置情報を補正する。
【0037】
また、草刈車両31aの走行機体には、GPS装置を使用した自律走行の補完としてセンサ、カメラを搭載してもよい。また、自律走行が適さない、作業場所の移動時等のためにラジコン機能を搭載してもよい。
【0038】
草刈車両31bは、マスター機である草刈車両31aと連結部材32を介して連結し、草刈車両31aからの無線信号で動作するスレーブ機であり、GPS装置を搭載せずに、草刈車両31aからの無線信号を受信し動作する機能を有する以外は草刈車両31aと同一の構成であり、草刈車両31aからの無線信号によって草刈車両31aに追従・並走させている。
【0039】
なお、本実施形態では、草刈車両31bは、GPS装置を搭載していないが、草刈車両31aと同一の構成とし、草刈車両31a,31bそれぞれがマスター機/スレーブ機として機能するようにしてもよい。
また、本実施形態では草刈車両31aからの無線信号によって草刈車両31aに追従・並走させる構成であるが、草刈車両31bは草刈車両31aから有線信号で動作する機能を有する構成にしてもよいし、草刈車両31b(スレーブ機)に通信機能を設けず、連結部材32のみによって草刈車両31aに追従・並走させる構成とすることもできる。
【0040】
本実施形態の自律走行作業システム1の作業対象範囲は、GPS衛星10、固定局20及び自律走行式作業装置30それぞれの性能(GPS衛星10の数や固定局20の位置、自律走行式作業装置30の性能及び台数、搭載されたGPS装置の性能等)にもよるが、例えば、10km×10km程度の広域エリアとすることが可能である。
【0041】
本実施形態の自律走行作業システム1による作業方法(自律走行式作業装置30の運用方法)は、作業対象範囲の草刈を行うことができるのであれば制限はないが、典型的には、自律走行式作業装置30の草刈車両31aが、RTK-GPS方式による位置情報に基づいて、指定された作業対象範囲を塗りつぶす方法で自律走行することで、作業対象範囲の草刈を行う方法である。
【0042】
本実施形態の自律走行作業システム1では、例えば、作業対象範囲は地図情報webサービスから取得、生成することができる。また、上述の通り、自律走行作業システム1では、RTK-GPS測位を利用し、cmオーダーの測位精度がリアルタイムで求められるため、自律走行式作業装置30の作業計画は緯度・経度で表現されweb上で管理可能であり、精密な草刈作業が実施可能である。
【0043】
以下、本発明に係る自律走行式作業装置30の構成について詳細に説明する。
【0044】
図2に本実施形態に係る自律走行式作業装置30の模式図を示す((a)斜視図、(b)平面図)。なお、図2において、草刈車両31aのGPSアンテナA1及び無線アンテナA2は図示を省略する。
【0045】
図2に示すように本実施形態の自律走行式作業装置30は、二台の草刈車両31a,31bは、所定間隔に配置され、棒状の連結部材32を介して並列に連結されている。
【0046】
本実施形態の草刈車両31a,31bにおける走行機体は、エンジンや電動モータ等の駆動手段、タイヤなどの走行手段を有する従来公知の草刈車両で使用される走行機体と同様の構成のものを適宜選択することができる。なお、草刈車両31a,31bにおける走行機体は、本発明の目的を損なわない限り、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、本実施形態では同一の走行機体を使用している。
【0047】
本実施形態の草刈車両31a,31bにおける走行機体の大きさは、60cm(縦)×50cm(横)×40cm(高さ)であるが、これ以外の走行機体を使用することもできる。
【0048】
また、走行機体に搭載する草刈装置は、草刈用の刈刃を有し、走行路面の追従機構を備え、走行機体に搭載可能な従来公知の草刈装置を走行機体の種類・大きさ等に応じて適宜選択している。本実施形態では同一の走行機体を使用している。
【0049】
また、草刈車両31aの走行機体には、GPS装置及び草刈装置の他にも自律走行に必要な装置(及び任意の装置)が搭載されている。例えば、3Dジャイロセンサ、操作・設定用のタッチパネル、演算部を含む制御ユニット、障害物認識用の全方位カメラ、赤外線レーザー式障害物センサ、モータ制御の駆動輪及び方向舵などが挙げられる。
【0050】
また、草刈車両31bの走行機体には、上記草刈車両31aと同様の自律走行に必要な装置(及び任意の装置)を搭載することができる。
【0051】
なお、草刈車両31aと草刈車両31bは、連結して自律走行できる限り、同様の構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。
【0052】
連結部材32は、剛性のある棒状体であり、所定間隔に配置された草刈車両31aと草刈車両31bとを連結するため、草刈車両が一台である場合と比較して、作業場(地面)の形状に由来して発生する車両揺れを吸収することができ、土手などの起伏や傾斜のある作業場(地形)や段差を有する作業場(地形)であっても自律走行式作業装置30(草刈車両31a,31b)が安定して自律走行して草刈作業でき、車両の転倒が生じづらくなる。
【0053】
本実施形態における草刈車両31a及び草刈車両31bのそれぞれ走行機体には連結部材32を着脱自在に係合可能な取付具が設けられている。本実施形態では、図示しないが、草刈車両31a及び草刈車両31bと連結部材32とをボルトとナットによって取り付けるタイプの公知の取付具を使用している。
このように着脱自在に係合可能な取付具を使用することによって、草刈車両31aと草刈車両31bの間隔は、異なる長さの連結部材32を使用することで任意の間隔とすることができる。草刈車両31a及び草刈車両31bの間隔は、作業場(地面)の形状等の諸条件を考慮して、自律走行時に車両の転倒が生じない範囲で設定される。
例えば、草刈車両31a及び草刈車両31bの間隔を、自律走行して草刈作業を行った際に走行路に草の刈り残しが生じづらいような狭めた間隔に設定してもよいし、より刈り残しが生じないように、往復走行を前提として、往路で草刈車両31a及び草刈車両31bの間の走行路に草の刈り残しが生じても、復路で草刈車両31a又は草刈車両31bのいずれかが刈り残しの上を走行するようにして動作させてもよい。
【0054】
草刈車両31aと草刈車両31bの間隔は、上述した走行機体の大きさ(60cm×50cm×40cm)の場合、例えば、45cmである。
【0055】
なお、本実施形態では、上記の通り、草刈車両31a及び草刈車両31bと連結部材32とをボルトとナットによって取り付ける取付具であるが、草刈車両31a及び草刈車両31bと連結部材32とを係合可能であればその他の取付具を使用してもよい。
【0056】
また、本実施形態における連結部材32は、緩衝手段である関節部32aを有する。本実施形態の32aは、連結部材32の中央部に設けられ、特定の方向にのみ回転できる関節機構(回転機構)であり、草刈車両31a,31bには垂直方向に回転するように取り付けられる。連結部材32が、このような関節部32aを有することによって、図3(a),(b)に示すように起伏がある地面を走行する場合においても、自律走行式作業装置30を構成する二台の草刈車両31a,31bが地面の形状に追従して走行できるため、転倒が生じることを回避できると共に、草刈装置の刃部(図示せず)を地面に沿って運用できるので、関節機構(回転機構)を有さない場合と比較して走行路の草の刈り残しが減少する。
【0057】
本発明に係る自律走行式作業装置は、上述した自律走行式作業装置30以外の草刈車両の配置も可能である。上述したように草刈車両の走行機体に連結部材を着脱自在に係合可能な取付具が設けられることによって、複数の草刈車両を任意の配列で連結することが可能である。この場合、作業車両が三台以上であり、並列に連結された二台以上の作業車両(上記実施形態では草刈車両)を含む構成であれることが好ましい。
【0058】
具体例を挙げると、図4に示すように三台の草刈車両31c,31d,33eを連結部材32によって並列に連結した自律走行式作業装置30Aが挙げられる。連結部材32の構成は自律走行式作業装置30と同様であるので説明を省略する。
自律走行式作業装置30Aにおいて、草刈車両31c,31d,33eは少なくとも一台が上述した草刈車両31aと同様にGPS装置を有し、自律走行式作業装置30と同様にRTK-GPS方式による位置情報に基づいて、自律走行式作業装置30Aを自律走行させることができる。
【0059】
自律走行式作業装置30Aでは三台の草刈車両31c,31d,33eを所定の間隔で並列に連結することにより、一度の走行で草刈りを行うことができる面積が増加するため、作業効率が向上する。なお、本発明の目的を損なわない限り、四台以上の草刈車両を並列に連結してもよい。
【0060】
また、図5に示す自律走行式作業装置30Bや図6に示す自律走行式作業装置30Cのように並列に連結された二台の草刈車両31c,31dと、草刈車両31c,31dの前方(進行方向側)に一台の草刈車両33eを連結した構成も好ましい。
自律走行式作業装置30B,30Cでは、前方に配置された草刈車両33eによって自律走行式作業装置の走行がより安定するため、特に作業場(地面)が起伏や傾斜を有する場合(特に傾斜)においても自律走行することが可能となる。
【0061】
また、上述した自律走行式作業装置30では並列に連結された草刈車両31a及び草刈車両31bの走行路の間に草の刈り残しが生じないように車両間隔を設定する必要があるが、自律走行式作業装置30B,30Cでは草刈車両31c,31dの前方に配置された草刈車両33eによって草刈車両31c及び31dの走行路の間に草の刈り残しが生じない。そのため、自律走行式作業装置30B,30Cでは、草刈車両31c,31dとの間隔を自律走行式作業装置30の草刈車両31a,31bの場合と比較して大きく設定できるため、一度の走行で草刈りを行うことができる面積が増加するため、作業効率が向上する。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例を示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。特に今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、具体的な構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【0063】
例えば、上記実施形態では、「自律走行可能な二台以上の作業車両と、前記二台以上の作業車両を連結する連結部材とを備える自律走行式作業装置」として、高精度衛星測位システムであるRTK-GPS方式を利用した作業車両を有する例を示したが、これに限定されない。例えば、高精度衛星測位システムとして、みちびきの測位補強サービス方式を用いてもよいし、また、他の衛星測位システムや他の物理的な接触センサや光学センサなどセンサ類とを組み合わせて使用してもよい。
また、衛星測位システム自体を使用せずに、物理的な接触センサや光学センサなどセンサ類のみで自律走行するタイプの自律走行式作業装置を使用してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、自律走行式作業装置30を構成する草刈車両31a,31bそれぞれに草刈装置を設ける構成であったが、草刈車両31a,31b間にチェーン式の草取機構を設けてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、「自律走行可能な二台以上の作業車両と、前記二台以上の作業車両を連結する連結部材とを備える自律走行式作業装置」を草刈用途で使用した例を示したが、作業車両における作業機を適宜目的とする作業用に適したものに変更し、草刈用途以外の用途に使用してもよく、二台以上の作業車両を連結部材で連結する機構を応用すれば安定性が増したり、機能向上が期待できる。
【0066】
例えば、消毒などで使用される自律走行式の噴霧作業車両、建築現場等で使用される自律走行式の検査車両などが例示される。
【0067】
また、自律走行式作業装置における作業装置は複数設けられていてもよい。例えば、水田等での草刈用途と消毒剤や除草剤の散布用途として、二台の作業車両のそれぞれに多頭噴口を有する噴霧器を設ける構成があってもよい。または、二台の作業車両の間にチェーン式の草取機構を設けてもよい。人が水田に入る必要がなくなり、効率よく除草することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、作業車両を連結する連結部材として、棒状の連結部材を示したがこれ以外の連結部材を用いることもできる。例えば、図7に示す自律走行式作業装置40は、作業車両41a,41b,41c,41dを板状の連結部材42で連結した作業装置であり、図示しないが作業車両41a,41b,41c,41dそれぞれは板状の連結部材42とボルト及びナットで固定されている。自律走行式作業装置40において、板状の連結部材42を様々な作業機の搭載用に使用することができる。例えば、板状の連結部材42に散布機構43、タンク44を搭載することによって、自律走行式作業装置40をタンク44に蓄えられた肥料・農薬・消毒薬等を、散布機構43で散布する作業装置として用いることができる。
【0069】
また、上記実施形態では屋外での使用を想定した自律走行式作業装置の例を示したが、屋内で使用することもできる。例えば、自律走行式の掃除車両、物流倉庫等で使用される自律走行式の運搬台車等が例示できる。
【符号の説明】
【0070】
1 自律走行作業システム
10 GPS衛星
20 固定局
30,30A,30B,30C 自律走行式作業装置
31a 草刈車両(GPS装置搭載)
31b 草刈車両
31c,31d,31e 草刈車両
32 連結部材
33 関節部
40 自律走行式作業装置
41a,41b,41c,41d 作業車両
42 連結部材(板状)
43 散布機構
44 タンク
A1 GPSアンテナ
A2 無線通信アンテナ
B1 無線通信アンテナ
B2 GPSアンテナ
G 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7