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▶ 住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020922
(43)【公開日】2022-02-02
(54)【発明の名称】屋内害虫防除用スプレー
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/10 20060101AFI20220126BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
A01N53/10 210
A01P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124189
(22)【出願日】2020-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 教代
(72)【発明者】
【氏名】田中 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】黒田 明
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC02
4H011BB15
4H011BC01
4H011BC03
4H011DA12
4H011DE15
4H011DF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴキブリなどの徘徊性害虫を防除することが可能な屋内害虫防除用スプレーを提供する。
【解決手段】ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種とを含む屋内害虫防除用スプレーによりゴキブリなどの徘徊性害虫を防除する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種とを含む屋内害虫防除用スプレー。
【請求項2】
ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種との合計重量に対するメントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種の重量が0.01~1重量%である請求項1に記載の屋内害虫防除用スプレー。
【請求項3】
害虫が徘徊性害虫である請求項1または2に記載の屋内害虫防除用スプレー。
【請求項4】
害虫がゴキブリ目害虫である請求項1または2に記載の屋内害虫防除用スプレー。
【請求項5】
害虫の徘徊地域に噴霧塗付して使用される請求項1~4のいずれか1項に記載の屋内害虫防除用スプレー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内害虫防除用スプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
ピレスロイド系化合物、界面活性剤および水を含有する害虫防除剤を充填してなる屋内害虫防除用スプレーが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-144141号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる屋内害虫防除用スプレーは、いわゆるハンドスプレーと呼ばれる圧縮ガスを用いないスプレーであって、一般にエアゾールスプレーに比べ噴射圧が弱いことから、フィンガースプレーから噴霧される噴霧粒子は大きくなりやすく、長時間空気中に漂わすことが困難であるといわれる。
【0005】
そこで特許文献1にかかる屋内害虫防除用スプレーは、床等の落下した噴霧粒子が少しずつ気化することにより蚊やハエ、コバエ類の飛翔害虫を防除できることができる。
屋内にはゴキブリなどの徘徊性害虫も棲息していることから、さらに、床等に落下した噴霧粒子によりゴキブリなどの徘徊性害虫をも防除できる害虫防除用スプレーも求められていた。
【0006】
そこで本発明らは、鋭意検討した結果、徘徊性害虫に対しより優れた防除効力を有する屋内害虫防除用スプレーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に至った。すなわち本発明は、
[1]ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種とを含む屋内害虫防除用スプレー。
[2]ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種との合計重量に対するメントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種の重量が0.01~1重量%である上記の屋内害虫防除用スプレー。
[3]害虫が徘徊性害虫である上記の屋内害虫防除用スプレー。
[4]害虫がゴキブリ目害虫である上記の屋内害虫防除用スプレー。
[5]害虫の徘徊地域に噴霧塗付して使用される上記の屋内害虫防除用スプレー。
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋内に棲息する徘徊性害虫を効率よく防除することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の屋内害虫防除用スプレーに用いられるピレスロイド系化合物としては、エトフェンプロックス、フェノトリン、プラレトリン、フタルスリン、イミプロトリン、レスメトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、アレスリン、ビフェントリン、シラフルオフェン、シフルトリン、シハロトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、エンペントリン、デルタメトリン、ピレトリンが挙げられる。このうちエトフェンプロックス、フェノトリンおよびピレトリンを用いることが好ましい。
【0010】
本発明の屋内害虫防除用スプレーに用いられる界面活性剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、オレイン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0011】
本発明の屋内害虫防除用スプレーには、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる一種が用いられる。なお、メントール、ピネンおよびリモネンには異性体が存在するが、これらも本発明に含まれる。
【0012】
本発明の屋内害虫防除用スプレーに含まれるメントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる一種の重量は、ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種との合計重量に対し0.01~1重量%である。また水の重量は、ピレスロイド系化合物、界面活性剤、水と、メントール、ピネンおよびリモネンから選ばれる少なくとも一種との合計重量に対し88重量%以上とすることにより、床等の汚染を抑制することができる。
【0013】
本発明の屋内害虫防除用スプレーには、さらに他の成分を含有させてもよく、例えば、アルコール類、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤、pH調整剤、キレート剤及び香料などが挙げられる。前記アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコールなどの1価アルコール、ソルビトール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコールが挙げられる。また前記防腐剤としては、ユーカリオイル、フェノキシエタノール、メチルパラベンなどのパラベン類が挙げられる。
【0014】
本発明の屋内害虫防除用スプレーに使用されるスプレー容器としては、トリガースプレー容器、フィンガースプレー容器等のハンドスプレー容器が挙げられる。
かかるトリガースプレー容器としては、害虫防除用組成物を充填する容器本体の口部に、例えば特開2005-288256号、特開2011-144141号の図4に開示されるトリガー式のスプレー装置が装着された容器が挙げられる。
またフィンガースプレー容器としては、害虫防除用組成物を充填する容器本体の口部に、例えば、特開2011-144141号の図5、特開平9-256272号の図10に開示されるフィンガースプレーが装着された容器が挙げられる。
【0015】
本発明の屋内害虫防除用スプレーから噴霧される噴霧粒子の平均粒子径は、80~350μm、好ましくは100~250μmとなるように調整される。ここでいう噴霧粒子とは、粒子のことである。また平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%の粒子径のことで、日機装(株)社製のAEROTRAC SPR MODEL-7340により測定することができる。
【0016】
本発明の屋内害虫防除用スプレーの1プッシュあたりの噴霧量は、0.3~1.5mLとなるように調整される。
【0017】
本発明の屋内害虫防除用スプレーは主に害虫の徘徊地域に噴霧塗布されて使用される。かかる噴霧塗付される害虫の徘徊地域としては、例えば屋内の床面や壁面の他、椅子、机などの調度品などが挙げられる。
【0018】
本発明の屋内害虫防除用スプレーが防除対象とする害虫としては以下の害虫が挙げられる。
トコジラミ等のトコジラミ類、
ゴキブリ目害虫:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、トウヨウゴキブリ等;
ダニ目害虫:フタトゲチマダニ、キチマダニ、ヤマトマダニ、シュルツマダニ等のマダニ類、ケナガコナダニ等のコナダニ類、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ホソツメダニ、クワガタツメダニ等のツメダニ類、イエダニ、トリサシダニ、
このうち、ゴキブリ目害虫に対して特に効果を有する。
また、床等に付着した噴霧粒子が気化することにより
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のエーデス属、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ等のイエバエ類、ショウジョウバエ類、オオキモンノミバエ等のノミバエ類、オオチョウバエ等のチョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類、ハモグリバエ類等;
の防除も可能である。
【実施例0019】
以下に実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【ゴキブリに対する防除試験】
【0020】
〔屋内害虫防除用スプレーの作成〕
[実施例1]
ピレスロイド系化合物としてピレトリン(住友化学株式会社製住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.13重量%、界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル(竹本油脂(株)製01075TX)3重量%、メントール(関東化学株式会社製I-メントール)1重量%および水95.87重量%を混合・撹拌した後、市販のトリガースプレー容器に充填しトリガー(キャニヨン株式会社製、型式T-95)を取り付け、本発明の屋内害虫防除用スプレーを作成した(以下、本発明スプレー1と称す)。
【0021】
[実施例2]
ピレスロイド系化合物としてピレトリン(住友化学株式会社製住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.13重量%、界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル(竹本油脂(株)製01075TX)4重量%、ピネン(東京化成工業株式会社製(1S)-(-)-α-Pinene)1重量%および水94.87重量%を混合・撹拌した後、市販のトリガースプレー容器に充填しトリガー(キャニヨン株式会社製、型式T-95)を取り付け、本発明の屋内害虫防除用スプレーを作成した(以下、本発明スプレー2と称す)。
【0022】
[実施例3]
ピレスロイド系化合物としてピレトリン(住友化学株式会社製住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.13重量%、界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル(竹本油脂(株)製01075TX)5重量%、リモネン(LKT Labs, Inc製D-リモネン)1重量%および水93.87重量%を混合・撹拌した後、市販のトリガースプレー容器に充填しトリガー(キャニヨン株式会社製、型式T-95)を取り付け、本発明の屋内害虫防除用スプレーを作成した(以下、本発明スプレー3と称す)。
【0023】
[比較例1]
ピレスロイド系化合物としてピレトリン(住友化学株式会社製住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.13重量%、界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル(竹本油脂(株)製01075TX)3重量%および水96.87重量%を混合・撹拌した後、市販のトリガースプレー容器に充填しトリガー(キャニヨン株式会社製、型式T-95)を取り付け、比較用の屋内害虫防除用スプレーを作成した(以下、比較スプレー1と称す)。
【0024】
[比較例2]
ピレスロイド系化合物としてピレトリン(住友化学株式会社製住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.13重量%、界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル(竹本油脂(株)製01075TX)5重量%および水94.87重量%を混合・撹拌した後、市販のトリガースプレー容器に充填しトリガー(キャニヨン株式会社製、型式T-95)を取り付け、比較用の屋内害虫防除用スプレーを作成した(以下、比較スプレー2と称す)。
【0025】
〔ゴキブリに対する防除効果試験〕
15cm×15cm×4mmの化粧板(サンプリント ノルマンディパインNo.119)にスプレーノズルの噴射孔が該化粧板の中心域方向となるように位置調整し、該化粧板から30cm離して、噴霧液が該化粧板に1.0g付着するように本発明スプレー1~3および比較スプレー1~2をそれぞれ噴霧塗布し、温度25℃湿度26%の部屋で30分間静置し、噴霧液付着化粧板を作成した。
次に、直径10cm、高さ15cmのプラスチック製カップの内側側面をゴキブリの逃走防止を目的にマーガリンを塗布しクロゴキブリ雄3頭雌3頭を入れた。その後、該容器口を覆うように前記噴霧液付着化粧板を載せた後上下反転させ、化粧板上でクロゴキブリを5分間徘徊させた。
別途準備したプラスチック製カップにクロゴキブリを回収後、回収してから60、120、180、300、600、1200および1800秒後のノックダウン(KD)虫数をカウントし、probit法によりKT50値を算出した。
上記試験を2反復し、平均のKT50値を算出した。表1に結果を示す。
【0026】